説明

磁気インク文字認識装置及び磁気インク文字認識方法

【課題】短時間で、的確な文字認識を行うことができる磁気インク文字認識装置及び磁気インク文字認識方法を提供する。
【解決手段】媒体上に磁気インクで印刷された文字を磁気波形情報として読み取る読み取り部11と、この読み取られた磁気波形情報に基づき、予め用意された標準文字との比較により文字を認識する文字認識部16とを備え、文字認識部16は、前記磁気波形情報に対する文字認識手法が互いに異なる複数の文字認識アルゴリズムを実装しており、これら複数の文字認識アルゴリズムのうち、他の文字認識アルゴリズムに比べ文字認識時間が比較的短いアルゴリズムを主たる文字認識アルゴリズムとして用い、この主たる文字認識アルゴリズムにより認識できない文字を、他のアルゴリズムにより認識処理するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小切手などの媒体に磁気インクで印刷された文字を読み取って文字認識する磁気インク文字認識装置及び磁気インク文字認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁気インク文字(MICR文字)にて印刷された媒体表面の文字印刷部分を、磁気ヘッドで読み取って磁気再生信号を取得し、これを用いて文字認識を行う方法が開示されている。磁気インク文字(MICR文字)は、金融機関などで扱われる小切手等で用いられ、文字タイプとしてはE13B、CMC7が代表的なものである。また、この文字はISO1004などで規格化されている。MICR文字認識としては磁気文字ラインを磁気ヘッドで読取り、その磁気再生信号波形を論理回路に入力してピーク位置やその出力レベルの特徴に基づいて文字認識をする方法等があり、磁気再生信号波形をそのままあらかじめ用意しておいた文字ごとの基準波形と比較してその類似性から文字を決定する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開9−311906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この文字認識は、上述のように、媒体から読み取った磁気波形情報に基づく磁気再生信号波形を予め用意しておいた文字ごとの基準波形(標準文字)と比較して、この標準文字との一致度により、標準文字に該当するかを認識している。文字認識のアルゴリズムには各種のものがあり、それぞれ長所・短所を有している。これまで、通常は1種類のアルゴリズムを用いて文字認識を行っている。
【0005】
MICR文字の文字認識にどのようなアルゴリズムを用いるかは、文字認識装置が用いられる条件等によって異なるが、金融機関において小切手などに印刷されたMICR文字を認識する場合は、金融取引業務の関係上、短時間のうちに文字を認識できることが望まれている。つまり小切手を、文字認識装置を有する金融取引装置のプリンタへ挿入し、これが自動的にとり出されるタイミングでは既に文字が読み取られて所定の処理が実行されていることが望ましい。
【0006】
このような文字読み取りが短時間のうちに行われるアルゴリズムとして広く用いられているものは、読み取られた磁気波形情報のピーク点(波形の山や谷)の位置や大きさを、標準文字の波形のピーク点の位置や大きさと比較して、文字認識を行うものであった。このような認識アルゴリズムは、データ処理量が比較的少ないので文字認識を短時間のうちに行うことができる。
【0007】
しかしながら、波形のピーク点の比較だけで文字認識を行うため、波形のノイズ成分に対して弱いという問題点があった。すなわち、印刷状態や、小切手の使用状態等によっては、本来在るべき位置にピーク点が無かったり、逆の場合も考えられる。このため、文字認識ができずに、結局オペレータが目視により文字認識してキー操作するようなことが生じた。
【0008】
本発明の目的は、短時間で、的確な文字認識を行うことができる磁気インク文字認識装置及び磁気インク文字認識方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による磁気インク文字認識装置は、媒体上に磁気インクで印刷された文字を磁気波形情報として読み取る読み取り部と、この読み取られた磁気波形情報に基づき、予め用意された標準文字との比較により文字を認識する文字認識部とを備え、前記文字認識部は、前記磁気波形情報に対する文字認識手法が互いに異なる複数の文字認識アルゴリズムを実装しており、これら複数の文字認識アルゴリズムのうち、他の文字認識アルゴリズムに比べ文字認識時間が比較的短いアルゴリズムを主たる文字認識アルゴリズムとして用い、この主たる文字認識アルゴリズムにより認識できない文字を、他のアルゴリズムにより認識処理するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、前記主たる文字認識アルゴリズムは、文字認識できない場合は、認識処理のために比較された前記標準文字の数以下の文字候補を選定し、他の文字認識アルゴリズムは、前記選定された文字候補に対して順次文字認識処理を行う。
【0011】
また、本発明による磁気インク文字認識方法は、媒体上に磁気インクで印刷された文字を読み取り部により磁気波形情報として読み取り、この読み取られた磁気波形情報に基づき、文字認識部によって予め用意された標準文字との比較により文字を認識する磁気インク文字認識方法であって、前記文字認識部に実装された、前記磁気波形情報に対する文字認識手法が互いに異なる複数の文字認識アルゴリズムのうち、他の文字認識アルゴリズムに比べ文字認識時間が比較的短い主たる文字認識アルゴリズムにより文字認識を行い、この主たる文字認識アルゴリズムにより認識できない文字については、この文字の認識処理のために比較された前記標準文字の数以下の文字候補を選定し、前記他の文字認識アルゴリズムにより、前記選定された文字候補に対して順次文字認識処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の文字認識アルゴリズムを組み合わせて用いることにより、短時間で、的確な文字認識を行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による磁気インク文字認識装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】同上一実施の形態の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明による磁気インク文字認識装置の一実施の形態を示している。図1において、磁気ヘッドを有する読み取り部11は、小切手等の媒体上に磁気インクで印刷された文字を磁気波形情報として読み取る。読み取られた磁気波形情報は、増幅装置12により増幅され、A/Dコンバータ13を経由して揮発性メモリ(RAM)14に保存される。文字認識部(F/W Programとも呼ぶ)16は、CPU15により揮発性メモリ(RAM)14から読み出された磁気波形情報と、予め用意された標準文字とを比較し、磁気インクにより媒体上に印刷された文字を1字ずつ認識する。
【0016】
この文字認識部16は、磁気波形情報に対する文字認識手法が互いに異なる複数の文字認識アルゴリズムを実装している。そして、これら複数の文字認識アルゴリズムのうち、他の文字認識アルゴリズムに比べ文字認識時間が比較的短いアルゴリズムを主たる文字認識アルゴリズム(以下、第1アルゴリズムと呼ぶ)として用いる。また、この第1アルゴリズムにより認識できない文字は、他の文字認識アルゴリズム(以下、第2アルゴリズムと呼ぶ)により認識処理するように構成されている。
【0017】
ここで、第1アルゴリズムは、従来から実装されていたもので、前述したように、読み取られた磁気波形情報のピーク点の位置や大きさを、標準文字の波形のピーク点の位置や大きさと比較して文字認識を行うもので、データ処理量が比較的少ないので文字認識を短時間のうちに行うことができる。しかし、波形のピーク点の比較だけで文字認識を行うため、波形のノイズ成分に対して弱いという問題点があった。
【0018】
第2アルゴリズムは、第1アルゴリズムより高い文字認識可能性を持ち、第1アルゴリズムを補間可能な新しいアルゴリズムである。例えば、ソフトウエアによるフィルタを用いて、できるだけノイズを除去すると共に、波形全体の形状を比較して似ている度合いを数値として算出するもので、第1アルゴリズムに追カロする形で実装し、当該プリンタでの磁気インク文字の認識率向上を計っている。
【0019】
しかしながら、この第2アルゴリズムは、第1アルゴリズムと比較して、情報処理量が多いため、文字認識処理に要する時間が長くなるという問題点を有する。そこで、この第2アルゴリズムの問題点が実際の処理に影響を与えないようにするため、アルゴリズムの適用順として、前述のように、まず第1アルゴリズムを適用し、文字の認識ができなかった場合にのみ第2アルゴリズムを適用する。これにより、印刷されている全磁気インク文字の認識に要する時間を著しく増カロさせることなく認識率を向上させることが可能となる。
【0020】
図2は、文字認識部16の動作を説明する概略処理フローである。図2に示す「磁気インク文字認識処理」において、文字認識部(F/W)16に入力された磁気波形情報は、まず第1アルゴリズムにて処理され、認識が試みられる(ステップ201)。第1アルゴリズムでは、入力磁気波形情報を全標準文字(=14種)と比較して文字を認識する。この比較は、前述のように波形のピーク点の位置や大きさを比較するものであり、全標準文字(=14種)と比較しても、短時間のうちに処理が行われる。第1アルゴリズムにて文字が認識された場合(ステップ202:Yes、ステップ203)、第2アルゴリズムでの処理は一切行われない。これは従来技術と同等の処理となる。
【0021】
第1アルゴリズムにて磁気インク文字が認識できなかった場合は(ステップ202:No)、該当の磁気波形情報は第2アルゴリズムにて処理されることとなる。
【0022】
ここで、第1アルゴリズムでは、文字が認識できなかった場合は、第2アルゴリズムにより認識処理するための文字候補をいくつか選定する。第2アルゴリズムは、この選定された文字候補に対して順次文字認識処理を行う。文字候補の数は、第1アルゴリズムが認識処理のために比較した標準文字(=14種)の数以下であればいくつでもよいが、処理時間との関係から任意に選定する。図2では3つの候補を選定している。
【0023】
すなわち、第2アルゴリズムは、本来の処理においては、入力磁気波形情報を全標準文字(=14種)の波形と比較して文字を認識するが、全標準文字(=14種)の波形との比較処理には多くの時間がかかってしまう。そこで、この処理を短縮させるため、第1アルゴリズムにて解の候補となった標準文字の波形とのみ比較する。
【0024】
図の例では、第1アルゴリズムにて磁気インク文字が認識できなかった場合(ステップ202:No)、第2アルゴリズムにより、第1アルゴリズムで選定された第1候補との認識処理を行う(ステップ204)。その結果、認識可能(ステップ205:Yes)で、解あり(ステップ203)とすれば認識処理を終了する。これに対し、認識可能でない場合(ステップ205:No)は、次に、第2候補との認識処理を行う(ステップ206)。これ以降同様に、認識可能(ステップ207:Yes)で、解あり(ステップ203)であれば認識処理を終了し、認識可能でない場合(ステップ207:No)は、次に第3候補との認識処理を行う(ステップ208)。その結果、認識可能(ステップ209:Yes)で、解あり(ステップ203)であれば認識処理を終了することは同じであるが、認識可能でない場合(ステップ209:No)は、解なし(ステップ210)として認識処理を終了する。
【0025】
上記実施の形態では、第2アルゴリズムにより文字認識する候補を3つと特定したが、これは前述のように処理時間との兼ね合いで定めてものであり、通常、3つ程度であれば、第2アルゴリズムにより文字認識される可能性が十分に高く、しかも、文字認識に要する時間もさほど多くを要しないためである。したがって、文字認識処理時間を比較的長く確保できる場合は、第3候補でも文字認識できなかった場合(ステップ209:No)、解なし(ステップ210)として認識処理を終了せずに、ステップ204に戻り、別の候補に対して解あり(ステップ203)となるまで、同様の認識処理を繰り返してもよい。
【0026】
このような構成をとることにより、第2アルゴリズムの実装による文字認識(F/W)処理時間の増カロを抑えつつ、第1アルゴリズムにて認識できなかった磁気インク波形についての文字認識の可能性を高めることができる。
【0027】
このように、磁気インク文字認識のアルゴリズムにおいて、複数のアルゴリズムを実装することで認識率を向上させることが可能となる。すなわち、より長い処理時間を必要とする認識アルゴリズムを副次的に使用することとし、主たる認識アルゴリズムにおいて認識不可能となった場合、その時の解の候補に当該アルゴリズムにて認識処理を行わせることで全体の文字認識に要する時間を著しく増加させることを回避することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
11…読み取り部
16…文字認識部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体上に磁気インクで印刷された文字を磁気波形情報として読み取る読み取り部と、この読み取られた磁気波形情報に基づき、予め用意された標準文字との比較により文字を認識する文字認識部とを備え、
前記文字認識部は、前記磁気波形情報に対する文字認識手法が互いに異なる複数の文字認識アルゴリズムを実装しており、これら複数の文字認識アルゴリズムのうち、他の文字認識アルゴリズムに比べ文字認識時間が比較的短いアルゴリズムを主たる文字認識アルゴリズムとして用い、この主たる文字認識アルゴリズムにより認識できない文字を、他のアルゴリズムにより認識処理するように構成されている
ことを特徴とする磁気インク文字認識装置。
【請求項2】
前記主たる文字認識アルゴリズムは、文字認識できない場合は、認識処理のために比較された前記標準文字の数以下の文字候補を選定し、他の文字認識アルゴリズムは、前記選定された文字候補に対して順次文字認識処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の磁気インク文字認識装置。
【請求項3】
媒体上に磁気インクで印刷された文字を読み取り部により磁気波形情報として読み取り、この読み取られた磁気波形情報に基づき、文字認識部によって予め用意された標準文字との比較により文字を認識する磁気インク文字認識方法であって、
前記文字認識部に実装された、前記磁気波形情報に対する文字認識手法が互いに異なる複数の文字認識アルゴリズムのうち、他の文字認識アルゴリズムに比べ文字認識時間が比較的短い主たる文字認識アルゴリズムにより文字認識を行い、
この主たる文字認識アルゴリズムにより認識できない文字については、この文字の認識処理のために比較された前記標準文字の数以下の文字候補を選定し、前記他の文字認識アルゴリズムにより、前記選定された文字候補に対して順次文字認識処理を行う
ことを特徴とする磁気インク文字認識方法。

【図1】
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【図2】
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