説明

磁気共鳴イメージング装置、および、磁気共鳴イメージング方法

【課題】MRIにおいてSAR等の上限を有するパラメータの値を低減させる技術を提供する。
【解決手段】一実施形態では、MRI装置は、イメージング部と、演算部とを備える。演算部は、複数のスキャン動作のスキャン順序の複数のパターンに対して、上限を有するパラメータの値をそれぞれ算出する。イメージング部は、演算部の算出結果に応じて複数のスキャン動作を行うことで、スキャン動作毎の画像データをそれぞれ生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置(Magnetic Resonance Imaging Apparatus:以下適宜、MRI装置と略記する)、および、磁気共鳴イメージング方法に関する。
また、本発明の実施形態は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)においてSAR(Specific Absorption Ratio:比吸収率)などの上限を有するパラメータの値を低減するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波パルス(radio frequency pulse:以下、RFパルスという)で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する核磁気共鳴信号(nuclear magnetic resonance signal:以下、MR信号という)から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
MRIによる撮像では、RFコイルを用いて、核磁気共鳴を起こすためのRFパルスを撮像部位に送信する。RFパルスの共鳴周波数は、MRI装置の静磁場強度に比例し、例えば1.5テスラの静磁場の場合、共鳴周波数は63.8MHzである。
【0004】
この周波数領域では被検体の体温上昇が生じるため、送信されるRFパルスのエネルギーについて、安全面から例えばIEC(International Electrotechnical Commission)規格などによって上限値が定められている。
【0005】
具体的には、生体組織1kgに吸収されるRFパルスのエネルギーをSARとして、例えば任意の10秒間、6分間のSARがそれぞれ第1または第2の上限値を超えないように定められており、全身、頭部等の部位によっても上限値は異なる。
【0006】
SARに関する安全基準を満たすため、特許文献1の従来技術では、直近の1秒、5秒、10秒のそれぞれについて被検体に送信されるRFパルスのエネルギーの積算値を計算している。
【0007】
そして、以下の3つの場合に、パルスシーケンスを変更している。第1に、直近の1秒について前記積算値が第1の所定値を超えた場合である。第2に、直近の5秒について前記積算値が第2の所定値を超えた場合である。第3に、直近の10秒について前記積算値が第3の所定値を超えた場合である。特許文献1では、このパルスシーケンス変更の例として、RFパルス発生器の動作停止を挙げているが、これでは撮像が途中で中断となるおそれがある。
【0008】
そこで特許文献2の従来技術では、頭部や撮像部位に対するSAR(以下、部分SARという)を撮像前に計算している。そして、計算した部分SARが上限値を超える場合には、警告表示後、部分SARが上限値を超えないようにパルスシーケンスを変更し、被検体への照射量が部分SARの上限値を超えないことを検証後に撮像を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6426623号明細書
【特許文献2】特開2006−95278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2の従来技術は、上述のように優れた作用効果を有する。しかし、スライス枚数の減少等を含むパルスシーケンスの変更については、なるべく行わずに済むことが望まれる。MRIによる診断では、SARが上限値を超えない範囲において、なるべくスライス枚数を多くする等の最適化した条件での撮像が好ましいからである。
【0011】
従って、最適化した条件での撮像を行うことができるように、SARを低減させる技術が要望されていた。同様に、SAR以外の上限を有するパラメータの値についても低減させる技術が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下の説明では一例として、「スキャン」または「スキャン動作」とは、核磁気共鳴を起こすためのRFパルスを被検体に送信すると共に、RFパルスにより生じたMR信号を被検体から受信する動作をいう。即ち、「スキャン」または「スキャン動作」とは、いわゆるデータ収集処理を指し、画像再構成処理を含まないものとする。
【0013】
一実施形態では、MRI装置は、イメージング部と、演算部とを備える。演算部は、被検体に対する複数のスキャン動作のスキャン順序の複数のパターンに対して、上限を有するパラメータの値をそれぞれ算出する。イメージング部は、演算部の算出結果に応じて複数のスキャン動作を行うことで、スキャン動作毎の画像データをそれぞれ生成する。
【0014】
別の一実施形態では、演算部は、上限を有するパラメータとしてSARの値をそれぞれ算出する。
【0015】
別の一実施形態では、MRI方法は、以下の2つのステップを有する。1つは、被検体に対する複数のスキャン動作のスキャン順序の複数のパターンに対して、上限を有するパラメータの値をそれぞれ算出するステップである。1つは、パラメータの値の算出結果に応じて複数のスキャン動作を行うことで、スキャン動作毎の画像データをそれぞれ生成するステップである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態におけるMRI装置の構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態における各スキャンA、B、CのSAR強度およびスキャン時間を示す表。
【図3】第1の実施形態における各スキャンA、B、Cのスキャン順序のパターンを示す表。
【図4】スキャン順序のパターン(1)〜(6)における、60秒刻みの各時刻でのSAR強度を比較した表。
【図5】スキャン順序がスキャンA、B、Cの順となるパターン(1)において、SAR強度、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を示すグラフ。
【図6】スキャン順序がスキャンA、C、Bの順となるパターン(2)において、SAR強度、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を示すグラフ。
【図7】スキャン順序がスキャンB、A、Cの順となるパターン(3)において、SAR強度、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を示すグラフ。
【図8】スキャン順序がスキャンB、C、Aの順となるパターン(4)において、SAR強度、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を示すグラフ。
【図9】スキャン順序がスキャンC、A、Bの順となるパターン(5)において、SAR強度、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を示すグラフ。
【図10】スキャン順序がスキャンC、B、Aの順となるパターン(6)において、SAR強度、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を示すグラフ。
【図11】第1の実施形態のMRI装置における処理の流れを示すフローチャート。
【図12】第2の実施形態における各スキャンA’、B’、CのSAR強度およびスキャン時間を示す表。
【図13】第2の実施形態のスキャン順序のパターン(1)’、(2)’における、60秒刻みの各時刻でのSAR強度を比較した表。
【図14】スキャン順序がスキャンA’、B’、Cの順となるパターン(1)’において、SAR強度、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を示すグラフ。
【図15】スキャン順序がスキャンA’、C、B’の順となるパターン(2)’において、SAR強度、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を示すグラフ。
【図16】第2の実施形態のMRI装置における処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、MRI装置およびMRI方法の実施形態について説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態におけるMRI装置20の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、MRI装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石22と、静磁場用磁石22の内側において軸を同じにして設けられた筒状のシムコイル24と、傾斜磁場コイル26と、RFコイル28と、制御系30と、被検体Pが乗せられる寝台32とを備える。
【0019】
ここでは一例として、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸について、鉛直方向をY軸方向として説明する。また、寝台32は、その天板の載置用の面の法線方向がY軸方向となるように配置されているものとし、静磁場用磁石22およびシムコイル24の軸方向をZ軸方向とする。
【0020】
制御系30は、静磁場電源40と、シムコイル電源42と、傾斜磁場電源44と、RF送信器46と、RF受信器48と、シーケンスコントローラ50と、コンピュータ52とを備える。
【0021】
傾斜磁場電源44は、X軸傾斜磁場電源44xと、Y軸傾斜磁場電源44yと、Z軸傾斜磁場電源44zとで構成されている。また、コンピュータ52は、演算装置60と、入力装置62と、表示装置64と、記憶装置66とで構成されている。
【0022】
静磁場用磁石22は、静磁場電源40に接続され、静磁場電源40から供給された電流により撮像空間に静磁場を形成させる。シムコイル24は、シムコイル電源42に接続され、シムコイル電源42から供給される電流により、この静磁場を均一化する。
【0023】
静磁場用磁石22は、超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源40に接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。なお、静磁場電源40を設けずに、静磁場用磁石22を永久磁石で構成してもよい。
【0024】
傾斜磁場コイル26は、X軸傾斜磁場コイル26xと、Y軸傾斜磁場コイル26yと、Z軸傾斜磁場コイル26zとで構成され、静磁場用磁石22の内側で筒状に形成されている。X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zはそれぞれ、傾斜磁場電源44のX軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zに接続される。
【0025】
そして、X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zからX軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zにそれぞれ供給される電流により、X軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzが撮像空間にそれぞれ形成される。
【0026】
RF送信器46は、シーケンスコントローラ50から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすためのRFパルスを生成し、これを送信用のRFコイル28に送信する。RFコイル28には、ガントリに内蔵されたRFパルスの送受信用の全身用コイルや、寝台32または被検体Pの近傍に設けられるRFパルスの受信用の局所コイルなどがある。
【0027】
送信用のRFコイル28は、RF送信器46からRFパルスを受けて被検体Pに送信する。受信用のRFコイル28は、被検体Pの内部の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号を受信し、このMR信号は、RF受信器48により検出される。
【0028】
RF受信器48は、検出したMR信号に所定の信号処理およびA/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化された複素データである生データ(raw data)を生成し、生成したMR信号の生データをシーケンスコントローラ50に入力する。
【0029】
シーケンスコントローラ50は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させるために必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源44に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。
【0030】
シーケンスコントローラ50は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させることにより、X軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場GzおよびRFパルスを発生させる。また、シーケンスコントローラ50は、RF受信器48から入力されるMR信号の生データを受けて、これを演算装置60に入力する。
【0031】
演算装置60は、MRI装置20全体のシステム制御を行う。また、演算装置60は、同一の被検体Pに対して複数のスキャンが連続して行われる場合に、最適なスキャン順序を自動的に設定する。この点が第1の実施形態の大きな特徴であり、以下に説明する。
【0032】
なお、第1の実施形態では一例として、撮像条件が互いに異なるスキャンA、スキャンB、スキャンCの3つのスキャンを(休憩を入れずに)時間的に連続して行う場合のスキャン順序の設定方法について説明する。
【0033】
また、以下の説明でのSARは全て、全身に対するSARであるものとし、ここでは一例として、SARの10秒平均値、6分平均値がそれぞれ、安全基準によって12[W/kg]、4[W/kg]を超えないように定められているものとして説明する(後述の第2の実施形態も同様)。
【0034】
図2は、各スキャンA、B、CにおけるSAR強度およびスキャン時間を示す表である。SAR強度[W/kg]およびスキャン時間は、操作者により入力された各スキャンA、B、Cの撮像条件に基づいて、演算装置60により算出される。
【0035】
図3は、図2に示したスキャンA、B、Cのスキャン順序のパターン(1)〜(6)を示す表である。この例ではスキャンが3つであるため、スキャンパターンは3の階乗で6通りとなる。
【0036】
図4は、6つのスキャン順序のパターン(1)〜(6)における、各時刻でのSAR強度を比較した表である。以降の説明では、順序が最初となるスキャンの撮像開始時刻をt=0とし、図4では経過時刻tを60秒刻みにしてSAR強度を示す。3つのスキャンA、B、Cは、どの順序で撮像しても840秒(14分)で終了するため、経過時刻tが840秒以降のSAR強度[W/kg]は、スキャンパターンに拘らずにゼロとなる。
【0037】
また、演算装置60は、全てのスキャンパターン(1)〜(6)について、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を算出する。
【0038】
図5は、スキャン順序がスキャンA、B、Cの順となるパターン(1)において、SAR強度、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を示すグラフである。図5において、実線は各経過時刻t(秒)におけるSAR強度[W/kg]を示し、破線はSARの10秒平均値の時間変化を示し、一点鎖線はSARの6分平均値の時間変化を示す。
【0039】
このグラフに関わる演算は、演算装置60により行われる。具体的には、経過時刻t1でのSARの10秒平均値は、経過時刻t1よりも10秒前から経過時刻t1までのSAR強度[W/kg]の時間積分値を10秒で割った値として算出される。図5は、SARの6分平均値についても同様にして、演算装置60が算出するものである。
【0040】
図5に示すパターン(1)において、SARの10秒平均値については、安全基準値の12[W/kg]を超えていない。しかし、SARの6分平均値については、おおよそ経過時刻240秒〜480秒において安全基準値の4[W/kg]を超えている。
【0041】
図6〜図10は、スキャン順序のパターン(2)〜(6)についてSAR強度、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を図5と同様に示したグラフである。
【0042】
図6はスキャン順序がスキャンA、C、Bの順となるパターン(2)に対応し、図7はスキャンB、A、Cの順となるパターン(3)に対応し、図8はスキャンB、C、Aの順となるパターン(4)に対応し、図9はスキャンC、A、Bの順となるパターン(5)に対応し、図10はスキャンC、B、Aの順となるパターン(6)に対応する。
【0043】
図11は、第1の実施形態のMRI装置20における処理の流れを示すフローチャートである。以下、適宜図2〜図10を参照しながら、図11に示すフローチャートのステップ番号に従って第1の実施形態のMRI装置20の動作について説明する。
【0044】
[ステップS1]操作者により、同一の被検体Pに対して連続的に行う各スキャンA、B、Cの撮像条件が入力装置62を介して入力される。なお、操作者は、撮像後にどのスキャンのMR画像から順に表示させるかについても、入力装置62を介して設定可能である。
【0045】
[ステップS2]演算装置60は、入力された各スキャンA、B、Cの撮像条件に基づいて各スキャンA、B、CのSAR強度[W/kg]およびスキャン時間を算出する(図2参照)。
【0046】
[ステップS3]演算装置60は、スキャンの数をnとするとスキャン順序のパターンは最大でnの階乗だけあることに基づいて、スキャン順序のパターンのリストを作成する。第1の実施形態の例では、図3のように6通りのスキャン順序のパターン(1)〜(6)が作成される。
なお、ステップS2、ステップS3については順序を逆にしても構わない。
【0047】
[ステップS4]演算装置60は、パターン(1)〜(6)のそれぞれに対して、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を算出する(図5〜図10参照)。
【0048】
[ステップS5]演算装置60は、ステップS4での算出結果に基づいて、SARの10秒平均値の最大値をパターン(1)〜(6)同士で比較する。同様に、演算装置60は、SARの6分平均値の最大値をパターン(1)〜(6)同士で比較する。演算装置60は、SARの10秒平均値の最大値、または、SARの6分平均値の最大値が一番小さくなるパターンを最適なスキャン順序のパターンとして選択する。
【0049】
なお、10秒平均においてSAR最大値が最も小さくなるパターンと、6分平均においてSAR最大値が最も小さくなるパターンとが異なる場合、後者を選ぶことが望ましい。平均値算出に用いられる時間が長いほど、スキャン順序の入れ替えによるSARの低減の度合いが大きい(スキャン順序を最適化するメリットが大きい)と考えられるからである。また、全てのパターンにおいて、SARの10秒平均値の最大値、SARの6分平均値の最大値の少なくともいずれかが安全基準値を超える場合、演算装置60は、その旨を表示装置64に表示させ、ステップS1に戻って操作者に撮像条件の再設定を促す。
【0050】
第1の実施形態の例では、SARの10秒平均値の最大値については、パターン(1)〜(6)共に8[W/kg]であり、安全基準を満たす(図5〜図10参照)。一方、SARの6分平均値の最大値については、図5に示すパターン(1)、図7に示すパターン(3)、図9に示すパターン(5)、図10に示すパターン(6)において安全基準値の4[W/kg]を超えているため、上記の最適なスキャン順序のパターンの選択から除外される。
【0051】
安全基準を満たす図6に示すパターン(2)、図8に示すパターン(4)を比較すると、SARの6分平均値の最大値は共に4[W/kg]である。従って、演算装置60は、パターン(2)、(4)のどちらを最適なスキャン順序のパターンとして選択してもよいことになる。ここでは一例として、演算装置60は、初期設定されていたスキャン順序のパターン、或いは、操作者がステップS1で指定したMR画像の表示順に対応するスキャン順序との順序変更が少ない方を優先的に選択するものとする。
【0052】
[ステップS6]ステップS5で選択されたスキャン順序のパターン((2)または(4))に従って、撮像が行われる。即ち、プレパルスや画像データ収集用のRFパルス等を送信後、被検体PからのMR信号をRF受信器48により検出する。シーケンスコントローラ50は、MR信号の生データを演算装置60に入力し、演算装置60は、この生データに所定の処理を施して画像データを生成し、これを記憶装置66に記憶させる。
【0053】
[ステップS7]演算装置60は、生成した画像データをMR画像にして表示装置64に表示させる。このとき、ステップS1において撮像後のMR画像の表示順が設定されている場合、演算装置60は、設定されたスキャン順序に従って、得られたMR画像を順次表示させる。
【0054】
以上が第1の実施形態のMRI装置20の動作説明であり、以下、従来技術との違いについて説明する。
【0055】
従来のようにスキャン順序を操作者が設定した順に固定した場合、例えば各スキャン毎に、撮像開始前に時間平均SARの最大値を安全基準値と対比することになる。この場合、操作者が設定したスキャン順序によっては、時間平均SARが安全基準値を超える場合が生じうる。そうすると、時間平均SARが安全基準値以下になるまで当該スキャンの開始時刻を延期したり、或いは、フリップ角の低減等によって安全基準を満たすことになる。この場合、撮像効率の低下や画質劣化等の妥協を強いられる。
【0056】
そこで本発明者は、以下の点に着眼した。即ち、複数のスキャンを連続的に行う場合、時間的に連続するスキャンのSAR強度の影響により、各スキャン毎の撮像条件は変わらなくとも、時間平均SAR(上記の例ではSARの10秒平均値およびSARの6分平均値)の最大値が変化する。
【0057】
特に、以下の2つの場合に、SARの6分平均値の最大値は、全スキャンの開始前および終了後のスキャン強度ゼロの期間を含めて平均化され、あまり大きくならない傾向がある。第1に、SAR強度が最も強いスキャンを最初に行い、2番目にはSAR強度が小さいスキャンを行う場合である(パターン(2)の場合)。第2に、SAR強度が最も強いスキャンは最後に行い、最後から2番目にはSAR強度が小さいスキャンを行う場合である(パターン(4)の場合)。
【0058】
換言すれば、SAR強度が相対的に強い複数のスキャンを時間的に密集する(連続させる)と、時間平均SARの最大値が高くなり易い。
【0059】
そこで第1の実施形態では、とりうる全てのスキャン順序に対して時間平均SARの最大値を算出し、時間平均SARの最大値が最小となるように、スキャン順序を適切に入れ替える。
【0060】
これにより、パターン(1)ではSARの6分平均値の最大値が5.33[W/kg]であったのが、スキャン順序をパターン(2)または(4)に変更するだけで、SARの6分平均値の最大値が4[W/kg]まで約25%低減し、安全基準を満たしている。即ち、各スキャンの撮像条件の変更や、各スキャンの間に待機時間を設けるといったことをせずにSARを低減させることができる。従って、スキャンの開始時刻の延期や、画質劣化を伴う各スキャンの撮像条件の変更、といった安全基準を満たすための制約は、最小限に留めることができる。
【0061】
また、ステップS1において、撮像後のMR画像の表示順については操作者により所望の順に指定できるため、スキャン順序の入れ替えに伴う操作上の混乱は殆ど生じない。
【0062】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、装置構成としては図1に示した第1の実施形態のMRI装置20と同様であるので構成図を省略し、MRI装置の符合も第1の実施形態と同じく20とする。第2の実施形態の主な特徴は、第1の実施形態と同様の動作であるスキャン条件固定モードに加えて、スキャン条件最適化モードを有することにある。スキャン条件最適化モードでは、時間平均SARの最大値が安全基準値と対比して所定の余裕がある場合、時間平均SARの最大値が安全基準値に近づくように、各スキャンの撮像条件を変更する。
【0063】
第2の実施形態では一例として、撮像条件が互いに異なるスキャンA’、スキャンB’、スキャンCの3つのスキャンを(休憩を入れずに)時間的に連続して行う場合のスキャン順序の設定方法について説明する。
【0064】
図12は、各スキャンA’、B’、CにおけるSAR強度およびスキャン時間を示す表である。スキャンCの撮像条件は第1の実施形態と同じであるが、スキャンA’、B’はそれぞれ、第1の実施形態のスキャンA、BよりもSAR強度が低くなっている。
【0065】
また、第2の実施形態では一例として、スキャン順序においてスキャンA’を最初にするという条件が設定されるものとする。このため、スキャンパターンは、スキャンA’、B’、Cの順であるパターン(1)’と、スキャンA’、C、B’の順であるパターン(2)’の2通りとなる。
【0066】
図13は、第2の実施形態の全スキャン順序のパターン(1)’、(2)’における、60秒刻みの各時刻でのSAR強度を比較した表である。以降の説明では、順序が最初となるスキャンの撮像開始時刻をt=0とする。また、どの順序で撮像しても840秒(14分)で終了するため、経過時刻tが840秒以降のSAR強度[W/kg]は、スキャンパターンに拘らずにゼロとなる。
【0067】
図14は、スキャン順序がスキャンA’、B’、Cの順となるパターン(1)’において、SAR強度、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を図5と同様に示したグラフである。
【0068】
図15は、スキャンA’、C、B’の順となるパターン(2)’についてSAR強度、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を図5と同様に示したグラフである。
【0069】
パターン(1)’、パターン(2)’共に、SARの10秒平均値およびSARの6分平均値が安全基準値の12[W/kg]、4[W/kg]に対してそれぞれ余裕があることが分かる。
【0070】
図16は、第2の実施形態のMRI装置20における処理の流れを示すフローチャートである。以下、適宜図12〜図15を参照しながら、図16に示すフローチャートのステップ番号に従って第2の実施形態のMRI装置20の動作について説明する。
【0071】
[ステップS11]操作者により、同一の被検体Pに対して連続的に行う各スキャンA’、B’、Cの撮像条件が入力装置62を介して入力される。また、操作者により、スキャン条件固定モード、スキャン条件最適化モードのいずれかが入力装置62を介して選択される。
【0072】
スキャン条件最適化モードが選択された場合、撮像条件を変更してもよいスキャンが入力装置62を介して選択される。以下の説明では一例として、スキャンA’、B’のみ撮像条件を変更可能として設定されるものとし、この条件は後述のステップS17の処理で反映される。
【0073】
また、このステップS11において、操作者は、入力装置62を介してスキャンの順序に条件を設定することができる。ここでの条件とは、スキャンA’は、スキャンB’よりも順序を後にする、スキャンCはスキャンA’の直前に行う等である。第2の実施形態では一例として、スキャンA’を最初に行う条件が設定されるものとする。
【0074】
なお、操作者は、撮像後にどのスキャンのMR画像から順に表示させるかについても、入力装置62を介して設定可能である。この後、演算装置60は、ステップS12に処理を移行する。
【0075】
[ステップS12]演算装置60は、ステップS11で設定されたスキャンの順序の条件に基づいて、スキャン順序のパターンのリストを作成する。第2の実施形態の例では、スキャンA’、B’、Cの順であるパターン(1)’と、スキャンA’、C、B’の順であるパターン(2)’の2通りとなる。この後、演算装置60は、ステップS13に処理を移行する。
【0076】
[ステップS13]演算装置60は、各スキャンA’、B’、Cの撮像条件に基づいて各スキャンA’、B’、CのSAR強度[W/kg]およびスキャン時間を算出する(図12参照)。この後、演算装置60は、ステップS14に処理を移行する。
【0077】
[ステップS14]演算装置60は、パターン(1)’、(2)’のそれぞれに対して、SARの10秒平均値、SARの6分平均値の時間変化を第1の実施形態と同様の手順で算出する(図14、図15参照)。この後、演算装置60は、ステップS15に処理を移行する。
【0078】
[ステップS15]ステップS11でスキャン条件固定モードが選択されている場合、演算装置60はステップS18に処理を移行し、そうではない場合(スキャン条件最適化モードが選択されている場合)、演算装置60はステップS16に処理を移行する。
【0079】
[ステップS16]演算装置60は、ステップS14での算出結果に基づいて、全パターン(1)’、(2)’のいずれかにおいて、時間平均SARが安全基準値に対して余裕があるか否かを判定する。ここでは一例として、安全基準値を100%とした場合に、SARの10秒平均値および6分平均値が共に85%未満であれば余裕があると判定する。演算装置60は、安全基準値に対して余裕があると判定した場合、ステップS17に処理を移行し、安全基準値に対して余裕がないと判定した場合、ステップS18に処理を移行する。以下、この判定方法について説明する。
【0080】
まず、演算装置60は、全パターン(1)’、(2)’におけるSARの10秒平均値の最大値を安全基準値(この例では12[W/kg])と比較する。図14、図15に示すように、パターン(1)’、(2)’共にSARの10秒平均値の最大値は5[W/kg]であり、安全基準値の85%未満である。
【0081】
また、演算装置60は、全パターン(1)’、(2)’におけるSARの6分平均値の最大値を安全基準値(この例では4[W/kg])と比較する。図14、図15に示すように、パターン(1)’では3.67[W/kg]であり、パターン(2)’では3[W/kg]であるから、パターン(1)’では安全基準値の85%を超えるものの、パターン(2)’では安全基準値の85%未満である。即ち、パターン(2)’では、SARの10秒平均値および6分平均値の最大値が共に安全基準値の85%未満であるから、演算装置60は、安全基準値に対して余裕があると判定し、ステップS17に処理を移行する。
【0082】
[ステップS17]演算装置60は、ステップS16での判定においてSARの10秒平均値および6分平均値の最大値が共に安全基準値の85%未満であったパターンを算出基準として、各スキャンの撮像条件を最適化した後、ステップS13に処理を移行する。
【0083】
ここでの最適化とは、SARの10秒平均値の最大値およびSARの6分平均値の最大値が、共に安全基準値を超えずに安全基準値に近くなるように、各スキャンの撮像条件を変更することである。この例では、上記最適化の算出基準となるものはパターン(2)’であり、撮像条件を変更するスキャンは、ステップS11において撮像条件の変更を許可されているスキャンA’、B’である。
【0084】
ここでは一例として、演算装置60は、スキャンA’、B’のSAR強度を第1の実施形態のスキャンA、Bとそれぞれ等しくする。そうすると、パターン(2)’の撮像条件は第1の実施形態のパターン(2)と同じになる。即ち、パターン(2)’のSARの10秒平均値および6分平均値は図6に示したものと同じになり、SARの10秒平均値の最大値は安全基準値より低い値で保たれる一方、SARの6分平均値の最大値は安全基準値に等しくなり、最適化される。
【0085】
この最適化処理の後、演算装置60はステップS13に処理を移行し、ステップS14、S15を経てステップS16で前記同様の判定が行われるが、今度は安全基準値に対して余裕がないと判定され、ステップS18に処理を移行する。なお、上記最適化処理において、SAR強度を強くする撮像条件の変更としては、例えばスライス枚数を増やす、フリップ角を大きくする等の変更や、それらを組み合わせた変更がある。
【0086】
[ステップS18]演算装置60は、ステップS14での算出結果に基づいて、SARの10秒平均値の最大値、または、SARの6分平均値の最大値が一番小さくなるパターンを最適なスキャン順序のパターンとして選択する。
なお、全てのパターンにおいて、SARの10秒平均値の最大値、SARの6分平均値の最大値の少なくともいずれかが安全基準値を超える場合、演算装置60は、その旨を表示装置64に表示させ、ステップS11に戻って操作者に撮像条件の再設定を促す。
【0087】
このステップS18での処理は第1の実施形態のステップS5と同様であるので、詳細な説明を省略する。この後、演算装置60は、ステップS19に処理を移行する。
【0088】
[ステップS19、S20]第1の実施形態のステップS6、S7と同様に撮像が行われ、得られたMR画像を順次表示される。
【0089】
以上が第2の実施形態のMRI装置20の動作説明であり、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
さらに、第2の実施形態では、操作者はスキャンの順序に条件を設定することができる(ステップS11)。従って、特殊な検査があることでスキャン順序に条件をつけたい場合にも対応することができる。例えば造影剤を注入後に撮像して血管を描出したMR画像と、造影剤を注入しないで所定の条件で撮像したMR画像とを比較したい場合、後者の撮像(スキャン)を前者よりも先に行う必要があるからである。
【0091】
また、時間平均SARが安全基準値に対して余裕がある場合、ステップS11で撮像条件の変更を許可されたスキャンの撮像条件を変更し、時間平均SARを安全基準値に近づける(ステップS17)。このため、SARが安全基準値を超えない範囲において、なるべくスライス枚数を多くする等の最適化した条件での撮像を行うことができる。
【0092】
<実施形態の補足事項>
[1]第1および第2の実施形態では、撮像後にどのスキャンのMR画像から順に表示させるかについて設定可能である例を述べた(図1のステップS1、図16のステップS11)。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。例えば、MRI装置20に接続されたネットワークを介して撮像後のMR画像を別の装置に転送する場合、転送先で表示される画像順も、ステップS1、S11で操作者が指定する順にしてもよい。
【0093】
[2]第1および第2の実施形態では、スキャンA、B、CまたはスキャンA’、B’、Cを間断なく連続的に行う例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。各スキャンA、B、Cの間に休止期間が入る場合にも本発明は適用可能であり、その場合、休止期間を考慮して第1の実施形態のステップS4と同様に時間平均SARを算出し、時間平均SARが最小となるスキャン順序を選択すればよい。
【0094】
[3]第1の実施形態のステップS5において、SARの10秒平均値の最大値、および、SARの6分平均値の最大値が共に安全基準値以下となるパターンが複数ある場合、6分平均においてSAR最大値が最も小さくなるパターンを自動的に選択する例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。
【0095】
SARの10秒および6分平均値の最大値が共に安全基準値以下となるパターンが複数ある場合、例えば、操作者が暫定的に設定したスキャン順序、初期設定されているスキャン順序、または、現在設定されているスキャン順序に対して、最も入れ替えが少ないパターンを演算装置60が自動的に選択してもよい。
【0096】
或いは、第1の実施形態のステップS5において全スキャンパターンにおけるSARの10秒平均値と6分平均値の時間変化のグラフを表示装置64に表示させ、操作者が表示装置64を見ながら入力装置62に対する操作によってスキャン順序のパターンを選択する構成としてもよい。
【0097】
[4]第2の実施形態のステップS18において、SARの10秒平均値の最大値、および、SARの6分平均値の最大値が共に安全基準値以下となるパターンが複数ある場合、当該複数のパターンにおけるスキャン順序やSARの時間変化のグラフを表示し、どのパターンで撮像するかを操作者に選択させてもよい。SARの最大値が安全基準値以下となりさえすれば、最初に入力したスキャンの順序と、最も入れ替えが少ないものを操作者が選びたい場合もあるからである。
【0098】
[5]第2の実施形態では、MRI装置20が撮像条件を自動的に最適化する例を述べた(ステップS17)。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。各スキャンにおける撮像条件の修正候補をいくつか表示し、その中から操作者が選択するようにしてもよい。例えば、時間平均SARが安全基準値に対し余裕があるパターンについて、増加できるスライス枚数を表示してもよい。
【0099】
或いは、スキャン順序の決定前に、全スキャンパターンにおけるSARの10秒平均値と6分平均値の時間変化のグラフを表示装置64に表示させ、操作者が表示装置64を見ながら入力装置62に対する操作によって撮像条件を編集できる構成としてもよい。この表示の際、例えば安全基準値を超える箇所のみ赤くする等によって識別し易くすることが好ましい。この場合、操作者が撮像条件を変更したら、SARの10秒平均値と6分平均値の時間変化を新たに算出して、そのグラフを再表示させ、同様に撮像条件を編集可能とすればよい。
【0100】
[6]第1および第2の実施形態では、10秒平均のSARと、6分平均のSARとの双方を算出し、これらの算出結果に基づいて最適なスキャン順序を選択する例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。
【0101】
具体的には、図2、図12に示すように、全スキャンA、B、C(または、A’、B’、C)のSAR強度がSARの10秒平均の安全基準値(12[W/kg])より低い場合、10秒平均SARについては、(撮像条件を変更しない限り)安全基準値を満たすことが明らかである。従って、このような場合(第1および第2の実施形態の場合)、演算装置60は、10秒平均のSARを算出せず、6分平均のSARの算出結果に基づいて最適なスキャン順序を選択してもよい。この場合、計算を簡略化できる。
【0102】
[7]第1および第2の実施形態では、本願出願時のIEC(International Electrotechnical Commission)規格に準じて、10秒平均のSARと、6分平均のSARとを算出する例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。将来の規格の変更の可能性などに合わせて、例えば3分平均のSARなど、上記実施形態とは時間を変えたSARを算出する構成としてもよい。
【0103】
[8]第1の実施形態と同様の原理により、時間平均SARが最小となるスキャン順序ではなく、傾斜磁場コイル26の温度上昇が最小となるスキャン順序を演算装置60が自動的に選択してもよい。傾斜磁場コイル26の材質に起因する物理的要因や、撮像領域に形成する3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを目標値にする制御の精度上の理由などから、傾斜磁場コイル26の温度にも上限値があるからである。
【0104】
具体的には例えば、図11に示す第1の実施形態のステップS2において、各スキャンA、B、Cに対し傾斜磁場パルスの強度や印加時間等を算出し、ステップS3でスキャンパターンのリストを作成する。この後、ステップS4では各スキャンパターンでの傾斜磁場コイル26の温度の時間変化をMRI装置20の回路構成や傾斜磁場コイル26の特性等に基づいて推定し、ステップS5では傾斜磁場コイル26がとりうる温度の推定値の最大値が最小となるスキャン順序を選択すればよい。その他の処理については、第1の実施形態のステップS1、S6、S7と同様でよいので重複する説明を省略する。
【0105】
以上に詳述した実施形態によれば、MRIにおいて複数のスキャンを連続的に行う場合に、SAR等の上限を有するパラメータの値が低くなるスキャン順序を選択しうる。
【0106】
[9]請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
【0107】
静磁場用磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28、制御系30の全体(図1参照)が、RFパルスを生成して被検体Pに送信すると共にMR信号を被検体Pから受信し、これに基づいて各スキャンにおける被検体PのMR画像の画像データを生成する機能は、請求項記載のイメージング部の一例である。
【0108】
複数のスキャンのスキャン順序のパターンのリストを作成して各パターンに対してSARを算出し、時間平均SARが最小となるパターンを選択する演算装置60の機能や、時間平均SARが安全基準値に対して余裕がある場合に撮像条件を最適化する演算装置60の機能は、請求項記載の演算部の一例である。
安全基準値は、請求項記載の上限値の一例である。
【0109】
第2の実施形態において安全基準値に対して余裕ありと判断した基準である「安全基準値の85%」は、請求項記載の所定値の一例である。
表示装置64は、請求項記載の表示部の一例である。
入力装置62は、請求項記載の入力部、表示順設定部、選択部の一例である。
【0110】
[10]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0111】
20 MRI装置
22 静磁場用磁石
24 シムコイル
26 傾斜磁場コイル
28 RFコイル
30 制御系
32 寝台
40 静磁場電源
42 シムコイル電源
44 傾斜磁場電源
46 RF送信器
48 RF受信器
50 シーケンスコントローラ
52 コンピュータ
60 演算装置
62 入力装置
64 表示装置
66 記憶装置
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核磁気共鳴を起こすためのRFパルスを被検体に送信すると共に前記RFパルスにより生じた核磁気共鳴信号を前記被検体から受信するスキャン動作を行う磁気共鳴イメージング装置であって、
前記被検体に対する複数の前記スキャン動作のスキャン順序の複数のパターンに対して、上限を有するパラメータの値をそれぞれ算出する演算部と、
前記演算部の算出結果に応じて前記複数のスキャン動作を行うことで、前記スキャン動作毎の画像データをそれぞれ生成するイメージング部と
を備えていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記パラメータとしてSARを算出するように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記演算部は、SARの算出対象となった前記複数のパターンの中から、SARの最大値が最小となる前記パターンを自動的に選択するように構成され、
前記イメージング部は、前記演算部が選択した前記パターンに従って前記複数のスキャン動作を連続的に行うように構成される
ことを特徴とする請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記演算部は、算出したSARが上限値を超えない前記パターンが複数ある場合、初期設定されている前記複数のスキャン動作のスキャン順序との入れ替えが最も少ない前記パターンを自動的に選択するように構成され、
前記イメージング部は、前記演算部が選択した前記パターンに従って前記複数のスキャン動作を連続的に行うように構成される
ことを特徴とする請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記演算部は、算出したSARが所定値を超えない前記パターンがある場合、SARが前記所定値を超えずに前記所定値に近づく方向で、前記複数のスキャン動作の少なくとも1つの撮像条件を修正するように構成されることを特徴とする請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記撮像条件を修正後、前記複数のパターンのそれぞれに対してSARを再度算出し、再度算出したSARの最大値が最小になる前記パターンを自動的に選択するように構成され、
前記イメージング部は、前記演算部が選択した前記パターンに従って前記複数のスキャン動作を連続的に行うように構成される
ことを特徴とする請求項5記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記撮像条件として、スライス枚数、フリップ角の少なくともいずれかを修正するように構成されることを特徴とする請求項6記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記複数のスキャン動作に対する撮像後の画像の表示順序を入力情報に基づいて設定する表示順設定部と、
前記複数のスキャン動作が行われた後、前記表示順設定部において設定された前記表示順序で、前記スキャン動作毎の前記画像データを前記画像として表示する表示部と
をさらに備えていることを特徴とする請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記複数のスキャン動作が行われる前に、前記演算部が算出したSARを前記複数のパターンについてそれぞれ表示する表示部と、SARの表示対象となった前記複数のパターンのいずれかを入力情報に基づいて選択する選択部とをさらに備え、
前記イメージング部は、前記選択部において選択された前記パターンに従って前記複数のスキャン動作を連続的に行うように構成される
ことを特徴とする請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記演算部は、10秒平均のSARと、6分平均のSARとを算出し、これらの算出結果に応じて、SARの算出対象となった前記複数のパターンの中からいずれかを自動的に選択するように構成されることを特徴とする請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記演算部は、6分平均のSARを算出し、この算出結果に応じて、SARの算出対象となった前記複数のパターンの中からいずれかを自動的に選択するように構成されることを特徴とする請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記複数のスキャン動作が行われる前に、入力情報に基づいて前記複数のスキャン動作の順序を制約する条件を設定する入力部をさらに備え、
前記演算部は、前記条件を満たす前記複数のパターンに対してSARをそれぞれ算出するように構成される
ことを特徴とする請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記演算部は、SARの算出対象となった前記複数のパターンの中から、SARの最大値が最小となる前記パターンを自動的に選択するように構成され、
前記イメージング部は、前記演算部が選択した前記パターンに従って前記複数のスキャン動作を連続的に行うように構成される
ことを特徴とする請求項12記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記演算部は、算出したSARが上限値を超えない前記パターンが複数ある場合、初期設定されている前記複数のスキャン動作のスキャン順序との入れ替えが最も少ない前記パターンを自動的に選択するように構成され、
前記イメージング部は、前記演算部が選択した前記パターンに従って前記複数のスキャン動作を連続的に行うように構成される
ことを特徴とする請求項12記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
前記演算部は、算出したSARが所定値を超えない前記パターンがある場合、SARが前記所定値を超えずに前記所定値に近づく方向で、前記複数のスキャン動作の少なくとも1つの撮像条件を修正するように構成されることを特徴とする請求項12記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項16】
前記演算部は、前記撮像条件を修正後、前記複数のパターンのそれぞれに対してSARを再度算出し、再度算出したSARの最大値が最小になる前記パターンを自動的に選択するように構成され、
前記イメージング部は、前記演算部が選択した前記パターンに従って前記複数のスキャン動作を連続的に行うように構成される
ことを特徴とする請求項15記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項17】
前記演算部は、前記被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイルの温度を前記パラメータとして算出するように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項18】
前記演算部は、前記複数のパターンの中から、前記傾斜磁場コイルの温度の最大値が最小となる前記パターンを自動的に選択するように構成され、
前記イメージング部は、前記演算部が選択した前記パターンに従って前記複数のスキャン動作を行うように構成される
ことを特徴とする請求項17記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項19】
核磁気共鳴を起こすためのRFパルスを被検体に送信すると共に前記RFパルスにより生じた核磁気共鳴信号を前記被検体から受信するスキャン動作を行う磁気共鳴イメージング装置であって、
前記被検体に対する複数の前記スキャン動作のスキャン順序の複数のパターンに対して、SARの値をそれぞれ算出する演算部と、
前記演算部の算出結果に応じて前記複数のスキャン動作を行うことで、前記スキャン動作毎の画像データをそれぞれ生成するイメージング部と
を備えていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項20】
核磁気共鳴を起こすためのRFパルスを被検体に送信すると共に前記RFパルスにより生じた核磁気共鳴信号を前記被検体から受信するスキャン動作を行う磁気共鳴イメージング方法であって、
前記被検体に対する複数の前記スキャン動作のスキャン順序の複数のパターンに対して、上限を有するパラメータの値をそれぞれ算出するステップと、
前記パラメータの値の算出結果に応じて複数の前記スキャン動作を行うことで、前記スキャン動作毎の画像データをそれぞれ生成するステップと
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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