説明

磁気共鳴電力伝送方法及びその装置

【課題】自己共鳴によるコイルを用いた非接触電力伝送を効率良く実現する。
【解決手段】受電装置は、受電コイルから受電電力の周波数特性を検出する周波数特性検出装置と、周波数特性、又は、前記周波数特性から得られる受電電力が最大となる最大電力周波数から成る電力周波数情報を、送電装置に送信する送信装置とを有する。送電装置は、送電電力の周波数を可変できる送電周波数可変装置と、送電コイルから送電する送電電力の周波数を、順次、変化させる周波数走査装置と、送信装置から送信された電力周波数情報を受信する受信装置を有する。受信装置により受信された電力周波数情報に基づいて、送電周波数可変装置による送電電力の周波数を、検出された最大電力周波数に一致させる周波数制御装置を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電コイルと受電コイルとを用いた磁気共鳴による無線の電力伝送方法と電力伝送装置に関する。電気自動車のバッテリに対する給電のための電力伝送に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
非接触による電力伝送方式には、大きくは、次の2つの方式に分類される。第1は、非放射による電力伝送であり、第2は、放射による電力伝送である。第1の方式には、主として、トランスの原理を用いた周波数数kHz以下で用いる電磁誘導方式と、周波数に数十MHz程度を用いた近接場(近接場に蓄積される静的エネルギー)の電磁共鳴による電磁界結合方式とがある。また、第2の方式には、マイクロ波送電による方式と、レーザ送電による方式とがある。本発明は、このうち電磁共鳴による電磁界共鳴方式に関するものである。
【0003】
電磁誘導方式を用いた電力伝送として、下記特許文献1、2の技術が知られている。特許文献1の技術は、固定部から回転部への電力伝送に、5〜10mmだけ離間した送電コイルと受電コイルとの一対の電力コイルを用いて非接触で電力を伝送する装置が開示されている。同文献によると、数百kHzの周波数電力を固定部から回転部へ伝送し、回転部に設置された各種のセンサの検出信号を、電力コイルの外に設けた一対のデータコイルで、回転部から固定部へ、数MHzの信号で伝送するようにしている。また、固定部の送電コイルの入力インピーダンスが、送電コイルと受電コイルとの間隔により変化するので、送電コイルへの給電効率を向上させるために、送電コイルへ供給する電力の周波数を変化させることが行われている。また、特許文献2においても、一次コイルから無線電力を供給して、一次コイルと電磁結合する2次コイルで受電して、2次コイルに接続されたバッテリーに充電する装置が開示されている。この文献の技術は、2次コイルで発生する磁場を遮蔽する技術である。
【0004】
電磁共鳴による電磁界結合方式として、最近、注目されている下記非特許文献1に開示の技術が知られている。同非特許文献1の技術は、2m程度離間された、半径25cmのループ状の強く磁気結合した一対の磁気共鳴コイルを用いて、9.9MHzの正弦波電力を伝送できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−340285
【特許文献2】特開2009−268334
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wireless Power Transfer via Strongly Coupled Magnetic Resonances, Andre Kurs, et.al, Science Vol.317, 6 July 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1、2の方法は、コイルの外部に共振回路を設ける方式であり、Q値が小さく、効率の良い電力伝送はできない。この方式は、本質的には、電磁誘導方式であるため、原理的には、結合係数を大きくする方向の技術であり、両コイル間の距離は、5〜10mm程度と狭くせざるを得ず、且つ、伝送効率が低くならざるを得ないという問題がある。また、10mm以上、距離が離れると、効率の良い伝送ができないばかりか、送電コイルる入力インピーダンスが変化するために、送電周波数の調整が必要である。また、これらの電力伝送方式においては、外部共振回路を用いるため、共振特性は単峰性の特定である。
【0008】
一方、電磁界結合方式の上記の非特許文献1に開示の技術は、原理的には、自己共鳴型のコイルを用いて、送電コイルと受電コイルを全体としての近接場エネルギーによる電磁界共鳴を用いた方式であり、原理上、Q値が高く、比較的長距離の伝送が可能であり、放射損失がないため、伝送効率が高い無線電力伝送方式である。また、電磁界共鳴を用いている関係上、周波数と送電コイルと受電コイルの自己インダンタンスが大きければ、結合係数は小さくとも(原理的には、0に近い状態でも)、高い伝送効率を実現することができる。この結果、非特許文献1によれば、1m程度、両電力コイルを離間させても、90%以上の送電効率が実現できている。この共鳴の周波数特性は、双峰性の特性を示す。
【0009】
しかしながら、非特許文献1の技術を用いて、大電力を送電する場合に、送電コイルと受電コイル間の距離が変化すると、伝送効率が高くなる2つの共振周波数が変化し、送電電力の周波数を伝送効率が最大となる周波数に最適設定していても、両コイル間の距離が長くなると、伝送効率が低下するという問題が発生する。
【0010】
本発明は、この問題を解決するために成されたものであり、送電コイルと受電コイル間の距離が変化しても、常に、最大の送電効率が得られるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、自己共鳴による送電コイルと自己共鳴による受電コイルとを結合させて磁気共鳴により無線で送電コイルから受電コイルへ電力を伝送するようにした磁気共鳴電力伝送方法において、受電コイルによる受電電力が最大となる最大電力周波数を検出して、送電コイルによる送電電力の周波数をその最大電力周波数に一致させて、電力伝送することを特徴とする磁気共鳴電力伝送方法である。
【0012】
本発明では、送電コイルと受電コイルは、自己共鳴型のコイルが用いられる。共鳴特性は、2つの共振周波数でピークを有する双峰性の特性を有している。本方法は、このような、送電コイルから電力を送電して、受電コイルを受電して、バッテリーなどを充電する方法に用いることができる。送電コイルと受電コイルとの距離が長くなると、共鳴特性において、2つの共振周波数は、変化し、2つの共振周波数は接近する。この結果、固定された送信周波数で電力を伝送すると、送電効率が低下する。そこで、受電コイルで受信された電力が最大値をとる周波数が、最大電力周波数として検出される。そして、送電コイルから送出される電力の周波数が、その最大電力周波数に一致するように、制御される。その結果、送電コイルと受電コイルと間の距離に関係なく、常に、最大の送電効率を実現することができる。
【0013】
本発明において、最大電力周波数に、送電電力の周波数を一致させる方法には、第2発明のように、送電コイルから送電する電力の周波数を、順次、変化させて、受電コイルにより電力を受電して、受電電力の周波数特性を検出し、その周波数特性、又は、その周波数特性から得られる受電電力が最大となる最大電力周波数から成る電力周波数情報を、送電コイル側に、フィードバックして、送電コイルによる送電周波数を決定する方法を、望ましくは、採用することができる。
【0014】
すなわち、送電コイルから送電される電力の周波数を走査して、受電コイルにより受電電力の周波数特性が検出される。最大電力周波数は、受電コイルが設置される装置の側で、周波数特性においてピークから検出するようにして、その最大電力周波数を、送電コイルが設置される装置の側に送信するようにしても良い。また、周波数特性を、送電コイルが設置される装置の側に送信して、その装置の側で、電力が最大値をとる周波数を最大電力周波数として検出するようにしても良い。
【0015】
また、第3発明のように、送電コイルから送電する電力を、最大電力周波数を含む広帯域周波数として、送出し、受電コイルにより電力を受電して、その電力の時間変化特性を検出し、又は、その時間変化特性の周波数分析による周波数特性を検出し、前記時間変化特性、前記周波数特性、又は、その周波数分析による周波数特性を検出し、時間変化特性、周波数特性、又は、周波数特性から得られる受電電力が最大となる最大電力周波数から成る電力周波数情報を、送電コイル側に、フィードバックして、送電コイルによる送電周波数を決定するようにしても良い。最大電力周波数を含む広帯域周波数としては、共鳴特性における2つのピークのうち、少なくとも一方のピークの周波数を含む広帯域周波数が選択される。もちろん、2つのピークの周波数を含む広帯域周波数が選択されても良い。この広帯域の電力としては、例えば、パルス、方形波は電力などである。この送電電力の受電電力は、送電コイルと受電コイルから系のインパルス応答となる。したがって、この受電電力の時間特性から、フーリエ変換により、系の伝達関数、すなわち、周波数特性を求めることができる。この周波数特性は、送電コイルが設置される側で求めても良いし、受電コイルが設置される側で求めても良い。したがって、受電コイルから送電コイルへの送信する情報の種類は、受電コイル側で、どこまでデータを処理するかにより変化する。時間特性のまま、送電コイル側に送信する場合、受電コイル側で、時間特性からフーリエ変換して周波数特性を求めて、その周波数特性を送電コイル側に送信する場合、受電コイル側でその周波数特性から、さらに、最大電力周波数を求めて、その最大電力周波数を、送電コイル側に送信する場合の3通りがある。送電コイル側では、受信した電力周波数情報の種類に応じてデータ処理を行い、最終的に、最大電力周波数が検出されることになる。
【0016】
また、最大電力周波数を求めるための電力は、受電コイルが設置される装置に給電するための本送電電力としても良いが、本送電電力よりは電力が小さい試験送電電力としても良い。すなわち、第4発明は、最大電力周波数を検出するための試験送電電力は、最大電力周波数に一致させて送電する本送電電力よりも、小さい電力であることを特徴とする。
【0017】
また、電力周波数情報のフィードバックは、第5発明のように、送電コイルと受電コイルとは、別系統の送信アンテナ、受信アンテナにより行っても良い。また、第6発明のように、電力周波数情報のフィードバックは、その情報を受電コイルから送電コイルへ送信することにより、行っても良い。
【0018】
第7発明は、自己共鳴による送電コイルと、この送電コイルに送電電力を供給する送電装置と、この送電コイルと電磁結合する自己共鳴による受電コイルと、この受電コイルから電力を入力して負荷に電力を供給する受電装置とを有する磁気共鳴電力伝送装置において、受電装置は、受電コイルから受電電力の周波数特性を検出する周波数特性検出装置と、周波数特性、又は、周波数特性から得られる受電電力が最大となる最大電力周波数から成る電力周波数情報を、送電装置に送信する送信装置と、を有し、送電装置は、送電電力の周波数を可変できる送電周波数可変装置と、送電コイルから送電する送電電力の周波数を、順次、変化させる周波数走査装置と、送信装置から送信された電力周波数情報を受信する受信装置と、受信装置により受信された電力周波数情報が周波数特性である場合には、受信電力が最大となる最大電力周波数を検出して、その最大電力周波数に基づいて、送電周波数可変装置による送電電力の周波数を、最大電力周波数に一致させ、電力周波数情報が最大電力周波数である場合には、その最大電力周波数に基づいて、送電周波数可変装置による送電電力の周波数を、最大電力周波数に一致させる周波数制御装置と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明は、第1、第2の方法発明を実施する装置発明である。受電電力の周波数特性を測定するためには、第8 発明のように、送電装置は、送電コイルから送電する電力の周波数を、順次、変化させる周波数走査装置を有することが望ましい。
【0020】
また、第8の発明は 自己共鳴による送電コイルと、この送電コイルに送電電力を供給する送電装置と、この送電コイルと電磁結合する自己共鳴による受電コイルと、この受電コイルから電力を入力して負荷に電力を供給する受電装置とを有する磁気共鳴電力伝送装置において、受電装置は、受電コイルから受電電力の時間変化特性を検出し、又は、その時間変化特性の周波数分析によるり周波数特性を検出する周波数特性検出装置と、時間変化特性、周波数特性、又は、周波数特性から得られる受電電力が最大となる最大電力周波数から成る電力周波数情報を、送電装置に送信する送信装置と、を有し、送電装置は、送電電力の周波数を可変できる送電周波数可変装置と、送電コイルから送電する電力を、最大電力周波数を含む広帯域周波数として、送出する広帯域電力出力装置と、送信装置から送信された電力周波数情報を受信する受信装置と、受信装置により受信された電力周波数情報が、時間変化特性である場合には、その時間変化特性から周波数特性を求め、その周波数特性から最大電力周波数を検出し、周波数特性である場合には、受信電力が最大となる最大電力周波数を検出し、検出された最大電力周波数に基づいて、送電電力の周波数を、その最大電力周波数に一致させ、電力周波数情報が最大電力周波数である場合には、その最大電力周波数に基づいて、送電周波数可変装置による送電電力の周波数を、最大電力周波数に一致させる周波数制御装置と、を有することを特徴とする。
【0021】
本発明は、第1、第3の方法発明を実施する装置発明である。少なくとも一方の最大電力周波数を含む広帯域周波数の電力を送出し、その受電電力を時間変化特性から、最大電力周波数を求めることを特徴とするものである。
【0022】
また、本第7、8の装置発明においても、方法発明と同様に、最大電力周波数を求めるための電力としては、受電装置に給電するための電力自体としても良いが、第9発明のように、波数特性を検出するための試験送電電力は、最大電力周波数に一致させて送電する本送電電力よりも、小さい電力として、試験送電電力を周波数走査用の電力としても良い。
【0023】
また、電力周波数情報を送電装置へ送信するには、第10発明のように、受電装置は、電力周波数情報を、送電装置へ送信するための送信アンテナを有し、送電装置は、送信アンテナから送信された電力周波数情報を受信する受信アンテナを有し、この送信アンテナと受信アンテナにより、電力周波数情報を伝送するようにしても良い。また、第11発明のように、送信アンテナは、受電コイルとし、受信アンテナは送電コイルとして、受電コイルから、電力周波数情報を送信して、送電コイルによりこの情報を受信するようにしても良い。
【0024】
最大電力周波数を決定するタイミングは、任意である。送電コイルと受電コイルとの間隔が、一旦、決定されれば、送電が完了するまで、その間隔が変化しない場合には、本電力の送電の開始前に、一回、行えば良い。送電コイルと受電コイルとの間隔が、送電中にも変化する場合には、送電中においても、所定時間間隔で、最大電力周波数を決定する処理及び送電電力の周波数のその最大電力周波数に一致させる処理を実行すれば良い。本発明は、電気自動車のバッテリーに充電する方法及びその装置に用いることができるが、その他、移動コンピュータとのバッテリーや、その他の移動電子装置への無接触による給電に用いることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の方法、又は、装置によると、送電コイルと受電コイルとの位置関係に係わらず、受電電力が最大値をとる最大電力周波数を検出して、その最大電力周波数に、本送電のための電力の周波数を一致させているので、常に、最大送電効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の具体的な実施例1の全体構成を示した構成図。
【図2】送電装置のCPUの処理手順を示したフローチャート。
【図3】受電装置のCPUの処理手順を示したフローチャート。
【図4】受電装置によって受電される電力の周波数特性を示した特性図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
図1は、実施例1の全体の構成を示している。送電側には、送電装置1が設けられている。送電装置1は、送電コイル10を有している。この送電コイル10は、電力増幅器20(電力トランジスタ)から給電される給電コイル12と、受電コイル40と電磁界結合をする結合コイル11とで構成されている。また、受電側は、受電コイル40を有している。この受電コイル40は、送電コイル10と電磁界結合する結合コイル41と、この結合コイル41から受電電力を外部へ出力するための出力コイル42とを有している。
【0029】
これらの送電コイル10と受電コイル40とは、自己共鳴によるコイルである。すなわち、結合コイル11は、結合コイル41と磁気結合する相互インダクタンスと、漏れインダクタンスと、結合コイル11の線間に存在する容量とによる直列共振回路を構成している。また、結合コイル41は、結合コイル11と磁気結合する相互インダクタンスと、漏れインダクタンスと、結合コイル41の線間に存在する容量とによる直列共振回路を構成している。そして、結合コイル11と結合コイル41とが、近接場で電磁界結合した状態で、2つの共振周波数を有した、結合特性が得られる。結合コイル11、41の巻数は、5.25ターンであり、直径60cmとした。この状態で、電磁波の放射はない。この自己共鳴によるコイルは、上記非特許文献1に詳しく記載されている。
【0030】
送電装置1において、給電コイル12に電力を供給する電力増幅器20が接続されており、この電力増幅器20には信号発生装置21が接続され、その信号発生装置21には送電周波数可変装置22が接続されている。そして、送電周波数可変装置22は、CPU23により制御される。CPU23は、メモリ、入出力インターフェースとを有したマイクロコンピュータで構成されている。CPU23には、受信アンテナ25からデータを入力する受信装置24が接続されている。受信アンテナ25は、受電側の送信アンテナ55からのデータ(電力周波数情報)を受信するものである。
【0031】
受電側には受電装置2が配設されている。その受電装置2において、出力コイル42から電力を入力する受電装置(電力トランジスタ)50が接続されており、その受電装置50には、整流回路と、その整流回路に接続されるバッテリなどで構成された負荷51が接続されている。受電装置50と負荷51との間には、切換スイッチ56が設けられている。切換スイッチ56は、受電装置50と負荷51とを直接接続する状態と、抵抗Rを介して、負荷51に接続する状態とで、切り換えられるように構成されている。抵抗Rは、負荷51に流れる電流値(実効値)を検出するための小さな値の抵抗である。このように構成しているのは、負荷51に給電されている状態で、最大電力が得られる周波数を求めるためである。また、負荷51に直列に挿入された抵抗Rの端子間電圧を測定することにより、負荷電流を測定し、受電電力を検出できるように構成している。抵抗Rの端子間電圧は、サンプリング装置52によりサンプリングされて、CPU53に入力して、CPU53においてデータ処理される。CPU53は、メモリ、入出力インターフェースとを有したマイクロコンピュータで構成されている。CPU53には、データを送信する送信装置54が接続されており、その送信装置54には、送信アンテナ55が接続されている。CPU53の処理した結果のデータは、送信アンテナ55を介して、受信アンテナ25へ送信されて、CPU23で処理される。また、受電装置50には、走査開始検出回路57が接続されて、その出力は、CPU53に入力している。走査開始検出回路57は、フィルタと整流回路とか成り、送電装置1による周波数走査の開始周波数を抽出して、CPU53に、周波数走査の開始タイミングを付与する回路である。
【0032】
本実施例は、受電装置2の側において、最大電力周波数を求め、その値を送電装置1にデータとして送信するものである。次に、送電装置1のCPU23の処理手順及び受電装置2のCPU53の処理手順について、図2、図3のフローチャートを用いて説明する。図2の処理手順は、送電のためのメインスイッチ(図示略)がオンになった時に、開始され、その後は、メインスイッチがオフとなるまで、一定の時間間隔で繰り返されるようにタイマー割込みが決定されている。ステップ100では、送電周波数可変装置22に対して、試験電力のための走査周波数が、所定時間間隔で出力される。この走査範囲と周波数間隔は、予め決められており、受電装置2においても既知の値である。送電周波数可変装置22は、LC共振回路で構成されており、容量Cの値が可変な装置である。信号発生装置21は、この送電周波数可変装置22の共振回路により決定された周波数の正弦波を発生する回路である。信号発生装置21の出力は、電力増幅器20で増幅されて、給電コイル12に出力される。給電コイル12に供給された電力エネルギーは、磁気結合により結合コイル11に蓄積される。すなわち、静電磁力的電磁エネルギーが結合コイル12に蓄積される。さらに、この電磁エネルギーは、受電コイル40の結合コイル41、出力コイル42にも蓄積されることになる。そして、出力コイル42から、受電装置50により、受電電力が出力される。
【0033】
受電装置2は、受電コイル40において、受電電力がある場合に、その電力でメインスイッチ(図示略)が自動的にオンするように構成されている。そして、走査開始検出回路57からの出力がある毎に、図3の処理手順が、CPU53により実行される。周波数走査の開始周波数が検出されると、ステップ200が実行されて、切換スイッチ56が、電力検出側に切り換えられる。そして、ステップ202において、サンプリング装置52により、抵抗Rの両端電圧がサンプリングされて、電力データが読み込まれる。この電力データは、周波数走査が終了するまで、連続的に、読み取られる。次に、ステップ204において、その電力の変化特性から最大電力となる周波数が決定される。受電装置2では、周波数走査の間隔が知られているので、時間軸と、周波数とは、対応させることができる。この特性は、図4のようになる。この特性から、ピークを与える最大電力周波数が決定される。2つのピークが検出されるので、そのピークの大きい方の周波数が最大電力周波数として決定される。
【0034】
次に、ステップ206において、送信装置54に、その最大電力周波数が、電力周波数情報として、出力される。次のステップ208では、切換スイッチ56が負荷側に切り換えられる。そして、送信装置54は、その情報を送信アンテナ55から送信する。送電装置1のCPU23は、この情報が受信されると、図2のステップ102において、データ受信がYes と判定されるので、ステップ104において、送電電力周波数可変装置22において、その受信した最大電力周波数が設定される。これにより、本電力の送信周波数は、最大電力周波数となる。そして、この周波数の交流電力が送電コイル10に供給されて、電磁共鳴により、受電コイル40に電力が伝送される。
【0035】
送電コイル10と受電コイル40間の伝送効率は、図4のように、送電コイル10と受電コイル40間の距離が長くなるにしたがって、電力ピークを与える2つの周波数が接近する。このような場合においても、本実施例では、常に、電力ピークを与える周波数を検出して、その周波数で送電するようにしているので、送電コイル10と受電コイル40との間の距離に係わらず、常に、最大電力伝送効率が実現される。
【0036】
また、本実施例では、所定時間間隔で、周波数走査を繰り返して実行して、新たに検出される最大電力周波数で、本電力伝送の周波数を決定しているので、負荷51の負荷状態が変化しても、その負荷状態に係わらず、最大電力伝送効率を実現できる。
【0037】
上記実施例では、周波数の走査を、所定時間間隔で実施しているが、送電装置1のメインスイッチがオンされた時にのみ、実行するようにしても良い。
【実施例2】
【0038】
実施例1では、最大電力周波数を、受電装置1の側で求めている。実施例2では、受電装置1は、図4の特性のサンプリング値を、そのまま、送信装置54で、送信するようにしている。そして、送電装置1のCPU23の側で、図4の特性を、受電装置1のCPU53が受信して、CPU23により、最大電力周波数を求める。この最大電力周波数で、本電力伝送を周波数を送電周波数可変装置22により設定している。
【実施例3】
【0039】
本実施例は、実施例1の周波数走査に換えて、パルス電力を伝送させる。すなわち、実施例1の走査周波数範囲のスペクトルを有する電力を送電装置1から出力する。そして、受電装置2では、この電力の時間特性を、サンプリング装置52により、入力される。CPU53は、この時間特性をフーリエ変換して、図4の周波数特性を演算により求める。そして、その周波数特性から最大電力周波数を求めて、実施例1と同様に、そのデータを送電装置1の側に送信する。このようにしても、最大電力周波数を決定することができる。
【実施例4】
【0040】
実施例3と異なり、受電装置2の側で、最大電力周波数を決定するのではなく、時間特性を、そのまま、実施例2のように、受電装置2から送電装置1へ送信する。送電装置1のCPU23が、この時間特性を受信して、フーリエ変換して、図4の周波数特性を求めて、その周波数特性から最大電力周波数が決定される。このようにしても、実施例1、3と同一の効果が達成される。
【実施例5】
【0041】
実施例3において、電力の時間特性が、サンプリング装置52で入力された後、CPU53で、フーリエ変換して、周波数特性が演算される。CPU53は、この周波数特性を、実施例2と同様に、送電装置1の側に送信している。そして、送電装置1のCPU23が、この受信した周波数特性から最大電力周波数を決定している。この構成によっても、実施例1と同一の効果を実現することができる。
【0042】
全実施例において、最大電力周波数を決定する試験電力は、本電力よりも低い電力でも、本電力であっも良い。また、データ伝送は、送信アンテナ55の代わりに、受電コイル40、受信アンテナ10の代わりに、送電コイル10を用いても良い。全実施例において、10MHzを電力伝送に用いているが、この周波数は、1〜100MHz、5〜50MHzの範囲を用いることができる。なお、数100kHz帯域でも用いることがてきるが、自己インダクンスを大きくとることができないので、送電コイル10と受電コイル40の間の距離を長くとっても、高い伝送効率を維持するには、上記のMHz帯域の周波数を用いるのが良い。また、データ伝送は、送信アンテナ55、受信アンテナ25を用いる場合も、受電コイル40、送電コイル10を用いる場合であっても、この周波数よりも高い300MHz、数GHz帯域の信号を用いることができる。
【0043】
請求項における周波数特性検出装置は、実施例では、受電装置50、切換装置56、サンプリング装置52、CPU53、及び、CPU53の処理手順のステップ200、202で実現されている。また、請求項の送信装置は、実施例では、送信装置54の他、CPU53、及び、CPU53の処理手順のステップ204、206で実現されている。また、請求項の周波数走査装置は、CPU23、及び、CPU23の処理手順のステップ100で実現されている。また、請求項の周波数制御装置はCPU23、及び、CPU23の処理手順のステップ104で実現されている。また、請求項の広帯域電力出力装置は、CPU23、パルス電力を出力する信号発生装置21の他、CPU23の処理手順で、実現されている。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、電気自動車や電子機器などのバッテリへの給電を非接触で行う装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1…送電装置
2…受電装置
10…送電コイル
11,41…結合コイル
12…給電コイル
41…出力コイル
11,41…結合コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己共鳴による送電コイルと自己共鳴による受電コイルとを結合させて磁気共鳴により無線で送電コイルから受電コイルへ電力を伝送するようにした磁気共鳴電力伝送方法において、
受電コイルによる受電電力が最大となる最大電力周波数を検出して、送電コイルによる送電電力の周波数をその最大電力周波数に一致させて、電力伝送することを特徴とする磁気共鳴電力伝送方法。
【請求項2】
前記送電コイルから送電する電力の周波数を、順次、変化させて、前記受電コイルにより電力を受電して、受電電力の周波数特性を検出し、その周波数特性、又は、その周波数特性から得られる受電電力が最大となる最大電力周波数から成る電力周波数情報を、前記送電コイル側に、フィードバックして、送電コイルによる送電電力を周波数を決定することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴電力伝送方法。
【請求項3】
前記送電コイルから送電する電力を、前記最大電力周波数を含む広帯域周波数として、送出し、前記受電コイルにより電力を受電して、その電力の時間変化特性を検出し、又は、その時間変化特性の周波数分析による周波数特性を検出し、前記時間変化特性、前記周波数特性、又は、前記周波数特性から得られる受電電力が最大となる最大電力周波数から成る電力周波数情報を、前記送電コイル側に、フィードバックして、送電コイルによる送電電力を周波数を決定することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴電力伝送方法。
【請求項4】
前記最大電力周波数を検出するための試験送電電力は、最大電力周波数に一致させて送電する本送電電力よりも、小さい電力であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の磁気共鳴電力伝送方法。
【請求項5】
前記電力周波数情報のフィードバックは、前記送電コイルと前記受電コイルとは、別系統の送信アンテナ、受信アンテナにより行うことを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れか1項に記載の磁気共鳴電力伝送方法。
【請求項6】
前記電力周波数情報のフィードバックは、その情報を前記受電コイルから前記送電コイルへ送信することにより、行うことを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れか1項に記載の磁気共鳴電力伝送方法。
【請求項7】
自己共鳴による送電コイルと、この送電コイルに送電電力を供給する送電装置と、この送電コイルと電磁結合する自己共鳴による受電コイルと、この受電コイルから電力を入力して負荷に電力を供給する受電装置とを有する磁気共鳴電力伝送装置において、
前記受電装置は、
受電コイルから受電電力の周波数特性を検出する周波数特性検出装置と、
前記周波数特性、又は、前記周波数特性から得られる受電電力が最大となる最大電力周波数から成る電力周波数情報を、前記送電装置に送信する送信装置と、を有し、
前記送電装置は、
送電電力の周波数を可変できる送電周波数可変装置と、
前記送電コイルから送電する送電電力の周波数を、順次、変化させる周波数走査装置と、
前記送信装置から送信された前記電力周波数情報を受信する受信装置と、
前記受信装置により受信された前記電力周波数情報が前記周波数特性である場合には、受信電力が最大となる前記最大電力周波数を検出して、その最大電力周波数に基づいて、前記送電周波数可変装置による送電電力の周波数を、前記最大電力周波数に一致させ、前記電力周波数情報が前記最大電力周波数である場合には、その最大電力周波数に基づいて、前記送電周波数可変装置による送電電力の周波数を、前記最大電力周波数に一致させる周波数制御装置と、を有する
ことを特徴とする磁気共鳴電力伝送装置。
【請求項8】
自己共鳴による送電コイルと、この送電コイルに送電電力を供給する送電装置と、この送電コイルと電磁結合する自己共鳴による受電コイルと、この受電コイルから電力を入力して負荷に電力を供給する受電装置とを有する磁気共鳴電力伝送装置において、
前記受電装置は、
受電コイルから受電電力の時間変化特性を検出し、又は、その時間変化特性の周波数分析によるり周波数特性を検出する周波数特性検出装置と、
前記時間変化特性、前記周波数特性、又は、前記周波数特性から得られる受電電力が最大となる最大電力周波数から成る電力周波数情報を、前記送電装置に送信する送信装置と、を有し、
前記送電装置は、
送電電力の周波数を可変できる送電周波数可変装置と、
前記送電コイルから送電する電力を、前記最大電力周波数を含む広帯域周波数として、送出する広帯域電力出力装置と、
前記送信装置から送信された前記電力周波数情報を受信する受信装置と、
前記受信装置により受信された前記電力周波数情報が、前記時間変化特性である場合には、その時間変化特性から前記周波数特性を求め、その周波数特性から前記最大電力周波数を検出し、前記周波数特性である場合には、受信電力が最大となる前記最大電力周波数を検出し、検出された最大電力周波数に基づいて、送電電力の周波数を、その最大電力周波数に一致させ、前記電力周波数情報が前記最大電力周波数である場合には、その最大電力周波数に基づいて、前記送電周波数可変装置による送電電力の周波数を、前記最大電力周波数に一致させる周波数制御装置と、を有する
ことを特徴とする磁気共鳴電力伝送装置。
【請求項9】
前記最大電力周波数を検出するための試験送電電力は、前記最大電力周波数に一致させて送電する本送電電力よりも、小さい電力であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の磁気共鳴電力伝送装置。
【請求項10】
前記受電装置は、前記電力周波数情報を、前記送電装置へ送信するための送信アンテナを有し、
前記送電装置は、前記送信アンテナから送信された前記電力周波数情報を受信する受信アンテナを有することを特徴とする請求項7乃至請求項9の何れか1項に記載の磁気共鳴電力伝送装置。
【請求項11】
前記送信アンテナは、前記受電コイルとし、前記受信アンテナは前記送電コイルとすることを特徴とする請求項10に記載の磁気共鳴電力伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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