説明

磁気ヘッド

【課題】読み取り面にバイアスマグネットが配置された磁気ヘッドでありながら、磁気印刷が施された紙幣などの紙葉類から磁気情報を読み取る際のスペーシングロスを低減しつつ、印刷幅の狭い磁気印刷も精度良く検出できるようにする。
【解決手段】略U字状をなし、読み取り面側にギャップGが設けられたコア3と、バイアスとなる磁束を発生させるバイアスマグネット4と、コア3に巻回され、コア3を通る磁束の変化を検出する検出コイル5と、を備え、読み取り面1aに接触又は近接する状態でギャップGを横切る被検査物の磁気情報を、検出コイル5の出力変化にもとづいて読み取る磁気ヘッド1であって、バイアスマグネット4は、コア3の外側面3dに沿い、かつ、読み取り面1aにおいてギャップGと所定の間隔を存して並列するように配置されるとともに、ギャップ幅Aよりも幅広に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッドに関し、特に、磁気印刷が施された紙幣などの紙葉類から磁気情報を読み取る際のスペーシングロスを低減しつつ、印刷幅の狭い磁気印刷も精度良く検出することができる磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気情報の読み取りには、磁気ヘッドが広く使用されている。図5に例示した磁気ヘッド100Aは、紙幣の真偽識別に用いられるものであって、先端部にギャップGが形成されたコア101と、コア101の後端部に配されたバイアスマグネット102と、コア101に巻回された検出コイル103とをケース104内に収容してなり、ケース104内にはモールド樹脂が充填されている。
【0003】
紙幣10が磁気ヘッド100Aの読み取り面100a上で矢印方向に搬送され、紙幣10に磁気情報として設けられた磁気印刷がギャップGを横切るとき、ギャップGの漏洩磁束に変化が生じ、それに伴ってコア101を通る磁束が変化する。この磁束変化を検出コイル103で検出することにより、紙幣10の真偽識別が可能となる。
【0004】
このような磁気ヘッド100Aにおいて、磁気印刷がギャップG近傍を通過するときの漏洩磁束の変化(検出感度)は、ギャップGの幅が狭くなるほど大きくなるが、ギャップGの幅が狭いほど読み取り面100aからの漏洩磁束の到達距離は小さくなるので、スペーシングロスが大きくなる。そこで、紙幣識別装置では、ローラなどで紙幣10を読み取り面100aに押し付けることにより、読み取り面100aと紙幣10の距離を小さくし、スペーシングロスの影響を低減するようにしているが、読み取り面100aが摩耗し易くなるなどの問題が生じる。
【0005】
そこで、図6に示すように、ギャップGにバイアスマグネット102を配置した磁気ヘッド100Bが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。このような磁気ヘッド100Bによれば、ギャップGに配置したバイアスマグネット102によって磁束の到達距離を増大させることができるので、スペーシングロスを低減させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2002−312909号公報
【特許文献2】 特開2005−322358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、磁気印刷の微細化などに伴い、微細な磁気情報を読み取り可能な磁気ヘッドが求められている。例えば、紙幣などの紙葉類に施された幅狭な磁気印刷を読み取り可能な磁気ヘッドが求められている。このような磁気ヘッドは、前述したスペーシングロス性能を無視すれば、比較的容易に実現可能であるが、スペーシングロス性能を維持しつつ、幅狭な磁気印刷を高精度に読み取ることができる磁気ヘッドは実現が困難であった。
【0008】
例えば、0.5mm幅の磁気印刷を読み取るためには、コアのギャップを0.2mm以下にすることが必要とされる。その理由は、図7及び図8に示すように、幅広なギャップ(例えば、0.5mm)を有する磁気ヘッドで0.5mm幅の磁気印刷を読み取ると、磁気ヘッドの出力電圧が大幅に減衰し、読み取り不良が発生するからである。
【0009】
しかしながら、特許文献1、2に示されるように、スペーシングロス性能を向上させるために、ギャップにバイアスマグネットを配置した磁気ヘッドでは、バイアスマグネットの加工限界があるため、0.5mm程度が最小幅とされており、また、バイアスマグネットを0.2mm幅に加工することが可能になっても、バイアスマグネットの磁束到達距離が短くなるので、スペーシングロス性能の低下は免れないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、略U字状をなし、読み取り面側にギャップが設けられたコアと、バイアスとなる磁束を発生させるバイアスマグネットと、前記コアに巻回され、前記コアを通る磁束の変化を検出する検出コイルと、前記コア、バイアスマグネット及び検出コイルを収容するケースと、を備え、読み取り面に接触又は近接する状態で前記ギャップを横切る被検査物の磁気情報を、前記検出コイルの出力変化にもとづいて読み取る磁気ヘッドであって、前記バイアスマグネットは、前記コアの外側面に沿い、かつ、前記読み取り面において前記ギャップと所定の間隔を存して並列するように配置されるとともに、前記ギャップ幅よりも幅広に形成されることを特徴とする。
また、前記バイアスマグネットは、前記コアが備える二つの外側面のうち、いずれか一方の外側面に沿って配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、バイアスマグネットは、コアの外側面に沿い、かつ、読み取り面においてギャップと所定の間隔を存して並列するように配置されるとともに、ギャップ幅よりも幅広に形成されるので、読み取り面にバイアスマグネットが配置された磁気ヘッドでありながら、バイアスマグネット幅と無関係にギャップ幅を狭くすることが可能となり、その結果、磁気印刷が施された紙幣などの紙葉類から磁気情報を読み取る際のスペーシングロスを低減しつつ、印刷幅の狭い磁気印刷も精度良く検出することができる。
また、請求項2の発明によれば、バイアスマグネットは、コアが備える二つの外側面のうち、いずれか一方の外側面に沿って配置されるので、コアの両側にそれぞれバイアスマグネットを配置する場合に比べ、部品点数を削減できるだけでなく、磁束到達範囲を制限してS/Nの低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 本発明の実施形態に係る磁気ヘッドの断面図である。
【図2】 本発明の実施形態に係る磁気ヘッドの平面図である。
【図3】 本発明の実施形態に係る磁気ヘッドで図7に示す磁気印刷を読み取った場合の出力波形を示す説明図である。
【図4】 ギャップ及び磁気印刷幅と出力電圧の関係を示す説明図である。
【図5】 従来例1に係る磁気ヘッドの断面図である。
【図6】 従来例2に係る磁気ヘッドの断面図である。
【図7】 磁気印刷パターンの例を示す説明図である。
【図8】 従来例2に係る磁気ヘッドで図7に示す磁気印刷を読み取った場合の出力波形を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る磁気ヘッドの断面図、図2は、本発明の実施形態に係る磁気ヘッドの平面図である。
これらの図に示すように、本発明の実施形態に係る磁気ヘッド1は、ケース2に、コア3、バイアスマグネット4、検出コイル5、支持台6、接続端子7などを収容するとともに、樹脂部材8でモールドして構成されている。磁気ヘッド1の先端面は、磁気情報を読み取る読み取り面1aとなっており、この読み取り面1aは、平坦面、或いは、中央が膨出する湾曲面とされている。
【0014】
コア3は、略U字形状をなし、先端面3aの中央部にはギャップGが設けられている。先端面3a及びギャップGは、読み取り面1aに位置しており、読み取り面1aに接触又は近接する状態でギャップGを横切るように紙幣10を搬送することにより、紙幣10に施された磁気印刷の読み取りが行われる。
【0015】
バイアスマグネット4は、読み取り面1aにおいて紙幣10の紙面と対向するように配置され、バイアスとなる磁束を発生させる。バイアスとなる磁束を発生可能であれば、バイアスマグネット4の磁極の向きは任意に設定することができる。例えば、前述した特許文献1のように、N極が紙幣10と対向し、S極が磁気ヘッド1の内部に位置するように縦置き状に配置してもよいし、特許文献2に示すように、N極とS極が読み取り面1a上に並ぶように横置き状に配置してもよい。
【0016】
検出コイル5は、コア3に巻回され、コア3を通る磁束の変化を検出する。本実施形態の磁気ヘッド1は、コア3の両脚部3bにそれぞれ巻回される二つの検出コイル5を備えており、これらの検出コイル5は直列に接続されている。コア3は、基端部3cが支持台6に固定されており、検出コイル5の始端及び終端が支持台6から延出する接続端子7に接続されている。
【0017】
このように構成される磁気ヘッド1では、読み取り面1aにおいて紙幣10と対向するようにバイアスマグネット4が配置され、該バイアスマグネット4が紙幣10に向けてバイアスとなる磁束を発生させるので、読み取り面1aからの磁束到達距離が長くなり、紙幣10と読み取り面1aとの距離を長くとることが可能となる。そして、図1に示すように、読み取り面1aに接触又は近接する状態でギャップGを横切るように紙幣10を搬送すると、紙幣10に施された磁気印刷によって磁束に変化が生じる。この磁束の変化を検出コイル5で検出することにより、紙幣10に施された磁気印刷を読み取ることが可能になる。
【0018】
次に、本発明の実施形態に係る磁気ヘッド1の特徴的な構成について、図1〜図4を参照して説明する。図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る磁気ヘッド1では、前述した特許文献1、2と同様に、読み取り面1aにバイアスマグネット4が配置されるが、本発明の実施形態に係るバイアスマグネット4は、コア3の外側面3dに沿い、かつ、読み取り面1aにおいてギャップGと所定の間隔を存して並列するように配置されるとともに、ギャップ幅Aよりも幅広(B>A)に形成されている点が特許文献1、2と相違している。尚、ギャップGには、バイアスマグネットに代えて非磁性金属板8を配置しており、非磁性金属板9の厚さに応じてギャップ幅Aを任意に設定することができる。
【0019】
このようにすると、読み取り面1aにバイアスマグネット4が配置された磁気ヘッド1でありながら、バイアスマグネット幅Bと無関係にギャップ幅Aを狭くすることが可能となり、その結果、磁気印刷が施された紙幣10などの紙葉類から磁気情報を読み取る際のスペーシングロスを低減しつつ、印刷幅の狭い磁気印刷も精度良く検出することができる。
【0020】
例えば、ギャップ幅Aを0.2mmとして、0.5mm幅の磁気印刷を読み取った場合の出力波形を図3に示すとともに、ギャップ幅Aを段階的に変えた場合の減衰率を図4に示す。これらの図に示すように、ギャップ幅Aを0.2mmとした場合、ギャップ幅0.5mmで読み取った図8に比べ、出力電圧の減衰が大幅に抑えられるので、印刷幅の狭い磁気印刷も精度良く検出できることが分る。また、バイアスマグネット4は、ギャップ幅Aとは無関係に幅広にすることができるので、バイアスマグネット4の適切な寸法設定及び配置にもとづいて、スペーシングロス性能も向上させることが可能になる。
【0021】
また、本実施形態のバイアスマグネット4は、コア3が備える二つの外側面3dのうち、いずれか一方の外側面3dに沿って配置される。このようにすると、コア3の両側にそれぞれバイアスマグネット4を配置する場合に比べ、部品点数を削減できるだけでなく、磁束到達範囲を制限してS/Nの低下を防止できるという利点がある。
【0022】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、略U字状をなし、読み取り面側にギャップGが設けられたコア3と、バイアスとなる磁束を発生させるバイアスマグネット4と、コア3に巻回され、コア3を通る磁束の変化を検出する検出コイル5と、コア3、バイアスマグネット4及び検出コイル5を収容するケース2と、を備え、読み取り面1aに接触又は近接する状態でギャップGを横切る被検査物の磁気情報を、検出コイル5の出力変化にもとづいて読み取る磁気ヘッド1であって、バイアスマグネット4は、コア3の外側面3dに沿い、かつ、読み取り面1aにおいてギャップGと所定の間隔を存して並列するように配置されるとともに、ギャップ幅Aよりも幅広に形成されるので、読み取り面1aにバイアスマグネット4が配置された磁気ヘッド1でありながら、バイアスマグネット幅Bと無関係にギャップ幅Aを狭くすることが可能となり、その結果、磁気印刷が施された紙幣10などの紙葉類から磁気情報を読み取る際のスペーシングロスを低減しつつ、印刷幅の狭い磁気印刷も精度良く検出することができる。
【0023】
また、バイアスマグネット4は、コア3が備える二つの外側面3dのうち、いずれか一方の外側面3dに沿って配置されるので、コア3の両側にそれぞれバイアスマグネット4を配置する場合に比べ、部品点数を削減できるだけでなく、磁束到達範囲を制限してS/Nの低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 磁気ヘッド
1a 読み取り面
2 ケース
3 コア
3d 外側面
4 バイアスマグネット
5 検出コイル
6 支持台
7 接続端子
8 樹脂部材
9 被磁性金属板
10 紙幣
A ギャップ幅
B バイアスマグネット幅
G ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略U字状をなし、読み取り面側にギャップが設けられたコアと、
バイアスとなる磁束を発生させるバイアスマグネットと、
前記コアに巻回され、前記コアを通る磁束の変化を検出する検出コイルと、
前記コア、バイアスマグネット及び検出コイルを収容するケースと、を備え、
読み取り面に接触又は近接する状態で前記ギャップを横切る被検査物の磁気情報を、前記検出コイルの出力変化にもとづいて読み取る磁気ヘッドであって、
前記バイアスマグネットは、前記コアの外側面に沿い、かつ、前記読み取り面において前記ギャップと所定の間隔を存して並列するように配置されるとともに、前記ギャップ幅よりも幅広に形成されることを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項2】
前記バイアスマグネットは、前記コアが備える二つの外側面のうち、いずれか一方の外側面に沿って配置されることを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−79392(P2012−79392A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239034(P2010−239034)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(507172130)株式会社マグネブレイン (3)
【出願人】(500267170)ローレル機械株式会社 (86)
【Fターム(参考)】