説明

磁気ヘッド用クリーニングパット及び磁気ストライプ処理装置

【課題】磁気ヘッドのクリーニングを自動化しても、凹み部に蓄積した内層の異物を完全に除去できる磁気ヘッド用クリーニングパット及び磁気ストライプ処理装置を提供する。
【解決手段】走行時に通帳Pの磁気ストライプ23に接触して該磁気ストライプ23の磁気データを処理する磁気ヘッド25を有する磁気ストライプ処理装置11に設けられ、該磁気ヘッド25をクリーニングする磁気ヘッド用クリーニングパットであって、前記磁気ヘッド25の磁気接触面25aが前記磁気ストライプ23との接触により磨耗して凹溝状に段差形成された磨耗面m1と非磨耗面m2に対し、前記磨耗面用のクリーニングエッジ37cと非磨耗面用のクリーニングエッジ37dとを備えて構成され、前記磁気ヘッド25の走行上に配置される磁気ヘッド用クリーニングパット37を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば現金自動預払装置に備えられる通帳印字機構、通帳発行装置等の通帳処理機に内蔵される磁気ヘッド用クリーニングパット及び磁気ストライプ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、通帳処理機において、通帳の磁気データを処理する場合、通帳の磁気ストライプ上に磁気ヘッドを接触させた状態で走行させることにより、磁気ストライプの磁気データを読み取りまた書き込んで磁気データ処理している。
この磁気ヘッドの磁気接触面に紙粉等の異物が付着すると、磁気データの出力レベルが下がり、磁気データ処理不良を発生させて結果的に取引不成立となる。このため、定期的に磁気ヘッドの磁気接触面をクリーニングする必要があった。
【0003】
前記磁気ヘッドのクリーニングは自動化することが好ましく、その一例として、磁気ヘッドの走行路上にクリーニングパット(クリーニング布)を取付けておき、走行してきた磁気ヘッドがクリーニングパットに接触した時点で、磁気ヘッドの汚れを自動的に落とすようにした磁気ヘッドのクリーニング機構が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかし、磁気ヘッドの磁気接触面は通帳の磁気ストライプと同じ面で接触するため局部磨耗し、この局部磨耗が大きくなると、紙粉や塵等の異物が付着しやすくなり、異物が付着すると磁気ヘッドは磁気データ処理性能が低下し、通帳の取引不成立を度々発生させることになる。このため、磁気ヘッドは局部磨耗が大きくなると寿命限界となっていた。
【0005】
ここで、磁気ヘッドの寿命延長が図れなくなるという問題点を考察した結果を図10〜図12を参照して具体的に説明する。
まず、図10(A)に示すように、通帳Pの磁気ストライプ101に磁気ヘッド102が接触した状態で走行する磁気処理機構において、図10(B)に示すように、磁気ヘッド102が通帳Pの磁気ストライプ101に接触して走行した際に、該磁気ヘッド102が磁気ストライプ101の磁気データを読み書き処理し、通帳Pの取引ごとに、この磁気データ処理を繰り返し実行している。
【0006】
よって、この磁気ヘッド102の磁気接触面102aは、長期使用されると次第に磨耗し、凹溝状に段差形成された凹み部(エアーギャップ)103が形成される。この凹み部103には、紙粉や塵等の粘着性の高い異物104が入り込んで付着し、蓄積される。これにより、凹み部103内の磁気接触面102bは磁気処理性能が低下し、磁気ストライプ101との間で接触不良を起す。つまり、凹み部103の段差形成が原因して磁気データの出力レベルが下がり、磁気ストライプ101の磁気データ処理不良を発生させる。
【0007】
このため、磁気ヘッド102の磁気接触面102aに付着した異物104を除去すればよい。その異物除去手段としては、図11(A)及び図11(B)に示すように、磁気ヘッド102の走行路上にクリーニングパット106を配置し、磁気ヘッド102が矢印方向105に走行した時にクリーニングパット106が異物104を除去するようにしている。ここに用いられるクリーニングパット106は、図11(C)に示すように、長方体状の角部に鋭いエッジ107を形成し、このエッジ107が磁気接触面102aに沿う高さ位置に配置することで対処している。
【0008】
そして、磁気ヘッド102が、図12(A)に示す矢印方向108に走行したとき、該磁気ヘッド102の磁気接触面102aに付着している異物104が、図12(B)に示すように、クリーニングパット106のエッジ107によって削り取られる。
【0009】
さらに、磁気ヘッド102は矢印方向109に走行し、磁気ヘッド102が、図12(C)に示すように、クリーニングパット106との接触位置を通過すると、磁気ヘッド102の上面に蓄積されていた表層の異物104はクリーニングパット106のエッジ107によって除去される。
【0010】
ところが、磁気ヘッド102の凹み部103に入り込んだ内層の異物110に対しては、クリーニングパット106のエッジ107が凹み部103に入り込めないため、内層の異物110を完全に除去できず、この内層の異物110が残存することにより磁気ヘッド102の磁気性能を低下させていた。
【0011】
このようなことから凹み部(窪み)をクリーニングする一例として、専用のクリーニングカードを用い、該カードの表面に形成されている「やすり状の溝」や「孔」を、カードを反らせたときに弓なりに突出させ、この突出したエッジ部分で凹み部に堆積した異物を掻き出すようにした乾式磁気ヘッドクリーニングカードが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0012】
しかしながら、前記乾式磁気ヘッドクリーニングカードを用いて、磁気ヘッドの磁気接触面をクリーニングする場合は、磁気ヘッドをクリーニングするメンテナンス作業として、係員や保守員がクリーニングカードを通帳処理機に導入させる必要があった。また、通帳の取引過程で自動的にクリーニングするものではなく、定期的にクリーニングカードを用いるものであり、さらに人為的に行うため手間がかかり、現金自動預払装置等の自動取引機にあっては磁気ヘッドのクリーニングが必要となるごとに稼働を中断しなければならない問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平3−272009号公報
【特許文献2】特開2002−25022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこでこの発明は、磁気ヘッドの磁気接触面が磨耗しても、その磁気接触面を確実にしかも自動的にクリーニングすることができる磁気ヘッド用クリーニングパット及び磁気ストライプ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、走行時に磁気記録媒体の磁気ストライプに接触して該磁気ストライプの磁気データを処理する磁気ヘッドを有する磁気ストライプ処理装置に設けられ、該磁気ヘッドをクリーニングする磁気ヘッド用クリーニングパットであって、前記磁気ヘッドの磁気接触面が前記磁気ストライプとの接触により磨耗して凹溝状に段差形成された磨耗面と非磨耗面に対し、前記磨耗面用のクリーニングエッジと非磨耗面用のクリーニングエッジとを備えて構成され、前記磁気ヘッドの走行上に配置される磁気ヘッド用クリーニングパットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、磁気ヘッドの磁気接触面が磨耗しても、その磨耗した磨耗面の形状に対応したクリーニングパットが接触してクリーニングするため、磁気接触面の凹んだ形状に応じた略完全なクリーニングが可能になる。このため、磁気ヘッドのクリーニングを自動化しても、磁気接触面を確実にクリーニングすることができる。この結果、磁気ヘッドは磁気性能が低下することのない安定した磁気処理性能を維持することができる。
【0017】
さらに、磁気ヘッドが走行されるごとに該磁気ヘッドはクリーニングされるため、常に異物のない磁気接触面となり、安定した磁気性能を確保して磁気ヘッドの寿命延長を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】通帳印字機構の要部概略側面図、
【図2】磁気ストライプに対応した磁気ヘッドの走行方向を示す平面図、
【図3】磁気ストライプ処理装置を示す斜視図、
【図4】磁気ヘッドを示す説明図、
【図5】磁気ヘッドの磨耗状態を示す側面図、
【図6】クリーニングパットの拡大斜視図、
【図7】クリーニングパットによる異物除去状態を示す磁気ヘッドの説明図、
【図8】クリーニングパットの他の例を示す斜視図、
【図9】クリーニングパットの弾性支持機構を示す説明図、
【図10】従来の磁気ストライプと磁気ヘッドとの対応状態を示す説明図、
【図11】従来の磁気ヘッドとクリーニングパットを示す説明図、
【図12】従来の磁気ヘッドの異物クリーニング状態を示す説明図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図面は通帳印字機構の磁気ストライプ処理装置に備えられる磁気ヘッド用クリーニングパットを示し、磁気ヘッドのクリーニング性能を高めた実施形態を示す。
【実施例】
【0020】
図1はこの発明の一実施例を示す磁気ストライプ処理装置11を備えた通帳印字機構12を表わしている。この通帳印字機構12は、印字機構本体13の前面に通帳Pを挿入させる通帳挿入口14を有し、この通帳挿入口14と連通する内方に通帳Pを水平に搬送させる通帳搬送路15が備えられている。この通帳搬送路15に沿って磁気ストライプ処理装置11と、イメージリーダ16と、通帳印字部17と、頁めくり機構部18とがこの順に配設されている。
【0021】
図2は磁気ストライプ処理装置11に導かれた通帳Pの磁気処理状態を示し、通帳搬送路15上における磁気ストライプ処理装置11では、通帳Pの搬送幅を隔てて対向する一方に通帳Pの搬送基準面となる搬送基準板21が対向し、この搬送基準板21と対向する他方に通帳Pを搬送基準板21側に押し当てる幅ガイド板22を対設している。
【0022】
この磁気ストライプ処理装置11の位置には、通帳Pが印字頁を上向きに開いた状態で前記通帳挿入口14に挿入され、挿入された通帳Pは該磁気ストライプ処理装置11の処理位置で搬送停止される。そして、通帳Pは搬送停止状態で磁気ヘッド25により磁気データ処理される。
【0023】
通帳Pには、磁気データが記録される磁気ストライプ23と、通帳Pの頁情報を表わすバーコード24とが備えられている。磁気ストライプ23は通帳Pの下面に備えられ、該磁気ストライプ23と対向する下方の位置には磁気ヘッド25の走行路27が対向し、この走行路27に沿って磁気ヘッド25は、図2に矢印で示すように、磁気ヘッド走行方向26に走行する。このとき、磁気ストライプ23の通帳データを磁気により読み書きする。この通帳Pの磁気ストライプ処理装置11の位置では磁気ストライプ23の長手方向が通帳搬送方向に直交して配置される配置関係にある。この磁気データ処理位置で磁気ヘッド25が磁気ストライプ23に接触しながら走行することにより、磁気ストライプ23の磁気データが処理される。
【0024】
また、開かれた頁の上面に位置するバーコード24がイメージリーダ16により読み取られる。さらに、後段の通帳印字部17で取引情報が通帳Pの印字欄に印字され、頁めくり機構部18で適宜頁めくり動作される。
【0025】
図3は磁気ストライプ処理装置11の磁気ヘッド走行機構31を具体的に示した斜視図である。この磁気ヘッド走行機構31は、磁気ヘッド走行方向26に沿って架設された走行ガイド軸32に摺動自在に支持されるキャリア33と、該キャリア33の摺動方向の一端部に配置されたワイヤ駆動プーリP1と他端部に配置されたワイヤ従動プーリP2間に張設されたキャリア駆動用のワイヤ34とから構成される。
【0026】
前記磁気ヘッド走行機構31は、走行方向に沿って長く設けられたフレーム本体35により各走行構成部材が支持されている。該フレーム本体35の一端部には、磁気ヘッド走行機構31の駆動源となる磁気ヘッド駆動モータ36が配設されている。この磁気ヘッド駆動モータ36を駆動すると、その動力がワイヤ34を介してキャリア33に伝達される。キャリア33は磁気ヘッド25を保持しており、ワイヤ34を介して走行方向の動力を受けたキャリア33は磁気ヘッド25と共に走行ガイド軸32上を走行する。この磁気ヘッド25の走行時に該磁気ヘッド25の上面(磁気接触面25a)は通帳Pの下面(磁気ストライプ23)に接して、該磁気ストライプ23(図2参照)への読み書き処理を実行する。
【0027】
前記磁気ヘッド駆動モータ36は図示しない制御部からの制御によって正逆転駆動される。この正逆転駆動に基づいて磁気ヘッド25は水平方向に一定速度で前進または後退し、磁気ストライプ23の長さ以上の走行長さで一往復する。
【0028】
さらに、磁気ヘッド走行方向26において、磁気ヘッド駆動モータ36とは対極となるフレーム本体35の他端部に、磁気ヘッド25に接触してクリーニングを行う磁気ヘッド用クリーニングパット(以下クリーニングパットと称す)37を配設している。
【0029】
前記クリーニングパット37は、磁気接触面25a(図4参照)を上向きにして配置される磁気ヘッド25に対し、その磁気ヘッド25の上面に接する高さで磁気ヘッド25の走行路27上に取付けられる。具体的には磁気ヘッド25の走行路27上におけるフレーム本体35の他端部に金属板38を水平に固定設置し、この金属板38の下面に、該クリーニングパット37を両面テープやビス等で取り付け、クリーニング面が下向きになるように配置する。
【0030】
前記クリーニングパット37は、磁気ストライプ23を磁気データ処理した磁気ヘッド25の走行端部で該磁気ヘッド25の上面と接触する。この接触時にクリーニングパット37が磁気ヘッド25に付着している汚れを落とすという自動クリーニングを実行する構成を有している。
【0031】
図4はクリーニング対象となる磁気ヘッド25を拡大して示している。図4(A)は磁気ヘッド25の側面図を示し、図4(B)は磁気ヘッド25の正面図を示している。
磁気ヘッド25は前記磁気ヘッド走行方向26(図3参照)に走行し、走行時に安定した接触が得られるように側面視上面を山形状の磁気接触面25aに形成する。さらに、該磁気ヘッド25の側面視両側には揺動支持突起25bを突出させてキャリア33に揺動自在に支持させている。この揺動支持により磁気ヘッド25は搬送幅方向に揺動自由に支持されて、該磁気ヘッド25の磁気接触面25aが通帳Pの磁気ストライプ23の接触面に安定して接触する。
【0032】
図5は磁気ヘッド25が磨耗した状態及び異物が付着した状態を示している。図5(A)は磁気ヘッド25の磁気接触面25aが磨耗した状態を示し、さらに図5(B)は磁気ヘッド25の磁気接触面25aに異物が付着した異物付着状態を示している。磁気接触面25aは前記磁気ストライプ23との接触により次第に磨耗し、長期使用によって磁気ストライプ幅分のみが磨耗して凹溝Uに段差形成される。この凹溝Uは、中央部に凹んで形成される磨耗面m1と、凹溝Uの両側で磁気ストライプ23とは接触しない非磨耗面m2とが形成される。
【0033】
この際、磁気ストライプ幅に対応して凹んだ磨耗面m1には粘着性の高い紙粉、金属粉、塵、埃等の内層異物41が付着される。また、非磨耗面m2には同様に粘着性の高い紙粉、金属粉、塵、埃等の外層異物42が付着される。これらの異物41,42は磁気ヘッド25の性能を低下させ、磁気データ処理不良を発生させる原因となるため速やかに除去する必要がある。
【0034】
よって、これらの異物41,42を除去するためには、図5(C)に示すように、磁気接触面25aが磨耗して凹溝Uとなった部分に応じたクリーニングパット37を接触させると、両異物41,42を一括して効率よく除去することができる。
【0035】
図6はクリーニングパット37を拡大して示し、このクリーニングパット37は小片の磨耗面パット37aとその基盤となる非磨耗面パット37bとから構成される。これらのパット37a,37bは異物の除去に適した材質、例えば樹脂材にて構成することができる。そして、これらのパット37a,37bは一体化して、磁気ヘッド25の搬送方向と直角となる向きに設定して磁気ヘッド25の走行路27上に設置される。
【0036】
前記磨耗面パット37aは、前記磁気ヘッド25の凹溝U内に入り込める磁気ストライプ幅に対応した幅長さL1と、僅かな厚みL2を備えた小さな平板状に設けられている。さらに、磨耗面パット37aは磁気ヘッド25の往動方向で対向する側となる幅長さL1方向の一辺の角部(例えば90度)が磨耗面用のクリーニングエッジ37cとなり、磁気ヘッド25の搬送幅方向と並行し、厚みL2分が垂直に立ち上がって設けられている。そして、磨耗面パット37aが磁気ヘッド25と対応したとき、該磁気ヘッド25の凹溝内に該磨耗面パット37aが入り、凹溝内に付着している内層異物41を該磨耗面用のクリーニングエッジ37cが掻き出してクリーニングする。
【0037】
前記磨耗面用のクリーニングエッジ37cは、少なくとも磁気ストライプ23の幅と同じか、それより短く形成する。これにより、該磨耗面用のクリーニングエッジ37cが磁気ヘッド25の凹溝に確実に入り、内層異物41を確実に除去する凹溝専用のクリーニングパットとして機能する。
【0038】
一方、非磨耗面パット37bは磁気ヘッド25の幅長さよりも長い横長の平板状を有し、その横長方向の一辺(磁気ヘッド25の往動方向で対向する側)の角部(例えば90度)が非磨耗面用のクリーニングエッジ37dとなり、該非磨耗面パット37bが磁気ヘッド25と対応したとき、この非磨耗面用のクリーニングエッジ37dが磁気ヘッド25の磨耗していない凹溝両側の非磨耗面m2に付着している外層異物42を除去する。
【0039】
そして、この非磨耗面パット37bのクリーニング面となる平面的な下面の一部に、前記磨耗面パット37aを小さく突出させて段差を付けた段差構造に形成している。これにより、クリーニングパット37は磁気ヘッド25に対し、同一平面で接触するのではなく、磨耗面パット37aと非磨耗面パット37bとの二段階の接触面構造となり、磁気ヘッド25の凹んだ磨耗部分(凹溝U)と非磨耗部分との両方同時に接触することができる二段階の接触構造となる。なお、この磨耗面パット37aが配置される位置は、磁気ヘッド25の幅方向中心に対応した位置に位置決めして配置される。
【0040】
前記各クリーニングエッジ37c,37dは、磁気ヘッド25に付着した異物を除去するのに適したエッジ形状やエッジ角度に設定して設ける。例えば、前記した各クリーニングエッジ37c,37dの平板状の直角のエッジ部以外に、該エッジ部を所定の傾斜角度を有する傾斜面に設けて異物除去効果を高めるようにしてもよい。
【0041】
次に、磁気ヘッド25に付着した異物を除去する場合のクリーニング処理動作を、図7を参照して説明する。
磁気ヘッド25は長期使用されると、磁気接触面25aが磁気ストライプ23との接触により次第に磨耗し、該磁気接触面25aに磨耗面m1と非磨耗面m2とによる凹溝の段差形状が形成される。
【0042】
図7(A)において、仮に磁気ヘッド25が長期使用されて磁気接触面25aに凹溝が生じ、その凹溝の磨耗面m1に内層異物41が付着し、非磨耗面m2に外層異物42が付着した磁気ヘッド25の場合、該磁気ヘッド25が磁気データ処理する際に走行し、その磁気ヘッド走行方向26の端部に配置されているクリーニングパット37側に搬送される。
【0043】
図7(B)において、磁気ヘッド25が走行されてクリーニングパット37に到達すると、磁気ヘッド25が非磨耗面パット37bの非磨耗面用のクリーニングエッジ37dと接触し、このとき非磨耗面用のクリーニングエッジ37dが磁気ヘッド25の非磨耗面m2上に付着した外層異物42を削り取るようにしてクリーニングを開始する。
【0044】
図7(C)において、さらに磁気ヘッド25が磁気ヘッド走行方向26に走行すると、非磨耗面パット37bとの接触に続いて磨耗面パット37aとも接触する。このとき、磨耗面パット37aが磁気ヘッド25の凹溝に入り、該磨耗面パット37aの磨耗面用のクリーニングエッジ37cが凹溝内の内層異物41を掻き出してクリーニングする。
【0045】
その後、磁気ヘッド25がさらに走行して、図7(C)に想像線で示すように、クリーニングパット37を通過した位置まで走行したとき、該磁気ヘッド25のクリーニングが完了する。
【0046】
このように、磁気ヘッド25が走行して磁気ストライプ23を磁気データ処理するごとに、その走行過程で磁気ヘッド25の磁気接触面25aがクリーニングパット37と接触して自動的にクリーニングされる。その際、磁気ストライプ23に接触する磁気接触面25aが磨耗し、該磁気接触面25aに磨耗面m1と非磨耗面m2とによる凹溝が形成されていても、その凹溝の形状に応じた形状のクリーニングパット37を接触させることができるため、凹溝の発生にかかわらず磁気ヘッド25を確実にクリーニングすることができる。
【0047】
したがって、凹溝に内層異物41が付着していても確実に除去することができる。このため、磁気接触面25aは常に良好な磁気性能が保たれる。この結果、磁気ヘッド25のクリーニング精度を的確に向上することができ、磁気ヘッド25を確実に寿命延長することができる。
【0048】
前記実施例では磁気ヘッド25の往動走行時に接触するクリーニングパット37の一辺の角部をクリーニングエッジ37cとしたが、磁気ヘッド25の復動走行時に接触するクリーニングパット37の他辺の角部をクリーニングエッジとしてクリーニングするように構成してもよい。
【0049】
さらに、クリーニングパット37の一辺のクリーニングエッジ37cを磁気ヘッド25の往動時に接触させ、他辺のクリーニングエッジを磁気ヘッド25の復動時に接触させて、磁気ヘッド25が一往復する間に2回クリーニングさせてクリーニング効率を高めるように構成することもできる。
【0050】
次に、上述したクリーニングパット37の耐久性を考察してみた場合、磨耗面用のクリーニングエッジ37cは非磨耗面用のクリーニングエッジ37dよりも突出している厚みL2(図6参照)だけクリーニング接触圧は高くなり、非磨耗面用のクリーニングエッジ37dよりも早期に磨耗する。このため、早期磨耗回避手段の構成例を、図8を参照して説明する。
【0051】
図8(A)は幅広の磁気ストライプ23に対応させた高耐久性のクリーニングパット37の一例を示している。このクリーニングパット37は早期磨耗回避手段として、細長い2個の幅広磨耗面パット81を磁気ヘッド25の走行方向に並べて配置したものである。
【0052】
これにより、磁気ヘッド25の走行方向に2個の同じ幅広磨耗面パット81が並列配置されるため、一方の幅広磨耗面パット81のエッジが磨耗しても他方の幅広磨耗面パット81のエッジが同様のクリーニング機能の役割を果たすため、幅広磨耗面パット81のクリーニング能力を長期間維持させることができる。
【0053】
図8(B)は幅狭の磁気ストライプ23に対応させた高耐久性のクリーニングパット37の一例を示している。このクリーニングパット37は早期磨耗回避手段として、細く短い2個の幅狭磨耗面パット82を磁気ヘッド25の走行方向に並べて配置したものである。
【0054】
これにより、磁気ヘッド25の走行方向に2個の同じ幅狭磨耗面パット82が並列配置されるため、一方の幅狭磨耗面パット82のエッジが磨耗しても他方の幅狭磨耗面パット82のエッジが同様のクリーニング機能の役割を果たすため、幅狭磨耗面パット82のクリーニング能力を長期間維持させることができる。
【0055】
図8(C)は磁気ストライプ幅の異なる2種類の磁気ストライプに共通してクリーニング可能な高耐久性のクリーニングパット37の一例を示している。このクリーニングパット37は早期磨耗回避手段として、幅広磨耗面パット81と幅狭磨耗面パット82との2個のパット81,82を磁気ヘッド25の走行方向に並べて配置したものである。
【0056】
これにより、磁気ヘッド25の走行方向に幅長さが異なる2個の磨耗面パット81,82が並列配置されるため、磁気ストライプ幅が異なる仕様の複数の通帳に対応させることが可能になる。
【0057】
図8(D)は磁気ストライプ幅の異なる2種類の磁気ストライプに共通してクリーニング可能な高耐久性のクリーニングパット37の一例を示している。このクリーニングパット37は早期磨耗回避手段として、2個の並列する広幅磨耗面パット81と、2個の並列する幅狭磨耗面パット82との合計4個のパット83,84を磁気ヘッド25の走行方向に並べて配置したものである。
【0058】
これにより、4個の並列配置された磨耗面パット81,82のうち、並列する一組パットが1つの磁気ヘッド25の凹溝に接触対応するため、該凹溝はクリーニング処理動作を受けて確実に磨かれる。このため、早期磨耗されるのを確実に回避しながら磁気ストライプ幅が異なる仕様の複数の通帳に対応させることが可能になる。
【0059】
図9は弾性支持機構を備えたクリーニングパット37を示している。
図9(A)はクリーニングパット37自体に弾性を持たせた磨耗面パット構造の一例を示し、水平な平板状のクリーニングパット37の一部を切り下げて下向きに傾斜突出させた傾斜磨耗面パット91を構成する。この傾斜磨耗面パット91は傾斜基端側が弾性支持機構として片持ち支持され、この片持ち支持部を弾性支点に傾斜先端側が上下方向に弾性変位許容し、傾斜先端部を磨耗面用のクリーニングエッジ91aに設けている。
【0060】
そして、傾斜磨耗面パット91が磁気ヘッド25と対応したとき、磨耗面用のクリーニングエッジ91aは磁気ヘッド25の凹溝深さに追従するように上下方向に弾性対応して接触する。よって、凹溝深さにかかわらず、安定した接触を確保することができる。
【0061】
図9(B)はクリーニングパット37自体に弾性を持たせた磨耗面パット構造の一例を示し、水平な平板状のクリーニングパット37の一部を下向きに切り下げて断面台形状に突出させた板状、あるいは環状の弾性磨耗面パット92を構成する。この弾性磨耗面パット92は、薄肉で上下方向に対して弾性変位する弾性支持構造を有し、該弾性磨耗面パット92の下端角部を磨耗面用のクリーニングエッジ92aに設けている。
【0062】
そして、弾性磨耗面パット92が磁気ヘッド25と対応したとき、磨耗面用のクリーニングエッジ92aが磁気ヘッド25の凹溝深さに追従するように上下方向に弾性変位して確実に接触する。よって、凹溝深さにかかわらず、安定した接触を確保することができる。
【0063】
図9(C)はクリーニングパット37の弾性支持機構の一例を示している。この弾性支持機構は上下方向に伸縮するコイルバネ93の付勢力を利用したものである。すなわち、コイルバネ93の上端を固定部材94に取り付け、下端をクリーニングパット37に取り付けて構成する。
【0064】
これにより、クリーニングパット37は、上下方向に伸縮自在に支持され、このクリーニングパット37の位置に磁気ヘッド25が導かれたとき、磁気ヘッド25の上面に接触するクリーニングパット37と弾性対応し、このときクリーニングパット37を磁気ヘッド25の凹溝深さ方向に追従させて確実に接触させることができる。よって、凹溝深さや磁気ヘッド25の傾き等にかかわらず、安定した接触を確保することができる。
【0065】
上述のように、磁気ヘッド25の磁気接触面25aが磨耗しても、その磨耗した磨耗面の凹溝U形状に対応したクリーニングパット37が接触してクリーニングするため、磁気接触面25aの磨耗した凹溝U形状に対応した略完全なクリーニングが可能になる。このため、磁気ヘッド25のクリーニングを自動化しても、磁気接触面25aの凹溝内の磨耗面m1やその両側の非磨耗面m2の全面を確実にクリーニングすることができる。この結果、磁気ヘッド25は磁気性能が低下することのない安定した磁気処理性能を維持することができる。さらに、磁気ヘッド25を走行させるごとに該磁気ヘッド25のクリーニング動作を実行するため、常に異物のない磁気接触面25aとなり、安定した磁気性能を確保して磁気ヘッド25の寿命延長を図ることができる。また、仮に磁気接触面25aに異物が付着していても、磁気ヘッド25の走行動作により付着した異物を直ちに除去することができる。この結果、磁気ヘッド25の磨耗した凹溝Uの清掃も確実に行い、人為的な清掃作業を減らし、メンテナンスフリー化を実現することができる。
【0066】
この発明は上述の実施例に記載された構成に限定されるものではなく、請求項に記載された技術思想に基づいて応用することができる。例えば、上述の実施例では磁気記録媒体の一例として通帳Pを用いたが、磁気ストライプ23を有するカード等の他の媒体であっても応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
現金自動預払装置等の自動取引機に内部構成される通帳印字機構や通帳発行機などに利用できる。
【符号の説明】
【0068】
11…磁気ストライプ処理装置
23…磁気ストライプ
25…磁気ヘッド
25a…磁気接触面
37…クリーニングパット
37c…磨耗面用のクリーニングエッジ
37d…非磨耗面用のクリーニングエッジ
m1…磨耗面
m2…非磨耗面
U…凹溝
P…通帳

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行時に磁気記録媒体の磁気ストライプに接触して該磁気ストライプの磁気データを処理する磁気ヘッドを有する磁気ストライプ処理装置に設けられ、該磁気ヘッドをクリーニングする磁気ヘッド用クリーニングパットであって、
前記磁気ヘッドの磁気接触面が前記磁気ストライプとの接触により磨耗して凹溝状に段差形成された磨耗面と非磨耗面に対し、
前記磨耗面用のクリーニングエッジと非磨耗面用のクリーニングエッジとを備えて構成され、前記磁気ヘッドの走行上に配置される
磁気ヘッド用クリーニングパット。
【請求項2】
少なくとも磨耗面用のクリーニングエッジの幅長さを、前記磁気ストライプの幅と同じかそれより短く構成した
請求項1に記載の磁気ヘッド用クリーニングパット。
【請求項3】
前記磨耗面用のクリーニングエッジを、前記磁気ストライプの幅長さ別に応じて複数種類備えた
請求項1または2に記載の磁気ヘッド用クリーニングパット。
【請求項4】
前記磨耗面用のクリーニングエッジを備えた凸状部を、
前記磁気ストライプとの接触方向に弾性支持する弾性支持機構により支持する構成とした
請求項1、2または3に記載の磁気ヘッド用クリーニングパット。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のクリーニングパットと、
走行時に磁気記録媒体の磁気ストライプに接触して該磁気ストライプの磁気データを処理する磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを駆動する磁気ヘッド駆動モータと、
前記磁気ヘッド駆動モータの駆動に基づいて前記磁気ヘッドを走行させる磁気ヘッド走行機構とを備えた
磁気ストライプ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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