磁気ギア装置
【課題】故障を防止し、磁石からなる可動子の移動に要する力を軽減させる磁気ギア装置を提供する。
【解決手段】特定の方向に沿って磁極対が各々略等間隔で複数配置されており、間隙を有して対向する内側ロータ1と外側ロータ2とを備える磁気ギア装置において、内側ロータ1と間隙を有して対向し、強磁性部が内側ロータ1と対向する一面に配置された内側磁性体コラム4及び外側ロータ2と間隙を有して対向し、強磁性部が外側ロータ2と対向する一面に配置された外側磁性体コラム3を備え、外側磁性体コラム3の一面及び内側磁性体コラム4の一面に、強磁性部と強磁性部より磁性が弱い弱磁性部とが各々略等間隔で複数配置されている。
【解決手段】特定の方向に沿って磁極対が各々略等間隔で複数配置されており、間隙を有して対向する内側ロータ1と外側ロータ2とを備える磁気ギア装置において、内側ロータ1と間隙を有して対向し、強磁性部が内側ロータ1と対向する一面に配置された内側磁性体コラム4及び外側ロータ2と間隙を有して対向し、強磁性部が外側ロータ2と対向する一面に配置された外側磁性体コラム3を備え、外側磁性体コラム3の一面及び内側磁性体コラム4の一面に、強磁性部と強磁性部より磁性が弱い弱磁性部とが各々略等間隔で複数配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの可動子を2つのヨークの間に設けた磁気ギア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
摩耗が無く、動作時に騒音が少ないギア装置として磁気ギア装置がある。回転円筒型の磁気ギア装置は、外側ロータ及び外側ロータの円筒内に設けられた内側ロータを備え、外側ロータ及び内側ロータは、内側ロータの外周面及び外側ロータの内周面の各々の円周方向に、N極及びS極を一対とした磁極対が略等間隔で配置してある。
【0003】
このような磁気ギア装置には、内側ロータ及び外側ロータの磁極対により生じる磁力を軟磁性体からなる特定の箇所に集中させることによって、ロータ間の伝達トルクを大きくする、又はロータの回転方向を変えることを目的とした中間ヨークが外側ロータと内側ロータとの間に設けられることがある(非特許文献1及び非特許文献2)。
【0004】
外側ロータが円周方向に回転した場合、外側ロータ及び内側ロータの磁極対間の磁気的相互作用により、円周方向に内側ロータが回転する。
【0005】
内部及び外部の永久磁石の間に凹凸を備える鉄製の中間ヨークが設けられている磁気駆動装置が、特許文献1に記載されている。ここで、磁気駆動装置の性能を高めるためには、ヨークは可能な限り磁石から発せられた磁束を有効に活用することが望ましい。従って、凸部はできる限り永久磁石に近づけ、凹部はできる限り軟磁性体の厚さが薄くなるようにし凹部を通過する磁束を抑える構成とする。
【0006】
一方、ヨークは内部及び外部の永久磁石の内側又は外側に備える構成とすることもできる。特許文献2には軟磁性体からなり、外側の永久磁石のさらに外部に外側の永久磁石と対向する面に複数の凹部及び凸部を備えるヨークが設けられ、内部の永久磁石、軟磁性体のヨーク及びシャフトが一体となっている磁気駆動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−264838号公報
【特許文献2】特開平10−191621号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K.Atallah、「Design,analysis and realisation of a high−performance magnetic gear」、IEE Proceedings−Electric Power Applications、英国、2004年3月、151巻、2号、135−143項
【非特許文献2】池田哲也・中村健二・一ノ倉理、「永久磁石式磁気ギアの効率向上に関する一考察」、磁気学会論文誌、2009年、33巻、2号、130−134項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に係る磁気駆動装置は凹部における中間ヨークを薄くすると中間ヨークの強度が落ち、故障の原因となるという問題がある。また、特許文献2に係る磁気駆動装置は、内部の永久磁石、軟磁性体及びシャフトが一体となって回転するので、磁石部分とは異なる部分まで回転し、回転部分の質量が増し、回転モーメントが大きくなるために急速な加減速が難しいという問題がある。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、故障を防止し、磁石からなる可動子の移動に要する力を軽減させる磁気ギア装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る磁気ギア装置は、特定の方向に沿って磁極対が各々略等間隔で複数配置されており、間隙を有して対向する第1可動子と第2可動子とを備える磁気ギア装置において、前記第1可動子と間隙を有して対向し、強磁性部が前記第1可動子と対向する一面に配置された第1磁性部及び前記第2可動子と間隙を有して対向し、前記強磁性部が前記第2可動子と対向する一面に配置された第2磁性部を備え、前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に、強磁性部と該強磁性部より磁性が弱い弱磁性部とが各々略等間隔で複数配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記弱磁性部は軟磁性体に溝又は中空を形成することにより前記強磁性部より磁性を弱くしてあることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に配置された前記強磁性部は前記第1可動子及び第2可動子を介して対向するよう構成してあることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1磁性部及び第2磁性部は移動可能であり、前記第1磁性部及び第2磁性部の強磁性部が対向したまま前記特定の方向に移動するよう構成してあることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1可動子又は第2可動子は固定可能にしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1可動子及び第2可動子は円筒形であり、前記第1可動子及び第2可動子の一面には、円周方向に沿って複数の前記磁極対が設けてあり、前記第1磁性部及び第2磁性部は、円周方向に沿って前記複数の強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の円周方向となるよう構成してあることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1可動子及び第2可動子は円板形であり、前記第1可動子及び第2可動子の一面には、各々放射状に複数の前記磁極対が設けてあり、前記第1磁性部及び第2磁性部は、放射状に複数の前記強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の円周方向となるよう構成してあることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1可動子及び第2可動子は移動する方向を同じくする板状であり、前記第1可動子及び第2可動子は、前記第1可動子及び第2可動子の移動する方向に沿って複数の前記磁極対が設けてあり、前記第1磁性部及び第2磁性部は、前記第1可動子及び第2可動子の移動する方向に沿って複数の前記強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の移動する方向であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1可動子及び第2可動子は円筒形であり、前記第1可動子及び第2可動子は、前記第1可動子及び第2可動子の中心軸方向に沿って複数の前記磁極対が設けてあり、前記第1磁性部及び第2磁性部は、前記第1可動子及び第2可動子の中心軸方向に沿った複数の前記強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の中心軸方向であることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に配置された前記強磁性部の数は、前記第1可動子及び第2可動子の磁極対の数の和若しくは差であることを特徴とする
【0021】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に配置された前記強磁性部の所定の単位長さあたりの数は、該所定の単位長さあたりにおける前記第1可動子及び第2可動子の磁極対の数の和若しくは差であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る磁気ギア装置によれば、2つの可動子と、2つの可動子の外部に設けられた2つの磁性部とが各々分離されており、2つの磁性部は可動子と対向する面に軟磁性体からなる強磁性部と軟磁性体より弱い磁性を示す弱磁性部とが複数配置されているので、故障を防止し、2つの可動子を効率良く移動させることができる。
【0023】
なお、本発明において、強磁性部とは、軟磁性体が磁石に接近しており、磁石と軟磁性体の磁気抵抗が低くなるようにした部分であり、一方、弱磁性部とは、凹部を形成し、又は空洞やスリットを設けることで、前記強磁性部より相対的に磁気抵抗が高くなるようにした部分である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施の形態に係る磁気ギア装置の模式的組立図である。
【図2】第1の実施の形態に係る磁気ギア装置の模式的断面図である。
【図3】磁気ギア装置の磁束の流れについての説明図である。
【図4】外側磁性体コラムの内周面について示した模式図である。
【図5】外側磁性体コラムの内周面について示した模式図である。
【図6】外側磁性体コラムの内周面について示した模式図である。
【図7】外側磁性体コラムの内周面について示した模式図である。
【図8】第2の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す模式的組立図である。
【図9】第3の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す模式的組立図である。
【図10】第4の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す模式的組立図である。
【図11】第4の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す長手方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1の実施の形態
以下、本実施の形態に係る磁気ギア装置について説明する。本実施の形態に係る磁気ギア装置は回転円筒型である。図1及び図2は第1の実施の形態に係る磁気ギア装置の模式的組立図及び模式的断面図である。
【0026】
本実施の形態に係る磁気ギア装置は、円周方向に沿ってN極の磁石及びS極の磁石1a及び1bからなる磁極対が6個配置された円筒形の可動子である内側ロータ1を備える。これらの磁石は径方向に着磁されており、内周面及び外周面で互いに磁極が異なる。即ち磁石1aを構成する部分は、外周面側がN極に内周面側がS極に着磁されており、磁石1bは外周面側がS極に内周面側がN極に着磁されている。
【0027】
内側ロータ1の外周には、円筒形で内部の空洞に内側ロータ1が間隙を有して嵌る可動子である外側ロータ2が設けられている。外側ロータ2は厚さ方向に着磁され、内周面及び外周面で互いに磁極が異なる磁石2a及び2bの磁極対が円周方向に沿って14個配置されている。
【0028】
次に、外側ロータ2の外周には、同じく円筒形で内部の空洞に外側ロータ2が間隙を有して嵌るよう構成された外側磁性体コラム3が設けられている。外側磁性体コラム3は内側ロータ1及び外側ロータ2が回転しているか否かによらず、回転しないように固定されている。外側磁性体コラム3はケイ素鋼板製であり、20個の凸部3a及び凹部3bが略等間隔で円周方向に設けられている。
【0029】
内側ロータ1の内周には、円柱形で内側ロータ1の内部に間隙を有して嵌るよう構成された内側磁性体コラム4が設けられている。内側磁性体コラム4も外側磁性体コラム3と同様にケイ素鋼板製であり、外周面に20個の凸部4a及び断面略コの字型の溝が形成された凹部4bが各々略等間隔で円周方向に設けられている。内側磁性体コラム4も外側磁性体コラム3と同様に、回転しないように固定されている。
【0030】
外側ロータ2が回転した場合、内側ロータ1の磁石1a、1b及び外側ロータ2の磁石2a、2bの磁気的相互作用により、内側ロータ1が回転する。この場合、外側ロータ2よりも磁極対の少ない内側ロータ1は、外側ロータ2よりも高い回転数で、外側ロータ2の回転方向と逆方向に回転する。
【0031】
内側ロータ1及び外側ロータ2のギア比は、内側ロータ1及び外側ロータ2各々が備える磁極対の個数によって定まる。本実施の形態に係る内側ロータ1は磁極対が6個であり、外側ロータ2は磁極対が14個であるのでギア比は3/7である。従って外側ロータ2が時計回りに1回転すると、内側ロータ1は反時計回りに7/3回転する。
【0032】
また、内側磁性体コラム4と外側磁性体コラム3の各々の凸部3a、4a及び凹部3b、4bは内側ロータ1及び外側ロータ2を挟んで対向するように配置されている。図3は磁気ギア装置の磁束の流れについての説明図である。内側ロータ1及び外側ロータ2の磁極により、磁束が発生する。この磁束は、内側ロータ1の一の磁石1a、外側ロータ2の一の磁石2a、外側磁性体コラム3の一の凸部3a、外側磁性体コラム3の他の凸部3a、外側ロータ2の他の磁石2b、内側ロータ1の他の磁石1b、内側磁性体コラム4の一の凸部4a、内側磁性体コラム4の他の凸部4aを経て内側ロータ1の一の磁石1aに戻り、磁路が形成される。
【0033】
ここで、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4における強磁性部である凸部3a、4aと弱磁性部である凹部3b、4bとの磁気抵抗の差は大きいほど望ましい。磁気抵抗が大きいと磁束は強磁性部を選択的に通過するので、内側ロータ1および外側ロータ2の磁極から発せられた磁束を有効に利用でき極めて伝達効率の良い磁気ギアを構成することができる。
【0034】
内側ロータ1と外側ロータ2とを挟むように外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の凸部同士、凹部同士を対向させると、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の強磁性部と弱磁性部の磁気抵抗差をより大きくすることができる。
【0035】
外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4は軟磁性体であるケイ素鋼板で構成されているので、磁極対と距離が近い凸部3a及び4aはポールピースとしての機能を果たし、凸部3a及び4aに磁束が集中する。この際、磁路は他の磁路の影響をなるべく受けないことが望ましい。従って内側磁性体コラム4の凸部4aと外側磁性体コラム3の凸部3aとが対向するように構成する。
【0036】
続いて、外側磁性体コラム3の内周面及び内側磁性体コラム4の外周面における凸部3a、4a及び凹部3b、4bの個数を20個とする理由について説明する。
【0037】
内側ロータ1及び外側ロータ2が回転すると、回転に伴って交番磁界が径方向に発生する。内側ロータ1の磁極対がPh個、外側ロータ2の磁極対がPl個、ポールピースの個数がNs個とすると、交番磁界は主にPh次、(Ns−Ph)次及び(Ns+Ph)次成分が存在することが公知になっている(非特許文献2)。
【0038】
これら3つの高調波成分を含む交番磁界に同期する場合が、内側ロータ1及び外側ロータ2間の伝達トルクが最大になる場合である。その場合とは、例えば内側磁性体コラム4の外周面の凸部4a及び凹部4bの個数を(Pl+Ph)又は(Pl―Ph)とした場合である。従って、本実施の形態では、内側ロータ1及び外側ロータ2間の伝達トルクを最大にするために、外側磁性体コラム3の内周面の凸部3a及び凹部3b並びに内側磁性体コラム4の外周面の凸部4a及び凹部4bの個数を、内側ロータ1及び外側ロータ2各々が有する磁極対の和である20個とする。なお、凸部3a、4a及び凹部3b、4bの個数は、内側ロータ1及び外側ロータ2各々が有する磁極対の差である8個としてもよい。
【0039】
なお、磁力が大きく減衰しないために、内側磁性体コラム4と内側ロータ1との間隙、内側ロータ1と外側ロータ2との間隙及び外側ロータ2と外側磁性体コラム3との間隙は、十分小さくなるよう構成されている。
【0040】
本実施の形態では、磁極対を径方向に着磁された2つの磁石で構成したが、この構成に限定されない。1つの磁石を円周に沿ってN極、S極の順で径方向に着磁し、1つの磁極対としてもよい。また公知のラジアル異方性配向を有するリング磁石を径方向にN極及びS極で着磁しても良い。
【0041】
本実施の形態に係る磁気ギア装置は、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4を回転させることによって、内側ロータ1に対する外側ロータ2の相対的な回転速度を変更するようにしてもよい。外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4は、互いの凸部である3a及び4aが対向し、凹部である3b及び4bが対向するよう、同じ方向に同じ数の回転をする。例えば内側ロータ1が時計回りに1回転する間に、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4を共に時計回りに1/3回転させる場合、内側ロータ1は外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4との相対的な関係では2/3回転しかしていない。従って外側ロータ2は反時計回りに7/3×2/3=14/9回転する。
【0042】
このように外側ロータ2の回転速度を調節することにより、内側ロータ1に対する外側ロータ2の相対的な回転速度を変更することができる。
【0043】
また、外側ロータ2を固定し、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の回転に伴って内側ロータ1が回転してもよい。この場合、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4が時計回りに1回転した場合、内側ロータ1が時計回りに1+7/3=10/3回転する。
【0044】
内側ロータ1を固定し、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の回転に伴って外側ロータ2が回転してもよい。この場合、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4が時計回りに10/3回転した場合、外側ロータ2が、時計回りに10/3−1=7/3回転する。
【0045】
本実施の形態に係る外側磁性体コラム3の凸部3a及び凹部3bは前述した構成に限らない。図4から図7は外側磁性体コラム3の内周面について示した模式図である。例えば凹3b部の溝は断面が略コの字型に限らず図4Aに示すようにV字型の溝が形成されていてもよく、図4Bに示すようにU字型の溝が形成されていてもよい。
【0046】
図5Cに示すように、外側磁性体コラム3の内周面の形状は凹部3bをなくし、内部に略等間隔に中空部3cを設けてもよい。中空部3cは図5Dに示すように、径方向に2重に設けてもよく、3重以上であってもよい。中空部3cを2重以上に設けた場合は、磁束は2つの中空部3cの間を流れるので、磁束が外側磁性体コラム3内で広がるのを抑えることができる。
【0047】
さらに、図6Eに示すように凹部3bを備える外側磁性体コラム3の径方向にさらに中空部3cを設けるように構成してもよい。
【0048】
このように、外側磁性体コラム3の内周面には、凸部3aに限らず軟磁性体で構成された強磁性部と、凹部3bに限らず軟磁性体に溝又は中空を設けることにより軟磁性体の磁性よりも弱い弱磁性部とが配置されていればよい。強磁性の部分と弱磁性の部分とは幅が異なっていてもよく、また、図6Fに示すように、弱磁性の部分は溝又は中空部を非磁性体3dで埋めてもよい。
【0049】
その他、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の表面に溝を設け、その内部に非磁性体からなる非磁性層3eを設けてもよい。非磁性層3eの形状は図7Gに示すように平坦であってもよく、図7Hに示すように凹凸があってもよい。
【0050】
内側磁性体コラム4の外周面も図4から図7に示すような外側磁性体コラム3の内周面と同様な構成としてもよい。
【0051】
外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の材質は軟磁性材であればよく、ケイ素鋼板に限らず、鉄、パーメンダー又はアモルファスメタル等であってもよい。
【0052】
磁気ギアの磁路を形成するためには、2つの回転子の内側及び外側にヨークを備える必要がある。しかし、本実施の形態に係る磁気ギア装置によれば、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4がヨークの役割を果たすので、さらにヨークを設ける必要が無い。従って内側ロータ1及び外側ロータ2の質量を軽くし、回転モーメントを小さくすることができ、小さい力で回転を行うことができる。
【0053】
また、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4は、各々外側ロータ2の外部及び内側ロータ1の内部に設けられているので、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の厚さは凹部3b、4bであっても、強度に問題の無い程度まで十分厚くすることができる。従って本実施の形態に係る磁気ギア装置によれば、磁性体コラムの破損を起因とした故障を防止することができる。
【0054】
さらに、本実施の形態に係る磁気ギア装置によれば、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の凸部3a及び4aが対向し、凹部3b及び4bが対向しているので、磁束の広がりを抑えることができる。凸部3a及び4a、並びに凹部3b及び4bの各々の個数が内側ロータ1と外側ロータ2との磁極対の和若しくは差である場合には、トルクの伝達効率をさらに向上させることができる。
【0055】
第2の実施の形態
第2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る磁気ギア装置は円板回転型の磁気ギア装置である。
【0056】
図8は第2の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す模式的組立図である。本実施の形態に係る磁気ギア装置は、N極及びS極の磁石5a、5bからなる磁極対が放射状に6個配置された円板形の下側ロータ5を備える。磁石5a、5bからなる磁極対は厚さ方向に着磁されており、同一面上で磁極が異なる。即ち磁石5aを構成する部分は上面側がN極に下面側がS極に着磁されており、磁石5bを構成する部分は上面側がS極に下面側がN極に着磁されている。
【0057】
下側ロータ5の上方には、円板形で下側ロータ5に対して同軸上に間隙を有して配された上側ロータ6が設けられている。上側ロータ6は厚さ方向に着磁された磁石6a、6bからなる磁極対が放射状に14個配置されている。
【0058】
上側ロータ6の上方には、同じく円板形で下側ロータ5に対して同軸上に間隙を有して配された上側磁性体コラム7が設けられている。上側磁性体コラム7は上側ロータ6及び下側ロータ5が回転しているか否かによらず、回転しないように固定されている。上側磁性体コラム7は20個の凸部7a及び凹部7bが略等間隔で放射状に設けられている。
【0059】
下側ロータ5の下方には、同じく円板形で下側ロータ5に対して同軸上に間隙を有して配された下側磁性体コラム8が設けられている。
【0060】
下側磁性体コラム8も回転しないように固定されており、磁極対の和である20個の凸部8a及び凹部8bが略等間隔で放射状に設けられている。また、上側磁性体コラム7及び下側磁性体コラム8の各々の凸部7a及び8aが対向し、凹部7b及び8bが対向するように配置されている。
【0061】
上側ロータ6が回転した場合、下側ロータ5の磁石5a、5b及び上側ロータ6の磁石6a、6bの磁気的相互作用により、下側ロータ5が上側ロータ6と逆方向に回転する。
【0062】
なお、凸部7a、8a及び凹部7b、8bの個数は、下側ロータ5及び上側ロータ6各々が有する磁極対の差である8個としてもよい。
【0063】
第3の実施の形態
第3の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る磁気ギア装置は平板リニア型の磁気ギア装置である。
【0064】
図9は第3の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す模式的組立図である。図9では平板リニア型の磁気ギア装置の一部を示している。
【0065】
本実施の形態に係る磁気ギア装置は、N極及びS極の磁石9a、9bからなる磁極対が長手方向に単位長さあたり6個配置された、矩形板形の下側プレート9を備える。磁石9a、9bからなる磁極対は厚さ方向に着磁されており、同一面上で磁極が異なる。即ち磁石9aを構成する部分は上面側がN極に下面側がS極に着磁されており、磁石9aを構成する部分は上面側がS極に下面側がN極に着磁されている。
【0066】
下側プレート9の上方には、矩形板形で下側プレート9に対して長手方向を同じくして略平行に延び、間隙を有して配された上側プレート10が設けられている。上側プレート10は厚さ方向に着磁されたN極の磁石及びS極の磁石からなる磁極対が単位長さあたり14個配置されている。
【0067】
上側プレート10の上方には、同じく矩形板形で下側プレート9に対して略平行に延び、間隙を有して配された上側磁性体コラム11が設けられている。上側磁性体コラム11は下側プレート9及び上側プレート10が移動しているか否かによらず、移動しないように固定されている。上側磁性体コラム11は単位長さあたり20個の凸部11a及び凹部11bが略等間隔で長手方向に設けられている。
【0068】
下側プレート9の下方には、同じく矩形板形で下側プレート9に対して略平行に延び、間隙を有して配された下側磁性体コラム12が設けられている。
【0069】
下側磁性体コラム12も移動しないように固定されており、下側プレート9及び上側プレート10の単位長さあたりの磁極対の和である、単位長さあたり20個の凸部12a及び凹部12bが略等間隔で長手方向に設けられている。また、下側磁性体コラム12及び上側磁性体コラム11の各々の凸部12a及び11aが対向し、凹部12b及び11bが対向するように配置されている。なお、凸部11a、12a及び凹部11b、12bの単位長さあたりの個数は、下側プレート9及び上側プレート10の各々が有する磁極対の差である8個としてもよい。
【0070】
上側プレート10が長手方向に移動した場合、下側プレート9の磁石9a、9b及び上側プレート10の磁石10a、10bの磁気的相互作用により、下側プレート9が長手方向に移動する。なお、本実施の形態における下側プレート9、上側プレート10、上側磁性体コラム11及び下側磁性体コラム12の形状は矩形に限らず、その場合、前述の長手方向とは下側プレート9、上側プレート10が移動する方向を指す。
【0071】
第4の実施の形態
第4の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る磁気ギア装置は円筒リニア型の磁気ギア装置である。
【0072】
図10及び図11は第4の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す模式的組立図及び長手方向の断面図である。図10及び図11は、円筒リニア型の磁気ギア装置の単位長さを示している。
【0073】
本実施の形態に係る磁気ギア装置は、N極及びS極の磁石13a、13bからなる磁極対が、中心軸方向に単位長さあたり6個配置された円筒形の内側シリンダ13を備える。磁石13a、13bからなる磁極対は厚さ方向に着磁されており、同一面上で磁極が異なる。即ち磁石13aを構成する部分は外面側がN極に内面側がS極に着磁されており、磁石13bを構成する部分は、外面側がS極に内面側がN極に着磁されている。
【0074】
内側シリンダ13の外方には、円筒形で内側シリンダ13に対して略同軸に延び、間隙を有して配された外側シリンダ14が設けられている。外側シリンダ14は厚さ方向に着磁されたN極の磁石及びS極の磁石からなる磁極対が円筒の中心軸方向に沿って単位長さあたり14個配置されている。
【0075】
外側シリンダ14の外方には、同じく円筒形で内側シリンダ13に対して略同軸に延び、間隙を有して配された外側磁性体コラム15が設けられている。外側磁性体コラム15は内側シリンダ13及び外側シリンダ14が移動しているか否かによらず、移動しないように固定されている。外側磁性体コラム15に内側シリンダ13及び外側シリンダ14の単位長さあたりの磁極対数の和である単位長さあたり20個の凸部15a及び凹部15bが略等間隔で円筒の中心軸に沿って設けられている。
【0076】
内側シリンダ13の内方には、同じく円筒形で内側シリンダ13に対して略同軸に間隙を有して配された内側磁性体コラム16が設けられている。
【0077】
内側磁性体コラム16も移動しないように固定されており、内側シリンダおよび外側シリンダの単位長さあたりの磁極対の和である単位長さあたり20個の凸部16a及び凹部16bが略等間隔で長手方向に設けられている。外側磁性体コラム15及び内側磁性体コラム16の各々の凸部15a及び16aは対向し、凹部15b及び16bも対向するように配置されている。なお、凸部15a、16a及び凹部15b、16bの単位長さあたりの個数は、内側シリンダ13及び外側シリンダ14の各々が有する磁極対の差である8個としてもよい。
【0078】
外側シリンダ14が移動した場合、内側シリンダ13の磁石13a、13b及び外側シリンダ14の磁石14a、14bの磁気的相互作用により、内側シリンダ13が円筒の中心軸に沿って移動する。
【0079】
なお、本発明の磁気ギア装置に使用する磁石の材質は特に限定されない。高い伝達トルクを得るためにはNd−Fe−B系の焼結磁石を用いるのが望ましく、渦電流を抑制するために樹脂成形磁石を用いてもよい。なお、第1可動子と第2可動子との磁石材質は異なってもよい。
【0080】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 内側ロータ
2 外側ロータ
3 外側磁性体コラム
4 内側磁性体コラム
5 下側ロータ
6 上側ロータ
7 上側磁性体コラム
8 下側磁性体コラム
9 下側プレート
10 上側プレート
11 上側磁性体コラム
12 下側磁性体コラム
13 内側シリンダ
14 外側シリンダ
15 外側磁性体コラム
16 内側磁性体コラム
1a、1b、2a、2b、5a、5b、6a、6b、9a、9b、10a、10b、13a、13b、14a、14b 磁石
3a、4a、7a、8a、11a、12a、15a、16a 凸部
3b、4b、7b、8b、11b、12b、15b、16b 凹部
3c 中空部
3d 非磁性体
3e 非磁性層
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの可動子を2つのヨークの間に設けた磁気ギア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
摩耗が無く、動作時に騒音が少ないギア装置として磁気ギア装置がある。回転円筒型の磁気ギア装置は、外側ロータ及び外側ロータの円筒内に設けられた内側ロータを備え、外側ロータ及び内側ロータは、内側ロータの外周面及び外側ロータの内周面の各々の円周方向に、N極及びS極を一対とした磁極対が略等間隔で配置してある。
【0003】
このような磁気ギア装置には、内側ロータ及び外側ロータの磁極対により生じる磁力を軟磁性体からなる特定の箇所に集中させることによって、ロータ間の伝達トルクを大きくする、又はロータの回転方向を変えることを目的とした中間ヨークが外側ロータと内側ロータとの間に設けられることがある(非特許文献1及び非特許文献2)。
【0004】
外側ロータが円周方向に回転した場合、外側ロータ及び内側ロータの磁極対間の磁気的相互作用により、円周方向に内側ロータが回転する。
【0005】
内部及び外部の永久磁石の間に凹凸を備える鉄製の中間ヨークが設けられている磁気駆動装置が、特許文献1に記載されている。ここで、磁気駆動装置の性能を高めるためには、ヨークは可能な限り磁石から発せられた磁束を有効に活用することが望ましい。従って、凸部はできる限り永久磁石に近づけ、凹部はできる限り軟磁性体の厚さが薄くなるようにし凹部を通過する磁束を抑える構成とする。
【0006】
一方、ヨークは内部及び外部の永久磁石の内側又は外側に備える構成とすることもできる。特許文献2には軟磁性体からなり、外側の永久磁石のさらに外部に外側の永久磁石と対向する面に複数の凹部及び凸部を備えるヨークが設けられ、内部の永久磁石、軟磁性体のヨーク及びシャフトが一体となっている磁気駆動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−264838号公報
【特許文献2】特開平10−191621号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K.Atallah、「Design,analysis and realisation of a high−performance magnetic gear」、IEE Proceedings−Electric Power Applications、英国、2004年3月、151巻、2号、135−143項
【非特許文献2】池田哲也・中村健二・一ノ倉理、「永久磁石式磁気ギアの効率向上に関する一考察」、磁気学会論文誌、2009年、33巻、2号、130−134項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に係る磁気駆動装置は凹部における中間ヨークを薄くすると中間ヨークの強度が落ち、故障の原因となるという問題がある。また、特許文献2に係る磁気駆動装置は、内部の永久磁石、軟磁性体及びシャフトが一体となって回転するので、磁石部分とは異なる部分まで回転し、回転部分の質量が増し、回転モーメントが大きくなるために急速な加減速が難しいという問題がある。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、故障を防止し、磁石からなる可動子の移動に要する力を軽減させる磁気ギア装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る磁気ギア装置は、特定の方向に沿って磁極対が各々略等間隔で複数配置されており、間隙を有して対向する第1可動子と第2可動子とを備える磁気ギア装置において、前記第1可動子と間隙を有して対向し、強磁性部が前記第1可動子と対向する一面に配置された第1磁性部及び前記第2可動子と間隙を有して対向し、前記強磁性部が前記第2可動子と対向する一面に配置された第2磁性部を備え、前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に、強磁性部と該強磁性部より磁性が弱い弱磁性部とが各々略等間隔で複数配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記弱磁性部は軟磁性体に溝又は中空を形成することにより前記強磁性部より磁性を弱くしてあることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に配置された前記強磁性部は前記第1可動子及び第2可動子を介して対向するよう構成してあることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1磁性部及び第2磁性部は移動可能であり、前記第1磁性部及び第2磁性部の強磁性部が対向したまま前記特定の方向に移動するよう構成してあることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1可動子又は第2可動子は固定可能にしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1可動子及び第2可動子は円筒形であり、前記第1可動子及び第2可動子の一面には、円周方向に沿って複数の前記磁極対が設けてあり、前記第1磁性部及び第2磁性部は、円周方向に沿って前記複数の強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の円周方向となるよう構成してあることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1可動子及び第2可動子は円板形であり、前記第1可動子及び第2可動子の一面には、各々放射状に複数の前記磁極対が設けてあり、前記第1磁性部及び第2磁性部は、放射状に複数の前記強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の円周方向となるよう構成してあることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1可動子及び第2可動子は移動する方向を同じくする板状であり、前記第1可動子及び第2可動子は、前記第1可動子及び第2可動子の移動する方向に沿って複数の前記磁極対が設けてあり、前記第1磁性部及び第2磁性部は、前記第1可動子及び第2可動子の移動する方向に沿って複数の前記強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の移動する方向であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1可動子及び第2可動子は円筒形であり、前記第1可動子及び第2可動子は、前記第1可動子及び第2可動子の中心軸方向に沿って複数の前記磁極対が設けてあり、前記第1磁性部及び第2磁性部は、前記第1可動子及び第2可動子の中心軸方向に沿った複数の前記強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の中心軸方向であることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に配置された前記強磁性部の数は、前記第1可動子及び第2可動子の磁極対の数の和若しくは差であることを特徴とする
【0021】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に配置された前記強磁性部の所定の単位長さあたりの数は、該所定の単位長さあたりにおける前記第1可動子及び第2可動子の磁極対の数の和若しくは差であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る磁気ギア装置によれば、2つの可動子と、2つの可動子の外部に設けられた2つの磁性部とが各々分離されており、2つの磁性部は可動子と対向する面に軟磁性体からなる強磁性部と軟磁性体より弱い磁性を示す弱磁性部とが複数配置されているので、故障を防止し、2つの可動子を効率良く移動させることができる。
【0023】
なお、本発明において、強磁性部とは、軟磁性体が磁石に接近しており、磁石と軟磁性体の磁気抵抗が低くなるようにした部分であり、一方、弱磁性部とは、凹部を形成し、又は空洞やスリットを設けることで、前記強磁性部より相対的に磁気抵抗が高くなるようにした部分である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施の形態に係る磁気ギア装置の模式的組立図である。
【図2】第1の実施の形態に係る磁気ギア装置の模式的断面図である。
【図3】磁気ギア装置の磁束の流れについての説明図である。
【図4】外側磁性体コラムの内周面について示した模式図である。
【図5】外側磁性体コラムの内周面について示した模式図である。
【図6】外側磁性体コラムの内周面について示した模式図である。
【図7】外側磁性体コラムの内周面について示した模式図である。
【図8】第2の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す模式的組立図である。
【図9】第3の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す模式的組立図である。
【図10】第4の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す模式的組立図である。
【図11】第4の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す長手方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1の実施の形態
以下、本実施の形態に係る磁気ギア装置について説明する。本実施の形態に係る磁気ギア装置は回転円筒型である。図1及び図2は第1の実施の形態に係る磁気ギア装置の模式的組立図及び模式的断面図である。
【0026】
本実施の形態に係る磁気ギア装置は、円周方向に沿ってN極の磁石及びS極の磁石1a及び1bからなる磁極対が6個配置された円筒形の可動子である内側ロータ1を備える。これらの磁石は径方向に着磁されており、内周面及び外周面で互いに磁極が異なる。即ち磁石1aを構成する部分は、外周面側がN極に内周面側がS極に着磁されており、磁石1bは外周面側がS極に内周面側がN極に着磁されている。
【0027】
内側ロータ1の外周には、円筒形で内部の空洞に内側ロータ1が間隙を有して嵌る可動子である外側ロータ2が設けられている。外側ロータ2は厚さ方向に着磁され、内周面及び外周面で互いに磁極が異なる磁石2a及び2bの磁極対が円周方向に沿って14個配置されている。
【0028】
次に、外側ロータ2の外周には、同じく円筒形で内部の空洞に外側ロータ2が間隙を有して嵌るよう構成された外側磁性体コラム3が設けられている。外側磁性体コラム3は内側ロータ1及び外側ロータ2が回転しているか否かによらず、回転しないように固定されている。外側磁性体コラム3はケイ素鋼板製であり、20個の凸部3a及び凹部3bが略等間隔で円周方向に設けられている。
【0029】
内側ロータ1の内周には、円柱形で内側ロータ1の内部に間隙を有して嵌るよう構成された内側磁性体コラム4が設けられている。内側磁性体コラム4も外側磁性体コラム3と同様にケイ素鋼板製であり、外周面に20個の凸部4a及び断面略コの字型の溝が形成された凹部4bが各々略等間隔で円周方向に設けられている。内側磁性体コラム4も外側磁性体コラム3と同様に、回転しないように固定されている。
【0030】
外側ロータ2が回転した場合、内側ロータ1の磁石1a、1b及び外側ロータ2の磁石2a、2bの磁気的相互作用により、内側ロータ1が回転する。この場合、外側ロータ2よりも磁極対の少ない内側ロータ1は、外側ロータ2よりも高い回転数で、外側ロータ2の回転方向と逆方向に回転する。
【0031】
内側ロータ1及び外側ロータ2のギア比は、内側ロータ1及び外側ロータ2各々が備える磁極対の個数によって定まる。本実施の形態に係る内側ロータ1は磁極対が6個であり、外側ロータ2は磁極対が14個であるのでギア比は3/7である。従って外側ロータ2が時計回りに1回転すると、内側ロータ1は反時計回りに7/3回転する。
【0032】
また、内側磁性体コラム4と外側磁性体コラム3の各々の凸部3a、4a及び凹部3b、4bは内側ロータ1及び外側ロータ2を挟んで対向するように配置されている。図3は磁気ギア装置の磁束の流れについての説明図である。内側ロータ1及び外側ロータ2の磁極により、磁束が発生する。この磁束は、内側ロータ1の一の磁石1a、外側ロータ2の一の磁石2a、外側磁性体コラム3の一の凸部3a、外側磁性体コラム3の他の凸部3a、外側ロータ2の他の磁石2b、内側ロータ1の他の磁石1b、内側磁性体コラム4の一の凸部4a、内側磁性体コラム4の他の凸部4aを経て内側ロータ1の一の磁石1aに戻り、磁路が形成される。
【0033】
ここで、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4における強磁性部である凸部3a、4aと弱磁性部である凹部3b、4bとの磁気抵抗の差は大きいほど望ましい。磁気抵抗が大きいと磁束は強磁性部を選択的に通過するので、内側ロータ1および外側ロータ2の磁極から発せられた磁束を有効に利用でき極めて伝達効率の良い磁気ギアを構成することができる。
【0034】
内側ロータ1と外側ロータ2とを挟むように外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の凸部同士、凹部同士を対向させると、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の強磁性部と弱磁性部の磁気抵抗差をより大きくすることができる。
【0035】
外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4は軟磁性体であるケイ素鋼板で構成されているので、磁極対と距離が近い凸部3a及び4aはポールピースとしての機能を果たし、凸部3a及び4aに磁束が集中する。この際、磁路は他の磁路の影響をなるべく受けないことが望ましい。従って内側磁性体コラム4の凸部4aと外側磁性体コラム3の凸部3aとが対向するように構成する。
【0036】
続いて、外側磁性体コラム3の内周面及び内側磁性体コラム4の外周面における凸部3a、4a及び凹部3b、4bの個数を20個とする理由について説明する。
【0037】
内側ロータ1及び外側ロータ2が回転すると、回転に伴って交番磁界が径方向に発生する。内側ロータ1の磁極対がPh個、外側ロータ2の磁極対がPl個、ポールピースの個数がNs個とすると、交番磁界は主にPh次、(Ns−Ph)次及び(Ns+Ph)次成分が存在することが公知になっている(非特許文献2)。
【0038】
これら3つの高調波成分を含む交番磁界に同期する場合が、内側ロータ1及び外側ロータ2間の伝達トルクが最大になる場合である。その場合とは、例えば内側磁性体コラム4の外周面の凸部4a及び凹部4bの個数を(Pl+Ph)又は(Pl―Ph)とした場合である。従って、本実施の形態では、内側ロータ1及び外側ロータ2間の伝達トルクを最大にするために、外側磁性体コラム3の内周面の凸部3a及び凹部3b並びに内側磁性体コラム4の外周面の凸部4a及び凹部4bの個数を、内側ロータ1及び外側ロータ2各々が有する磁極対の和である20個とする。なお、凸部3a、4a及び凹部3b、4bの個数は、内側ロータ1及び外側ロータ2各々が有する磁極対の差である8個としてもよい。
【0039】
なお、磁力が大きく減衰しないために、内側磁性体コラム4と内側ロータ1との間隙、内側ロータ1と外側ロータ2との間隙及び外側ロータ2と外側磁性体コラム3との間隙は、十分小さくなるよう構成されている。
【0040】
本実施の形態では、磁極対を径方向に着磁された2つの磁石で構成したが、この構成に限定されない。1つの磁石を円周に沿ってN極、S極の順で径方向に着磁し、1つの磁極対としてもよい。また公知のラジアル異方性配向を有するリング磁石を径方向にN極及びS極で着磁しても良い。
【0041】
本実施の形態に係る磁気ギア装置は、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4を回転させることによって、内側ロータ1に対する外側ロータ2の相対的な回転速度を変更するようにしてもよい。外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4は、互いの凸部である3a及び4aが対向し、凹部である3b及び4bが対向するよう、同じ方向に同じ数の回転をする。例えば内側ロータ1が時計回りに1回転する間に、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4を共に時計回りに1/3回転させる場合、内側ロータ1は外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4との相対的な関係では2/3回転しかしていない。従って外側ロータ2は反時計回りに7/3×2/3=14/9回転する。
【0042】
このように外側ロータ2の回転速度を調節することにより、内側ロータ1に対する外側ロータ2の相対的な回転速度を変更することができる。
【0043】
また、外側ロータ2を固定し、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の回転に伴って内側ロータ1が回転してもよい。この場合、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4が時計回りに1回転した場合、内側ロータ1が時計回りに1+7/3=10/3回転する。
【0044】
内側ロータ1を固定し、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の回転に伴って外側ロータ2が回転してもよい。この場合、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4が時計回りに10/3回転した場合、外側ロータ2が、時計回りに10/3−1=7/3回転する。
【0045】
本実施の形態に係る外側磁性体コラム3の凸部3a及び凹部3bは前述した構成に限らない。図4から図7は外側磁性体コラム3の内周面について示した模式図である。例えば凹3b部の溝は断面が略コの字型に限らず図4Aに示すようにV字型の溝が形成されていてもよく、図4Bに示すようにU字型の溝が形成されていてもよい。
【0046】
図5Cに示すように、外側磁性体コラム3の内周面の形状は凹部3bをなくし、内部に略等間隔に中空部3cを設けてもよい。中空部3cは図5Dに示すように、径方向に2重に設けてもよく、3重以上であってもよい。中空部3cを2重以上に設けた場合は、磁束は2つの中空部3cの間を流れるので、磁束が外側磁性体コラム3内で広がるのを抑えることができる。
【0047】
さらに、図6Eに示すように凹部3bを備える外側磁性体コラム3の径方向にさらに中空部3cを設けるように構成してもよい。
【0048】
このように、外側磁性体コラム3の内周面には、凸部3aに限らず軟磁性体で構成された強磁性部と、凹部3bに限らず軟磁性体に溝又は中空を設けることにより軟磁性体の磁性よりも弱い弱磁性部とが配置されていればよい。強磁性の部分と弱磁性の部分とは幅が異なっていてもよく、また、図6Fに示すように、弱磁性の部分は溝又は中空部を非磁性体3dで埋めてもよい。
【0049】
その他、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の表面に溝を設け、その内部に非磁性体からなる非磁性層3eを設けてもよい。非磁性層3eの形状は図7Gに示すように平坦であってもよく、図7Hに示すように凹凸があってもよい。
【0050】
内側磁性体コラム4の外周面も図4から図7に示すような外側磁性体コラム3の内周面と同様な構成としてもよい。
【0051】
外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の材質は軟磁性材であればよく、ケイ素鋼板に限らず、鉄、パーメンダー又はアモルファスメタル等であってもよい。
【0052】
磁気ギアの磁路を形成するためには、2つの回転子の内側及び外側にヨークを備える必要がある。しかし、本実施の形態に係る磁気ギア装置によれば、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4がヨークの役割を果たすので、さらにヨークを設ける必要が無い。従って内側ロータ1及び外側ロータ2の質量を軽くし、回転モーメントを小さくすることができ、小さい力で回転を行うことができる。
【0053】
また、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4は、各々外側ロータ2の外部及び内側ロータ1の内部に設けられているので、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の厚さは凹部3b、4bであっても、強度に問題の無い程度まで十分厚くすることができる。従って本実施の形態に係る磁気ギア装置によれば、磁性体コラムの破損を起因とした故障を防止することができる。
【0054】
さらに、本実施の形態に係る磁気ギア装置によれば、外側磁性体コラム3及び内側磁性体コラム4の凸部3a及び4aが対向し、凹部3b及び4bが対向しているので、磁束の広がりを抑えることができる。凸部3a及び4a、並びに凹部3b及び4bの各々の個数が内側ロータ1と外側ロータ2との磁極対の和若しくは差である場合には、トルクの伝達効率をさらに向上させることができる。
【0055】
第2の実施の形態
第2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る磁気ギア装置は円板回転型の磁気ギア装置である。
【0056】
図8は第2の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す模式的組立図である。本実施の形態に係る磁気ギア装置は、N極及びS極の磁石5a、5bからなる磁極対が放射状に6個配置された円板形の下側ロータ5を備える。磁石5a、5bからなる磁極対は厚さ方向に着磁されており、同一面上で磁極が異なる。即ち磁石5aを構成する部分は上面側がN極に下面側がS極に着磁されており、磁石5bを構成する部分は上面側がS極に下面側がN極に着磁されている。
【0057】
下側ロータ5の上方には、円板形で下側ロータ5に対して同軸上に間隙を有して配された上側ロータ6が設けられている。上側ロータ6は厚さ方向に着磁された磁石6a、6bからなる磁極対が放射状に14個配置されている。
【0058】
上側ロータ6の上方には、同じく円板形で下側ロータ5に対して同軸上に間隙を有して配された上側磁性体コラム7が設けられている。上側磁性体コラム7は上側ロータ6及び下側ロータ5が回転しているか否かによらず、回転しないように固定されている。上側磁性体コラム7は20個の凸部7a及び凹部7bが略等間隔で放射状に設けられている。
【0059】
下側ロータ5の下方には、同じく円板形で下側ロータ5に対して同軸上に間隙を有して配された下側磁性体コラム8が設けられている。
【0060】
下側磁性体コラム8も回転しないように固定されており、磁極対の和である20個の凸部8a及び凹部8bが略等間隔で放射状に設けられている。また、上側磁性体コラム7及び下側磁性体コラム8の各々の凸部7a及び8aが対向し、凹部7b及び8bが対向するように配置されている。
【0061】
上側ロータ6が回転した場合、下側ロータ5の磁石5a、5b及び上側ロータ6の磁石6a、6bの磁気的相互作用により、下側ロータ5が上側ロータ6と逆方向に回転する。
【0062】
なお、凸部7a、8a及び凹部7b、8bの個数は、下側ロータ5及び上側ロータ6各々が有する磁極対の差である8個としてもよい。
【0063】
第3の実施の形態
第3の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る磁気ギア装置は平板リニア型の磁気ギア装置である。
【0064】
図9は第3の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す模式的組立図である。図9では平板リニア型の磁気ギア装置の一部を示している。
【0065】
本実施の形態に係る磁気ギア装置は、N極及びS極の磁石9a、9bからなる磁極対が長手方向に単位長さあたり6個配置された、矩形板形の下側プレート9を備える。磁石9a、9bからなる磁極対は厚さ方向に着磁されており、同一面上で磁極が異なる。即ち磁石9aを構成する部分は上面側がN極に下面側がS極に着磁されており、磁石9aを構成する部分は上面側がS極に下面側がN極に着磁されている。
【0066】
下側プレート9の上方には、矩形板形で下側プレート9に対して長手方向を同じくして略平行に延び、間隙を有して配された上側プレート10が設けられている。上側プレート10は厚さ方向に着磁されたN極の磁石及びS極の磁石からなる磁極対が単位長さあたり14個配置されている。
【0067】
上側プレート10の上方には、同じく矩形板形で下側プレート9に対して略平行に延び、間隙を有して配された上側磁性体コラム11が設けられている。上側磁性体コラム11は下側プレート9及び上側プレート10が移動しているか否かによらず、移動しないように固定されている。上側磁性体コラム11は単位長さあたり20個の凸部11a及び凹部11bが略等間隔で長手方向に設けられている。
【0068】
下側プレート9の下方には、同じく矩形板形で下側プレート9に対して略平行に延び、間隙を有して配された下側磁性体コラム12が設けられている。
【0069】
下側磁性体コラム12も移動しないように固定されており、下側プレート9及び上側プレート10の単位長さあたりの磁極対の和である、単位長さあたり20個の凸部12a及び凹部12bが略等間隔で長手方向に設けられている。また、下側磁性体コラム12及び上側磁性体コラム11の各々の凸部12a及び11aが対向し、凹部12b及び11bが対向するように配置されている。なお、凸部11a、12a及び凹部11b、12bの単位長さあたりの個数は、下側プレート9及び上側プレート10の各々が有する磁極対の差である8個としてもよい。
【0070】
上側プレート10が長手方向に移動した場合、下側プレート9の磁石9a、9b及び上側プレート10の磁石10a、10bの磁気的相互作用により、下側プレート9が長手方向に移動する。なお、本実施の形態における下側プレート9、上側プレート10、上側磁性体コラム11及び下側磁性体コラム12の形状は矩形に限らず、その場合、前述の長手方向とは下側プレート9、上側プレート10が移動する方向を指す。
【0071】
第4の実施の形態
第4の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る磁気ギア装置は円筒リニア型の磁気ギア装置である。
【0072】
図10及び図11は第4の実施の形態に係る磁気ギア装置を示す模式的組立図及び長手方向の断面図である。図10及び図11は、円筒リニア型の磁気ギア装置の単位長さを示している。
【0073】
本実施の形態に係る磁気ギア装置は、N極及びS極の磁石13a、13bからなる磁極対が、中心軸方向に単位長さあたり6個配置された円筒形の内側シリンダ13を備える。磁石13a、13bからなる磁極対は厚さ方向に着磁されており、同一面上で磁極が異なる。即ち磁石13aを構成する部分は外面側がN極に内面側がS極に着磁されており、磁石13bを構成する部分は、外面側がS極に内面側がN極に着磁されている。
【0074】
内側シリンダ13の外方には、円筒形で内側シリンダ13に対して略同軸に延び、間隙を有して配された外側シリンダ14が設けられている。外側シリンダ14は厚さ方向に着磁されたN極の磁石及びS極の磁石からなる磁極対が円筒の中心軸方向に沿って単位長さあたり14個配置されている。
【0075】
外側シリンダ14の外方には、同じく円筒形で内側シリンダ13に対して略同軸に延び、間隙を有して配された外側磁性体コラム15が設けられている。外側磁性体コラム15は内側シリンダ13及び外側シリンダ14が移動しているか否かによらず、移動しないように固定されている。外側磁性体コラム15に内側シリンダ13及び外側シリンダ14の単位長さあたりの磁極対数の和である単位長さあたり20個の凸部15a及び凹部15bが略等間隔で円筒の中心軸に沿って設けられている。
【0076】
内側シリンダ13の内方には、同じく円筒形で内側シリンダ13に対して略同軸に間隙を有して配された内側磁性体コラム16が設けられている。
【0077】
内側磁性体コラム16も移動しないように固定されており、内側シリンダおよび外側シリンダの単位長さあたりの磁極対の和である単位長さあたり20個の凸部16a及び凹部16bが略等間隔で長手方向に設けられている。外側磁性体コラム15及び内側磁性体コラム16の各々の凸部15a及び16aは対向し、凹部15b及び16bも対向するように配置されている。なお、凸部15a、16a及び凹部15b、16bの単位長さあたりの個数は、内側シリンダ13及び外側シリンダ14の各々が有する磁極対の差である8個としてもよい。
【0078】
外側シリンダ14が移動した場合、内側シリンダ13の磁石13a、13b及び外側シリンダ14の磁石14a、14bの磁気的相互作用により、内側シリンダ13が円筒の中心軸に沿って移動する。
【0079】
なお、本発明の磁気ギア装置に使用する磁石の材質は特に限定されない。高い伝達トルクを得るためにはNd−Fe−B系の焼結磁石を用いるのが望ましく、渦電流を抑制するために樹脂成形磁石を用いてもよい。なお、第1可動子と第2可動子との磁石材質は異なってもよい。
【0080】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 内側ロータ
2 外側ロータ
3 外側磁性体コラム
4 内側磁性体コラム
5 下側ロータ
6 上側ロータ
7 上側磁性体コラム
8 下側磁性体コラム
9 下側プレート
10 上側プレート
11 上側磁性体コラム
12 下側磁性体コラム
13 内側シリンダ
14 外側シリンダ
15 外側磁性体コラム
16 内側磁性体コラム
1a、1b、2a、2b、5a、5b、6a、6b、9a、9b、10a、10b、13a、13b、14a、14b 磁石
3a、4a、7a、8a、11a、12a、15a、16a 凸部
3b、4b、7b、8b、11b、12b、15b、16b 凹部
3c 中空部
3d 非磁性体
3e 非磁性層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の方向に沿って磁極対が各々略等間隔で複数配置されており、間隙を有して対向する第1可動子と第2可動子とを備える磁気ギア装置において、
前記第1可動子と間隙を有して対向し、強磁性部が前記第1可動子と対向する一面に配置された第1磁性部及び
前記第2可動子と間隙を有して対向し、前記強磁性部が前記第2可動子と対向する一面に配置された第2磁性部を備え、
前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に、強磁性部と該強磁性部より磁性が弱い弱磁性部とが各々略等間隔で複数配置されている
ことを特徴とする磁気ギア装置。
【請求項2】
前記弱磁性部は軟磁性体に溝又は中空を形成することにより前記強磁性部より磁性を弱くしてある
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気ギア装置。
【請求項3】
前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に配置された前記強磁性部は前記第1可動子及び第2可動子を介して対向するよう構成してある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ギア装置。
【請求項4】
前記第1磁性部及び第2磁性部は移動可能であり、前記第1磁性部及び第2磁性部の強磁性部が対向したまま前記特定の方向に移動するよう構成してある
ことを特徴とする請求項3に記載の磁気ギア装置。
【請求項5】
前記第1可動子又は第2可動子は固定可能にしてある
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の磁気ギア装置。
【請求項6】
前記第1可動子及び第2可動子は円筒形であり、
前記第1可動子及び第2可動子の一面には、円周方向に沿って複数の前記磁極対が設けてあり、
前記第1磁性部及び第2磁性部は、円周方向に沿って前記複数の強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、
前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の円周方向となるよう構成してある
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の磁気ギア装置。
【請求項7】
前記第1可動子及び第2可動子は円板形であり、
前記第1可動子及び第2可動子の一面には、各々放射状に複数の前記磁極対が設けてあり、
前記第1磁性部及び第2磁性部は、放射状に複数の前記強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、
前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の円周方向となるよう構成してある
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の磁気ギア装置。
【請求項8】
前記第1可動子及び第2可動子は移動する方向を同じくする板状であり、
前記第1可動子及び第2可動子は、前記第1可動子及び第2可動子の移動する方向に沿って複数の前記磁極対が設けてあり、
前記第1磁性部及び第2磁性部は、前記第1可動子及び第2可動子の移動する方向に沿って複数の前記強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、
前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の移動する方向である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の磁気ギア装置。
【請求項9】
前記第1可動子及び第2可動子は円筒形であり、
前記第1可動子及び第2可動子は、前記第1可動子及び第2可動子の中心軸方向に沿って複数の前記磁極対が設けてあり、
前記第1磁性部及び第2磁性部は、前記第1可動子及び第2可動子の中心軸方向に沿った複数の前記強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、
前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の中心軸方向である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の磁気ギア装置。
【請求項10】
前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に配置された前記強磁性部の数は、前記第1可動子及び第2可動子の磁極対の数の和若しくは差である
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の磁気ギア装置。
【請求項11】
前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に配置された前記強磁性部の所定の単位長さあたりの数は、該所定の単位長さあたりにおける前記第1可動子及び第2可動子の磁極対の数の和若しくは差である
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の磁気ギア装置。
【請求項1】
特定の方向に沿って磁極対が各々略等間隔で複数配置されており、間隙を有して対向する第1可動子と第2可動子とを備える磁気ギア装置において、
前記第1可動子と間隙を有して対向し、強磁性部が前記第1可動子と対向する一面に配置された第1磁性部及び
前記第2可動子と間隙を有して対向し、前記強磁性部が前記第2可動子と対向する一面に配置された第2磁性部を備え、
前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に、強磁性部と該強磁性部より磁性が弱い弱磁性部とが各々略等間隔で複数配置されている
ことを特徴とする磁気ギア装置。
【請求項2】
前記弱磁性部は軟磁性体に溝又は中空を形成することにより前記強磁性部より磁性を弱くしてある
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気ギア装置。
【請求項3】
前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に配置された前記強磁性部は前記第1可動子及び第2可動子を介して対向するよう構成してある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ギア装置。
【請求項4】
前記第1磁性部及び第2磁性部は移動可能であり、前記第1磁性部及び第2磁性部の強磁性部が対向したまま前記特定の方向に移動するよう構成してある
ことを特徴とする請求項3に記載の磁気ギア装置。
【請求項5】
前記第1可動子又は第2可動子は固定可能にしてある
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の磁気ギア装置。
【請求項6】
前記第1可動子及び第2可動子は円筒形であり、
前記第1可動子及び第2可動子の一面には、円周方向に沿って複数の前記磁極対が設けてあり、
前記第1磁性部及び第2磁性部は、円周方向に沿って前記複数の強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、
前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の円周方向となるよう構成してある
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の磁気ギア装置。
【請求項7】
前記第1可動子及び第2可動子は円板形であり、
前記第1可動子及び第2可動子の一面には、各々放射状に複数の前記磁極対が設けてあり、
前記第1磁性部及び第2磁性部は、放射状に複数の前記強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、
前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の円周方向となるよう構成してある
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の磁気ギア装置。
【請求項8】
前記第1可動子及び第2可動子は移動する方向を同じくする板状であり、
前記第1可動子及び第2可動子は、前記第1可動子及び第2可動子の移動する方向に沿って複数の前記磁極対が設けてあり、
前記第1磁性部及び第2磁性部は、前記第1可動子及び第2可動子の移動する方向に沿って複数の前記強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、
前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の移動する方向である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の磁気ギア装置。
【請求項9】
前記第1可動子及び第2可動子は円筒形であり、
前記第1可動子及び第2可動子は、前記第1可動子及び第2可動子の中心軸方向に沿って複数の前記磁極対が設けてあり、
前記第1磁性部及び第2磁性部は、前記第1可動子及び第2可動子の中心軸方向に沿った複数の前記強磁性部及び弱磁性部が設けてあり、
前記特定の方向は、前記第1可動子及び第2可動子の中心軸方向である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の磁気ギア装置。
【請求項10】
前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に配置された前記強磁性部の数は、前記第1可動子及び第2可動子の磁極対の数の和若しくは差である
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の磁気ギア装置。
【請求項11】
前記第1磁性部の一面及び第2磁性部の一面に配置された前記強磁性部の所定の単位長さあたりの数は、該所定の単位長さあたりにおける前記第1可動子及び第2可動子の磁極対の数の和若しくは差である
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の磁気ギア装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−17285(P2013−17285A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147630(P2011−147630)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
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