説明

磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法

【課題】静脈の画像を効率良く収集すること。
【解決手段】実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、スキャン実行部と、画像処理部とを備える。スキャン実行部は、被検体内の対象部位を撮像した画像データを収集する複数種類のスキャンであって、第1スキャンと、第2スキャンと、第3スキャンとを、所定の順序で連続的に実行する。第1スキャンは、被検体の心拡張期に第1位相エンコード方向で画像データを収集する。第2スキャンは、被検体の心拡張期に第1位相エンコード方向と略直交する第2位相エンコード方向で画像データを収集する。第3スキャンは、被検体の心収縮期に第2位相エンコード方向で画像データを収集する。画像処理部は、スキャン実行部によって第1スキャン、第2スキャン、及び第3スキャンが実行された後、該複数種類のスキャンにて収集された複数の画像データを対象に所定の画像処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置(以下、適宜「MRI(Magnetic Resonance Imaging)システム」という)による撮像法のひとつに、造影剤を投与せずに静脈を造影する磁気共鳴静脈造影法(以下、適宜「MRV(Magnetic Resonance Venography)法」という)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−148463号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ono A, Murase K, Taniguchi T, Shibatani O, Takata S, Kobashi Y, Miyazaki M. “Deep vein thrombosis using non-contrast-enhanced MR venography with electro-cardiographically-gated three-dimensional half-Fourier FSE: preliminary experience.” MRM, vol.61:907-917, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、静脈の画像を効率良く収集することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、スキャン実行部と、画像処理部とを備える。前記スキャン実行部は、被検体内の対象部位を撮像した画像データを収集する複数種類のスキャンであって、前記被検体の心拡張期に第1位相エンコード方向で前記画像データを収集する第1スキャンと、前記被検体の心拡張期に前記第1位相エンコード方向と略直交する第2位相エンコード方向で前記画像データを収集する第2スキャンと、前記被検体の心収縮期に前記第2位相エンコード方向で前記画像データを収集する第3スキャンとを、所定の順序で連続的に実行する。前記画像処理部は、前記スキャン実行部によって前記第1スキャン、前記第2スキャン、及び前記第3スキャンが実行された後、該複数種類のスキャンにて収集された複数の画像データを対象に所定の画像処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係るMRIシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係るMRIシステムにより実行される処理手順を示すフローチャートである。
【図3】操作者によってプリセットされたSPADE(Single−shot Partial Dual Echo)法による画像データ処理を目的とする、画像データ収集処理と自動減算処理との実施形態における組合せ例を説明するための図である。
【図4】図4は、その他の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すMRI(Magnetic Resonance Imaging)システムは、架台部10(断面図にて示す)と、互いに接続される様々な関連のシステム構成要素20とを含む。少なくとも架台部10は、通常シールドルーム内に設置される。図1に示す1つのMRIシステムは、静磁場B0磁石12と、Gx、Gy及びGz傾斜磁場コイルセット14と、RF(Radio Frequency)コイルアセンブリ16との実質的に同軸円筒状の配置を含む。この円筒状に配置された要素の水平軸線に沿って、被検体テーブル11によって支持された被検体9の頭部を取り囲むように示された撮像ボリューム18がある。
【0009】
MRIシステム制御部22は、表示部24、キーボード/マウス26、及びプリンタ28に接続された入力/出力ポートを備える。言うまでもなく、表示部24は、制御入力もまた備えるような多様性のあるタッチスクリーンであってもよい。
【0010】
MRIシステム制御部22は、MRIシーケンス制御部30とインタフェース接続する。MRIシーケンス制御部30は、Gx、Gy及びGz傾斜磁場コイルドライバ32、並びに、RF送信部34及び送信/受信スイッチ36(同じRFコイルが送信及び受信の両方に使用されている場合)を順に制御する。被検体9に適切に装着された適切な電極(1つ又は複数)8は、MRIシステム制御部22に、ECG(electrocardiogram)同期信号や、脈波同期信号を出力する。MRIシーケンス制御部30は、MRIシーケンス制御部30の能力範囲の中で既に利用可能になっているMRIデータ収集シーケンスを実行に移して、心拡張期及び心収縮期ECG同期画像又は脈波同期画像を形成するのに適したプログラムコード構造38を備える。
【0011】
MRIシステム20は、表示部24に出力する処理された画像データを作成できるように、MRIデータ処理部42に入力を供給するRF受信部40を含む。また、MRIデータ処理部42を、画像再構成プログラムコード構造44及びMR画像記憶部46にアクセスできるように構成してもよい(例えば、実施形態及び画像再構成プログラムコード構造44に従った処理から得られたMRIデータを格納するために)。
【0012】
また、図1は、MRIシステムプログラム/データ格納部50の概要も示す。MRIシステムプログラム/データ格納部50に格納されるプログラムコード構造(例えば、GUI(Graphical User Interface)を介したプリセット操作者入力に基づいて自動的にMRV画像を形成するための)は、MRIシステムの様々なデータ処理構成要素にアクセス可能なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納される。当業者には自明であるが、プログラ/データ格納部50を細分化し、少なくとも一部分を、システム構成要素20の諸々の処理コンピュータのうちの、通常の動作においてかかる格納済みのプログラムコード構造を最も緊急に必要とするものに直接接続することができる(即ち、共有した形で格納し、MRIシステム制御部22に直接接続するのではない)。
【0013】
実際、当業者には自明であるが、図1の描写は、本明細書で後述する実施形態を実行できるように若干の変更を加えた一般的なMRIシステムの非常に高度に簡素化した図である。システム構成要素は、様々な論理収集の「ボックス(box)」に分割でき、通常、多数のデジタル信号処理装置(DSP(Digital Signal Processors))、超小型演算処理装置、特殊用途向け処理回路(例えば、高速A/D変換、高速フーリエ(Fourier)変換、アレイ(array)処理用等)を含む。これら処理装置のそれぞれは、通常、各クロックサイクル(clock cycle)(又は所定数のクロックサイクル)が発生すると、物理データ処理回路がある物理的状態から別の物理的状態へ進むクロック動作型の「ステートマシン(state machine)」である。
【0014】
処理回路(例えばCPU、レジスタ、バッファ、演算ユニット等)の物理状態が、動作中に、1つのクロックサイクルから別のクロックサイクルに前進的に変化するだけでなく、関連のデータ格納媒体(例えば、磁気格納媒体のビット格納部位)の物理状態も、かかるシステムの動作中に、1つの状態から別の状態に変換される。例えば、MR画像化再構成プロセスの終了時に、非一時的な物理的格納媒体の中のアレイ状のコンピュータ可読アクセス可能データ値格納部位は、何らかの前の状態(例えば、全てが一様に「0」値であること又は「1」値であることを表す物理状態)から新しい状態に変換されることになるであろう。この場合、かかるアレイの物理的部位のグループ化時の物理状態は、現実の物理事象及び状態(例えば、画像体積空間を覆う被検体の組織)を表すように、最小デジタル信号値と最大デジタル信号値との間で変化する。当業者であれば分かるように、かかるアレイ状の格納デジタルデータ値は、物理的構造を表し、更にそれを構成する。これは、命令レジスタへの書き込みとMRIシステムの1つ又は複数のCPUによる実行が逐次的に行われたときに、特定の動作状態のシーケンスを生じさせ、それをMRIシステム内部で遷移させる特定の構造のコンピュータ制御プログラムコードが行うことと同じである。
【0015】
以下の実施形態に係るMRIシステムは、データ収集や、MR画像の生成、MR画像の表示に関して、改良された手法を提供する。具体的には、実施形態に係るMRIシステムは、例えば、スキャン実行部と、画像処理部とを備える。スキャン実行部は、被検体内の対象部位を撮像した画像データを収集する複数種類のスキャンであって、第1スキャンと第2スキャンと第3スキャンとを、所定の順序で連続的に実行する。ここで、第1スキャンは、被検体の心拡張期に第1位相エンコード方向で画像データを収集するスキャンである。また、第2スキャンは、被検体の心拡張期に第1位相エンコード方向と略直交する第2位相エンコード方向で画像データを収集するスキャンである。また、第3スキャンは、被検体の心収縮期に第2位相エンコード方向で画像データを収集するスキャンである。また、画像処理部は、スキャン実行部によって第1スキャン、第2スキャン、及び第3スキャンが実行された後、これら複数種類のスキャンにて収集された複数の画像データを対象に所定の画像処理を実行する。
【0016】
また、実施形態に係るMRIシステムは、更に、受付部を備える。受付部は、スキャン実行部による複数種類のスキャンの実行に必要なパラメータ、及び、画像処理部による画像処理に必要なパラメータの入力を操作者から受け付ける。スキャン実行部は、受付部によって受け付けられたパラメータに従って複数種類のスキャンを連続的に実行する。また、画像処理部は、受付部によって受け付けられたパラメータに従って画像処理を実行する。なお、MRIシステムは、必ずしも受付部を備えなくてもよい。
【0017】
実施形態に係るMRIシステムは、後述するように、架台部10と、システム構成要素20とを備える。また、システム構成要素20は、自動化された磁気共鳴静脈造影法(MRV(Magnetic Resonance Venography)法)による撮像を実行するように構成された、少なくとも1つのプログラム(以下、適宜「自動MRVモジュール」という)を備える。上述したスキャン実行部、画像処理部、及び受付部は、例えば、自動MRVモジュール及び自動MRVモジュールによって制御される各部として備えられる。例えば、MRIシステムは、自動MRVモジュールを記憶部に格納し、後述するMRIシステム制御部22が記憶部から自動MRVモジュールを読み出して実行し、MRIシステムの各部を制御する。なお、実施形態は上述した形態に限られるものではない。
【0018】
実施形態に係るMRIシステムは、FBI(Fresh Blood Imaging)法を用いることができる。FBI法は、心電同期(ECG(electrocardiogram))又は脈波同期(PPG(Peripheral Pulse Gated))を用いるFASE(Fast Advanced Spin Echo) 3Dに基づく撮像法であり、同期信号(例えばR波)からの適切な遅延時間を設定し、心電同期又は脈波同期を用いて収集を行うことで、心臓から拍出される新しい血液を描出する。FBI法は、他の磁気共鳴血管撮像法(MRA(Magnetic Resonance Angiography)法)よりスキャン(scan)時間が短く、例えば1回のコロナル(coronal)断面の撮像によって、動脈血流及び静脈血流を取得する。また、FBI法は、不適切なECGのタイミング(timing)、血液の乱流、及び特異な血液充填といった、造影前提のMRA法における問題点を緩和する。FBI法の主な特徴は、(a)造影剤を必要としない点、(b)コロナル(coronal)断面やサジタル(sagittal)断面の撮像が可能であるので、短時間に広範囲の3Dデータを収集することができる点である。
【0019】
Flow−Spoiled FBI法を用いた、造影剤を投与しないMRV法は、二重の減算処理(サブトラクション(subtraction))を行う。具体的には、MRIシステムは、動脈の原画像又はMIP(Maximum Intensity Projection)画像(心収縮期画像を減算した後の心拡張期画像)を、更に、別の心拡張期画像から減算する。
【0020】
SPADE法は、特に腸骨領域において、静脈から動脈を分離することに有用である。SPADE法による磁気共鳴静脈造影を実現するためには、例えば、次の3つの画像データが収集される。例えば、2つの画像データは、SPEED(Swap Phase Encode Data)法により収集された心拡張期の画像データである。2つの画像データの内の1つの画像データは、位相エンコード(PE(Phase Encode))方向がHS(頭−足)方向となるように収集される。また、2つの画像データの内の他の1つの画像データは、位相エンコード方向が、HS(頭−足)方向と直交するRL(右−左)方向となるように収集される。また、残りの1つの画像データは、心収縮期の画像データであり、位相エンコード方向がRL(右−左)方向となるように収集される。なお、SPEED法とは、位相エンコード(Phase Encode)軸とリードアウト(Read Out)軸とを入れ替えて(位相エンコード方向を90°回転させて)同一断面の画像を収集し、MIP処理を用いて重ね合わせることで、画像の縦方向及び横方向に走行する血管の両方について、1枚の画像で高い描出能を実現する撮像法である。
【0021】
言い換えると、例えばSPADE法を用いた撮像において、適切な心収縮期や心拡張期のトリガを用いて、複数(例えば3つ)の画像データのセットが収集される。続いて、入れ子式の減算処理を適切に行うことによって、静脈のMRV画像が得られる。
【0022】
しかしながら、このような手法(例えばSPADE法)を用いた撮像においては、多数の画像データを収集する処理や、収集した画像データを相互関係をもって入れ子式に減算する処理の実行を、操作者が別々に操作・指示する必要があった。すなわち、例えば、操作者は、3つの画像データそれぞれを収集するために、画像データ毎に個別にMRIシステムを操作し、指示する必要があった。また、例えば、操作者は、MRIシステムを操作し、収集された3つの画像データの中から、画像処理の対象とする画像データを選択し、必要な減算処理の実行を指示する必要があった。これは、煩雑、且つ、誤り易いというだけでなく、解剖学的に誤った結果を導くおそれがある。すなわち、各画像データを収集するスキャンがそれぞれ独立していると、スキャン相互間の経過時間に起因して被検体が動いてしまうおそれがある。すると、この被検体の動きに起因して、各スキャンで収集された画像相互間に解剖学的な位置ずれ(ミスレジストレーション(mis-registrations))が無用に生じる可能性が、意に反して高まってしまうからである。
【0023】
このような課題に対処するために、実施形態に係るMRIシステムは、実質中断することなく、必要となる画像データの収集シーケンス全てを自動的に連続的に実行する(例えば、操作者がSPADE法を用いることを決定すると、MRIシステムは、直ちに、3つの画像データを連続して収集する)。すなわち、上述したように、スキャン実行部は、位相エンコード方向がHF(頭−足)方向となる心拡張期の画像データ(A)を収集する第1スキャンと、位相エンコード方向がRL(右−左)方向となる心拡張期の画像データ(B)を収集する第2スキャンと、位相エンコード方向がRL(右−左)方向となる心収縮期の画像データ(C)を収集する第3スキャンとを、所定の順序で連続的に実行する。ここで、「連続的に収集する」や「連続的に実行する」の意味であるが、スキャン実行部は、第1スキャン、第2スキャン、及び第3スキャンを、所定の順序において前段に位置付けられるスキャンの完了を契機に次段に位置付けられるスキャンを開始することで、連続的に実行する。各スキャンの間に、従来のような、操作者による操作や指示は含まれない。また、第1スキャン、第2スキャン、及び第3スキャンは、所定のスライスエンコード量分のデータ収集を複数心拍毎に繰り返す3次元スキャンであって、各スキャンのスライスエンコード方向は同じであることが望ましい。
【0024】
また、実施形態に係るスキャン実行部は、所定の順序として、少なくとも、被検体の心拡張期に画像データを収集する第1スキャン及び第2スキャンを連続的に実行する。すなわち、3つの画像データの内、2つの画像データは心拡張期に収集されるものであり、1つの画像データは心収縮期に収集されるものである。この点、TR(repetition time)をできるだけ一定にするという観点から、心拡張期に収集するスキャンを連続させることが望ましい。実施形態においては、第3スキャンが心収縮期に収集するものであるので、所定の順序は、例えば、第1スキャン、第2スキャン、第3スキャンの順序、あるいは、第3スキャン、第1スキャン、第2スキャンの順序、あるいは、第2スキャン、第1スキャン、第3スキャンの順序、あるいは、第3スキャン、第2スキャン、第1スキャンの順序が望ましい。
【0025】
画像データの収集後、続いて、MRIシステムは、必要となる減算処理を実行する。すなわち、上述したように、画像処理部は、スキャン実行部によって第1スキャン、第2スキャン、及び第3スキャンが実行された後、これらの複数種類のスキャンにて収集された複数の画像データを対象に所定の画像処理を実行する。また、実施形態に係る画像処理部は、所定の画像処理として、第2スキャンにて収集された画像データ(B)と第3スキャンにて収集された画像データ(C)との減算処理、及び、第1スキャンにて収集された画像データ(A)と減算処理によって得られた画像データとの減算処理を実行する。各減算処理の実行に、従来のような、操作者による操作や指示は必要とならない。
【0026】
なお、以下の実施形態においては、画像処理部が、上述した減算処理を行うことで出力画像であるMRV画像を生成する例を説明するが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、MRIシステムが備える画像処理部は、スキャン実行部によって収集された画像データに対する最小限の画像処理のみを行ってもよい。すなわち、MRIシステムによって収集された画像データは、例えばMRIシステム以外の他の画像処理装置に送られ、画像処理装置が、上述した減算処理を行ってMRV画像を生成してもよい。
【0027】
もっとも、実施形態に係るMRIシステムは、受付部を備え、操作者によるプリセット(例えば、「SPADE法による画像データ処理を目的とする」というレベルの指定を行う事前の操作・指示)を受け付ける。画像データ収集用に操作者が予め選択している可能性のある収集シーケンスであって続く種々の減算処理に用いられる収集シーケンスは、例えば、次のようなプリセットされた操作者の選定を含むことができる。なお、上述したスキャン実行部は、第1スキャン、第2スキャン、及び第3スキャンを連続的に実行することに加えて、第1スキャン、第2スキャン、及び第3スキャン以外の他のスキャンを更に連続的に実行してもよい。例えば、腸骨領域以外の大腿骨領域やふくらはぎ領域についても撮像を行う場合、MRIシステムは、大腿骨領域やふくらはぎ領域について実行すべき撮像の指定を事前に操作者から受け付け、これらの撮像を、例えば、第1スキャン、第2スキャン、及び第3スキャンに続けて連続的に実行してもよい。
・SPADE(画像データの収集及び減算について上記を参照)
・FSD(Flow Sensitive Dephasing)−FBI
・FSD−bSSFP(balanced Steady State Free Procession)
・FR(Flow Rephasing)−FBI
・FD(Flow Dephasing)−FBI
・1回又は複数回の減算処理によって静脈から動脈を分離することが可能な他の任意の収集シーケンス
【0028】
上述した第2〜第6のオプションについては、心収縮期や心拡張期の合間に、必要なデータの収集を選択的に行うことも可能である。
【0029】
後に更に詳細に説明するように、実施形態に係るMRIシステムは、上述した受付部の一例として、操作者が所望のMRV手順(例えば上述した例示的一覧を参照)を予め選択できるように、操作者による選択が可能なGUI(Graphical User Interface)を提供する。このようにすることで、所望の画像データ収集処理、減算処理、及びMIP処理等の他の関連処理を全て、操作者がプリセットしておくことが可能になる。続いて、MRIシステムは、自動的に次の段階に進み、必要となる画像データの収集シーケンス及び後続のデータ処理(例えば減算処理)全てを効率的に遂行する。この結果、通常煩雑な操作者による多数の制御操作を低減するのみならず、得られるMRV画像の適時性及び画質を向上することが可能になる(例えば、被検体が動くことによって画像データ相互間の血管の位置ずれを引き起こす可能性を低減することによって)。
【0030】
図2は、実施形態に係るMRIシステムにより実行される処理手順を示すフローチャートである。図2に示すように、実施形態に係るMRIシステムの自動MRVモジュールは、例えば、操作者やMRIシステムがプログラムを適切に実行することによって開始する。
【0031】
MRIシステムは、操作者によるMRVパラメータの選択が完了したか否かを判定する(ステップS101)。図2において、ボックス200は、操作者によるプリセットのためのGUIの一例を示すものである。ここで、被検体の腸骨領域が撮像の対象となる場合、実施形態において、操作者は、おそらく上記SPADE法を選択することになるであろう。一方、被検体の大腿骨が撮像の対象となる場合、実施形態において、操作者は、ボックス200に示される他の選択肢等を選択し得ることになるであろう。同様に、被検体のふくらはぎ領域が撮像の対象となる場合、実施形態において、操作者は、ボックス200に示される他の選択肢等を選択し得ることになるであろう。操作者は、これらをプリセットすることができる。なお、操作者によるプリセットが可能なこのMRVパラメータの一覧表200は、単に例示的のものに過ぎず、いなかる態様においても、網羅的であることを意図するものでもなければ、限定することを意図するものでもない。
【0032】
MRIシステムは、操作者によるMRVパラメータの選択が完了したと判定すると(ステップS101肯定)、ステップS102の処理に移行する。そして、MRIシステムは、自動的に、且つ、無用な時間遅延も中断も間にはさむことなく、複数の収集シーケンスを実行する(例えば、被検体が動くことによって画像データ相互間の血管の位置ずれを引き起こすリスクを最小限に抑えるように)。実施形態に係るMRIシステムは、基本的には、可能な限り「同時に」複数の画像を撮影する。
【0033】
なお、MRIシステムは、ステップS102からステップS104に、直接的且つ自動的に移行し得るが、ステップS102において複数の収集シーケンスの実行を完了した後、ステップS103において操作者によるオプショナルな指示の受け付けを介在させてもよい。いずれにせよ、MRIシステムは、ステップS104の処理を開始し、必要な減算処理を自動的に実行することで、所望のMRV画像を生成する(すなわち、操作者のプリセットに従って)。その後、MRIシステムは、ステップS104において生成したMRV画像を格納し、表示し、あるいは何らかの遠隔システム、拠点等に移出してから、処理を終了する。
【0034】
図3は、操作者によってプリセットされたSPADE法による画像データ処理を目的とする、画像データ収集処理と自動減算処理との実施形態における組合せ例を説明するための図である。図3に示すように、例えば、実施形態に係るMRIシステムは、心拡張期の画像データ1(A)、心拡張期の画像データ2(B)、及び心収縮期の画像データ(C)を、自動的に連続して収集する。続いて、MRIシステムは、心拡張期の画像データ2(B)から心収縮期の画像データ(C)を減算することで動脈画像(減算画像1(D))を生成する処理を自動的に行う。次に、MRIシステムは、生成した動脈画像を心拡張期の画像データ1(A)から減算することで所望のMRV画像(減算画像2(E))を生成する処理を自動的に行う。
【0035】
SPADE法(例えば、腸骨領域に好適)による画像データ処理を目的として画像データを収集する場合、MRIシステムは、収集のためのスキャンを少なくとも3種類行う。例えば、MRIシステムは、位相エンコード方向がHF(頭−足)方向となる画像データを心拡張期中に収集するスキャン、位相エンコード方向がRL(右−左)方向となる画像データを心拡張期中に収集するスキャン、及び、位相エンコード方向がRL(右−左)方向となる画像データを心収縮期中に収集するスキャンの3種類を行う。腸骨領域以外の他の領域(例えば、大腿骨領域及びふくらはぎ領域)について画像データを収集する場合は、MRIシステムは、収集のためのスキャンとして、FBI、FSD−FBI、FSD−bSSFP、FR−FBI、又はFD−FBI等を選択肢として選択し得る(なお、これらは一例に過ぎず、心収縮期画像データのみを収集する、心収縮期画像データ及び心拡張期画像データの両方を収集する目的で選択可能な収集シーケンスは、他にも存在する)。
【0036】
また、SPADE法による画像データ処理を目的とする場合、MRIシステムは、心拡張期画像(位相エンコード方向はRL(右−左)方向)から、心収縮期画像(位相エンコード方向はRL(右−左)方向)を減算した画像を、更に心拡張期画像(位相エンコード方向はHF(頭−足)方向)から減算し、その後、MIP処理を行う。
【0037】
なお、FBI、FD−FBI、又はFSD−FBIといった他のMRV法による処理は、心収縮期画像及び心拡張期画像の両方に対して減算を行い、その後にMIP処理を行うことになるであろう(心収縮期画像だけが使用される場合、MIP処理だけが必要とされ、又は所望される場合がある)。
【0038】
実施形態に係るMRIシステムは、MRV用のGUIを提供する。また、MRIシステムは、必要となる画像データの収集シーケンスを、全て「同時に」実行する(すなわち、SPADE法が選択されて画像データを収集する場合、無用な時間遅延も中断も存在しない)。また、MRIシステムは、複数の画像データを収集した後、必要な減算処理を、全て自動的に実行する。なお、必要な減算処理は、操作者によって事前選択されており(例えば、「SPADE法による画像データ処理を目的とする」というレベルの事前選択として)、MRIシステムは、この事前選択に従って減算処理を行う。なお、関連する収集シーケンスとしては、FD−FBI、FSD−FBI、FSD−bSSFP、静脈から動脈を分離することを可能にする他の任意の収集シーケンス等が考えられる。
【0039】
MRIシステムは、操作者による選択が可能なGUIを提供することにより、操作者は、SPADE、FS−FBI、FSD−FBI、及びFSD−bSSFP等を選択することが可能になる。減算処理やMIP処理等のステップは全てプリセットされる結果、MRIシステムは、これらを自動的に処理する。
【0040】
図4は、その他の実施形態を説明するための図である。図4に示すように、静脈造影法を選択した結果は、動脈又は静脈のいずれかの出力画像に帰着することになる。MRIシステムは、例えば、動脈画像又は静脈画像の出力選択を操作者から受け付けることで処理を開始し(ステップS201)、3種類の画像データの収集シーケンスを連続的に実行する(ステップS202)。例えば、MRIシステムは、位相エンコード方向がHF(頭−足)方向となる画像データ(A)を心拡張期中に収集する第1スキャン、位相エンコード方向がRL(右−左)方向となる画像データ(B)を心拡張期中に収集する第2スキャン、及び、位相エンコード方向がRL(右−左)方向となる画像データ(C)を心収縮期中に収集する第3スキャンの3種類のスキャンを連続的に実行する。次に、MRIシステムは、画像データ(B)から画像データ(C)を減算することで動脈画像(D)を生成する(ステップS203)。ここで、静脈画像のみならず動脈画像も出力画像として操作者が要求している場合、MRIシステムは、ステップS203において得られた動脈画像(D)に対してMIP処理を実行し(ステップS204)、動脈のMIP画像を出力する(ステップS205)。また、図4に示すように、MRIシステムは、操作者の選択に応じてステップS206に分岐し、生成した動脈画像(D)を画像データ(A)から減算することで静脈画像(E)を生成する(ステップS206)。そして、MRIシステムは、ステップS206において得られた静脈画像(E)に対してMIP処理を実行し(ステップS207)、静脈のMIP画像を出力する(ステップS208)。こうして、MRIシステムは、動脈画像及び静脈画像の両方を出力する。
【0041】
いずれにせよ、MRIシステムは、ステップS204及びステップS207においてMIP処理を実行し、ステップS205及びステップS208において、最終出力である動脈のMIP画像及び静脈のMIP画像それぞれを形成する。前の実施形態と同様、MRIシステムは、これらの最終出力画像を、表示部や、一時的でないデジタル格納媒体に出力してもよければ、画像の発生源であるMRIシステムの外に移出しても構わない。
【0042】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法によれば、静脈の画像を効率良く収集することが可能になる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
8 電極
9 被検体
10 架台
11 被検体テーブル
12 静磁場B0磁石
14 Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルセット
16 RFコイルアセンブリ
18 撮像ボリューム
20 システム構成要素
22 MRIシステム制御部
24 表示部
26 キーボード/マウス
28 プリンタ
30 MRIシーケンス制御部
32 Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ
34 RF送信部
36 送信/受信スイッチ
38 MRIデータ取得プログラムコード構造
40 RF受信部
42 MRIデータ処理部
44 画像再構成プログラムコード構造
46 MR画像記憶部
50 プログラム/データ格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内の対象部位を撮像した画像データを収集する複数種類のスキャンであって、前記被検体の心拡張期に第1位相エンコード方向で前記画像データを収集する第1スキャンと、前記被検体の心拡張期に前記第1位相エンコード方向と略直交する第2位相エンコード方向で前記画像データを収集する第2スキャンと、前記被検体の心収縮期に前記第2位相エンコード方向で前記画像データを収集する第3スキャンとを、所定の順序で連続的に実行するスキャン実行部と、
前記スキャン実行部によって前記第1スキャン、前記第2スキャン、及び前記第3スキャンが実行された後、該複数種類のスキャンにて収集された複数の画像データを対象に所定の画像処理を実行する画像処理部と
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記スキャン実行部は、前記第1スキャン、前記第2スキャン、及び前記第3スキャンを、前記所定の順序において前段に位置付けられるスキャンの完了を契機に次段に位置付けられるスキャンを開始することで連続的に実行することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記所定の画像処理として、前記第2スキャンにて収集された画像データと前記第3スキャンにて収集された画像データとの減算処理、及び、前記第1スキャンにて収集された画像データと前記減算処理によって得られた画像データとの減算処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記所定の画像処理としてMIP(Maximum Intensity Projection)処理を更に実行することを特徴とする請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記スキャン実行部は、前記所定の順序として、少なくとも、被検体の心拡張期に画像データを収集する前記第1スキャン及び前記第2スキャンを連続的に実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記スキャン実行部による複数種類のスキャンの実行に必要なパラメータ、及び、前記画像処理部による出力画像の生成に必要なパラメータの入力を操作者から受け付ける受付部を更に備え、
前記スキャン実行部は、前記受付部によって受け付けられたパラメータに従って前記複数種類のスキャンを連続的に実行し、
前記画像処理部は、前記受付部によって受け付けられたパラメータに従って前記画像処理を実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記スキャン実行部は、前記第1スキャン、前記第2スキャン、及び前記第3スキャンを連続的に実行することに加えて、前記第1スキャン、前記第2スキャン、及び前記第3スキャン以外の他のスキャンを更に連続的に実行することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
磁気共鳴イメージング装置で実行される磁気共鳴イメージング方法であって、
被検体内の対象部位を撮像した画像データを収集する複数種類のスキャンであって、前記被検体の心拡張期に第1位相エンコード方向で前記画像データを収集する第1スキャンと、前記被検体の心拡張期に前記第1位相エンコード方向と略直交する第2位相エンコード方向で前記画像データを収集する第2スキャンと、前記被検体の心収縮期に前記第2位相エンコード方向で前記画像データを収集する第3スキャンとを、所定の順序で連続的に実行するスキャン実行工程と、
前記スキャン実行工程によって前記第1スキャン、前記第2スキャン、及び前記第3スキャンが実行された後、該複数種類のスキャンにて収集された複数の画像データを対象に所定の画像処理を実行する画像処理工程と
を含んだことを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。
【請求項9】
被検体内の対象部位を撮像した画像データを収集する複数種類のスキャンであって、前記被検体の心拡張期に第1位相エンコード方向で前記画像データを収集する第1スキャンと、前記被検体の心拡張期に前記第1位相エンコード方向と略直交する第2位相エンコード方向で前記画像データを収集する第2スキャンと、前記被検体の心収縮期に前記第2位相エンコード方向で前記画像データを収集する第3スキャンとを、所定の順序で連続的に実行するスキャン実行部を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−101040(P2012−101040A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223599(P2011−223599)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】