説明

磁気ディスクの欠陥検査方法、その装置及び磁気ディスク・ドライブ装置

【課題】より確実に磁気ディスク上の欠陥を検出するテストを効率的に行う。
【解決手段】本発明の一形態にかかるHDD1は、TFCを利用して磁気ディスク11の欠陥テストを行う。TFCによってクリアランスを変化させることで、HDD製造のスループットを大きく落とすことなく、異なるテスト条件における欠陥検出テストを行うことができる。まず、P2のヒータ・パワーをヒータ124に供給した状態においてSATを実行する。その後、P1のヒータ・パワーをヒータ124に供給した状態においてSATを実行する。ヒータ・パワーP2が、ヒータ・パワーP1よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気ディスクの欠陥検査方法、その装置及び磁気ディスク・ドライブ装置に関し、特に、ヘッド・磁気ディスク間のクリアランスを制御する機能を使用した磁気ディスクの欠陥検査に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク・ドライブ装置として、光ディスク、光磁気ディスクあるはフレキシブル磁気ディスクなどの様々な態様のディスクを使用する装置が知られているが、その中で、ハードディスク・ドライブ(HDD)は、コンピュータの記憶装置として広く普及し、現在のコンピュータ・システムにおいて欠かすことができないディスク・ドライブ装置の一つとなっている。さらに、コンピュータにとどまらず、動画像記録再生装置、カーナビゲーション・システム、携帯電話、あるいはデジタルカメラなどで使用されるリムーバブルメモリなど、HDDの用途はその優れた特性により益々拡大している。
【0003】
このようなHDDに対しては高い信頼性が要求される。このため、その製造プロセスにおいて、磁気ディスク表面上の欠陥についてテストする工程が存在する。磁気ディスク・テストの一つとして、製造されたHDD自身がその内部の磁気ディスクの欠陥を検出するテストがある。例えば、HDDは、磁気ディスクの各データ・トラックにデータを書き込み、さらに書き込んだデータを読み出すことによって磁気ディスク上の欠陥を特定する。このテストは、HDD内の各記録面の全面について実行される。検出された欠陥セクタは、欠陥テーブルに登録される。HDDは、欠陥テーブルに登録された欠陥セクタにはアクセスすることなく、それらをスキップする。
【0004】
HDDは、その仕様において、特定の温度範囲及び標高(気圧)範囲において使用されることが規定されている。ヘッド・ディスク間のクリアランス(ヘッド・ディスク間の距離)は、環境温度及び標高(気圧)に従って変化する。具体的には、温度の低下に従いクリアランスは増加し、標高が高くなるにつれてクリアランスは減少する。HDDの特定の一使用状況におけるテストは、他の使用状況によって現れうる欠陥を見過ごす可能性がある。従って、磁気ディスクの欠陥検出テストは、変化するクリアランスに対応して行うことが好ましい。例えば、減圧空間内において磁気ディスクの欠陥検査を行うことによって、ヘッド・スライダの浮上高を変化させることが、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平6−309636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来においては、異なるクリアランス条件において磁気ディスクの欠陥検出テストを行うためには、温度もしくは気圧を変化させることが必要とされていた。しかし、磁気ディスクの欠陥検出テストはHDDをチャンバ内に配置して行うため、温度もしくは気圧を変化させてテストを行うことは、多くの時間と設備とを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、回転する磁気ディスク上を浮上するスライダと、前記スライダに配置されたヘッド素子部と、前記スライダに配置され、前記ヘッド素子部を熱膨張によって突出させて前記磁気ディスクとの間のクリアランスを調整するヒータと、を有する磁気ディスク・ドライブ装置において、磁気ディスク上の欠陥を検査する方法である。この方法は、前記ヒータのヒータ・パワー値が第1の値である状態において、前記ヘッド素子部によって前記磁気ディスクの記録面にアクセスし、その記録面の欠陥検査を行う。そして、前記ヒータのヒータ・パワー値が前記第1の値と異なる第2の値である状態において、前記ヘッド素子部によって前記記録面にアクセスし、その記録面の欠陥検査を行う。異なるヒータ・パワー値においてテストを行うことで、効率的に磁気ディスク上の欠陥をより確実に検出することができる。
【0007】
好ましくは、前記第1の値において欠陥検査された領域から選択された一部の領域について、前記第2の値における欠陥検査を行う。これによって、テスト時間を短縮することができる。さらに、前記第1の値は前記第2の値よりも大きいことが好ましい。これによって、検出されなかったスクラッチをより確実に検出することができる。
【0008】
前記第1の値における欠陥検査結果に基づいて前記一部の領域を選択することが好ましい。また、前記第1の値における欠陥検査において検出された欠陥の密度に基づいて前記一部の領域を選択することが好ましい。これによって、より適切な領域を選択することができる。さらに、前記ヒータのヒータ・パワー値が第1の値である状態における検査において検出された欠陥の少なくとも一部を、欠陥候補として予備登録することが好ましい。これによって、欠陥としての登録数を減少させると共に、テスト後の欠陥の発生を抑えることができる。
【0009】
前記第1の値は、同一温度における前記磁気ディスク・ドライブ装置の通常動作のヒータ・パワー値よりも大きく、前記第2の値は、同一温度における前記磁気ディスク・ドライブ装置の通常動作のヒータ・パワー値よりも小さいことが好ましい。これによって、欠陥の検出ミスをより効果的に低減することができる。
【0010】
本発明の他の態様は、磁気ディスクの欠陥を検査する装置である。この装置は、回転する磁気ディスク上を浮上するスライダと、前記スライダに配置されたヘッド素子部と、前記スライダに配置され、前記ヘッド素子部を熱膨張によって突出させて前記ディスクとの間のクリアランスを調整するヒータと、コントローラを備える。このコントローラは、前記ヒータのヒータ・パワーが第1の値である状態において、前記ヘッド素子部を使用して前記磁気ディスクの記録面へアクセスして前記磁気ディスクの欠陥検査を行い、さらに、前記ヒータのヒータ・パワーが前記第1の値と異なる第2の値である状態において、前記ヘッド素子部を使用して前記記録面へアクセスして前記磁気ディスクの欠陥検査を行う。異なるヒータ・パワー値においてテストを行うことで、効率的に磁気ディスク上の欠陥をより確実に検出することができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る磁気ディスク・ドライブ装置は、回転する磁気ディスク上を浮上するスライダと、前記スライダに配置されたヘッド素子部と、前記スライダに配置され、前記ヘッド素子部を熱膨張によって突出させて前記ディスクとの間のクリアランスを調整するヒータと、前記ヒータのヒータ・パワー値が通常動作におけるヒータ・パワー値とは異なる状態において、前記ヘッド素子部を使用して前記磁気ディスクへアクセスして前記磁気ディスクの欠陥検査を行うコントローラを備えるものである。通常動作におけるヒータ・パワー値とは異なるヒータ・パワー値において磁気ディスクの欠陥検査を行うことで、より確実に欠陥を検出することができる。
【0012】
前記欠陥検査におけるヒータ・パワー値は、通常動作におけるヒータ・パワー値よりも小さいことが好ましい。これによって、時間経過と共に成長した欠陥を効果的に検出することができる。あるいは、前記コントローラは、欠陥候補として予め予備登録されているセクタに対して前記欠陥検査を行うことが好ましい。これによって、より効率的かつ確実に欠陥を検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より確実に磁気ディスク上の欠陥を検出することができるテストを、効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0015】
本発明は、磁気ディスク・ドライブ装置における磁気ディスクの欠陥を検出する欠陥検出テストに関する。本形態においては、ディスク・ドライブ装置の一例であるハードディスク・ドライブ(HDD)を例として、本発明の欠陥検出テストを説明する。本形態のHDDは、その回路及び機構を使用して自ら磁気ディスクの欠陥テストを実行する。そこで、本発明の理解の容易のため、最初に、HDDの全体構成を説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係るHDD1の全体構成を模式的に示すブロック図である。図1に示すように、HDD1は、密閉されたエンクロージャ10内に、記録ディスク(記録媒体)の一例である磁気ディスク11、ヘッド・スライダ12、アーム電子回路(AE:Arm Electronics)13、スピンドル・モータ(SPM)14、ボイス・コイル・モータ(VCM)15、そしてアクチュエータ16、そして温度検出器17を備えている。
【0017】
HDD1は、さらに、エンクロージャ10の外側に固定された回路基板20を備えている。回路基板20上には、リード・ライト・チャネル(R/Wチャネル)21、モータ・ドライバ・ユニット22、ハードディスク・コントローラ(HDC)とMPUの集積回路(HDC/MPU)23及びRAM24などの各ICを備えている。尚、各回路構成は一つのICに集積すること、あるいは、複数のICに分けて実装することができる。
【0018】
外部ホスト51からのユーザ・データは、HDC/MPU23によって受信され、R/Wチャネル21、AE13を介して、ヘッド・スライダ12によって磁気ディスク11に書き込まれる。また、磁気ディスク11に記憶されているユーザ・データはヘッド・スライダ12によって読み出され、そのユーザ・データは、AE13、R/Wチャネル21を介して、HDC/MPU23から外部ホスト51に出力される。
【0019】
磁気ディスク11は、SPM14に固定されている。SPM14は所定の角速度で磁気ディスク11を回転する。HDC/MPU23からの制御データに従って、モータ・ドライバ・ユニット22がSPM14を駆動する。本例の磁気ディスク11はデータを記録する記録面を両面に備え、また、各記録面に対応するヘッド12が設けられている。各ヘッド・スライダ12は、磁気ディスク11上を浮上する(飛行する)スライダと、スライダに固定され磁気ディスク11の記録面にアクセスするヘッド素子部とを備えている。ここで、アクセスはリードまたはライトを意味し、その双方を包含する言葉である。本形態のヘッド素子部は、磁気信号と電気信号との間の変換を行うトランスデューサとして機能する。本形態のヘッド・スライダ12は、加熱によってヘッド素子部を突出させ、その磁気ディスク11との間のクリアランス(浮上高)を調整するTFC(Thermal Fly height Control)のためのヒータを備えている。ヘッド・スライダ12の構造については、後に図3を参照して詳述する。
【0020】
各ヘッド・スライダ12はアクチュエータ16の先端部に固定されている。アクチュエータ16はVCM15に連結され、回動軸を中心に回動することによって、ヘッド・スライダ12を回転する磁気ディスク11上においてその半径方向に移動する。モータ・ドライバ・ユニット22は、HDC/MPU23からの制御データ(DACOUTと呼ぶ)に従ってVCM15を駆動する。なお、磁気ディスク11は、1枚以上あればよく、記録面は磁気ディスク11の片面あるいは両面に形成することができる。
【0021】
AE13は、複数のヘッド12(ヘッド素子部)の中から磁気ディスク11へのアクセスを行う1つのヘッド・スライダ12(ヘッド素子部)を選択し、選択されたヘッド・スライダ12により再生される再生信号(リード信号)を一定のゲインで増幅(プリアンプ)し、R/Wチャネル21に送る。また、R/Wチャネル21からの記録信号(ライト信号)を選択されたヘッド・スライダ12に送る。また、本形態のAE13は、選択されたヘッド・スライダ12のヒータにヒータ・パワーを供給する。この点については後述する。
【0022】
R/Wチャネル21は、リード処理において、AE13から供給されたリード信号を一定の振幅となるように増幅し、取得したリード信号からデータを抽出し、デコード処理を行う。読み出されるデータは、ユーザ・データとサーボ・データを含む。デコード処理されたリード・ユーザ・データは、HDC/MPU23に供給される。また、ライト処理において、R/Wチャネル21はHDC/MPU23から供給されたライト・データをコード変調し、更にコード変調されたライト・データをライト信号に変換してAE13に供給する。
【0023】
HDC/MPU23において、MPUはRAM24にロードされたマイクロ・コードに従って動作する。HDD1の起動に伴い、RAM24には、MPU上で動作するマイクロ・コードの他、制御及びデータ処理に必要とされるデータが磁気ディスク11あるいはROM(不図示)からロードされる。HDC/MPU23は、リード/ライト処理制御、コマンド実行順序の管理、サーボ信号を使用したヘッド12のポジショニング制御(サーボ制御)、インターフェース制御、ディフェクト管理などのデータ処理に関する必要な処理の他、HDD1の全体制御を実行する。また、HDC/MPU23は、通常動作において、温度検出器17の検出温度に従ってヒータ・パワーを決定し、クリアランス制御を実行する。本形態においては、特に、磁気ディスク11の欠陥検出テスト工程の管理、制御を実行する。欠陥検出テストについては後述する。
【0024】
図2を参照して、磁気ディスク11上の記録データについて説明する。図2は、磁気ディスク11の記録面の記録データの状態を模式的に示している。図2に示されるように、磁気ディスク11の記録面には、磁気ディスク11の中心から半径方向に放射状に延び、所定の角度毎に離間して形成された複数のサーボ領域111と、隣り合う2つのサーボ領域111の間にデータ領域112が形成されている。サーボ領域111とデータ領域112は、所定の角度で交互に設けられている。各サーボ領域111には、ヘッド12の位置決め制御を行うためのサーボ・データが記録される。各データ領域112は、ユーザ・データを記録する。
【0025】
サーボ領域111とデータ領域112には、半径方向に所定幅を有し、同心円状に形成された複数本のトラックが形成される。サーボ・データおよびユーザ・データは、それぞれ、サーボ・トラック、データ・トラックに沿って記録される。サーボ・トラックとデータ・トラックは一致もしくは異なる半径位置に配置されうる。各サーボ・トラックは、互いに所定角度において離間して配置された複数のサーボ・データを備えている。
【0026】
また、各データ・トラックは、サーボ領域111間のデータ領域112に1もしくは複数のデータ・セクタ(ユーザ・データの記録単位)を備えている。また、1トラックにおいて、一つのサーボ・データから次のサーボ・データの直前のデータ・セクタまでを、一つのサーボ・セクタと呼ぶ。データ・トラックは、磁気ディスク11の半径方向の位置に従って、複数のゾーンZ0−Z2にグループ化されている。1つのデータ・トラックに含まれるデータ・セクタの数は、ゾーンのそれぞれに設定される。図2において、外周側(OD側)から内周側(ID側)に、3つのゾーンZ0−Z2がそれぞれ例示されている。OD側のゾーンの記録周波数をID側のゾーンの記録周波数よりも高くし、ゾーン毎に記録周波数を変更することで、磁気ディスク11全体の記録密度を向上することができる。
【0027】
次に、本形態におけるTFCヘッド・スライダ12構成について説明を行う。図3は、ヘッド・スライダ12の空気流出端面(トレーリング側端面)121近傍におけるその一部構成を示す断面図である。磁気ディスク11は、図3の左から右に向かって回転する。ヘッド・スライダ12は、ヘッド素子部122とヘッド素子部122を支持するスライダ123とを備えている。なお、本形態のTFCは垂直磁気記録、水平磁気記録の双方のHDDに適用することができる。
【0028】
ヘッド素子部122は、磁気ディスク11との間で磁気データを読み書きする。ヘッド素子部122は、リード素子32とそのトレーリング側のライト素子31とを備えている。ライト素子31は、ライト・コイル311を流れる電流で磁極312間に磁界を発生し、磁気データを磁気ディスク11に記録するインダクティブ素子である。リード素子32は磁気抵抗型の素子であって、磁気異方性を有する磁気抵抗素子32aを備え、磁気ディスク11からの磁界によって変化するその抵抗値によって磁気ディスク11に記録されている磁気データを読み出す。
【0029】
ヘッド素子部122は、スライダ123を構成するアルチック(AlTiC)基板に、メッキ、スパッタ、研磨などの薄膜形成プロセスを用いて形成される。磁気抵抗素子32aは、磁気シールド33a、bによって挟まれており、ライト・コイル311は絶縁膜313で囲まれている。また、ヘッド素子部122はライト素子31とリード素子32の周囲にアルミナなどの保護膜34を備え、ヘッド素子部122全体はその保護膜34で保護されている。ライト素子31およびリード素子32の近傍には、薄膜で形成された抵抗体によるヒータ124が薄膜プロセスを用いて形成されている。本例において、ヒータ124は、ヘッド素子部122の反磁気ディスク11側に位置している。パーマロイを使用した薄膜抵抗体を蛇行させ、間隙はアルミナで埋めてヒータ124を形成することができる。
【0030】
AE13がヒータ124に電流を流すと(電力を供給すると)、ヒータ124の熱によってヘッド素子部122の近傍が突出変形する。ヒータ124への供給パワーを調整することによって、ヘッド素子部122と記録面との間のクリアランスを制御することができる。これを、TFC(Thermal Fly height Control)と呼ぶ。非加熱時もしくはヒータ・パワーが小さいとき、ヘッド・スライダ12のABS面は、S1で示される形状であり、ヘッド素子部122と磁気ディスクとの間の距離であるクリアランスは、C1で示されている。
【0031】
ヒータ124加熱時もしくはヒータ・パワーを増加したときにおける突出形状S2を、図3に破線で模式的に示す。ヘッド素子部122が磁気ディスク11に近づき、このときのクリアランスC2は、クリアランスC1よりも小さい。なお、図3は概念図であり、寸法関係は正確ではない。例えば、突出面形状S2はナノメートル・オーダ(数ナノメートル)の突出量である。
【0032】
上述のように、HDC/MPU23がヒータ124を制御する。通常動作において、HDC/MPU23は温度検出器17の検出温度及びリード/ライト処理の各工程に従って、AE13のレジスタにヒータ・パワーを表す値をセットする。AE13は、セットされた値のヒータ・パワーをヒータ124に供給する。通常、温度上昇に従ってヒータ・パワーは減少し、また、書き込み時のヒータ・パワーは読み出し時のヒータ・パワーよりも小さい。
【0033】
以下において、本形態における磁気ディスク11の欠陥テストについて詳述する。本形態のHDD1は、TFCを利用して磁気ディスク11の欠陥テストを行う。TFCによってクリアランスを変化させることで、HDD製造のスループットを大きく落とすことなく、異なるテスト条件における欠陥検出テストを行うことができる。具体的には、本形態の磁気ディスクの欠陥検出テストは、一つの記録面において、TFCによって異なるクリアランスにおけるテストを行う。これによって、記録面上の欠陥をより確実に検出することができる。
【0034】
本形態のHDD1は、自ら磁気ディスク11の欠陥テストを実行する。本明細書において、これをSRST(Self Run Self Test)と呼ぶ。HDD1は、その機械的機構と製品として実装される制御回路とを使用してSRSTを実行する。HDD1の製造工程は、まず、エンクロージャ10内に磁気ディスク11、ヘッド12、アクチュエータ16などの必要な部品を実装して、ヘッド・ディスク・アセンブリ(HDA)を製造する。さらに、必要な回路が実装された制御回路基板20をそのHDAに装着する。SRSTは、この製品としてのHDD1が組み立てられた段階において、HDD1が自らの回路及び機構を使用して実行する。
【0035】
SRSTは、磁気ディスク11の記録面について、いくつかのタイプの欠陥検出テストを行う。本形態においては、本発明の適用に好適な例として、表面解析テスト(Surface Analysis Test:SAT)と呼ばれるテストの例を説明する。概略を説明すると、SATは磁気ディスク11の各データ・トラックにデータを書き込み、さらに書き込んだデータを読み出すことによって記録面上の欠陥を特定する。
【0036】
本例のSATは、HDD1内の全トラック及び全セクタについて実行する。検出された欠陥セクタは欠陥テーブルに登録される。HDD1は、欠陥テーブルに登録されたセクタにはアクセスせず、それら欠陥セクタをスキップする。本形態のSRSTは、テスト・チャンバ内で行われ、実質的に同一温度及び同一気圧条件に維持されている。典型的には、50℃程度の高温下、常圧状態においてSRSTが実行される。
【0037】
例えば、SATは、3つのテストから構成されている。HDD1は、シーケンシャルSAT、ODD/EVEN SAT及び通常SATを実行する。通常SATは、製品になったときの通常のデータ・パターンでトラック毎にライト及びリード処理を行うことで、データ・トラックの欠陥を検出する。シーケンシャルSATは、各データ・トラックに順次データを書き込む。その後、書き込み開始データ・トラックから順次データを読み出す。アクセス順序は、OD側もしくはID側のデータ・トラックから順次行う。所定のエラーが発生すると、そのデータ・セクタもしくは一連のデータ・セクタを欠陥セクタとして登録する。ODD/EVEN SATは、ターゲットのデータ・トラックにデータを書き込んだ後、その両側の隣接データ・トラックにデータを書き込む。ターゲット・トラックからデータを読み出して、ターゲット・トラックの欠陥検出を行う。この処理を各データ・トラックについて順次実行する。
【0038】
図4(a)及び(b)を参照して、TFCを使用したSATの好ましい一つの例について説明する。本例のHDD1は、まず、図4(a)に示すように、P2のヒータ・パワーをヒータ124に供給した状態においてSATを実行する。その後、HDD1は、P1のヒータ・パワーをヒータ124に供給した状態においてSATを実行する。ここでの各ヒータ・パワーは、データを読み出すステップにおける値である。
【0039】
HDD1は、上記通常SAT、シーケンシャルSAT及びODD/EVEN SATのそれぞれにおいて、異なるヒータ・パワーにおけるテストを実行する。ここで、各種類のSATにおいて、データ・トラック毎に、ヒータ・パワーP2及びヒータ・パワーP1におけるテストを実行することが好ましい。つまり、ターゲットとするデータ・トラックのデータ読み出しを、上記二つの異なるヒータ・パワーにおいて連続して実行し、その後、次のターゲット・トラックのテストに移行する。これによって、シーク処理を省略し、テスト時間の短縮を図ることができる。この点は、以下の他の例において同様である。
【0040】
図4(a)及び(b)に示すように、ヒータ・パワーP2が、ヒータ・パワーP1よりも大きい。本例において、ヒータ・パワーP1は、出荷後におけるHDD1の通常動作におけるヒータ・パワーである。つまり、HDD1は、テスト時の温度と同様の温度におけるデータ読み出しにおいて、P1のヒータ・パワーをヒータ124に供給する。図4(a)及び(b)の例においては、ヒータ・パワーP1及びP2において、ヘッド素子部122が、スライダ123のABS面よりも記録面側に突出している。なお、ヘッド素子部122がABS面よりも後退していてもよい。
【0041】
ヒータ・パワーP2におけるヘッド素子部122は、ヒータ・パワーP1におけるよりも記録面側に突出し、クリアランスが小さくなっている。このため、ヒータ・パワーP2におけるテストは、ヒータ・パワーP1におけるテストよりも、突起116をより確実に検出することができる。ヘッド・スライダ12が突起116と衝突することによって、記録面上の突起116は、いわゆるサーマル・アスペリティ(TA)として読み出し信号上に現れる。
【0042】
従って、この欠陥を予めより確実に検出しておくことが重要である。また、突起116は、テスト時に小さくてTAとして検出されないものであっても、出荷後にはHDD1内の塵埃(smear)117が付着することによって成長し、TAとして現れるものが存在する。上記のようにテスト時において、より高いヒータ・パワーP2によってクリアランスを減少させることで、小さい突起をより確実に検出することができる。
【0043】
次に、図5(a)及び(b)を参照して、TFCを使用したSATの他の好ましい一つの例について説明する。本例のHDD1は、まず、図5(a)に示すように、P1のヒータ・パワーをヒータ124に供給した状態においてSATを実行する。このP1は、図4を参照して説明した例におけるP1と同様である。その後、HDD1は、P3のヒータ・パワーをヒータ124に供給した状態においてSATを実行する。
【0044】
図5(a)及び(b)に示すように、ヒータ・パワーP3が、ヒータ・パワーP1よりも小さい。ヒータ・パワーP3は、好ましくは実質的に0である。図5(b)の例においては、ヒータ・パワーP3において、ヘッド素子部122はABS面よりも後退している。なお、ヒータ・パワーP3において、ヘッド素子部122はABS面よりも突出していてもよい。
【0045】
磁気ディスク上の欠陥としては、突起116のほかに、スクラッチと呼ばれる穴(凹部)118の欠陥が存在する。スクラッチ118が存在する場合、実効的なクリアランスが増加するため、読み出し信号が小さくなって正確にデータを読み出すことができない、あるいは、書き込みの磁界が小さくなり正確にデータを書き込むことができないなどのエラーが発生する。このため、テスト工程においてスクラッチを確実に検出することが重要である。
【0046】
本例において、パワー値のより小さいヒータ・パワーP3におけるSATが実行される。ヒータ・パワーP3におけるクリアランスは、ヒータ・パワーP1におけるクリアランスよりも大きいため、ヘッド素子部122が、スクラッチ118が存在する領域のデータを正確に読み出すことができない可能性が高い。つまり、ヒータ・パワーP3におけるSATは、より確実に、スクラッチ118を検出することができる。
【0047】
続いて、図6(a)及び(b)を参照して、TFCを使用したSATの他の好ましい一つの例について説明する。本例のHDD1は、まず、図6(a)に示すように、P2のヒータ・パワーをヒータ124に供給した状態においてSATを実行する。その後、HDD1は、P3のヒータ・パワーをヒータ124に供給した状態においてSATを実行する。P2は図4を参照して説明した例におけるP2と同様であり、P3は図5を参照して説明した例におけるP3と同様である。従って、ヒータ・パワーP2は、ヒータ・パワーP3よりも大きい。また、ヒータ・パワーP2におけるクリアランスは、ヒータ・パワーP3におけるクリアランスよりも小さい。
【0048】
ヒータ・パワーP2は、通常のヒータ・パワーP1よりも大きく、クリアランスが小さいため、このヒータ・パワーにおけるテストは、より確実に突起116を検出することができる。さらに、ヒータ・パワーP3は、通常のヒータ・パワーP1よりも小さく、クリアランスが大きいため、このヒータ・パワーにおけるテストは、より確実にスクラッチ118を検出することができる。このように、同一条件下の通常動作におけるヒータ・パワーP1よりも、大きいヒータ・パワーP2及び小さいヒータ・パワーP3における欠陥検出テストをそれぞれ行うことで、より確実に記録面上の欠陥を検出することができる。
【0049】
ここで、ヒータ・パワーP2とP3とは、HDD1の仕様に従って決定することができる。例えば、HDDの設計仕様において最もクリアランスが大きい状態に対応してヒータ・パワーP3を決定し、最もクリアランスが小さい状態に対応してヒータ・パワーP2を決定する。仕様下限温度、仕様下限高度において、クリアランスが最も大きい。一方、仕様上限温度、仕様上限高度において、クリアランスが最も小さい。このようにヒータ・パワーを決定することによって、HDD1の使用想定範囲において最も厳しい条件でのテストを行うことができ、磁気ディスクの欠陥検出を効果的に行い、出荷後のエラー発生を効果的に抑制することができる。
【0050】
次に、図7(a)、(b)及び(c)を参照して、TFCを使用したSATの他の好ましい例について説明する。本例のSATは、3つの異なるヒータ・パワーを使用してSATを実行する。さらに、本例のSATは、突起として検出された欠陥(欠陥候補)の一部を、欠陥候補として予備登録する。HDC/MPU23は、欠陥候補を欠陥テーブルに登録せず、それとは異なる欠陥候補テーブルに登録する。HDC/MPU23は、欠陥候補のセクタをスキップすることなく、通常動作においてデータの格納に使用する。なお、テスト時においては、欠陥候補テーブルはRAM24に生成されており、テスト終了後は、磁気ディスク11の所定領域に記録される。この点は、欠陥テーブルについても同様である。
【0051】
HDC/MPU23は、出荷後の使用状況下において、例えばアイドル状態にあるときに、登録されている欠陥候補のセクタについてテストを実行する。テストにおいてエラー検出された場合、HDC/MPU23は、そのセクタのデータを他のアドレスのセクタに代替し、さらに、エラー検出されたセクタを欠陥セクタとしてテーブルに登録する。HDC/MPU23は、欠陥として登録されたセクタの代わりに代替セクタにアクセスする。
【0052】
欠陥候補を予備登録することによって、欠陥として登録するセクタ数あるいはエントリ数を低減することができる。欠陥テーブルに登録することができるエントリ数は限られているため、登録する欠陥を抑えることによって、欠陥テーブルのオーバーフローを避けることができる。
【0053】
上述のように、特に記録面上の突起116はHDD1の使用時間の増加と共に成長する可能性がある。従って、テスト時には小さい突起を欠陥候補として予め予備登録しておくことが好ましい。また、小さい突起が出荷後の使用時間の経過と共に大きく成長し、実際のリード/ライト処理における致命的な不具合が発生する前に欠陥として登録することが好ましい。
【0054】
好ましい例において、HDC/MPU23は、欠陥候補のセクタを実際に読み出し、TAが検出されるかを判定する。このとき、HDC/MPU23は、温度検出器17の検出温度における通常動作時のヒータ・パワーよりも大きなヒータ・パワーをヒータ124に供給するように制御することが好ましい。これによって、より確実に、突起116が大きく成長して通常動作においてエラーとなる前に、欠陥登録をすることができる。典型的には、RWチャネル21がTAを検出する回路(機能)を有しており、その結果をHDC/MPU23に通知する。なお、HDC/MPU23は、欠陥候補として登録されているセクタにおいて、エラーが基準回数以上発生した場合、そのセクタを不使用の欠陥セクタとして登録し、上記の代替処理を行うようにしてもよい。
【0055】
上述のように、SATにおいて、突起を検出すると共に、欠陥候補として予備登録する小さい突起を検出することが好ましい。本例は、異なるヒータ・パワーP1及びP2においてテストを行うことで、小さい突起を検出する。具体的には、図7(a)に示すように、HDD1は、ヒータ・パワーP2においてテストを行う。その後、図7(b)に示すように、HDD1はヒータ・パワーP1においてテストを行う。ヒータ・パワーP1におけるテストは、テスト対象の記録面の全領域について行ってもよいが、好ましくは、ヒータ・パワーP2におけるテストにおいて欠陥検出された各領域のみ、あるいはP2におけるテストにおいて検出された各領域とその周囲の予め定められたセクタ数及びシリンダ数範囲の領域について行う。
【0056】
クリアランスは、ヒータ・パワーP1におけるテストの方が大きい。従って、ヒータ・パワーP1におけるテストは、比較的大きな突起119を検出し、小さい突起116は検出しない。このため、ヒータ・パワーP2におけるテストが検出し、ヒータ・パワーP1におけるテストが検出しなかった欠陥は、小さい突起116に起因するものであると考えることができる。なお、突起の検出は、上記のようにRWチャネル21のTA検出機能により行うことができる。
【0057】
そこで、HDC/MPU23は、ヒータ・パワーP2におけるテストにおいて検出された欠陥のアドレスをRAM24に保存する。その後、ヒータ・パワーP2において検出された欠陥についてヒータ・パワーP1におけるテストを実行する。HDC/MPU23は、ヒータ・パワーP1におけるテストで検出された欠陥を欠陥テーブルに登録する。さらに、HDC/MPU23は、ヒータ・パワーP1におけるテストにおいて検出され、ヒータ・パワーP2におけるテストで検出されなかった残りの欠陥を欠陥候補テーブルに登録する。
【0058】
HDC/MPU23は、その後、図7(c)に示すように、ヒータ・パワーP3においてテストを行う。ヒータ・パワーP3は、ヒータ・パワーP1及びP2よりも小さく、ヒータ・パワーP3におけるテストは、スクラッチ118による欠陥を効果的に検出することができる。HDC/MPU23は、ヒータ・パワーP3におけるテストで検出した欠陥は、全て欠陥テーブルに登録する。スクラッチ118は、突起116と異なり、成長するものではないので、SATで検出した全ての欠陥を欠陥テーブルに登録することが好ましい。
【0059】
図4−6を参照して説明したSATは、大きいヒータ・パワーをヒータ124に供給した状態において欠陥検出テストを行い、その後、より小さいヒータ・パワーをヒータ124に供給した状態において欠陥検出テストを行う。また、図7を参照して説明したSATは、最初により大きいP1及びP2においてテストを行い、その後、より小さいP3においてテストを実行する。大きいヒータ・パワーにおけるテストは、突起116の検出に適しており、小さいヒータ・パワーにおけるテスト(特にP3におけるテスト)は、スクラッチ118の検出に適している。好ましい態様において、HDC/MPU23、大きいヒータ・パワーにおけるテストが検出した欠陥に基づいて、大きいヒータ・パワーにおけるテストが検査した領域から一部の領域を選択する。そして、その選択したデータ領域について、小さいヒータ・パワーにおけるテストを実行する。これによって、テスト時間を短縮することができる。
【0060】
スクラッチ118は、一般に、磁気ディスク11の製造工程におけるテクスチャに起因する。テクスチャは、磁気ディスク11の磁性層において円周方向における磁気異方性を形成するための機械的工程である。具体的には、スパッタ前の磁気ディスク11の基板を回転し、その回転した状態においてテープで基板をこする。テープは、磁気ディスク11の半径方向において前後に動く。従って、スクラッチ118は、図8に示すように、円周方向についてサイン曲線を形成するように発生する。
【0061】
図8は、TFC機能が実装されていないHDDにおいて、一つの記録面について、SATの結果として欠陥テーブルに登録された欠陥の一部を示している。図8において、X軸はセクタ番号を示し、Y軸はトラック番号(シリンダ番号)を示している。つまり、X軸方向が円周方向であり、Y軸方向が半径方向に相当する。図8において、黒色のひし形は、テスト結果として欠陥テーブルに登録されたセクタである。白色の円は、テストにおいて検出されずに欠陥テーブルに登録されなかったが、実際の低温における使用状況下においてエラーとなったセクタを示している。
【0062】
発明者らのこれまでの研究から、図8の例に示すように、テクスチャによるサイン曲線のピーク/バレーにおいて多くの欠陥が検出されると共に、この位置において欠陥が正確に検出されない確率が高いことが知られている。この欠陥はスクラッチであるから、クリアランスが大きい状態におけるテストが、この欠陥をより確実に検出することができる。従って、ヒータ・パワーが小さい状態におけるテストを、この領域を含むように選択した一部の領域において行うことで、欠陥を効果的に検出することができると共に、テスト時間を短縮することができる。
【0063】
HDC/MPU23は、大きいヒータ・パワーにおけるテストにおいて検出された欠陥に基づいて、小さいヒータ・パワーにおけるテスト対象となるトラック(シリンダ)を選択する。小さいヒータ・パワーにおけるテスト対象となる領域は、大きいヒータ・パワーにおけるテスト対象領域の一部である。大きいヒータ・パワーにおけるテストはスクラッチ118を検出することができるが、その検査において一部のスクラッチ118が見過ごされやすい。そこで、HDC/MPU23は、大きいヒータ・パワーにおけるテストにおいて検出した欠陥位置から、図8に示したピーク/バレーを含む領域を特定し、その特定した領域において小さいヒータ・パワーにおけるテストを行う。
【0064】
ピーク/バレーを含むようにテスト対象領域を決定する好ましい方法の一つは、大きいヒータ・パワーにおけるテストにおいて検出された欠陥の密度に従って、選択領域を決定する。例えば、HDC/MPU23は、大きいヒータ・パワーにおけるテストで検出された欠陥を、予め設定されたシリンダ数毎に量子化する。つまり、HDC/MPU23は記録面を所定シリンダ数毎に分轄し、各分割された領域における欠陥の数(密度)を特定する。このように得られた度数分布を参照し、HDC/MPU23は、基準数をこえる欠陥を含む単位領域を特定する。
【0065】
図9は、図8のグラフに対応したテスト結果データに対して、500シリンダ毎に欠陥セクタ数を特定し、そこから得られた度数分布を示している。例えば、シリンダ0−499の領域に対しては、シリンダ249に対する欠陥セクタ数として表している。図9において楕円で囲まれた領域が、図8におけるピーク/バレーに相当する。図9が示すように、所定の数をこえる欠陥を含む領域を選択的にテストすることで、ピーク/バレーを含む領域をテストすることができる。具体的には、HDD1の設計段階において適切な基準数を決定し、HDC/MPU23は、その基準数を超える欠陥を含む各単位領域に対して小さいヒータ・パワーにおけるテストを行う。
【0066】
あるいは、HDC/MPU23は、対応する欠陥数が基準数を超えるシリンダ番号を特定し、そのシリンダ番号の周囲の予め設定された所定領域について、小さいヒータ・パワーにおけるテストを行ってもよい。例えば、シリンダ999−1499の領域における欠陥セクタ数が基準数を超える場合、HDC/MPU23は、シリンダ1249を中心として、上記単位領域と異なる所定範囲について、小さいヒータ・パワーにおけるテストを行ってもよい。
【0067】
以上、本発明を好ましい実施形態を例として説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。例えば、本形態の欠陥テストは、SRSTに好適であるが、磁気ディスク上の他の欠陥テストに適用することができる。また、HDD1の製品としての制御回路を使用せず、テスト専用の制御回路を使用してテストを行ってもよい。テスト専用の制御回路を含む装置が磁気ディスク・ドライブ装置を構成する。
【0068】
出荷後のHDD内における欠陥検出テストは、予備登録された欠陥候補に対して行うことが好ましいが、予備登録処理とは独立にこれを行ってもよい。つまり、磁気ディスクの出荷前テストと関わりなく、出荷後にHDD内でTFCを使用したテストを行ってもよい。上述の例においてP1は通常動作におけるヒータ・パワー値であるが、上記各例におけるヒータ・パワーP1は、これと異なる値であってもよい。また、欠陥候補として登録する突起の検出は、上記方法と異なる方法を使用してもよい。選択的に検査する領域の決定についても、上記と異なる方法を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態において、ハードディスク・ドライブの全体構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】本実施形態において、磁気ディスク上における記録データ・フォーマットを模式的に示す図である。
【図3】本実施形態において、クリアランス調整するヒータを備えるヘッド・スライダの構造を模式的に示す断面図である。
【図4】本実施形態において、TFCを使用した表面検査テストの好ましい例を模式的に示す図である。
【図5】本実施形態において、TFCを使用した表面検査テストの他の好ましい例を模式的に示す図である。
【図6】本実施形態において、TFCを使用した表面検査テストの他の好ましい例を模式的に示す図である。
【図7】本実施形態において、TFCを使用した表面検査テストの他の好ましい例を模式的に示す図である。
【図8】従来のTFC機能が実装されていないHDDにおいて、一つの記録面について、SATの結果として欠陥テーブルに登録された欠陥の一部を模式的に示している。
【図9】図8のグラフに対応したテスト結果データに対して、500シリンダ毎に欠陥セクタ数を特定し、そこから得られた度数分布を模式的に示している。
【符号の説明】
【0070】
1 ハードディスク・ドライブ、10 エンクロージャ、11 磁気ディスク
12 ヘッド、13 アーム電子回路、14 スピンドル・モータ
15 ボイス・コイル・モータ、16 アクチュエータ、20 回路基板
21 リード/ライト・チャネル、22 モータ・ドライバ・ユニット
23 HDC/MPU、24 RAM、31 ライト素子、32 リード素子
32a 磁気抵抗素子、33a、b シールド、34 保護膜、51 ホスト
111 サーボ領域、112 データ領域、Z0−Z2 ゾーン
121 トレーリング側端面、122 ヘッド素子部、123 スライダ
124 ヒータ、311 ライト・コイル、312 磁極、313 絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する磁気ディスク上を浮上するスライダと、前記スライダに配置されたヘッド素子部と、前記スライダに配置され、前記ヘッド素子部を熱膨張によって突出させて前記磁気ディスクとの間のクリアランスを調整するヒータと、を有する磁気ディスク・ドライブ装置において、磁気ディスク上の欠陥を検査する方法であって、
前記ヒータのヒータ・パワー値が第1の値である状態において、前記ヘッド素子部によって前記磁気ディスクの記録面にアクセスし、その記録面の欠陥検査を行い、
前記ヒータのヒータ・パワー値が前記第1の値と異なる第2の値である状態において、前記ヘッド素子部によって前記記録面にアクセスし、その記録面の欠陥検査を行う、
方法。
【請求項2】
前記第1の値において欠陥検査された領域から選択された一部の領域について、前記第2の値における欠陥検査を行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の値は前記第2の値よりも大きい、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒータのヒータ・パワー値が第1の値である状態における検査において検出された欠陥の少なくとも一部を、欠陥候補として予備登録する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の値における欠陥検査結果に基づいて前記一部の領域を選択する、
請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の値における欠陥検査において検出された欠陥の密度に基づいて前記一部の領域を選択する、
請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の値は、同一温度における前記磁気ディスク・ドライブ装置の通常動作のヒータ・パワー値よりも大きく、
前記第2の値は、同一温度における前記磁気ディスク・ドライブ装置の通常動作のヒータ・パワー値よりも小さい、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
磁気ディスクの欠陥を検査する装置であって、
回転する磁気ディスク上を浮上するスライダと、
前記スライダに配置されたヘッド素子部と、
前記スライダに配置され、前記ヘッド素子部を熱膨張によって突出させて前記ディスクとの間のクリアランスを調整するヒータと、
前記ヒータのヒータ・パワーが第1の値である状態において、前記ヘッド素子部を使用して前記磁気ディスクの記録面へアクセスして前記磁気ディスクの欠陥検査を行い、さらに、前記ヒータのヒータ・パワーが前記第1の値と異なる第2の値である状態において、前記ヘッド素子部を使用して前記記録面へアクセスして前記磁気ディスクの欠陥検査を行う、コントローラと、
を備える装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記第1の値において欠陥検査された領域から選択された一部の領域について、前記第2の値における欠陥検査を行う、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の値は前記第2の値よりも大きい、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
回転する磁気ディスク上を浮上するスライダと、
前記スライダに配置されたヘッド素子部と、
前記スライダに配置され、前記ヘッド素子部を熱膨張によって突出させて前記ディスクとの間のクリアランスを調整するヒータと、
前記ヒータのヒータ・パワー値が通常動作におけるヒータ・パワー値とは異なる状態において、前記ヘッド素子部を使用して前記磁気ディスクへアクセスして前記磁気ディスクの欠陥検査を行う、コントローラと、
を備える磁気ディスク・ドライブ装置。
【請求項12】
前記欠陥検査におけるヒータ・パワー値は、通常動作におけるヒータ・パワー値よりも小さい、
請求項11に記載の磁気ディスク・ドライブ装置。
【請求項13】
前記コントローラは、欠陥候補として予め予備登録されているセクタに対して前記欠陥検査を行う、
請求項11に記載の磁気ディスク・ドライブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−71388(P2008−71388A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247349(P2006−247349)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】