説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】本発明は、天板レールを省略し、撮像空間の開放感を十分に高めることを目的とするものである。
【解決手段】寝台6は、スキャナガントリ1に並設されている寝台本体7と、寝台本体7上に水平移動可能に設けられ、被検体を載せて撮像空間内に送り込む天板8とを有している。寝台本体7は、天板8を上下動可能に支持している。また、寝台本体7は、天板8を撮像空間内に送り込む際、天板8を片持ち支持する。即ち、天板8は、寝台本体7により片持ち支持されて撮像空間内に送り込まれ、天板8の水平移動中は、天板8はスキャナガントリ1のいかなる部分とも接触しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体を寝台の天板に載せて撮像空間内に送り込む磁気共鳴イメージング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置は、原子核の核磁気共鳴現象を利用して、撮像空間内に置かれた被検体の物理的性質を表す磁気共鳴画像を得るものである。より具体的には、磁気共鳴イメージング装置は、撮像空間に静磁場を発生させる静磁場発生手段と、静磁場に重畳させて線形な傾斜磁場を与える傾斜磁場発生手段と、被検体を構成する原子核に核磁気共鳴を起こさせるための高周波の電磁波を発生させる照射コイルと、核磁気共鳴によって発生するエコー信号を検出する受信コイル等を備え、エコー信号を用いて画像を再構成して断層画像を得るものである。
【0003】
このような磁気共鳴イメージング装置では、被験者が狭い撮像空間に送り込まれて閉塞感による不快感や不安感を持つため、近年では、撮像空間を拡大した開放感のある装置が求められている。これに対して、従来の磁気共鳴イメージング装置では、静磁場中に設置された傾斜磁場コイルを薄型化することによって、撮像空間が広げられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−167143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示された従来の磁気共鳴イメージング装置では、被検体が載せられた天板を撮像空間内で支持する天板レールが傾斜磁場コイルの内側の天板の下側に設置されており、しかも天板レールによる撮像空間の占有率が高いため、被検体が撮像空間の内壁に近付き、十分な開放感を得ることができなかった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、天板レールを省略し、撮像空間の開放感を十分に高めることができる磁気共鳴イメージング装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、静磁場空間を発生する静磁場発生手段と、静磁場空間内に傾斜磁場を生成する傾斜磁場コイルと、被検体に高周波信号を照射する照射コイルとを有するスキャナガントリ、及びスキャナガントリに並設されている寝台本体と、寝台本体上に水平移動可能に設けられ、被検体を載せてスキャナガントリの撮像空間内に送り込む天板とを有する寝台を備え、天板は、寝台本体により片持ち支持されて撮像空間内に送り込まれるものである。
また、この発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、静磁場空間を発生する静磁場発生手段と、静磁場空間内に傾斜磁場を生成する傾斜磁場コイルと、被検体に高周波信号を照射する照射コイルとを有するスキャナガントリ、及びスキャナガントリに並設されている寝台本体と、寝台本体上に水平移動可能に設けられ、被検体を載せてスキャナガントリの撮像空間内に送り込む天板とを有する寝台を備え、撮像空間内には、天板の幅方向両端部を天板の下面よりも上方で支持する一対のサイドレールが設けられているものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の磁気共鳴イメージング装置は、天板が寝台本体により片持ち支持されて撮像空間内に送り込まれるため、撮像空間内で天板を支持する天板レールを省略することができ、これにより撮像空間の内壁と天板との距離を大きくして、撮像空間の開放感を十分に高めることができる。
また、この発明の磁気共鳴イメージング装置は、天板の幅方向両端部を天板の下面よりも上方で支持する一対のサイドレールを撮像空間内に設けたので、天板よりも下方で天板を支持する天板レールを省略することができ、これにより撮像空間の内壁と天板との距離を大きくして、撮像空間の開放感を十分に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1による磁気共鳴イメージング装置の断面図である。
【図2】図1の天板を補助支持部上に降ろした状態を示す断面図である。
【図3】図1の寝台を示す正面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】この発明の実施の形態2による磁気共鳴イメージング装置の天板挿入方向に直角な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による磁気共鳴イメージング装置の断面図であり、この例では、超伝導磁石方式の水平型磁気共鳴イメージング装置を示している。図において、スキャナガントリ1は、円筒形であり、内側に撮像空間が形成されている。また、スキャナガントリ1は、水平型の静磁場発生手段2と、傾斜磁場コイル3と、照射コイル4と、化粧用の外装カバー5とを有している。
【0011】
静磁場発生手段2は、撮像空間を囲むように配置され、被検体の体軸方向又は体軸と直交する方向にほぼ均一な静磁場空間を発生する。傾斜磁場コイル3は、静磁場発生手段2の内側に配置され、被検体から発せられる信号に位置情報を与えるための傾斜磁場を静磁場空間内に生成する。
【0012】
照射コイル4は、被検体の生体組織を構成する原子核に核磁気共鳴を起こさせるために高周波信号を被検体に照射する。磁気共鳴イメージング装置の送信系は、照射コイル4と、照射コイル4に高周波パルスを供給する高周波発信機及び変調器と、高周波増幅器とを有している。
【0013】
スキャナガントリ1の近傍には、被検体を支持する寝台6が設けられている。寝台6は、スキャナガントリ1に並設されている寝台本体7と、寝台本体7上に水平移動可能に設けられ、被検体を載せて撮像空間内に送り込む天板8とを有している。
【0014】
寝台本体7は、天板8を上下動可能に支持している。また、寝台本体7は、天板8を撮像空間内に送り込む際、天板8を片持ち支持する。即ち、天板8は、寝台本体7により片持ち支持されて撮像空間内に送り込まれ、天板8の水平移動中は、天板8はスキャナガントリ1のいかなる部分とも接触しない。
【0015】
また、天板8を片持ち構造で走行させるため、寝台本体7は床面に十分に強固に固定されており、天板8自身には十分な剛性を持たせている。天板8の幅方向両側には、天板8が水平移動する際に寝台本体7上を転動される複数のローラ9が設けられている。
【0016】
スキャナガントリ1の天板8挿入方向の両端部には、スキャナガントリ1内に挿入された天板8を安定して支持するための複数の補助支持部10が設けられている。天板8は、撮像空間内に送り込まれた後、図2に示すように、寝台本体7により下動され、補助支持部10上に着地される。
【0017】
補助支持部10上に着地した天板8は、傾斜磁場コイル3や照射コイル4には接触しない。また、補助支持部10は、ゴムダンパのような振動減衰構造を有しており、傾斜磁場コイル3による磁石の振動の天板8への伝達を抑制する。
【0018】
天板8上には、受信コイル11が設けられている。受信コイル11は、被検体に近接して配置されている。また、受信コイル11は、被検体からのエコー信号、即ち核磁気共鳴信号(NMR信号)を受信する。受信コイル11で検出されたエコー信号は、増幅器及び直交位相検波器を介してA/D変換機に入力され、デジタル量に変換される。磁気共鳴イメージング装置の受信系は、受信コイル11、増幅器、直交位相検波器及びA/D変換機を有している。
【0019】
受信系からの信号は、信号処理系に送られる。信号処理系は、受信系で検出したエコー信号を用いて被検体の物理的性質を表す画像を得る画像再構成演算手段を有している。画像再構成演算手段は、エコー信号から得られた画像データをフーリエ変換し、さらに補正係数計算、画像再構成等の処理を行う中央処理装置(CPU)と、磁気ディスク又は光磁気ディスク等の記録装置と、得られた任意断面の断層像データを画像表示するCRT等のディスプレイとを有している。
【0020】
図3は図1の寝台6を示す正面図である。寝台本体7上には、天板8の幅方向(図3の左右方向)両端部の上面に当接する断面L字形の一対のガードレール12が固定されている。被検体を載せた天板8が撮像空間内に送り込まれた際、ガードレール12により天板8の幅方向両側が上から押さえ付けられ、天板8の倒れ込みが阻止される。
【0021】
図4は図2のIV−IV線に沿う断面図である。外装カバー5は、天板8の下面に対向する開口5aを有している。開口5aは、撮像空間内で下動された天板8により閉じられる。これにより、撮像空間は、天板8と外装カバー5とによって覆われる。外装カバー5の内面には、天板8を補助支持部10上に着地させた際に、天板8の幅方向両端部の下面と外装カバー5との間に介在される一対の直線状のゴムパッキン13が固定されている。
【0022】
このような磁気共鳴イメージング装置では、天板8が寝台本体7により片持ち支持されて撮像空間内に送り込まれるため、撮像空間内で天板8を支持する天板レールを省略することができ、これにより撮像空間の内壁と天板8との距離を大きくして、撮像空間の開放感を十分に高めることができる。
【0023】
即ち、従来装置では、図4の天板8と外装カバー5との間に、開口5aを塞ぐように厚さ100mm程度の天板レールの層が配置されていたが、この天板レールを省略することにより、天板8の高さを撮像空間内で100mm程度下げることができる。これにより、撮像空間内の被検体上の空間が100mm程度広くなり、十分な開放感が得られる。
【0024】
また、寝台本体7上にガードレール12を設けたので、簡単な構造で、天板8を強固に片持ち支持することができる。
【0025】
さらに、スキャナガントリ1に補助支持部10を設け、撮像空間内に移動された天板8を補助支持部10上に着地させるので、撮像空間に移動した後の天板8を安定して支持することができる。
【0026】
さらにまた、補助支持部10に振動減衰構造を設けたので、振動による画像の劣化を防止することができるとともに、天板8上の被検体に振動による不快感を与えないようにすることができる。
【0027】
また、撮像空間を天板8と外装カバー5とで覆うようにしたので、傾斜磁場コイル3が撮像空間内に露出されるのを防止することができ、これによって、傾斜磁場コイル3から発生する騒音が撮像空間に伝達されるのを抑制することができる。
【0028】
さらに、天板8と外装カバー5との間にゴムパッキン13を介在させたので、傾斜磁場コイル3から撮像空間に伝達される騒音をより低減することができる。
【0029】
なお、上記実施の形態1では、ローラ9が天板8に設けられているが、ローラ9は、寝台本体7側に設けてもよい。
また、ガードレール12にローラ9を設けてもよい。
さらに、ローラ9を省略し、寝台本体7と天板8との間に低摩擦材からなるスライドガイド部を設けてもよい。
さらにまた、寝台本体7により天板8を十分に安定して支持できれば、補助支持部10は省略してもよい。
【0030】
実施の形態2.
次に、図5はこの発明の実施の形態2による磁気共鳴イメージング装置の天板挿入方向に直角な断面図である。図において、天板14は、実施の形態1と同様に、寝台本体7上に水平移動可能に設けられている。また、天板14は、被検体を載せる水平な平板状の天板本体14aと、天板本体14aの幅方向(図5の左右方向)両端部に設けられた一対の水平な耳部(係合部)14bとを有している。耳部14bは、天板本体14aよりも上方に形成されている。
【0031】
スキャナガントリ1内の撮像空間には、天板14を支持する一対のサイドレール15が設けられている。サイドレール15は、撮像空間内の同じ高さで、互いに平行かつ水平に配置されている。また、各サイドレール15は、耳部14bを受ける天板受け部15aを有している。各天板受け部15aの上面は、水平である。天板14を撮像空間内に送り込む際には、耳部14bの下面が天板受け部15aの上面に沿って摺動される。即ち、天板14を撮像空間内に送り込む際、サイドレール15は、天板14を支持し案内する。
【0032】
サイドレール15の下端、即ち天板受け部15aの下面は、天板14の下面、即ち天板本体14aの下面よりも上方に位置している。従って、サイドレール15は、天板14の幅方向両端部を天板14の下面よりも上方で支持する。その他の磁気共鳴イメージング装置全体の構成は、実施の形態1と同様である。
【0033】
このような磁気共鳴イメージング装置では、天板14の幅方向両端部を天板14の下面よりも上方で支持する一対のサイドレール15を撮像空間内に設けたので、天板14よりも下方で天板14を支持する天板レールを省略することができ、これにより撮像空間の内壁と天板14との距離を大きくして、撮像空間の開放感を十分に高めることができる。
【0034】
また、寝台本体7は、天板14を片持ち支持する必要がないため、寝台本体7及び天板14の構成を実施の形態1よりも簡素化することができる。
【0035】
なお、天板受け部15a上を転動される複数のローラを耳部14bに設けてもよい。
また、実施の形態2の天板14及びサイドレール15の構造を実施の形態1の片持ち支持構造と組み合わせてもよい。即ち、天板14を片持ち支持して撮像空間内に送り込み、サイドレール15上に着地させるようにしてもよい。
さらに、実施の形態1、2では、超伝導磁石方式の磁気共鳴イメージング装置を示したが、この発明は、永久磁石方式又は常電動磁石方式の磁気共鳴イメージング装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 スキャナガントリ、2 静磁場発生手段、3 傾斜磁場コイル、4 照射コイル、5 外装カバー、5a 開口、6 寝台、7 寝台本体、8 天板、10 補助支持部、12 ガードレール、13 パッキン、14 天板、15 サイドレール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場空間を発生する静磁場発生手段と、前記静磁場空間内に傾斜磁場を生成する傾斜磁場コイルと、被検体に高周波信号を照射する照射コイルとを有するスキャナガントリ、及び
前記スキャナガントリに並設されている寝台本体と、前記寝台本体上に水平移動可能に設けられ、前記被検体を載せて前記スキャナガントリの撮像空間内に送り込む天板とを有する寝台
を備えた磁気共鳴イメージング装置において、
前記天板は、前記寝台本体により片持ち支持されて前記撮像空間内に送り込まれることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記寝台本体上には、前記天板の幅方向両端部の上面に当接して前記天板の倒れ込みを阻止する一対のガードレールが設けられていることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記寝台本体は、前記天板を上下動可能に支持しており、
前記天板は、前記撮像空間内に送り込まれた後に前記寝台本体により下動されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記スキャナガントリには、前記天板を支持するための補助支持部が設けられており、
前記撮像空間内で下動された前記天板は、前記補助支持部上に着地されることを特徴とする請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記補助支持部は、前記傾斜磁場コイルによる振動の前記天板への伝達を抑制する振動減衰構造を有していることを特徴とする請求項4記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記スキャナガントリの内周面には、化粧用の外装カバーが設けられており、
前記外装カバーは、前記天板の下面に対向する開口を有しており、
前記撮像空間内で下動された前記天板によって前記開口が閉じられることにより、前記撮像空間が前記天板と前記外装カバーとによって覆われることを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記外装カバーの内面には、前記天板を前記撮像空間内で下動させた際に、前記天板の幅方向両端部の下面と前記外装カバーとの間に介在される一対のパッキンが固定されていることを特徴とする請求項6記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
静磁場空間を発生する静磁場発生手段と、前記静磁場空間内に傾斜磁場を生成する傾斜磁場コイルと、被検体に高周波信号を照射する照射コイルとを有するスキャナガントリ、及び
前記スキャナガントリに並設されている寝台本体と、前記寝台本体上に水平移動可能に設けられ、前記被検体を載せて前記スキャナガントリの撮像空間内に送り込む天板とを有する寝台
を備えた磁気共鳴イメージング装置において、
前記撮像空間内には、前記天板の幅方向両端部を前記天板の下面よりも上方で支持する一対のサイドレールが設けられていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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