説明

磁気シールド装置の設計装置、磁気シールド装置の設計方法、及びコンピュータプログラム

【課題】磁気シールド鋼板の厚み・磁気特性、磁気シールド装置の大きさが与えられたときの、汎用性のある設計技術が得られるようにし、かつ、具体的な磁気シールド装置の修正方法について示すようにする。
【解決手段】設置領域10の各面における捕捉磁束密度Bcと、設置領域10の各面における代表長さlと、設置領域10の各面を通過する磁束Φαとを用いて、設置領域10の各面の厚みであって、設置領域10の各面が密閉される場合の厚みd1を算出する。また、その厚みd1と、シールド板群を構成するシールド板の幅Wと、そのシールド板群の配設周期(ピッチ)Pとを用いて、設置領域10の各面の厚みであって、設置領域10の各面にシールド板群が所定の間隔で並設される場合の各面の厚みd2を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気シールド装置の設計装置、磁気シールド装置の設計方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、磁気シールド装置を設計するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気機器を使用すると周囲に磁界が発生する。そこで、磁気シールド装置を用いて、電気機器から発生する磁界が周囲に漏れないようにすることが行われている。
また、磁気シールド装置の近くに大電流が流れていたり、残留磁場のある磁性体があったりする場合には、そこから磁場が発生する。このような磁場は、磁気シールド装置内で精密装置の精密な測定を行おうとする場合の妨げとなる。そこで、外部磁場が進入しないように、磁気シールド装置を構成する必要もある。
【0003】
このような磁気シールド装置として、シールドルームの全面を磁性体の板で覆う密閉型の磁気シールド装置がある。この密閉型の磁気シールド装置は、通気性が悪く、内部温度が非常に高くなるという問題点を有する。そこで、特許文献1には、複数の磁性体の板を、シールドルームの全面に亘ってすだれ状に並べて構成された開放型の磁気シールド装置が開示されている。
【0004】
ところで、以上のような磁気シールド装置を設計する場合、どの位置にどの位の磁性体を使用するのかを設計する必要がある。
今までの磁気シールド装置の設計技術としては、特許文献2、3、4に記載されている。
特許文献2では、磁気シールド装置における形状(高さ、奥行き、幅といった長さ)を規定している。しかしながら、それぞれの面でシールド用鋼板がどの程度使用すべきかについては、明確に示されていないし、また、シールド鋼板の量の算出方法についても記載がない。また、そこでは、磁気シールド装置の形状が与えられた時に対しては、対処できない。
【0005】
特許文献3では、磁気シールド鋼板の厚み及び磁気特性と、磁気シールド装置の大きさとを設計している。しかしながら、そこで導出された関係式および定数は、ある条件での実験データより導出したものであるため、その実験条件より外れた場合どこまで適用できるか不明である。したがって、特許文献3では、汎用性に欠ける。また、特許文献3では、材料(磁性体板)の透磁率について規定しているが、実際の透磁率は材料(磁性体板)に流れる磁束密度で変化する。このため、材料(磁性体板)に流れる磁束密度を規定する必要がある。しかしながら、特許文献3には、磁気シールド装置にどれほどの磁束密度を設定するのかが明示されていない。したがって、材料(磁性体板)に流れる磁束密度および透磁率の値によっては、材料(磁性体板)が磁気飽和してしまい、漏れ磁場が増えたり、逆に磁場が小さすぎて非効率であったりする。
特許文献4では、有限要素法を用いて磁場分布を算出し、その結果をもとにシールド装置の修正案を作成し、再度有限要素法計算を行い、最適なシールド装置を決定するものである。しかしながら、そこでは、磁場分布よりどのようにして修正案を作成するのか、また、何をもって最適性とするのか、といった明確な指針が提示されていない。
【0006】
以上のごとく、従来の設計手法では、磁気シールド鋼板の厚み・磁気特性、磁気シールド装置の大きさが与えられたときの、汎用性のある設計技術になっていない、また、具体的な磁気シールド装置の修正方法について示されていない、といった技術的課題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−164686号公報
【特許文献2】特開2003−309393号公報
【特許文献3】特開平3−296299号公報
【特許文献4】特開平3−77173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題点にかんがみてなされたものであり、磁気シールド鋼板の厚み・磁気特性、磁気シールド装置の大きさが与えられたときの、物理法則に基づく汎用性のある設計技術が得られるようにし、かつ、具体的な磁気シールド装置の修正方法について示すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、磁界発生源から発生した磁界が、磁気シールド装置の磁性体板にできるだけ多く捕捉されれば、その分磁気シールド装置から漏れる漏れ磁場は低減すると考える。このため、磁性体板に捕捉される磁束密度を規定するところに、最大の特徴がある。
本発明の磁気シールド装置の設計装置は、磁気シールド装置の設計対象面における、磁性体による厚みを設計する磁気シールド装置の設計装置であって、前記磁気シールド装置の内部の磁界発生源から磁界が発生した際に前記設計対象面に生じる磁束密度を、ユーザによる操作手段の操作に基づき入力する第1の入力手段と、前記第1の入力手段により入力された磁束密度に基づいて、前記設計対象面を通過する磁束を導出する磁束導出手段と、前記磁気シールド装置の内部の磁界発生源から発生した磁界が、前記設計対象面に配置された磁性体板により捕捉されることに基づく目標値としての捕捉磁束密度を、ユーザによる操作手段の操作に基づき入力する第2の入力手段と、前記磁気シールド装置の設計対象面の大きさを表す代表長さを、ユーザによる操作手段の操作に基づき入力する第3の入力手段と、前記第2の入力手段により入力された捕捉磁束密度に基づく磁界が、前記設計対象面に配置された磁性体板で捕捉されるようにするための当該設計対象面の厚みを、前記磁束導出手段により導出された磁束と、前記第2の入力手段により入力された捕捉磁束密度と、前記第3の入力手段により入力された代表長さとを用いて算出する算出手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の磁気シールド装置の設計方法は、磁気シールド装置の設計対象面における、磁性体による厚みを設計する磁気シールド装置の設計方法であって、前記磁気シールド装置の内部の磁界発生源から磁界が発生した際に前記設計対象面に生じる磁束密度を、ユーザによる操作ステップの操作に基づき入力する第1の入力ステップと、前記第1の入力ステップにより入力された磁束密度に基づいて、前記設計対象面を通過する磁束を導出する磁束導出ステップと、前記磁気シールド装置の内部の磁界発生源から発生した磁界が、前記設計対象面に配置された磁性体板により捕捉されることに基づく目標値としての捕捉磁束密度を、ユーザによる操作ステップの操作に基づき入力する第2の入力ステップと、前記磁気シールド装置の設計対象面の大きさを表す代表長さを、ユーザによる操作ステップの操作に基づき入力する第3の入力ステップと、前記第2の入力ステップにより入力された捕捉磁束密度に基づく磁界が、前記設計対象面に配置された磁性体板で捕捉されるようにするための当該設計対象面の厚みを、前記磁束導出ステップにより導出された磁束と、前記第2の入力ステップにより入力された捕捉磁束密度と、前記第3の入力ステップにより入力された代表長さとを用いて算出する算出ステップとを有することを特徴とする。
【0011】
本発明のコンピュータプログラムは、磁気シールド装置の設計対象面における、磁性体による厚みを設計することをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記磁気シールド装置の内部の磁界発生源から磁界が発生した際に前記設計対象面に生じる磁束密度を、ユーザによる操作ステップの操作に基づき入力する第1の入力ステップと、前記第1の入力ステップにより入力された磁束密度に基づいて、前記設計対象面を通過する磁束を導出する磁束導出ステップと、前記磁気シールド装置の内部の磁界発生源から発生した磁界が、前記設計対象面に配置された磁性体板により捕捉されることに基づく目標値としての捕捉磁束密度を、ユーザによる操作ステップの操作に基づき入力する第2の入力ステップと、前記磁気シールド装置の設計対象面の大きさを表す代表長さを、ユーザによる操作ステップの操作に基づき入力する第3の入力ステップと、前記第2の入力ステップにより入力された捕捉磁束密度に基づく磁界が、前記設計対象面に配置された磁性体板で捕捉されるようにするための当該設計対象面の厚みを、前記磁束導出ステップにより導出された磁束と、前記第2の入力ステップにより入力された捕捉磁束密度と、前記第3の入力ステップにより入力された代表長さとを用いて算出する算出ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、磁気シールド装置の設計対象面の厚みを、設計対象面を通過する磁束と、捕捉磁束密度と、設計対象面の代表長さとを用いて算出するようにした。したがって、磁気シールド鋼板の厚み・磁気特性、磁気シールド装置の大きさが与えられたときの、汎用性のある設計技術が得られるようにし、かつ、具体的な磁気シールド装置の修正方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、設計対象の磁気シールド装置が設置される領域の概略の一例を示す図である。具体的に図1(a)は、磁気シールド装置が設置される領域の斜視図を示し、図1(b)は、図1(a)のW方向から見た図を示す。
【0014】
図1において、磁気シールド装置が設置される領域(以下、設置領域と称する)10の内部には、磁界発生源11が設置される。この磁界発生源11は、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)である。磁界発生源11としてMRIを用いた場合、設計対象の磁気シールド装置は、MRIが備える励磁コイルから発生する磁界が、磁気シールド装置の外部に漏洩することをシールド(低減)するために使用されるものとなる。
【0015】
本実施形態では、設計対象の磁気シールド装置は、予め定められた大きさの複数の磁性体の板(以下、シールド板と称する)を積み重ねたもの(以下、シールド板群と称する)を、設置領域10の各面に1つ又は複数配設することにより構成される。本実施形態では、設置領域10の各面におけるシールド板群による厚み(シールド板群を構成するシールド板の枚数)を算出することにより、磁気シールド装置の設計を行う場合を例に挙げて説明する。このように本実施形態では、シールド板群により磁性体板が構成される。
【0016】
図2は、磁気シールド装置の設計装置(以下、設計装置と略称する)の構成の一例を示す図である。
図2において、設計装置20は、操作部21と、表示部22と、処理部23とを有している。
操作部21は、キーボードやマウス等により構成される装置であり、ユーザにより実行された内容を処理部23に伝えるようにするための装置である。
【0017】
表示部22は、ディスプレイ等により構成される装置であり、処理部23により実行された処理結果等を表示するための装置である。ユーザは、この表示部22に表示された内容を見ながら、操作部21を操作して所望の内容を入力する。
処理部23は、CPU、ROM、及びRAM等により構成されるコンピュータである。この処理部23は、ROMに記録されているプログラムを実行すること等により設計装置20における処理動作を行う。
【0018】
具体的に処理部23は、磁気シールド装置形状記憶部23aと、設計対象面設定部23bと、磁束密度分布記憶部23cと、設計対象面代表長さ記憶部23dと、捕捉磁束密度記憶部23eと、磁束導出部23fと、厚み導出部23gと、厚み表示部23hとを有している。
【0019】
磁気シールド装置形状記憶部23aは、設置領域10の各面の形状(大きさ及び形)を記憶する。また、磁気シールド装置形状記憶部23aは、設置領域10の各面におけるシールド板群の配設位置も記憶する。設置領域10の各面の形状やシールド板群の配設位置は、例えば、ユーザによる操作部21の操作に基づいて、磁気シールド装置形状記憶部23aに予め記憶される。
設計対象面設定部23bは、設置領域10の各面のうち、シールド板群による厚みの導出対象となる面(以下、設計対象面と称する)を設定する。図1に示した例では、設置領域10の6つの面が、設計対象面として順次設定される。
【0020】
磁束密度分布記憶部23cは、磁界発生源11から磁界を発生させた場合の、設置領域10の各面における磁束密度の分布B(r,s)を記憶する。ここで、(r,s)は(x,y)または(y,z)または(z,x)を表すものとする。すなわち、(r,s)は、上面および下面においては(x,y)を、A面およびC面においては(y,z)を、B面およびD面においては(z,x)面を表す。設置領域10の各面における磁束密度の分布B(r,s)は、例えば、ユーザによる操作部21の操作に基づいて、磁束密度分布記憶部23cに予め記憶される。このように本実施形態では、磁気シールド装置により磁界が外部に漏洩するのをシールドする前の設置領域10の各面における磁束密度の分布B(r,s)を磁束密度分布記憶部23cに記憶する。このように本実施形態では、磁束密度分布記憶部23cに磁束密度の分布B(r,s)を記憶することにより、第1の入力手段が実現される。
【0021】
設計対象面代表長さ記憶部23dは、設置領域10の各面における代表長さlを記憶する。本実施形態では、設置領域10の各面における代表長さlが、以下の(1)式で表されるものとする。尚、以下の説明では、設置領域10の各面における代表長さlを、必要に応じて、代表長さlと略称する。
【0022】
【数1】

【0023】
ここで、l1は、設置領域10の各面における縦の長さであり、l2は、設置領域10の各面における横の長さである。本実施形態では、設置領域10の各面に対して、代表長さlが設計対象面代表長さ記憶部23dに記憶されている。また、代表長さlは、例えば、ユーザによる操作部21の操作に基づいて、設計対象面代表長さ記憶部23dに予め記憶される。このように本実施形態では、設計対象面代表長さ記憶部23dに代表長さlが記憶されることにより、第3の入力手段が実現される。
【0024】
捕捉磁束密度記憶部23eは、設置領域10の各面における捕捉磁束密度Bcを記憶する。本実施形態では、設置領域10の各面における捕捉磁束密度Bcが1[T]であるとする。捕捉磁束密度Bcは、例えば、ユーザによる操作部21の操作に基づいて、捕捉磁束密度記憶部23eに予め記憶される。このように本実施形態では、捕捉磁束密度記憶部23eに目標値としての捕捉磁束密度Bcが記憶されることにより、第2の入力手段が実現される。
磁束導出部23fは、設計対象面設定部23bで設定された設計対象面における磁束密度の分布B(r,s)を、磁束密度分布記憶部23cから取得する。そして、磁束導出部23fは、取得した磁束密度の分布B(r,s)と、設計対象面内の微小領域の面積ΔSx,yとを、以下に示す(2)式に代入して、設計対象面を通過する磁束Φαを算出する。
【0025】
【数2】

【0026】
ここで、設計対象面内の微小領域の面積ΔSx,yは、磁気シールド装置形状記憶部23aに記憶されている設計対象面の形状に基づいて定められる。
このように本実施形態では、磁束導出部23fにより、磁束導出手段が実現される。
【0027】
厚み導出部23gは、設計対象面設定部23bで設定された設計対象面におけるシールド板群による厚みを算出する。この厚みを、シールド板群を構成するシールド板の1枚当たりの厚みで割ることにより、設計対象面設定部23bで設定された設計対象面に配設されるシールド板群を構成するシールド板の枚数を算出することができる。
【0028】
具体的に厚み導出部23gは、以下のようにして、シールド板群による設計対象面における厚みを算出する。
まず、厚み導出部23gは、設計対象面設定部23bで設定された設計対象面に配設されるシールド板群により、その設計対象面の全体が覆われる(密閉される)か否かを判定する。この判定は、例えば、磁気シールド装置形状記憶部23aに記憶されているシールド板群の配設位置に基づいて行うことができる。
【0029】
この判定の結果、設計対象面の全体がシールド板群により覆われる(密閉される)場合、厚み導出部23gは、まず、設計対象面設定部23bで設定された設計対象面における代表長さlを設計対象面代表長さ記憶部23dから取得すると共に、捕捉磁束密度Bcを捕捉磁束密度記憶部23eから取得する。そして、厚み導出部23gは、これら代表長さl及び捕捉磁束密度Bcと、磁束導出部23fで導出された磁束Φαとを、以下の(3)式に代入して、設計対象面の厚みd1を算出する。そして、厚み導出部23gは、算出した厚みd1を、予め定められているシールド板の1枚当たりの厚みで割ることにより、設計対象面設定部23bで設定された設計対象面に配設されるシールド板群を構成するシールド板の枚数を算出する。
【0030】
【数3】

【0031】
一方、設計対象面の全体がシールド板群により覆われず、複数のシールド板群が所定の間隔を有して並設される(一部が開放されている)場合、厚み導出部23gは、まず、前述したようにして、厚みd1を算出する((3)式を参照)。そして、厚み導出部23gは、算出した厚みd1と、設計対象面に配設されるシールド板の幅Wと、設計対象面に配設されるシールド板群の配設周期(ピッチ)Pとを、以下の(4)式に代入して、設計対象面の厚みd2を算出する。
【0032】
【数4】

【0033】
ここで、設計対象面に配設されるシールド板の幅Wと、設計対象面に配設されるシールド板群の配設周期(ピッチ)Pは、例えば、磁気シールド装置形状記憶部23aに記憶されているシールド板群の配設位置に基づいて算出することができる。尚、これら設計対象面に配設されるシールド板の幅Wと、設計対象面に配設されるシールド板群の配設周期(ピッチ)Pとを予め記憶しておくようにしてもよい。
【0034】
図3は、設計対象面に配設されるシールド板の幅Wと、設計対象面に配設されるシールド板群の配設周期(ピッチ)Pとの一例を示す図である。図3では、幅Wのシールド板を積み重ねることにより構成されたシールド板群31、32、33が、配設周期(ピッチ)Pで、設計対象面に並べられている場合を例に挙げて示している。(4)式に示す例では、(W/P)が、シールド板群が設計対象面を占有する割合になる。
以上のように本実施形態では、厚み導出部23gにより、算出手段が実現される。尚、以上のようにして求められる設計対象面の厚みd1、d2は、捕捉磁束密度Bcに基づく磁界が、設計対象面に配置されたシールド板群で捕捉されるようにするために必要な厚みである。
【0035】
厚み表示部23hは、設置領域10の全ての面について、シールド板群による厚みd1、d2が算出されると、その厚みd1、d2を含む画像データを生成し、生成した画像データに基づく画像を表示部22に表示させる。
【0036】
次に、図4のフローチャートを参照しながら、本実施形態の設計装置20における動作の一例を説明する。
まず、ステップS1において、設計対象面設定部23bは、設置領域10の各面の1つを設計対象面として設定する。
次に、ステップS2において、磁束導出部23fは、前述した(2)式を用いて、設計対象面を通過する磁束Φαを算出する。
【0037】
次に、ステップS3において、厚み導出部23gは、磁気シールド装置形状記憶部23aに記憶されているシールド板群の配設位置に基づいて、ステップS1で設定された設計対象面に配設されるシールド板群により、その設計対象面の全体が覆われる(密閉される)か否かを判定する。
この判定の結果、設計対象面の全体が覆われる(密閉される)場合には、ステップS4に進む。ステップS4に進むと、厚み導出部23gは、前述した(3)式を用いて、設計対象面におけるシールド板群による厚みd1を算出する。そして、後述するステップS6に進む。
【0038】
一方、設計対象面の全体がシールド板群により覆われていない(一部が開放されている)場合には、ステップS5に進む。ステップS5に進むと、厚み導出部23gは、前述した(4)式を用いて、設計対象面におけるシールド板群による厚みd2を算出する。そして、ステップS6に進む。
ステップS6に進むと、設計対象面設定部23bは、設置領域10の全ての面を解析対象領域として指定したか否かを判定する(すなわち、それら全ての面について、シールド板群による厚みd1、d2を算出したか否かを判定する)。この判定の結果、設置領域10の全ての面を解析対象領域として指定していない場合には、ステップS1に進み、設計対象面設定部23bは、指定していない面の1つを解析対象領域として設定し、設置領域10の全ての面を解析対象領域として指定するまで、ステップS1〜S6を繰り返し行う。そして、設置領域10の全ての面が解析対象領域として指定され、それら全ての面について、シールド板群による厚みd1、d2が算出されると、ステップS7に進む。
【0039】
ステップS7に進むと、厚み表示部23hは、設置領域10の全ての面の厚みd1、d2に関する画像を表示部22に表示させる。そして、図4のフローチャートによる処理を終了する。
【0040】
図5は、磁気シールド装置の各面に配設されるシールド板群を構成するシールド板の枚数を、設計装置20により設計した場合と、従来のようにして経験的に設計した場合との夫々について示した図である。
【0041】
図5において、A面、B面、C面、D面は、夫々図1(b)に示した面を指す。また、図5に示す数値は、各面に配設されるシールド板群を構成するシールド板の枚数を示す。尚、図5では、設置領域10の各面の一部が開放している開放型の磁気シールド装置を設計した場合を例に挙げて示している。
図5に示すように、設計装置20により設計した場合には、底面(床面)におけるシールド板の枚数が多くなっており、この底面(床面)におけるシールド板の枚数の違いが、シールド板の総枚数の差異の大半を占めることが分かる。尚、底面(床面)は、漏れ磁場の評価の対象となりにくいので、底面(床面)におけるシールド板の枚数を、従来の値に減らすことができる。
【0042】
図6は、磁気シールド装置の外部における磁束密度を、設計装置20により設計した場合と、従来のようにして経験的に設計した場合との夫々について示した図である。図6において、グラフ61が設計装置20により設計した場合の磁束密度を示し、グラフ62が従来のようにして設計した場合の磁束密度を示す。
尚、図6に示すA面、B面、C面、D面は、夫々図1(b)に示した面を指す。また、図6では、磁気シールド装置の周方向の各面(A面、B面、C面、D面)から外側に100[mm]離れた位置であって、磁界発生源11の中心と同じ高さの位置における磁束密度の絶対値|B|を、電磁場解析により算出した結果を示している。また、図6では、磁束密度の絶対値|B|を相対値で示している。更に、図6では、磁界発生源から1.5[T]程度の磁界が発生しているものとして電磁場解析を行った結果を示している。
【0043】
図6に示すように、設計装置20により設計した場合の方が、従来のようにして設計した場合よりも、磁気シールド装置から漏れる磁界(漏れ磁場)の最大値が小さいことが分かる(B面におけるグラフ61、62の値を参照)。
【0044】
以上のように本実施形態では、設置領域10の各面における捕捉磁束密度Bcと、設置領域10の各面における代表長さlと、設置領域10の各面を通過する磁束Φαとを(3)式に代入することにより、設置領域10の各面の厚みであって、設置領域10の各面が密閉される場合の厚みd1を算出する。また、その厚みd1と、シールド板群を構成するシールド板の幅Wと、そのシールド板群の配設周期(ピッチ)Pとを(4)式に代入することにより、設置領域10の各面の厚みであって、設置領域10の各面にシールド板群が所定の間隔で並設される場合の各面の厚みd2を算出する。
【0045】
すなわち、磁気シールド装置により磁界が外部に漏洩するのをシールドする前の設置領域10の各面における磁束密度の分布B(r,s)を入力して、設置領域10の各面を通過する磁束Φαを求める。そして、設置領域10の各面を通過する磁束Φαと、捕捉磁束密度Bcと、各面の代表長さlとを近似パラメータとして用いることにより、磁界発生源11から発生した磁界がシールド板に吸収されるようにするための厚みd1を近似計算する。また、設置領域10の各面に一定周期で並設されるシールド板群の間隔に応じて、近似計算したシールド板群の厚みd1を調整して、設置領域10の各面にシールド板群が所定の間隔で並設される場合の各面の厚みd2を算出する。
【0046】
以上のようにすることで、磁気シールド鋼板の厚み・磁気特性、磁気シールド装置の大きさが与えられたときの、汎用性のある設計技術が得られるようにし、かつ、具体的な磁気シールド装置の修正方法を提供できる。また、過去の知見がなくても、例えば数秒の計算時間で、磁気シールド装置をある程度の精度で設計することができる。したがって、顧客のニーズに応じて、顧客の目の前で(その場で)磁気シールド装置の概略設計を行うことができる。
【0047】
尚、本実施形態では、シールド板群を構成するシールド板の枚数が、設置領域10の各面の厚みになる場合を例に挙げて説明した。すなわち、設置領域10の各面と、シールド板群を構成するシールド板の面とが平行になるように、シールド板群を配設する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、設置領域10の各面と、シールド板群を構成するシールド板の面とが垂直になるように、シールド板群を配設する場合には、シールド板の幅が、設置領域10の各面の厚みになる。また、このようにした場合には、(4)式において、シールド板の幅Wの項に、シールド板の枚数に基づく厚みが代入されることになる。
【0048】
また、本実施形態では、設置領域10の各面における磁束密度の分布B(r,s)を磁束密度分布記憶部23cに記憶するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、設置領域10の各面における磁束密度の代表値B(r,s)(例えば平均値)を磁束密度分布記憶部23cに記憶するようにしてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、設置領域10の各面における代表長さlが、(1)式のようにして表される場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。設置領域10の各面に配設されたシールド板群により捕捉された磁界の、その各面における移動距離を近似した値であれば、設置領域10の各面における大きさを表す代表長さlをどのように表してもよい。例えば、設置領域10の各面における大きさを表す代表長さlを、設置領域10の各面における縦の長さl1と、設置領域10の各面における横の長さl2との平均値としてもよい。また、設置領域10の各面における縦の長さl1と、設置領域10の各面における横の長さl2とのうち、長い方(又は短い方)を、設置領域10の各面における大きさを表す代表長さlとしてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、設置領域10の各面における捕捉磁束密度Bcが、1[T]である場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。設置領域10の各面に配設されるシールド板群により捕捉される磁界に基づく磁束密度の値であれば、どのような値を捕捉磁束密度Bcとしてもよい。例えば、磁気シールド装置を構成する磁性体(シールド板)における透磁率μと磁界Hとの関係を示す曲線においてピークを有する部分(好ましくは透磁率μが最大値を示す部分)における透磁率μの値と磁界Hの値とから定められる磁束密度の値を捕捉磁束密度Bcとすることができる。また、磁気シールド装置を構成する磁性体(シールド板)の種類が各面において異なる場合には、捕捉磁束密度Bcも各面において異なるものになる。
【0051】
また、本実施形態では、設置領域10の全ての面について、厚みd1、d2を算出するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、設置領域10の全ての面ではなく、磁気シールド装置から外部に漏れる磁界が問題となる所定の面(例えば、底面を除く面やB面)だけの厚みd1、d2を算出するようにしてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、設計対象面が矩形である場合を例に挙げて示したが、設計対象面は、矩形に限定されず、磁気シールド装置が設定されるシールドルームに合わせて設定することができる。
また、本実施形態では、複数のシールド板群を所定の間隔で並設することにより、設計対象面の一部が開放されるようにした場合を例に挙げて説明したが、設計対象面の一部が開放されるようにする方法は、このようなものに限定されるものではない。
【0053】
(第2の実施形態)
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。前述した第1の実施形態では、過去の知見がなくても、磁気シールド装置をある程度の精度で設計することができるようにした。本実施形態では、第1の実施形態の手法で算出した、設置領域10の各面における厚みd1、d2を用いて、より高精度に磁気シールド装置を設計する場合を説明する。このように本実施形態と前述した第1の実施形態とは、磁気シールド装置の設計方法の一部が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図6に付した符号と同一の符号を付する等して詳細な説明を省略する。
【0055】
図7は、本実施形態における設計装置で設計対象とする磁気シールド装置の構成の一例を示す図である。図8は、磁気シールド装置が設置される領域(設置領域)の概略の一例を示す図である。具体的に図8(a)は、磁気シールド装置が設置される領域(設置領域)の斜視図を示し、図8(b)、図8(c)は、夫々図8(a)のU方向、V方向から見た図を示す。
【0056】
図7、図8に示すように、磁気シールド装置71(設置領域81)の内部には、磁界発生源72が設置される。
また、本実施形態では、磁気シールド装置71は、図8に示す設置領域81のB面、上面、D面、及び底面で構成される面に沿って、相対的に内側に配設された内側シールド部73と、図8に示す設置領域81のB面、A面、D面、及びC面で構成される面に沿って、相対的に外側に配設された外側シールド部74とを備える。
【0057】
具体的に、内側シールド部73は、B面、上面、D面、及び底面で構成される面の周方向と平行になるように長手方向が配設された複数のシールド板群を有している。これら複数のシールド板群は、所定の間隔で、B面、上面、D面、及び底面で構成される面の幅方向に並設されている。一方、外側シールド部74は、B面、A面、D面、及びC面で構成される面の周方向と平行になるように長手方向が配設された複数のシールド板群を有している。これら複数のシールド板群は、所定の間隔で、B面、A面、D面、及びC面で構成される面の幅方向に並設されている。
【0058】
図9は、設計装置の構成の一例を示す図である。
図9において、設計装置90は、操作部21と、表示部22と、処理部91とを有している。
前述したように、操作部21は、ユーザにより実行された内容を処理部91に伝えるようにするための装置であり、表示部22は、処理部91により実行された処理結果等を表示するための装置である。
処理部91は、図2に示した処理部23と同様に、CPU、ROM、及びRAM等により構成されるコンピュータであり、ROMに記録されているプログラムを実行すること等によって設計装置90における処理動作を行う。
【0059】
具体的に処理部91は、簡易設計部91aと、電磁場解析部91bと、漏れ磁場判定部91cと、磁界分布表示部91dと、厚み変更部91eと、厚み表示部91fとを有している。
簡易設計部91aは、第1の実施形態で説明したようにして設置領域81の各面における厚みd1、d2を、概略値として算出する。具体的に簡易設計部91aは、図2に示した磁気シールド装置形状記憶部23aと、設計対象面設定部23bと、磁束密度分布記憶部23cと、設計対象面代表長さ記憶部23dと、捕捉磁束密度記憶部23eと、磁束導出部23fと、厚み導出部23gとを有している。
尚、以下の説明では、簡易設計部91aにより求められた厚みd1、d2を、必要に応じて概略厚みd1、d2と称する。
【0060】
電磁場解析部91bは、簡易設計部91aで算出された概略厚みd1、d2を有するように磁気シールド装置71を構成した場合に、磁気シールド装置71の内部及びその周囲を含む所定の解析対象領域における電磁場(磁界)がどのようになっているのかを解析する(電磁場解析を行う)。
具体的に電磁場解析部91bは、磁気特性演算部92aと、磁束密度分布演算部92bとを有し、以下に説明するような等価BH法と称する方法で電磁場解析を行うようにしている。
【0061】
磁気特性演算部92aは、図7に示した磁気シールド装置71とその周囲とを含む所定の解析対象領域内において、繰り返し同じ構成を有すると見なせる複数の領域の1つを等価的な要素(以下、等価要素と称する)と見なし、この等価要素内の平均磁気特性を有限要素法により算出する。本実施形態では、平均磁気特性として、平均透磁率μaveを算出するものとする。
具体的に本実施形態では、磁気特性演算部92aは、以下の(5)式を用いて、平均透磁率μaveを算出するものとする。
【0062】
【数5】

【0063】
ここで、μFeは、磁気シールド装置71を構成するシールド板の各軸(図8のX軸、Y軸、Z軸)の透磁率である。μairは、空気の透磁率である。dは、等価要素内におけるシールド板群の厚み(等価要素内に含まれるシールド板の枚数)、lは、等価要素の厚み(例えば、等価要素に含まれるシールド板群の厚み方向の長さ)である。Baveは、等価要素における平均磁束密度であり、Haveは、等価要素における平均磁界である。
【0064】
そして、磁気特性演算部92aは、大きさ及び入射角度の少なくとも何れか一方が異なる複数の外部磁界を与えた場合の平均透磁率μaveを(5)式を用いて算出し、算出した平均透磁率μaveと、平均磁束密度Baveとの関係を求める。このとき、簡易設計部91aで算出された概略厚みd1、d2が、(5)式に示すdに代入される。
【0065】
図10は、等価要素における平均透磁率μaveと平均磁束密度Baveとの関係の一例を示す図である。
図10において、グラフ101は、等価要素内に含まれるシールド板の磁化容易軸方向の平均透磁率μaveと平均磁束密度Baveとの関係を示すものである。また、グラフ102は、等価要素内に含まれるシールド板の磁化困難軸方向の平均透磁率μaveと平均磁束密度Baveとの関係を示すものである。また、グラフ103は、等価要素内に含まれるシールド板の積層方向(シールド板群の厚み方向)の平均透磁率μaveと平均磁束密度Baveとの関係を示すものである。
【0066】
磁束密度分布演算部92bは、以上のようにして磁気特性演算部92aで算出された"等価要素における平均透磁率μaveと平均磁束密度Baveとの関係"に基づいて、解析対象領域に生じる磁束線(磁界の分布)を求める。そして、磁束密度分布演算部92bは、例えば、解析対象領域内の位置であって、磁気シールド装置71の外部の所望の位置における磁束密度(の分布)を、求めた磁束線から導出する。
尚、解析対象領域に生じる磁束線は、有限要素法(例えば、ガラーキン法、ICCG法)を用いて求めるようにする。また、磁気シールド装置71の外部の所望の位置を導出するのは、磁気シールド装置71内の磁界発生源72から発生する磁界が、磁気シールド装置71の外部にどの程度漏洩しているのかを評価するためである。例えば、本実施形態では、磁界発生源72の中心と同じ高さの位置であって、磁気シールド装置71の各面から100[mm]外側に離れた位置を、磁気シールド装置71の外部の所望の位置としている。
以上のように本実施形態では、電磁場解析部91b(磁気特性演算部92a、磁束密度分布演算部92b)により、電磁場解析手段が実現される。
【0067】
図9の説明に戻り、漏れ磁場判定部91cは、磁束密度分布演算部92bで演算された磁束密度が、目標範囲内であるか否かを判定する。
具体的に本実施形態では、漏れ磁場判定部91cは、磁束密度分布演算部92bで導出された磁束密度に基づいて、透磁率が所定の範囲のシールド板群(面積又は体積)が、磁気シールド装置71を構成するシールド板群全体の50[%]以上であるか否かを判定する。ここで、所定の範囲とは、例えば、磁束密度分布演算部92bで導出された磁束密度に基づいて得られる最大透磁率の0.5倍以上(半分以上)、最大透磁率以下である。更に、漏れ磁場判定部91cは、磁束密度分布演算部92bで導出された磁束密度の最大値が、磁気シールド装置71を構成するシールド板の飽和磁束密度の0.8倍以上、0.9倍以下であるか否かを判定する。
以上のように本実施形態では、漏れ磁場判定部91cにより、判定手段が実現される。
【0068】
磁界分布表示部91dは、磁束密度分布演算部92bで導出された磁束密度が、目標範囲内ではないと漏れ磁場判定部91cにより判定された場合に、磁束密度分布演算部92bで求められた磁束密度の分布を表示部22に表示させる。ユーザは、この磁束線の分布を参考にして、厚みdの変更値を決定する。そして、ユーザは、その厚みdの変更値を、操作部21を操作することにより入力する。この際、ユーザは、磁束線に基づく磁束密度の値が相対的に高い面に使用するシールド板の枚数を増大させ、磁束線に基づく磁束密度の値が相対的に低い面に使用するシールド板の枚数を減少させるように、厚みdの変更値を決定する。
【0069】
厚み変更部91eは、このようにして入力された厚みdの変更値を取得して、電磁場解析部91bに出力する。電磁場解析部91bは、厚み変更部91eから厚みdの変更値が出力されると、それまでに使用していた厚みdを、その変更値に変更して、前述した計算を再度行う。そして、電磁場解析部91bは、等価要素における平均透磁率μaveと平均磁束密度Baveとの関係と、解析対象領域に生じる磁束線と、磁気シールド装置71の外部の所望の位置における磁束密度とを求める。
以上のように本実施形態では、厚み変更部91eにより、第4の入力手段が実現される。
【0070】
電磁場解析部91bは、磁束密度分布演算部92bで導出された磁束線に基づく磁束密度が、目標範囲内であると漏れ磁場判定部91cにより判定されるまで、厚み変更部91eから出力された変更値を繰り返し入力し、入力した変更値を用いて電磁場解析を繰り返し行う。
【0071】
そして、磁束密度分布演算部92bで導出された磁束密度が、目標範囲内であると漏れ磁場判定部91cにより判定されると、漏れ磁場判定部91cは、その磁束密度を導出した際に電磁場解析部91bで使用された厚みdを磁気シールド装置71の設計値として決定する。
そして、厚み表示部91fは、磁気シールド装置71の設計値として決定された厚みdを表示部22に表示させる。尚、磁気シールド装置71の設計値として決定された厚みdの他に、後に述べるステップS24で導出された磁束密度の分布を表示部22に併せて表示させるようにしてもよい。
【0072】
次に、図11のフローチャートを参照しながら、本実施形態の設計装置90における動作の一例を説明する。
まず、ステップS21において、簡易設計部91aは、設置領域10の各面における概略厚みd1、d2を算出する。
次に、ステップS22において、磁気特性演算部92aは、ステップS21で算出された概略厚みd1、d2を用いて、等価要素における平均透磁率μaveを算出する。
次に、ステップS23において、磁気特性演算部92aは、等価要素における平均透磁率μaveと平均磁束密度Baveとの関係を求める。
【0073】
次に、ステップS24において、磁束密度分布演算部92bは、ステップS23で求められた等価要素における平均透磁率μaveと平均磁束密度Baveとの関係に基づいて、解析対象領域に生じる磁束密度(の分布)を求める。
【0074】
次に、ステップS25において、漏れ磁場判定部91cは、ステップS24で求められた磁束密度が目標範囲内であるか否かを判定する。この判定の結果、ステップS24で求められた磁束密度が目標範囲内である場合には、漏れ磁場判定部91cは、その磁束特性を導出した際に電磁場解析部91bで使用された厚みdを磁気シールド装置71の設計値として決定し、ステップS26に進む。そして、厚み表示部91fは、磁気シールド装置71の設計値として決定された厚みdを表示部22に表示させる。
【0075】
一方、ステップS24で求められた磁束密度が目標範囲内でない場合には、ステップS27に進む。そして、磁界分布表示部91dは、ステップS24で導出された磁束密度の分布を表示部22に表示させる。
次に、ステップS28において、厚み変更部91eは、操作部21の操作により、厚みdの変更値が入力されるまで待機する。そして、厚みdの変更値が入力されると、ステップS29に進む。そして、厚み変更部91eは、その厚みdの変更値を電磁場解析部91bに出力する。電磁場解析部91bは、それまでに使用していた厚みdを、その変更値に変更して、ステップS22〜S24を再度行う。
【0076】
図12は、各面に配設されるシールド板群(内側シールド部73、外側シールド部74が備えるシールド板群)を構成するシールド板の枚数と、内側シールド部73(内層)及び外側シールド部74(外層)における磁束密度の分布とを、従来のようにして経験的に設計した場合(従来)と、その設計した値に夫々2枚ずつシールド板を増加させた場合(板厚増加)と、本実施形態の設計装置90により設計した場合(本手法)との夫々について示した図である。尚、図12では、磁界発生源72から1.5[T]程度の磁界が発生しているものとして電磁場解析を行った結果を示している。
【0077】
図12に示すように、本実施形態の設計装置90を用いて設計を行うと、外側シールド部74(外層)におけるB面の磁束密度を、他の方法で設計した場合よりも小さくすることができ、磁気シールド装置71における最大磁束密度を低減させることが分かる。また、本実施形態の設計装置90を用いて設計を行うと、使用するシールド板の枚数が増加するのを防止することができることも分かる。
【0078】
図13は、磁気シールド装置71の外部における磁束密度を、従来のようにして経験的に設計した場合と、その設計した値に夫々2枚ずつシールド板を増加させた場合と、本実施形態の設計装置90により設計した場合との夫々について示した図である。図13において、グラフ131が従来のようにして設計した場合の磁束密度を示し、グラフ132が、従来のようにして設計した値に夫々2枚ずつシールド板を増加させた場合の磁束密度を示し、グラフ133が、設計装置90により設計した場合の磁束密度を示す。
尚、図13では、磁気シールド装置71の周方向の各面(A面、B面、C面、D面)から外側に100[mm]離れた位置であって、磁界発生源72の中心と同じ高さの位置における磁束密度の絶対値|B|を、電磁場解析により算出した結果を示している。また、図13では、磁束密度の絶対値|B|を相対値で示している。更に、図13では、磁界発生源72から1.5[T]程度の磁界が発生しているものとして電磁場解析を行った結果を示している。
【0079】
図13に示すように、設計装置90により設計した場合の方が、他の方法で設計した場合よりも、磁気シールド装置71から漏れる磁界(漏れ磁場)の最大値が小さいことが分かる(B面におけるグラフ131、132、133の値を参照)。
以上のように、本実施形態の設計装置90を用いれば、磁気シールド装置71から漏洩する磁界の空間的なばらつきを他の方法よりも低減することができ、その結果、磁気シールド装置71から漏洩する磁界に基づく最大磁束密度を他の方法よりも低減できることが分かる。
【0080】
以上のように本実施形態では、第1の実施形態で説明したようにして算出した概略厚みd1、d2を用いて、磁気シールド装置71を仮設計し、その仮設計した磁気シールド装置71及びその周囲における磁束線の分布を、電磁場解析により求め、求めた磁束線の分布に基づく磁気特性が目標範囲内になるまで、厚みdを変えて電磁場解析を繰り返し行うようにした。したがって、前述した第1の実施形態で説明した効果に加え、磁気シールド装置71から漏洩する磁界(磁束密度の値とその空間的なばらつき)を低減することを、磁気シールド装置71全体に使用するシールド板を大幅に増大させることなく実現できるという効果を有する。
【0081】
尚、本実施形態では、等価BH法において、等価要素における平均透磁率μaveと平均磁束密度Baveとの関係を求めるようにしたが、必ずしも、このようにする必要はない。例えば、等価要素における平均磁束密度Baveと平均磁界Haveとの関係を求めるようにしてもよい。また、電磁場解析を行っていれば、必ずしも等価BH法を用いる必要はない。例えば、メッシュの数は多くなるが、有限要素法をそのまま適用して電磁場解析を行うようにしてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、透磁率が所定の範囲のシールド板群が、全体の50[%]以上であるか否かを判定するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、透磁率が所定の範囲のシールド板群が、全体の60[%]、70[%]以上であるか否かを判定するようにしてもよい。また、本実施形態では、磁束密度分布演算部92bで導出された磁束密度に基づいて得られる最大透磁率の0.5倍以上、最大透磁率以下を、所定の範囲としたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、磁束密度分布演算部92bで導出された磁束密度に基づいて得られる最大透磁率の0.6倍以上、最大透磁率の0.8倍以下を、所定の範囲としてもよい。
この他、シールド板群の透磁率ではなく、磁束密度分布演算部92bで導出された磁束密度に基づく透磁率が、前記所定の範囲にある領域(面積又は体積)が、解析対象領域の全体の50[%]以上(好ましくは60[%]、より好ましくは70[%])であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、磁束密度分布演算部92bで導出された磁束密度の最大値が、磁気シールド装置71を構成するシールド板の飽和磁束密度の0.8倍以上、0.9倍以下であるか否かを判定するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、磁束密度分布演算部92bで導出された磁束密度の最大値が、磁気シールド装置71を構成するシールド板の飽和磁束密度の0.75倍以上、0.95倍以下であるか否かを判定するようにしてもよい。
この他、磁束密度分布演算部92bで導出された磁束密度ではなく(解析対象領域の磁束密度の全体の最大値ではなく)、シールド板群内の磁束密度の最大値が、磁気シールド装置71を構成するシールド板の飽和磁束密度の0.75倍以上、0.95倍以下(好ましくは0.8倍以上、0.9倍以下)であるか否かを判定するようにしてもよい。
また、本実施形態においても、前述した第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0084】
以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。上記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、設計対象の磁気シールド装置が設置される領域の概略の一例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示し、磁気シールド装置の設計装置の構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示し、設計対象面に配設されるシールド板の幅と、設計対象面に配設されるシールド板群の配設周期(ピッチ)との一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示し、設計装置における動作の一例を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態を示し、磁気シールド装置の各面に配設されるシールド板群を構成するシールド板の枚数を、設計装置により設計した場合と、従来のようにして経験的に設計した場合との夫々について示した図である。
【図6】本発明の第1の実施形態を示し、磁気シールド装置の外部における磁束密度を、設計装置により設計した場合と、従来のようにして経験的に設計した場合との夫々について示した図である。
【図7】本発明の第2の実施形態を示し、設計装置で設計対象とする磁気シールド装置の構成の一例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態を示し、磁気シールド装置が設置される領域(設置領域)の概略の一例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態を示し、設計装置の構成の一例を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態を示し、等価要素における平均透磁率と平均磁束密度との関係の一例を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態を示し、設計装置における動作の一例を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施形態を示し、内側シールド部、外側シールド部が備えるシールド板群を構成するシールド板の枚数と、内側シールド部(内層)及び外側シールド部(外層)における磁束密度の分布とを、従来のようにして経験的に設計した場合と、その設計した値に夫々2枚ずつシールド板を増加させた場合と、本実施形態の設計装置により設計した場合との夫々について示した図である。
【図13】本発明の第2の実施形態を示し、磁気シールド装置の外部における磁束密度を、従来のようにして経験的に設計した場合と、その設計した値に夫々2枚ずつシールド板を増加させた場合と、本実施形態の設計装置により設計した場合との夫々について示した図である。
【符号の説明】
【0086】
10 設置領域
11 磁界発生源
20 設計装置
21 操作部
22 表示部
23 処理部
23a 磁気シールド装置形状記憶部
23b 設計対象面設定部
23c 磁束密度分布記憶部
23d 設計対象面代表長さ記憶部
23e 捕捉磁束密度記憶部
23f 磁束導出部
23g 厚み導出部
23h 厚み表示部
31〜33 シールド板群
71 磁気シールド装置
72 磁界発生源
73 内側シールド部
74 外側シールド部
81 設置領域
90 設計装置
91 処理部
91a 簡易設計部
91b 電磁場解析部
91c 漏れ磁場判定部
91d 磁界分布表示部
91e 厚み変更部
91f 厚み表示部
92a 磁気特性演算部
92b 磁束密度分布演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気シールド装置の設計対象面における、磁性体による厚みを設計する磁気シールド装置の設計装置であって、
前記磁気シールド装置の内部の磁界発生源から磁界が発生した際に前記設計対象面に生じる磁束密度を、ユーザによる操作手段の操作に基づき入力する第1の入力手段と、
前記第1の入力手段により入力された磁束密度に基づいて、前記設計対象面を通過する磁束を導出する磁束導出手段と、
前記磁気シールド装置の内部の磁界発生源から発生した磁界が、前記設計対象面に配置された磁性体板により捕捉されることに基づく目標値としての捕捉磁束密度を、ユーザによる操作手段の操作に基づき入力する第2の入力手段と、
前記磁気シールド装置の設計対象面の大きさを表す代表長さを、ユーザによる操作手段の操作に基づき入力する第3の入力手段と、
前記第2の入力手段により入力された捕捉磁束密度に基づく磁界が、前記設計対象面に配置された磁性体板で捕捉されるようにするための当該設計対象面の厚みを、前記磁束導出手段により導出された磁束と、前記第2の入力手段により入力された捕捉磁束密度と、前記第3の入力手段により入力された代表長さとを用いて算出する算出手段とを有することを特徴とする磁気シールド装置の設計装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記設計対象面に配置される磁性体板により、当該設計対象面の全体が密閉される場合には、前記磁束導出手段により導出された磁束と、前記第2の入力手段により入力された捕捉磁束密度と、前記第3の入力手段により入力された代表長さとから、前記設計対象面の厚みを算出することを特徴とする請求項1に記載の磁気シールド装置の設計装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記設計対象面に複数の磁性体板が所定の間隔で配置される場合には、前記磁束導出手段により導出された磁束と、前記第2の入力手段により入力された捕捉磁束密度と、前記第3の入力手段により入力された代表長さと、前記複数の磁性体板が前記設計対象面を占有する割合とから、前記設計対象面の厚みを算出することを特徴とする請求項1に記載の磁気シールド装置の設計装置。
【請求項4】
前記算出手段により算出された前記設計対象面の厚みを適用して、前記磁気シールド装置を含む解析対象領域に生じる電磁場を解析する電磁場解析手段と、
前記電磁場解析手段により解析された電磁場に基づく磁気特性が、目標範囲内であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により、前記電磁場解析手段により解析された電磁場に基づく磁気特性が、目標範囲内にないと判定された場合に、前記設計対象面の厚みの変更値を、ユーザによる操作手段の操作に基づき入力する第4の入力手段とを有し、
前記電磁場解析手段は、前記判定手段により、前記電磁場解析手段により解析された電磁場に基づく磁気特性が、目標範囲内であると判定されるまで、前記第4の入力手段により、前記設計対象面の厚みの変更値が入力される度に、当該入力された変更値を適用して、前記解析対象領域に生じる電磁場を解析することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の磁気シールド装置の設計装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記電磁場解析手段により解析された電磁場に基づいて、前記磁気シールド装置を構成する磁性体板の透磁率が、最大透磁率の半分以上、最大透磁率以下の範囲にあるか否かを判定することを特徴とする請求項4に記載の磁気シールド装置の設計装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記電磁場解析手段により解析された電磁場に基づいて、最大透磁率の半分以上、最大透磁率以下の範囲にある磁性体板が、前記磁気シールド装置を構成する磁生体板全体の50[%]以上あるか否かを判定することを特徴とする請求項5に記載の磁気シールド装置の設計装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記電磁場解析手段により解析された電磁場に基づく磁束密度の最大値が、前記磁性体板の飽和磁束密度の0.8倍以上、0.9倍以下の範囲であるか否かを判定することを特徴とする請求項5又は6に記載の磁気シールド装置の設計装置。
【請求項8】
前記算出手段は、前記磁気シールド装置から外部に漏れる磁界が問題となる所定の設計対象面の厚みを算出することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の磁気シールド装置の設計装置。
【請求項9】
磁気シールド装置の設計対象面における、磁性体による厚みを設計する磁気シールド装置の設計方法であって、
前記磁気シールド装置の内部の磁界発生源から磁界が発生した際に前記設計対象面に生じる磁束密度を、ユーザによる操作ステップの操作に基づき入力する第1の入力ステップと、
前記第1の入力ステップにより入力された磁束密度に基づいて、前記設計対象面を通過する磁束を導出する磁束導出ステップと、
前記磁気シールド装置の内部の磁界発生源から発生した磁界が、前記設計対象面に配置された磁性体板により捕捉されることに基づく目標値としての捕捉磁束密度を、ユーザによる操作ステップの操作に基づき入力する第2の入力ステップと、
前記磁気シールド装置の設計対象面の大きさを表す代表長さを、ユーザによる操作ステップの操作に基づき入力する第3の入力ステップと、
前記第2の入力ステップにより入力された捕捉磁束密度に基づく磁界が、前記設計対象面に配置された磁性体板で捕捉されるようにするための当該設計対象面の厚みを、前記磁束導出ステップにより導出された磁束と、前記第2の入力ステップにより入力された捕捉磁束密度と、前記第3の入力ステップにより入力された代表長さとを用いて算出する算出ステップとを有することを特徴とする磁気シールド装置の設計方法。
【請求項10】
前記算出ステップは、前記設計対象面に配置される磁性体板により、当該設計対象面の全体が密閉される場合には、前記磁束導出ステップにより導出された磁束と、前記第2の入力ステップにより入力された捕捉磁束密度と、前記第3の入力ステップにより入力された代表長さとから、前記設計対象面の厚みを算出することを特徴とする請求項9に記載の磁気シールド装置の設計方法。
【請求項11】
前記算出ステップは、前記設計対象面に複数の磁性体板が所定の間隔で配置される場合には、前記磁束導出ステップにより導出された磁束と、前記第2の入力ステップにより入力された捕捉磁束密度と、前記第3の入力ステップにより入力された代表長さと、前記複数の磁性体板が前記設計対象面を占有する割合とから、前記設計対象面の厚みを算出することを特徴とする請求項9に記載の磁気シールド装置の設計方法。
【請求項12】
前記算出ステップにより算出された前記設計対象面の厚みを適用して、前記磁気シールド装置を含む解析対象領域に生じる電磁場を解析する電磁場解析ステップと、
前記電磁場解析ステップにより解析された電磁場に基づく磁気特性が、目標範囲内であるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより、前記電磁場解析ステップにより解析された電磁場に基づく磁気特性が、目標範囲内にないと判定された場合に、前記設計対象面の厚みの変更値を、ユーザによる操作ステップの操作に基づき入力する第4の入力ステップとを有し、
前記電磁場解析ステップは、前記判定ステップにより、前記電磁場解析ステップにより解析された電磁場に基づく磁気特性が、目標範囲内であると判定されるまで、前記第4の入力ステップにより、前記設計対象面の厚みの変更値が入力される度に、当該入力された変更値を適用して、前記解析対象領域に生じる電磁場を解析することを特徴とする請求項9〜11の何れか1項に記載の磁気シールド装置の設計方法。
【請求項13】
前記判定ステップは、前記電磁場解析ステップにより解析された電磁場に基づいて、前記磁気シールド装置を構成する磁性体板の透磁率が、最大透磁率の半分以上、最大透磁率以下の範囲にあるか否かを判定することを特徴とする請求項12に記載の磁気シールド装置の設計方法。
【請求項14】
前記判定ステップは、前記電磁場解析ステップにより解析された電磁場に基づいて、最大透磁率の半分以上、最大透磁率以下の範囲にある磁性体板が、前記磁気シールド装置を構成する磁生体板全体の50[%]以上あるか否かを判定することを特徴とする請求項13に記載の磁気シールド装置の設計方法。
【請求項15】
前記判定ステップは、前記電磁場解析ステップにより解析された電磁場に基づく磁束密度の最大値が、前記磁性体板の飽和磁束密度の0.8倍以上、0.9倍以下の範囲であるか否かを判定することを特徴とする請求項13又は14に記載の磁気シールド装置の設計方法。
【請求項16】
前記算出ステップは、前記磁気シールド装置から外部に漏れる磁界が問題となる所定の設計対象面の厚みを算出することを特徴とする請求項9〜15の何れか1項に記載の磁気シールド装置の設計方法。
【請求項17】
磁気シールド装置の設計対象面における、磁性体による厚みを設計することをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記磁気シールド装置の内部の磁界発生源から磁界が発生した際に前記設計対象面に生じる磁束密度を、ユーザによる操作ステップの操作に基づき入力する第1の入力ステップと、
前記第1の入力ステップにより入力された磁束密度に基づいて、前記設計対象面を通過する磁束を導出する磁束導出ステップと、
前記磁気シールド装置の内部の磁界発生源から発生した磁界が、前記設計対象面に配置された磁性体板により捕捉されることに基づく目標値としての捕捉磁束密度を、ユーザによる操作ステップの操作に基づき入力する第2の入力ステップと、
前記磁気シールド装置の設計対象面の大きさを表す代表長さを、ユーザによる操作ステップの操作に基づき入力する第3の入力ステップと、
前記第2の入力ステップにより入力された捕捉磁束密度に基づく磁界が、前記設計対象面に配置された磁性体板で捕捉されるようにするための当該設計対象面の厚みを、前記磁束導出ステップにより導出された磁束と、前記第2の入力ステップにより入力された捕捉磁束密度と、前記第3の入力ステップにより入力された代表長さとを用いて算出する算出ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−111032(P2009−111032A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279391(P2007−279391)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】