説明

磁気ディスク装置、トラッキング制御方法、およびトラッキング制御回路

【課題】パターンドメディアに対するトラッキング制御を高精度かつ高速に行うことができる磁気ディスク装置およびトラッキング制御方法を提供する。
【解決手段】磁気ディスク装置は、磁気ディスク1の回転中、再生素子2Aを介して複数列の記録トラックを2列ずつまとめて読み取ることにより、その各列に含まれる複数の磁性ドットdに応じた磁気読み取り信号を取得する磁気読み取り信号取得手段10と、磁気読み取り信号から記録トラックの各列に応じた2列分のトラック分離信号を生成するトラック分離信号生成手段20と、トラック分離信号のそれぞれを絶対値化してトラック絶対値信号を生成するトラック絶対値信号生成手段31,32と、トラック絶対値信号の差分を求めてトラック差分信号を生成するトラック差分信号生成手段40と、トラック差分信号に基づいて磁気ヘッド移動機構5を制御する磁気ヘッド移動制御手段60とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるパターンドメディアと称される磁気ディスクのトラッキング制御に優れた磁気ディスク装置、トラッキング制御方法、およびトラッキング制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
パターンドメディアのトラッキング制御に関する技術としては、特許文献1に開示されたものがある。同文献に開示された技術では、ディスク周方向に複数の記録セル(磁性ドット)を所定ピッチに並べて形成されたサブトラックがディスク径方向に4列ずつまとまって一つの記録トラック帯をなすように形成され、ディスク径方向に隣り合うサブトラック同士がディスク周方向に半ピッチずれるように形成されたパターンドメディアを用いている。読み出しヘッドとしては、2列のサブトラックに跨って読み取り可能なものを用いている。
【0003】
このようなパターンドメディアに対するトラッキング制御では、読み出しヘッドがサブトラックを2列ずつまとめて読み取るため、隣り合うサブトラックのちょうど中間を読み出しヘッドが通るように制御している。具体的には、一方のサブトラックに属する1つの記録セルの大部分に読み出しヘッドが重なる際、他方のサブトラックに属する2つの記録セルの一部にも読み出しヘッドが重なる。そのため、あらかじめ複数の記録セルの磁化方向に応じた複数の信号パターンを記憶しておき、実際の読み出し時に得られた実測信号を上記記憶された信号パターンと比較し、その比較結果として得られた記録セルの磁化方向に対応するビットパターン情報とトラックずれ情報とを用いることにより、読み出しヘッドが隣り合うサブトラックのちょうど中間を通るようにトラッキング制御している。
【0004】
【特許文献1】特許第3699925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のパターンドメディアに対するトラッキング制御の技術では、あらかじめメモリに記憶された複数の信号パターンを読み出し、これらの信号パターンと実測信号とを一つずつ詳細に比較しなければ、隣り合うサブトラックの中間に正確に位置合わせすることができず、その処理にもある程度の時間を要するので、高精度かつ高速にトラッキング制御することができなかった。
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、パターンドメディアに対するトラッキング制御を高精度かつ高速に行うことができる磁気ディスク装置、トラッキング制御方法、およびトラッキング制御回路を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面によれば、ディスク周方向に複数の磁性ドットを所定ピッチに並べて形成された記録トラックがディスク径方向に所定のトラックピッチをなすように複数列状に形成されているとともに、ディスク径方向に隣り合う上記記録トラックの列同士がディスク周方向にずれるように形成された磁気ディスクと、上記複数列の記録トラックをディスク径方向に隣り合う2列ずつまとめて読み取り可能な再生素子を有する磁気ヘッドと、上記磁気ディスクに対して上記磁気ヘッドを対向させつつディスク径方向に往復移動させる磁気ヘッド移動機構と、上記磁気ディスクの回転中、上記再生素子を介して上記複数列の記録トラックを2列ずつまとめて読み取ることにより、その各列に含まれる上記複数の磁性ドットに応じた磁気読み取り信号を取得する磁気読み取り信号取得手段と、上記磁気読み取り信号から上記記録トラックの各列に応じた2列分のトラック分離信号を生成するトラック分離信号生成手段と、上記2列分のトラック分離信号のそれぞれを絶対値化して2列分のトラック絶対値信号を生成するトラック絶対値信号生成手段と、上記2列分のトラック絶対値信号の差分または差分平均を求めてトラック差分信号を生成するトラック差分信号生成手段と、上記トラック差分信号に基づいて上記磁気ヘッド移動機構を制御する磁気ヘッド移動制御手段と、を備えた磁気ディスク装置が提供される。
【0009】
本発明の第2の側面によれば、ディスク周方向に複数の磁性ドットを所定ピッチに並べて形成された記録トラックがディスク径方向に所定のトラックピッチをなすように複数列状に形成されているとともに、ディスク径方向に隣り合う上記記録トラックの列同士がディスク周方向にずれるように形成された磁気ディスクと、上記複数列の記録トラックをディスク径方向に隣り合う2列ずつまとめて読み取り可能な再生素子を有する磁気ヘッドと、上記磁気ディスクに対して上記磁気ヘッドを対向させつつディスク径方向に往復移動させる磁気ヘッド移動機構とを備えた磁気ディスク装置において、上記磁気ヘッドのディスク径方向位置を調整してトラッキング制御を行うためのトラッキング制御方法であって、上記磁気ディスクの回転中、上記再生素子を介して上記複数列の記録トラックを2列ずつまとめて読み取ることにより、その各列に含まれる上記複数の磁性ドットに応じた磁気読み取り信号を取得する磁気読み取り信号取得手順と、上記磁気読み取り信号から上記記録トラックの各列に応じた2列分のトラック分離信号を生成するトラック分離信号生成手順と、上記2列分のトラック分離信号のそれぞれを絶対値化して2列分のトラック絶対値信号を生成するトラック絶対値信号生成手順と、上記2列分のトラック絶対値信号の差分または差分平均を求めてトラック差分信号を生成するトラック差分信号生成手順と、上記トラック差分信号に基づいて上記磁気ヘッド移動機構を制御する磁気ヘッド移動制御手順と、を実行するトラッキング制御方法が提供される。
【0010】
本発明の第3の側面によれば、複数の磁性ドットを列状に並べて形成された記録トラックを、隣り合う列同士で上記磁性ドットをトラック方向にずらして複数配列した磁気記録媒体に対し、上記隣り合う列の記録トラックをまとめて読み取る再生素子から得られる磁気読み取り信号に基づいてトラッキング制御を行うトラッキング制御回路であって、上記磁気読み取り信号に基づき、上記隣り合う列の記録トラックから上記複数の磁性ドットを読み取る際の基準となるタイミング信号を生成するタイミング発生回路と、上記タイミング発生回路により生成されたタイミング信号に基づき、上記磁気読み取り信号を分離する信号分離回路と、上記信号分離回路により分離された信号の振幅についての差分を算出する差分回路と、上記差分回路から出力される差分信号に基づき、トラッキング制御信号を生成する制御回路と、を備えているトラッキング制御回路が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明により開示された技術によれば、たとえばパターンドメディアに形成された複数列の記録トラックについて、ディスク径方向に隣り合う記録トラックを2列ずつまとめて磁気ヘッドの再生素子が読み取る。その際、再生素子を介して得られた磁気読み取り信号を記録トラックの各列に応じた2列分のトラック分離信号に分離し、これらのトラック分離信号を絶対値化して2列分のトラック絶対値信号を生成し、さらに2列分のトラック絶対値信号の差分を求めてトラック差分信号を生成することにより、このトラック差分信号に基づいて再生素子が隣り合う2列の記録トラックの中間ラインを通るようにトラッキング制御を正確に行うことができる。信号の分離や絶対値化、さらに信号の差分算出は、たとえばワイヤードロジック回路を用いてリアルタイムに行うことができるので、パターンドメディアに対するトラッキング制御を高精度かつ高速に行うことができる。
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
図1〜4は、本発明に係る磁気ディスク装置の一実施形態を示している。本実施形態の磁気ディスク装置は、回転中の磁気ディスク1に対して磁気ヘッド2のトラッキング制御を行いながら磁気情報を再生あるいは記録する装置である。トラッキング制御に関係する構成要素としては、磁気ディスク1および磁気ヘッド2のほか、スピンドルモータ3、スイングアーム4、ボイスコイルモータ5、ヘッドアンプ10、タイミング発生回路11、信号分離回路20、絶対値回路31,32、遅延回路33、差分回路40、ADコンバータ41、MPU50、DAコンバータ51、ローパスフィルタ52、ならびにVCM駆動回路60を備えている。トラッキング制御回路には、ヘッドアンプ10、タイミング発生回路11、信号分離回路20、絶対値回路31,32、遅延回路33、差分回路40、ADコンバータ41、MPU50、DAコンバータ51、ローパスフィルタ52、ならびにVCM駆動回路60が含まれる。
【0015】
磁気ディスク1は、いわゆるパターンドメディアであり、垂直磁気記録方式に適したものである。この磁気ディスク1には、磁気記録部分となる磁性ドットdが非磁性領域内において離散状に形成されている。特に本実施形態の磁気ディスク1は、以下のようなパターンで形成されている。
【0016】
磁気ディスク1には、データ記録領域D、トラックマークM、およびサーボパターン領域Sがディスク周方向にセクタ単位で形成されている。データ記録領域Dは、磁気情報が記録再生される領域であり、図2に示すように、複数の磁性ドットdをディスク周方向に所定ピッチpに並べて形成された複数の記録トラックT1〜T6がディスク径方向に所定のトラックピッチTpをなすように列状に形成された領域である。ディスク径方向に隣り合う記録トラックT1〜T6の列同士、たとえば符号T1とT2の列同士や符号T2とT3の列同士は、ディスク周方向にp/2だけずれるように形成されている。なお、記録トラックT1〜T6の列数やディスク周方向に並ぶ磁性ドットdの数は、もちろん図示する数に限られるものではなく、実際には極めて多くの列や磁性ドットdの数が存在する。
【0017】
磁性ドットdには、後述の記録素子2Bによる垂直磁界の作用により、磁気ディスクDの表面に対して上下いずれかの向きをなす磁化方向が磁気情報として記録される。図2においては、たとえば白抜きの磁性ドットdを上向きの磁化方向(+)が記録されているものとし、黒塗りの磁性ドットdを下向きの磁化方向(−)が記録されているものとして示している。このようなデータ記録領域Dにおける記録トラックT1〜T6の各列につき、磁気ディスク1の回転方向に応じて磁気ヘッド2に対して最初に接近する先頭の磁性ドットから所定の途中位置までの磁性ドット、たとえば記録トラックT3,T4における先頭の磁性ドットd1から6番目の磁性ドットd6までは、ダミーパターンDmとして設けられている。このようなダミーパターンDmには、トラッキング制御に適した磁化方向パターンをなすように所定の磁気情報が記録され、ダミーパターンDmに続く所定数の磁性ドットdには、任意の磁化方向パターンでユーザデータとしての磁気情報が記録される。なお、ダミーパターンには、ユーザデータとしての磁気情報を記録するようにしてもよい。ダミーパターンは、磁性ドットの所定数おきに設定してもよいし、あるいは特に設けなくてもよい。
【0018】
図1に示すように、トラックマークMは、データ記録領域Dとサーボパターン領域Sとの間でそのデータ記録領域Dの読み取りが始められる先端位置よりも手前の位置にあってディスク径方向に沿うように複数形成されている。各トラックマークMは、三角形状の磁性領域であり、図2に示すように、各記録トラックT1〜T6とディスク径方向同一位置にあってトラックピッチTpと同ピッチで形成されている。なお、トラックマークの形状は、特に三角形状でなくてもよく、好ましくは磁性ドットと磁気的に区別して読み取り可能な形状であればよい。
【0019】
ディスク径方向に並ぶ複数のトラックマークMは、記録トラックT1〜T6の2列分ごとに磁化方向が交互に異なるようにあらかじめ着磁されている。図2に一例として示すように、符号T1とT2の列に対応する2つのトラックマークMは、たとえば白抜きで上向きの磁化方向(+)が着磁されており、これらに続く符号T3とT4の列に対応する2つのトラックマークMは、たとえば黒塗りで下向きの磁化方向(−)が着磁されている。このようなトラックマークMによれば、これらのトラックマークMを後述の再生素子2Aが読み取ることにより、目標とする2列の記録トラックに再生素子2Aが位置合わせされる。これにより、記録トラックT1〜T6のうち目標とする記録トラックの2列ごとに再生素子2Aが概ね位置合わせされる。その際、符号T1,T3,T5といった奇数番目の記録トラックは、常に最初に読み取られ、その次に符号T2,T4,T6といった偶数番目の記録トラックが読み取られることとなり、その後同様に奇数番目および偶数番目の順に記録トラックT1〜T6が順次読み取られる。なお、トラックマークの変形例としては、記録トラックの2列ごとに一つずつ対応するように配列されたトラックマークでもよい。以下の説明において特に目標とする記録トラックを特定する場合には、符号T3,T4の記録トラックを「目標トラック」として用いる。
【0020】
図1に示すサーボパターン領域Sは、複数の記録トラックT1〜T6のうち、再生あるいは記録すべき2列の目標トラック(図2では符号T3,T4の2列)を探し出すための磁気パターンが形成された領域である。このようなサーボパターン領域Sには、特に符号を付さないが、プリアンブル部、アドレス部、およびバーストパターン部が含まれている。プリアンブル部は、データ記録領域Dに対して記録再生を行う際の基準となるタイミング信号を生成するための磁気パターン部分である。アドレス部は、セクタ番号やトラック番号といったアドレス情報を示すための磁気パターン部分である。バーストパターン部は、たとえば2列の目標トラックT3,T4に対して後述の再生素子2Aを位置合わせするための磁気パターン部分である。なお、バーストパターン部は、データ記録領域Dの目標トラックT3,T4からディスク周方向にある程度離間した位置に形成されるため、製造誤差などによってバーストパターン部のみでは正確な位置合わせが保障されるものではない。そのため、後述のトラッキング制御が行われる。
【0021】
図1に示すように、磁気ヘッド2は、磁気ディスク1に対して磁気情報の記録再生を行うものであり、磁気ディスク1の記録面と対向するようにスイングアーム3の先端にスライダ(図示略)を介して設けられている。磁気ヘッド2は、磁気情報の読み書きをそれぞれ独立して行う再生素子2Aおよび記録素子2Bを有する。再生素子2Aと記録素子2Bは、磁気ディスク1の周方向に並んでおり、再生素子2Aに対して磁気ディスク1の回転方向側に記録素子2Bが位置している。
【0022】
図2に示すように、再生素子2Aは、複数列の記録トラックT1〜T6を2列ずつまとめて読み取り可能なディスク径方向幅寸法を有する。この再生素子2Aは、トラックマークMを読み取ることで記録トラックT1〜T6の2列ごとに位置合わせされる。たとえば破線で区切られた2列の目標トラックT3,T4に対して再生素子2Aが位置合わせされた場合、最も好ましい状態が図2に示すように目標トラックT3,T4の中間ラインを通る位置に合わされた状態となる。一方、トラックマークMを読み取るだけでは目標トラックT3,T4に対して正確に位置合わせすることができない。たとえば図3に示すように、再生素子2Aは、目標トラックT3,T4に対して両隣りに位置する記録トラックT2,T5からは磁気的な影響を受けないディスク径方向幅寸法を有しているが、目標トラックT3,T4のいずれか一方に偏って位置合わせされた状態になることがある。このような再生素子2Aにより磁性ドットdの磁化方向および磁気の強さが読み取られ、それに応じた信号がヘッドアンプ10に入力される。
【0023】
記録素子2Bは、詳細な図示を略するが、再生素子2Aと同様に複数列の記録トラックT1〜T6に2列ずつまとめて磁気情報を記録可能なディスク径方向幅寸法を有する。このような記録素子2Bは、図示しない記録制御回路からの記録すべき情報に応じた駆動信号に基づき、2列の目標トラックT3,T4に対して所定方向の垂直磁界を作用させるように駆動される。その駆動周波数は、タイミング信号に同期したクロック周波数になる。このような再生素子2Aおよび記録素子2Bは、概ねディスク径方向同位置にあるが、厳密には製造誤差やいわゆるスキュー角の関係でディスク径方向にずれている。そのため、記録時にはトラッキング制御に加えてヘッド位置補正が行われる。
【0024】
スピンドルモータ3は、磁気ディスク1を高速回転させるものである。スイングアーム4は、磁気ヘッド2を概ねディスク径方向に往復移動させるものであり、ボイスコイルモータ5によって揺動させられる。ボイスコイルモータ5は、VCM駆動回路60によって駆動される。このようなスイングアーム4およびボイスコイルモータ5は、磁気ヘッド移動機構として設けられている。
【0025】
ヘッドアンプ10は、再生素子2Aからの入力信号を磁気読み取り信号として取得し、この磁気読み取り信号を増幅して出力する。たとえば図2に示すように、ダミーパターンDmにおける2列の目標トラックT3,T4に対して再生素子2Aが均等に掛かるように位置合わせされ、この状態で再生素子2Aが目標トラックT3,T4に含まれる磁性ドットdを2列まとめて読み取る。この場合、2列の目標トラックT3,T4の磁性ドットdごとに再生素子2Aで検出される磁気の強さは概ね一定となり、磁化方向に応じて振幅方向が反転するため、同図に示すような波形の磁気読み取り信号がヘッドアンプ10から出力される。一方、図3に示すように、一方の目標トラックT3に対して再生素子2Aが偏った位置にあり、この状態で再生素子2Aが磁性ドットdを2列まとめて読み取った場合、再生素子2Aは、磁化方向を振幅方向として検出するものの、一方の目標トラックT3よりも他方の目標トラックT4に含まれる磁性ドットdからの磁気の強さを小さく検出する。すなわち、目標トラックT3,T4に対して再生素子2Aのディスク径方向位置がずれている場合には、図3に示すように振幅の絶対値として振幅大と振幅小を含む波形の磁気読み取り信号がヘッドアンプ10から出力される。
【0026】
タイミング発生回路11は、再生素子2Aがサーボパターン領域Sのプリアンブル部を読み取ることで取得した磁気読み取り信号に基づき、記録再生時の基準となるタイミング信号を生成する。このタイミング信号は、隣り合う2列の磁性ドットdがディスク周方向に交互に並ぶピッチ間隔p/2に応じたクロック周波数の信号であり、信号分離回路20に入力されるとともに、ADコンバータ41に入力される。
【0027】
信号分離回路20は、再生素子2AがダミーパターンDmの磁性ドットdを読み取ることで取得した磁気読み取り信号をタイミング信号のクロック周波数に応じて2列分の信号に分離する。たとえば図2に示すように、振幅の絶対値が概ね等しい磁気読み取り信号が信号分離回路20に入力された場合、この信号分離回路20からは、一方の記録トラックT3の磁性ドットdに対応した第1トラック分離信号と、他方の記録トラックT4の磁性ドットdに対応した第2トラック分離信号とが出力される。一方、図3に示すように、振幅の絶対値が大小2つの異なる値をとる磁気読み取り信号が信号分離回路20に入力された場合、この信号分離回路20からは、一方の記録トラックT3の磁性ドットdに対応する第1トラック分離信号としては、振幅大の信号が出力され、他方の記録トラックT4の磁性ドットdに対応する第2トラック分離信号としては、振幅小の信号が出力される。このような第1トラック分離信号は、目標トラックT3,T4のうち、常に奇数番目の記録トラックT3に対応しており、第2トラック分離信号は、偶数番目の記録トラックT4に対応する。
【0028】
絶対値回路31,32は、第1および第2トラック分離信号のそれぞれを絶対値化する。たとえば図2に示すように、概ね等しい振幅レベルの第1および第2トラック分離信号が絶対値回路31,32に入力された場合、絶対値回路31,32のそれぞれからは、ともに振幅が概ね等しい正のレベルでタイミング信号の一周期分だけずれた第1および第2トラック絶対値信号が出力される。一方、図3に示すように、振幅が大小異なる第1および第2トラック分離信号が絶対値回路31,32に入力された場合、たとえば振幅大に対応する絶対値回路31からは、同じく振幅大で正のレベルの第1トラック絶対値信号が出力される一方、振幅小に対応する絶対値回路32からは、同じく振幅小で正のレベルの第2トラック絶対値信号が出力される。このような絶対値回路31は、目標トラックT3,T4のうち、常に奇数番目の記録トラックT3に対応しており、絶対値回路32は、偶数番目の記録トラックT4に対応している。
【0029】
遅延回路33は、第1および第2トラック絶対値信号に位相差(時間的なずれ)があるため、たとえば一方の絶対値回路31から出力された第1トラック絶対値信号をタイミング信号の一周期分だけずらして出力する。なお、遅延回路は、第2トラック絶対値信号をタイミング信号の一周期分だけずらして出力するように配置してもよい。
【0030】
差分回路40は、遅延回路33を介して同位相とされた第1および第2トラック絶対値信号の差分を算出し、その結果をトラック差分信号として出力する。たとえば図2に示すように、振幅が概ね等しい第1および第2トラック絶対値信号が差分回路40に入力された場合、トラック差分信号としては、概ね0レベルとなる。一方、図3に示すように、振幅が大小異なる第1および第2トラック絶対値信号が差分回路40に入力された場合、トラック差分信号としては、ある程度の数値レベルをもった信号になる。すなわち、トラック差分信号は、2列の目標トラックT3,T4に対する再生素子2Aのポジションエラー信号に相当するものである。たとえば正の数値レベルをもつトラック差分信号は、再生素子2Aが奇数番目の記録トラックT3の方に偏り、その数値レベルに応じた距離だけずれていることを示しており、負の数値レベルをもつトラック差分信号は、再生素子2Aが偶数番目の記録トラックT4の方に偏り、その数値レベルに応じた距離だけずれていることを示している。なお、差分回路40から出力されるトラック差分信号としては、第1および第2トラック絶対値信号に応じた周波数の周期的な信号になるが、図3には、MPU50によってデジタル信号処理された定常的なトラック差分信号(トラッキング制御信号)を示している。
【0031】
MPU50は、いわゆるマイクロプロセッサであり、ADコンバータ41を介して入力されたトラック差分信号をデジタル信号処理する。このMPU50のデジタル信号処理によれば、再生時にはデジタルのトラック差分信号がトラッキング制御信号として出力され、記録時には記録素子2Bについてのヘッド位置補正情報も含むトラッキング制御信号が出力される。なお、デジタル信号処理を行う回路要素としては、たとえばトラック差分信号の処理のみに特化したデジタルシグナルプロセッサを適用してもよい。
【0032】
VCM駆動回路60は、トラッキング制御用の磁気ヘッド移動制御手段として機能するものであり、MPU50からDAコンバータ51およびローパスフィルタ52を介してトラッキング制御信号を受け、そのトラッキング制御信号に基づいてボイスコイルモータ5を制御する。これによりトラッキング制御が行われ、再生素子2Aや記録素子2Bは、2列の目標トラックT3,T4のちょうど中間ラインを通る位置に正確に位置合わせされる。このようなトラッキング制御を行った後に再生処理や記録処理が実行され、2列の目標トラックT3,T4に含まれる磁性ドットdに対して磁気情報の再生や記録が正確に行われる。
【0033】
次に、目標トラックT3,T4に対するトラッキング制御方法の処理手順につき、図4を参照して説明する。
【0034】
まず、図4に示すように、MPU50は、たとえば図示しないホストコンピュータからの再生命令や記録命令に応じて目標トラックT3,T4の探索処理を実行する(S1)。この目標トラックT3,T4の探索処理においては、磁気ディスクDの回転中、再生素子2Aを介してサーボパターン領域Sのプリアンブル部、アドレス部、およびバーストパターン部をMPU50が読み取ることにより、目標トラックT3,T4に対応した2つのトラックマークMを読み取ることが可能なディスク径方向位置に再生素子2Aが移動される。その後、さらに再生素子2Aを介して上記2つのトラックマークMをMPU50が読み取る。その読み取り結果としては、たとえば図2および図3に示すようなトラックマーク信号が得られ、その信号レベルが所定の負レベル以下になると、図2あるいは図3に示すように2列の目標トラックT3,T4に対して再生素子2Aが重なり、目標トラックT3,T4を概ね探索された状態になる。ただし、トラックマーク信号の信号レベルが所定の負レベルよりも大きかったり正のレベルで検出された場合は、目標トラックT3,T4とは異なる記録トラックに再生素子2Aが重なった状態、そのほとんどの場合は隣接する記録トラックT2あるいは記録トラックT5に再生素子2Aが重なった状態である。そのため、MPU50は、少しずつ再生素子2Aをディスク径方向に動かして目標トラックT3,T4に対応した所望とするトラックマーク信号の信号レベルを検出するまで探索処理を続ける。たとえば探索処理を所定時間続けても目標トラックT3,T4を探索できない場合、トラッキングエラーとして処理される。
【0035】
2列の目標トラックT3,T4に対して再生素子2Aが概ね重なると、ヘッドアンプ10は、再生素子2Aを介してさらに目標トラックT3,T4の磁性ドットdを読み取ることで磁気読み取り信号を取得する(S2)。
【0036】
次に、信号分離回路20は、ヘッドアンプ10からの磁気読み取り信号をタイミング信号に基づいて分離し、これにより第1および第2トラック分離信号を生成する(S3)。
【0037】
次に、絶対値回路31,32は、第1および第2トラック分離信号について絶対値化を行う(S4)。これにより、絶対値回路31,32からは、第1および第2トラック絶対値信号が出力され、第1トラック絶対値信号が遅延回路33を介して差分回路40に入力されるとともに、第2トラック絶対値信号がそのまま差分回路40に入力される。
【0038】
次に、差分回路40は、第1および第2トラック絶対値信号の差分を算出する(S5)。これにより、差分回路40からは、トラック差分信号が出力され、このトラック差分信号がADコンバータ41によりデジタル信号化された後、MPU50に入力される。MPU50は、再生時には補正することなくトラック差分信号をトラッキング制御信号として出力するが、記録時にはヘッド位置補正により適正化したトラッキング制御信号を出力する。
【0039】
次に、MPU50は、DAコンバータ51およびローパスフィルタ52を介してトラッキング制御信号をVCM駆動回路60に供給し、VCM駆動回路60は、トラッキング制御信号に基づいてボイスコイルモータ5を制御する(S6)。これにより目標トラックT3,T4に対する再生素子2Aや記録素子2Bのトラッキング制御が行われる。たとえば図3に示すように、再生時に再生素子2Aが目標トラックT3,T4の中間ラインから若干ずれたライン上にあっても、トラッキング制御によって図2に示すような目標トラックT3,T4のちょうど中間ライン上に再生素子2Aが位置合わせされる。記録時も同様に、トラッキング制御によって目標トラックT3,T4のちょうど中間ライン上に記録素子2Bが位置合わせされる。このようなS2〜S6までの処理は、ワイヤードロジック回路としてのヘッドアンプ10、タイミング発生回路11、信号分離回路20、絶対値回路31,32、遅延回路33、差分回路40、ADコンバータ41、MPU50、DAコンバータ51、ローパスフィルタ52、ならびにVCM駆動回路60を含むトラッキング制御回路によって実現されるため、再生素子2AがダミーパターンDmを通り抜ける頃には、再生素子2Aや記録素子2Bの目標トラックT3,T4に対する位置合わせが速やかに完了している。
【0040】
その後、MPU50は、再生素子2Aや記録素子2Bを介して再生処理あるいは記録処理を実行する(S7)。再生処理においては、目標トラックT3,T4の中間ライン上に再生素子2Aが最終的に位置合わせされた状態でダミーパターンDmを抜けた後、そのダミーパターンDmに続く目標トラックT3,T4の磁性ドットdから再生素子2Aを介して磁気情報が正確に読み出される。記録処理においては、目標トラックT3,T4の中間ライン上に再生素子2Aが位置合わせされた状態でダミーパターンDmを抜けた後、ヘッド位置補正によって即座に記録素子2Bが目標トラックT3,T4の中間ライン上に位置合わせされる。これにより、ダミーパターンDmに続く目標トラックT3,T4の磁性ドットdに対しては、記録素子2Bを介して正確に磁気情報が書き込まれる。
【0041】
したがって、本実施形態の磁気ディスク装置によれば、目標トラックT3,T4に対して2列ずつ磁気ヘッド2の再生素子2Aにより磁気情報を読み取り、あるいは記録素子2Bによって磁気情報を書き込む際、ワイヤードロジック回路のトラッキング制御回路による信号分離、絶対値化、差分算出によってトラック差分信号をリアルタイムに生成し、このトラック差分信号に基づいて再生素子2Aや記録素子2Bが目標トラックT3,T4の中間ラインを通るようにトラッキング制御を正確に行うことができる。これにより、2列ずつ記録再生が可能なパターンドメディアとしての磁気ディスク1に対して磁気ヘッド2のトラッキング制御を高精度かつ高速に行うことができる。
【0042】
図5〜8は、他の実施形態を示している。なお、先述した実施形態によるものと同様の構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
たとえば図5に示すように、再生素子2Aのディスク径方向幅寸法は、トラックピッチtpの2倍(2Tp)程度であってもよい。この場合、再生素子2Aは、2列の目標トラックT3,T4に概ね位置合わせされた状態では、同図に示すように隣接する記録トラックT2も読み取ってしまうことがある。そうなると、磁気読み取り信号の波形としては、3種類以上の様々な振幅が生じる。このような場合には、図6あるいは図7に示すようなハードウェア構成を採用すればよい。
【0044】
すなわち、図6に示す磁気ディスク装置には、絶対値回路31,32から出力された第1および第2トラック絶対値信号を積分する積分回路71,72と、これらの積分回路71,72から出力された積分信号を平均化し、さらにその平均された信号の差分を算出してトラック差分信号を生成する差分平均回路40’とが設けられている。
【0045】
一方、図7に示す磁気ディスク装置では、絶対値回路31,32から出力された第1および第2トラック絶対値信号がADコンバータ41に直接入力され、ADコンバータ41は、タイミング信号C1,C2のクロック周波数に応じて第1および第2トラック絶対値信号をAD変換している。MPU50には、積分回路71,72や差分平均回路40’と同等の機能が設けられている。タイミング発生回路11から信号分離回路20に入力されるタイミング信号C0は、先述した実施形態と同様のクロック周波数であるが、ADコンバータ41に入力されるタイミング信号C1,C2のクロック周波数は、タイミング信号C0のクロック周波数を分周することでその半分になっている。一方のタイミング信号C1と他方のタイミング信号C2は、互いに一周期分だけずれている。これにより、MPU50には、デジタル信号としての第1および第2トラック絶対値信号が同時に入力される。
【0046】
このような図6または図7に示すハードウェア構成によれば、図8のフローチャートに従う手順でトラッキング制御処理が行われる。すなわち、図5に示すように第1および第2トラック絶対値信号の波形に3種類以上の様々な振幅が生じる場合であっても、積分回路71,72および差分平均回路40’の処理(図6参照)、あるいはタイミング信号C1,C2を用いたAD変換後のMPU50の処理(図7参照)により、第1および第2トラック絶対値信号を適正に差分平均化して算出したトラック差分信号が得られる(図8:S5’)。このようなトラック差分信号がトラッキング制御信号としてVCM駆動回路60に供給され、VCM駆動回路60は、トラッキング制御信号に基づいてボイスコイルモータ5を制御することにより(図8:S6)、先述した実施形態と同様に磁気ディスク1に対する磁気ヘッド2のトラッキング制御を高精度かつ高速に行うことができる。
【0047】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0048】
上記実施形態で示した構成は、あくまでも一例にすぎず、仕様に応じて適宜設計変更することが可能である。
【0049】
たとえばバーストパターンを読み取ることで概ね2列の目標トラックに再生素子の位置合わせを行うことができる場合には、トラックマークを特に設ける必要はなく、トラックマークを読み取る処理を省略してもよい。あるいは、バーストパターンの磁性ドットをデータ記録領域の磁性ドットと同様の配列とし、このバーストパターンをダミーパターンの磁性ドットと同様に読み取ることでトラッキング制御を行うようにしてもよい。この場合には、もはやダミーパターンを設ける必要がない。
【0050】
図5に示す実施形態では、第1および第2トラック絶対値信号を平均化したが、これに代わる他の例としては、第1および第2トラック絶対値信号の最低値レベルを抽出し、その最低値レベル同士の差分をとってトラック差分信号を生成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、たとえば垂直磁気記録方式の磁気ディスク装置におけるトラッキング制御に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る磁気ディスク装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す磁気ディスク装置によるトラッキング制御方法を説明するための説明図である。
【図3】図1に示す磁気ディスク装置によるトラッキング制御方法を説明するための説明図である。
【図4】トラッキング制御方法の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明に係るトラッキング制御方法の他の実施形態を説明するための説明図である。
【図6】本発明に係る磁気ディスク装置の他の実施形態を示す構成図である。
【図7】本発明に係る磁気ディスク装置の他の実施形態を示す構成図である。
【図8】図5に示すトラッキング制御方法の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
Dm ダミーパターン
d 磁性ドット
T1〜T6 記録トラック
M トラックマーク
1 磁気ディスク
2 磁気ヘッド
2A 再生素子
2B 記録素子
3 スピンドルモータ
4 スイングアーム(磁気ヘッド移動機構)
5 ボイスコイルモータ(磁気ヘッド移動機構)
10 ヘッドアンプ(磁気読み取り信号取得手段)
20 信号分離回路(トラック分離信号生成手段)
31,32 絶対値回路(トラック絶対値信号生成手段)
40 差分回路(トラック差分信号生成手段)
40’ 差分平均回路(トラック差分信号生成手段)
60 VCM駆動回路(磁気ヘッド移動制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク周方向に複数の磁性ドットを所定ピッチに並べて形成された記録トラックがディスク径方向に所定のトラックピッチをなすように複数列状に形成されているとともに、ディスク径方向に隣り合う上記記録トラックの列同士がディスク周方向にずれるように形成された磁気ディスクと、
上記複数列の記録トラックをディスク径方向に隣り合う2列ずつまとめて読み取り可能な再生素子を有する磁気ヘッドと、
上記磁気ディスクに対して上記磁気ヘッドを対向させつつディスク径方向に往復移動させる磁気ヘッド移動機構と、
上記磁気ディスクの回転中、上記再生素子を介して上記複数列の記録トラックを2列ずつまとめて読み取ることにより、その各列に含まれる上記複数の磁性ドットに応じた磁気読み取り信号を取得する磁気読み取り信号取得手段と、
上記磁気読み取り信号から上記記録トラックの各列に応じた2列分のトラック分離信号を生成するトラック分離信号生成手段と、
上記2列分のトラック分離信号のそれぞれを絶対値化して2列分のトラック絶対値信号を生成するトラック絶対値信号生成手段と、
上記2列分のトラック絶対値信号の差分または差分平均を求めてトラック差分信号を生成するトラック差分信号生成手段と、
上記トラック差分信号に基づいて上記磁気ヘッド移動機構を制御する磁気ヘッド移動制御手段と、
を備えている、磁気ディスク装置。
【請求項2】
上記磁気ディスクには、上記記録トラックの各列または2列ごとに対応するように複数のトラックマークが形成されており、これら複数のトラックマークは、上記記録トラックの2列分ごとに磁化方向が交互に異なるように着磁されている、請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
上記記録トラックの各列につき、上記再生素子によって最初に読み取られる先頭の上記磁性ドットからその列の所定の途中位置にある磁性ドットまでは、ダミーパターンとして設けられている、請求項1または2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
上記磁気ヘッドには、上記複数列の記録トラックに対して2列ずつまとめて磁気記録可能な記録素子が搭載されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
ディスク周方向に複数の磁性ドットを所定ピッチに並べて形成された記録トラックがディスク径方向に所定のトラックピッチをなすように複数列状に形成されているとともに、ディスク径方向に隣り合う上記記録トラックの列同士がディスク周方向にずれるように形成された磁気ディスクと、上記複数列の記録トラックをディスク径方向に隣り合う2列ずつまとめて読み取り可能な再生素子を有する磁気ヘッドと、上記磁気ディスクに対して上記磁気ヘッドを対向させつつディスク径方向に往復移動させる磁気ヘッド移動機構とを備えた磁気ディスク装置において、上記磁気ヘッドのディスク径方向位置を調整してトラッキング制御を行うためのトラッキング制御方法であって、
上記磁気ディスクの回転中、上記再生素子を介して上記複数列の記録トラックを2列ずつまとめて読み取ることにより、その各列に含まれる上記複数の磁性ドットに応じた磁気読み取り信号を取得する磁気読み取り信号取得手順と、
上記磁気読み取り信号から上記記録トラックの各列に応じた2列分のトラック分離信号を生成するトラック分離信号生成手順と、
上記2列分のトラック分離信号のそれぞれを絶対値化して2列分のトラック絶対値信号を生成するトラック絶対値信号生成手順と、
上記2列分のトラック絶対値信号の差分または差分平均を求めてトラック差分信号を生成するトラック差分信号生成手順と、
上記トラック差分信号に基づいて上記磁気ヘッド移動機構を制御する磁気ヘッド移動制御手順と、
を実行することを特徴とする、トラッキング制御方法。
【請求項6】
複数の磁性ドットを列状に並べて形成された記録トラックを、隣り合う列同士で上記磁性ドットをトラック方向にずらして複数配列した磁気記録媒体に対し、上記隣り合う列の記録トラックをまとめて読み取る再生素子から得られる磁気読み取り信号に基づいてトラッキング制御を行うトラッキング制御回路であって、
上記磁気読み取り信号に基づき、上記隣り合う列の記録トラックから上記複数の磁性ドットを読み取る際の基準となるタイミング信号を生成するタイミング発生回路と、
上記タイミング発生回路により生成されたタイミング信号に基づき、上記磁気読み取り信号を分離する信号分離回路と、
上記信号分離回路により分離された信号の振幅についての差分を算出する差分回路と、
上記差分回路から出力される差分信号に基づき、トラッキング制御信号を生成する制御回路と、
を備えていることを特徴とする、トラッキング制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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