説明

磁性線材及びインダクタ

【課題】小型化を実現すると共に、パワー系機器に使用される場合であっても熱損失を低減してインダクタンスの低下を防止することができる磁性線材を提供する。
【解決手段】インダクタ1は、ドラム型のコア部材10と、コア部材10に巻回される磁性線材20とを備える。磁性線材20は、導線21と、導線21の外周面に形成された導電性磁性体層22と、導電性磁性体層22の外周面に形成された絶縁層23とを有する。磁性線材20は、半径方向に沿って形成された環状溝部25を有する。また、導電性磁性体層22は、粗化状態である外表面22aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性線材及びインダクタに関し、特に、リアクタ、モータ、トランス等のパワー系機器に用いられる磁性線材及びインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、家電、ロボット・計装、通信等の様々な産業分野において、コイルに巻線が巻回されているインダクタが用いられている。このようなインダクタのうち、通信分野では、表面に保護被膜を有する銅線を空心コイルに巻回した高周波インダクタが使用されている。低周波では、インダクタンスを増大するため、空心コイルの線径を細くしたり、巻数を増加したりする方法が採用されている。インダクタンスが大きすぎる場合には、ボビンに導線を巻回し、コイルの内部に磁性体を設けてインダクタンスを大きくし、磁性体とコイルの相対位置を変化させてインダクタンスの調整を行っている。
【0003】
ここで、空心コイルの線径を細くする場合、線径が小さくなるに従って回路基板への挿入性が低下すると共に、線材の強度が低下し、コイル形状が変化し易いという問題があった。また、巻数を増加させる場合も、空心コイルの剛性が低下し、コイル形状が変化し易いという問題もあった。
【0004】
このような問題を解消するべく、空心コイルと、該空心コイルに巻回され、表面に磁性体膜を有する銅線とで構成される高周波インダクタが提案されている。表面に磁性体膜を有する銅線は、表面に保護被膜を有する銅線に比してその比透磁率が高い。したがって、等価のインダクタンスを有するインダクタに比して、径を大きくすると共に巻数を減少させることができ、もって作業工数を低減しつつインダクタンスを増大することが可能である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−211904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなインダクタをリアクタ、モータ、トランス等のパワー系機器に使用する場合、磁性体膜によって形成される層(導電層)に渦電流が発生するため、渦電流損によって発熱量が増大し、インダクタンスの低下を招くという問題がある。熱損失を低減するために、保護被膜(絶縁層)に酸化鉄などの粒子を混合する方法などが考えられるが、絶縁性が低下するという問題が生じる。また、近年、製品の省電力化、小型化に伴い、インダクタの更なる高効率、小型化の要望が高まってきている。
【0007】
本発明の目的は、小型化を実現すると共に、パワー系機器に使用される場合であっても熱損失を低減してインダクタンスの低下を防止することができる磁性線材及びインダクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る磁性線材は、導線と、前記導線の表面に形成される導電性磁性体構造とを備える磁性線材において、前記導電性磁性体構造は、該導電性磁性体層内に発生する渦電流が前記磁性線材の長手方向に進行するのを抑制する少なくとも1つの部分を有することを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記導電性磁性体構造は、前記磁性線材の長手方向に沿って不連続に設けられた導電性磁性体層で構成される。
【0010】
好ましくは、前記磁性線材は、前記磁性線材の長手方向に対して略垂直な方向に沿って形成された少なくとも1つの溝部を備え、前記導電性磁性体層は、前記少なくとも1つの溝部が形成されることにより、前記磁性線材の長手方向に沿って不連続に設けられる。
【0011】
また、好ましくは、前記導電性磁性体層又は前記導線は、粗化状態の外表面を有する。
【0012】
より好ましくは、前記外表面の最大高さRzが、前記導電性磁性体層の最大厚さの1/2以上である。
【0013】
好ましくは、前記導電性磁性体構造は、前記導線の表面に形成された複数の突起で構成される。
【0014】
好ましくは、前記導電性磁性体構造はパーマロイ合金からなる。
【0015】
また、好ましくは、前記磁性線材は、前記導電性磁性体構造の外表面に形成された絶縁層を更に備える。
【0016】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るインダクタは、コア部材と、前記コア部材に巻回される磁性線材とを備えるインダクタにおいて、前記コア部材は、前記磁性線材が所定の巻回数で巻回される軸部を備え、前記磁性線材は、導線と、前記導線の表面に形成される導電性磁性体層とを備え、前記導電性磁性体構造は、該導電性磁性体層内に発生する渦電流が前記磁性線材の長手方向に進行するのを抑制する少なくとも1つの部分を有することを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記導電性磁性体構造は、前記磁性線材の長手方向に沿って不連続に設けられた導電性磁性体層で構成される。
【0018】
好ましくは、前記磁性線材は、前記磁性線材の長手方向に対して略垂直な方向に沿って形成された少なくとも1つの溝部を備え、巻回数1ターン当りに前記少なくとも1つの溝部が存在する。
【0019】
また、好ましくは、前記導電性磁性体層又は前記導線は、粗化状態の外表面を有する。
【0020】
また、好ましくは、前記コア部材は、前記軸部の両端に設けられた鍔部を更に備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明の磁性線材によれば、導電性磁性体構造は、該導電性磁性体層内に発生する渦電流が磁性線材の長手方向に進行するのを抑制する少なくとも1つの部分を有するので、渦電流損の増大を防止することができ、発熱量の増大を抑制することができる。したがって、磁性線材がパワー系機器に使用される場合であっても、インダクタの小型化を実現しつつ、熱損失を低減してインダクタンスの低下を防止することができる。
【0022】
また、導電性磁性体構造の外表面が粗化状態であるため、渦電流が導電性磁性体層内で長手方向に進行するのを抑制することができ、渦電流の増大を抑制することができる。また、導電性磁性体の外表面の面積が増大するため、放熱性を向上することができる。
【0023】
また、本発明のインダクタによれば、渦電流が磁性線材の長手方向に進行するのを抑制する少なくとも1つの部分を有する導電性磁性体構造を備える磁性線材が軸部に巻回されるので、インダクタの磁性線材近傍で漏れ磁束を低減することができ、同容量のコア部材、及び導線が同一寸法で且つ導電性磁性体層を有しない線材を用いた場合に比して、磁気抵抗を低減することができる。したがって、インダクタがパワー系機器に使用される場合であっても、インダクタの小型化を実現しつつ、熱損失を低減してインダクタンスの低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係るインダクタ及び磁性線材の構成を概略的に示す図であり、(a)はインダクタの断面図、(b)は磁性線材の断面図である。
【図2】図1の磁性線材を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は部分断面図である。
【図3】図1のインダクタにおける磁束の流れを説明する模式図である。
【図4】インダクタの周波数とインダクタンスの関係を示す図である。
【図5】図1の磁性線材の変形例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図6】図1のインダクタの変形例を示す図であり、(a)は第1変形例、(b)は第2変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係るインダクタ及び磁性線材の構成を概略的に示す図であり、(a)はインダクタの断面図、(b)は磁性線材の断面図である。
【0027】
図1(a)において、インダクタ1は、ドラム型のコア部材10と、コア部材10に巻回される磁性線材20とを備える。
【0028】
コア部材10は、略円柱形状の軸部11と、軸部11の両端に設けられた円盤形状の鍔部12,13とを有する。コア部材10は磁性材料からなり、例えばフェライトからなる。このフェライトとしては、例えば、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Cu−Znフェライトなどを使用することができる。軸部11の長さは、例えば11.85mmであり、その外径は、例えば7.65φである。
【0029】
磁性線材20は、導線21と、導線21の外周面に形成された導電性磁性体層(導電性磁性体構造)22と、導電性磁性体層22の外周面に形成された絶縁層23とを有する(図1(b))。磁性線材20は、軸部11の外周部且つ鍔部12,13間に巻回され、その巻回数は、例えば90ターンである。磁性線材20は、その外径が例えばφ0.7〜0.75である。
【0030】
導線21は銅からなり、その外径は、例えばφ0.55である。導電性磁性体層22はパーマロイ合金からなり、その厚みは、例えば1.0μmである。好ましくは、導電性磁性体層22はNi−Mo−Cu−Feパーマロイ合金からなる。なお、パーマロイ合金としては、JIS C 2531で規定されるPB材(40〜50wt%Ni)、PC材(70〜85wt%Ni−Mo−Cu−Fe)、PD材(35〜40wt%Ni−Fe)等を使用することができ、好ましくはPC材である。絶縁層23は、例えばエナメルからなり、その厚みは、例えば35〜100μmである。
【0031】
図2は、図1の磁性線材20を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は部分断面図である。
【0032】
図2(a)及び(b)に示すように、磁性線材20は、半径方向に沿って形成された環状溝部25を有する。環状溝部25の幅は、磁性線材の長手方向の渦電流を抑制するため、長手方向に電気的に絶縁し得る大きさであればよいが、コイルから発生する磁場を通す必要があるためできるだけ短いほうが好ましい。導電性磁性体層22の厚みは、0.1〜2.0μmが好ましい。0.1μm未満であると磁束が流れる通路として厚みが不十分であり、2.0μmより大きいと硬くなり、コイル線材としての可撓性が低下し、巻回することが困難になるためである。また、環状溝部25は、磁性線材20の長手方向に関して所定間隔で設けられており、導電性磁性体層22は、環状溝部25が所定間隔で設けられることにより、磁性線材20の長手方向に沿って導線21の表面に不連続に設けられている。また、環状溝部25は、巻回数1ターン当りに少なくとも1つの環状溝部が存在するように形成される。
【0033】
一般に、磁性線材が巻回されたインダクタに交流電流が流れると、交流磁場(磁界)Hは、導電性磁性体層の厚み方向に関して該層の中心付近を横切るように発生する。このとき、導電性磁性体層の外側表面に渦電流が発生する。発生した渦電流は、磁性線材の長手方向に沿って導電性磁性体層の外側表面を進行し、磁性線材の端部において導電性磁性体層の内側表面に移動し、その後導電性磁性体層の内側表面を逆方向に進行して、もとの位置に戻る。このとき、導電性磁性体層が磁性線材の長手方向に沿って連続的に形成されているため、流れの大きい渦電流が発生する。この流れの大きい渦電流の発生により、渦電流損が増大し、その結果発熱量が増大する。このような現象は、リアクタ、モータ、トランス等のパワー系機器に使用する場合に顕著となる。
【0034】
そこで、本実施の形態では、導電性磁性体層22に環状溝部25を設け、導電性磁性体層22を磁性線材20の長手方向に関して不連続に形成する。これにより、導電性磁性体層22内で発生する渦電流を抑制し、発熱量の増大を抑制することができる。
【0035】
また、図2(c)に示すように、導電性磁性体層22は、粗化状態である外表面22aを有するようにしてもよい。この粗化状態とは、外表面22aが微細な凹凸によって表面粗さを有する状態をいう。より具体的には、導電磁性体層22の断面上の長さ100μm中に複数の凹凸があって、外表面22aの凸部の最大高さRzが、導電性磁性体層22の最大厚さLmaxの1/2以上であることを示す。例えば、導電性磁性体層22の厚さが1.0μmであるときに、外表面22aの最大高さRzが0.5μm以上である。このとき、導電性磁性体層22内で発生した渦電流が最大高さを示す位置にて流れ難くなる。よって、渦電流が導電性磁性体層22内で長手方向に進行するのを抑制することができ、電気抵抗の増大を抑制することができる。また、導電性磁性体層22の外表面22aを粗化状態にすると、外表面の面積が増大するため、放熱性を向上することができる。
【0036】
さらに、本実施の形態では、導電性磁性体構造は導電性磁性体層で構成されるが、これに限るものではなく、渦電流が磁性線材の長手方向に進行するのを抑制し得る構造であれば如何なるものであってもよい。例えば、導線21の表面に導電性磁性体からなる複数の微細瘤状突起(凹凸)を形成することによって、所定の表面粗さを有する導電性磁性体構造を構成してもよい。この場合、例えば複数の微細瘤状突起は、直径0.1〜3.0μm程度の複数の導電性磁性体微粒子が導線21の断面においてその長さ10μm中に複数の凹凸を有するように定着して、全体として粗化された層構造をなすように構成することで、同様の効果を奏することができる。
【0037】
また、導線21の表面の粗化を行い、その表面にさらに導電性磁性体からなる膜を構成することによっても、本発明の効果を奏することができる。
【0038】
図3は、図1のインダクタ1における磁束の流れを説明する模式図である。
【0039】
図3に示すように、インダクタ1で発生した磁束の一部は、コア部材の鍔部12から、該鍔部近傍に位置する磁性線材20内の導電性磁性体層22に移動する。その後、磁束は隣接する磁性線材の導電性磁性体層を順に通って進行し、鍔部13に到達する。すなわち、磁束は、高透磁率の材料からなる導電性磁性体層22を通って最短距離で鍔部12、13間を進行する。これにより、インダクタ1の磁性線材20近傍で発生する漏れ磁束を低減することができ、同容量のコア部材、及び導線が同一寸法で且つ導電性磁性体層を有しない線材を用いた場合に比して、磁気抵抗を低減することができる。したがって、高い比透磁率を維持することができ、インダクタンスの低下を防止することができる。
【0040】
上記のように構成される磁性線材及びインダクタは、以下のように製造される。
【0041】
先ず、軸部の長さが11.85mm、軸部の外径が7.65φのNi−Znフェライト製ドラム型コアを準備する。次に、外径φ0.55の銅線に、PC材を用いてパルスめっき法にて、厚み1.0μmの、表面が粗化状態であるパーマロイ合金膜(導電性磁性体層)を形成し、その後、厚み100μmの絶縁被覆(絶縁層)を施して、外径φ0.65〜0.75のパーマロイ合金被覆線材(導電性磁性体被覆線材)を作製する。さらに、線材の外表面に環状溝部を所定間隔で形成し、パーマロイ合金膜を線材の長手方向に関して不連続に形成する。このとき、環状溝部がコアに巻回された状態において、1ターンに少なくとも1つの環状溝部が存在するように所定間隔の値を決定する。そして、磁性線材をドラム型コアに約90ターンで巻回し、パーマロイ合金被覆線材を用いたインダクタを作製する。
【0042】
次に、比較例として、外径φ0.55の銅線に、1.0μmニッケル製導電性膜を形成し、更に厚み100μmの絶縁被覆を施して、外径φ0.65〜0.75のニッケル被覆線材を作製し、該ニッケル被覆線材を巻回したインダクタを作製する。また、他の比較例として、外径φ0.55の銅線に、導電性膜を形成せず、絶縁被覆のみを施した線材を作製し、この線材を巻回した通常のインダクタを作製する。
【0043】
そして、各インダクタについて、所定周波数に対するインダクタンスLsを測定する。インダクタの周波数とインダクタンスLsの関係を図4に示す。
【0044】
図4に示すように、パーマロイ合金被覆線材を用いたインダクタのインダクタンスLsは、いずれの周波数においても、ニッケル被覆線材を用いたインダクタに対して約9%増大し、通常のインダクタに対して約17%増大している。この結果から、パーマロイ合金被覆線材を用いた場合には、ニッケル被覆線材を用いた場合や、導電性膜が形成されていない線材を用いた場合よりもインダクタンスを増大することができる。また、同一形状及び同一寸法のコア部材で同値のインダクタンスを得たい場合、パーマロイ合金被覆線材を用いると巻回数を減少することができ、コイルの直流抵抗を減少することができる。
【0045】
上述したように、本実施の形態によれば、導電性磁性体層22が磁性線材20の長手方向に沿って不連続に設けられるので、導電性磁性体層22内で発生する渦電流が該層の長手方向に沿って進行するのを抑制し、渦電流損の増大を防止することができ、発熱量の増大を抑制することができる。したがって、磁性線材20がパワー系機器に使用される場合であっても、インダクタの小型化を実現しつつ、熱損失を低減してインダクタンスの低下を防止することができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、導電性磁性体層22が磁性線材の長手方向に沿って不連続に設けられた磁性線材20が軸部11に巻回されるので、インダクタ1の磁性線材20近傍で発生する漏れ磁束を低減することができ、同容量のコア部材、及び導線が同一寸法で且つ導電性磁性体層を有しない線材を用いた場合に比して、磁気抵抗を低減することができる。したがって、インダクタ1がパワー系機器に使用される場合であっても、インダクタの小型化を実現しつつ、熱損失を低減してインダクタンスの低下を防止することができる。
【0047】
図5は、図1の磁性線材20の変形例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【0048】
図5に示すように、磁性線材50は、断面略矩形の導線51と、導線51の長手方向に沿う4面のうちいずれか1つの面に形成された導電性磁性体層52と、導線51及び導電性磁性体層52の外周面に形成された絶縁層53とを有する。また、磁性線材50は、長手方向に対して略垂直な方向に沿って形成された環状溝部55を有しており、導電性磁性体層52及び絶縁層53は長手方向に関して導線51の表面に不連続に設けられる。
【0049】
本変形例によれば、断面略矩形の磁性線材であっても、熱損失を低減してインダクタンスの低下を防止することができる。したがって、用途に応じて、断面形状の異なる磁性線材を使用することが可能となる。
【0050】
図6は、図1のインダクタ1の変形例を示す図であり、(a)は第1変形例、(b)は第2変形例を示す。
【0051】
図6(a)において、インダクタ60は、空心コイル61と、空心コイル61に巻回される磁性線材20とを備える。また、図6(b)において、インダクタ70は、鍔無しコア部材70と、コア部材70に巻回される磁性線材20とを備える。いずれの変形例においても、環状溝部25を有する磁性線材20を巻回することにより、熱損失を低減してインダクタンスの低下を防止することができる。
【0052】
本実施の形態では、磁性線材50は、長手方向に対して略垂直な方向に沿って形成された環状溝部55を有しているが、これに限るものではなく、導電性磁性体層52が磁性線材20の長手方向に沿って導線21に不連続に設けられていれば如何なる形状の溝部であってもよい。例えば、磁性線材50は、導線51の長手方向に沿う4面のうちいずれか1つの面に形成された溝部を有していてもよい。これにより、溝部を形成する作業工数を低減することができる。
【0053】
本実施の形態では、銅線に導電性磁性体層及び絶縁層を形成した後に、環状溝部を所定間隔で形成するが、これに限るものではなく、銅線に導電性磁性体層を形成した後、導電性磁性体層の外表面に環状溝部を所定間隔で形成し、その後、絶縁層を形成してもよい。これにより、磁性線材の絶縁性を向上することができる。
【0054】
本実施の形態に係る磁性線材は、例えばパワーモータ、DCブラシレスモータ、サーボモータ、空心コイル、コアコイル、トロイダルコイル、DC/DCコンバータ、DC/ACコンバータ等の電源系インダクタに使用することができ、また、各種センサ、レゾルバ、電源フィルタ等の信号系インダクタにも使用することができる。
【0055】
本発明によれば、磁性体としてはNi−Znフェライト、Mn−Znフェライト、電磁鋼板や圧粉コアなどを用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 インダクタ
10 コア部材
11 軸部
12 鍔部
20 磁性線材
21 導線
22 導電性磁性体層
22a 外表面
23 絶縁層
25 環状溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線と、前記導線の表面に形成される導電性磁性体構造とを備える磁性線材において、
前記導電性磁性体構造は、該導電性磁性体層内に発生する渦電流が前記磁性線材の長手方向に進行するのを抑制する少なくとも1つの部分を有することを特徴とする磁性線材。
【請求項2】
前記導電性磁性体構造は、前記磁性線材の長手方向に沿って不連続に設けられた導電性磁性体層で構成されることを特徴とする磁性線材。
【請求項3】
前記磁性線材の長手方向に対して略垂直な方向に沿って形成された少なくとも1つの溝部を備え、
前記導電性磁性体層は、前記少なくとも1つの溝部が形成されることにより、前記磁性線材の長手方向に沿って不連続に設けられることを特徴とする請求項2記載の磁性線材。
【請求項4】
前記導電性磁性体層又は前記導線は、粗化状態の外表面を有することを特徴とする請求項2又は3記載の磁性線材。
【請求項5】
前記外表面の最大高さRzが、前記導電性磁性体層の最大厚さの1/2以上であることを特徴とする請求項4記載の磁性線材。
【請求項6】
前記導電性磁性体構造は、前記導線の表面に形成された複数の突起で構成されることを特徴とする請求項1記載の磁性部材。
【請求項7】
前記導電性磁性体構造はパーマロイ合金からなることを特徴とする請求項1記載の磁性線材。
【請求項8】
前記導電性磁性体構造の外表面に形成された絶縁層を更に備えることを特徴とする請求項1記載の磁性線材。
【請求項9】
コア部材と、前記コア部材に巻回される磁性線材とを備えるインダクタにおいて、
前記コア部材は、前記磁性線材が所定の巻回数で巻回される軸部を備え、
前記磁性線材は、導線と、前記導線の表面に形成される導電性磁性体層とを備え、
前記導電性磁性体構造は、該導電性磁性体層内に発生する渦電流が前記磁性線材の長手方向に進行するのを抑制する少なくとも1つの部分を有することを特徴とするインダクタ。
【請求項10】
前記導電性磁性体構造は、前記磁性線材の長手方向に沿って不連続に設けられた導電性磁性体層で構成されることを特徴とする請求項9記載のインダクタ。
【請求項11】
前記磁性線材は、前記磁性線材の長手方向に対して略垂直な方向に沿って形成された少なくとも1つの溝部を備え、
巻回数1ターン当りに前記少なくとも1つの溝部が存在することを特徴とする請求項10記載のインダクタ。
【請求項12】
前記導電性磁性体層又は前記導線は、粗化状態の外表面を有することを特徴とする請求項10又は11記載のインダクタ。
【請求項13】
前記コア部材は、前記軸部の両端に設けられた鍔部を更に備えることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載のインダクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−114085(P2011−114085A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267876(P2009−267876)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】