説明

磁気ヘッド

【目的】 本発明はコイルが巻回されるコアとスライダとを備える磁気ヘッドに関し、電磁交換特性の向上、低コスト化を図ることを目的とする。
【構成】 スライダ25の枠体41に、コイル23a,23bが巻回され、最終寸法精度で形成されたコア組立体22を接続部で接合して内包させる。そして、コア組立体22のギャップ34を有するヘッド面33の長手方向の長さより、枠体から延出する延出部42のヘッド面42aの長さを短かく形成する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コイルが巻回されるコアとスライダとを備える磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、磁気ヘッドにはコアとスライダとを備えたものがある。コアには磁気ギャップが形成されると共に、コイルが巻回される。例えば、可撓性の磁気ディスクを記録再生する磁気ディスク装置においては、この磁気ヘッドがキャリッジの上側ヘッドアーム及び下側ヘッドアームのジンバルプレート上に取り付けられている。この場合、磁気ヘッドは、スライダに溝を有するもの、溝を有しないもの、及びコアの側面にもスライダチップが位置されているもの等がある。
【0003】ここで、図6に従来の磁気ヘッドの使用状態の説明図を示す。
【0004】図6(A)は、スライダに溝を有する磁気ヘッド11を示したもので、スライダ11aにコイル(図7において説明する)が巻回されたコア組立体11bが取り付けられると共に、溝11cが形成されたものである。この磁気ヘッド11がジンバルプレート12a,12bにそれぞれ取り付けられ、磁気ディスク13の両側(S1,S0)から接触される。この場合、互いのスライダ11aとコア組立体11bとが対向するように接触するもので、磁気ディスク13には両方の磁気ヘッド11から圧力Pが加わる。
【0005】また、図6(B)は、磁気ディスク13のサイドS1に溝11cが形成された磁気ヘッド11が位置され、サイドS0に溝を有しない磁気ヘッド11が位置された場合を示している。さらに、図6(C)は、図6R>6(A)に示すコア組立体11bの外側にスライダチップ11aを設けた磁気ヘッド11を、磁気ディスク13の両側から接触させた場合を示したものである。
【0006】ここで、図7に、図6(A)に示す従来の磁気ヘッドの説明図を示す。図7(A),(B)に示すように、磁気ヘッド11は、セラミックよりなるスライダ11aと、フェライト等の磁性材により形成されたコア組立体11bと、磁気ギャップ11b1 を有するコア組立体11bに組付けられたコイル11b2 とよりなる。
【0007】スライダ11aにはコア組立体11bの下端側面に接着されたバックコア11eが予め一体的に固着されている。又、スライダ11aはディスク摺接面11a1 にヘッド面と平行な溝11cが設けられ、コア組立体11bの側面に対向する溝11a2 が設けられる。
【0008】スライダ11aの製造工程は、■まずセラミック素材より平板状のセラミック板を切り出し、■セラミック板の上面にバックコア用の溝加工を行い、■バックコア用のフェライトバーコードをフェライト素材から切り出す。そして、■フェライトバーを■で加工された溝に接着した後、■コア組立体11bに接着されるセラミック板の上面を鏡面加工する。続いて、■セラミック板の上面に上記溝11eの溝加工を行い、■セラミック板をこの溝11eに沿って棒状に切断し、■さらに切断されたセラミック棒のヘッド面側に上記溝11cの溝加工を行う。次に、バックコア11e及び溝11c,11a2 を有するセラミック溝を長手方向と直交する方向に切断して図7(A)に示すスライダ11aが得られる。そして、このスライダ11aは図7(B)に示すようにコア組立体11bに接着される。
【0009】また、図8に、図7の組立後の加工の説明図を示す。図8(A)において、一般に磁気ヘッドの電磁変換特性はC点のエイペックス(APEX)と呼ばれる点から接触面までの距離ギャップデプスGdによって決定される。この場合、A点を基準にするとA−C間がGd精度となり、B点を基準にするとB−C間がGd精度となる。
【0010】そこで、図7(B)のように組み立てられた磁気ヘッド11は、図8(B)に示すように、B点を基準に接触面をA点(B−A間のH)まで研磨により加工を施すものである。
【0011】また、図7(A)に戻り、図8(B)のように加工された磁気ヘッド11は、磁気ディスク13とのタッチ(ヘッドタッチ)を良好とするために、また磁気ディスク13へのダメージを防ぐために、外周部をなだらかにする面取加工が施されるものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述のように、磁気ヘッド11電磁変換特性はGd精度で決定されることから、精度確保に限界があるという問題がある。すなわち、Gd精度を出すためには、コア組立体11bの段階でエイペックス(C点)の寸法精度を得、さらにスライダ11aに接着した後、スライダ面からの異なる基準面からGd精度を得なければならず、またスライダ11aの寸法精度においても一義的に決定されることになる。
【0013】また、スライダ11aにコア組立体11bを接着した後に研磨加工しており、スライダ11aの表面積が広いと全面に高い平面度を得ることが困難でなり、そのため強い加圧力(ヘッドロードフォース)を加えないとヘッドタッチが劣化するという問題がある。このスライダ11aの表面積が広いことは、磁気ディスク13に対して、単位面積当りの加圧力(接触圧)の低下を招くと共に、仮りに高い平面度を得た場合に、磁気ディスク13の有無に拘らず、磁気ヘッド11同士が吸着する状態が生じるという問題がある。
【0014】さらに、スライダ11aとコア組立体11bとは異種材であり、これを磁気ギャップ11b1 部分で接着した場合、熱膨張率の差によって歪が内在して特性劣化を招くという問題があると共に、温湿度等の環境の変化によって接合面間で段差が生じ、スペースロス(磁気ディスク面と磁気ヘッド面との距離)が増大して出力低下等の特性劣化を生じるという問題がある。
【0015】また、コスト低減を図るために、スライダ11aを、金属、プラスチック等で形成した場合、加工性、接着性、接合面段差等の該問題を生じることから、結局コスト低減を図ることが困難であるという問題がある。
【0016】そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、電磁変換特性の向上、低コスト化を図る磁気ヘッドを提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記課題は、磁性材により板状に形成された複数のコアを接着し、該コアの一端の接着部分にギャップを形成し、最終寸法精度で形成してなるコア組立体と、該コアの他端よりコア組立体に取付けられるコイルと、磁性材により形成されバックコアとして該コア組立体の他端側面に接着される接続部と、該コア組立体の他端部分及び該接続部を内包する枠体が形成され、該枠体より延出し、該ギャップを有する端面と略同一高さの端面であって該コア組立体より長手方向に長さの異なる延出部が形成されるスライダと、を有する構成とすることにより解決される。
【0018】
【作用】上述のように、複数のコアがギャップを形成されたコア組立体にコイル巻回され、これを接続部で接合してスライダの枠体に内包させる。このコア組立体は成形段階で最終寸法精度で形成される。このとき、コア組立体のギャップを有する端面と、該コア組立体の長手方向で長さの異なる該スライダより延出する延出部の端面が略同一高さとなる。
【0019】この磁気ヘッドを記録媒体に両面から、ギャップの端面と延出部の端面とを対向させて接触させると、該記録媒体面での接触面積が縮小されて単位面積当りの加圧力が増大する。
【0020】これにより、ヘッドタッチ、スペースロスの低減が図られ、コア組立体とスライダを別個に高精度に組立てられることから電磁変換特性の向上、低コスト化を図ることが可能となる。
【0021】
【実施例】図1に、本発明の一実施例の構成図を示す。図1(A)は斜視図、図1(B)は断面図を示したものである。図1(A),(B)において、磁気ヘッド21は、コア組立体22、コイル23a,23b、接続部としてバックコアの役割をなすバックバー24、及びスライダ25により構成される。
【0022】コア組立体22はバルクタイプのヘッドで、フェライト等の磁性材よりなるコア31a,31bが夫々ガラス材等の絶縁材32を介在させて融着されている。端面であるヘッド面33にはリード,ライト,イレーズ用のギャップ34が設けられ、コア31a,31bの下方に延在する延在部31a1 ,31b1 にはコイル23a,23bが夫々巻装される。そして、磁性材よりなるバックバー24が延在部31a1 ,31b1 に接合されて架設される。
【0023】スライダ25は、枠体41と該枠体41より延出する延出部42とが一体的に形成されたもので、その材質は磁性材、非磁性材を問わず、フェライト等の金属、プラスチック、セラミックス等が使用される。この場合、低コスト化の観点からはプラスチックが望ましい。
【0024】このスライダ25は、枠体41にコア組立体22の延在部31a1 ,31b1、及びバックバー24を内包するもので、これらを押圧するパッド43が該枠体41に一体に形成される。また、スライダ25の延出部42の端面(ヘッド面という)42aは、コア組立体22が取り付けられたときに、該コア組立体22のヘッド面33と略同一高さであり、かつ延在部42の長手方向の長さがヘッド面33の長さより短かく(同一長さでもよい)形成される。
【0025】そして、コア組立体22のヘッド面33と、スライダ25の端面42aとの縁部(主に角部)に、記録媒体としての磁気ディスクへのヘッドタッチを良好とし、ダメージを与えるのを防止するために、面取りが施される。
【0026】ここで、図2に、図1のコア組立体の製造説明図を示す。図2において、まず、前工程において、端面がコアの形状に形成された2つのコアブロック51a,51bをギャップ34となる絶縁材であるガラスカバー52を介在させてガラスボンドされ、ガラスボンドバー(GBB)53が用意される(図2(A))。このGBB53は、端面において、コア組立体となるときのギャップデプス(Gd)が最終完成寸法(例えば30μm±5μm)で形成され、通常のGBB加工工程で容易に形成される。
【0027】続いて、図2(B)に示すように、所定の厚さをコア組立体22としてスライス加工される。そして、コア組立体22の延在部31a1 ,31b1 のバックバー24が接合させる部分を研磨等により鏡面加工する。
【0028】そして、図2(C)に示すように、治具54に固定して、ヘッド面33の角部分を、面取り加工を行うことにより、図2(D)に示すコア組立体20が形成される。
【0029】このように、コア組立体22が形成された時点で、既に、最終的なGd精度が得られると共に、バックバー24の接合部分の鏡面加工が施され、さらには面取りを施すことができるものである。
【0030】一方スライダ25は、特に図示しないが、例えば材料にプラスチックを使用する場合、射出成形により、枠体41、延出部42及びパッド43が形成されると共に、ヘッド面42aの面取りが施される。この場合、枠体41の底面から延出部42のヘッド面42aまでの所望の高さが精度よく形成される。
【0031】そこで、図3に、本発明の磁気ヘッドの製造説明図を示す。図3において、上述のように形成されたコア組立体22の延在部31a1 ,31b1 に、鏡面加工された先端部分を表出させてコイル23a,23bがそれぞれ巻回される。なお、この延出部31a1 ,31b1 を、コイル23a,23bを巻回したボビンに貫通させて取り付けてもよい。そして、スライダ25の枠体41内にコイル組立体22と、延在部31a1 ,31b1 に接合させたバックバー24を配置させることにより、図1(A)に示す磁気ヘッド21が組立てられる。このとき、コア組立体22のヘッド面33と延在部42のヘッド面42a高さを同一にするところで、パッド43によりバックバー24を押圧して固定されるものである。
【0032】すなわち、組立以前に既に面取り加工が施され、Gd等の寸法精度が得られており、組立後にこれらの加工を行わずに済み、高いGd精度を確保することができる。また、コア組立体22がバックバー24のみで組立接合されることから、接着等による特性劣化を防止することができる。さらに、上述のように組立てが行われることから、スライダ25は、プラスチック、金属、セラミック等を問わずに使用することができ、低コスト化を図ることができるものである。
【0033】なお、このような磁気ヘッド21は、特に図示しないが、フレクシャージンバルの先端に取り付けられると共に、シールドリングによりシールドされる。フレクシャージンバルの後端はプリント基板(例えばフレキシブルプリント配線板)に接続されるものである。
【0034】次に、図4に、本発明の使用状態の説明図を示す。図4(A)〜(C)に示すように、上述の磁気ヘッド21は、記録媒体である磁気ディスク55の両面から、互いにコア組立体22のヘッド面33とスライダ25のヘッド面42aを対向させて接触され、該磁気ディスク55を加圧する。
【0035】この場合、コア組立体22のヘッド面33(ギャップ34)とスライダ25のヘッド面25とは、磁気ディスク55に対して各独立した状態であり、かつスライダ25のヘッド面25の長手方向の長さが短いことから、良好なヘッドタッチを得ることができると共に、接触する単位面積当りの加圧力が高くなりヘッドロードフォースを低減させることができる。このことは、磁気ディスク55への密着性が良好になると共に、図面におけるスライダ25のヘッド面42aに対するコア組立体22のヘッド面33の影響が小さく段差で生じるスペースロスによる出力低下を防止することができる。
【0036】このことは、コア組立体22のヘッド面33とスライダ25のヘッド面42a平面度の精度、及び組立て時の段差精度を緩和することができることを意味する。例えば段差が10μm〜20μm有していても、良好なヘッドタッチが得られ、スペースロスによる出力低下を防止することができるものである。
【0037】さらに、説明すると、スペースロスは分離損失として一般に54.6d/λで表わされる。λ(μm)は記録波長であり、d(μm)は磁気ディスク面と磁気ヘッド面との距離である。従って、内周部分が外周部分に比べて高密度記録となり、又は全体的高密度記録を行うために記録波長λが高くなると、スペースロスはdの影響を受け易くなる。よって、本発明のように、スライダ25の延出部42(ヘッド面42a)の長さを短くすることで単位面積当りの加圧力が増大して、上述のdを小さくすることができるもので、スペースロスによる出力低下を防止することができるものである。
【0038】なお、延出部42(ヘッド面42a)の長さは、コア組立体22のヘッド面33の長さ以下から上述の効果を有するものであるが、余りに短かくしすぎると、磁気ディスク55の回転方向に対するコア組立体22が振れ等により不安定となることから、適宜設定されるべきものである。例えば、ヘッド面42aの長さを、ヘッド面33の長さの2/3程度とすることが望ましいものであるが、振れによる特性悪化の許す範囲で長さが設定される。
【0039】次に、図5に、本発明の他の実施例の構成図を示す。図5に示す磁気ヘッド21は、図1に示すコア組立体22のヘッド面33aの長さを、スライダ25における延出部42のヘッド面42aの長さより短かく形成した場合を示したもので、他の構成、作用効果は同様である。
【0040】この場合、磁気ディスク55に対して、図5R>5の磁気ヘッド21同士を両面で対向させてもよく、また、図1の磁気ヘッド21を図5の磁気ヘッド21を互いに磁気ディスク55に対して両面から対向させてもよい。
【0041】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、スライダの枠体に、コイルが巻回され、最終寸法精度で形成されたコア組立体を接続部で接合して内包させ、コア組立体のギャップを有する端面と枠体から延出する延出部の端面との長手方向の長さを異ならせることにより、当該磁気ヘッドの電磁変換特性の向上を図ることができると共に、低コスト化を図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の構成図である。
【図2】図1のコア組立体の製造工程図である。
【図3】本発明の磁気ヘッドの製造説明図である。
【図4】本発明の使用状態の説明図である。
【図5】本発明の他の実施例の構成図である。
【図6】従来の磁気ヘッドの使用状態の説明図である。
【図7】図6(A)に示す従来の磁気ヘッドの説明図である。
【図8】図7の組立後の加工の説明図である。
【符号の説明】
21 磁気ヘッド
22 コア組立体
23a,23b コイル
24 バックバー
25 スライダ
31a,31b コア
32 絶縁材
33 ギャップ
34 ギャップ
41 枠体
42 延出部
42a ヘッド面
43 パッド
55 磁気ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁性材により板状に形成された複数のコアを接着し、該コアの一端の接着部分にギャップを形成し、最終寸法精度で形成してなるコア組立体と、該コアの他端よりコア組立体に取付けられるコイルと、磁性材により形成されバックコアとして該コア組立体の他端側面に接着される接続部と、該コア組立体の他端部分及び該接続部を内包する枠体が形成され、該枠体より延出し、該ギャップを有する端面と略同一高さの端面であって該コア組立体より長手方向に長さの異なる延出部が形成されるスライダと、を有することを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項2】 前記スライダの延出部を、長手方向で前記コア組立体と同等若しくは短かく形成することを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項3】 前記スライダの延出部を前記枠体の長手方向より短かく形成すると共に、前記コア組立体を該延出部と同等若しくは短かく形成することを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項4】 前記コア組立体の端面及び前記スライダの延出部の端面の縁部に、面取りを施すことを特徴とする請求項1乃至3記載の磁気ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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