説明

磁気保持装置のための一体型多極プレート、該プレートの製造方法、および該プレートを使用した磁気装置

本発明は、磁気クランプ装置のための一体型多極プレート、該プレートの製造方法、および該プレート(11)を有する磁気装置に関し、ここでは前記磁気装置は、複数の磁極片(13)を有し、該複数の磁極片(13)は前記プレート(11)から延長しており、前記プレート(13)とともに1つの部材から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有利には制限のない、請求項1および12の上位概念にそれぞれ記載の磁気クランプ装置のための一体型(one-piece)多極プレート、および該プレートの製造方法に関する。本明細書で使用される磁気クランプ装置という用語は、以下のものを指すことを意図している:
・永久磁石式装置、すなわち、クランプするため、または、装置の状態を活性状態から非活性状態およびその逆に変更するために使用される際にいかなる電力供給も必要としない装置であって、該装置の中に永久磁石が適切な配置で装置の中に設けられている装置。
・永電磁式装置、すなわち、クランプするために使用される際にはいかなる電力供給も要求せず、活性化および非活性化される際に電力供給を要求する装置であって、該装置の中に可逆性永久磁石(reversible permanent magnet)、および必要に応じて静的永久磁石(static permanent magnet)が、適切な配置で装置の中に設けられている装置。
・電磁式装置、すなわちクランプするために使用される際に電力供給を要求する装置であって、該装置の磁気コアが強磁性材料から形成されている装置。
【0002】
図1Aならびに図1Bに関する従来技術において、例えばデュアルマグネット型永電磁式の磁気クランプ装置1の製造方法は、第1ステップを含み、該第1ステップにおいて固体の強磁性材料からフレームが形成され、このフレームの中にソレノイドとしても知られている"N"個のコイル3が配置される。
【0003】
他方でフレーム2は、当業者にはよく知られた方法を用いて種々異なる構成要素を組み立てることによって形成することができる。ソレノイド3は、北/南の極性を得るように適切に配置され、フレーム2の外側に配置された電源(図示しない)と電気的に接続されている。
【0004】
ソレノイド3は、例えばAlNiCo磁石のような可逆性磁石4を収容するための空間を画定するように構成されており、該可逆性磁石4の上には磁極片5が載置されている。
【0005】
磁極片5は、固形の強磁性材料を機械的に機械加工することによって得られる。
【0006】
本明細書で使用される磁極片という用語は、磁気装置が活性化されていない時には通常磁気的に中性であり、かつ磁気装置が活性化されている時には磁気的に活性状態である表面を有する強磁性材料から形成される構成要素を表すよう意図されていることに注意されたい。
【0007】
図1Bの詳細な図面においては、磁極片5は、所定の幅、長さ、厚さの6つの面を備えた正方形平断面を有する強磁性構成要素として示されている。詳細には、この磁極片5は、これら6つの面のうち磁界が1つの方向に配向されている4つの面と、磁界方向、ひいては北/南の極性が可変である第5の面と、第6の面5Aとを有し、この第6の面5Aは、磁気装置が活性化されていない場合には中性とすることができるか、または、磁気装置が活性化されている場合には、残りの5つの面と同じ極性を有することができる。
【0008】
磁気装置1が複数の磁極片5を有していることに注意されたい。これらの磁極片は互いに物理的に分離されており、ワークピースを保持する表面2Aを形成するためにフレーム2と結合されている。表面2Aの上には、機械的に加工されるべきワークピースが配置される。
【0009】
換言すると、複数の磁極片5の全ての面5Aが磁気装置の磁気プレートの保持表面2Aを形成しており、該保持表面の上に、機械的に加工されることとなるワークピースが配置され、磁気装置が活性化されると堅固にクランプされる。
【0010】
その後製造方法は、磁極片5を例えばねじ6によってフレーム2に結合させるステップを含み、このようにしてソレノイド3−可逆性磁石4アセンブリを容器にクランプすることができる。各磁極片5をフレーム2に結合できるようにするために、フレーム2と磁極片5の両方に孔部7が形成されており、該孔部は、各磁極片5をフレーム2にクランプするためのねじ6と噛み合うように構成されている。さらに、ワークピースを加工するために特別に必要とされる場合には、磁極延長部分(図示しない)を、それぞれ1つまたは複数の磁極片5と結合することができる。
【0011】
この磁極延長部分は、例えば磁極片5に形成された付加的な孔部8に前記磁極延長部分をねじ結合することによって、磁気装置1の磁極片5と結合することができる。この付加的な孔部8は、前記孔部7と同一の縦軸に沿って延在している。
【0012】
製造方法は、同様に適切に配向されたフェライトまたはNdFeBのような静的磁石9を磁極片5間の間隙に嵌め込むステップも含む。
【0013】
最後に製造方法は、可逆性磁石4の磁束が静的磁石9の磁束と平衡化される"キャリブレーション"ステップと、樹脂注型ステップ10とを含み、該樹脂注型ステップにおいては、磁気装置1を、不純物および/または液体浸透に対して実質的に耐性にすることができ、全ての間隙を充填することができる。
【0014】
それでもなお、装置1を製造するためのこの製造方法は若干の問題を抱えており、その問題の1つはキャリブレーションステップに関連している。時間がかかることに加えて、キャリブレーションステップは、特別に技術を有する技術者が実行しなければならない。
【0015】
キャリブレーションステップは、磁気装置1に特別に関連した以下のような問題のために必要とされることに注意されたい:
a)各磁極片の複数の静的磁石から得られ得る全磁束値は、前もって統計的に計算されている場合でさえ、使用されている可逆性磁石の値と、質、量等に関して相違し得る。
b)磁気プレートの保持表面を形成する磁極片5の各ペアの間の中心間距離、ならびに、磁極片5の各ペアの表面間の距離は、種々異なる物質(静的磁石、磁極片)の寸法公差によって変化し得る。
c)あいだに静的磁石9が嵌め込まれた磁極片5の各ペアの表面は、磁極片とフレームとのねじ結合のせいで非平行である。
【0016】
上に述べたことに加え、磁気装置の製造に関連して、該装置がデュアルマグネット型永電磁式であろうとなかろうとさらに以下のような課題がある:
・磁極片5の頭部に形成される孔部8の、精確なアラインメントおよび均等なスペーシングを達成することは不可能である。
・磁極片5は、特に磁極延長部分が使用される場合には、クランピングプレートに対して保持されるワークピースの機械加工により引き起こされる振動を吸収する能力に乏しい。
・上記振動によって充填樹脂10の損傷が引き起こされ、冷却液がソレノイド領域3に浸透してしまい、短絡が引き起こされる可能性がある。
【0017】
上述のような従来技術に鑑みて、本発明の課題は、従来技術に関連して上に挙げた問題を回避することである。
【0018】
本発明によれば、この課題は、請求項1記載の磁気クランプ装置のためのプレートによって解決される。
【0019】
この課題はまた、請求項12記載の磁気クランプ装置のためのプレートの製造方法によって解決される。
【0020】
最後にこの課題は、請求項20記載の磁気クランプ装置によって解決される。
【0021】
本発明によれば、一体型多極プレートを、ただ1つの強磁性材料から形成することができるので、著しく時間を節約することができる。
【0022】
組み立ての際にも時間を節約することができる。なぜなら本発明は、ただ1つの部材、すなわち一体型多極プレートを用いるだけでよいからである。
【0023】
このようにして得られる一体型多極プレートによれば、"N"個の磁極片を、種々の磁極片間のアラインメントおよび中心間距離に注意を払う必要なしに、ソレノイド−可逆性磁石ユニットに簡単に取り付けることが可能となる。
【0024】
本発明によればさらに、静的磁石(static magnet)の位置をずらすことなく挿入することができ、従来技術による装置とは異なり、いかなる磁極片の位置調節も必要されず、磁極プレートをフレームに対してセンタリングするだけでよくなる。
【0025】
本発明の一体型多極プレートのさらなる利点は、以下のとおりである:
・磁極延長部分が使用される場合に、これらのスペーシングが100分の1の精度で保証され、これによって磁気装置の使用中における機械加工の精度が向上する。
・ソレノイド領域への液体浸透が阻止される。なぜなら、一体型磁極プレートは、ソレノイド領域と作業面との間に金属ダイヤフラムを形成するからである。
・ワークピースの機械加工によってプレートに及ぶ応力がプレート全体に亘り、これによって高い振動耐性が保証される。
【0026】
最後に、本発明のプレートがデュアルマグネット型の磁気装置において使用される場合には、2つの(静的および可逆性)磁石のキャリブレーションを回避することができる。その理由は以下のとおりである:
1)磁極片が一定の間隔を置いて配向されており、磁極片のピッチは、0.1ミリメータより小さい公差によって提供される。
2)本発明のプレートによれば、いかなる超過磁束も部分的に短絡させることが可能となる;これによって、2つの(静的および可逆性)磁石の磁束のバランスをとる必要性を回避することができ、このようにして組み立て中の時間節約が可能となる。
【0027】
本発明の特徴および利点は、実施形態についての以下の詳細な説明から明らかとなる。実施形態は添付図面に図示されているが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1Aおよび1Bは、それぞれ従来技術による磁気装置の縦断面図と、該磁気装置の構成要素の平面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の一体型多極プレートの第1実施例の平面図である。
【図2B】図2Bは、図2Aの一体型多極プレートのX−Xに沿った縦断面図である。
【図2C】図2Cは、本発明の一体型多極プレートの第2実施例の平面図である。
【図2D】図2Dは、図2Cの一体型多極プレートのX’−X’に沿った縦断面図である。
【図3】図3は、本発明の磁気装置を形成するフレームと結合された際の、図2Aまたは図2Cのプレートを示す図である。
【図4】図4は、本発明の別の磁気装置を形成するフレームと結合された際の、図2Aまたは図2Cのプレートを示す図である。
【図5A】図5Aは、本発明の一体型多極プレートの第3実施例の平面図である。
【図5B】図5Bは、図5Aの一体型多極プレートのX’’−X’’に沿った縦断面図である。
【図6】図6は、本発明の磁気装置を形成するフレームと結合された際の、図5Aのプレートを示す図である。
【図7A】図7Aは、本発明の一体型多極プレートの第4実施例の平面図である。
【図7B】図7Bは、図7Aの一体型多極プレートのX’’’−X’’’に沿った縦断面図である。
【図7C】図7Cは、本発明の一体型多極プレートの第5実施例の平面図である。
【図7D】図7Dは、図7Aの一体型多極プレートのX’’’’−X’’’’に沿った縦断面図である。
【0029】
上述した構成要素が同一の参照符号によって示されている添付図面2A〜7Dを参照すると、磁気クランプ装置12のためのプレートは、概して参照符号11によって示されている。
【0030】
プレート11は複数の磁極片13を含む。これらの磁極片は、例えば正方形平面(図2A,7A)または円形平面(2C,5A,7C)を有することができるが、図示しない別のプロフィール、例えば三角形プロフィールも可能である。
【0031】
磁極片13はプレート11から延長しており、前記プレート11とともに1つの部材から形成されている。すなわち複数の磁極片13はプレートの一部である。
【0032】
このように、プレート11は一体型多極プレートである。
【0033】
より詳細には、複数の磁極片13がプレート11から突出しており、磁気装置12の保持表面12Aを画定している。この保持表面12の上には、機械加工すべきワークピース(図示しない)を置くことができる。
【0034】
このようにして、予め決められた幅L、長さl、および厚さSを有する平坦な強磁性プレートは、プレート11を得るための複数の機械加工ステップに供給される。ここでは特別な適用要求に応じて複数の、例えば6個、8個、またはそれ以上の磁極片13が、凹部または溝15を形成することによって得られる。
【0035】
より詳細には、溝15は、各磁極片13の周囲を画定しており、各磁極片13につき少なくとも1つの保持領域ないし表面13Aを形成する。
【0036】
磁気装置12の保持表面12Aは、複数の保持領域13Aの全体によって画定される。
【0037】
プレート11が、(静的磁石および可逆性磁石を備えた)デュアルマグネット型磁気装置と結合される場合、これらの溝15は静的磁石9および樹脂10のための容器を形成することができ(図3および4)、(可逆性磁石のみを有する)シングルマグネット型磁気装置と結合されている場合、これらの溝は、樹脂10だけのための容器を形成することができる(図6)ことに注意されたい。
【0038】
溝15におけるプレート11の残りの材料部分は、種々の磁極片13の間の接続部分11Aを画定しており、磁極片13のペアの間の接続を可能にするためのものである。
【0039】
特にこの接続部分11Aは、磁気装置が活性化された際に、磁極片13の静的磁石9同士間のある種の部分的な短絡を形成し、磁極片13の、ひいてはプレート11の剛性を増大させることができ、したがって機械的応力に対するプレートの抵抗力を増加させる。
【0040】
部分11Aの断面全体は、有利には磁極片13の領域13Aの30%よりも小さくなるように、すなわち磁極片13の保持表面13Aによって画定されている領域の30%を超えないようにすべきであるが、これに限定されるものではない。
【0041】
部分11Aの断面が各磁極片13の保持表面13Aの領域の30%よりも大きい場合には、磁気装置のクランプ能力はより劣ってしまう可能性がある。さらに添付図面を参照すると、各磁極片13につき1つの貫通孔14が見受けられる。
【0042】
この貫通孔14は、プレート11の厚さS(したがって磁極片13の厚さ)と、磁気装置12のための基板として機能するフレーム2の厚さS11の一部とを通って延在している。
【0043】
貫通孔14を各磁極片13の中心Cに形成すると有利であるということに注意されたい。貫通孔14の位置にかかわらず、中心Cのペア間で一定ピッチPを達成することができる。
【0044】
有利には、孔14が磁極片13の中心に形成される場合、該孔14は、直交座標軸X−Yを備える基準系の軸に平行な所定の軸に沿って配向される。
【0045】
各貫通孔14は、該貫通孔に結合された締結装置17を有することができることに注意されたい。該締結装置の特徴は、イタリア国特許出願MI2007A001227に記載されており、締結装置は、ソレノイド3−可逆性磁石4ユニットを、磁極片13とフレーム2の基板との間の容器にクランプすることができる。
【0046】
磁極延長部分のシャンク(図示しない)は上記締結装置17と結合することができる。
【0047】
磁極延長部分の技術的特徴および作動特徴、ならびに該磁極延長部分を使用した利点は、例えばイタリア国特許IT1222875および特許出願MI2007A001353において発見できるだろう。
【0048】
磁気装置12の製造方法は、図1Aの従来技術に関連した製造方法と類似しているが、該磁気装置12の製造方法は有利には、プレート11、ひいては磁極片13全体を装置のフレーム2と結合することができるたった1つのステップを含む。
【0049】
この特徴によって、磁極片の製造工程においても、有利には組み立て中においても、両方において著しい時間節約が提供され、1つの部材が用いられるだけで、磁極片5のように多くの部材を磁気装置12に取り付ける必要はない。
【0050】
磁極延長部分が使用される場合、組み立て工程は磁極延長部分のペアの間の中心間距離を100分の1の精度で保証し、これによりワークピースの機械加工の精度が増加することに注目されたい。
【0051】
特に、本発明の第1実施例を図示した図2Aおよび2Bを参照すると、プレート11から6個の磁極片13が突出している様子が図示されている。
【0052】
プレート11、ひいては6個の磁極片13は、平坦なプレートから材料除去によって、例えばフライス加工ステップまたは穿孔ステップによって形成することができる。
【0053】
特にフライス加工ステップは、凹部または溝15を画定する。
【0054】
図2Aの実施例においては、溝15は、プレート11の厚さSの少なくとも1つの深さHに亘って延在するように形成されている。
【0055】
換言すると、接続部分11Aの厚さS’は、以下の関係式によって規定される。
S’=S−H
なお、Sはプレート11の厚さであり、Hは溝15の深さである。
【0056】
複数の磁極片13の各磁極片の溝15は、直交座標軸X−Yを備える基準系の軸Xに平行な線に沿って、および軸Yに平行な線に沿って延在しており、したがって磁極片13は正方平面形を有し、平行な列に沿って配向されている。
【0057】
穿孔ステップは、貫通孔14、および、プレート11の断面Sを貫通して延在する付加的な貫通孔16の両方を形成する。
【0058】
有利には、これらの貫通孔16は、フレーム2とプレート11のより簡単なアラインメントを提供するのと同様に、樹脂10の通路も提供する。特に、本発明の第1実施例を図示した図2Cおよび2Dを参照すると、プレート11から8個の磁極片13が突出している様子が図示されている。
【0059】
ここでも再び、プレート11および8個の磁極片13は、例えばコアラーなどのフライス機械を使用した材料除去によって平坦なプレートから形成することができる。
【0060】
特に、このフライス加工は、各磁極片13の中心Cと同心に実施される。
【0061】
このようにして円形の平断面を備える複数の磁極片13が得られる。
【0062】
再度、図2Cおよび2Dに図示される実施例において、接続部分11Aの厚さS’は関係式S’=S−Hによって規定される。なお、Sはプレート11の厚さであり、Hは溝15の深さである。
【0063】
図3および4を参照すると、磁気装置12の断面図が示されており、図2Aまたは2Cに示されるようなプレート11が磁気装置12のフレーム2に組み立てられている。
【0064】
図3および4からは、プレート11が、組み立て中にプレートの位置に依存している、例えば(静的磁石と可逆性磁石を有する)デュアルマグネット型永電磁式のような2つの型の磁気装置12を提供することができることがわかる。
【0065】
より詳細には、"表"位置または従来位置として知られた位置(図4参照)、および、"裏"位置または金属位置として知られる第2位置(図3参照)を規定することができる。"表"位置または従来位置として知られた位置(図4参照)では、図2Aまたは2Cに図示されるようなプレート11が、磁極片13が露出されている保持表面12を有する様子が図示されている。前記"裏"位置または金属位置として知られる第2位置(図3参照)では、図2Aまたは2Cに図示されるようなプレート11は、磁極片13が見えないようになっている保持表面12Aを有している。プレート12が従来位置(図4)にある装置12は、該磁気装置12の保持表面12Aからより多くの材料除去を可能にするという利点を提供することに注目されたい。なぜなら、不活性状態においてはいかなる活性化部分も磁束によって損傷されないからである。
【0066】
これは特に有利である。なぜなら、機械加工によって引き起こされる保持表面の劣化のせいで、要求されるワークピースの機械加工精度はそのうち保証することができなくなるからである。この欠点を回避するために、プレート11を使用すれば、および図4に図示されるパターンに従ったプレート11の配置によれば、装置12の保持表面12Aを研削するために多様なステップを実施することが可能となり、その一方で、活性化部分への損傷を阻止することができる。他方で、プレート11が裏位置(図3)にある装置12は、図4に図示された装置と比較してより広い金属表面、とくに樹脂のない保持表面を有するという利点を提供する。
【0067】
後者の特徴は、保持表面に樹脂が無いので、保持表面12Aの温度の上昇を含む機械加工の際に、樹脂の破損、変形、および/または剥離が起こらないという点で非常に有利である。
【0068】
さらに、磁気装置のために選択されるプレートの位置にかかわらず、液体がソレノイド領域3に浸透することはない。なぜなら一体型プレート11は、ソレノイド3と作業面との間における金属ダイヤフラムを形成するからである。
【0069】
特にデュアルマグネット型装置(静的磁石および可逆性磁石を有する)の場合、磁極片13の中心Cと中心との間の距離が一定であるという特徴によって、キャリブレーションの必要性が回避されることに注目されたい。なぜならプレート12の部分11Aによる静的磁石9間の部分的な短絡により、静的磁石9と可逆性磁石4の磁束を完全にバランスをとる必要はなくなるからである。
【0070】
さらに、プレート11が円形の磁極片を有する磁気装置12によれば、図2Aおよび2Bの実施例と比較して一層良好な機械的応力分布が可能となることにも注目されたい。なぜなら残りの金属ダイヤフラムが、磁極片13の周囲全体にわたって配置されているからである。
【0071】
図3および4を参照しながら説明した実施例とは異なる、本発明の第3実施例を示す図5A〜6を参照すると、プレート11は、(可逆性磁石のみを有する)シングルマグネット型磁気装置のための特別なプレートである。
【0072】
図5Bに示される特別な実施形態においては、接続部分11Aの厚さS’は、以下の関係式によって規定されることに注意されたい:
S’=S−H−h
なお、Sはプレート11の厚さであり、Hは、保持表面13Aとは反対側の面13Bから保持表面13Aに向かって測定したときの溝15の深さであり、hは、保持表面13Aから保持表面13Aの反対側の面13Bに向かって測定したときの溝15の深さである。
【0073】
さらに保持表面13Aは、リング19Aを収容するための環状の凹部19を有する。該リング19Aは、有利には非磁性金属材料から形成されており、磁気装置が活性化されている場合に、磁気装置12の保持表面13Aの上へのクランピング力を集中させるために使用される。
【0074】
図7A−7Bおよび図7C−7Dを参照すると、プレート11の磁極片13は、例えば材料の穿孔による材料除去の機械的ステップによって得られる。
【0075】
特に、これらのステップは、内部に材料を含まない貫通溝18を画定するために、プレート11からの完全な材料除去を含む。
【0076】
換言すると、貫通溝18は、プレート11の厚さSを完全に貫通するように材料が完全に除去された開口部であり、すなわち貫通溝18の深さH(またはh)は、プレート11の厚さSと同じである。
【0077】
これらの溝18は、磁極片13のプロフィールを画定または形成しており、これらの磁極片は、あらゆる形状、例えば四角形(図7Aおよび7B)、円形(図7Cおよび7D)、または三角形(図示しない)のような別の形状とすることができる。
【0078】
換言すると、プレート11における溝18は凹部のプロフィールを画定しており、各凹部自体が磁極片13の周囲を画定している。
【0079】
特にこの溝18は、磁極片13間の接続、および静的磁石(ある場合には)の部分的な短絡、ならびに磁気漏洩の低減を可能にするために、先細プロフィールを備える交点18Aにて終端することができる。
【0080】
これによって、プレート11の周縁に沿って、および、交点18Aにて、磁気装置12が活性化された際に静的磁石を部分的に短絡させるための、磁極片13間における接続が可能となる。
【0081】
図7A−Bに図示されるような実施例において、領域18は、直交座標軸X−Yを備える基準系の軸X,Yに対して実質的に平行に延在していることに注目されたい。
【0082】
逆に、図7C−7Dの実施例においては、領域18は、各磁極片13の中心Cと同心に延在している。
【0083】
この分野の当業者であれば、以下の特許請求の範囲に規定されているような、本発明の範囲を逸脱することなく、特定の要求を満たすために、これまで説明してきた実施形態に対して種々の変更および変形を行うことができることは自明である。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気クランプ装置(12)のためのプレート(11)であって、
該装置(12)は、複数の磁極片(13)を有する
形式のプレートにおいて、
前記複数の磁極片(13)は前記プレート(11)から延長しており、該プレート(13)とともに一つの部材から形成されている、
ことを特徴とするプレート。
【請求項2】
前記プレート(11)は、複数の溝(15,18)を含み、
該溝(15,18)は、前記複数の磁極片(13)のそれぞれの周囲を画定し、かつ前記複数の磁極片(13)を互いに接続するための接続部分(11A)を形成するように適合されている、
ことを特徴とする請求項1記載のプレート。
【請求項3】
・前記複数の磁極片(13)の各磁極片は、保持表面(13A)を画定するように適合された少なくとも1つの面を有し、
・前記部分(11A)の断面積は、前記保持表面(13A)を画定するように適合された前記少なくとも1つの面の面積の30%よりも小さい、
ことを特徴とする請求項2記載のプレート。
【請求項4】
前記部分(11A)は、前記プレート(11)の厚さ(S)と前記複数の溝(15,18)の第1深さ(H)との間の残りの寸法に等しい厚さ(S’)を有する、
ことを特徴とする請求項3記載のプレート。
【請求項5】
前記部分(11A)は、
前記プレート(11)の厚さ(S)と、
前記保持表面(13A)とは反対側の面(13B)から前記保持表面(13A)に向かって測定したときの前記複数の溝(15,18)の第1深さ(H)と、
前記保持表面(13A)から該保持表面(13A)の反対側の前記面(13B)に向かって測定したときの前記複数の溝(15,18)の第2深さ(h)
の間の残りの寸法に等しい厚さ(S’)を有する、
ことを特徴とする請求項3記載のプレート。
【請求項6】
前記複数の磁極片(13)は、それぞれ第1貫通孔(14)を含み、
該第1貫通孔(14)は、前記プレート(11)の厚さ(S)を貫通して延在している、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のプレート。
【請求項7】
前記第1貫通孔(14)は、磁極延長部分のシャンクを受容するためのねじを有する、
ことを特徴とする請求項6記載のプレート。
【請求項8】
前記複数の溝(15,18)の少なくとも1つの溝は、直交座標軸(X−Y)を備える基準系(X−Y)の軸(X)に平行に延在しており、
前記複数の溝(15,18)の少なくとも1つの第2の溝は、直交座標軸(X−Y)を備える基準系(X−Y)の別の軸(Y)に平行に延在している、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載のプレート。
【請求項9】
前記プレートは、少なくとも1つの第2の貫通孔(16)を有し、
該第2の貫通孔(16)は、前記プレート(11)の厚さ(S)を貫通して延在している、
ことを特徴とする請求項8記載のプレート。
【請求項10】
前記複数の磁極片(13)は、正方形平面形状を有する、
ことを特徴とする請求項8または9記載のプレート。
【請求項11】
前記複数の磁極片(13)は、円形の平断面を有し、
前記溝(15,18)は、円周溝であり、
該円周溝の中心(C)は、前記各磁極片(13)の中心にある、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載のプレート。
【請求項12】
磁気装置の構成部材を製造するための製造方法であって、
・予め決められた幅(L)、長さ(l)、および厚さ(S)を有する強磁性プレートを用意するステップ
を含む製造方法において、
・前記強磁性プレート(11)から強磁性材料を除去して、複数の磁極片(13)を画定するように適合された複数の溝(15,18)を形成するステップ、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項13】
前記材料除去ステップは、前記複数の磁極片(13)を互いに接続する部分(11A)を画定する各溝(15,18)のために充分な材料の除去を含む、
ことを特徴とする請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
前記複数の磁極片(13)の各磁極片は、磁気装置(12)のための保持表面(13A)を画定するように適合された少なくとも1つの面(13A)を有し、
前記部分(11A)の面積は、前記少なくとも1つの面(13A)の面積の30%よりも小さい、
ことを特徴とする請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
前記部分(11A)は、前記プレート(11)の厚さ(S)と前記複数の溝(15,18)の第1深さ(H)との差に等しい厚さ(S’)を有する、
ことを特徴とする請求項13記載の製造方法。
【請求項16】
前記部分(11A)は、
前記プレート(11)の厚さ(S)と、
前記保持表面(13A)とは反対側の面(13B)から前記保持表面(13A)に向かって測定したときの前記複数の溝(15,18)の第1深さ(H)と、
前記保持表面(13A)から該保持表面(13A)の反対側の前記面(13B)に向かって測定したときの前記複数の溝(15,18)の第2深さ(h)
の間の残りの寸法に等しい厚さ(S’)を有する、
ことを特徴とする請求項13記載の製造方法。
【請求項17】
前記材料除去ステップは、フライス加工ステップまたは穿孔ステップである、
ことを特徴とする請求項12〜16のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項18】
前記複数の溝(15,18)の少なくとも1つの溝は、直交座標軸(X−Y)を備える基準系(X−Y)の軸(X)に平行に延在しており、
前記複数の溝(15)の少なくとも1つの第2の溝は、直交座標軸(X−Y)を備える基準系(X−Y)の別の軸(Y)に平行に延在している、
ことを特徴とする請求項12〜17のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項19】
前記複数の磁極片は、四角形平面形状または円形平面形状を有する、
ことを特徴とする請求項12〜18のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項20】
鉄製ワークピースを保持するための磁気保持装置であって、
該装置は、フレーム(2)と、複数の磁極片(13)と、ソレノイド(3)とを含み、
前記フレーム(2)は、複数の磁極片(13)を収容するように適合されており、
前記複数の磁極片(13)は、それぞれ保持表面部分(13A)を画定する強磁性磁極部材を有し、
前記ソレノイド(3)は、可逆性磁石(4)の周囲に設けられている、
形式の磁気保持装置において、
該装置は、プレート(11)を含み、
前記複数の磁極片(13)は、前記プレート(11)から延長しており、前記プレート(13)とともに1つの部材から形成されており、
前記プレート(13)は、請求項1〜11のいずれか一項記載のプレートである、
ことを特徴とする磁気保持装置。
【請求項21】
前記複数の磁極片(13)は、前記プレート(11)の部分(11A)によって互いに接続されており、前記複数の磁極片(13)は、前記磁気装置が活性化されている間は部分的に短絡されている、
ことを特徴とする請求項20記載の磁気保持装置。
【請求項22】
前記プレート(11)は、前記磁極片(13)が露出されたままになっている前記装置(12)の保持表面(12A)を画定するために、第1プレート位置にて前記フレーム(2)と結合されている、
ことを特徴とする請求項20または21記載の磁気保持装置。
【請求項23】
前記プレート(11)は、前記磁極片(13)が見えないようになっている前記磁気装置(12)の保持表面(12A)を画定するために、第2プレート位置にて前記フレーム(2)と結合されている、
ことを特徴とする請求項20または21記載の磁気保持装置。

【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公表番号】特表2010−538852(P2010−538852A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524587(P2010−524587)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001703
【国際公開番号】WO2009/034425
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(509323200)テクノマグネーテ ソチエタ ペル アツィオーニ (6)
【氏名又は名称原語表記】TECNOMAGNETE S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Nerviano 31, I−20020 Lainate (MI), Italy
【出願人】(501193001)ポリテクニコ ディ ミラノ (18)
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO−Italy
【Fターム(参考)】