磁気共鳴イメージング装置
【課題】位相エンコード方向の位相ずれによって生じる画像劣化を防ぐこと。
【解決手段】実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置では、実行部は、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加する第1のプリスキャンと、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、第1のプリスキャンと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャンで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する第2のプリスキャンとを実行する。算出部は、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、位相エンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する。補正部は、算出された補正量に基づいて本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。
【解決手段】実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置では、実行部は、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加する第1のプリスキャンと、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、第1のプリスキャンと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャンで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する第2のプリスキャンとを実行する。算出部は、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、位相エンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する。補正部は、算出された補正量に基づいて本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置に関する撮像法として、高速スピンエコー(Fast Spin Echo:FSE)法がある。このFSE法は、被検体に対してフリップパルスを印加した後に複数のフロップパルスを順次印加することで、エコートレインと呼ばれる複数のエコー信号を収集する撮像法である。ここでいうフリップパルスとは、被検体内の原子核スピンを励起するためのRF(Radio Frequency)パルスである。また、フロップパルスとは、原子核スピンの位相をリフォーカスするためのRFパルスである。
【0003】
かかるFSE法では、複数のRFパルスが印加されることから、スピンエコーとともにスティミュレイテッドエコーが生成される。そして、このスティミュレイテッドエコーによって、収集されるエコー信号に位相ずれが生じる場合がある。このようなエコー信号の位相ずれは、感度むらや信号低下、ゴーストなどの画質劣化を生じさせる原因となる。
【0004】
このような画質劣化を防ぐため、一般的には、エコー信号に生じる位相差を測定するためのプリスキャンが本スキャンの前に実行され、プリスキャンによって測定された位相差に基づいて本スキャン用のパルスシーケンスが補正される。この場合には、例えば、プリスキャンにおいて、スティミュレイテッドエコーをキャンセルするパルスシーケンスが実行され、スピンエコーのみが収集される。そして、プリスキャンによって収集されたスピンエコーのうち1番目及び2番目のエコー信号がリードアウト方向にフーリエ変換され、1番目のエコー信号と2番目のエコー信号との間の0次及び1次の位相差が算出される。その後、算出された0次及び1次の位相差からリードアウト方向及びスライス選択方向の位相ずれを補正するための補正量が算出され、算出された補正量に基づいて本スキャン用のパルスシーケンスが変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6369568号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、位相エンコード用傾斜磁場による渦電流の影響で位相エンコード方向に生じる位相ずれを補正することができず、その位相ずれによって画質劣化が生じてしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、実行部と、算出部と、補正部とを備える。実行部は、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加する第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、前記第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンとをそれぞれ実行する。算出部は、前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する。補正部は、前記算出部により算出された前記補正量に基づいて前記本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示した計算機システムの詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る本スキャン用のパルスシーケンスを示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスを示す図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスを示す図である。
【図6】図6は、第1の実施形態に係るシーケンス補正部によって行われる位相ずれの補正を説明するための図(1)である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係るシーケンス補正部によって行われる位相ずれの補正を説明するための図(2)である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われる位相ずれ補正の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、第1の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスの変形例を示す図である。
【図10】図10は、第1の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスの変形例を示す図である。
【図11】図11は、第2の実施形態の変形例を説明するための図である。
【図12】図12は、第2の実施形態に係る第3のプリスキャン用の第3のパルスシーケンスを示す図である。
【図13】図13は、第2の実施形態に係るシーケンス補正部によって行われる位相ずれの算出を説明するための図である。
【図14】図14は、第1及び第2の実施形態の変形例を説明するための図である。
【図15】図15は、第3の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスを示す図である。
【図16】図16は、第3の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスを示す図である。
【図17】図17は、第3の実施形態に係るエコー信号の収集を説明するための図である。
【図18】図18は、第4の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスを示す図である。
【図19】図19は、第4の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面に基づいて、磁気共鳴イメージング装置の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態では、磁気共鳴イメージング装置をMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と呼ぶ。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成を示す図である。図1に示すように、このMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9、シーケンス制御部10及び計算機システム20を備える。
【0011】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0012】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
【0013】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0014】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、後述する寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、制御部26による制御のもと、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0015】
送信RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する。送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信RFコイル6に送信する。受信RFコイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、上記の高周波磁場の影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。この受信RFコイル8は、磁気共鳴信号を受信すると、その磁気共鳴信号を受信部9へ出力する。
【0016】
受信部9は、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号データを生成する。この受信部9は、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによってMR信号データを生成する。このMR信号データには、前述したスライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grによって、位相エンコード方向、リードアウト方向、スライスエンコード方向の空間周波数の情報が対応付けられてk空間に配置される。そして、MR信号データを生成すると、受信部9は、そのMR信号データをシーケンス制御部10へ送信する。
【0017】
シーケンス制御部10は、計算機システム20から送信されるシーケンス実行データに基づいて、傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動することによって、被検体Pのスキャンを実行する。ここで、シーケンス実行データとは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信RFコイル6に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部9が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、被検体Pのスキャンを実行するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。なお、シーケンス制御部10は、シーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動した後に、受信部9からMR信号データが送信されると、そのMR信号データを計算機システム20へ転送する。
【0018】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、計算機システム20は、MRI装置100が有する各部を駆動することで、被検体Pのスキャンや画像再構成などを行う。この計算機システム20は、インタフェース部21、画像再構成部22、記憶部23、入力部24、表示部25及び制御部26を有する。
【0019】
インタフェース部21は、シーケンス制御部10との間で授受される各種信号の入出力を制御する。例えば、このインタフェース部21は、シーケンス制御部10に対してシーケンス実行データを送信し、シーケンス制御部10からMR信号データを受信する。MR信号データを受信すると、インタフェース部21は、各MR信号データを被検体Pごとに記憶部23に格納する。
【0020】
画像再構成部22は、記憶部23によって記憶されたMR信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体P内における所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを生成する。
【0021】
記憶部23は、後述する制御部26によって実行される処理に必要な各種データや各種プログラムなどを記憶する。例えば、記憶部23は、インタフェース部21によって受信されたMR信号データや、画像再構成部22によって生成されたスペクトラムデータや画像データなどを、被検体Pごとに記憶する。
【0022】
入力部24は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。この入力部24としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0023】
表示部25は、制御部26による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する。この表示部25としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0024】
制御部26は、図示していないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、MRI装置100の全体制御を行う。この制御部26は、例えば、入力部24を介して操作者から入力される撮像条件に基づいて各種のシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス実行データをシーケンス制御部10に送信することによってスキャンを制御する。また、制御部26は、スキャンの結果としてシーケンス制御部10からMR信号データが送られた場合に、そのMR信号データに基づいて画像を再構成するよう画像再構成部22を制御する。
【0025】
以上、第1の実施形態に係るMRI装置100の構成について説明した。このような構成のもと、MRI装置100は、第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンとを実行する。ここで、第1のプリスキャンは、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加するものである。また、第2のパルスシーケンスは、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加するものである。そして、MRI装置100は、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する。また、MRI装置100は、補正量算出部26cにより算出された補正量に基づいて、本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。
【0026】
すなわち、第1の実施形態に係るMRI装置100は、位相エンコード用傾斜磁場を印加しない第1のプリスキャンと、位相エンコード用傾斜磁場を印加する第2のプリスキャンとをそれぞれ実行し、第1のプリスキャンにより得られたエコー信号と第2のプリスキャンにより得られたエコー信号との間の位相ずれに基づいて、本スキャン用のパルスシーケンスの補正量を算出する。したがって、第1の実施形態によれば、位相エンコード方向の位相ずれによって生じる画像劣化を防ぐことができる。以下では、かかるMRI装置100が有する機能について詳細に説明する。
【0027】
図2は、図1に示した計算機システム20の詳細な構成を示す機能ブロック図である。図2では、計算機システム20が有する機能部のうち、インタフェース部21、記憶部23、及び制御部26を示している。
【0028】
記憶部23は、シーケンス実行データ記憶部23aと、MR信号データ記憶部23bとを有する。シーケンス実行データ記憶部23aは、後述する撮像条件設定部26aにより生成されるシーケンス実行データを記憶する。MR信号データ記憶部23bは、インタフェース部21によって受信されたMR信号データを記憶する。
【0029】
制御部26は、撮像条件設定部26a、プリスキャン実行部26b、補正量算出部26c、シーケンス補正部26d、及び本スキャン実行部26eを有する。
【0030】
撮像条件設定部26aは、操作者によって入力部24を介して入力された撮像条件に基づいて、撮像で用いられるパルスシーケンスを定義したシーケンス実行データを生成する。例えば、撮像条件設定部26aは、操作者によってFSE法の撮像条件が入力された場合には、以下で説明する本スキャン用のパルスシーケンス、第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンス、及び、第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスそれぞれについて、シーケンス実行データを生成する。
【0031】
図3は、第1の実施形態に係る本スキャン用のパルスシーケンスを示す図である。図3において、「RF」は、励起用のフリップパルス及びリフォーカス用のフロップパルスが印加されるタイミングを示している。また、「Gss」はスライス選択用傾斜磁場の印加タイミング及び強度を示しており、「Gro」はリードアウト用傾斜磁場の印加タイミング及び強度を示しており、「Gpe」は位相エンコード用傾斜磁場の印加タイミング及び強度を示している。なお、図3では、1つのスライス選択に関するパルスシーケンスのみを示し、スライスエンコードについては図示を省略している。また、「ETS(Echo Train Spacing)」は、エコー間隔を示している。
【0032】
図3に示すように、本スキャン用のパルスシーケンスは、一般的なFSE法のパルスシーケンスである。図3に示すように、本スキャン用のパルスシーケンスは、フリップパルスfliが印加された後に、複数のフロップパルスflo1、flo2・・・flo9、flo10、flo11・・・を順次印加することで、複数のエコー信号Echo1、Echo2・・・Echo9、Echo10、Echo11・・・を収集する。なお、図3に示すパルスシーケンスは、10番目に収集されるエコー信号Echo10で位相エンコード用傾斜磁場がゼロになるように設定された場合の例である。
【0033】
図4は、第1の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスを示す図である。図4に示すように、第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスは、図3に示した本スキャン用のパルスシーケンスにおいて、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加するようにしたものである。
【0034】
ここで、第1のパルスシーケンスは、本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになる期間と同じ期間又は該期間の近傍で収集される奇数番目のエコー信号以降でサンプリング用傾斜磁場を印加する。例えば、図3に示したように、本スキャンにおいて、10番目に収集されるエコー信号で位相エンコード用傾斜磁場がゼロになるようにパルスシーケンスが設定されていたとする。その場合には、図4に示すように、第1のパルスシーケンスは、9番目のエコー信号Echo9でサンプリング用傾斜磁場sp1を印加し、10番目のエコー信号Echo10でサンプリング用傾斜磁場sp2を印加するように設定される。
【0035】
なお、第1のパルスシーケンスでは、9番目のエコー信号Echo9からエコー信号が収集されるように、フリップパルスfliと最初のフロップパルスflo1との間にpre−dephase傾斜磁場pdが印加される。さらに、第1のパルスシーケンスでは、スティミュレイテッドエコーがキャンセルされ、スピンエコーのみが収集されるように設定される。例えば、米国特許第5818229に記載された方法を用いることができる。この方法では、リフォーカス用のフロップパルスの位相をπ,π,π,π・・・と変えながら収集された1ショット目のエコー信号と、π,−π,π,−π・・・と変えながら収集された2ショット目のエコー信号とを加算することで、スピンエコー成分のみが取り出される。または、1ショット目のエコー信号から2ショット目のエコー信号を減算することで、スティミュレイテッドエコー成分のみを取り出し、取り出したスティミュレットエコー成分がスピンエコー成分の代わりに用いられてもよい。
【0036】
図5は、第1の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスを示す図である。図5に示すように、第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスは、図4に示した第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する。
【0037】
ここで、第2のパルスシーケンスは、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、サンプリング用傾斜磁場を印加する手前の偶数番目のエコーまで、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する。例えば、図4に示したように、9番目のエコー信号以降でサンプリング用傾斜磁場を印加するように第1のパルスシーケンスが設定されていたとする。その場合には、図5に示すように、第2のパルスシーケンスは、8番目のエコー信号まで、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加するように設定される。
【0038】
例えば、第2のパルスシーケンスは、本スキャン用のパルスシーケンスで使用する複数の位相エンコードのうちで、平均強度近傍の位相エンコード用傾斜磁場を印加するものである。例えば、位相エンコードMatrixが256で19エコー収集の場合、k空間を埋めるために256/19=13ショットが必要になる。この場合には、第2のパルスシーケンスは、平均の位相エンコード用傾斜磁場強度を持つショット(シーケンシャルに位相エンコードを埋める場合は中心ショット(7ショット))で印加される位相エンコード用傾斜磁場を印加するように設定される。
【0039】
また、第1及び第2のプリスキャン用のサンプリングピッチ及びサンプリング用の撮像領域に関して、撮像領域の中心は本スキャンの位相エンコード方向の撮像領域の中心と同じであることが望ましいが、サンプリングピッチ、及び撮像領域は本スキャンと同じでもよいし、異なっていても構わないが、望ましくは、本スキャンの位相エンコード方向の撮像領域と本スキャンのリードアウト方向の撮像領域のうちの大きい方をプリスキャンの撮像領域とすれば、収集及び処理にとって好ましい。
【0040】
また図4及び図5で本スキャンと同様の形状でpre−dephasing傾斜磁場とサンプリング傾斜磁場を印可したが、エコーが収集できれば他の形状でも構わない。例えば、pre−dephasing傾斜磁場をなくし、sp1及びsp2の前後でsp1及びsp2の半分の面積で逆符号の傾斜磁場を印可してもよい。
【0041】
また本スキャンのリードアウト方向傾斜磁場がフローコンペンセーションタイプの場合、プリスキャン用のパルスシーケンスのサンプリング傾斜磁場は、位相エンコードの有りと無しで位相ずれを収集するため、フローコンペンセーションタイプでなくてもよい。
【0042】
図2の説明にもどって、プリスキャン実行部26bは、第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンとをそれぞれ実行する。
【0043】
具体的には、プリスキャン実行部26bは、撮像条件設定部26aによって第1のプリスキャン用及び第2のプリスキャン用のシーケンス実行データがそれぞれ生成されると、まず、第1のシーケンス実行データをシーケンス実行データ記憶部23aから読み出す。そして、プリスキャン実行部26bは、読み出した第1のシーケンス実行データをインタフェース部21経由でシーケンス制御部10に送信することで、第1のプリスキャンを実行する。例えば、プリスキャン実行部26bは、図4に示したパルスシーケンスを定義したシーケンス実行データをシーケンス制御部10に送信することで、第1のプリスキャンを実行する。
【0044】
そして、第1のプリスキャンの実行が終了した後に、プリスキャン実行部26bは、第2のシーケンス実行データをシーケンス実行データ記憶部23aから読み出し、読み出した第2のシーケンス実行データをインタフェース部21経由でシーケンス制御部10に送信することで、第2のプリスキャンを実行する。例えば、プリスキャン実行部26bは、図5に示したパルスシーケンスを定義したシーケンス実行データをシーケンス制御部10に送信することで、第2のプリスキャンを実行する。
【0045】
なお、プリスキャン実行部26bは、先に第2のプリスキャンを実行し、その後、第1のプリスキャンを実行してもよい。
【0046】
補正量算出部26cは、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と、第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する。
【0047】
具体的には、補正量算出部26cは、プリスキャン実行部26bによって第1のプリスキャン及び第2のプリスキャンが実行された後に、各プリスキャンにより収集されたエコー信号に関するMR信号データをMR信号データ記憶部23bから読み出す。その後、補正量算出部26cは、読み出した各MR信号データを位相エンコード方向にフーリエ変換した後に、1次の位相差を算出する。さらに、補正量算出部26cは、算出した1次の位相差を用いて各エコー信号の1次の位相を補正し、その後、各エコー信号の位相平均を求めることで、0次の位相差を算出する。ここで、位相差を算出する領域は、ユーザーが指定した位相エンコード方向の撮像領域内で行うことが望ましい。たとえば、本スキャンのリードアウト方向の撮像領域が25cmで、位相エンコード方向の撮像領域が20cmで、プリスキャンの撮像領域を25cmで収集した場合、20cmの領域で位相差を算出すればよい。
【0048】
FSE法では、先に発生したエコー信号に対して印加された位相エンコード用傾斜磁場の作るデフェーズ分が、次に発生するするエコー信号に加わり、次に観測するエコーに位相差を生じる。この位相差は、場所の1次関数になるので、1次の位相差と呼ばれる。また、コイル配置の不整合などによって、傾斜磁場は0次項(B0成分)を含む。この傾斜磁場の0次項は、場所依存性のない均一成分ではあるが、結果的に渦電流のような指数関数で落ちる時間特性を有し、位相差を生じる原因となる。この位相差は0次の位相差と呼ばれる。
【0049】
ここで、補正量算出部26cは、第1のプリスキャンにより収集されたエコー信号における1次及び0次の位相差と、第2のプリスキャンにより収集されたエコー信号における1次及び0次の位相差とをそれぞれ算出する。そして、補正量算出部26cは、算出した各位相差の差分を算出する。この差分が、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれとなる。
【0050】
例えば、図4に示した第1のパルスシーケンス及び図5に示した第2のパルスシーケンスがそれぞれ実行されたとする。その場合には、補正量算出部26cは、図4に示した9番目のエコー信号Echo9と10番目のエコー信号Echo10との間の位相差p1と、図5に示した9番目のエコー信号Echo9と10番目のエコー信号Echo10との間の位相差p2とをそれぞれ算出する。そして、補正量算出部26cは、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれp2−p1を補正量として算出する。
【0051】
なお、ここでは、補正量算出部26cは、9番目のエコー信号と10番目のエコー信号とを補正量の算出に使用したが、さらに11番目以降の複数のエコーを使用してもよい。例えば、補正量算出部26cは、第1のパルスシーケンスの9番目と10番目の位相差をp1、11番目と10番目の位相差をp1_2、11番目と12番目の位相差をp1_3として、第2のパルスシーケンスの9番目と10番目の位相差をp2、11番目と10番目の位相差をp2_2、11番目と12番目の位相差をp2_3として、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれを(p2+p2_2+p2_3)/3−(p1+p1_2+p1_3)/3としてもよい。
【0052】
シーケンス補正部26dは、補正量算出部26cにより算出された位相ずれに基づいて、本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。具体的には、シーケンス補正部26dは、補正量算出部26cによって位相ずれが算出されると、算出された位相ずれに基づいて、シーケンス実行データ記憶部23aに記憶されている本スキャン用のシーケンス実行データを補正する。
【0053】
ここで、シーケンス補正部26dは、補正量算出部26cによって算出された位相ずれがゼロになるように、本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。このとき、例えば、シーケンス補正部26dは、1次の位相差に関しては、フリップパルスとフロップパルスとの間に補正傾斜磁場を印加するように、本スキャン用のパルスシーケンスを変更する。なお、シーケンス補正部26dは、本スキャン用のパルスシーケンスにおけるリワインド用傾斜磁場又は位相エンコード用傾斜磁場の強度を変更することで、位相ずれがゼロになるようにしてもよい。また、例えば、シーケンス補正部26dは、1次の位相差に関しては、フロップパルスの位相を変更することで、位相ずれがゼロになるようにする。
【0054】
このように、シーケンス補正部26dが、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれがゼロになるように本スキャン用のパルスシーケンスを補正することによって、位相エンコード用傾斜磁場による渦電流の影響を受けない画像が得られるようになる。
【0055】
図6及び7は、第1の実施形態に係るシーケンス補正部26dによって行われる位相ずれの補正を説明するための図である。図6は、位相エンコード方向の位相ずれの一例を示している。図6において、実線61は、エコー信号ごとの位相エンコード方向の1次(あるいは0次)の位相ずれを表しており、破線62は、位相エンコード用傾斜磁場の強度を表している。また、図7は、図6に示したエコー信号が配置されるk空間を示している。図7において、横軸は位相エンコード方向を示している。
【0056】
ここで、位相エンコード方向の1次(あるいは0次)の位相ずれは、k空間へのエコー信号の配置の仕方に依存する。図6に示す例は、k空間に対して、収集されたエコー信号を位相エンコード方向に順番に配置していく場合を示している。図7に示す番号は、収集されたエコー信号の順番を表している。図4及び5に示したパルスシーケンスを用いてプリスキャンを行った場合には、10番目に収集されるエコー信号Echo10に対応する位置(図7に示す矢印の位置)、すなわち、k空間の中心近傍に配置されるエコー信号の1次の位相ずれが補正される。なお、ここでは、10番目に収集されるエコー信号Echo10を基準にして補正を行う場合について説明するが、基準となるエコー信号は、偶数番目に収集されるものであれば任意のエコー信号でよい。
【0057】
本スキャン実行部26eは、シーケンス補正部26dにより補正された本スキャン用のパルスシーケンスを用いて、本スキャンを実行する。具体的には、プリスキャン実行部26bは、シーケンス補正部26dによって本スキャン用のシーケンス実行データが補正されると、補正後のシーケンス実行データをシーケンス実行データ記憶部23aから読み出す。そして、本スキャン実行部26eは、読み出したシーケンス実行データをインタフェース部21経由でシーケンス制御部10に送信することで、本スキャンを実行する。
【0058】
次に、第1の実施形態に係るMRI装置100によって行われる位相ずれ補正の処理手順について説明する。図8は、第1の実施形態に係るMRI装置100によって行われる位相ずれ補正の処理手順を示すフローチャートである。
【0059】
図8に示すように、第1の実施形態に係るMRI装置100では、操作者によって撮像を開始するよう指示された場合に(ステップS101,Yes)、撮像条件設定部26aが、入力部24を介して操作者から撮像条件の入力を受け付ける(ステップS102)。
【0060】
続いて、撮像条件設定部26aは、操作者によって入力された撮像条件に基づいて、本スキャン用、第1のプリスキャン用、及び第2のプリスキャン用のシーケンス実行データをそれぞれ生成する(ステップS103)。
【0061】
例えば、撮像条件設定部26aは、図3に示したパルスシーケンスを定義したシーケンス実行データを、本スキャン用のシーケンス実行データとして生成する。また、例えば、撮像条件設定部26aは、図4に示した第1のパルスシーケンスを定義したシーケンス実行データを、第1のプリスキャン用のシーケンス実行データとして生成する。また、例えば、撮像条件設定部26aは、図5に示した第2のパルスシーケンスを定義したシーケンス実行データを、第2のプリスキャン用のシーケンス実行データとして生成する。
【0062】
続いて、プリスキャン実行部26bが、撮像条件設定部26aによって生成された第1のパルスシーケンスのシーケンス実行データに基づいて、第1のプリスキャンを実行する(ステップS104)。その後、プリスキャン実行部26bは、撮像条件設定部26aによって生成された第2のパルスシーケンスのシーケンス実行データに基づいて、第2のプリスキャンを実行する(ステップS105)。
【0063】
続いて、補正量算出部26cが、各プリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差から、位相エンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する(ステップS106)。その後、シーケンス補正部26dが、補正量算出部26cにより算出された補正量に基づいて本スキャン用のシーケンス実行データを補正する(ステップS106)。
【0064】
続いて、本スキャン実行部26eが、シーケンス補正部26dにより補正された本スキャン用のシーケンス実行データに基づいて、本スキャンを実行する(ステップS107)。そして、画像再構成部22が、本スキャンによって収集されたMR信号データから画像を再構成する(ステップS108)。
【0065】
なお、ここでは、第1のプリスキャン、第2のプリスキャンの順で各プリスキャンが実行される場合について説明したが、第1のプリスキャン及び第2のプリスキャンが実行される順序は逆になってもよい。
【0066】
図9は、第1の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスの変形例を示す図である。図9に示すように、第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスは、図3に示した本スキャン用のパルスシーケンスにおいて、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に本スキャンで使用するリードアウト傾斜磁場と類似のサンプリング用傾斜磁場を印加するようにしたものである。
【0067】
図10は、第1の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスの変形例を示す図である。図10に示すように、第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスは、図9に示した第1のパルスシーケンスに対し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する。
【0068】
図4、図5のパルスシーケンスと異なり、サンプリング傾斜磁場を各エコーに対して印可しているため、位相エンコード傾斜磁場を印可するエコーが偶数に制約されることはない。図10では9番目まで位相エンコード傾斜磁場を印可している。ただし、実際には、位相エンコード部分の立下り部分とサンプリングの立ち上がり部分は連続していることが多く、位相エンコード傾斜磁場による、渦電流のずれをより正確に測るには、図4、図5のパルスシーケンスの方が望ましい。
【0069】
上述したように、第1の実施形態では、プリスキャン実行部26bが、第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンを実行する。ここで、第1のプリスキャンは、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加するものである。また、第2のパルスシーケンスは、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加するものである。そして、補正量算出部26cが、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれを補正量として算出する。また、シーケンス補正部26dが、補正量算出部26cにより算出された補正量に基づいて、本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。したがって、第1の実施形態によれば、位相エンコード方向の位相ずれによって生じる画像劣化を防ぐことができる。
【0070】
また、第1の実施形態では、第1のパルスシーケンスは、本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになる期間と同じ期間又は該期間の近傍で収集される奇数番目のエコー信号以降でサンプリング用傾斜磁場を印加するものである。また、第2のパルスシーケンスは、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する。したがって、第1の実施形態によれば、画質に最も寄与するk空間の中心近傍に配置されるエコー信号の位相ずれが補正されるので、MRI装置100によって生成される画像の画質をより向上させることができる。
【0071】
また、第1の実施形態の変形例として、プリスキャン実行部26bが、第2のプリスキャンとして、複数ショットのうち、先頭エコーにおいて最大の位相エンコード用傾斜磁場を印加するショットの位相エンコード用傾斜磁場を印加し、第3のプリスキャンとして、先頭エコーにおいて最小の位相エンコード用傾斜磁場を印加するショットの位相エンコード傾斜磁場を印加してもよい。
【0072】
図11は、第1の実施形態の変形例を説明するための図である。図11は、図6に示した位相エンコード方向の位相ずれのうち、1番目のエコー信号(Echo1)から4番目のエコー信号(Echo4)までの位相ずれを示している。図6と同様に、実線61は、エコー信号ごとの位相エンコード方向の1次(あるいは0次)の位相ずれを表しており、破線62は、位相エンコード用傾斜磁場の強度を表している。
【0073】
例えば、図11に示す例では、複数のショットa,b,c,・・・,k,l,mが用いられる場合を示している。また、例えば、図11に示すように、複数のショットa,b,c,・・・,k,l,mのうち、1番目のエコー信号(Echo1)において、最大の位相エンコード用傾斜磁場を印加するショットはショットaであり、最小の位相エンコード用傾斜磁場を印加するショットはショットmであったとする。この場合には、プリスキャン実行部26bは、第2のプリスキャンとして、ショットaの位相エンコード(図11に示す三角の印を参照)を印加し、第3のプリスキャンとして、ショットmの位相エンコード(図11に示す黒い三角の印を参照)を印加する。
【0074】
この場合には、補正量算出部26cは、例えば、第1のプリスキャンの位相差をp1、第2のプリスキャンの位相差をp2、第3のプリスキャンの位相差をp3として、p2−p1を最大位相エンコードのショットに対する補正量とし、p3−p1を最小位相エンコードのショットに対する補正量とし、途中のショットに対する補正量は補間により求めてもよい。具体的には、最大の位相エンコード用傾斜磁場のショットを1番目とし、ショット数をNとすると、i番目に位相エンコード用傾斜磁場が大きいショットに対する補正量は、p2−p1+(p3−p2)*(i−1)/(N−1)となる。
【0075】
(第2の実施形態)
なお、第1の実施形態では、k空間の中心近傍に配置されるエコー信号の位相ずれを補正する場合について説明したが、MRI装置100の実施形態はこれに限られるものではない。そこで、以下では第2の実施形態として、複数のエコー信号の位相ずれを補正する場合について説明する。第2の実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には図1及び2に示したものと同じであるが、撮像条件設定部26a、プリスキャン実行部26b、補正量算出部26c、及びシーケンス補正部26dによって行われる処理が第1の実施形態と異なる。
【0076】
第2の実施形態では、撮像条件設定部26aは、本スキャン用のパルスシーケンス、第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンス、第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスに加えて、以下で説明する第3のプリスキャン用のパルスシーケンスについて、さらにシーケンス実行データを作成する。
【0077】
図12は、第2の実施形態に係る第3のプリスキャン用の第3のパルスシーケンスを示す図である。図12に示すように、第3のプリスキャン用の第3のパルスシーケンスは、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、第2のプリスキャンにおいてサンプリング用傾斜磁場の印加が開始される奇数番目のエコー信号より手前で収集される他の奇数番目のエコー信号以降で位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加し、サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加するものである。
【0078】
例えば、図5に示したように、9番目のエコー信号Echo9以降でサンプリング用傾斜磁場を印加するように第2のパルスシーケンスが設定されていたとする。その場合には、図12に示すように、例えば、第3のパルスシーケンスは、3番目のエコー信号Echo3でサンプリング用傾斜磁場sp3を印加し、4番目のエコー信号Echo4でサンプリング用傾斜磁場sp4を印加するように設定される。
【0079】
また、第2の実施形態では、プリスキャン実行部26bは、第1のプリスキャン及び第2のプリスキャンに加えて、図12に示した第3のパルスシーケンスを用いた第3のプリスキャンをさらに実行する。
【0080】
また、第2の実施形態では、補正量算出部26cは、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と、第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第1の位相ずれを算出する。また、補正量算出部26cは、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と、第3のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第2の位相ずれを算出する。そして、補正量算出部26cは、算出した第1の位相ずれと第2の位相ずれとから、複数のエコー信号に関する補正量を算出する。
【0081】
例えば、図4に示した第1のパルスシーケンスと、図5に示した第2のパルスシーケンスと、図12に示した第3のパルスシーケンスとがそれぞれ実行されたとする。その場合には、補正量算出部26cは、図4に示した9番目のエコー信号Echo9と10番目のエコー信号Echo10との間の位相差p1と、図5に示した9番目のエコー信号Echo9と10番目のエコー信号Echo10との間の位相差p2と、図12に示した3番目のエコー信号Echo3と4番目のエコー信号Echo4との間の位相差p3とをそれぞれ算出する。
【0082】
さらに、補正量算出部26cは、第1の位相ずれとしてp2−p1を算出する。また、補正量算出部26cは、第2の位相ずれとしてp3−p1を算出する。ここで、第1の位相ずれであるp2−p1は、9番目のエコー信号Echo9における位相ずれdif9となる。また、第2の位相ずれであるp3−p1は、3番目のエコー信号Echo3における位相ずれdif3となる。
【0083】
そして、補正量算出部26cは、第1の位相ずれと第2の位相ずれとから、3番目及び9番目のエコー信号以外のエコー信号に関する補正量を算出する。例えば、本スキャンにおいて、10番目に収集されるエコー信号Echo10で位相エンコード用傾斜磁場がゼロになる場合には、エコー信号における位相ずれは、Echo10までは徐々に増加し、Echo10を超えると徐々に減少する。このことから、例えば、15番目のエコー信号における位相ずれdif15は、3番目のエコー信号Echo3における位相ずれdif3に等しいと仮定することができる。
【0084】
そこで、補正量算出部26cは、本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになるエコー信号を基準にして、そのエコー信号より前半に収集されたエコー信号における位相ずれから、後半に収集されるエコー信号における位相ずれを推計する。さらに、補正量算出部26cは、算出した各エコー信号における位相ずれを線形補間することで、複数のエコー信号における位相ずれを算出する。
【0085】
図13は、第2の実施形態に係るシーケンス補正部26dによって行われる位相ずれの算出を説明するための図である。図13に示すように、例えば、シーケンス補正部26dは、9番目のエコー信号Echo9を基準にして、3番目のエコー信号Echo3における位相ずれdif3から15番目のエコー信号Echo15における位相ずれdif15を推計する。その後、補正量算出部26cは、エコー信号Echo3における位相ずれdif3、エコー信号Echo9における位相ずれdif9、エコー信号Echo15におけるdif15を線形補間することで、複数のエコー信号における位相ずれを算出する。
【0086】
また、第2の実施形態では、シーケンス補正部26dは、1次の位相差に関しては、補正量算出部26cにより算出された位相ずれに基づいて、本スキャン用のパルスシーケンスにおいて各エコー信号に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場の強度を補正する。このとき、例えば、シーケンス補正部26dは、各エコー信号における位相ずれがゼロになるように、各エコー信号で印加される位相エンコード用傾斜磁場の強度を変更する。または、シーケンス補正部26dは、リワインド用傾斜磁場の強度を変更することで、各エコー信号における位相ずれがゼロになるようにしてもよい。また、例えば、シーケンス補正部26dは、0次の位相差に関しては、フロップパルスの位相を変更することで、位相ずれがゼロになるようにする。
【0087】
上述してきたように、第2の実施形態では、プリスキャン実行部26bが、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、第2のプリスキャンにおいてサンプリング用傾斜磁場の印加が開始される奇数番目のエコー信号より手前で収集される他の奇数番目のエコー信号以降で位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加し、サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する第3のパルスシーケンスを用いた第3のプリスキャンをさらに実行する。また、補正量算出部26cが、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第1の位相ずれを算出し、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と第3のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第2の位相ずれを算出し、算出した第1の位相ずれと第2の位相ずれとから複数のエコー信号に関する位相ずれを算出する。そして、シーケンス補正部26dが、補正量算出部26cによりエコー信号ごとに算出された位相ずれに基づいて、本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。したがって、第2の実施形態によれば、本スキャンによって収集される各エコー信号の位相ずれが補正されるので、位相エンコード方向の位相ずれによって生じる画像劣化をより精度よく防ぐことができる。
【0088】
なお、第2の実施形態では、本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになるエコー信号を基準にして、そのエコー信号より前半に収集されたエコー信号における位相ずれから、後半に収集されるエコー信号における位相ずれを推計することとした。これに対し、さらに1回プリスキャンを行うことで、本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになるエコー信号より後半に収集されるエコー信号における位相ずれを計測するようにしてもよい。これにより、位相エンコード方向の位相ずれによって生じる画像劣化をさらに精度よく防ぐことができるようになる。
【0089】
なお、第1及び第2の実施形態では、1回の収集でk空間の全ての領域にエコー信号を配置する場合について説明した。これに対し、例えば、k空間が位相エンコード方向に複数の領域に分割され、複数回の収集によって複数のエコー信号がグループ分けされて収集される場合もある。そのような場合には、グループごとに位相ずれを算出し、グループごとに本スキャン用のパルスシーケンスを補正してもよい。
【0090】
図14は、第1及び第2の実施形態の変形例を説明するための図である。図14は、位相エンコード方向に沿ったk空間を示しており、k空間が3つの領域に分割される場合の一例を示している。なお、図14に示す矢印は、k空間の中心を示している。ここで、例えば、エコー信号が2つのグループGr1及びGr2にグループ分けされて収集されるとする。その場合には、例えば、図14に示すように、真ん中の領域に対して、グループGr1のエコー信号が位相エンコード方向に順番に配置される。また、両側の領域のうち一方の側の領域に対して、グループGr2のエコー信号のうち前半に収集されたエコー信号が順番に配置され、他方の側の領域に対して、グループGr2のエコー信号のうち後半に収集されたエコー信号が順番に配置される。
【0091】
このような場合には、例えば、補正量算出部26cが、グループごとに補正量を算出してもよい。また、その場合には、シーケンス補正部26dが、グループごとに本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。なお、例えば、補正量算出部26cがいずれか1つのグループについて補正量を算出し、シーケンス補正部26dが、全てのグループについて、同じ補正量に基づいて本スキャン用のパルスシーケンスを補正するようにしてもよい。
【0092】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態として、k空間の中心が先頭エコーである場合のエコー信号の収集及び補正の例を説明する。第3の実施形態では、プリスキャン実行部26bが、第1のプリスキャンとして、奇数番目のエコー信号以降でサンプリング用傾斜磁場を印加する。図15は、第3の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスを示す図である。図15に示すように、例えば、プリスキャン実行部26bは、3番目のエコー信号からサンプリング用傾斜磁場を印加する。
【0093】
また、プリスキャン実行部26bは、第2のプリスキャンとして、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで本スキャン用のパルスシーケンスで印加する位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する。図16は、第3の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスを示す図である。図16に示すように、例えば、プリスキャン実行部26bは、1番目及び2番目のエコー信号に対して、位相エンコード用傾斜磁場を印加する。
【0094】
図17は、第3の実施形態に係るエコー信号の収集を説明するための図である。図17に示すように、通常、k空間の中心が先頭エコーの場合には、k空間を2つのGrに分割してエコー信号が収集される。このような場合には、プリスキャン実行部26bは、第2のプリスキャンとして、Gr1の代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加し、第3のプリスキャンとして、Gr2の代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する。そして、補正量算出部26cが、第1〜第3の実施形態と同様に、各プリスキャンの複数エコーの位相差から補正量を算出する。
【0095】
また、第1〜第3の実施形態は、従来の位相エンコード用傾斜磁場を抜いたプリスキャンと併用することで、リードアウト方向、スライス方向、位相エンコード方向全ての位相ずれを補正することができる。
【0096】
なお、プリスキャンで使用するパルスシーケンスは、本スキャンで使用するプリパルスなどの傾斜磁場を同様に印加する。
【0097】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態として、第1〜第3の実施形態を3D収集シーケンスのスライスエンコードによる位相ずれを考慮したプリスキャンと併用する場合の例を説明する。第4の実施形態では、プリスキャン実行部26bが、図18に示す第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、図19に示す第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンを実行する。
【0098】
ここで、第1のパルスシーケンスは、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場、スライスエンコード用傾斜磁場を印加せず、スライスエンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加するものである。また、第2のパルスシーケンスは、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加するスライスエンコード用傾斜磁場の中で、代表的なスライスエンコード用傾斜磁場を印加するものである。
【0099】
そして、第4の実施形態では、補正量算出部26cが、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、スライスエンコード用傾斜磁場によってスライスエンコード方向に生じる位相ずれを補正量として算出する。また、シーケンス補正部26dが、補正量算出部26cにより算出された補正量に基づいて、スライスエンコードごとに、本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。したがって、第4の実施形態によれば、スライスエンコード方向の位相ずれによって生じる画像劣化を防ぐことができる。
【0100】
また、第4の実施形態では、第1のパルスシーケンスは、本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになる期間と同じ期間又は該期間の近傍で収集される奇数番目のエコー信号以降でサンプリング用傾斜磁場を印加するものである。また、第2のパルスシーケンスは、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで本スキャン用のパルスシーケンスで印加するスライスエンコード用傾斜磁場の中で、代表的なスライスエンコード用傾斜磁場を印加するものである。したがって、第4の実施形態によれば、画質に最も寄与する位相エンコード方向のk空間の中心近傍に配置されるエコー信号の位相ずれがスライスエンコードごとに補正されるので、MRI装置100によって生成される画像の画質をより向上させることができる。
【0101】
例えば、スライスエンコード数(スライス枚数)が64の場合、スライスエンコードステップは−32〜31となるが、例えば、第2のパルスシーケンスで、−32のスライスエンコードを印加し、第1のプリスキャンのEcho9とEcho10の位相差(1次または0次)をs1、第2のプリスキャンのEcho9とEcho10の位相差をs2とすると、i番目のスライスエンコードによる位相差は(s2−s1)*(−i)/32で求められる。1次位相はスライスエンコード用傾斜磁場の補正により、0次位相は180度パルスの位相を補正することで、スライスエンコードによる位相ずれを補正できる。また、上記でプリスキャンの数を増やすことで(例えば+31のスライスエンコードを印加する)、精度を向上させることができる。
【0102】
なお、第1及び第4の実施形態と従来例とを組み合わせて実行することで、リードアウト用傾斜磁場、位相エンコード用傾斜磁場、スライス選択傾斜磁場の1次、0次の位相ずれを観測及び補正することが可能である。例えば、第1のプリスキャンとして、従来の位相エンコード用傾斜磁場を抜いたプリスキャンを実行する。また、第2のプリスキャンとして、図4のパルスシーケンスを実行する。また、第3のプリスキャンとして、図5のパルスシーケンスを実行する。また、第4のプリスキャンとして、図18のパルスシーケンスを実行する。また、第5のプリスキャンとして、図19のパルスシーケンスを実行する。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0104】
100 MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
20 計算機システム
26 制御部
26b プリスキャン実行部
26c 補正量算出部
26d シーケンス補正部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置に関する撮像法として、高速スピンエコー(Fast Spin Echo:FSE)法がある。このFSE法は、被検体に対してフリップパルスを印加した後に複数のフロップパルスを順次印加することで、エコートレインと呼ばれる複数のエコー信号を収集する撮像法である。ここでいうフリップパルスとは、被検体内の原子核スピンを励起するためのRF(Radio Frequency)パルスである。また、フロップパルスとは、原子核スピンの位相をリフォーカスするためのRFパルスである。
【0003】
かかるFSE法では、複数のRFパルスが印加されることから、スピンエコーとともにスティミュレイテッドエコーが生成される。そして、このスティミュレイテッドエコーによって、収集されるエコー信号に位相ずれが生じる場合がある。このようなエコー信号の位相ずれは、感度むらや信号低下、ゴーストなどの画質劣化を生じさせる原因となる。
【0004】
このような画質劣化を防ぐため、一般的には、エコー信号に生じる位相差を測定するためのプリスキャンが本スキャンの前に実行され、プリスキャンによって測定された位相差に基づいて本スキャン用のパルスシーケンスが補正される。この場合には、例えば、プリスキャンにおいて、スティミュレイテッドエコーをキャンセルするパルスシーケンスが実行され、スピンエコーのみが収集される。そして、プリスキャンによって収集されたスピンエコーのうち1番目及び2番目のエコー信号がリードアウト方向にフーリエ変換され、1番目のエコー信号と2番目のエコー信号との間の0次及び1次の位相差が算出される。その後、算出された0次及び1次の位相差からリードアウト方向及びスライス選択方向の位相ずれを補正するための補正量が算出され、算出された補正量に基づいて本スキャン用のパルスシーケンスが変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6369568号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、位相エンコード用傾斜磁場による渦電流の影響で位相エンコード方向に生じる位相ずれを補正することができず、その位相ずれによって画質劣化が生じてしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、実行部と、算出部と、補正部とを備える。実行部は、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加する第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、前記第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンとをそれぞれ実行する。算出部は、前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する。補正部は、前記算出部により算出された前記補正量に基づいて前記本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示した計算機システムの詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る本スキャン用のパルスシーケンスを示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスを示す図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスを示す図である。
【図6】図6は、第1の実施形態に係るシーケンス補正部によって行われる位相ずれの補正を説明するための図(1)である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係るシーケンス補正部によって行われる位相ずれの補正を説明するための図(2)である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われる位相ずれ補正の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、第1の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスの変形例を示す図である。
【図10】図10は、第1の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスの変形例を示す図である。
【図11】図11は、第2の実施形態の変形例を説明するための図である。
【図12】図12は、第2の実施形態に係る第3のプリスキャン用の第3のパルスシーケンスを示す図である。
【図13】図13は、第2の実施形態に係るシーケンス補正部によって行われる位相ずれの算出を説明するための図である。
【図14】図14は、第1及び第2の実施形態の変形例を説明するための図である。
【図15】図15は、第3の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスを示す図である。
【図16】図16は、第3の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスを示す図である。
【図17】図17は、第3の実施形態に係るエコー信号の収集を説明するための図である。
【図18】図18は、第4の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスを示す図である。
【図19】図19は、第4の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面に基づいて、磁気共鳴イメージング装置の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態では、磁気共鳴イメージング装置をMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と呼ぶ。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成を示す図である。図1に示すように、このMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9、シーケンス制御部10及び計算機システム20を備える。
【0011】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0012】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
【0013】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0014】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、後述する寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、制御部26による制御のもと、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0015】
送信RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する。送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信RFコイル6に送信する。受信RFコイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、上記の高周波磁場の影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。この受信RFコイル8は、磁気共鳴信号を受信すると、その磁気共鳴信号を受信部9へ出力する。
【0016】
受信部9は、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号データを生成する。この受信部9は、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによってMR信号データを生成する。このMR信号データには、前述したスライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grによって、位相エンコード方向、リードアウト方向、スライスエンコード方向の空間周波数の情報が対応付けられてk空間に配置される。そして、MR信号データを生成すると、受信部9は、そのMR信号データをシーケンス制御部10へ送信する。
【0017】
シーケンス制御部10は、計算機システム20から送信されるシーケンス実行データに基づいて、傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動することによって、被検体Pのスキャンを実行する。ここで、シーケンス実行データとは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信RFコイル6に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部9が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、被検体Pのスキャンを実行するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。なお、シーケンス制御部10は、シーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動した後に、受信部9からMR信号データが送信されると、そのMR信号データを計算機システム20へ転送する。
【0018】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、計算機システム20は、MRI装置100が有する各部を駆動することで、被検体Pのスキャンや画像再構成などを行う。この計算機システム20は、インタフェース部21、画像再構成部22、記憶部23、入力部24、表示部25及び制御部26を有する。
【0019】
インタフェース部21は、シーケンス制御部10との間で授受される各種信号の入出力を制御する。例えば、このインタフェース部21は、シーケンス制御部10に対してシーケンス実行データを送信し、シーケンス制御部10からMR信号データを受信する。MR信号データを受信すると、インタフェース部21は、各MR信号データを被検体Pごとに記憶部23に格納する。
【0020】
画像再構成部22は、記憶部23によって記憶されたMR信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体P内における所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを生成する。
【0021】
記憶部23は、後述する制御部26によって実行される処理に必要な各種データや各種プログラムなどを記憶する。例えば、記憶部23は、インタフェース部21によって受信されたMR信号データや、画像再構成部22によって生成されたスペクトラムデータや画像データなどを、被検体Pごとに記憶する。
【0022】
入力部24は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。この入力部24としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0023】
表示部25は、制御部26による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する。この表示部25としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0024】
制御部26は、図示していないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、MRI装置100の全体制御を行う。この制御部26は、例えば、入力部24を介して操作者から入力される撮像条件に基づいて各種のシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス実行データをシーケンス制御部10に送信することによってスキャンを制御する。また、制御部26は、スキャンの結果としてシーケンス制御部10からMR信号データが送られた場合に、そのMR信号データに基づいて画像を再構成するよう画像再構成部22を制御する。
【0025】
以上、第1の実施形態に係るMRI装置100の構成について説明した。このような構成のもと、MRI装置100は、第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンとを実行する。ここで、第1のプリスキャンは、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加するものである。また、第2のパルスシーケンスは、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加するものである。そして、MRI装置100は、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する。また、MRI装置100は、補正量算出部26cにより算出された補正量に基づいて、本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。
【0026】
すなわち、第1の実施形態に係るMRI装置100は、位相エンコード用傾斜磁場を印加しない第1のプリスキャンと、位相エンコード用傾斜磁場を印加する第2のプリスキャンとをそれぞれ実行し、第1のプリスキャンにより得られたエコー信号と第2のプリスキャンにより得られたエコー信号との間の位相ずれに基づいて、本スキャン用のパルスシーケンスの補正量を算出する。したがって、第1の実施形態によれば、位相エンコード方向の位相ずれによって生じる画像劣化を防ぐことができる。以下では、かかるMRI装置100が有する機能について詳細に説明する。
【0027】
図2は、図1に示した計算機システム20の詳細な構成を示す機能ブロック図である。図2では、計算機システム20が有する機能部のうち、インタフェース部21、記憶部23、及び制御部26を示している。
【0028】
記憶部23は、シーケンス実行データ記憶部23aと、MR信号データ記憶部23bとを有する。シーケンス実行データ記憶部23aは、後述する撮像条件設定部26aにより生成されるシーケンス実行データを記憶する。MR信号データ記憶部23bは、インタフェース部21によって受信されたMR信号データを記憶する。
【0029】
制御部26は、撮像条件設定部26a、プリスキャン実行部26b、補正量算出部26c、シーケンス補正部26d、及び本スキャン実行部26eを有する。
【0030】
撮像条件設定部26aは、操作者によって入力部24を介して入力された撮像条件に基づいて、撮像で用いられるパルスシーケンスを定義したシーケンス実行データを生成する。例えば、撮像条件設定部26aは、操作者によってFSE法の撮像条件が入力された場合には、以下で説明する本スキャン用のパルスシーケンス、第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンス、及び、第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスそれぞれについて、シーケンス実行データを生成する。
【0031】
図3は、第1の実施形態に係る本スキャン用のパルスシーケンスを示す図である。図3において、「RF」は、励起用のフリップパルス及びリフォーカス用のフロップパルスが印加されるタイミングを示している。また、「Gss」はスライス選択用傾斜磁場の印加タイミング及び強度を示しており、「Gro」はリードアウト用傾斜磁場の印加タイミング及び強度を示しており、「Gpe」は位相エンコード用傾斜磁場の印加タイミング及び強度を示している。なお、図3では、1つのスライス選択に関するパルスシーケンスのみを示し、スライスエンコードについては図示を省略している。また、「ETS(Echo Train Spacing)」は、エコー間隔を示している。
【0032】
図3に示すように、本スキャン用のパルスシーケンスは、一般的なFSE法のパルスシーケンスである。図3に示すように、本スキャン用のパルスシーケンスは、フリップパルスfliが印加された後に、複数のフロップパルスflo1、flo2・・・flo9、flo10、flo11・・・を順次印加することで、複数のエコー信号Echo1、Echo2・・・Echo9、Echo10、Echo11・・・を収集する。なお、図3に示すパルスシーケンスは、10番目に収集されるエコー信号Echo10で位相エンコード用傾斜磁場がゼロになるように設定された場合の例である。
【0033】
図4は、第1の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスを示す図である。図4に示すように、第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスは、図3に示した本スキャン用のパルスシーケンスにおいて、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加するようにしたものである。
【0034】
ここで、第1のパルスシーケンスは、本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになる期間と同じ期間又は該期間の近傍で収集される奇数番目のエコー信号以降でサンプリング用傾斜磁場を印加する。例えば、図3に示したように、本スキャンにおいて、10番目に収集されるエコー信号で位相エンコード用傾斜磁場がゼロになるようにパルスシーケンスが設定されていたとする。その場合には、図4に示すように、第1のパルスシーケンスは、9番目のエコー信号Echo9でサンプリング用傾斜磁場sp1を印加し、10番目のエコー信号Echo10でサンプリング用傾斜磁場sp2を印加するように設定される。
【0035】
なお、第1のパルスシーケンスでは、9番目のエコー信号Echo9からエコー信号が収集されるように、フリップパルスfliと最初のフロップパルスflo1との間にpre−dephase傾斜磁場pdが印加される。さらに、第1のパルスシーケンスでは、スティミュレイテッドエコーがキャンセルされ、スピンエコーのみが収集されるように設定される。例えば、米国特許第5818229に記載された方法を用いることができる。この方法では、リフォーカス用のフロップパルスの位相をπ,π,π,π・・・と変えながら収集された1ショット目のエコー信号と、π,−π,π,−π・・・と変えながら収集された2ショット目のエコー信号とを加算することで、スピンエコー成分のみが取り出される。または、1ショット目のエコー信号から2ショット目のエコー信号を減算することで、スティミュレイテッドエコー成分のみを取り出し、取り出したスティミュレットエコー成分がスピンエコー成分の代わりに用いられてもよい。
【0036】
図5は、第1の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスを示す図である。図5に示すように、第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスは、図4に示した第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する。
【0037】
ここで、第2のパルスシーケンスは、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、サンプリング用傾斜磁場を印加する手前の偶数番目のエコーまで、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する。例えば、図4に示したように、9番目のエコー信号以降でサンプリング用傾斜磁場を印加するように第1のパルスシーケンスが設定されていたとする。その場合には、図5に示すように、第2のパルスシーケンスは、8番目のエコー信号まで、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加するように設定される。
【0038】
例えば、第2のパルスシーケンスは、本スキャン用のパルスシーケンスで使用する複数の位相エンコードのうちで、平均強度近傍の位相エンコード用傾斜磁場を印加するものである。例えば、位相エンコードMatrixが256で19エコー収集の場合、k空間を埋めるために256/19=13ショットが必要になる。この場合には、第2のパルスシーケンスは、平均の位相エンコード用傾斜磁場強度を持つショット(シーケンシャルに位相エンコードを埋める場合は中心ショット(7ショット))で印加される位相エンコード用傾斜磁場を印加するように設定される。
【0039】
また、第1及び第2のプリスキャン用のサンプリングピッチ及びサンプリング用の撮像領域に関して、撮像領域の中心は本スキャンの位相エンコード方向の撮像領域の中心と同じであることが望ましいが、サンプリングピッチ、及び撮像領域は本スキャンと同じでもよいし、異なっていても構わないが、望ましくは、本スキャンの位相エンコード方向の撮像領域と本スキャンのリードアウト方向の撮像領域のうちの大きい方をプリスキャンの撮像領域とすれば、収集及び処理にとって好ましい。
【0040】
また図4及び図5で本スキャンと同様の形状でpre−dephasing傾斜磁場とサンプリング傾斜磁場を印可したが、エコーが収集できれば他の形状でも構わない。例えば、pre−dephasing傾斜磁場をなくし、sp1及びsp2の前後でsp1及びsp2の半分の面積で逆符号の傾斜磁場を印可してもよい。
【0041】
また本スキャンのリードアウト方向傾斜磁場がフローコンペンセーションタイプの場合、プリスキャン用のパルスシーケンスのサンプリング傾斜磁場は、位相エンコードの有りと無しで位相ずれを収集するため、フローコンペンセーションタイプでなくてもよい。
【0042】
図2の説明にもどって、プリスキャン実行部26bは、第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンとをそれぞれ実行する。
【0043】
具体的には、プリスキャン実行部26bは、撮像条件設定部26aによって第1のプリスキャン用及び第2のプリスキャン用のシーケンス実行データがそれぞれ生成されると、まず、第1のシーケンス実行データをシーケンス実行データ記憶部23aから読み出す。そして、プリスキャン実行部26bは、読み出した第1のシーケンス実行データをインタフェース部21経由でシーケンス制御部10に送信することで、第1のプリスキャンを実行する。例えば、プリスキャン実行部26bは、図4に示したパルスシーケンスを定義したシーケンス実行データをシーケンス制御部10に送信することで、第1のプリスキャンを実行する。
【0044】
そして、第1のプリスキャンの実行が終了した後に、プリスキャン実行部26bは、第2のシーケンス実行データをシーケンス実行データ記憶部23aから読み出し、読み出した第2のシーケンス実行データをインタフェース部21経由でシーケンス制御部10に送信することで、第2のプリスキャンを実行する。例えば、プリスキャン実行部26bは、図5に示したパルスシーケンスを定義したシーケンス実行データをシーケンス制御部10に送信することで、第2のプリスキャンを実行する。
【0045】
なお、プリスキャン実行部26bは、先に第2のプリスキャンを実行し、その後、第1のプリスキャンを実行してもよい。
【0046】
補正量算出部26cは、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と、第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する。
【0047】
具体的には、補正量算出部26cは、プリスキャン実行部26bによって第1のプリスキャン及び第2のプリスキャンが実行された後に、各プリスキャンにより収集されたエコー信号に関するMR信号データをMR信号データ記憶部23bから読み出す。その後、補正量算出部26cは、読み出した各MR信号データを位相エンコード方向にフーリエ変換した後に、1次の位相差を算出する。さらに、補正量算出部26cは、算出した1次の位相差を用いて各エコー信号の1次の位相を補正し、その後、各エコー信号の位相平均を求めることで、0次の位相差を算出する。ここで、位相差を算出する領域は、ユーザーが指定した位相エンコード方向の撮像領域内で行うことが望ましい。たとえば、本スキャンのリードアウト方向の撮像領域が25cmで、位相エンコード方向の撮像領域が20cmで、プリスキャンの撮像領域を25cmで収集した場合、20cmの領域で位相差を算出すればよい。
【0048】
FSE法では、先に発生したエコー信号に対して印加された位相エンコード用傾斜磁場の作るデフェーズ分が、次に発生するするエコー信号に加わり、次に観測するエコーに位相差を生じる。この位相差は、場所の1次関数になるので、1次の位相差と呼ばれる。また、コイル配置の不整合などによって、傾斜磁場は0次項(B0成分)を含む。この傾斜磁場の0次項は、場所依存性のない均一成分ではあるが、結果的に渦電流のような指数関数で落ちる時間特性を有し、位相差を生じる原因となる。この位相差は0次の位相差と呼ばれる。
【0049】
ここで、補正量算出部26cは、第1のプリスキャンにより収集されたエコー信号における1次及び0次の位相差と、第2のプリスキャンにより収集されたエコー信号における1次及び0次の位相差とをそれぞれ算出する。そして、補正量算出部26cは、算出した各位相差の差分を算出する。この差分が、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれとなる。
【0050】
例えば、図4に示した第1のパルスシーケンス及び図5に示した第2のパルスシーケンスがそれぞれ実行されたとする。その場合には、補正量算出部26cは、図4に示した9番目のエコー信号Echo9と10番目のエコー信号Echo10との間の位相差p1と、図5に示した9番目のエコー信号Echo9と10番目のエコー信号Echo10との間の位相差p2とをそれぞれ算出する。そして、補正量算出部26cは、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれp2−p1を補正量として算出する。
【0051】
なお、ここでは、補正量算出部26cは、9番目のエコー信号と10番目のエコー信号とを補正量の算出に使用したが、さらに11番目以降の複数のエコーを使用してもよい。例えば、補正量算出部26cは、第1のパルスシーケンスの9番目と10番目の位相差をp1、11番目と10番目の位相差をp1_2、11番目と12番目の位相差をp1_3として、第2のパルスシーケンスの9番目と10番目の位相差をp2、11番目と10番目の位相差をp2_2、11番目と12番目の位相差をp2_3として、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれを(p2+p2_2+p2_3)/3−(p1+p1_2+p1_3)/3としてもよい。
【0052】
シーケンス補正部26dは、補正量算出部26cにより算出された位相ずれに基づいて、本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。具体的には、シーケンス補正部26dは、補正量算出部26cによって位相ずれが算出されると、算出された位相ずれに基づいて、シーケンス実行データ記憶部23aに記憶されている本スキャン用のシーケンス実行データを補正する。
【0053】
ここで、シーケンス補正部26dは、補正量算出部26cによって算出された位相ずれがゼロになるように、本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。このとき、例えば、シーケンス補正部26dは、1次の位相差に関しては、フリップパルスとフロップパルスとの間に補正傾斜磁場を印加するように、本スキャン用のパルスシーケンスを変更する。なお、シーケンス補正部26dは、本スキャン用のパルスシーケンスにおけるリワインド用傾斜磁場又は位相エンコード用傾斜磁場の強度を変更することで、位相ずれがゼロになるようにしてもよい。また、例えば、シーケンス補正部26dは、1次の位相差に関しては、フロップパルスの位相を変更することで、位相ずれがゼロになるようにする。
【0054】
このように、シーケンス補正部26dが、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれがゼロになるように本スキャン用のパルスシーケンスを補正することによって、位相エンコード用傾斜磁場による渦電流の影響を受けない画像が得られるようになる。
【0055】
図6及び7は、第1の実施形態に係るシーケンス補正部26dによって行われる位相ずれの補正を説明するための図である。図6は、位相エンコード方向の位相ずれの一例を示している。図6において、実線61は、エコー信号ごとの位相エンコード方向の1次(あるいは0次)の位相ずれを表しており、破線62は、位相エンコード用傾斜磁場の強度を表している。また、図7は、図6に示したエコー信号が配置されるk空間を示している。図7において、横軸は位相エンコード方向を示している。
【0056】
ここで、位相エンコード方向の1次(あるいは0次)の位相ずれは、k空間へのエコー信号の配置の仕方に依存する。図6に示す例は、k空間に対して、収集されたエコー信号を位相エンコード方向に順番に配置していく場合を示している。図7に示す番号は、収集されたエコー信号の順番を表している。図4及び5に示したパルスシーケンスを用いてプリスキャンを行った場合には、10番目に収集されるエコー信号Echo10に対応する位置(図7に示す矢印の位置)、すなわち、k空間の中心近傍に配置されるエコー信号の1次の位相ずれが補正される。なお、ここでは、10番目に収集されるエコー信号Echo10を基準にして補正を行う場合について説明するが、基準となるエコー信号は、偶数番目に収集されるものであれば任意のエコー信号でよい。
【0057】
本スキャン実行部26eは、シーケンス補正部26dにより補正された本スキャン用のパルスシーケンスを用いて、本スキャンを実行する。具体的には、プリスキャン実行部26bは、シーケンス補正部26dによって本スキャン用のシーケンス実行データが補正されると、補正後のシーケンス実行データをシーケンス実行データ記憶部23aから読み出す。そして、本スキャン実行部26eは、読み出したシーケンス実行データをインタフェース部21経由でシーケンス制御部10に送信することで、本スキャンを実行する。
【0058】
次に、第1の実施形態に係るMRI装置100によって行われる位相ずれ補正の処理手順について説明する。図8は、第1の実施形態に係るMRI装置100によって行われる位相ずれ補正の処理手順を示すフローチャートである。
【0059】
図8に示すように、第1の実施形態に係るMRI装置100では、操作者によって撮像を開始するよう指示された場合に(ステップS101,Yes)、撮像条件設定部26aが、入力部24を介して操作者から撮像条件の入力を受け付ける(ステップS102)。
【0060】
続いて、撮像条件設定部26aは、操作者によって入力された撮像条件に基づいて、本スキャン用、第1のプリスキャン用、及び第2のプリスキャン用のシーケンス実行データをそれぞれ生成する(ステップS103)。
【0061】
例えば、撮像条件設定部26aは、図3に示したパルスシーケンスを定義したシーケンス実行データを、本スキャン用のシーケンス実行データとして生成する。また、例えば、撮像条件設定部26aは、図4に示した第1のパルスシーケンスを定義したシーケンス実行データを、第1のプリスキャン用のシーケンス実行データとして生成する。また、例えば、撮像条件設定部26aは、図5に示した第2のパルスシーケンスを定義したシーケンス実行データを、第2のプリスキャン用のシーケンス実行データとして生成する。
【0062】
続いて、プリスキャン実行部26bが、撮像条件設定部26aによって生成された第1のパルスシーケンスのシーケンス実行データに基づいて、第1のプリスキャンを実行する(ステップS104)。その後、プリスキャン実行部26bは、撮像条件設定部26aによって生成された第2のパルスシーケンスのシーケンス実行データに基づいて、第2のプリスキャンを実行する(ステップS105)。
【0063】
続いて、補正量算出部26cが、各プリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差から、位相エンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する(ステップS106)。その後、シーケンス補正部26dが、補正量算出部26cにより算出された補正量に基づいて本スキャン用のシーケンス実行データを補正する(ステップS106)。
【0064】
続いて、本スキャン実行部26eが、シーケンス補正部26dにより補正された本スキャン用のシーケンス実行データに基づいて、本スキャンを実行する(ステップS107)。そして、画像再構成部22が、本スキャンによって収集されたMR信号データから画像を再構成する(ステップS108)。
【0065】
なお、ここでは、第1のプリスキャン、第2のプリスキャンの順で各プリスキャンが実行される場合について説明したが、第1のプリスキャン及び第2のプリスキャンが実行される順序は逆になってもよい。
【0066】
図9は、第1の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスの変形例を示す図である。図9に示すように、第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスは、図3に示した本スキャン用のパルスシーケンスにおいて、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に本スキャンで使用するリードアウト傾斜磁場と類似のサンプリング用傾斜磁場を印加するようにしたものである。
【0067】
図10は、第1の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスの変形例を示す図である。図10に示すように、第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスは、図9に示した第1のパルスシーケンスに対し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する。
【0068】
図4、図5のパルスシーケンスと異なり、サンプリング傾斜磁場を各エコーに対して印可しているため、位相エンコード傾斜磁場を印可するエコーが偶数に制約されることはない。図10では9番目まで位相エンコード傾斜磁場を印可している。ただし、実際には、位相エンコード部分の立下り部分とサンプリングの立ち上がり部分は連続していることが多く、位相エンコード傾斜磁場による、渦電流のずれをより正確に測るには、図4、図5のパルスシーケンスの方が望ましい。
【0069】
上述したように、第1の実施形態では、プリスキャン実行部26bが、第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンを実行する。ここで、第1のプリスキャンは、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加するものである。また、第2のパルスシーケンスは、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加するものである。そして、補正量算出部26cが、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれを補正量として算出する。また、シーケンス補正部26dが、補正量算出部26cにより算出された補正量に基づいて、本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。したがって、第1の実施形態によれば、位相エンコード方向の位相ずれによって生じる画像劣化を防ぐことができる。
【0070】
また、第1の実施形態では、第1のパルスシーケンスは、本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになる期間と同じ期間又は該期間の近傍で収集される奇数番目のエコー信号以降でサンプリング用傾斜磁場を印加するものである。また、第2のパルスシーケンスは、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する。したがって、第1の実施形態によれば、画質に最も寄与するk空間の中心近傍に配置されるエコー信号の位相ずれが補正されるので、MRI装置100によって生成される画像の画質をより向上させることができる。
【0071】
また、第1の実施形態の変形例として、プリスキャン実行部26bが、第2のプリスキャンとして、複数ショットのうち、先頭エコーにおいて最大の位相エンコード用傾斜磁場を印加するショットの位相エンコード用傾斜磁場を印加し、第3のプリスキャンとして、先頭エコーにおいて最小の位相エンコード用傾斜磁場を印加するショットの位相エンコード傾斜磁場を印加してもよい。
【0072】
図11は、第1の実施形態の変形例を説明するための図である。図11は、図6に示した位相エンコード方向の位相ずれのうち、1番目のエコー信号(Echo1)から4番目のエコー信号(Echo4)までの位相ずれを示している。図6と同様に、実線61は、エコー信号ごとの位相エンコード方向の1次(あるいは0次)の位相ずれを表しており、破線62は、位相エンコード用傾斜磁場の強度を表している。
【0073】
例えば、図11に示す例では、複数のショットa,b,c,・・・,k,l,mが用いられる場合を示している。また、例えば、図11に示すように、複数のショットa,b,c,・・・,k,l,mのうち、1番目のエコー信号(Echo1)において、最大の位相エンコード用傾斜磁場を印加するショットはショットaであり、最小の位相エンコード用傾斜磁場を印加するショットはショットmであったとする。この場合には、プリスキャン実行部26bは、第2のプリスキャンとして、ショットaの位相エンコード(図11に示す三角の印を参照)を印加し、第3のプリスキャンとして、ショットmの位相エンコード(図11に示す黒い三角の印を参照)を印加する。
【0074】
この場合には、補正量算出部26cは、例えば、第1のプリスキャンの位相差をp1、第2のプリスキャンの位相差をp2、第3のプリスキャンの位相差をp3として、p2−p1を最大位相エンコードのショットに対する補正量とし、p3−p1を最小位相エンコードのショットに対する補正量とし、途中のショットに対する補正量は補間により求めてもよい。具体的には、最大の位相エンコード用傾斜磁場のショットを1番目とし、ショット数をNとすると、i番目に位相エンコード用傾斜磁場が大きいショットに対する補正量は、p2−p1+(p3−p2)*(i−1)/(N−1)となる。
【0075】
(第2の実施形態)
なお、第1の実施形態では、k空間の中心近傍に配置されるエコー信号の位相ずれを補正する場合について説明したが、MRI装置100の実施形態はこれに限られるものではない。そこで、以下では第2の実施形態として、複数のエコー信号の位相ずれを補正する場合について説明する。第2の実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には図1及び2に示したものと同じであるが、撮像条件設定部26a、プリスキャン実行部26b、補正量算出部26c、及びシーケンス補正部26dによって行われる処理が第1の実施形態と異なる。
【0076】
第2の実施形態では、撮像条件設定部26aは、本スキャン用のパルスシーケンス、第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンス、第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスに加えて、以下で説明する第3のプリスキャン用のパルスシーケンスについて、さらにシーケンス実行データを作成する。
【0077】
図12は、第2の実施形態に係る第3のプリスキャン用の第3のパルスシーケンスを示す図である。図12に示すように、第3のプリスキャン用の第3のパルスシーケンスは、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、第2のプリスキャンにおいてサンプリング用傾斜磁場の印加が開始される奇数番目のエコー信号より手前で収集される他の奇数番目のエコー信号以降で位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加し、サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加するものである。
【0078】
例えば、図5に示したように、9番目のエコー信号Echo9以降でサンプリング用傾斜磁場を印加するように第2のパルスシーケンスが設定されていたとする。その場合には、図12に示すように、例えば、第3のパルスシーケンスは、3番目のエコー信号Echo3でサンプリング用傾斜磁場sp3を印加し、4番目のエコー信号Echo4でサンプリング用傾斜磁場sp4を印加するように設定される。
【0079】
また、第2の実施形態では、プリスキャン実行部26bは、第1のプリスキャン及び第2のプリスキャンに加えて、図12に示した第3のパルスシーケンスを用いた第3のプリスキャンをさらに実行する。
【0080】
また、第2の実施形態では、補正量算出部26cは、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と、第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第1の位相ずれを算出する。また、補正量算出部26cは、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と、第3のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第2の位相ずれを算出する。そして、補正量算出部26cは、算出した第1の位相ずれと第2の位相ずれとから、複数のエコー信号に関する補正量を算出する。
【0081】
例えば、図4に示した第1のパルスシーケンスと、図5に示した第2のパルスシーケンスと、図12に示した第3のパルスシーケンスとがそれぞれ実行されたとする。その場合には、補正量算出部26cは、図4に示した9番目のエコー信号Echo9と10番目のエコー信号Echo10との間の位相差p1と、図5に示した9番目のエコー信号Echo9と10番目のエコー信号Echo10との間の位相差p2と、図12に示した3番目のエコー信号Echo3と4番目のエコー信号Echo4との間の位相差p3とをそれぞれ算出する。
【0082】
さらに、補正量算出部26cは、第1の位相ずれとしてp2−p1を算出する。また、補正量算出部26cは、第2の位相ずれとしてp3−p1を算出する。ここで、第1の位相ずれであるp2−p1は、9番目のエコー信号Echo9における位相ずれdif9となる。また、第2の位相ずれであるp3−p1は、3番目のエコー信号Echo3における位相ずれdif3となる。
【0083】
そして、補正量算出部26cは、第1の位相ずれと第2の位相ずれとから、3番目及び9番目のエコー信号以外のエコー信号に関する補正量を算出する。例えば、本スキャンにおいて、10番目に収集されるエコー信号Echo10で位相エンコード用傾斜磁場がゼロになる場合には、エコー信号における位相ずれは、Echo10までは徐々に増加し、Echo10を超えると徐々に減少する。このことから、例えば、15番目のエコー信号における位相ずれdif15は、3番目のエコー信号Echo3における位相ずれdif3に等しいと仮定することができる。
【0084】
そこで、補正量算出部26cは、本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになるエコー信号を基準にして、そのエコー信号より前半に収集されたエコー信号における位相ずれから、後半に収集されるエコー信号における位相ずれを推計する。さらに、補正量算出部26cは、算出した各エコー信号における位相ずれを線形補間することで、複数のエコー信号における位相ずれを算出する。
【0085】
図13は、第2の実施形態に係るシーケンス補正部26dによって行われる位相ずれの算出を説明するための図である。図13に示すように、例えば、シーケンス補正部26dは、9番目のエコー信号Echo9を基準にして、3番目のエコー信号Echo3における位相ずれdif3から15番目のエコー信号Echo15における位相ずれdif15を推計する。その後、補正量算出部26cは、エコー信号Echo3における位相ずれdif3、エコー信号Echo9における位相ずれdif9、エコー信号Echo15におけるdif15を線形補間することで、複数のエコー信号における位相ずれを算出する。
【0086】
また、第2の実施形態では、シーケンス補正部26dは、1次の位相差に関しては、補正量算出部26cにより算出された位相ずれに基づいて、本スキャン用のパルスシーケンスにおいて各エコー信号に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場の強度を補正する。このとき、例えば、シーケンス補正部26dは、各エコー信号における位相ずれがゼロになるように、各エコー信号で印加される位相エンコード用傾斜磁場の強度を変更する。または、シーケンス補正部26dは、リワインド用傾斜磁場の強度を変更することで、各エコー信号における位相ずれがゼロになるようにしてもよい。また、例えば、シーケンス補正部26dは、0次の位相差に関しては、フロップパルスの位相を変更することで、位相ずれがゼロになるようにする。
【0087】
上述してきたように、第2の実施形態では、プリスキャン実行部26bが、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、第2のプリスキャンにおいてサンプリング用傾斜磁場の印加が開始される奇数番目のエコー信号より手前で収集される他の奇数番目のエコー信号以降で位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加し、サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する第3のパルスシーケンスを用いた第3のプリスキャンをさらに実行する。また、補正量算出部26cが、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第1の位相ずれを算出し、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と第3のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第2の位相ずれを算出し、算出した第1の位相ずれと第2の位相ずれとから複数のエコー信号に関する位相ずれを算出する。そして、シーケンス補正部26dが、補正量算出部26cによりエコー信号ごとに算出された位相ずれに基づいて、本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。したがって、第2の実施形態によれば、本スキャンによって収集される各エコー信号の位相ずれが補正されるので、位相エンコード方向の位相ずれによって生じる画像劣化をより精度よく防ぐことができる。
【0088】
なお、第2の実施形態では、本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになるエコー信号を基準にして、そのエコー信号より前半に収集されたエコー信号における位相ずれから、後半に収集されるエコー信号における位相ずれを推計することとした。これに対し、さらに1回プリスキャンを行うことで、本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになるエコー信号より後半に収集されるエコー信号における位相ずれを計測するようにしてもよい。これにより、位相エンコード方向の位相ずれによって生じる画像劣化をさらに精度よく防ぐことができるようになる。
【0089】
なお、第1及び第2の実施形態では、1回の収集でk空間の全ての領域にエコー信号を配置する場合について説明した。これに対し、例えば、k空間が位相エンコード方向に複数の領域に分割され、複数回の収集によって複数のエコー信号がグループ分けされて収集される場合もある。そのような場合には、グループごとに位相ずれを算出し、グループごとに本スキャン用のパルスシーケンスを補正してもよい。
【0090】
図14は、第1及び第2の実施形態の変形例を説明するための図である。図14は、位相エンコード方向に沿ったk空間を示しており、k空間が3つの領域に分割される場合の一例を示している。なお、図14に示す矢印は、k空間の中心を示している。ここで、例えば、エコー信号が2つのグループGr1及びGr2にグループ分けされて収集されるとする。その場合には、例えば、図14に示すように、真ん中の領域に対して、グループGr1のエコー信号が位相エンコード方向に順番に配置される。また、両側の領域のうち一方の側の領域に対して、グループGr2のエコー信号のうち前半に収集されたエコー信号が順番に配置され、他方の側の領域に対して、グループGr2のエコー信号のうち後半に収集されたエコー信号が順番に配置される。
【0091】
このような場合には、例えば、補正量算出部26cが、グループごとに補正量を算出してもよい。また、その場合には、シーケンス補正部26dが、グループごとに本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。なお、例えば、補正量算出部26cがいずれか1つのグループについて補正量を算出し、シーケンス補正部26dが、全てのグループについて、同じ補正量に基づいて本スキャン用のパルスシーケンスを補正するようにしてもよい。
【0092】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態として、k空間の中心が先頭エコーである場合のエコー信号の収集及び補正の例を説明する。第3の実施形態では、プリスキャン実行部26bが、第1のプリスキャンとして、奇数番目のエコー信号以降でサンプリング用傾斜磁場を印加する。図15は、第3の実施形態に係る第1のプリスキャン用の第1のパルスシーケンスを示す図である。図15に示すように、例えば、プリスキャン実行部26bは、3番目のエコー信号からサンプリング用傾斜磁場を印加する。
【0093】
また、プリスキャン実行部26bは、第2のプリスキャンとして、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで本スキャン用のパルスシーケンスで印加する位相エンコード用傾斜磁場の中で、代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する。図16は、第3の実施形態に係る第2のプリスキャン用の第2のパルスシーケンスを示す図である。図16に示すように、例えば、プリスキャン実行部26bは、1番目及び2番目のエコー信号に対して、位相エンコード用傾斜磁場を印加する。
【0094】
図17は、第3の実施形態に係るエコー信号の収集を説明するための図である。図17に示すように、通常、k空間の中心が先頭エコーの場合には、k空間を2つのGrに分割してエコー信号が収集される。このような場合には、プリスキャン実行部26bは、第2のプリスキャンとして、Gr1の代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加し、第3のプリスキャンとして、Gr2の代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する。そして、補正量算出部26cが、第1〜第3の実施形態と同様に、各プリスキャンの複数エコーの位相差から補正量を算出する。
【0095】
また、第1〜第3の実施形態は、従来の位相エンコード用傾斜磁場を抜いたプリスキャンと併用することで、リードアウト方向、スライス方向、位相エンコード方向全ての位相ずれを補正することができる。
【0096】
なお、プリスキャンで使用するパルスシーケンスは、本スキャンで使用するプリパルスなどの傾斜磁場を同様に印加する。
【0097】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態として、第1〜第3の実施形態を3D収集シーケンスのスライスエンコードによる位相ずれを考慮したプリスキャンと併用する場合の例を説明する。第4の実施形態では、プリスキャン実行部26bが、図18に示す第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、図19に示す第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンを実行する。
【0098】
ここで、第1のパルスシーケンスは、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場、スライスエンコード用傾斜磁場を印加せず、スライスエンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加するものである。また、第2のパルスシーケンスは、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加するスライスエンコード用傾斜磁場の中で、代表的なスライスエンコード用傾斜磁場を印加するものである。
【0099】
そして、第4の実施形態では、補正量算出部26cが、第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、スライスエンコード用傾斜磁場によってスライスエンコード方向に生じる位相ずれを補正量として算出する。また、シーケンス補正部26dが、補正量算出部26cにより算出された補正量に基づいて、スライスエンコードごとに、本スキャン用のパルスシーケンスを補正する。したがって、第4の実施形態によれば、スライスエンコード方向の位相ずれによって生じる画像劣化を防ぐことができる。
【0100】
また、第4の実施形態では、第1のパルスシーケンスは、本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになる期間と同じ期間又は該期間の近傍で収集される奇数番目のエコー信号以降でサンプリング用傾斜磁場を印加するものである。また、第2のパルスシーケンスは、第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで本スキャン用のパルスシーケンスで印加するスライスエンコード用傾斜磁場の中で、代表的なスライスエンコード用傾斜磁場を印加するものである。したがって、第4の実施形態によれば、画質に最も寄与する位相エンコード方向のk空間の中心近傍に配置されるエコー信号の位相ずれがスライスエンコードごとに補正されるので、MRI装置100によって生成される画像の画質をより向上させることができる。
【0101】
例えば、スライスエンコード数(スライス枚数)が64の場合、スライスエンコードステップは−32〜31となるが、例えば、第2のパルスシーケンスで、−32のスライスエンコードを印加し、第1のプリスキャンのEcho9とEcho10の位相差(1次または0次)をs1、第2のプリスキャンのEcho9とEcho10の位相差をs2とすると、i番目のスライスエンコードによる位相差は(s2−s1)*(−i)/32で求められる。1次位相はスライスエンコード用傾斜磁場の補正により、0次位相は180度パルスの位相を補正することで、スライスエンコードによる位相ずれを補正できる。また、上記でプリスキャンの数を増やすことで(例えば+31のスライスエンコードを印加する)、精度を向上させることができる。
【0102】
なお、第1及び第4の実施形態と従来例とを組み合わせて実行することで、リードアウト用傾斜磁場、位相エンコード用傾斜磁場、スライス選択傾斜磁場の1次、0次の位相ずれを観測及び補正することが可能である。例えば、第1のプリスキャンとして、従来の位相エンコード用傾斜磁場を抜いたプリスキャンを実行する。また、第2のプリスキャンとして、図4のパルスシーケンスを実行する。また、第3のプリスキャンとして、図5のパルスシーケンスを実行する。また、第4のプリスキャンとして、図18のパルスシーケンスを実行する。また、第5のプリスキャンとして、図19のパルスシーケンスを実行する。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0104】
100 MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
20 計算機システム
26 制御部
26b プリスキャン実行部
26c 補正量算出部
26d シーケンス補正部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加する第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、前記第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンとをそれぞれ実行する実行部と、
前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記補正量に基づいて前記本スキャン用のパルスシーケンスを補正する補正部と、
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第1のパルスシーケンスは、前記本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになる期間と同じ期間又は該期間の近傍で収集される奇数番目のエコー信号以降で前記サンプリング用傾斜磁場を印加するものであり、
前記第2のパルスシーケンスは、前記第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、該サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで前記本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加するものである、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記第2のパルスシーケンスは、前記本スキャン用のパルスシーケンスで使用する複数の位相エンコードのうちで、平均強度近傍の位相エンコード用傾斜磁場を印加するものである、
請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記第1、第2のプリスキャンに加えて、前記第2のプリスキャンで印加される位相エンコード用傾斜磁場と異なる位相エンコード用傾斜磁場を印加する第3のパルスシーケンスを用いた第3のプリスキャンをさらに実行し、
前記算出手段は、前記第1及び第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差から第1の位相ずれを算出し、前記第1及び第3のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差から第2の位相ずれを算出し、算出した前記第1の位相ずれと前記第2の位相ずれとから複数のエコー信号に関する補正量を算出し、
前記補正手段は、前記算出手段によりエコー信号ごとに算出された補正量に基づいて、前記本スキャン用のパルスシーケンスを補正する、
請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記実行部は、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、前記第2のプリスキャンにおいてサンプリング用傾斜磁場の印加が開始される奇数番目のエコー信号より手前で収集される他の奇数番目のエコー信号以降で位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加し、該サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで前記本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する第3のパルスシーケンスを用いた第3のプリスキャンをさらに実行し、
前記算出部は、前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第1の位相ずれを算出し、前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第3のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第2の位相ずれを算出し、算出した前記第1の位相ずれと前記第2の位相ずれとから複数のエコー信号に関する補正量を算出し、
前記補正部は、前記算出部によりエコー信号ごとに算出された補正量に基づいて、前記本スキャン用のパルスシーケンスにおいて各エコー信号に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場の強度を補正する、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
本スキャンにおいて、エコー信号が配置されるk空間が位相エンコード方向に複数の領域に分割され、該複数の領域ごとに複数のエコー信号がグループ分けされて収集される場合に、
前記算出部は、前記グループごとに前記補正量を算出し、
前記補正部は、前記グループごとに前記本スキャン用のパルスシーケンスを補正する、
請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記補正部は、フリップパルスとフロップパルスとの間に補正傾斜磁場を印加するように、前記本スキャン用のパルスシーケンスを変更する、
請求項1〜6のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場及びスライスエンコード傾斜磁場を印加せず、スライスエンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加する第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、前記第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加されるスライスエンコード用傾斜磁場の中で代表的なスライスエンコード用傾斜磁場を印加する第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンとをそれぞれ実行する実行部と、
前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、スライスエンコード用傾斜磁場によってスライスエンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記補正量に基づいて前記本スキャン用のパルスシーケンスを補正する補正部と、
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記第1のパルスシーケンスは、前記本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになる期間と同じ期間又は該期間の近傍で収集される奇数番目のエコー信号以降で前記サンプリング用傾斜磁場を印加するものであり、
前記第2のパルスシーケンスは、前記第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、該サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで前記本スキャン用のパルスシーケンスで印加されるスライスエンコード用傾斜磁場の中で代表的なスライスエンコード用傾斜磁場を印加するものである、
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記第1、第2のプリスキャンに加えて、前記第2のプリスキャンで印加されるスライスエンコード用傾斜磁場と異なるスライスエンコード用傾斜磁場を印加する第3のパルスシーケンスを用いた第3のプリスキャンをさらに実行し、
前記算出手段は、前記第1及び第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差から第1の位相ずれを算出し、前記第1及び第3のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差から第2の位相ずれを算出し、算出した前記第1の位相ずれと前記第2の位相ずれとから複数のエコー信号に関する補正量を算出し、
前記補正手段は、前記算出手段によりエコー信号ごとに算出された補正量に基づいて、前記本スキャン用のパルスシーケンスを補正する、
請求項8又は9に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記実行部は、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード傾斜磁場を印加せず、前記第2のプリスキャンにおいてサンプリング用傾斜磁場の印加が開始される奇数番目のエコー信号より手前で収集される他の奇数番目のエコー信号以降でスライスエンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加し、該サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで前記本スキャン用のパルスシーケンスで印加されるスライスエンコード用傾斜磁場の中で代表的なスライスエンコード用傾斜磁場を印加する第3のパルスシーケンスを用いた第3のプリスキャンをさらに実行し、
前記算出部は、前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第1の位相ずれを算出し、前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第3のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第2の位相ずれを算出し、算出した前記第1の位相ずれと前記第2の位相ずれとから複数のエコー信号に関する補正量を算出し、
前記補正部は、前記算出部によりエコー信号ごとに算出された補正量に基づいて、前記本スキャン用のパルスシーケンスにおいて各エコー信号に印加されるスライスエンコード方向の傾斜磁場の強度を補正する、
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記補正部は、前記本スキャン用のパルスシーケンスにおけるリワインド用傾斜磁場又は位相エンコード用傾斜磁場の強度を変更する、
請求項1〜11のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項1】
リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加する第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、前記第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンとをそれぞれ実行する実行部と、
前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、位相エンコード用傾斜磁場によって位相エンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記補正量に基づいて前記本スキャン用のパルスシーケンスを補正する補正部と、
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第1のパルスシーケンスは、前記本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになる期間と同じ期間又は該期間の近傍で収集される奇数番目のエコー信号以降で前記サンプリング用傾斜磁場を印加するものであり、
前記第2のパルスシーケンスは、前記第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、該サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで前記本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加するものである、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記第2のパルスシーケンスは、前記本スキャン用のパルスシーケンスで使用する複数の位相エンコードのうちで、平均強度近傍の位相エンコード用傾斜磁場を印加するものである、
請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記第1、第2のプリスキャンに加えて、前記第2のプリスキャンで印加される位相エンコード用傾斜磁場と異なる位相エンコード用傾斜磁場を印加する第3のパルスシーケンスを用いた第3のプリスキャンをさらに実行し、
前記算出手段は、前記第1及び第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差から第1の位相ずれを算出し、前記第1及び第3のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差から第2の位相ずれを算出し、算出した前記第1の位相ずれと前記第2の位相ずれとから複数のエコー信号に関する補正量を算出し、
前記補正手段は、前記算出手段によりエコー信号ごとに算出された補正量に基づいて、前記本スキャン用のパルスシーケンスを補正する、
請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記実行部は、リードアウト用傾斜磁場を印加せず、前記第2のプリスキャンにおいてサンプリング用傾斜磁場の印加が開始される奇数番目のエコー信号より手前で収集される他の奇数番目のエコー信号以降で位相エンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加し、該サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで前記本スキャン用のパルスシーケンスで印加される位相エンコード用傾斜磁場の中で代表的な位相エンコード用傾斜磁場を印加する第3のパルスシーケンスを用いた第3のプリスキャンをさらに実行し、
前記算出部は、前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第1の位相ずれを算出し、前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第3のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第2の位相ずれを算出し、算出した前記第1の位相ずれと前記第2の位相ずれとから複数のエコー信号に関する補正量を算出し、
前記補正部は、前記算出部によりエコー信号ごとに算出された補正量に基づいて、前記本スキャン用のパルスシーケンスにおいて各エコー信号に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場の強度を補正する、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
本スキャンにおいて、エコー信号が配置されるk空間が位相エンコード方向に複数の領域に分割され、該複数の領域ごとに複数のエコー信号がグループ分けされて収集される場合に、
前記算出部は、前記グループごとに前記補正量を算出し、
前記補正部は、前記グループごとに前記本スキャン用のパルスシーケンスを補正する、
請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記補正部は、フリップパルスとフロップパルスとの間に補正傾斜磁場を印加するように、前記本スキャン用のパルスシーケンスを変更する、
請求項1〜6のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場及びスライスエンコード傾斜磁場を印加せず、スライスエンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加する第1のパルスシーケンスを用いた第1のプリスキャンと、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード用傾斜磁場を印加せず、前記第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、本スキャン用のパルスシーケンスで印加されるスライスエンコード用傾斜磁場の中で代表的なスライスエンコード用傾斜磁場を印加する第2のパルスシーケンスを用いた第2のプリスキャンとをそれぞれ実行する実行部と、
前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから、スライスエンコード用傾斜磁場によってスライスエンコード方向に生じる位相ずれの量を補正量として算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記補正量に基づいて前記本スキャン用のパルスシーケンスを補正する補正部と、
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記第1のパルスシーケンスは、前記本スキャンにおいて位相エンコード用傾斜磁場がゼロになる期間と同じ期間又は該期間の近傍で収集される奇数番目のエコー信号以降で前記サンプリング用傾斜磁場を印加するものであり、
前記第2のパルスシーケンスは、前記第1のパルスシーケンスと同じエコー信号でサンプリング用傾斜磁場を印加し、該サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで前記本スキャン用のパルスシーケンスで印加されるスライスエンコード用傾斜磁場の中で代表的なスライスエンコード用傾斜磁場を印加するものである、
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記第1、第2のプリスキャンに加えて、前記第2のプリスキャンで印加されるスライスエンコード用傾斜磁場と異なるスライスエンコード用傾斜磁場を印加する第3のパルスシーケンスを用いた第3のプリスキャンをさらに実行し、
前記算出手段は、前記第1及び第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差から第1の位相ずれを算出し、前記第1及び第3のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差から第2の位相ずれを算出し、算出した前記第1の位相ずれと前記第2の位相ずれとから複数のエコー信号に関する補正量を算出し、
前記補正手段は、前記算出手段によりエコー信号ごとに算出された補正量に基づいて、前記本スキャン用のパルスシーケンスを補正する、
請求項8又は9に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記実行部は、リードアウト用傾斜磁場及び位相エンコード傾斜磁場を印加せず、前記第2のプリスキャンにおいてサンプリング用傾斜磁場の印加が開始される奇数番目のエコー信号より手前で収集される他の奇数番目のエコー信号以降でスライスエンコード方向に複数のサンプリング用傾斜磁場を印加し、該サンプリング用傾斜磁場を印加する手前まで前記本スキャン用のパルスシーケンスで印加されるスライスエンコード用傾斜磁場の中で代表的なスライスエンコード用傾斜磁場を印加する第3のパルスシーケンスを用いた第3のプリスキャンをさらに実行し、
前記算出部は、前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第2のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第1の位相ずれを算出し、前記第1のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差と前記第3のプリスキャンにより収集された複数のエコー信号における位相差とから第2の位相ずれを算出し、算出した前記第1の位相ずれと前記第2の位相ずれとから複数のエコー信号に関する補正量を算出し、
前記補正部は、前記算出部によりエコー信号ごとに算出された補正量に基づいて、前記本スキャン用のパルスシーケンスにおいて各エコー信号に印加されるスライスエンコード方向の傾斜磁場の強度を補正する、
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記補正部は、前記本スキャン用のパルスシーケンスにおけるリワインド用傾斜磁場又は位相エンコード用傾斜磁場の強度を変更する、
請求項1〜11のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−11179(P2012−11179A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85630(P2011−85630)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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