説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】非造影MRAにおいて、撮像目的とする血流からの信号をより高い信号強度で収集し、より明瞭な血流像を抽出することが可能な磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置は、被検体の血流の流速を計測するためのスキャンを実行する血流速度計測部と、前記血流速度計測部により取得された前記血流の速度に応じて撮影条件を設定する撮影条件設定部と、前記撮影条件設定部により設定された撮影条件に従ってイメージングスキャンを実行することによって、前記被検体の血流像を生成する血流像生成部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する磁気共鳴(MR:magnetic resonance)信号から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
この磁気共鳴イメージングの分野において、血流像を得る手法としてMRA(magnetic resonance angiography)が知られている。MRAのうち、造影剤を使用しないものは非造影MRAと呼ばれる。非造影MRAでは、ECG(electro cardiogram)同期を行って心臓から拍出された速い流速の血流を捕捉することにより良好に血管を描出するFBI(Fresh Blood Imaging)法が考案されている(例えば特許文献1参照)。FBI法では、傾斜磁場の制御によって血管の走行方向にほぼ一致する方向に周波数エンコードをかけた3次元スキャンが行われる。
【0004】
このFBI法による非造影MRAでは、ECG同期の遅延時間を変えて撮像した画像データ間で差分を取ることにより動静脈を分離したMRA像を得るFlow-Spoiled FBI法も考案されている。すなわち、Flow-Spoiled FBI法では、心筋の拡張期と収縮期における動脈信号の差が画像化される。
【0005】
さらに、FBI法において、低流速の血流を描出するために、読出し(RO:readout)方向にグラジエントパルス(Gspoil)を、傾斜磁場パルスにディフェーズパルスまたはリフェーズパルスを印加するFlow-dephasing法が考案されている(例えば特許文献2参照)。このFlow-dephasing法によれば、ディフェーズパルスまたはリフェーズパルスの作用により、流速の速い血流からの信号値と低流速の血流からの信号値との相対的な信号差を増大させることができる。そして、この相対的な信号差から動静脈を明瞭に分離することが可能となる。
【0006】
すなわち、動静脈を明瞭に分離するためには、拡張期と収縮期とで信号差を大きくすることが重要となる。拡張期と収縮期とで信号差を大きくするためには、収縮期において速い流速の血流からの信号強度を小さくする必要がある。そこで、RO方向への適切な強度のグラジエントパルスが設定され、設定されたグラジエントパルスにより、収縮期における動脈からの血流信号が抑制される。この状態で、拡張期における血流信号が収集される。そして、拡張期において収集された血流信号には、差分処理や最大値投影(MIP:Maximum Intensity Projection)処理が施され、動脈のみが描出される。
【0007】
また、Flow-dephasing法におけるRO方向のディフェーズパルスの強度等のパラメータを変えながら準備スキャンを実行するFlow-prep. Scanが考案されている(例えば特許文献3参照)。このFlow-prep. Scanでは、準備スキャンによりパラメータを可変しながら撮像された画像を参照することにより、最適なパラメータを求めることができる。そして、RO方向のディフェーズパルスの強度についての研究報告がなされている(例えば非特許文献1参照)。
【0008】
一方、Norris DG等の研究によれば、FSE(Fast spin echo)法による撮像では、2つのファミリーにそれぞれ属するエコー、すなわち偶エコーおよび奇エコーが発生し、偶エコーおよび奇エコーの強度をそれぞれA、Bとすると受信信号の信号強度Sは、式(1)で与えられるとされている(例えば非特許文献2参照)。
【0009】
[数1]
=A+B+2ABcos(2θ) ……(1)
ただし、2θは、偶エコーと奇エコー間における位相差である。尚、偶エコーは、最初のスピンエコーのリフォーカスと同時に発生するファミリーに属し、奇エコーは、最初に励起されたエコーのリフォーカスと同時に発生するファミリーに属するとされている。
【0010】
さらに、Norris DG等の研究によれば、偶エコーと奇エコー間における位相差2θは、流速の影響により変化し、その位相変化量2φは、式(2)で与えられるとされている。
【0011】
[数2]
2φ=γGv(TE) ……(2)
ただし、vはRO方向の血流の流速、TEはエコー列の間隔、GはRO方向のグラジエントパルスの強度、γは係数である。式(1)および式(2)から血流の流速vの影響により位相差2θが位相変化量φだけ変化し、信号強度Sにロスが生じる恐れがあることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−5144号公報
【特許文献2】特開2003−135430号公報
【特許文献3】特開2003−70766号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Miyazaki M, et al., Radiology 227:890-896, 2003.
【非特許文献2】Norris DG, et al., MRM 27;142-164, 1992.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のようにFBI法において画像化に用いられる血流信号の信号差は、流速によって変化する。従って、従来のFBI法では、拡張期と収縮期との間において常に最大の信号差が得られるとは限らない。特に、流速が速い部位においては、常時高い信号強度で動脈からの血流信号を拡張期と収縮期との差分として得ることが困難となる。
【0015】
また、拡張期や収縮期において、流速が同程度であると考えられる静脈からの信号は、血流信号間における差分で抹消される。しかし、静脈の流速が収縮期または拡張期において変化した場合には、拡張期と収縮期間における血流信号の差分から静脈からの信号が完全にキャンセルされない恐れがある。
【0016】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、非造影MRAにおいて、撮像目的とする血流からの信号をより高い信号強度で収集し、より明瞭な血流像を抽出することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、磁気共鳴イメージング装置は、被検体の血流の流速を計測するためのスキャンを実行する血流速度計測部と、前記血流速度計測部により取得された前記血流の速度に応じて撮影条件を設定する撮影条件設定部と、前記撮影条件設定部により設定された撮影条件に従ってイメージングスキャンを実行することによって、前記被検体の血流像を生成する血流像生成部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図。
【図2】図1に示す磁気共鳴イメージング装置におけるコンピュータの機能ブロック図。
【図3】図1に示す送信器の詳細構成図。
【図4】図2に示すパルスシーケンス設定部が血流の流速に応じて撮影条件を設定する場合の設定方法を説明する図。
【図5】図2に示すパルスシーケンス設定部により設定されるFSEシーケンスの例を示す図。
【図6】図1に示す磁気共鳴イメージング装置により、血流の流速に応じて送信パルスの位相を設定しつつMRA像を撮像する際の流れの一例を示すフローチャート。
【図7】図1に示す磁気共鳴イメージング装置によりアングルオフセットdφの最適化を行って得られた腸骨部における動脈のMIP画像をアングルオフセットdφの設定を行わずに得られた従来の動脈のMIP画像と比較した図。
【図8】図1に示す磁気共鳴イメージング装置によりアングルオフセットdφの最適化を行って得られた膝窩部において分岐する動脈のMIP画像をアングルオフセットdφの設定を行わずに得られた従来の動脈のMIP画像と比較した図。
【図9】本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の第2の実施形態におけるコンピュータの機能ブロック図。
【図10】図9に示す磁気共鳴イメージング装置により実行される準備スキャンとイメージングスキャンとを時系列に示した図。
【図11】図9に示す磁気共鳴イメージング装置により、準備スキャンを行った後、MRA像を撮像する際の流れの一例を示すフローチャート。
【図12】本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の第3の実施形態におけるコンピュータの機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【0021】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイルユニット23およびRFコイル24を図示しないガントリに内蔵した構成である。
【0022】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31およびコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35および記憶装置36が備えられる。
【0023】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0024】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0025】
傾斜磁場コイルユニット23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイルユニット23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24はガントリに内蔵されず、寝台37や被検体P近傍に設けられる場合もある。
【0026】
また、傾斜磁場コイルユニット23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイルユニット23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0027】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0028】
RFコイル24は、送信器29および受信器30と接続される。RFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能と、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0029】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したパルスシーケンスを記憶する機能と、記憶した所定のパルスシーケンスで規定される撮影条件に従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場GzおよびRF信号を発生させる機能を有する。シーケンスコントローラ31から送信器29に与えられる制御情報としては、送信のフリップ角に相当するRFパルス電流の強度や送信位相も含まれる。
【0030】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるMR信号の検波およびA/D変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0031】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
【0032】
すなわち、静磁場用磁石21、シムコイル22、傾斜磁場コイルユニット23、RFコイル24並びに制御系25の各構成要素により、磁気共鳴イメージング装置20には、パルスシーケンスとして設定された各撮影条件に従って、静磁場中の被検体Pに対して傾斜磁場の印加およびRF信号の送信を行なう一方、被検体P内部におけるRF信号による原子核の核磁気共鳴に伴って発生したMR信号を受信し、デジタル化することにより生データを生成する生データ収集ユニットとしての機能が備えられる。
【0033】
さらに、磁気共鳴イメージング装置20には、被検体PのECG信号を取得するECGユニット38が備えられる。ECGユニット38により取得されたECG信号はシーケンスコントローラ31を介してコンピュータ32に出力されるように構成される。
【0034】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムによらず、特定の回路を設けてコンピュータ32を構成してもよい。
【0035】
図2は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20におけるコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0036】
コンピュータ32は、プログラムによりシーケンスコントローラ制御部40、生データデータベース41、画像再構成部42、画像データデータベース43、血流像作成部44、パルスシーケンス設定部45、血流速度取得部46として機能する。
【0037】
シーケンスコントローラ制御部40は、入力装置33またはその他の構成要素からの情報に基づいてパルスシーケンス設定部45から受けた所要のパルスシーケンスをシーケンスコントローラ31に与えることにより駆動制御させる機能と、シーケンスコントローラ31から生データを受けて生データデータベース41に形成されたk空間(フーリエ空間)に配置する機能とを有する。このとき、シーケンスコントローラ制御部40は、ECGユニット38により取得されたECG信号に基づいて心電同期でスキャンが実行されるようにシーケンスコントローラ31を駆動制御できるように構成される。
【0038】
このため、生データデータベース41には、受信器30において生成された各生データが保存され、生データデータベース41に形成されたk空間に生データが配置される。
【0039】
画像再構成部42は、生データデータベース41から生データを取り込んで3次元(3D)フーリエ変換処理等の所定の画像再構成処理を施すことにより、被検体Pの3次元画像データを再構成して画像データデータベース43に書き込む機能を有する。ただし、2Dフーリエ変換処理等の処理により一旦2D画像データ等の中間的なデータを作成した後、3D画像データを再構成するようにしてもよい。
【0040】
このため、画像データデータベース43には、被検体Pの3D画像データが保存される。
【0041】
血流像作成部44は、画像データデータベース43から心筋の拡張期および収縮期における3D画像データを読み込んで、差分処理を行うことにより静脈データをキャンセルし、動脈データを血流画像データとして抽出する機能を有する。また、血流像作成部44には、描出した動脈データと拡張期における3D画像データとから血流像用に静脈データを求める機能を設けることができる。
【0042】
そして、静脈データや動脈データを用いた血流画像がカラー表示されるように静脈データおよび動脈データを作成することもできる。例えば、動脈が赤、静脈が青で表示されるように血流画像データを作成すれば、血流像上で動脈および静脈を識別することができる。
【0043】
血流像上において動脈を赤、静脈を青で表示させる場合には、拡張期および収縮期における3D画像データの差分処理によって得られるデータが動脈データであることから、ある閾値を超える信号値を有するデータを動脈データとして赤の色情報を割当てることができる。また、拡張期における3D画像データは、動静脈データの双方を含んでいるため、拡張期における3D画像データのうち上述した差分処理を経て赤の色情報が割当てられた動脈データ以外の血流からのデータが静脈データということになる。従って、拡張期における3D画像データの血流からのデータのうち、動脈データ以外のデータを静脈データとして青の色情報を割当てることができる。
【0044】
ここで、拡張期における3D画像データには、静脈データのみならず、横緩和時間(transverse relaxation time: T2)の長い関節液からのデータが含まれる。T2の長い器官や組織からのデータは、静脈データよりも大きな信号値を有する場合があるため、静脈データと誤認識される恐れがある。そこで、信号値がある範囲のデータを静脈データとして3D画像データから検出すれば、静脈データの誤認識を回避させることができる。具体例としては、ある閾値に対して50〜70%の信号値となる動脈データ以外のデータを静脈データとして3D画像データから検出することができる。
【0045】
このような差分処理による動脈データの検出機能、閾値処理による静脈データの検出機能および動脈データと静脈データに対する色情報の割当機能は、血流像作成部44に設けることができる。
【0046】
更に、血流像作成部44には、必要に応じて、血流像に対してMIP処理等の各種処理を施す機能が備えられる。また、血流像作成部44は、最終的に作成された血流像を表示装置34に与えて表示させる機能を有する。
【0047】
ただし、画像再構成部42を設けずに、血流像作成部44が生データデータベース41から読み込んだ生データから血流像を作成するように構成してもよい。また、臨床上有用であれば、MIP画像、SVR(Shaded volume rendering)画像その他の3次元画像を血流像として作成するようにしてもよい。
【0048】
すなわち、磁気共鳴イメージング装置20には、画像再構成部42や血流像作成部44により生データから血流像を生成する機能が備えられる。
【0049】
パルスシーケンス設定部45は、撮影条件としてパルスシーケンスを設定する機能と、設定したパルスシーケンスをシーケンスコントローラ制御部40に与えて所望の撮影条件に従うスキャンの実行を可能とする機能とを有する。ここで、パルスシーケンス設定部45は、パルスシーケンスを設定する際、血流速度取得部46から受けた血流の流速を参照し、流速に応じたパルスシーケンスを設定するように構成される。特にパルスシーケンス設定部45は、パルスシーケンスを設定する際のパラメータとなるRF送信パルスの位相およびRO方向のグラジエントパルスGの一方または双方を血流の流速に応じて、より適切な値に設定する機能を有する。
【0050】
すなわち、パルスシーケンス設定部45は、動静脈を分離し、動脈や静脈を良好に描出した血流像が得られようにパルスシーケンスを設定する。前述のように、血流を良好に描出するためには、心筋の拡張期と収縮期における動脈からの信号差をより大きくする一方、静脈からの信号差をより小さくし、拡張期と収縮期における血流信号の差分処理により動脈からの信号を高強度で抽出することが重要となる。
【0051】
しかしながら、血流信号の強度は流速に応じて変化する。Norris DG等により導かれた式(2)によれば、流速vの影響により式(1)における2つのエコー間における位相差2θは2φ(=γGv(TE))だけ変化する。従って、式(1)および式(2)から流速vに応じた相対的な信号強度Sは、式(3)で示される。
[数3]
S=sqrt{A+B+2ABcos2(φ+dφ)}(3)
ただし、A、Bは2つのエコーの強度、dφは、2つのエコー間における位相差(θ−φ)に対するシフト量である。つまり、2つのエコー間における位相差に対するシフト量dφをパラメータとして設定すれば、画像信号の強度Sと流速vと間の関係を調整することができる。換言すれば、流速vの値に応じて位相差φが変化したとしても、位相シフト量dφを設定すれば、信号強度Sを制御することができる。
【0052】
尚、2つのエコー間における位相差は、RFコイル24から送信される励起パルスとこの励起パルスに続くリフォーカスパルス間における位相差に相当する。従って、励起パルスあるいはリフォーカスパルスの送信位相をdφだけシフトすれば、式(3)におけるdφを設定することができる。
【0053】
尚、励起パルスとリフォーカスパルスとから構成される送信パルス列は、一般にはCPMG(Carr-Purcell Meiboom-Gill sequence)系列に従うパルス列とすることにより安定したエコー信号が得られることが知られている。CPMGパルス系列は、回転座標系において、定常状態の磁化ベクトルの向きをZ方向、RFパルスの印加方向をXY平面で表し、励起パルスとそれに続くリフォーカスパルスの位相をX(0°)、Y(90°)、Y(90°)、Y(90°)としたパルス系列である。ただし、()内の角度は、XY平面上でX軸とRFパルスの印加方向とのなす角度を示す。
【0054】
従って、通常、励起パルスあるいはリフォーカスパルスのいずれかの送信位相がdφだけシフトされる。仮に、リフォーカスパルスの送信位相をdφだけシフトさせると、リフォーカスパルスの位相が位相シフト量dφに応じた角度だけY軸から傾斜することとなる。同様に励起パルスの送信位相をシフトさせた場合にも位相シフト量dφはX軸からの傾斜角度として現れる。
【0055】
例えば、励起パルスの送信位相をシフトさせた場合、励起パルスとそれに続く複数のリフォーカスパルスの送信位相は、それぞれdφ,90°,90°,90°,・・・となる。また、リフォーカスパルスの送信位相をシフトさせた場合、励起パルスとそれに続く複数のリフォーカスパルスの送信位相は、それぞれ0°,90°−dφ,90°−dφ,90°−dφ,・・・となる。
【0056】
以上の関係から位相シフト量は、アングルオフセット(Angle Offset)と称することもできる。以下、dφをアングルオフセットと称する。
【0057】
ただし、送信パルス列がCPMGパルス系列であるか否かに拘わらず、励起パルスとリフォーカスパルスとの間における相対的な位相差に対するシフト量としてアングルオフセットdφが設定されれば、信号強度Sを制御することができる。
【0058】
アングルオフセットdφを設定するための励起パルスおよびリフォーカスパルスの送信位相の制御は、送信器29において行うことができる。
【0059】
図3は、図1に示す送信器29の詳細構成図である。
【0060】
図3に示すように送信器29には、パルス発生器29a、参照波発生器29b、移相器29c、積算器29d、振幅変調器(ゲイン)29eが備えられる。但し、励起パルスおよびリフォーカスパルスの送信波形の制御に関連性が低い構成要素は省略されている。
【0061】
パルス発生器29aは、シーケンスコントローラ31からの制御信号に従って、励起パルスおよびリフォーカスパルスにそれぞれパルス信号を発生させる。そして、パルス信号は、パルス発生器29aから積算器29dに与えられる。参照波発生器29bは、シーケンスコントローラ31からの制御信号に従って、励起パルスおよびリフォーカスパルスの生成用に周波数fの参照用連続波(以下、参照波と称する)sin(2πft)を発生させる。そして、この参照波sin(2πft)は、参照波発生器29bから移相器29cに与えられる。
【0062】
次に、移相器29cでは、シーケンスコントローラ31からの制御信号に従って、参照波sin(2πft)の位相が励起パルス生成の場合φeだけ、リフォーカスパルス生成の場合φrだけシフトされ、それぞれ励起パルス生成用搬送波sin(2πft-φe)およびリフォーカスパルス生成用搬送波sin(2πft-φr)となる。そして、両者の位相差|φer|が本来の励起パルスおよびリフォーカスパルスの位相差θ0よりもアングルオフセットdφだけ小さい位相差(θ0-dφ)となるように制御される。
【0063】
次に、位相制御された励起パルスの生成用の搬送波sin(2πft-φe)およびリフォーカスパルスの生成用の搬送波sin(2πft-φr)は、移相器29cから積算器29dに与えられる。積算器29dでは、位相制御後における励起パルスの生成用の搬送波sin(2πft-φe)およびリフォーカスパルスの生成用の搬送波sin(2πft-φr)がそれぞれパルス発生器29aから受けたパルス信号と積算される。この結果、生成された励起パルスおよびリフォーカスパルスは、それぞれ積算器29dから振幅変調器29eに与えられる。
【0064】
次に、振幅変調器29eでは、シーケンスコントローラ31からの制御信号に従って、90度、180度等のフリップ角に合わせて励起パルスおよびリフォーカスパルスの振幅が制御される。こうして生成された送信用の励起パルスおよびリフォーカスパルスは、送信器29からRFコイル24にそれぞれ印加され、RF信号として被検体Pに送信される。
【0065】
このように、シーケンスコントローラ31から送信器29の移相器29cに出力される制御信号を制御することによって、励起パルスおよびリフォーカスパルスの一方または双方の送信位相を制御し、その結果、実質的にアングルオフセットdφを制御することができる。
【0066】
次に、アングルオフセットdφを含む撮影条件の設定方法について説明する。
【0067】
図4は、図2に示すパルスシーケンス設定部45が血流の流速に応じて撮影条件を設定する場合の設定方法を説明する図である。
【0068】
図4において、横軸は血流の流速v(cm/s)を示し、縦軸は相対的な信号強度S(Signal Intensity)を示す。ただし、信号強度Sは任意単位(Arbitrary Unit)である。また、図4中の実線は、アングルオフセットをdφ=0としたときの式(3)のシミュレーション結果を示す。また、図4中の点線は、アングルオフセットをdφ=30としたときの式(3)のシミュレーション結果を示す。各シミュレーションにおいてボクセル内におけるディフェーズ効果が無視できると仮定してA=B=0.5とした。
【0069】
尚、他の条件としては、1.5T、RFコイル24として8チャンネルの胴体用QD(quadrature detection)コイルを使用、TR(repetition time)=3心拍、TEeff(effective echo time)=80msec,ETS(echo-train-spacing)=5msec,256×256マトリックス、TI(interval time)=130msec,NAQ(number of acquisition)=1、スライス厚=4mm、スライス枚数=26枚、FOV(field of view)=40×40cm、全スキャン時間3:50〜4:00程度である。
【0070】
図4によれば、腸骨部の動脈では、アングルオフセットdφ=0の場合、点線で示すように流速が25cm/secと比較的速い収縮期(Systole)における動脈(artery)からの信号値が0.65程度であり、流速が10m/secの拡張期(Diastole)における動脈からの信号値は0.95程度である。従って動脈からの信号値の強度差dSI_orgは、0.3程度である。また、静脈(vein)からの信号値は、収縮期および拡張期のいずれにおいても0.9前後である。
【0071】
一方、アングルオフセットをdφ=30に設定すると、点線で示すシミュレーションデータは横軸の負側にシフトし、実線で示すシミュレーションデータが得られる。アングルオフセットdφ=30の場合、実線で示すように流速が25cm/secの収縮期における動脈からの信号値が0.40程度であり、流速が10m/secの拡張期における動脈からの信号値は0.80程度である。従って動脈からの信号値の強度差dSI_newは、0.4程度となる。また、静脈からの信号値は、収縮期および拡張期のいずれにおいても1.0前後である。
【0072】
つまり、アングルオフセットをdφ=30に設定すると、動脈からの信号値の強度差が増加するため、良好な血流像を描出することができる。図4に示すシミュレーションでは、アングルオフセットをdφ=30とした場合に、収縮期および拡張期における動脈からの信号強度差がアングルオフセットをdφ=0とした場合に比べて36%増加する。
【0073】
また、収縮期および拡張期における静脈からの信号強度の差は比較的小さいものの、アングルオフセットをdφ=30とした場合には、収縮期および拡張期における静脈からの信号強度の差が、アングルオフセットをdφ=0とした場合に比べて小さくなる。このため、血流信号の差分処理により良好に静脈からの信号を除去することが可能となる。さらに、静脈からの信号強度と動脈からの信号強度との間に差異が生じるため、信号の差分処理により容易に動静脈が分離される。この結果、動脈信号に対する静脈信号のコンタミネーションを低減することができる。
【0074】
ところで、アングルオフセットdφが0の場合において、RO方向へ強度Gのグラジエントパルスが印加された状態では、式(2)からも分かる通り流速vに応じた位相差を有する2つのエコーが発生する。換言すれば、安定したエコー信号が得られる送信パルス系列として知られるCPMG系列から送信パルス列が流速vおよびグラジエントパルスの強度Gに応じた量だけ乖離する。この2つのエコーの出現に起因して、収縮期における流速の速い血流像には、折り返しによって生じるN/2アーチファクトが位相エンコード(PE:phase encode)方向に現れる。同様な現象は、腸骨に向かう大動脈や大腿部から膝窩部に向かう枝状部分のように血流の流速が大動脈において劇的に変化する臨床ケースにおいても見られることが報告されている。
【0075】
従って、このN/2アーチファクトが消滅するように撮影条件を設定することが重要である。そこで、流速vの影響を受けて位相がφだけシフトした90°励起パルスとリフォーカスパルスのCPMG系列に対する乖離が小さくなるようにアングルオフセットdφを設定すれば、N/2アーチファクトを軽減できる。
【0076】
また、撮影条件として最適化を図ることができるパラメータには、アングルオフセットdφの他、グラジエントパルスの強度Gも挙げられる。アングルオフセットdφは、オフセット(差分)として与えられるため、アングルオフセットdφを変更すると、図4に示すシミュレーションデータ曲線は横軸(流速軸)方向にシフトすることになる。また、グラジエントパルスの強度Gは、流速vに乗じられているため、強度Gを変更すると図4に示すシミュレーションデータ曲線の変化率(傾き)が変わることとなる。
【0077】
以上の性質から、まずアングルオフセットdφの値を調整して静脈の流速において最大の信号強度Sが得られるようにし、続いてグラジエントパルスの強度Gを調整して収縮期における動脈からの信号強度が所定の値を維持できるように撮影条件を設定することができる。図4では、静脈からの信号の相対強度Sを1、収縮期における動脈からの信号の相対強度Sの下限値を0.4としている。
【0078】
ただし、血流の流速が用いられていれば、上記の方法以外の条件によりアングルオフセットdφおよびグラジエントパルスの強度Gを決定してもよい。
【0079】
図5は、図2に示すパルスシーケンス設定部45により設定されるFSEシーケンスの例を示す図である。
【0080】
図5に示すように、FSEシーケンスの場合には、90°励起パルスに続いてα°リフォーカスパルスが印加される。90°励起パルスの送信位相は0°からアングルオフセットdφだけシフトした値に設定され、α°リフォーカスパルスの送信位相は90°に設定される。そうすると、90°励起パルスの印加からTE経過後にEcho信号が得られる。また、Echo信号の受信時に印加されるRO方向へのグラジエントパルスの強度Gも流速に応じて設定することができる。スライス方向および位相エンコード方向への各グラジエントパルスGSlice、GPhaseも本来設定されるべき値に設定される。
【0081】
尚、FSEシーケンスの他、SE(Spin Echo)シーケンス、EPI(Echo Planar Imaging)シーケンス、FSE法にハーフフーリエ法を組合せたFASE(Fast Asymmetric SE)シーケンス等のシーケンスを設定することが好適である。
【0082】
このようなアングルオフセットdφおよびグラジエントパルスの強度Gを設定するために、パルスシーケンス設定部45は、血流速度取得部46から収縮期あるいは拡張期における静脈あるいは動脈の流速を取得できるように構成されている。
【0083】
血流速度取得部46は、収縮期あるいは拡張期における静脈あるいは動脈の流速を取得する機能と、取得した血流の流速をパルスシーケンス設定部45に通知する機能を有する。流速の取得方法としては、例えば、ユーザからの入力情報として取得する方法や、スキャンの実行により流速を求める方法が挙げられる。ユーザからの入力情報として流速を取得する場合には、血流速度取得部46が表示装置34に流速の入力フィールドを表示させ、入力装置33からの入力情報として流速を取得するように構成することができる。この場合、ユーザは任意の手法で予め被検体Pの血流の流速を計測しておく。
【0084】
また、PC(phase contrast)法によるスキャンに代表されるような血流の流速を計測するスキャンを実行することにより流速を取得することができる。この場合には、血流速度取得部46が血流の流速を計測するスキャンの実行指示をパルスシーケンス設定部45に与えるように構成することができる。そして、パルスシーケンス設定部45が血流の流速計測用のスキャンを実行するパルスシーケンスをシーケンスコントローラ制御部40に与え、スキャンが実行される。そして、流速計測用のスキャンにより得られたデータは、シーケンスコントローラ制御部40を介して血流速度取得部46に与えられ、血流速度取得部46において流速値が求められる。
【0085】
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作および作用について説明する。
【0086】
図6は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により、血流の流速に応じて送信パルスの位相を設定しつつMRA像を撮像する際の流れの一例を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0087】
まず、ステップS1において、被検体Pの血流の流速が取得される。例えば、血流速度取得部46が表示装置34に流速の入力フィールド情報を与えて表示させる。そしてユーザは、入力装置33から流速を入力する。これにより血流速度取得部46は、流速を取得する。このとき静脈の流速を入力すれば、静脈の流速に基づいて上記の方法でアングルオフセットdφを決定することができる。
【0088】
また別の例では、PCスキャンの実行指示が、血流速度取得部46からパルスシーケンス設定部45に与える。そうすると、パルスシーケンス設定部45は、PCスキャンを実行するためのPCパルスシーケンスをシーケンスコントローラ制御部40に与える。シーケンスコントローラ制御部40は、PCパルスシーケンスをシーケンスコントローラ31に与えることによりシーケンスコントローラ31を駆動制御する。
【0089】
また、このとき寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0090】
次に、シーケンスコントローラ31は、シーケンスコントローラ制御部40から受けたPCパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域にX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gzを形成させるとともに、RF信号を発生させる。すなわち、送信器29からは、PCパルスシーケンスに応じてRFコイル24に順次RF信号が与えられ、RFコイル24から被検体PにRF信号が送信される。
【0091】
送信されたRF信号に伴って発生したMR信号は、RFコイル24によって受信される。RFコイル24によりMR信号が受信されると、受信器30は、RFコイル24からMR信号を受けて、前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリング等の各種信号処理を実行する。さらに受信器30は、MR信号をA/D変換することにより、デジタルデータのMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。
【0092】
この生データの収集は、ECGユニット38により取得されたECG信号に基づいて心電同期で実行される。そして、心筋の収縮期および拡張期における生データが収集される。
【0093】
シーケンスコントローラ31は、受信器30から受けた生データをシーケンスコントローラ制御部40に与え、シーケンスコントローラ制御部40はPCスキャンによって得られた生データを血流速度取得部46に与える。血流速度取得部46は、生データから得られる位相画像から血流の位相シフトを求めることにより、血流の流速を算出する。
【0094】
そしてこのようにして得られた流速は、血流速度取得部46からパルスシーケンス設定部45に与えられる。
【0095】
次に、ステップS2において、パルスシーケンス設定部45は、血流速度取得部46から受けた血流の流速に基づいて、収縮期および拡張期の動脈からの信号強度差がより大きく、静脈からの信号強度差がより小さく、かつ動脈からの相対信号強度が所定の強度となるようにアングルオフセットdφおよびRO方向へのグラジエントパルスの強度Gを設定する。
【0096】
例えば、静脈からの信号の相対強度Sが1、収縮期における動脈からの信号の相対強度Sの下限値が0.4となるように、アングルオフセットdφおよびRO方向へのグラジエントパルスの強度Gがパルスシーケンス設定部45により自動的に設定される。
【0097】
そして、パルスシーケンス設定部45は、設定したアングルオフセットdφおよびRO方向へのグラジエントパルスの強度Gに基づいてパルスシーケンスを作成する。さらに、パルスシーケンス設定部45は、作成したパルスシーケンスをシーケンスコントローラ制御部40に与える。
【0098】
次に、ステップS3において、スキャンが実行されデータが収集される。入力装置33からスキャン開始指令がシーケンスコントローラ制御部40に与えられると、シーケンスコントローラ制御部40からパルスシーケンスがシーケンスコントローラ31に出力される。シーケンスコントローラ31は、シーケンスコントローラ制御部40から受けたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を制御し、生データを収集する。
【0099】
この生データの収集は、ECGユニット38により取得されたECG信号に基づいて心電同期で実行される。そして、心筋の収縮期および拡張期における生データが収集される。
【0100】
シーケンスコントローラ31は、収集した生データをシーケンスコントローラ制御部40に与え、シーケンスコントローラ制御部40は生データデータベース41に形成されたk空間に生データを配置する。
【0101】
次に、ステップS4において、生データデータベース41に蓄積された生データを元データとして血流像が生成されて表示される。すなわち、画像再構成部42は、生データデータベース41から生データを取り込んで3次元フーリエ変換処理等の所定の画像再構成処理を施すことにより、3D画像データを再構成する。画像再構成部42は、生成された3D画像データを画像データデータベース43に書き込む。
【0102】
次に、血流像作成部44は、画像データデータベース43から心筋の拡張期および収縮期における3D画像データを読み込んで、差分処理を行うことにより静脈データをキャンセルし、動脈データを抽出する。ここで、アングルオフセットdφおよびRO方向へのグラジエントパルスの強度Gの適切な設定により、拡張期および収縮期における3D画像データの信号強度は、動脈からのデータについては強度差が大きく、静脈からのデータについては強度差が小さくなっている。したがって、差分処理によって、動脈からのデータの信号強度が十分に得られる一方、静脈からのデータは良好にキャンセルされる。このため、動静脈分離が精度よく実行される。
【0103】
また、血流像作成部44は、拡張期における3D画像データのうち、ある閾値内の信号値を有する動脈データ以外のデータを静脈データとして検出する。すなわち、信号値に下限値のみならず上限値を設定することによって、関節液等のT2が長く信号値の大きいデータを除去しつつ3D画像データから静脈データを検出する。
【0104】
更に、血流像作成部44は、差分処理により得られた動脈データおよび閾値処理により得られた静脈データに対してMIP処理を施す。このとき、血流像作成部44は、MIP処理後の動脈データには赤の色情報を割当てる一方、MIP処理後の静脈データには青の色情報を割当てる。そして、MIP処理により生成された動脈データおよび静脈データを含むMIP画像は表示用の血流画像データとして血流像作成部44から表示装置34に与えられ、表示装置34に動脈および静脈が血流像として描出される。このとき、動脈は赤で、静脈は青で表示されるため、動静脈を視覚的に識別することができる。
【0105】
図7は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20によりアングルオフセットdφの最適化を行って得られた腸骨部における動脈のMIP画像をアングルオフセットdφの設定を行わずに得られた従来の動脈のMIP画像と比較した図である。
【0106】
図7において左側の画像は、アングルオフセットdφを適切に設定して得られたMIP画像であり右側の画像は、アングルオフセットdφを設定しない従来の手法で撮像されたMIP画像である。尚、RO方向のグラジエントパルスの強度はG=−10%とした。
【0107】
図7によれば、アングルオフセットdφを適切に設定することによって、アングルオフセットdφを設定しない場合に比べて動脈からの信号強度が全体に亘って増加し、かつN/2アーチファクトが低減しているのが確認できる。
【0108】
図8は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20によりアングルオフセットdφの最適化を行って得られた膝窩部において分岐する動脈のMIP画像をアングルオフセットdφの設定を行わずに得られた従来の動脈のMIP画像と比較した図である。
【0109】
図7において左側の画像は、アングルオフセットdφを適切に設定して得られたMIP画像であり右側の画像は、アングルオフセットdφを設定しない従来の手法で撮像されたMIP画像である。尚、RO方向のグラジエントパルスの強度はG=+10%とした。
【0110】
図7によれば、アングルオフセットdφを適切に設定することによって、アングルオフセットdφを設定しない場合に比べて動脈からの信号強度が増加している反面、静脈からの信号強度は抑制されているのが確認できる。
【0111】
これらの結果から、流速に応じてRO方向のグラジエントパルスの強度Gのみならず、アングルオフセットdφを適切に設定することによって、動脈の描出およびN/2アーチファクトの低減をより良好に実行できるということが分かる。
【0112】
尚、流速に起因する2つのエコー成分間における位相差2(φ+dφ)の増加に伴って、N/2アーチファクトが現れることが過去の研究により確認されている。しかし、この位相差2(φ+dφ)が約120°以下であり、かつ相対信号強度Sが0.4より大きい場合には、収縮期の速い流れにおいてN/2アーチファクトを低減できると考察される。
【0113】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、励起パルスまたはリフォーカスパルスの位相を血流の流速に応じてシフトすることにより、良好な血流像を描出するものである。このため、磁気共鳴イメージング装置20によれば、流速に応じて最適化されたアングルオフセットを適用することにより、描出目的となる血管から常に高強度の信号を得ることが可能となる。また、N/2アーティファクトの低減や静脈血管の抑制効果も得られ、動静脈の分離精度を改善することができる。
【0114】
図9は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の第2の実施形態におけるコンピュータの機能ブロック図である。
【0115】
図9に示された、磁気共鳴イメージング装置20Aでは、コンピュータ32Aの機能により適切なアングルオフセットを求めるための準備スキャンを実行できるようにした点が図1に示す磁気共鳴イメージング装置20と相違する。他の構成および作用については図1に示す磁気共鳴イメージング装置20と実質的に異ならないためコンピュータ32Aの機能ブロック図のみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0116】
磁気共鳴イメージング装置20Aのコンピュータ32Aは、図2に示すコンピュータ32と同様の構成要素に加え、準備スキャン実行部50および画像指定部51を備えている。
【0117】
準備スキャン実行部50は、アングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gの一方あるいは双方を徐々に変化させて繰返しデータ収集を行う準備スキャンの実行指示をパルスシーケンス設定部45に与える機能を有する。
【0118】
図10は、図9に示す磁気共鳴イメージング装置20Aにより実行される準備スキャンとイメージングスキャンとを時系列に示した図である。
【0119】
図10に示すように準備スキャンは、血流像を取得するためのイメージングスキャンに先立って実行されるスキャンである。準備スキャンでは、アングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gの一方あるいは双方を変化させて撮像された複数の血流像が参照用に得られる。このため、各参照用の画像は、アングルオフセットdφやRO方向のグラジエントパルスの強度Gに応じて互いに信号強度が異なる血流像となる。そして、ユーザは準備スキャンで得られた複数の参照用の血流像から望ましい信号強度であり良好に目的とする血流が描出されている血流像を選択することができる。この血流像の選択により、適切なアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを決定することができる。
【0120】
準備スキャンにより得られた各血流像におけるそれぞれの血流の信号強度は、血流の流速に応じても一様に変化するため、各血流像は流速を血流描写能として間接的に示したものと言える。従って、流速に応じて選択されるべき血流像が変わることとなり、結果的に流速に応じてアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gが決定されることになる。
【0121】
アングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gの変更範囲や変化量、準備スキャンにおける撮像回数、使用するパルスシーケンスの種類等の準備スキャンにおける撮影条件は、入力装置33から準備スキャンの開始指示情報として準備スキャン実行部50に与えることができる。このため、準備スキャン実行部50には、これら準備スキャンの撮影条件を設定するための設定画面を表示装置34に表示させる機能も備えられる。
【0122】
尚、準備スキャンで用いるパルスシーケンスを、血流像を取得するためのイメージングスキャンで用いるパルスシーケンスと同じ種類のパルスシーケンスに設定すれば、同様な撮影条件による参照用の画像が得られるため、より適切な画像を選択することができる。ただし、スキャン時間短縮の観点からイメージングスキャンが3次元スキャンの場合、準備スキャンは2次元スキャンとしてもよい。
【0123】
そして、このように設定された準備スキャンの撮影条件は、準備スキャン実行部50からパルスシーケンス設定部45に通知され、パルスシーケンス設定部45が設定された撮影条件のパルスシーケンスを作成するように構成される。
【0124】
画像指定部51は、準備スキャンにより撮像された複数の参照用の画像からどの画像が選択されたのかを示す画像指定情報を入力装置33から取得し、取得した画像指定情報をパルスシーケンス設定部45に与える機能を有する。
【0125】
そして、パルスシーケンス設定部45は、画像指定部51から受けた画像指定情報に基づいて、選択された参照用の画像を準備スキャンにおいて撮像する際に用いられたアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを検索する機能と、検索して得られたアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを用いてイメージングスキャン用のパルスシーケンスを設定するように構成される。
【0126】
図11は、図9に示す磁気共鳴イメージング装置20Aにより、準備スキャンを行った後、MRA像を撮像する際の流れの一例を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。また、図6と同様のステップには同符号を付して説明を省略する。
【0127】
まず、ステップS10において、入力装置33から準備スキャン実行部50に準備スキャンの開始指示情報を入力する。準備スキャンの開始指示情報には、アングルオフセットdφやRO方向のグラジエントパルスの強度Gの変更範囲や変更幅または撮像回数等の情報が含められる。また、準備スキャンで使用するパルスシーケンスの種類も含められるが、血流像を取得するためのイメージングスキャンと同じ種類のパルスシーケンスに設定することが望ましい。また、準備スキャンを2次元スキャンとすれば、スキャン時間の短縮化を図ることができる。
【0128】
準備スキャン実行部50は、準備スキャンの開始指示情報に従って、設定された撮影条件による準備スキャンの実行指示をパルスシーケンス設定部45に通知する。パルスシーケンス設定部45は、準備スキャン実行部50から受けた準備スキャンの開始指示に従って、準備スキャンのパルスシーケンスを設定する。設定されたパルスシーケンスは、パルスシーケンス設定部45からシーケンスコントローラ制御部40を介してシーケンスコントローラ31に出力され、シーケンスコントローラ31により準備スキャンが実行される。
【0129】
準備スキャンにより得られた生データは、生データデータベース41に形成されたk空間に配置される。さらに、画像再構成部42による生データに対する画像再構成処理および血流像作成部44による差分処理やMIP処理等の血流像生成処理により、アングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを変化させて得られた複数の血流像が生成される。血流像作成部44により生成された各血流像は、表示装置34に表示される。
【0130】
表示装置34に表示された各血流像は、アングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gが異なるため互いに異なる信号強度で血管が描出される。ユーザは、表示された血流像の中から、最もN/2アーチファクトが軽減され、かつ動脈が良好に描出された血流像を選択する。
【0131】
そして、ステップS11において、ユーザは、選択した血流像を示す画像指定情報を入力装置33から画像指定部51に入力する。画像指定部51は、入力装置33から受けた画像指定情報をパルスシーケンス設定部45に与える。
【0132】
次に、ステップS2において、パルスシーケンス設定部45は、イメージングスキャン用のパルスシーケンスを設定する。このとき、アングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gは、画像指定情報により指定された血流像を準備スキャンにおいて撮像する際に用いられた値に設定される。
【0133】
そして、図6のステップS3からステップS4と同様な手順によりイメージングスキャンが実行されて血流像が生成・表示される。
【0134】
このように生成された血流像は、準備スキャンにおいて良好に血流が描出された血流像の撮影条件と同様な撮影条件により撮影された画像であるため、N/2アーチファクトが軽減され、静動脈が良好に分離される。
【0135】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20Aは、血流の流速を求めてアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを決定する代わりに、アングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを変化させて複数の血流像を得る準備スキャンを実行し、準備スキャンで得られた複数の血流像を参照することによって、適切なアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを決定するようにしたものである。
【0136】
このため、磁気共鳴イメージング装置20Aによれば、血流の流速が不明である場合であっても、準備スキャンにより得られた血流象を参照することによって、間接的に流速に応じて適切なアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを決定することができる。このため、血流像の生成に際して静動脈の適切な分離が可能になり、N/2アーチファクトの軽減も期待することができる。
【0137】
図12は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の第3の実施形態におけるコンピュータの機能ブロック図である。
【0138】
図12に示された、係る磁気共鳴イメージング装置20Bでは、コンピュータ32Bに血流速度取得部46を設ける代わりに血流像撮影条件テーブル60および血流像撮影条件指示部61を設けた点が図1に示す磁気共鳴イメージング装置20と相違する。他の構成および作用については図1に示す磁気共鳴イメージング装置20と実質的に異ならないためコンピュータ32Bの機能ブロック図のみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0139】
磁気共鳴イメージング装置20Bのコンピュータ32Aは、図2に示すコンピュータ32と同様の構成要素に加え、血流像撮影条件テーブル60および血流像撮影条件指示部61を備えている。
【0140】
血流像撮影条件テーブル60には、予めアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gが撮影部位や静磁場強度等の他の撮影条件と関連付けられて保存されている。アングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gは、血流速度に応じて設定すべきであるが、実際に血流の速度を取得せずに血流の速度を推定することによって適切なアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを設定することもできる。
【0141】
例えば、血流速度は、胸部、腹部、下肢の順に徐々に遅くなることが知られている。従って、被検体ごとに血流速度が多少異なるものの被検体ごとの違いを無視すれば、血流速度は撮影部位ごとに推定することができる。すなわち、撮影計画において撮影部位が選択されれば、選択された撮影部位における血流速度が一義的に推定できるため、適切なアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gも併せて決定することができる。
【0142】
そこで、例えば、撮影計画において撮影条件として選択され得る胸部、腹部、下肢等の各撮影部位に最適なアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを決定する。そして、各撮影部位に関連付けられたアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gが血流像撮影条件テーブル60に保存される。ただし、アングルオフセットdφの代わりに、励起パルスおよびリフォーカスパルスの送信位相を関連付けてもよい。以下、アングルオフセットdφを撮影条件と関連付ける場合について説明する。
【0143】
また、静磁場用磁石21によって形成される静磁場強度に依存して、図4に示すような信号強度の変化が変わる可能性がある。そこで、静磁場強度ごとに適切なアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを決定し、血流像撮影条件テーブル60に保存することができる。尚、標準的な静磁場強度の装置として、0.5T, 1.0T, 1.5T, 3.0Tの装置が市販されている。
【0144】
血流像撮影条件指示部61は、GUI(Graphical User Interface)を備えており、表示装置34に検査計画用の画面を表示させる一方、入力装置33からの指示情報に従って血流像の撮影条件を設定する機能と、血流像撮影条件テーブル60から設定した撮影条件に適切なアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを取得して撮影条件とともにパルスシーケンス設定部45に与える機能とを有する。
【0145】
一般的な検査計画用の画面では、上位概念から下位概念に階層的に表示された撮影条件の候補から診断目的に従って適切な撮影条件が選択される。具体的には、胸部、腹部、下肢等の撮影部位の候補が表示され、マウス等の入力装置33の操作によって撮影部位を選択すると、選択された撮影部位に適したパルスシーケンス等の撮影条件の候補が選択可能に表示される。
【0146】
そこで、撮影部位が選択された際に、血流像撮影条件テーブル60から設定した撮影条件に適切なアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを取得して、撮影条件の1つとして設定することができる。このとき、選択された撮影部位に対応する血流速度のみならず、アングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを表示装置34に参照用に表示させてもよい。
【0147】
アングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gの表示方法としては、単に選択されたアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gのみを表示させる方法の他、血流像撮影条件テーブル60に保存されている複数のアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを表示させ、選択されたアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを強調表示させる方法が挙げられる。
【0148】
また、適切なアングルオフセットdφやRO方向のグラジエントパルスの強度Gの候補が複数存在する場合には、アングルオフセットdφやRO方向のグラジエントパルスの強度Gの候補を表示装置34に表示させて選択できるように構成してもよい。
【0149】
そして、パルスシーケンス設定部45は、血流像撮影条件指示部61から取得したアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gでパルスシーケンスを設定するように構成される。
【0150】
このように構成された磁気共鳴イメージング装置20Bによれば、静磁場強度や撮影部位等の条件が設定されれば、血流速度やアングルオフセットdφ(または励起パルスおよびリフォーカスパルスの送信位相)およびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを意識することなく適切なアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを自動的に設定することができる。そして、自動設定されたアングルオフセットdφおよびRO方向のグラジエントパルスの強度Gを用いてFBIを行うことが可能となる。
【0151】
すなわち、磁気共鳴イメージング装置20Bによれば、図6に示すフローチャートのステップS2において、撮影条件の設定の際に撮影部位等の他の撮影条件が設定されれば、ステップS3およびステップS4においてデータ収集および血流像の描出を行うことができる。
【0152】
このため、磁気共鳴イメージング装置20Bによれば、血流速度の取得や準備スキャン等の作業を行うことなく短時間かつ簡易に血流像を作成することができる。
【0153】
尚、各実施形態における磁気共鳴イメージング装置20、20A、20Bが備える機能のうち所望の複数の機能を備えた磁気共鳴イメージング装置を構築することもできる。例えば、血流の流速が判明する場合には、流速に基づいて撮影条件を設定する一方、血流の流速が不明の場合には準備スキャンの実行或いは撮影部位の指示によって、適切な撮影条件を設定できるように磁気共鳴イメージング装置を構成することができる。
【符号の説明】
【0154】
20 磁気共鳴イメージング装置
21 静磁場用磁石
22 シムコイル
23 傾斜磁場コイルユニット
24 RFコイル
25 制御系
26 静磁場電源
27 傾斜磁場電源
28 シムコイル電源
29 送信器
29a RFパルス発生器
29b 参照波発生器
29c 移相器
29d 積算器
29e 振幅変調器
30 受信器
31 シーケンスコントローラ
32 コンピュータ
33 入力装置
34 表示装置
35 演算装置
36 記憶装置
37 寝台
38 ECGユニット
40 シーケンスコントローラ制御部
41 生データデータベース
42 画像再構成部
43 画像データデータベース
44 血流像作成部
45 パルスシーケンス設定部
46 血流速度取得部
50 準備スキャン実行部
51 画像指定部
60 血流像撮影条件テーブル
61 血流像撮影条件指示部
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の血流の流速を計測するためのスキャンを実行する血流速度計測部と、
前記血流速度計測部により取得された前記血流の速度に応じて撮影条件を設定する撮影条件設定部と、
前記撮影条件設定部により設定された撮影条件に従ってイメージングスキャンを実行することによって、前記被検体の血流像を生成する血流像生成部と、
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記撮影条件設定部は、前記被検体の静脈から発生する磁気共鳴信号の強度が増加するような前記撮影条件を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記撮影条件設定部は、前記被検体の動脈から発生する磁気共鳴信号の強度が所定の強度以上となるような前記撮影条件を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記撮影条件設定部は、前記被検体の心筋の拡張期および収縮期において静脈からそれぞれ発生する各磁気共鳴信号の強度が互いに同等となるように前記撮影条件を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記撮影条件設定部は、前記被検体の心筋の拡張期および収縮期において動脈からそれぞれ発生する各磁気共鳴信号間の強度差が増加するように前記撮影条件を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記撮影条件設定部は、前記撮影条件として、送信励起パルスの送信位相、リフォーカスパルスの送信位相、および前記送信励起パルスと前記リフォーカスパルスとの間における相対的な位相差に対するシフト量の少なくとも1つを設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記撮影条件設定部は、前記撮影条件として、読出し方向のグラジエントパルスの強度を設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記血流の速度を計測するためのスキャンは、Phase Contrast法によるスキャンである、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−24604(P2012−24604A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217744(P2011−217744)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【分割の表示】特願2006−225054(P2006−225054)の分割
【原出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】