磁気ディスク及び磁気ディスクドライブ
【課題】 低温環境下でも立ち上げ後に磁気ディスクドライブへの書込みを迅速に行える磁気ディスク及び磁気ディスクドライブを提供する。
【解決手段】 磁気ディスク10Aは、基板12と、基板12上に設けられた磁気記録層14と、基板12上に設けられたヒータ20と、を備える。磁気ディスクドライブ1は、磁気ディスク10Aと、磁気ディスク10Aを軸周りに回転させる駆動部50と、磁気ディスク10Aの磁気記録層14に対してデータの読出し及び書込みを行う磁気ヘッド部60と、ヒータ20に対して電力を供給する電力供給部80と、を備える。
【解決手段】 磁気ディスク10Aは、基板12と、基板12上に設けられた磁気記録層14と、基板12上に設けられたヒータ20と、を備える。磁気ディスクドライブ1は、磁気ディスク10Aと、磁気ディスク10Aを軸周りに回転させる駆動部50と、磁気ディスク10Aの磁気記録層14に対してデータの読出し及び書込みを行う磁気ヘッド部60と、ヒータ20に対して電力を供給する電力供給部80と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク及び磁気ディスクドライブに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録層を有する磁気ディスクと、この磁気ディスクに対するデータの書き込み及び磁気ディスクからのデータの読み出しを行う磁気ヘッドとを備えた磁気ディスクドライブが知られている。
【0003】
このような磁気ディスクドライブにおいては、磁気ディスクの温度が低いと、磁気記録層の保磁力Hcが高くなりすぎるため、磁気ヘッドによる磁気ディスクへのデータの書き込みが困難となる場合があることが知られている。
【0004】
そして、従来より、特許文献1,2等に記載されているように、光を磁気ディスクに照射したり、磁気ディスクに対向するヒータを設けて磁気ディスクの温度を上昇させる手段が知られている。
【0005】
また、このような加熱手段を特に設けなくても、磁気ディスク装置を立ち上げてから所定の時間が経過すると磁気ディスクの駆動モータ等から発生する熱等により、磁気ディスクドライブ内の空気の温度が上昇し、磁気ディスクの温度もある程度まで上昇する。
【特許文献1】特開平10−269502号公報
【特許文献2】特開平5−189952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近では、磁気ディスクドライブの適用分野が拡大しており、カーナビゲーションシステム等、例えば、−20℃程度の低温環境下に磁気ディスクドライブが保管される場合がある。
【0007】
このような低温下に保管された磁気ディスクドライブを立ち上げて磁気ディスクに対してデータの書き込みをしようとすると、磁気ディスクドライブの立ち上げを開始してから磁気ディスクの温度が書込み可能な温度に上昇するまでに極めて長時間を要し、不便である。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、低温環境下でも立ち上げ後に磁気ディスクドライブへの書込みを迅速に行える磁気ディスク及び磁気ディスクドライブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る磁気ディスクは、基板と、この基板上に設けられた磁気記録層と、この基板上に設けられたヒータと、を備える。
【0010】
また、本発明に係る磁気ディスクドライブは、磁気ディスクと、駆動部と、磁気ヘッド部と、電力供給部とを備える。磁気ディスクは、基板と、この基板上に設けられた磁気記録層と、この基板上に設けられたヒータを有する。駆動部は、磁気ディスクを軸周りに回転させる。磁気ヘッド部は、磁気ディスクの磁気記録層に対するデータの書込み及びこの磁気記録層からのデータの読出しを行う。電力供給部は、ヒータに対して電力を供給する。
【0011】
これらの発明によれば、磁気ディスク自体にヒータが設けられている。したがって、このヒータに通電することにより、磁気ディスクを直接ヒータにより加熱することができ、磁気ディスクの温度を従来に比して急速に上昇させることができる。したがって、磁気ディスクドライブが低温環境に保管されていた場合でも、磁気ディスクドライブの立ち上げ開始から、磁気ディスクの温度が書込み可能な温度まで上昇するまでの時間が短縮される。
【0012】
ここで、ヒータの配置方法としては、ヒータを磁気ディスクの回転軸の周りに環状に配置することや、ヒータを磁気ディスクの回転軸の周りに渦巻き状に配置することが考えられる。この場合、磁気ディスクを磁気ディスクの周方向に均一に加熱しやすい。
【0013】
また、ヒータを磁気ディスクの回転軸の周りに複数配置し、複数のヒータが回転軸を中心として放射状に配置しても同様の効果がある。
【0014】
また、基板上に、磁気ディスクの回転軸を取り囲むように設けられた互いに異なる径の一対の集電環をさらに設け、ヒータは、一方の集電環と電気的に接続されると共に他方の集電環と電気的に接続することも好ましい。
【0015】
この場合には、これらの集電環を介してヒータに通電することができるので、回転される磁気ディスクのヒータに対する電力の供給が容易である。
【0016】
また、ヒータが、基板における磁気記録層が設けられた面とは反対の面に設けられていると、磁気記録層の面積を従来よりも狭くすることなく、広い面積に亘ってヒータを設けることができるので好適である。
【0017】
また、基板を一対備え、一対の基板は互いに対向するように固定され、ヒータは一対の基板間に設けられ、磁気記録層は各基板の外側面上に設けられていると、両面に磁気記録層が設けられた磁気ディスクへが実現できて好適である。
【0018】
ヒータの具体的構成としては、金属層が挙げられる。この場合、磁気ディスクの製造が容易である。
【0019】
また、金属層が絶縁層を介して複数層積層されていても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低温環境下でも立ち上げ後に磁気ディスクドライブへの書込みを迅速に行える磁気ディスク及び磁気ディスクドライブが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1に、本実施形態に係る磁気ディスクドライブ1の概略構成図を示す。本実施形態に係る磁気ディスクドライブ1は、主として、磁気記録層14及びヒータ20を有する磁気ディスク10Aと、磁気ディスク10Aをその軸AX周りに回転させる駆動部50と、磁気ディスク10の磁気記録層14に対するデータの書込み及び磁気記録層14からのデータの読出しを行う磁気ヘッド部60と、ヒータ20に対して電力を供給する電力供給部80と、磁気ディスクドライブ1を制御する制御装置86と、これらを収容する筐体5と、を備えている。
【0023】
磁気ディスク10は、図1〜図3に示すように、円板状の基板12を有している。基板12の材料は、特に限定されず、例えば、ガラスやアルミニウム等の材料を使用できる。基板12の厚みも特に限定されず、例えば、0.5〜3.0mmとすることができる。この磁気ディスク10は、後述する駆動部50により、磁気ディスク10の中心と直交する回転軸AX周りに回転される。基板12の中央には、磁気ディスク10の中央を貫通する穴12hが形成されている。
【0024】
基板12の一方の面(図1の上面)上には、ヒータ20、集電環32及び集電環34が設けられている。
【0025】
ヒータ20は、図1〜図3に示すように、基板12の表面に、回転軸AXを取り囲むように円環状に形成された金属層である。ヒータ20の金属層の材料は、金属であれば特に限定されず、例えば、Cu,Au,Ni,Co,Ta,W,Mo,Rh等の金属や、NiCr等の合金が挙げられる。
【0026】
ヒータ20における金属層の厚みは特に限定されないが、例えば、0.1〜1μmとすることができる。
【0027】
集電環32及び集電環34は、基板12上、より具体的には、ヒータ20上に、それぞれ磁気ディスク10の回転軸AXを取り囲むように設けられている。集電環32は、集電環34よりも内側に配置されておりその径は集電環34よりも小さい。具体的には、集電環32は環状のヒータ20の内側端部上に配置され、集電環34はヒータ20の外側端部上に配置されている。すなわち、ヒータ20の外側端部と集電環32とが電気的に接続され、ヒータ20の内側端部と集電環34とが電気的に接続されている。集電環32の材質は、導電性の金属材料であれば特に限定されないが、その上面が後述する端子92、94と摺動しながら接触するので、耐磨耗性に優れた材料が好ましく、例えば、Au,Rh,W,Mo等が好ましい。また、集電環32、34の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1〜10μmとすることができる。
【0028】
基板12におけるヒータ20が設けられた面とは反対側の面(図1の下面)には、磁気記録層14が回転軸AXを取り囲むように環状に設けられている。この磁気記録層14としては、公知の磁気記録層を任意好適に選択して用いることができる。例えば、この磁気記録層は、図示は省略するが、非磁性下地層/磁性層/保護膜/潤滑層の如き積層構造を有することができる。非磁性下地層としては例えば10〜50nm程度のCr合金等を、磁性層としては10〜50nm程度のCo,Cr,PTを含む合金等を、保護膜としては1〜10nm程度のカーボン等を、潤滑層としては、パーフルオロポリエーテル等のフッ化有機物等を利用できる。
【0029】
ここで、これら磁気記録層14、ヒータ20、集電環32,34は、公知の成膜技術、例えば、スパッタリングや蒸着法等により容易に基板12上に形成することができる。
【0030】
駆動部50は、磁気ディスク10の穴12hに挿入されてこの磁気ディスク10Aを固定する固定部材50bと、固定部材50bを回転軸AX周りに回転させる駆動モータ50aとを有している。
【0031】
電力供給部80は、回転する磁気ディスク10のヒータ20に対して電力を供給するものであり、筐体5側に固定されている。具体的には、電力供給部80は、図1及び図3に示すように、回転する磁気ディスク10の集電環32の上面と摺動しながら接触する端子92と、回転する磁気ディスク10の集電環34の上面と摺動しながら接触する端子94と、電源82と、を備えている。
【0032】
端子92、94の材質は特に限定されないが、例えば、Au、Cu等の金属材料を使用できる。
【0033】
これらの端子92及び94は、これらの端子92及び94を磁気ディスク10の表面、すなわち、集電環32や集電環34に対して接近させたり、集電環32や集電環34から遠ざけたりするための端子昇降部84に支持されている。この端子昇降部84は、端子92及び94をそれぞれ集電環32及び34に所定の力で付勢して、回転する磁気ディスク10の集電環32,34に対して摺動させる状態(図1の実線の状態)と、端子92及び94を集電環32及び集電環34から離間させる状態(図1の点線の状態)とを切替えることができる。
【0034】
また、これらの端子92及び94は、電源82の一対の端子82a,82bに電気的にそれぞれ接続されており、端子92、94間には電源82から所定の電圧が印加される。
【0035】
磁気ヘッド部60は、磁気ディスク10の磁気記録層14に対するデータの書込み及びこの磁気記録層14からのデータの読出しを行う磁気ヘッドを備えたスライダ61と、このスライダ61を磁気記録層14上の所望の場所に動かすヘッド駆動部62とを備えている。
【0036】
このスライダ61やヘッド駆動部62は、公知のものを任意好適に利用できる。例えば、スライダ61の磁気ヘッドとしては、読出し用のMR素子と、書込み用の誘導型素子とを有する薄膜磁気ヘッド等を利用できる。ヘッド駆動部62としては、スライダ61を備えたHGAをボイスコイルモータ等で移動するもの等を利用できる。
【0037】
制御装置86は、電源82、端子昇降部84、駆動モータ50a、及び、ヘッド駆動部62と接続されている。この制御装置86は、外部からの信号等に基づいて、磁気ディスクドライブの立ち上げ、停止、読出し、書込み等を行う。制御装置86は、磁気ディスクドライブを立ち上げる際には、駆動モータ50aを制御して磁気ディスク10Aを回転させ、端子昇降部84を制御して端子92及び94をそれぞれ集電環32及び34に所定の力で付勢して集電環32,34に対して摺動させ、さらに、電源82を制御して端子92、94間に所定の電圧を所定時間印加させ、所定時間後に端子92及び94を集電環32及び34から離間させる。また、この制御装置86は、外部からの信号に従って、必要に応じて、磁気ヘッド部60によるデータの読出し及び書込みを行う。
【0038】
続いて、このような磁気ディスクドライブ1の作用について説明する。
【0039】
まず、この磁気ディスクドライブ1が、稼動していない状態、すなわち、磁気ディスク10Aが回転していない状態で、低温の場所に放置されていたものとする。ここで、制御装置86が外部からの磁気ディスクドライブの立ち上げの信号を受けると、制御装置86は磁気ディスクドライブ1の立ち上げを行う。
【0040】
まず、制御装置86は、駆動モータ50aの駆動を行って磁気ディスク10Aを回転させると共に、端子昇降部84を駆動して端子92,94を集電環32,34に対して接触させ、さらに、電源82を駆動して端子92、94間に所定の電圧を印加する。
【0041】
これにより、回転される磁気ディスク10Aのヒータ20に集電環32、34を介して電流が流れ、ジュール熱によって磁気ディスク10Aの温度が上昇し、しばらくすると磁気ディスク10Aへの書込み等が可能な温度となる。また、これに伴って、筐体5内のガスの温度も上昇し、スライダ61が磁気ディスク10A上で好適な浮上量で浮上可能な状態となる。
【0042】
制御装置86は、立ち上げから所定の時間経過後、端子92、94への電圧の印加を停止すると共に、端子昇降部84を駆動して端子92、94を集電環32、34から離間させ、さらに、外部からの信号に応じて磁気ヘッド部60を駆動して磁気記録層14への読み書きを行わせる。
【0043】
このように、本実施形態によれば、磁気ディスク10Aにヒータ20が設けられているので、磁気ディスク10Aをヒータ20により直接加熱することができる。したがって、磁気ディスク10Aにレーザ等を照射して加熱する場合や、磁気ディスク10Aと対向するようにヒータを設ける場合等に比して、磁気ディスク10Aの温度を迅速に上昇させることができる。これにより、寒冷地等に保管されていた磁気ディスクドライブ1を立ち上げる場合でも、立ち上げの開始から、磁気ディスク10Aが所定の温度に到達して磁気ディスク10Aへの書き込み等が可能となるまでの待ち時間を従来に比して十分に短くすることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、立ち上げと共に、端子92、93の下降及び端子92、94間への電圧の印加を開始し、あらかじめ定められた時間経過後に端子92、93の上昇及び端子92、94間への電圧の印加の停止を行っているがこれに限られない。例えば、筐体5内や磁気ディスク10等に温度センサを設けておき、制御装置86が、温度センサの温度が所定温度以下になると、端子92,94の下降及び端子92、94間への電圧の印加を行い、所定温度以上になると、端子92,94の上昇及び端子92、94間への電圧の印加の停止を行っても良い。
【0045】
また、制御装置86は、端子92,94を下降させて集電環32,34に摺動させる際に、駆動モータ50aを制御して磁気ディスク10の回転数を通常の読み書き時の回転数よりも遅くして集電環32,34や端子92,94の磨耗等を低減させるようにしても良い。また、制御装置86は、端子92,94を下降させて集電環32,34に摺動させる際に、磁気ディスク10Aを回転させないようにしても良い。
【0046】
また、耐磨耗性の良い集電環32,34や端子92,94を用いた時等には、制御装置86は、端子昇降部84による端子92、94の上げ下げをせず、端子92、94と集電環32,34とが常時摺動する状態で、端子92、94間への電圧の印加/停止の切替えを行っても良い。耐磨耗性を上げるために、集電環32,34との接点である端子92,94の先端部にベアリングを配置しても良い。
【0047】
また、磁気ディスクの構成も上記の形態に限定されない。
【0048】
例えば、図2の磁気ディスク10Aでは、ヒータ20が基板12の表面の内のほぼ全面に渡って環状に設けられているが、例えば、図4に示す磁気ディスク10Bのように、ヒータ20が基板12の表面の内の外側の部分上にのみ設けられていてもよく、また、図5に示す磁気ディスク10Cのように、ヒータ20が基板12の表面の内の内側の部分上にのみ設けられていてもよい。
【0049】
また、図6に示す磁気ディスク10Dのように、ヒータ20が円環状でなく、軸AX
の周りをまわるように形成された渦巻状でもよい。この場合、渦巻きの外側端が集電環34と電気的に接続され、渦巻きの内側端が集電環32と電気的に接続されている。このような磁気ディスク10Dでは、集電環32及び集電環34のどの場所に端子92、94が接触しても、ヒータ20において電流の流れる流路が固定される。したがって、磁気ディスク10の回転が遅い場合や止まっている場合でも、基板12を円周方向に偏り無く加熱することができる。
【0050】
また、図6の磁気ディスク10Dでは、渦巻状のヒータ20が基板12の表面の内のほぼ全面に渡って設けられているが、例えば、図7に示す磁気ディスク10Eのように、渦巻状のヒータ20が基板12の表面の内の外側の部分上にのみ設けられていてもよく、また、図8に示す磁気ディスク10Fのように、渦巻状のヒータ20が基板12の表面の内の内側の部分上にのみ設けられていてもよい。
【0051】
また、図9に示す磁気ディスク10Gに示すように、基板12上に複数のヒータ20が設けられ、それぞれのヒータ20が軸AXの周りに放射状に配置されていてもよい。この場合でも、各ヒータ20の一端が集電環32と電気的に接続され、各ヒータ20の他端が集電環34と電気的に接続されている。
【0052】
さらに、図10の断面図に示す磁気ディスク10Hのように、ヒータ20の上に絶縁層25を介してさらにヒータ21が積層されていてもよい。この磁気ディスク10Hは、詳しくは、ヒータ20の内側端部上に集電環32が設けられ、ヒータ20の中央部上に絶縁層25が積層され、ヒータ20の外側端部上及び絶縁層25上にヒータ21が設けられ、ヒータ21の内側端部上に集電環34が設けられている。ヒータ21とヒータ20とは、外側端部同士により電気的に接続されており、端子92,94からの電圧により、電流は、集電環32、ヒータ20、ヒータ21、及び集電環34を伝導して流れる。なお、ヒータ21は、単なる導電材からなっていても良い。
【0053】
ヒータ21の材質や厚みはヒータ20と同様とすることができる。絶縁層25の厚みは、例えば、0.01〜1μm程度とすることができ、絶縁層15の材質としては、Al2O3、SiO2、ダイアモンドライクカーボン、ポリイミド等の有機樹脂等が挙げられる。なお、ヒータ20の形状は、前述の磁気ディスク10A〜10Gのいずれの形状でも良い。ヒータ21の形状も同様である。このような磁気ディスク10Hでは、電流の流れる伝導路を長くできる。
【0054】
また、上述の磁気ディスク10A〜10Hは、磁気ディスクの一方の面に磁気記録層14が形成されたものであるが、磁気ディスクの両方の面に磁気記録層14が形成された形態とすることもできる。例えば、図11に示す磁気ディスク10Iは、図2のような磁気ディスク10Aのヒータ20の上に接着層39によってさらに基板13が貼り合わされており、基板13の上には、磁気記録層14が形成されている。
【0055】
また、図12に示す磁気ディスク10Jは、図10のような磁気ディスク10Hのヒータ21の上に接着層39によってさらに基板13が貼り合わされており、基板13の上には、磁気記録層14が形成されている。
【0056】
これらの磁気ディスク10I,10Jを用いると、両面記録型の磁気ディスクドライブでも、磁気ディスクの昇温を迅速に行える。
【0057】
ここで、接着層39の厚みは、例えば1〜100μmとすることができ、また、接着層39の材料としては、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等を挙げることができる。また、接着層39に代えて両面粘着シートを用いてヒータ20,21と基板13とを張り合わせても良い。
【0058】
さらに図示は省略するが、ヒータ20は基板12における磁気記録層14が形成された面と同じ面や、基板12の側面に形成されていても実施は可能である。
【0059】
また、磁気ディスク10が集電環32,34を有さず、端子92、94が直接ヒータ20に摺動するようにしても実施は可能である。
【0060】
また、ヒータも金属層に限定されず、外部からの電力等のエネルギーが供給されると発熱するものであれば良く、カーボンヒータ等を使用できる。
【実施例】
【0061】
実施例では、図6の磁気ディスク10Dの如き磁気ディスクを作成した。ヒータ20の材質にはNiCrを用いた。また、この磁気ディスクにおいて、磁気記録層14の保磁力は4000Oe、磁化は0.35memu/cm2であった。磁気ディスクの径は1.8インチ、記録密度は80G/磁気ディスク片面とした。そして、この磁気ディスクを0℃の状態に保持した後、集電環32,34間に1Wの電力を供給して昇温させ、磁気ディスクが書込み可能な温度(5℃)となるまでの時間を測定した。この結果、5℃になるまでに15秒を要した。
【0062】
一方、比較例では、図13に示すように、ヒータや集電環を有さない以外は実施例と同様の磁気ディスク10Zを作成し、この磁気ディスク10Zと対向する外部ヒータ100によって、磁気ディスク10Zを空気を介して間接的に加熱した。具体的には、外部ヒータ100は、基板101上に金属層からなるヒータ102を設けたものであり、このヒータ102に電源82から電圧を印加することによりヒータ102が発熱し、このヒータ102の周辺の空気が加熱され、磁気ディスク10Zが加熱される。ヒータ102の形状は磁気ディスク10Dのヒータ20の形状と同様とした。ヒータ102と磁気ディスクとの間隔は0.5mmとした。この比較例では、ヒータ102に実施例と同じ1Wを投入したが、10分経過しても0℃の磁気ディスクを5℃に昇温させることはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】発明の実施形態に係る磁気ディスクドライブを示す概略図である。
【図2】図1の磁気ディスクの平面図である。
【図3】図1の磁気ディスク及びその周辺の斜視図である。
【図4】磁気ディスクの他の例を示す平面図である。
【図5】磁気ディスクの他の例を示す平面図である。
【図6】磁気ディスクの他の例を示す平面図である。
【図7】磁気ディスクの他の例を示す平面図である。
【図8】磁気ディスクの他の例を示す平面図である。
【図9】磁気ディスクの他の例を示す平面図である。
【図10】磁気ディスクの他の例を示す断面図である。
【図11】磁気ディスクの他の例を示す断面図である。
【図12】磁気ディスクの他の例を示す断面図である。
【図13】比較例において磁気ディスクを加熱する方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0064】
1…磁気ディスクドライブ、12…基板、14…磁気記録層、20…ヒータ、10A〜10J…磁気ディスク、32,34…集電環、50…駆動部、60…磁気ヘッド部、80…電力供給部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク及び磁気ディスクドライブに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録層を有する磁気ディスクと、この磁気ディスクに対するデータの書き込み及び磁気ディスクからのデータの読み出しを行う磁気ヘッドとを備えた磁気ディスクドライブが知られている。
【0003】
このような磁気ディスクドライブにおいては、磁気ディスクの温度が低いと、磁気記録層の保磁力Hcが高くなりすぎるため、磁気ヘッドによる磁気ディスクへのデータの書き込みが困難となる場合があることが知られている。
【0004】
そして、従来より、特許文献1,2等に記載されているように、光を磁気ディスクに照射したり、磁気ディスクに対向するヒータを設けて磁気ディスクの温度を上昇させる手段が知られている。
【0005】
また、このような加熱手段を特に設けなくても、磁気ディスク装置を立ち上げてから所定の時間が経過すると磁気ディスクの駆動モータ等から発生する熱等により、磁気ディスクドライブ内の空気の温度が上昇し、磁気ディスクの温度もある程度まで上昇する。
【特許文献1】特開平10−269502号公報
【特許文献2】特開平5−189952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近では、磁気ディスクドライブの適用分野が拡大しており、カーナビゲーションシステム等、例えば、−20℃程度の低温環境下に磁気ディスクドライブが保管される場合がある。
【0007】
このような低温下に保管された磁気ディスクドライブを立ち上げて磁気ディスクに対してデータの書き込みをしようとすると、磁気ディスクドライブの立ち上げを開始してから磁気ディスクの温度が書込み可能な温度に上昇するまでに極めて長時間を要し、不便である。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、低温環境下でも立ち上げ後に磁気ディスクドライブへの書込みを迅速に行える磁気ディスク及び磁気ディスクドライブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る磁気ディスクは、基板と、この基板上に設けられた磁気記録層と、この基板上に設けられたヒータと、を備える。
【0010】
また、本発明に係る磁気ディスクドライブは、磁気ディスクと、駆動部と、磁気ヘッド部と、電力供給部とを備える。磁気ディスクは、基板と、この基板上に設けられた磁気記録層と、この基板上に設けられたヒータを有する。駆動部は、磁気ディスクを軸周りに回転させる。磁気ヘッド部は、磁気ディスクの磁気記録層に対するデータの書込み及びこの磁気記録層からのデータの読出しを行う。電力供給部は、ヒータに対して電力を供給する。
【0011】
これらの発明によれば、磁気ディスク自体にヒータが設けられている。したがって、このヒータに通電することにより、磁気ディスクを直接ヒータにより加熱することができ、磁気ディスクの温度を従来に比して急速に上昇させることができる。したがって、磁気ディスクドライブが低温環境に保管されていた場合でも、磁気ディスクドライブの立ち上げ開始から、磁気ディスクの温度が書込み可能な温度まで上昇するまでの時間が短縮される。
【0012】
ここで、ヒータの配置方法としては、ヒータを磁気ディスクの回転軸の周りに環状に配置することや、ヒータを磁気ディスクの回転軸の周りに渦巻き状に配置することが考えられる。この場合、磁気ディスクを磁気ディスクの周方向に均一に加熱しやすい。
【0013】
また、ヒータを磁気ディスクの回転軸の周りに複数配置し、複数のヒータが回転軸を中心として放射状に配置しても同様の効果がある。
【0014】
また、基板上に、磁気ディスクの回転軸を取り囲むように設けられた互いに異なる径の一対の集電環をさらに設け、ヒータは、一方の集電環と電気的に接続されると共に他方の集電環と電気的に接続することも好ましい。
【0015】
この場合には、これらの集電環を介してヒータに通電することができるので、回転される磁気ディスクのヒータに対する電力の供給が容易である。
【0016】
また、ヒータが、基板における磁気記録層が設けられた面とは反対の面に設けられていると、磁気記録層の面積を従来よりも狭くすることなく、広い面積に亘ってヒータを設けることができるので好適である。
【0017】
また、基板を一対備え、一対の基板は互いに対向するように固定され、ヒータは一対の基板間に設けられ、磁気記録層は各基板の外側面上に設けられていると、両面に磁気記録層が設けられた磁気ディスクへが実現できて好適である。
【0018】
ヒータの具体的構成としては、金属層が挙げられる。この場合、磁気ディスクの製造が容易である。
【0019】
また、金属層が絶縁層を介して複数層積層されていても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低温環境下でも立ち上げ後に磁気ディスクドライブへの書込みを迅速に行える磁気ディスク及び磁気ディスクドライブが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1に、本実施形態に係る磁気ディスクドライブ1の概略構成図を示す。本実施形態に係る磁気ディスクドライブ1は、主として、磁気記録層14及びヒータ20を有する磁気ディスク10Aと、磁気ディスク10Aをその軸AX周りに回転させる駆動部50と、磁気ディスク10の磁気記録層14に対するデータの書込み及び磁気記録層14からのデータの読出しを行う磁気ヘッド部60と、ヒータ20に対して電力を供給する電力供給部80と、磁気ディスクドライブ1を制御する制御装置86と、これらを収容する筐体5と、を備えている。
【0023】
磁気ディスク10は、図1〜図3に示すように、円板状の基板12を有している。基板12の材料は、特に限定されず、例えば、ガラスやアルミニウム等の材料を使用できる。基板12の厚みも特に限定されず、例えば、0.5〜3.0mmとすることができる。この磁気ディスク10は、後述する駆動部50により、磁気ディスク10の中心と直交する回転軸AX周りに回転される。基板12の中央には、磁気ディスク10の中央を貫通する穴12hが形成されている。
【0024】
基板12の一方の面(図1の上面)上には、ヒータ20、集電環32及び集電環34が設けられている。
【0025】
ヒータ20は、図1〜図3に示すように、基板12の表面に、回転軸AXを取り囲むように円環状に形成された金属層である。ヒータ20の金属層の材料は、金属であれば特に限定されず、例えば、Cu,Au,Ni,Co,Ta,W,Mo,Rh等の金属や、NiCr等の合金が挙げられる。
【0026】
ヒータ20における金属層の厚みは特に限定されないが、例えば、0.1〜1μmとすることができる。
【0027】
集電環32及び集電環34は、基板12上、より具体的には、ヒータ20上に、それぞれ磁気ディスク10の回転軸AXを取り囲むように設けられている。集電環32は、集電環34よりも内側に配置されておりその径は集電環34よりも小さい。具体的には、集電環32は環状のヒータ20の内側端部上に配置され、集電環34はヒータ20の外側端部上に配置されている。すなわち、ヒータ20の外側端部と集電環32とが電気的に接続され、ヒータ20の内側端部と集電環34とが電気的に接続されている。集電環32の材質は、導電性の金属材料であれば特に限定されないが、その上面が後述する端子92、94と摺動しながら接触するので、耐磨耗性に優れた材料が好ましく、例えば、Au,Rh,W,Mo等が好ましい。また、集電環32、34の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1〜10μmとすることができる。
【0028】
基板12におけるヒータ20が設けられた面とは反対側の面(図1の下面)には、磁気記録層14が回転軸AXを取り囲むように環状に設けられている。この磁気記録層14としては、公知の磁気記録層を任意好適に選択して用いることができる。例えば、この磁気記録層は、図示は省略するが、非磁性下地層/磁性層/保護膜/潤滑層の如き積層構造を有することができる。非磁性下地層としては例えば10〜50nm程度のCr合金等を、磁性層としては10〜50nm程度のCo,Cr,PTを含む合金等を、保護膜としては1〜10nm程度のカーボン等を、潤滑層としては、パーフルオロポリエーテル等のフッ化有機物等を利用できる。
【0029】
ここで、これら磁気記録層14、ヒータ20、集電環32,34は、公知の成膜技術、例えば、スパッタリングや蒸着法等により容易に基板12上に形成することができる。
【0030】
駆動部50は、磁気ディスク10の穴12hに挿入されてこの磁気ディスク10Aを固定する固定部材50bと、固定部材50bを回転軸AX周りに回転させる駆動モータ50aとを有している。
【0031】
電力供給部80は、回転する磁気ディスク10のヒータ20に対して電力を供給するものであり、筐体5側に固定されている。具体的には、電力供給部80は、図1及び図3に示すように、回転する磁気ディスク10の集電環32の上面と摺動しながら接触する端子92と、回転する磁気ディスク10の集電環34の上面と摺動しながら接触する端子94と、電源82と、を備えている。
【0032】
端子92、94の材質は特に限定されないが、例えば、Au、Cu等の金属材料を使用できる。
【0033】
これらの端子92及び94は、これらの端子92及び94を磁気ディスク10の表面、すなわち、集電環32や集電環34に対して接近させたり、集電環32や集電環34から遠ざけたりするための端子昇降部84に支持されている。この端子昇降部84は、端子92及び94をそれぞれ集電環32及び34に所定の力で付勢して、回転する磁気ディスク10の集電環32,34に対して摺動させる状態(図1の実線の状態)と、端子92及び94を集電環32及び集電環34から離間させる状態(図1の点線の状態)とを切替えることができる。
【0034】
また、これらの端子92及び94は、電源82の一対の端子82a,82bに電気的にそれぞれ接続されており、端子92、94間には電源82から所定の電圧が印加される。
【0035】
磁気ヘッド部60は、磁気ディスク10の磁気記録層14に対するデータの書込み及びこの磁気記録層14からのデータの読出しを行う磁気ヘッドを備えたスライダ61と、このスライダ61を磁気記録層14上の所望の場所に動かすヘッド駆動部62とを備えている。
【0036】
このスライダ61やヘッド駆動部62は、公知のものを任意好適に利用できる。例えば、スライダ61の磁気ヘッドとしては、読出し用のMR素子と、書込み用の誘導型素子とを有する薄膜磁気ヘッド等を利用できる。ヘッド駆動部62としては、スライダ61を備えたHGAをボイスコイルモータ等で移動するもの等を利用できる。
【0037】
制御装置86は、電源82、端子昇降部84、駆動モータ50a、及び、ヘッド駆動部62と接続されている。この制御装置86は、外部からの信号等に基づいて、磁気ディスクドライブの立ち上げ、停止、読出し、書込み等を行う。制御装置86は、磁気ディスクドライブを立ち上げる際には、駆動モータ50aを制御して磁気ディスク10Aを回転させ、端子昇降部84を制御して端子92及び94をそれぞれ集電環32及び34に所定の力で付勢して集電環32,34に対して摺動させ、さらに、電源82を制御して端子92、94間に所定の電圧を所定時間印加させ、所定時間後に端子92及び94を集電環32及び34から離間させる。また、この制御装置86は、外部からの信号に従って、必要に応じて、磁気ヘッド部60によるデータの読出し及び書込みを行う。
【0038】
続いて、このような磁気ディスクドライブ1の作用について説明する。
【0039】
まず、この磁気ディスクドライブ1が、稼動していない状態、すなわち、磁気ディスク10Aが回転していない状態で、低温の場所に放置されていたものとする。ここで、制御装置86が外部からの磁気ディスクドライブの立ち上げの信号を受けると、制御装置86は磁気ディスクドライブ1の立ち上げを行う。
【0040】
まず、制御装置86は、駆動モータ50aの駆動を行って磁気ディスク10Aを回転させると共に、端子昇降部84を駆動して端子92,94を集電環32,34に対して接触させ、さらに、電源82を駆動して端子92、94間に所定の電圧を印加する。
【0041】
これにより、回転される磁気ディスク10Aのヒータ20に集電環32、34を介して電流が流れ、ジュール熱によって磁気ディスク10Aの温度が上昇し、しばらくすると磁気ディスク10Aへの書込み等が可能な温度となる。また、これに伴って、筐体5内のガスの温度も上昇し、スライダ61が磁気ディスク10A上で好適な浮上量で浮上可能な状態となる。
【0042】
制御装置86は、立ち上げから所定の時間経過後、端子92、94への電圧の印加を停止すると共に、端子昇降部84を駆動して端子92、94を集電環32、34から離間させ、さらに、外部からの信号に応じて磁気ヘッド部60を駆動して磁気記録層14への読み書きを行わせる。
【0043】
このように、本実施形態によれば、磁気ディスク10Aにヒータ20が設けられているので、磁気ディスク10Aをヒータ20により直接加熱することができる。したがって、磁気ディスク10Aにレーザ等を照射して加熱する場合や、磁気ディスク10Aと対向するようにヒータを設ける場合等に比して、磁気ディスク10Aの温度を迅速に上昇させることができる。これにより、寒冷地等に保管されていた磁気ディスクドライブ1を立ち上げる場合でも、立ち上げの開始から、磁気ディスク10Aが所定の温度に到達して磁気ディスク10Aへの書き込み等が可能となるまでの待ち時間を従来に比して十分に短くすることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、立ち上げと共に、端子92、93の下降及び端子92、94間への電圧の印加を開始し、あらかじめ定められた時間経過後に端子92、93の上昇及び端子92、94間への電圧の印加の停止を行っているがこれに限られない。例えば、筐体5内や磁気ディスク10等に温度センサを設けておき、制御装置86が、温度センサの温度が所定温度以下になると、端子92,94の下降及び端子92、94間への電圧の印加を行い、所定温度以上になると、端子92,94の上昇及び端子92、94間への電圧の印加の停止を行っても良い。
【0045】
また、制御装置86は、端子92,94を下降させて集電環32,34に摺動させる際に、駆動モータ50aを制御して磁気ディスク10の回転数を通常の読み書き時の回転数よりも遅くして集電環32,34や端子92,94の磨耗等を低減させるようにしても良い。また、制御装置86は、端子92,94を下降させて集電環32,34に摺動させる際に、磁気ディスク10Aを回転させないようにしても良い。
【0046】
また、耐磨耗性の良い集電環32,34や端子92,94を用いた時等には、制御装置86は、端子昇降部84による端子92、94の上げ下げをせず、端子92、94と集電環32,34とが常時摺動する状態で、端子92、94間への電圧の印加/停止の切替えを行っても良い。耐磨耗性を上げるために、集電環32,34との接点である端子92,94の先端部にベアリングを配置しても良い。
【0047】
また、磁気ディスクの構成も上記の形態に限定されない。
【0048】
例えば、図2の磁気ディスク10Aでは、ヒータ20が基板12の表面の内のほぼ全面に渡って環状に設けられているが、例えば、図4に示す磁気ディスク10Bのように、ヒータ20が基板12の表面の内の外側の部分上にのみ設けられていてもよく、また、図5に示す磁気ディスク10Cのように、ヒータ20が基板12の表面の内の内側の部分上にのみ設けられていてもよい。
【0049】
また、図6に示す磁気ディスク10Dのように、ヒータ20が円環状でなく、軸AX
の周りをまわるように形成された渦巻状でもよい。この場合、渦巻きの外側端が集電環34と電気的に接続され、渦巻きの内側端が集電環32と電気的に接続されている。このような磁気ディスク10Dでは、集電環32及び集電環34のどの場所に端子92、94が接触しても、ヒータ20において電流の流れる流路が固定される。したがって、磁気ディスク10の回転が遅い場合や止まっている場合でも、基板12を円周方向に偏り無く加熱することができる。
【0050】
また、図6の磁気ディスク10Dでは、渦巻状のヒータ20が基板12の表面の内のほぼ全面に渡って設けられているが、例えば、図7に示す磁気ディスク10Eのように、渦巻状のヒータ20が基板12の表面の内の外側の部分上にのみ設けられていてもよく、また、図8に示す磁気ディスク10Fのように、渦巻状のヒータ20が基板12の表面の内の内側の部分上にのみ設けられていてもよい。
【0051】
また、図9に示す磁気ディスク10Gに示すように、基板12上に複数のヒータ20が設けられ、それぞれのヒータ20が軸AXの周りに放射状に配置されていてもよい。この場合でも、各ヒータ20の一端が集電環32と電気的に接続され、各ヒータ20の他端が集電環34と電気的に接続されている。
【0052】
さらに、図10の断面図に示す磁気ディスク10Hのように、ヒータ20の上に絶縁層25を介してさらにヒータ21が積層されていてもよい。この磁気ディスク10Hは、詳しくは、ヒータ20の内側端部上に集電環32が設けられ、ヒータ20の中央部上に絶縁層25が積層され、ヒータ20の外側端部上及び絶縁層25上にヒータ21が設けられ、ヒータ21の内側端部上に集電環34が設けられている。ヒータ21とヒータ20とは、外側端部同士により電気的に接続されており、端子92,94からの電圧により、電流は、集電環32、ヒータ20、ヒータ21、及び集電環34を伝導して流れる。なお、ヒータ21は、単なる導電材からなっていても良い。
【0053】
ヒータ21の材質や厚みはヒータ20と同様とすることができる。絶縁層25の厚みは、例えば、0.01〜1μm程度とすることができ、絶縁層15の材質としては、Al2O3、SiO2、ダイアモンドライクカーボン、ポリイミド等の有機樹脂等が挙げられる。なお、ヒータ20の形状は、前述の磁気ディスク10A〜10Gのいずれの形状でも良い。ヒータ21の形状も同様である。このような磁気ディスク10Hでは、電流の流れる伝導路を長くできる。
【0054】
また、上述の磁気ディスク10A〜10Hは、磁気ディスクの一方の面に磁気記録層14が形成されたものであるが、磁気ディスクの両方の面に磁気記録層14が形成された形態とすることもできる。例えば、図11に示す磁気ディスク10Iは、図2のような磁気ディスク10Aのヒータ20の上に接着層39によってさらに基板13が貼り合わされており、基板13の上には、磁気記録層14が形成されている。
【0055】
また、図12に示す磁気ディスク10Jは、図10のような磁気ディスク10Hのヒータ21の上に接着層39によってさらに基板13が貼り合わされており、基板13の上には、磁気記録層14が形成されている。
【0056】
これらの磁気ディスク10I,10Jを用いると、両面記録型の磁気ディスクドライブでも、磁気ディスクの昇温を迅速に行える。
【0057】
ここで、接着層39の厚みは、例えば1〜100μmとすることができ、また、接着層39の材料としては、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等を挙げることができる。また、接着層39に代えて両面粘着シートを用いてヒータ20,21と基板13とを張り合わせても良い。
【0058】
さらに図示は省略するが、ヒータ20は基板12における磁気記録層14が形成された面と同じ面や、基板12の側面に形成されていても実施は可能である。
【0059】
また、磁気ディスク10が集電環32,34を有さず、端子92、94が直接ヒータ20に摺動するようにしても実施は可能である。
【0060】
また、ヒータも金属層に限定されず、外部からの電力等のエネルギーが供給されると発熱するものであれば良く、カーボンヒータ等を使用できる。
【実施例】
【0061】
実施例では、図6の磁気ディスク10Dの如き磁気ディスクを作成した。ヒータ20の材質にはNiCrを用いた。また、この磁気ディスクにおいて、磁気記録層14の保磁力は4000Oe、磁化は0.35memu/cm2であった。磁気ディスクの径は1.8インチ、記録密度は80G/磁気ディスク片面とした。そして、この磁気ディスクを0℃の状態に保持した後、集電環32,34間に1Wの電力を供給して昇温させ、磁気ディスクが書込み可能な温度(5℃)となるまでの時間を測定した。この結果、5℃になるまでに15秒を要した。
【0062】
一方、比較例では、図13に示すように、ヒータや集電環を有さない以外は実施例と同様の磁気ディスク10Zを作成し、この磁気ディスク10Zと対向する外部ヒータ100によって、磁気ディスク10Zを空気を介して間接的に加熱した。具体的には、外部ヒータ100は、基板101上に金属層からなるヒータ102を設けたものであり、このヒータ102に電源82から電圧を印加することによりヒータ102が発熱し、このヒータ102の周辺の空気が加熱され、磁気ディスク10Zが加熱される。ヒータ102の形状は磁気ディスク10Dのヒータ20の形状と同様とした。ヒータ102と磁気ディスクとの間隔は0.5mmとした。この比較例では、ヒータ102に実施例と同じ1Wを投入したが、10分経過しても0℃の磁気ディスクを5℃に昇温させることはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】発明の実施形態に係る磁気ディスクドライブを示す概略図である。
【図2】図1の磁気ディスクの平面図である。
【図3】図1の磁気ディスク及びその周辺の斜視図である。
【図4】磁気ディスクの他の例を示す平面図である。
【図5】磁気ディスクの他の例を示す平面図である。
【図6】磁気ディスクの他の例を示す平面図である。
【図7】磁気ディスクの他の例を示す平面図である。
【図8】磁気ディスクの他の例を示す平面図である。
【図9】磁気ディスクの他の例を示す平面図である。
【図10】磁気ディスクの他の例を示す断面図である。
【図11】磁気ディスクの他の例を示す断面図である。
【図12】磁気ディスクの他の例を示す断面図である。
【図13】比較例において磁気ディスクを加熱する方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0064】
1…磁気ディスクドライブ、12…基板、14…磁気記録層、20…ヒータ、10A〜10J…磁気ディスク、32,34…集電環、50…駆動部、60…磁気ヘッド部、80…電力供給部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられた磁気記録層と、前記基板上に設けられたヒータと、を備える磁気ディスク。
【請求項2】
前記ヒータは、前記磁気ディスクの回転軸の周りに環状に配置された請求項1に記載の磁気ディスク。
【請求項3】
前記ヒータは、前記磁気ディスクの回転軸の周りに渦巻き状に配置された請求項1に記載の磁気ディスク。
【請求項4】
前記ヒータは前記磁気ディスクの回転軸の周りに複数配置され、前記複数のヒータは前記回転軸を中心として放射状に配置されている請求項2に記載の磁気ディスク。
【請求項5】
前記基板上には、前記磁気ディスクの回転軸を取り囲むように設けられた互いに異なる径の一対の集電環をさらに備え、前記ヒータは、前記一方の集電環と電気的に接続されると共に前記他方の集電環と電気的に接続された請求項1〜4のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項6】
前記ヒータは前記基板における前記磁気記録層が設けられた面とは反対の面に設けられた請求項1〜5のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項7】
前記基板を一対備え、前記一対の基板は互いに対向するように固定され、前記ヒータは前記一対の基板間に設けられ、前記磁気記録層は前記各基板の外側面上に設けられた請求項1〜5のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項8】
前記ヒータは金属層から形成された請求項1〜7のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項9】
前記金属層が絶縁層を介して複数積層された請求項8に記載の磁気ディスク。
【請求項10】
基板、前記基板上に設けられた磁気記録層、及び前記基板上に設けられたヒータを有する磁気ディスクと、
前記磁気ディスクを軸周りに回転させる駆動部と、
前記磁気ディスクの磁気記録層に対するデータの書込み及び前記磁気記録層からのデータの読出しを行う磁気ヘッド部と、
前記ヒータに対して電力を供給する電力供給部と、
を備える磁気ディスクドライブ。
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられた磁気記録層と、前記基板上に設けられたヒータと、を備える磁気ディスク。
【請求項2】
前記ヒータは、前記磁気ディスクの回転軸の周りに環状に配置された請求項1に記載の磁気ディスク。
【請求項3】
前記ヒータは、前記磁気ディスクの回転軸の周りに渦巻き状に配置された請求項1に記載の磁気ディスク。
【請求項4】
前記ヒータは前記磁気ディスクの回転軸の周りに複数配置され、前記複数のヒータは前記回転軸を中心として放射状に配置されている請求項2に記載の磁気ディスク。
【請求項5】
前記基板上には、前記磁気ディスクの回転軸を取り囲むように設けられた互いに異なる径の一対の集電環をさらに備え、前記ヒータは、前記一方の集電環と電気的に接続されると共に前記他方の集電環と電気的に接続された請求項1〜4のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項6】
前記ヒータは前記基板における前記磁気記録層が設けられた面とは反対の面に設けられた請求項1〜5のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項7】
前記基板を一対備え、前記一対の基板は互いに対向するように固定され、前記ヒータは前記一対の基板間に設けられ、前記磁気記録層は前記各基板の外側面上に設けられた請求項1〜5のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項8】
前記ヒータは金属層から形成された請求項1〜7のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項9】
前記金属層が絶縁層を介して複数積層された請求項8に記載の磁気ディスク。
【請求項10】
基板、前記基板上に設けられた磁気記録層、及び前記基板上に設けられたヒータを有する磁気ディスクと、
前記磁気ディスクを軸周りに回転させる駆動部と、
前記磁気ディスクの磁気記録層に対するデータの書込み及び前記磁気記録層からのデータの読出しを行う磁気ヘッド部と、
前記ヒータに対して電力を供給する電力供給部と、
を備える磁気ディスクドライブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−73113(P2006−73113A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256106(P2004−256106)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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