説明

磁気クランプ装置

【課題】 極性切換用コイルの周囲に検出コイルを配置しても、誤検知を防止できる。
【解決手段】 金型が固定される固定面2aに配置された磁気発生ユニット4が、極性切換可能な磁石6と、この磁石6の周囲に配置された極性切換用コイル8とを、有し、この極性切換用コイル8に電流を流すことによって金型が固定面2aに磁気吸着される。複数の磁気発生ユニット6の極性切換用コイル8の周囲に検出コイル16が設けられている。検出コイル16の誘起電圧が第1の閾値電圧以上のとき、出力信号として第1の出力を比較器22が発生する。異常判定回路34は、第1の出力が予め定めた時間にわたって継続したとき、異常判定信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強磁性体の固定対象物を磁気吸着して固定面にクランプする磁気クランプ装置に関し、特に、磁気吸着状態の変化を検出するものに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気クランプ装置は、例えば射出成型機やプレス成型機において金型を固定するために使用することがある。その一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の技術では、クランププレートに複数の磁気発生ユニットを設けている。磁気発生ユニットは、極性を切り換えることができる磁石としてアルニコ磁石を使用し、このアルニコ磁石の極性を切り換えるための極性切換用コイルを備えている。クランプする場合には、極性切換用コイルに一定時間所定方向の直流電流を流して、アルニコ磁石の極性を切り換える。アンクランプする場合には、極性切換用コイルに一定時間前記所定方向とは逆の方向の電流を流し、アルニコ磁石の極性を元に戻す。金型に着磁力よりも大きな衝撃力がなんらかの原因で加わると、金型が外れかかることがある。これを検出するために、極性切換用コイルの外側に検出コイルを設け、金型が外れかけたときに生じる磁束変化に基づいて検出コイルに電圧が誘起される。この検出コイルに誘起された電圧が、比較器において基準電圧と比較され、基準電圧よりも大きいときに、射出成型機やプレス成型機を停止させたり、警報を発したりするための信号を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−515080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、検出コイルを極性切換用コイルの周囲に検出コイルを配置している。これは検出コイルの設置スペースを極性切換用コイルと別に確保すると磁気クランプ装置が大型になるので、この磁気クランプの装置の大型化を避けるためと推測される。しかし、この検出コイルの配置では、金型がクランププレートから外れかかったことによる磁束変化以外にも、極性切換用コイルに生じた磁束変化も検出し、誤検知する可能性がある。例えば、極性切換用コイルに印加されている電圧の変動によって検出コイルに磁束変化が生じて、電圧が検出コイルに誘起されることがあるし、検出コイルにノイズに基づく電圧が発生したりすることがある。
【0005】
本発明は、極性切換用コイルの周囲に検出コイルを配置していても、誤検知を防止できる磁気クランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の磁気クランプ装置では、強磁性体の固定対象物、例えば金型が固定される固定面、例えばクランプ面に、少なくとも1つの磁気発生ユニットが配置されている。少なくとも1つの磁気発生ユニットは、極性切換可能な磁石と、この極性切換可能な磁石の周囲に配置され、極性切換可能な磁石の極性を切り換える極性切換用コイルとを、有している。この極性切換用コイルに電流を流すことによって前記極性切換可能な磁石の極性が切り換えられたとき、前記磁気クランプ装置では、前記固定対象物が前記固定面に磁気吸着される。前記少なくとも1つの磁気発生ユニットの前記極性切換用コイルの周囲に、磁束変化を検出する検出コイルが設けられている。複数の磁気発生ユニットを設け、これらのうち予め定めたものそれぞれに、検出コイルを設けることもできる。この場合、各検出コイルは、直列に接続することが望ましい。検出コイルに誘起された誘起電圧と、予め定めた第1の閾値電圧とを第1の比較手段が比較し、前記誘起電圧が第1の閾値電圧以上のとき、出力信号として第1の出力を発生する。第1の閾値電圧は、固定対象物が固定面から外れかかったときに検出コイルに誘起される電圧が超えると想定される電圧である。第1の出力信号が予め定めた第1の設定時間にわたって継続したとき、異常判定手段は、異常判定信号を出力する。
【0007】
このように構成された磁気クランプ装置では、極性切換用コイルに印加されている電圧が変動すると、この変動に伴い検出コイルに磁束変化が生じ、検出コイルに第1の閾値電圧以上の誘起電圧が発生し、第1の比較手段は第1の出力を発生する。しかし、この電圧変動は継続することは殆ど無く、第1の設定時間にわたって継続することはなく、検出コイルに発生した誘起電圧は消失し、第1の出力も消失する。従って、電圧変動を誤検知することはない。一方、固定面に磁気クランプされた固定対象物が外れかかったり、ずれかかったりしている場合には、検出コイルでの磁束変化は継続して生じるので、検出コイルの誘起電圧が第1の閾値電圧以上である状態は第1の設定時間にわたって継続する。従って、異常判定手段が、第1の出力が第1の設定時間にわたって継続したときには、継続して固定対象物が外れかかっていると判断でき、異常判定信号を出力する。これによって、誤検知を防止できる。
【0008】
なお、検出コイルに誘起された電圧を積分し、その積分値が予め定めた値以上になったときに、固定対象物が外れかかったり、ずれかかったりしていると判断することもできる。しかし、これでは、検出コイルに誘起されたノイズを長期間にわたって積分した結果、上記予め定めた値以上となることがあり、この場合、誤検知を生じることになる。これに対し、誘起電圧が第1の閾値電圧以上の状態が第1の設定時間継続するか判定する手法によれば、ノイズによる誤検知は生じない。
【0009】
前記誘起電圧と、第1の閾値電圧よりも大きな値の第2の閾値電圧とを比較し、前記誘起電圧が第2の閾値電圧以上のとき、出力信号として第2の出力を発生する第2の比較手段を設けることもできる。この場合、前記異常判定手段は、第2の出力が発生したとき、前記異常判定信号を出力する。
【0010】
固定対象物が固定面から急速に外れることもある。このような場合、検出コイルに生じる磁束変化は、固定対象物が固定面から外れかかっていることを継続している場合よりも大きく、瞬時に第2の閾値電圧以上となる。このような場合にも、第1の出力が発生することが第1の設定時間継続してから異常判定信号を出力していたのでは、固定対象物が外れたことの検出に時間がかかる。そこで、異常判定部は、第2の出力が発生すると、直ちに異常判定信号を出力する。これによって、瞬時に固定対象物が固定面から外れたことが判明する。
【0011】
なお、第2の出力が予め定めた第2の設定時間継続したときに、異常判定手段が異常判定信号を出力するように構成することもできる。第2の設定時間は、第1の設定時間よりも短いことが望ましい。
【0012】
このように構成することによって、例えばパルス性の大きなノイズによって第2の閾値電圧以上の誘起電圧が一時的に発生しても、これに基づく誤検知を防止できる。
【0013】
第1の出力が発生中であって、前記第1の設定時間が未経過のときでも、第2出力が発生すると、前記異常判定信号を出力するように異常判定手段を構成することもできる。このように構成すると、固定対象物が固定面から外れかかっていた状態から急激に外れても、瞬時に固定対象物が固定面から外れたことを検出することができる。
【0014】
さらに、表示手段への表示信号として前記異常判定信号を出力することもできるし、前記クランプ装置が設けられている機器への非常停止信号として前記異常判定信号を出力することもできる。
【0015】
前記誘起電圧を、第1及び第2の閾値電圧の間の値である第3の閾値電圧と比較する第3の比較手段を設け、第3の比較手段は前記誘起電圧が第3の閾値電圧以上のとき第3の出力を発生し、前記異常判定手段は、第3の出力が供給されたとき、異常判定信号を出力することもできる。このように構成すると、金型が外れかかったり、ずれかかったりしている場合よりも大きな磁束変化を生じているが、完全に外れるほどの磁束変化が生じていないことを検知することもできる。なお、第3の出力も予め定めた時間にわたって継続して出力されたとき、異常判定信号を出力するようにすることもできる。
【0016】
なお、異常判定信号は、警報装置を動作させる信号として使用することもできるし、磁気クランプ装置が設けられている装置を停止させる信号として使用することもできるし、或いは再度極性切換コイルに一定時間所定方向の電流を流す指令信号として使用することもできる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、極性切換用コイル8の近傍に検出コイルを配置して、省スペース化を図りつつ、誤検知を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の1実施形態の磁気クランプ装置の正面図である。
【図2】図1の磁気クランプ装置の部分省略拡大縦断面図である。
【図3】図1の磁気クランプ装置のブロック図である。
【図4】図1の磁気クランプ装置における検出コイルの誘起電圧と第1の閾値電圧との関係を示す波形図である。
【図5】図1の磁気クランプ装置における検出コイルの誘起電圧と第2の閾値電圧との関係を示す波形図である。
【図6】図3に示す異常判定回路が行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の1実施形態の磁気クランプ装置は、例えば射出成型機のようなマシンにおいて、強磁性体の固定対象物、例えば固定側の強磁性体の金型や可動側の強磁性体の金型を、図1に示すように、固定面形成部材、例えばクランププレート2の固定面2aに磁気吸着するものである。クランププレート2は、強磁性体、例えば鋼製の概略矩形の板状体で、プラテン(図示せず)にボルト3によって固定されている。
【0020】
このクランププレート2の固定面に、少なくとも1つ、例えば複数の磁気発生ユニット4が設けられている。この実施形態では、磁気発生ユニット4を隣接させて縦横に4個配置し、この4個のユニットの縦方向に2個隣接させ、横方向に2個隣接させて、合計8個の磁気発生ユニット4で1つのグループを構成している。このグループが4つ、固定面2aの中心を中心として点対称に配置されている。図1において符号5で示すのは、射出成型機のエジェクトピン用の穴である。
【0021】
磁気発生ユニット4は、図2に示すように、クランププレート2の固定面2a側に開口させた凹所7内に配置され、極性切換磁石、例えばアルニコ磁石6を有している。このアルニコ磁石6は矩形の平板状に形成され、その外周囲には、アルニコ磁石6を包囲するように、極性切換用コイル8が配置されている。極性切換用コイル8に一定時間だけ所定の方向に電流を流すことによって、アルニコ磁石6の極性を切り換えることができる。この極性を切り換えた状態は、極性切換用コイル8に上記とは逆の方向に電流を一定時間だけ流すまで維持される。アルニコ磁石6の上面側には、強磁性体製のブロック、例えば鋼製のブロック10が配置されている。鋼製のブロック10も矩形の平板状である。この鋼製ブロック10の外周囲に、これを包囲するように永久磁石、例えばネオジウム磁石のブロック12が鋼製のブロック10の各辺に沿って配置されている。なお、ネオジウム磁石のブロック12は、隣接する磁気発生ユニット4において共用されている。符号14で示すのはボルトで、鋼製ブロック10及びアルニコ磁石6をクランププレート2に固定するためのものである。
【0022】
この磁気クランプ装置では、固定面2aに金型が接触している状態において、各磁気発生ユニット4の極性切換用コイル8に上述したように電流を流すことによってアルニコ磁石6の極性を切り換えることができ、その結果、金型が磁気吸着されてクランプされる。また、上記とは逆の方向の電流を極性切換用コイル8に一定時間だけ流すことによって、金型をアンクランプすることができる。この磁気クランプ装置によるクランプ、アンクランプの原理は公知であるので、これ以上の説明は省略する。
【0023】
各磁気発生ユニット4のうち、予め選択された複数のものの極性切換用コイル8の外周面には、これを包囲するように検出コイル16が配置されている。このように検出コイル16を配置しているのは、省スペース化を図るためである。
【0024】
金型が固定面2a上でずれかかったり、金型が固定面2aから外れかかったりすると、アルニコ磁石6の磁束が変化する。この磁束変化に基づいて、各検出コイル16には電圧が誘起される。図3に示すように、各検出コイル16は直列に接続されている。その結果、各検出コイル16の誘起電圧は加算され、制御装置18に供給される。制御装置18内では、加算された各検出コイル16の誘起電圧は、リレー20を介して第1乃至第3の比較手段、例えば比較器22、24、26に供給される。リレー20は、金型がアンクランプの状態では開かれており、各検出コイル16の誘起電圧が比較器22、24、26に供給されないようにされている。金型がクランプされた後にリレー20が閉じられ、各検出コイル16の誘起電圧の加算値が比較器22、24、26に供給される。
【0025】
比較器22には、第1閾値電圧源28から第1の閾値電圧が供給されている。比較器22は、各検出コイル16の誘起電圧の加算値と第1の閾値電圧とを比較し、各検出コイル16の誘起電圧の加算値が第1の閾値電圧よりも小さいとき、その出力を第1の状態、例えばLレベルとし、各検出コイル16の誘起電圧の加算値が第1の閾値電圧以上のとき、その出力を第2の状態、例えばHレベルとする。第1の閾値電圧は、例えば金型が固定面2aからずれかかったときに各検出コイル16で発生する誘起電圧の加算値が超えると想定される値に設定されている。また、第1の閾値電圧は、誘起電圧が発生していない状態で通常発生すると予測されるノイズよりは大きい値にも設定されているが、突発的に発生すると予測されるノイズよりは小さい値である。
【0026】
比較器24には、第2閾値電圧源30から第2の閾値電圧が供給されている。比較器24は、各検出コイル16の誘起電圧の加算値と第2の閾値電圧とを比較し、各検出コイル16の誘起電圧の加算値が第2の閾値電圧よりも小さいとき、その出力を第1の状態、例えばLレベルとし、各検出コイル16の誘起電圧の加算値が第2の閾値電圧以上のとき、その出力を第2の状態、例えばHレベルとする。第2の閾値電圧は、例えば金型が固定面2aから外れたときに各検出コイル16で発生する誘起電圧の加算値が超えると想定される値に設定されている。第2の閾値電圧は、第1の閾値電圧よりも大きい値に設定されている。
【0027】
比較器26には、第3の閾値電圧源32から第3の閾値電圧が供給されている。比較器26は、各検出コイル16の誘起電圧の加算値と第3の閾値電圧とを比較し、各検出コイル16の誘起電圧の加算値が第3の閾値電圧よりも小さいとき、その出力を第1の状態、例えばLレベルとし、各検出コイル16の誘起電圧の加算値が第3の閾値電圧以上のとき、その出力を第2の状態、例えばHレベルとする。第3の閾値電圧は、第1の閾値電圧よりも大きく、第2の閾値電圧よりも小さい値に設定されている。
【0028】
各比較器22、24、26の出力は、異常判定手段、例えば異常判定回路34に供給される。異常判定回路34は、比較器22がHレベルの出力を発生し、すなわち図4(a)に示すように各検出コイル16の誘起電圧の加算値が第1の閾値電圧以上であって、この状態が予め定めた時間T、例えば10m秒継続すると、同図(b)に示すように異常判定信号を出力する。なお、予め定めた時間Tにわたって、比較器22がHレベルの出力を発生したとき異常判定信号を出力するように構成しているので、突発的に第1の閾値電圧を超えるノイズが発生しても、このノイズに基づいて誤検知することを防止できる。また、極性切換用コイル8に印加されている電圧が変動したことによって生じるような磁束変化を誤検知することもない。
【0029】
また、異常判定回路34は、比較器24がHレベルの出力を発生すると、すなわち、図5(a)に示すように各検出コイル16の誘起電圧の加算値が第2の閾値以上となると、同図(b)に示すように異常判定信号を直ちに出力する。これによって金型が外れるような大きな磁束変化が発生していることが検出される。
【0030】
また、異常判定回路34は、比較器26がHレベルの出力を発生したとき、すなわち、各検出コイル16の誘起電圧の加算値が第3の閾値電圧以上であって、第2の閾値電圧よりも小さいとき、異常判定信号を出力する。これによって、金型が外れかかったり、ずれかかったりしている場合よりも大きな磁束変化を生じているが、完全に外れるほどの磁束変化が生じていないことを検知することもできる。
【0031】
いずれの異常判定出力も、図2に示す異常出力表示部36に異常表示をするための信号として使用することもできるし、射出成型機を非常停止させる非常停止信号として使用することもできるし、或いは着磁コイル制御回路38に再度一定時間だけ所定方向に電流を流すように指示する信号としても使用することができる。
【0032】
制御部18は、実際にはマイクロコンピュータによって構成され、比較器22、24、26の機能もマイクロコンピュータによって実現される。また、異常判定回路34が実行する処理をフローチャートで表すと、例えば図6のようになる。なお、後述するタイマは、この処理が実行される際に、リセットされている。
【0033】
すなわち、異常判定回路34は、まず比較器22から第1出力(Hレベルの出力)があるか判断する(ステップS2)。この判断の答えがノーの場合、異常判定回路34は、後述する予め定めた時間Tを測定するためのタイマをリセットし(ステップS4)、再びステップS2を実行する。
【0034】
ステップS2の判断の答えがイエスの場合、異常判定回路34は、予め定めた時間Tを測定するためのタイマをカウントアップする(ステップS6)。次に、異常判定回路34は、比較器24からの第2の出力(Hレベルの出力)があるか判断する(ステップS8)。この判断の答えがノー場合、比較器26からの第3の出力(Hレベルの出力)があるか判断する(ステップS10)。この判断の答えがノーの場合、異常判定回路34は、上述したタイマが予め定めた時間Tを計測してタイマアップしたか判断する(ステップS12)。この判断の答えがノーの場合、異常判定回路34は、ステップS2から再び実行する。
【0035】
ステップS12の判断の答えがイエスの場合、第1の出力が予め定めた時間継続したので、金型がずれかかったり、はずれかかったりしていると判断し、異常判定回路34は、異常判定出力を出力する(ステップS14)。そして、上述したタイマをリセットし(ステップS16)、処理を終了する。
【0036】
ステップS8の判断がイエスになると、異常判定回路34は、異常判定出力を出力し(ステップS18)、マシンを停止させ、上述したタイマをリセットし(ステップS20)、処理を終了する。このように、金型がずれかかっているかはずれかかったりしているか判断している途中でも、第2の出力が発生すると、金型が外れていると判断できる。
【0037】
ステップS10の判断の答えがイエスになると、異常判定回路34は、異常判定出力を出力し(ステップS22)、上述したタイマをリセットし(ステップS24)、処理を終了する。
【0038】
上記の実施形態では、磁気クランプ装置が射出成型機において金型を磁気クランプする例を示したが、これに限ったものではなく、磁気クランプ装置は例えばプレス成型機において金型を固定面に磁気クランプするのに使用することもできるし、工作機械においてワークを固定面に磁気クランプするのに使用することもできる。また、磁気クランプ装置は、例えば自動ドア装置において、ドアを閉じた状態においてドアを手動で開けられないようにドアを固定するのに使用することもできる。この自動ドアに使用する場合、磁気発生ユニットは1台だけ使用することができる。上記の実施形態では、第2の出力が発生すると、即座に異常判定信号を出力したが、予め定めた第2の設定時間にわたって第2の出力が発生したときに異常判定信号を出力することもできる。上記の実施形態では、複数の検出コイル16の誘起電圧を加算した値を第1乃至第3の閾値電圧と比較したが、最低限度、1つの検出コイル16の誘起電圧を第1乃至第3の閾値電圧と比較することもできる。上記の実施形態では、比較器26を設けて、第3の閾値電圧以上の誘起電圧が発生する場合に異常判定信号を出力するように構成したが、場合によっては比較器26を除去することもできる。同様に、比較器24も除去することができる。上記の実施形態では、検出コイル16に発生した電圧を比較器22、24、26に供給したが、検出コイル16に発生した電圧を例えばホトカプラを介して比較器22、24、26に供給するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0039】
2a 固定面
4 磁気発生ユニット
22 比較器(第1の比較手段)
24 比較器(第2の比較手段)
34 異常判定回路(異常判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性体の固定対象物が固定される固定面に、少なくとも1つの磁気発生ユニットが配置され、前記少なくとも1つの磁気発生ユニットが、極性切換可能な磁石と、この極性切換可能な磁石の周囲に配置され、前記極性切換可能な磁石の極性を切り換える極性切換用コイルとを、有し、この極性切換用コイルに電流を流すことによって前記極性切換可能な磁石の極性が切り換えられたとき、前記固定対象物が前記固定面に磁気吸着される磁石クランプ装置であって、
前記少なくとも1つの磁気発生ユニットの前記極性切換用コイルの周囲に設けられ、磁束変化を検出する検出コイルと、
この検出コイルに誘起された誘起電圧と、第1の閾値電圧とを比較し、前記誘起電圧が第1の閾値電圧以上のとき、出力信号として第1の出力を発生する第1の比較手段と、
第1の出力が予め定めた第1の設定時間にわたって継続したとき、異常判定信号を出力する異常判定手段とを、
具備する磁気クランプ装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気クランプ装置において、
前記誘起電圧と、第1の閾値電圧よりも大きな値の第2の閾値電圧とを比較し、前記誘起電圧が第2の閾値電圧以上のとき、出力信号として第2の出力を発生する第2の比較手段を、具備し、
前記異常判定手段は、第2の出力が発生したとき、前記異常判定信号を出力する磁気クランプ装置。
【請求項3】
請求項2記載の磁気クランプ装置において、前記異常判定手段は、第2の出力が予め定めた第2の設定時間にわたって継続したとき、前記異常判定信号を出力する磁気クランプ装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の磁気クランプ装置において、第1の出力が発生中であって、前記第1の設定時間が未経過のときに、第2出力が発生すると、前記異常判定信号を出力する磁気クランプ装置。
【請求項5】
請求項2乃至4いずれか記載の磁気クランプ装置において、前記誘起電圧を、第1及び第2の閾値電圧の間の値である第3の閾値電圧と比較する第3の比較手段を設け、第3の比較手段は前記誘起電圧が第3の閾値電圧以上のとき、前記異常判定手段が、前記異常判定信号を出力する磁気クランプ装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−206860(P2011−206860A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74548(P2010−74548)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000102452)エスアールエンジニアリング株式会社 (17)
【Fターム(参考)】