説明

磁気冷凍システムおよび自動車用空調装置

【課題】磁気冷凍システムのCOPの向上を図る。
【解決手段】磁気作業物質30に磁場が印加された後に、熱交換容器31aの低温側出入口313側から高温側出入口312側へ冷媒を移動させ、磁場の印加により生ずる磁気作業物質30の温熱によって昇温した冷媒を、高温側冷媒回路4を介して加熱用熱交換器13に流入させる。また、磁気作業物質30から磁場が除去された後に、熱交換容器31aの高温側出入口312側から低温側出入口313側へ冷媒を移動させることで、磁場の除去によって生ずる磁気作業物質30の冷熱によって降温した冷媒を、低温側冷媒回路5を介して冷却用熱交換器12に流入させる。これにより、磁気作業物質30に生ずる温熱により昇温した冷媒および磁気作業物質30に生ずる冷熱により降温した冷媒を、加熱用熱交換器13および冷却用熱交換器12に直接流入させることで、磁気冷凍システムのCOPの向上を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気冷凍システム、および磁気冷凍システムを適用した自動車用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁性体等の磁気作業物質に磁場を加えると磁化作業物質が発熱し、磁場を除去すると磁化作業物質の温度が下がる現象(磁気熱量効果)を利用した磁気冷凍システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の磁気冷凍システムは、鉄道車両に搭載された磁気作業物質、当該磁気作業物質に磁場を作用させる強力磁場発生装置、強力磁場発生装置からの磁場が増大する際に上昇する磁気作業物質の熱(温熱)を移送する熱媒体が流通する第1の熱交換流路、強力磁場発生装置からの磁場が減少する際に低下する磁気作業物質の熱(冷熱)を移送する熱媒体が流通する第2の熱交換流路、各熱交換流路それぞれに配設されたポンプおよび熱交換器等を備えて構成されている。
【0004】
そして、強力磁場発生装置からの磁場が増大する際に、第1の熱交換流路に設けられたポンプを作動させ、磁気作業物質の温熱により昇温した熱媒体を熱交換器で車室外空気と熱交換させると共に、強力磁場発生装置からの磁場が減少する際に、第2の熱交換流路に設けられたポンプを作動させ、磁気作業物質の冷熱により降温した熱媒体を熱交換器で車室内空気と熱交換させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−56274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の磁気冷凍システムでは、磁気作業物質での温度変化を大きくするために強力磁場発生装置を超伝導コイル等で構成しており、その用途が特殊なものに限られ、自動車用の空調装置等の汎用製品へ適用することが困難である。
【0007】
このような課題の解決手段として、磁気作業物質へ印加する磁場を増大させた後に磁気作業物質における一端側(高温端側)に冷媒(磁気熱輸送媒体)を移動させ、磁気作業物質へ印加する磁場を減少させた後に磁気作業物質における他端側(低温端側)に冷媒を移動させことにより、磁気熱量効果により生成された冷熱および温熱を磁気作業物質自体に蓄えるAMR(Active Magnetic Refrigerator)方式の磁気冷凍システムが知られている。
【0008】
AMR方式の磁気冷凍システムでは、一般に、内部に磁気作業物質が充填されると共に冷媒が流通する冷媒流路が形成された容器を有し、磁気作業物質への磁場の印加・除去に応じて、冷媒を容器の一端側および他端側の間を往復移動させる構成とされている。
【0009】
そして、(1)磁気作業物質に磁場を印加、(2)磁気作業物質に生ずる温熱を冷媒により容器の一端側(高温端側)に輸送、(3)磁気作業物質から磁場を除去、(4)磁気作業物質に生ずる冷熱を冷媒により容器の他端側(低温端側)に輸送、といった4つの過程を繰り返すことにより、容器内の磁気作業物質に温度勾配が生まれ、容器における高温端と低温端との間に大きな温度差が生成される。
【0010】
ここで、AMR方式の磁気冷凍システムを特許文献1の磁気冷凍システムに適用することが考えられるが、この場合には、磁気冷凍システムの冷凍成績係数(COP:Coefficient Of Performance)が低下するといった問題がある。なお、COPは、消費電力1kW当りの冷房・暖房能力を表したものである。
【0011】
その理由としては、AMR方式の磁気冷凍システムを特許文献1の磁気冷凍システムに適用する場合、磁気作業物質の周りで、冷媒流路を流れる冷媒と熱交換流路を流れる熱媒体とを熱交換させることになり、磁気作業物質の熱が間接的に熱交換流路を流れる熱媒体に伝わり、磁気作業物質と熱媒体との間における熱交換ロスが大きくなるからである。
【0012】
本発明は上記点に鑑みて、磁気冷凍システムのCOPの向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1および2に記載の発明では、磁気熱量効果を有する磁気作業物質(30)が配置されると共に冷媒が流通する複数の作業室(311)が周方向に放射状に形成された円筒状の容器(31)と、磁気作業物質(30)への磁場の印加および除去を繰り返す磁場印加除去手段(32)と、容器(31)における長手方向の両端面に設けられた一対の冷媒出入口(312、313)のうち、一方の冷媒出入口(312)の冷媒吐出部(312b)から流出した冷媒が第1熱交換器(13)を通って一方の冷媒出入口(312)の冷媒吸入部(312a)に戻るように構成される第1冷媒循環回路(4)と、一対の出入口(312、313)のうち、他方の冷媒出入口(313)の冷媒吐出部(313b)から流出した冷媒が第2熱交換器(12)を通って他方の冷媒出入口(313)の冷媒吸入部(313a)に戻るように構成される第2冷媒循環回路(5)と、一方の冷媒出入口(312)側と他方の冷媒出入口(313)側との間で冷媒を移動させる冷媒移動手段(34)と、を備え、冷媒移動手段(34)は、磁場印加除去手段(32)によって磁気作業物質(30)に磁場を印加された後に、他方の冷媒出入口(313、345)側から一方の冷媒出入口(312)側へ冷媒を移動させ、磁場印加除去手段(32)によって磁気作業物質(30)から磁場を除去された後に、一方の冷媒出入口(312)側から他方の冷媒出入口(313、345)側へ冷媒を移動させることを特徴とする。
【0014】
これによると、磁気作業物質(30)に磁場が印加された後に、作業室(311)における他方の冷媒出入口(313、345)側から一方の冷媒出入口(312)側へ冷媒を移動させることで、磁場の印加により生ずる磁気作業物質(30)の温熱によって昇温した一方の冷媒出入口(312)付近の冷媒を、第1冷媒循環回路(4、8)を介して第1熱交換器(7、13)に流入させることができる。
【0015】
また、磁気作業物質(30)から磁場が除去された後に、作業室(311)における一方の冷媒出入口(312)側から他方の冷媒出入口(313、345)側へ冷媒を移動させることで、磁場の除去によって生ずる磁気作業物質(30)の冷熱によって降温した他方の冷媒出入口(313、345)付近の冷媒を、第2冷媒循環回路(5)を介して第2熱交換器(12)に流入させることができる。
【0016】
これにより、磁気作業物質(30)に生ずる温熱により昇温した冷媒を第1熱交換器(7、13)に直接流入させると共に、磁気作業物質(30)に生ずる冷熱により降温した冷媒を第2熱交換器(12)に直接流入させることができるので、磁気作業物質(30)に生ずる温熱および冷熱を輸送する際の熱交換ロスを低減することができ、磁気冷凍システムのCOPの向上を図ることができる。
【0017】
なお、作業室(311)における他方の冷媒出入口(313、345)側から一方の冷媒出入口(312)側へ冷媒が移動する際には、第2熱交換器(12)を通った冷媒が、第2冷媒循環回路(5)から他方の冷媒出入口(313、345)を介して作業室(311)に流入することになる。また、作業室(311)における一方の冷媒出入口(312)側から他方の冷媒出入口(313、345)側へ冷媒が移動する際には、第1熱交換器(7、13)を通った冷媒が、第1冷媒循環回路(4、8)から一方の冷媒出入口(312)を介して作業室(311)に流入することになる。
【0018】
特に、請求項1に記載の発明では、冷媒吸入部(312a、313a)および冷媒吐出部(312b、313b)を構成する空間の容積を、冷媒移動手段(34)における一回当りの冷媒の吐出容積よりも小さくすることで、磁気作業物質(30)に生ずる温熱により昇温した冷媒、および磁気作業物質(30)に生ずる冷熱により降温した冷媒が容器(31)内で滞留することを抑制することができる。つまり、磁気作業物質(30)に生ずる温熱により昇温した冷媒、および磁気作業物質(30)に生ずる冷熱により降温した冷媒を、効率よく容器(31)の外部に吐出することができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の磁気冷凍システムにおいて、冷媒吸入部(312a、313a、345a)には、作業室(311)内に冷媒を吸入する際に開放される吸入弁(312c、313c、345c)が設けられ、冷媒吐出部(312b、313b、345b)には、作業室(311)から冷媒を吐出する際に開放される吐出弁(312d、313d、345d)が設けられていることを特徴とする。
【0020】
これによると、磁気作業物質(30)に磁場が印加された後に、磁場の印加によって生ずる磁気作業物質(30)の温熱によって昇温した一方の冷媒出入口(312)付近の冷媒を、確実に第1冷媒循環回路(4、8)を介して第1熱交換器(7、13)に流入させることができると共に、第2熱交換器(12)から流出した冷媒を他方の冷媒出入口(313、345)から作業室(311)に吸入することができる。
【0021】
また、磁気作業物質(30)から磁場が除去された後に、磁場の除去によって生ずる磁気作業物質(30)の冷熱によって降温した他方の冷媒出入口(313、345)付近の冷媒を、確実に第2冷媒循環回路(5)を介して第2熱交換器(12)に流入させることができると共に、第1熱交換器(7、13)から流出した冷媒を一方の冷媒出入口(312)から作業室(311)に吸入することができる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の磁気冷凍システムにおいて、吐出弁(312d、313d、345d)は、容器(31)の長手方向において、吸入弁(312c、313c、345c)よりも作業室(311)に近い位置に配置されていることを特徴とする。
【0023】
このように、吐出弁(312d、313d、345d)を作業室(311)に近接する配置形態とすれば、吸入弁(312c、313c、345c)の周囲に滞留する冷媒と吐出弁(312d、313d、345d)を介して作業室(311)から吐出する冷媒との不必要な熱交換を抑制することが可能となる。これにより、磁気作業物質(30)に生ずる温熱および冷熱を輸送する際の熱交換ロスを低減することができ、磁気冷凍システムのCOPの向上を図ることができる。
【0024】
また、請求項5に記載の発明では、請求項3に記載の磁気冷凍システムにおいて、吸入弁(312c、313c、345c)および吐出弁(312d、313d、345d)のうち、少なくとも吸入弁(312c、313c、345c)は、作業室(31)に隣接して配置されると共に作業室(311)内と連通する連通孔(317a、317b)が形成されたバルブプレート(317)、および容器(31)の周方向に回転して連通孔(317a、317b)を開閉する回転ディスク(318)を有するロータリ弁で構成されていることを特徴とする。
【0025】
これによれば、吸入弁(312c、313c、345c)周囲における冷媒の滞留を抑制することができ、吸入弁(312c、313c、345c)周囲に滞留する冷媒と、吐出弁(312d、313d、345d)を介して作業室(311)から吐出する冷媒との不必要な熱交換を抑制することが可能となる。これにより、磁気作業物質(30)に生ずる温熱および冷熱を輸送する際の熱交換ロスを低減することができ、磁気冷凍システムのCOPの向上を図ることができる。
【0026】
また、請求項6に記載の発明のように、請求項5に記載の磁気冷凍システムにおいて、ロータリ弁を、磁場印加除去手段(32)を駆動するための動力を利用して回転ディスク(318)が回転する構成とすれば、磁気冷凍システムを簡素な構成で実現することができる。
【0027】
また、請求項7に記載の発明では、請求項1または2に記載の磁気冷凍システムにおいて、一方の冷媒出入口(312)における冷媒吸入部(312a)および冷媒吐出部(312b)には、冷媒吐出部(312b)、第1熱交換器(13)における冷媒流入口(13a)、第1熱交換器(13)における冷媒流出口(13b)、冷媒吸入部(312a)といった順に冷媒が一方向へ流れることを許容する第1逆流防止手段(44〜47)が設けられ、他方の冷媒出入口(313)における冷媒吸入部(313a)および冷媒吐出部(313b)には、冷媒吐出部(313b)、第2熱交換器(12)における冷媒流入口(12a)、第2熱交換器(12)における冷媒流出口(12b)、冷媒吸入部(313a)といった順に冷媒が一方向へ流れることを許容する第2逆流防止手段(56〜59)が設けられていることを特徴とする。
【0028】
これによっても、磁気作業物質(30)に磁場が印加された後に、磁場の印加によって生ずる磁気作業物質(30)の温熱によって昇温した一方の冷媒出入口(312)付近の冷媒を、確実に第1冷媒循環回路(4)を介して第1熱交換器(13)に流入させることができると共に、第2熱交換器(12)から流出した冷媒を他方の冷媒出入口(313)から作業室(311)に吸入することができる。
【0029】
また、磁気作業物質(30)から磁場が除去された後に、磁場の除去によって生ずる磁気作業物質(30)の冷熱によって降温した他方の冷媒出入口(313)付近の冷媒を、確実に第2冷媒循環回路(5)を介して第2熱交換器(12)に流入させることができると共に、第1熱交換器(13)から流出した冷媒を一方の冷媒出入口(312)から作業室(311)に吸入することができる。
【0030】
また、請求項8に記載の発明のように、請求項7に記載の磁気冷凍システムにおいて、第1逆流防止手段(44〜47)および第2逆流防止手段(56〜59)の少なくとも一方を、冷媒流れの逆方向に比べて冷媒流れの順方向に抵抗が小さい流体ダイオード(71、72)で構成することで、磁気冷凍システムを簡素な構成で実現することができる。
【0031】
また、請求項9に記載の発明のように、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の磁気冷凍システムにおいて、冷媒吸入部(312a、313a、345a)および冷媒吐出部(312b、313b、345b)を、複数の作業室(311)に対応して複数設けるときには、冷媒吸入部(312a、313a、345a)を、容器(31)の長手方向から見たときに同円周上に位置するように設け、冷媒吐出部(312b、313b、345b)を、容器(31)の長手方向から見たときに同円周上に位置するように設けることが好ましい。
【0032】
具体的には、請求項10に記載の発明のように、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の磁気冷凍システムにおいて、磁場印加除去手段(32)を、磁場を発生させる磁場発生部(323a、323b)、磁場発生部(323a、323b)を回転可能に支持する回転軸(321a、321b)、回転軸(321a、321b)を駆動する駆動手段(35)を含んで構成し、磁場発生部(323a、323b)を、回転軸(321a、321b)の回転に伴って周期的に磁気作業物質(30)に近づくように設ける構成とすることで、磁場印加除去手段(32)によって磁気作業物質(30)への磁場の印加および除去を周期的に繰り返すことができる。
【0033】
また、請求項11に記載の発明では、請求項10に記載の磁気冷凍システムにおいて、駆動手段(35)による動力を冷媒移動手段(34)に伝達する動力伝達機構(37a、37b)を備え、冷媒移動手段(34)は、動力伝達機構(37a、37b)を介して伝達された動力により、一方の冷媒出入口(312)および他方の冷媒出入口(313、345)との間で冷媒を往復移動させることを特徴とする。
【0034】
このように、冷媒移動手段(34)を磁場印加除去手段(32)の駆動手段(35)の動力によって、駆動させる構成とすれば、冷媒移動手段(34)および磁場印加除去手段(32)の駆動源を共通化させることができるので、磁気冷凍システムを簡素な構成で実現することができる。ひいては、磁気冷凍システムにおける消費動力の増大を抑制して、磁気冷凍システムのCOPの更なる向上を図ることが可能となる。
【0035】
また、請求項12に記載の発明のように、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の磁気冷凍システムにおいて、冷媒移動手段(34)としては、複数の作業室(311)に対応する複数のシリンダ(344、347)および複数のピストン(343、346)を有する多気筒型のピストンポンプで構成することが好ましい。
【0036】
また、請求項13に記載の発明のように、請求項1ないし12のいずれか1つの磁気冷凍システムが適用された自動車用空調装置において、車室内に送風する送風空気の空気流路を構成するケース(11)を備え、第1熱交換器(13)にて車室内に送風する送風空気を加熱する加熱用熱交換器を構成し、第2熱交換器(12)にて車室内に送風する送風空気を冷却する冷却用熱交換器を構成することで、車室内の冷房および暖房を行うことが可能となる。
【0037】
具体的には、請求項14に記載の発明のように、請求項13に記載の自動車用空調装置において、第1熱交換器(13)を、ケース(11)内における第2熱交換器(12)よりも送風空気の空気流れ下流側に配置する構成とすれば、第2熱交換器(12)にて冷却して除湿した送風空気を第1熱交換器(13)にて加熱することで、車室内の暖房時に送風空気の除湿を行うことができる。
【0038】
また、請求項15に記載の発明のように、請求項13または14に記載の自動車用空調装置において、第1熱交換器(13)に流入する送風空気の風量を調整して車室内に吹き出す空気の温度を調整する温度調整手段(18)を備える構成としてもよい。
【0039】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態に係る自動車用空調装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態に係る磁気冷凍機の拡大図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】第1実施形態に係る磁気冷凍機の動作原理を説明する説明図である。
【図5】第1実施形態に係る自動車用空調装置の冷房モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。
【図6】第1実施形態に係る自動車用空調装置の暖房モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。
【図7】第1実施形態に係る自動車用空調装置の除湿モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。
【図8】第2実施形態に係る自動車用空調装置の全体構成図である。
【図9】第3実施形態に係る自動車用空調装置の全体構成図である。
【図10】第4実施形態に係る自動車用空調装置の全体構成図である。
【図11】第5実施形態に係る自動車用空調装置の全体構成図である。
【図12】第5実施形態に係る磁気冷凍機の拡大図である。
【図13】第6実施形態に係る自動車用空調装置の全体構成図である。
【図14】第7実施形態に係る自動車用空調装置の全体構成図である。
【図15】第8実施形態に係る磁気冷凍機の要部拡大図である。
【図16】第9実施形態に係る磁気冷凍機の拡大図である。
【図17】図16のB−B断面図である。
【図18】図16のC−C断面図である。
【図19】第10実施形態に係る磁気冷凍機の拡大図である。
【図20】図19のD−D断面図である。
【図21】図19のE−E断面図である。
【図22】第11実施形態に係るノズル式流体ダイオードの模式的な断面図である。
【図23】第11実施形態に係る渦巻き式流体ダイオードを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0042】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。図1は、本実施形態の自動車用空調装置1の全体構成図である。本実施形態では、本発明の磁気冷凍システム2を、自動車の車室内の空調を行う自動車用空調装置1に適用している。
【0043】
本実施形態の自動車用空調装置1は、内燃機関(エンジン)から車両走行用の駆動力を得る自動車に搭載される空調装置である。
【0044】
自動車用空調装置1は、図1に示すように、エンジンルーム内に配置される磁気冷凍システム2、車室内に配置される室内空調ユニット10、空調制御装置100を備えている。
【0045】
本実施形態の磁気冷凍システム2は、車室内を冷房する冷房モード、車室内を暖房する暖房モード、車室内の暖房時に除湿を行う除湿モードの冷媒回路を切替え可能に構成されており、自動車用空調装置1において車室内の冷房、暖房、除湿を行うことができる。
【0046】
具体的には、本実施形態の磁気冷凍システム2は、磁気熱量効果により生成された冷熱および温熱を磁気作業物質30自体に蓄えるAMR方式を採用している。本実施形態の磁気冷凍システム2は、磁気熱量効果により冷熱および温熱を生成する磁気冷凍機3、磁気冷凍機3で生成した温熱により昇温した冷媒を加熱用熱交換器(第1熱交換器)13に循環させる高温側冷媒回路(第1冷媒循環回路)4、磁気冷凍機3で生成した冷熱により降温した冷媒を冷却用熱交換器(第2熱交換器)12に循環させる低温側冷媒回路(第2冷媒循環回路)5等を備えて構成されている。
【0047】
磁気冷凍機3は、内部に磁気熱量効果を有する磁気作業物質30が収容されると共に熱輸送媒体である冷媒(例えば、水や不凍液)が流通する作業室311が形成された熱交換容器31、磁気作業物質への磁場の印加・除去を行う磁場印加除去装置32、熱交換容器31内の冷媒を移動させる冷媒ポンプ34、磁気冷凍機3の駆動源である電動モータ35等を有して構成されている。
【0048】
図2は、磁気冷凍機3の拡大図であり、図3は、図2のA−A断面図である。なお、説明の便宜のため、図2では、磁気冷凍機3の軸方向断面を示している。
【0049】
図2に示すように、本実施形態の熱交換容器31は、磁気熱量効果により温熱を生成するための高温側容器31aと磁気熱量効果により冷熱を生成するための低温側容器31bに分割されている。高温側容器31aおよび低温側容器31bは、冷媒ポンプ34を介して同軸方向に並んで配置されている。
【0050】
高温側容器31aおよび低温側容器31bは、円筒状の容器で構成されている。各容器31a、31bは、外殻を構成する壁部に磁気作業物質30を収容すると共に冷媒が流通する作業室311が形成されている。なお、図3に示すように、各容器31a、31bには、周方向に放射状に複数の作業室311が形成されている。
【0051】
また、熱交換容器31の両端側(各容器31a、31bにおける冷媒ポンプ34と反対側)の端面に一対の冷媒出入口312、313が形成されており、一対の冷媒出入口312、313を介して、冷媒の吸入および吐出が可能となっている。
【0052】
また、各容器31a、31bにおける冷媒ポンプ34側の端面には、後述する冷媒ポンプ34のシリンダボア344内に連通する連通路314、315が形成されている。なお、当該連通路314、315は、各高温側出入口312および各低温側出入口313に対応して複数形成されている。
【0053】
一対の冷媒出入口312、313のうち、高温側容器31aに形成された高温側出入口312は、高温側容器31aの各作業室311に対応して設けられており、対応する作業室311に連通している。
【0054】
各高温側出入口312は、冷媒を吸入する冷媒吸入部312a、および冷媒を吐出する冷媒吐出部312bを有して構成されている。そして、冷媒吸入部312aには、冷媒を吸入する際に開放されるサクションバルブ(吸入弁)312cが設けられ、冷媒吐出部312bに冷媒を吐出する際に開放されるディスチャージバルブ(吐出弁)312dが設けられている。本実施形態のサクションバルブ312cおよびディスチャージバルブ312dは、弾力性を有する板材の一端を固定して構成されるリード弁で構成されている。
【0055】
また、一対の冷媒出入口312、313のうち、低温側容器31bに形成された低温側出入口313は、低温側容器31bの各作業室311に対応して設けられており、対応する作業室311に連通している。
【0056】
各低温側出入口313は、高温側出入口312と同様に、冷媒吸入部313aおよび冷媒吐出部313bを有し、冷媒吸入部313aにサクションバルブ313cが設けられ、冷媒吐出部313bにディスチャージバルブ313dが設けられている。
【0057】
また、各容器31a、31bにおける冷媒ポンプ34側の端面には、後述する冷媒ポンプ34のシリンダボア344内に連通する連通路314、315が形成されている。なお、当該連通路314、315は、各高温側出入口312および各低温側出入口313に対応して複数形成されている。
【0058】
各容器31a、31bそれぞれの内部には、磁場印加除去装置32の一部を構成する回転軸321a、321b、回転軸321a、321bに固定されたロータ(回転子)322a、322b、およびロータ322a、322bの外周面に埋設された永久磁石323a、323bが収容されている。
【0059】
各回転軸321a、321bそれぞれは、各容器31a、31bの長手方向両端部に設けられた支持部材36a、36bにより回転可能に支持されている。
【0060】
そして、高温側容器31aに収容された高温側回転軸321aは、冷媒ポンプ34側の端部が、高温側容器31aの外部に延在し、後述する冷媒ポンプ34の駆動軸341に、後述する変速機構37aを介して接続されている。
【0061】
また、低温側容器31bに収容された低温側回転軸321bは、冷媒ポンプ34側の端部が、低温側容器31bの外部に延在し、後述する冷媒ポンプ34の駆動軸341に、後述する変速機構37bを介して接続されている。さらに、低温側回転軸321bは、冷媒ポンプ34と反対側の端部が、低温側容器31bの外部に延在し、各回転軸321a、321bを回転させる後述する電動モータ35が接続されている。
【0062】
各ロータ322a、322bは、外周面に永久磁石323a、323bが設けられた状態で、各容器31a、31bの内周面に対して所定の空隙を空けて回転するように回転軸321a、321bに固定されている。
【0063】
また、永久磁石323a、323bは、図3に示すように、各回転軸321a、321bの回転に応じて、各容器31a、31bにおける上方側の作業室311および下方側の作業室311に周期的に近づくように、ロータ322a、322bにおける外周面(例えば、約1/4の範囲)に設けられている。
【0064】
これにより、回転軸321a、321bの回転に応じて、永久磁石323a、323bの周囲に生ずる磁場が、各容器31a、31bにおける永久磁石323a、323bに近い側に収容された磁気作業物質30に印加され、永久磁石323a、323bに対して遠い側に設けられた磁気作業物質30から除去される。
【0065】
冷媒ポンプ34は、熱交換容器31に形成された高温側出入口312側と低温側出入口313側との間で冷媒を往復移動させる冷媒移動手段を構成している。本実施形態では、冷媒ポンプ34として、一つの駆動軸341により二つの圧縮機構が同軸上に作動するタンデム型のピストンポンプを作用している。
【0066】
具体的には、本実施形態の冷媒ポンプ34は、図2に示すように、ハウジング340、ハウジング340内に回転可能に支持された駆動軸341、駆動軸341に対して傾いた傾斜面を有して駆動軸341と一体的に回転する斜板342、斜板342の回転に応じて往復動するピストン343、ハウジング340におけるピストン343の両側に形成されたシリンダボア344等で構成されている。
【0067】
駆動軸341は、ハウジング340の長手方向両端部に設けられた支持部材340a、340bにより回転可能に支持されている。そして、駆動軸341は、その両端部がハウジング340の外部に延在し、各変速機構37a、37bを介して高温側回転軸321aおよび低温側回転軸321bに接続されている。
【0068】
ここで、各変速機構37a、37bは、電動モータ35に連結された低温側回転軸321bを介して、電動モータ35による動力を冷媒ポンプ34に伝達する動力伝達機構を構成する。本実施形態の各変速機構37a、37bは、冷媒ポンプ34の駆動軸341の回転数に対する各回転軸321a、321bの回転数の比(減速比)を調整可能に構成されている。なお、減速比は、回転軸321a、321bに固定された永久磁石323a、323bの極数に応じて決定される。例えば、永久磁石323a、323bの数がn極の場合、冷媒ポンプ34の駆動軸341がn回転したときに回転軸321a、321bが一回転するように減速比を1/nに決定することができる。
【0069】
シリンダボア344は、高温側容器31aの各連通路314に対応する高温側ボア部344a、低温側容器31bの各連通路315に対応する低温側ボア部344bを有して構成されている。なお、シリンダボア344は、高温側ボア部344a内の冷媒と低温側ボア部344b内の冷媒とが熱交換可能に構成されている。
【0070】
ここで、本実施形態の冷媒ポンプ34は、磁気作業物質30への磁場の印加、除去に同期して、各容器31a、31bに対する冷媒の吸入、吐出を行うように構成されている。
【0071】
例えば、冷媒ポンプ34は、各容器31a、31bにおける上方側に位置する各作業室311内の磁気作業物質30に磁場が印加された際に、高温側容器31aにおける上方側に位置する各作業室311に冷媒を順次吐出すると共に、低温側容器31bにおける上方側に位置する各作業室311から冷媒を順次吸入するように構成されている。この際、冷媒ポンプ34によって、高温側容器31aにおける下方側に位置する各作業室311から冷媒が順次吸入されると共に、低温側容器31bにおける下方側に位置する各作業室311に冷媒が順次吐出される。
【0072】
一方、冷媒ポンプ34は、各容器31a、31bにおける上方側に位置する各作業室311内の磁気作業物質30から磁場が除去された際に、高温側容器31aにおける上方側に位置する各作業室311から冷媒を順次吸入すると共に、低温側容器31bにおける上方側に位置する各作業室311に冷媒を順次吐出するように構成されている。
【0073】
そして、冷媒ポンプ34によって、各容器31a、31bの作業室311に冷媒が吐出されると、各容器31a、31bの冷媒吐出部312b、313bに設けられたディスチャージバルブ312d、313dが開放されて、各容器31a、31bにおける冷媒吐出部312b、313b付近の冷媒が外部に吐出される。
【0074】
また、冷媒ポンプ34によって、各容器31a、31bの作業室311から冷媒が吸入されると、各容器31a、31bの冷媒吸入部312a、313aに設けられたサクションバルブ312c、313cが開放されて、各容器31a、31bにおける冷媒吸入部312a、313a付近に外部から冷媒が導入される。
【0075】
このように磁気冷凍機3では、磁気作業物質30への磁場の印加、除去に同期して、各容器31a、31bにおける各作業室311から順次冷媒を吸入、吐出することができるので、各容器31a、31bにおける冷媒吐出部312b、313b付近の冷媒を連続して外部に吐出することができる。
【0076】
図1に戻り、電動モータ35は、車載されたバッテリ(図示略)からの電源供給により作動し、回転軸321a、321bおよび駆動軸341に動力を付与して、磁気冷凍機3を駆動する駆動手段である。
【0077】
ここで、本実施形態では、各容器31a、31bに収容された回転軸321a、321b、ロータ322a、322b、永久磁石323a、323b、および熱交換容器31の外部に設けられた電動モータ35が、磁場印加除去手段である磁場印加除去装置32を構成している。また、永久磁石323a、323bは、磁場を発生させる磁場発生部を構成している。
【0078】
次に、高温側冷媒回路4および低温側冷媒回路5について説明する。まず、高温側冷媒回路4について説明すると、高温側冷媒回路4は、高温側容器31aにおける高温側出入口312の冷媒吐出部312bから吐出された冷媒を、加熱用熱交換器13の冷媒流入口13aに導く共に、加熱用熱交換器13の冷媒流出口13bから流出した冷媒を高温側出入口312の冷媒吸入部312aに戻す冷媒循環回路である。
【0079】
具体的には、高温側出入口312の冷媒吐出部312b側には、加熱用熱交換器13の冷媒流入口13a側が接続されている。加熱用熱交換器13は、後述する室内空調ユニット10のケース11内に配置されて、その内部を流通する冷媒と、後述する冷却用熱交換器12通過後の送風空気とを熱交換させることで、送風空気を加熱する熱交換器(第1熱交換器)である。
【0080】
加熱用熱交換器13の冷媒流出口13b側には、第1電気式三方弁41が接続されている。第1電気式三方弁41は、空調制御装置100から出力される制御信号によって、その作動が制御される流路切替手段を構成している。
【0081】
より具体的には、第1電気式三方弁41は、空調制御装置100からの制御信号に応じて、加熱用熱交換器13の冷媒流出口13b側と高温側容器31aの冷媒吸入部312a側との間を接続する冷媒回路、および加熱用熱交換器13の冷媒流出口13b側と吸放熱用熱交換器6の放熱側冷媒流入口61a側との間を接続する冷媒流路を切り替える。
【0082】
吸放熱用熱交換器6は、エンジンルーム内に配置されて、その内部を流通する冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器である。本実施形態の吸放熱用熱交換器6は、加熱用熱交換器13から流出した冷媒が流れる放熱部61、および低温側容器31bから吐出された冷媒が流れる吸熱部62といった二つの熱交換部を有して構成されている。
【0083】
吸放熱用熱交換器6の放熱部61は、放熱側冷媒流入口61aから流入した冷媒(加熱用熱交換器13から流出した冷媒)と外気とを熱交換させる熱交換部である。また、吸放熱用熱交換器6の吸熱部62は、吸熱側冷媒流入口62aから流入した冷媒(低温側容器31bから吐出された冷媒)と外気とを熱交換させる熱交換部である。
【0084】
なお、放熱部61および吸熱部62は、吸放熱用熱交換器6の内部において放熱部61を流れる冷媒と吸熱部62を流れる冷媒が混在しないように、互いに冷媒流路が独立して構成されている。
【0085】
吸放熱用熱交換器6における放熱側冷媒流出口61b側には、高温側容器31aの冷媒吸入部312aが接続されており、吸放熱用熱交換器6にて放熱された冷媒が高温側容器31aの作業室311に戻る。
【0086】
従って、高温側冷媒回路4は、高温側容器31aの冷媒吐出部312b→加熱用熱交換器13→第1電気式三方弁41→高温側容器31aの冷媒吸入部312aといった順に冷媒が循環する循環回路と、高温側容器31aの冷媒吐出部312b→加熱用熱交換器13→第1電気式三方弁41→吸放熱用熱交換器6の放熱部61→高温側容器31aの冷媒吸入部312aといった順に冷媒が循環する循環回路とで構成される。
【0087】
なお、高温側冷媒回路4には、加熱用熱交換器13と第1電気式三方弁41との間には、固定絞り42を介して、高温側冷媒回路4内の冷媒量を調整するためのリザーバタンク43が接続されている。なお、固定絞り42としては、オリフィスやキャピラリチューブ等を採用することができる。
【0088】
また、低温側冷媒回路5は、低温側容器31bにおける低温側出入口313の冷媒吐出部313bから吐出された冷媒を、冷却用熱交換器12の冷媒流入口12aに導く共に、冷却用熱交換器12の冷媒流出口12bから流出した冷媒を低温側出入口313の冷媒吸入部313aに戻す冷媒循環回路である。
【0089】
具体的には、低温側出入口313の冷媒吐出部313b側には、第2電気式三方弁51が接続されている。第2電気式三方弁51は、第1電気式三方弁41と同様に、空調制御装置100から出力される制御信号によって、その作動が制御される流路切替手段を構成している。
【0090】
第2電気式三方弁51は、空調制御装置100からの制御信号に応じて、低温側出入口313の冷媒吐出部313b側と吸放熱用熱交換器6の吸熱側冷媒流入口62a側との間を接続する冷媒回路、および低温側出入口313の冷媒吐出部313b側と第3電気式三方弁52との間を接続する冷媒回路を切り替える。そして、吸放熱用熱交換器6の吸熱側冷媒流出口62b側には、第3電気式三方弁52が接続されている。
【0091】
第3電気式三方弁52は、第1、第2電気式三方弁41、51と同様に、空調制御装置100から出力される制御信号によって、その作動が制御される流路切替手段を構成している。
【0092】
具体的には、第3電気式三方弁52は、第2電気式三方弁51に連動して作動するように構成されている。すなわち、第3電気式三方弁52は、第2電気式三方弁51にて低温側出入口313の冷媒吐出部313b側と第3電気式三方弁52との間を接続する冷媒回路に切り替えられると、第2電気式三方弁51と冷却用熱交換器12の冷媒流入口12a側との間を接続する冷媒回路に切り替える。また、第3電気式三方弁52は、第2電気式三方弁51にて低温側出入口313の冷媒吐出部313b側と吸放熱用熱交換器6の吸熱側冷媒流入口62a側との間を接続する冷媒回路に切り替えられると、第2電気式三方弁51と低温側出入口313の冷媒吸入部313a側との間を接続する冷媒回路に切り替える。
【0093】
第3電気式三方弁52に接続された冷却用熱交換器12は、室内空調ユニット10のケース11内のうち、加熱用熱交換器13の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する熱交換器である。そして、冷却用熱交換器12の冷媒流出口12b側には、低温側出入口313の冷媒吸入部313aが接続されている。
【0094】
このように、低温側冷媒回路5は、低温側容器31bの冷媒吐出部313b→第2電気式三方弁51→第3電気式三方弁52→冷却用熱交換器12→低温側容器31bの冷媒吸入部313aといった順に冷媒が循環する循環回路と、低温側容器31bの冷媒吐出部313b→吸放熱用熱交換器6の吸熱部62→第2電気式三方弁51→第3電気式三方弁52→低温側容器31bの冷媒吸入部313aといった順に冷媒が循環する循環回路とで構成される。
【0095】
なお、低温側冷媒回路5には、第2電気式三方弁51および吸放熱用熱交換器6と第3電気式三方弁52との間には、固定絞り53を介して、低温側冷媒回路5内の冷媒量を調整するためのリザーバタンク54が接続されている。なお、固定絞り53としては、オリフィスやキャピラリチューブ等を採用することができる。
【0096】
次に、室内空調ユニット10について説明する。室内空調ユニット10は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケース11内に図示しない送風機、前述の冷却用熱交換器12、加熱用熱交換器13、ヒータコア14等を収容したものである。
【0097】
ケース11は、車室内に送風される送風空気の空気流路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケース11内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する図示しない内外気切替箱が配置されている。
【0098】
より具体的には、内外気切替箱には、ケース11内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替箱の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。なお、内外気切替ドアは、ケース11内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。
【0099】
内外気切替箱の空気流れ下流側には、内外気切替箱を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機が配置されている。この送風機は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置100から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0100】
送風機の空気流れ下流側には、前述の冷却用熱交換器12が配置されている。さらに、冷却用熱交換器12の空気流れ下流側には、冷却用熱交換器12通過後の空気を流す加熱用冷風通路15、冷風バイパス通路16といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路15および冷風バイパス通路16から流出した空気を混合させる混合空間17が形成されている。
【0101】
加熱用冷風通路15には、冷却用熱交換器12通過後の空気を加熱するための加熱手段としての加熱用熱交換器13、およびヒータコア14が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。ヒータコア14は、車両走行用駆動力を出力するエンジン(図示略)の冷却水と冷却用熱交換器12通過後の空気とを熱交換させて、冷却用熱交換器12通過後の空気を加熱する熱交換器である。
【0102】
一方、冷風バイパス通路16は、冷却用熱交換器12通過後の空気を、加熱用熱交換器13、およびヒータコア14を通過させることなく、混合空間17に導くための空気通路である。従って、混合空間17にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路15を通過する空気および冷風バイパス通路16を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0103】
そこで、本実施形態では、冷却用熱交換器12の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路15および冷風バイパス通路16の入口側に、加熱用冷風通路15および冷風バイパス通路16へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア18を配置している。つまり、エアミックスドア18は、加熱用熱交換器13に流入する送風空気の風量を調整して、混合空間17内の空気温度(車室内へ吹き出す空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。
【0104】
さらに、ケース11の送風空気流れ最下流部には、混合空間17から冷却対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す図示しない吹出口(例えば、フェイス吹出口、フット吹出口、デフロスタ吹出口)が配置されている。なお、各吹出口の空気流れ上流側には、吹出口の開口面積を調整するドアが配置されており、各ドアの開閉により車室内に空調風を吹き出す吹出口を切り替えることが可能となっている。
【0105】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置100は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。そして、空調制御装置100は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された電動モータ35、流路切替手段を構成する各電気式三方弁41、51、52、送風機、エアミックスドア18の駆動手段等の作動を制御する。
【0106】
空調制御装置100の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル(図示略)に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、自動車用空調装置1の作動スイッチ、オートスイッチ、運転モード(冷房モード、暖房モード、除湿モード等)の切替スイッチ等が設けられている。
【0107】
なお、空調制御装置100のうち、磁気冷凍機3の駆動手段を構成する電動モータ35を制御する構成が電動モータ制御手段を構成し、各電気式三方弁41、51、52を制御する構成が流路切替制御手段を構成している。
【0108】
次に、上記構成における本実施形態の磁気冷凍システム2を含む自動車用空調装置1の作動を説明する。まず、磁気冷凍システム2における磁気冷凍機3の動作原理を図4に基づいて概略的に説明する。
【0109】
図4は、図1に示すB部分の拡大図である。なお、図4の(a)が磁気作業物質30への磁場を印加する磁場印加過程を示し、(b)が作業室311から冷媒を吐出する冷媒吐出過程を示し、(c)が磁気作業物質30から磁場を除去する磁場除去過程を示し、(d)が作業室311に冷媒を吸入する冷媒吸入過程を示している。
【0110】
図4(a)に示すように、冷媒ポンプ34における高温側ボア部344a内のピストン343が下死点付近に位置し、永久磁石323aが高温側容器31aの上方側の作業室311に近づくと、上方側の作業室311に収容された磁気作業物質30に磁場が印加(増磁)される(磁場印加過程)。この際、磁気熱量効果によって磁気作業物質30が発熱して、上方側の作業室311内の冷媒が昇温される。
【0111】
その後、図4(b)に示すように、高温側ボア部344a内のピストン343が下死点側から上死点側へと移動して、上方側の作業室311内の冷媒が冷媒ポンプ34側から高温側出入口312側に移動する。この際、高温側出入口312の冷媒吐出部312bに設けられたディスチャージバルブ312dが開放されて、冷媒吐出部312b付近に存する高温冷媒が加熱用熱交換器13側に吐出される(冷媒吐出過程)。
【0112】
その後、図4(c)に示すように、高温側ボア部344a内のピストン343が上死点付近に位置し、永久磁石323aが高温側容器31aの上方側の作業室311から遠ざかると、上方側の作業室311に収容された磁気作業物質30から磁場が除去(減磁)される(磁場除去過程)。
【0113】
その後、図4(d)に示すように、高温側ボア部344a内のピストン343が上死点側から下死点側へと移動して、上方側の作業室311内の冷媒が高温側出入口312側から冷媒ポンプ34側に移動する。この際、高温側出入口312の冷媒吸入部312aに設けられたサクションバルブ312cが開放されて、加熱用熱交換器13から流出した冷媒が冷媒吸入部312a付近に吸入される(冷媒吸入過程)。そして、冷媒ポンプ34のピストン343が下死点付近に位置に戻ると、図4(a)に示す磁場印加過程となる。
【0114】
このような磁場印加過程、冷媒吐出過程、磁場除去過程、冷媒吸入過程といった四つの工程によって、高温側容器31aの上方側の作業室311に収容された磁気作業物質30の磁気熱量効果により生ずる温熱を加熱用熱交換器13側に輸送することができる。
【0115】
なお、高温側容器31aの下方側の作業室311側では、上方側の作業室311側で行われる過程とタイミングが異なるだけで、上方側の作業室311側と同様に、磁場印加過程、冷媒吐出過程、磁場除去過程、冷媒吸入過程といった四つの工程が行われる。
【0116】
ここで、図示しないが低温側容器31bの上方側の作業室311側では、高温側容器31aの上方側の作業室311側における磁場印加過程時に、低温側ボア部344b内のピストン343が上死点付近に位置した状態で、磁気作業物質30に磁場が印加される。
【0117】
その後、低温側ボア部344b内のピストン343が上死点側から下死点側へと移動して、上方側の作業室311内の冷媒が低温側出入口313側から冷媒ポンプ34側に移動する。この際、低温側出入口313の冷媒吸入部313aに設けられたサクションバルブ313cが開放されて、冷却用熱交換器12から流出した冷媒が冷媒吸入部313a付近に吸入される(冷媒吸入過程)。
【0118】
その後、低温側容器31bの上方側の作業室311側では、高温側容器31aの上方側の作業室311側における磁場除去過程時に、低温側ボア部344b内のピストン343が下死点付近に位置した状態で、上方側の作業室311に収容された磁気作業物質30から磁場が除去される。
【0119】
その後、低温側ボア部344b内のピストン343が下死点側から上死点側へと移動して、上方側の作業室311内の冷媒が冷媒ポンプ34側から低温側出入口313側に移動する。この際、低温側出入口313の冷媒吐出部313bに設けられたディスチャージバルブ313dが開放されて、冷媒吐出部312b付近に存する低温冷媒が冷却用熱交換器12側に吐出される(冷媒吐出過程)。
【0120】
このような磁場印加過程、冷媒吸入過程、磁場除去過程、冷媒吐出過程といった四つの工程によって、低温側容器31bの上方側の作業室311に収容された磁気作業物質30の磁気熱量効果により生ずる冷熱を冷却用熱交換器12側に輸送することができる。
【0121】
なお、低温側容器31bの下方側の作業室311側では、上方側の作業室311側で行われる過程とタイミングが異なるだけで、上方側の作業室311側と同様に、磁場印加過程、冷媒吸入過程、磁場除去過程、冷媒吐出過程といった四つの工程が行われる。
【0122】
ここで、熱交換容器31全体で見ると、磁気作業物質30に磁場を印加された後に、低温側出入口313側から高温側出入口312側へ向けて冷媒が移動し、磁気作業物質30から磁場を除去された後に高温側出入口312側から低温側出入口313側へ向けて冷媒が移動することとなる。
【0123】
そして、熱交換容器31における高温側容器31a側にて磁場印加過程、冷媒吐出過程、磁場除去過程、冷媒吸入過程が繰り替えされ、低温側容器31b側にて磁場印加過程、冷媒吸入過程、磁場除去過程、冷媒吐出過程が繰り替えされることで、高温側容器31aの上方側の作業室311に収容された磁気作業物質30と、低温側容器31bの上方側の作業室311に収容された磁気作業物質30との間に大きな温度勾配を生成することができる。
【0124】
次に、自動車用空調装置1の各運転モード時の作動について図5〜図7に基づいて説明する。各運転モードは、操作パネルに設けられた運転モードの切替スイッチ、または空調制御装置100の制御処理によって適宜決定される。なお、図5は、冷房モード時の冷媒回路を示し、図6は、暖房モード時の冷媒回路を示し、図7は、除湿モード時の冷媒回路を示している。
【0125】
(A)冷房モード(図5参照)
冷房モードでは、空調制御装置100からの制御信号によって、高温側冷媒回路4が、第1電気式三方弁41にて加熱用熱交換器13の冷媒流出口13b側と吸放熱用熱交換器6の放熱側冷媒流入口61a側との間を接続する冷媒回路に切り替えられる。また、低温側冷媒回路5は、第2電気式三方弁51にて低温側出入口313の冷媒吐出部313b側と第3電気式三方弁52との間を接続する冷媒回路に切り替えられる共に、第3電気式三方弁52にて第2電気式三方弁51と冷却用熱交換器12の冷媒流入口12a側との間を接続する冷媒回路に切り替えられる。
【0126】
これにより、図5の矢印で示すように、高温側冷媒回路4では、磁気冷凍機3→加熱用熱交換器13→第1電気式三方弁41→吸放熱用熱交換器6の放熱部61→磁気冷凍機3の順に冷媒が循環する循環回路が構成される。また、低温側冷媒回路5では、磁気冷凍機3→第2電気式三方弁51→第3電気式三方弁52→冷却用熱交換器12→磁気冷凍機3の順に冷媒が循環する循環回路が構成される。
【0127】
従って、磁気冷凍機3にて昇温された冷媒は、磁気冷凍機3の高温側容器31aの冷媒吐出部312bから加熱用熱交換器13側に吐出され、加熱用熱交換器13にて冷却用熱交換器12通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。加熱用熱交換器13から流出した冷媒は、吸放熱用熱交換器6の放熱部61にて外気と熱交換して冷却され、磁気冷凍機3の冷媒吸入部312aを介して高温側容器31aに吸入されて再び昇温される。
【0128】
一方、磁気冷凍機3にて降温された冷媒は、磁気冷凍機3の低温側容器31bの低温側出入口313から冷却用熱交換器12側に吐出され、冷却用熱交換器12にて送風空気から吸熱する。これにより、冷却用熱交換器12を通過する送風空気が冷却される。
【0129】
この際、ケース11内のエアミックスドア18の開度が調整されることで、冷却用熱交換器12にて冷却された送風空気の一部(または全部)が冷風バイパス通路16から混合空間17へ流入し、冷却用熱交換器12にて冷却された送風空気の一部(または全部)が加熱用冷風通路15へ流入して加熱用熱交換器13、ヒータコア14を通過する際に再加熱されて混合空間17へ流入する。
【0130】
これにより、混合空間17にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の冷房を行うことができる。なお、冷房モードでは、送風空気の除湿能力も高いが、暖房能力は殆ど発揮されない。
【0131】
なお、冷却用熱交換器12から流出した冷媒は、磁気冷凍機3の冷媒吸入部313aを介して低温側容器31bに吸入されて再び降温される。
【0132】
(B)暖房モード(図6参照)
暖房モードでは、空調制御装置100からの制御信号によって、高温側冷媒回路4が、第1電気式三方弁41にて加熱用熱交換器13の冷媒流出口13b側と高温側容器31aの冷媒吸入部312a側との間を接続する冷媒回路に切り替えられる。また、低温側冷媒回路5は、第2電気式三方弁51にて低温側出入口313の冷媒吐出部313b側と吸放熱用熱交換器6の吸熱側冷媒流入口62a側との間を接続する冷媒回路に切り替えられると共に、第3電気式三方弁52にて第2電気式三方弁51と低温側出入口313の冷媒吸入部313a側との間を接続する冷媒回路に切り替えられる。
【0133】
これにより、図6の矢印で示すように、高温側冷媒回路4では、磁気冷凍機3→加熱用熱交換器13→第1電気式三方弁41→磁気冷凍機3の順に冷媒が循環する循環回路が構成される。また、低温側冷媒回路5では、磁気冷凍機3→吸放熱用熱交換器6の吸熱部62→第2電気式三方弁51→第3電気式三方弁52→磁気冷凍機3の順に冷媒が循環する循環回路が構成される。
【0134】
従って、磁気冷凍機3にて昇温された冷媒は、磁気冷凍機3の高温側容器31aの冷媒吐出部312bから加熱用熱交換器13側に吐出され、加熱用熱交換器13にて送風機から送風された送風空気と熱交換して冷却される。これにより、加熱用熱交換器13を通過する送風空気が加熱される。
【0135】
この際、エアミックスドア18の開度が調整されるので、冷房モードと同様に、混合空間17にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の暖房を行うことができる。なお、暖房モードでは、送風空気の除湿能力は発揮されない。
【0136】
そして、加熱用熱交換器13から流出した冷媒は、磁気冷凍機3の冷媒吸入部312aを介して高温側容器31aに吸入されて再び昇温される。
【0137】
一方、磁気冷凍機3にて降温された冷媒は、磁気冷凍機3の低温側容器31bの低温側出入口313から吸放熱用熱交換器6側に吐出され、吸放熱用熱交換器6の吸熱部62にて外気と熱交換して昇温する。そして、吸放熱用熱交換器6の吸熱部62から流出した冷媒は、磁気冷凍機3の冷媒吸入部313aを介して低温側容器31bに吸入されて再び降温される。
【0138】
(C)除湿モード(図7参照)
除湿モードでは、空調制御装置100からの制御信号によって、高温側冷媒回路4が、第1電気式三方弁41にて加熱用熱交換器13の冷媒流出口13b側と高温側容器31aの冷媒吸入部312a側との間を接続する冷媒回路に切り替えられる。また、低温側冷媒回路5は、第2電気式三方弁51にて低温側出入口313の冷媒吐出部313b側と第3電気式三方弁52との間を接続する冷媒回路に切り替えられる共に、第3電気式三方弁52にて第2電気式三方弁51と冷却用熱交換器12の冷媒流入口12a側との間を接続する冷媒回路に切り替えられる。
【0139】
これにより、図7の矢印で示すように、高温側冷媒回路4では、磁気冷凍機3→加熱用熱交換器13→第1電気式三方弁41→磁気冷凍機3の順に冷媒が循環する循環回路が構成される。また、低温側冷媒回路5では、磁気冷凍機3→第2電気式三方弁51→第3電気式三方弁52→冷却用熱交換器12→磁気冷凍機3の順に冷媒が循環する循環回路が構成される。
【0140】
従って、磁気冷凍機3にて昇温された冷媒は、磁気冷凍機3の高温側容器31aの冷媒吐出部312bから加熱用熱交換器13側に吐出され、加熱用熱交換器13にて冷却用熱交換器12通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、加熱用熱交換器13を通過する送風空気が加熱される。
【0141】
一方、磁気冷凍機3にて降温された冷媒は、磁気冷凍機3の低温側容器31bの低温側出入口313から冷却用熱交換器12側に吐出され、冷却用熱交換器12にて送風空気から吸熱する。これにより、冷却用熱交換器12を通過する送風空気が冷却されて除湿される。
【0142】
このように、冷却用熱交換器12にて冷却されて除湿された送風空気は、加熱用熱交換器13、ヒータコア14を通過する際に再加熱されて、混合空間17から車室内へ吹き出される。すなわち、車室内の除湿を行うことができる。なお、除湿モードでは、送風空気の除湿能力を発揮するができるが、暖房モードに比べて暖房能力が小さくなる。
【0143】
そして、加熱用熱交換器13から流出した冷媒は、磁気冷凍機3の冷媒吸入部312aを介して高温側容器31aに吸入されて再び昇温される。
【0144】
本実施形態の磁気冷凍システム2を含む自動車用空調装置1は、以上の如く作動するので、以下のような優れた効果を発揮することができる。
【0145】
上述したように、磁気冷凍機3における熱交換容器31の作業室311では、磁気作業物質30に磁場が印加された後に、低温側出入口313側から高温側出入口312側へ向けて冷媒を移動させることで、磁場の印加によって生ずる磁気作業物質30の温熱によって昇温した高温側出入口312側付近の冷媒を、高温側冷媒回路4を介して加熱用熱交換器13に流入させることができる。
【0146】
また、磁気冷凍機3における熱交換容器31の作業室311では、磁気作業物質30から磁場が除去された後に、高温側出入口312側から低温側出入口313側へ向けて冷媒を移動させることで、磁場の除去によって生ずる磁気作業物質30の冷熱によって降温した低温側出入口313側付近の冷媒を、低温側冷媒回路5を介して冷却用熱交換器12に流入させることができる。
【0147】
これによると、磁気作業物質30に生ずる温熱により昇温した冷媒を加熱用熱交換器13に直接流入させると共に、磁気作業物質30に生ずる冷熱により降温した冷媒を冷却用熱交換器12に直接流入させることができる。この結果、磁気作業物質30に生ずる温熱および冷熱を各熱交換器12、13に輸送する際の熱交換ロスを低減することができる。
【0148】
例えば、磁気冷凍機3における熱交換容器31の高温側出入口312の冷媒温度をTh、低温側出入口313の冷媒温度をTl(<Th)とし、磁気冷凍システム2におけるサイクル効率ηを理想的なカルノーサイクルのサイクル効率ηthに対して80%としたとき、本実施形態の如く熱交換容器31内の冷媒の冷熱および温熱を直接的に加熱用熱交換器13および冷却用熱交換器12に輸送する構成では、COPを次の数式F1で示すことができる。
【0149】
COP={Th/(Th−Tl)}×80/100…(F1)
一方、熱交換容器31内の冷媒の冷熱および温熱を、従来のように間接的に加熱用熱交換器13および冷却用熱交換器12に輸送する構成では、加熱用熱交換器13側および冷却用熱交換器12側の温度がTh、Tlから熱交換ロスΔT分低下した温度(Th−ΔT、Tl−ΔT)となり、COPを次の数式F2で示すことができる。
【0150】
COP={Th−ΔT/(Th−Tl)}×80/100…(F2)
このように、本実施形態の磁気冷凍システム2では、磁気作業物質30に生ずる温熱および冷熱を各熱交換器12、13に輸送する際の熱交換ロスΔTを低減することができるので、従来の磁気冷凍システムに比べて、磁気冷凍システム2のCOPの向上を図ることができる。
【0151】
ここで、AMR方式を採用する磁気冷凍機3では、熱交換容器31の作業室311内の冷媒を高温側出入口312側と低温側出入口313側との間で往復させる構成となる。このため、熱交換容器31の各出入口312、313と各熱交換器12、13とを単に配管等で接続する構成とすると、各出入口312、313から各熱交換器12、13に吐出された冷媒が、各熱交換器12、13に流入する前に、再び熱交換容器31の作業室311内に吸入されてしまう虞がある。
【0152】
この場合、各出入口312、313から各熱交換器12、13に吐出した冷媒の熱が、配管内に存する冷媒を介して、各熱交換器12、13内の冷媒に伝達されるだけで、各熱交換器12、13内の冷媒を所望の温度とするために長時間を要する。
【0153】
これに対して、本実施形態では、高温側出入口312から吐出された冷媒が加熱用熱交換器13を通って再び高温側出入口312に戻るように構成された高温側冷媒回路4によって、熱交換容器31の高温側出入口312と加熱用熱交換器13とを接続しているので、熱交換容器31の高温側出入口312から吐出された冷媒を加熱用熱交換器13に流入させることができる。
【0154】
同様に、低温側出入口313から吐出された冷媒が冷却用熱交換器12を通って再び低温側出入口313に戻るように構成された低温側冷媒回路5によって、熱交換容器31の低温側出入口313と冷却用熱交換器12とを接続しているので、熱交換容器31の低温側出入口313から吐出された冷媒を冷却用熱交換器12に流入させることができる。
【0155】
さらに、本実施形態では、熱交換容器31の各出入口312、313それぞれに、熱交換容器31の作業室311内に冷媒を吸入する際に開放されるサクションバルブ、熱交換容器31の作業室311内から冷媒を吐出する際に開放されるディスチャージバルブを設ける構成としている。
【0156】
このため、磁気作業物質30に磁場が印加された後に、磁場の印加によって生ずる磁気作業物質30の温熱によって昇温した高温側出入口312付近の冷媒を、確実に加熱用熱交換器13に流入させることができると共に、加熱用熱交換器13から流出した冷媒を熱交換容器31の作業室311に吸入させることができる。
【0157】
同様に、磁気作業物質30から磁場が除去された後に、磁場の除去によって生ずる磁気作業物質の冷熱によって降温した低温側出入口313付近の冷媒を、確実に冷却用熱交換器12に流入させることができると共に、冷却用熱交換器12から流出した冷媒を熱交換容器31の作業室311に吸入させることができる。
【0158】
また、本実施形態では、磁場印加除去装置32の回転軸321a、321bを冷媒ポンプ34の駆動軸341に連結し、磁場印加除去装置32の駆動手段である電動モータ35によって、冷媒ポンプ34を駆動する構成としている。
【0159】
これによれば、磁場印加除去装置32および冷媒ポンプ34の駆動源を共通化させることができるので、磁気冷凍システム2を簡素な構成で実現することができる。ひいては、磁気冷凍システム2における消費動力の増大を抑制して、磁気冷凍システム2のCOPの更なる向上を図ることが可能となる。
【0160】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図8に基づいて説明する。図8は、本実施形態の自動車用空調装置1の全体構成図である。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0161】
上述の第1実施形態では、各容器31a、31bの冷媒吸入部312a、313aにサクションバルブ312c、313cを設け、冷媒吐出部312b、313bにディスチャージバルブ312d、313dを設けることで、各冷媒回路4、5において、各容器31a、31bの冷媒出入口312、313、各熱交換器12、13の冷媒流入口12a、13a、各熱交換器の冷媒流出口12b、13b、各容器31a、31bの冷媒出入口312、313といった順に冷媒が一方向へ流れる構成としている。
【0162】
これに対して、本実施形態では、サクションバルブ312c、313cおよびディスチャージバルブ312d、313dを廃し、高温側冷媒回路4および低温側冷媒回路5にチェック弁(逆止弁)44、45、56、57を配する構成としている。
【0163】
具体的には、図8に示すように、高温側冷媒回路4には、高温側容器31aの冷媒出入口312と加熱用熱交換器13の冷媒流入口13aとの間に、高温側容器31aの冷媒出入口312側から加熱用熱交換器13の冷媒流入口13a側への冷媒の流れを許容する第1チェック弁44が設けられている。また、高温側冷媒回路4には、加熱用熱交換器13の冷媒流出口13b側と高温側容器31aの冷媒出入口312との間に、加熱用熱交換器13の冷媒流出口13b側から高温側容器31aの冷媒出入口312側への冷媒の流れを許容する第2チェック弁45が設けられている。
【0164】
一方、低温側冷媒回路5には、低温側容器31bの冷媒出入口313と冷却用熱交換器12の冷媒流入口13aとの間に、低温側容器31bの冷媒出入口313側から冷却用熱交換器12の冷媒流入口13a側への冷媒の流れを許容する第3チェック弁56が設けられている。また、低温側冷媒回路5には、冷却用熱交換器12の冷媒流出口13b側と低温側容器31bの冷媒出入口313との間に、冷却用熱交換器12の冷媒流出口13b側から低温側容器31bの冷媒出入口313側への冷媒の流れを許容する第4チェック弁57が設けられている。
【0165】
このような構成によれば、磁気作業物質30に磁場が印加された後に、磁場の印加によって生ずる磁気作業物質30の温熱によって昇温した高温側出入口312付近の冷媒を、確実に加熱用熱交換器13に流入させることができると共に、加熱用熱交換器13から流出した冷媒を熱交換容器31の作業室311に吸入させることができる。
【0166】
同様に、磁気作業物質30から磁場が除去された後に、磁場の除去によって生ずる磁気作業物質の冷熱によって降温した低温側出入口313付近の冷媒を、確実に冷却用熱交換器12に流入させることができると共に、冷却用熱交換器12から流出した冷媒を熱交換容器31の作業室311に吸入させることができる。
【0167】
なお、本実施形態における高温側冷媒回路4に設けられた第1、第2チェック弁44、45が本発明の第1逆流防止手段を構成し、低温側冷媒回路5に設けられた第3、第4チェック弁56、57が本発明の第2逆流防止手段を構成している。
【0168】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図9に基づいて説明する。図9は、本実施形態の自動車用空調装置1の全体構成図である。なお、本実施形態では、第1、第2実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0169】
上述の第2実施形態では、高温側冷媒回路4に第1、第2チェック弁44、45を設け、低温側冷媒回路5に第3、第4チェック弁56、57を設ける構成としている。これに対して、本実施形態では、各チェック弁44、45、56、57に変えて、各冷媒回路4、5に、空調制御装置100からの制御信号に応じて開閉する開閉弁46、47、58、59を設ける構成としている。
【0170】
具体的には、図9に示すように、高温側冷媒回路4には、高温側容器31aの冷媒出入口312と加熱用熱交換器13の冷媒流入口13aとの間に第1開閉弁46が設けられ、加熱用熱交換器13の冷媒流出口13b側と高温側容器31aの冷媒出入口312との間に第2開閉弁47が設けられている。
【0171】
なお、第1開閉弁46は、空調制御装置100により高温側容器31aの冷媒出入口312側から加熱用熱交換器13の冷媒流入口13a側への冷媒の流れのみを許容するように制御される。また、第2開閉弁47は、加熱用熱交換器13の冷媒流出口13b側から高温側容器31aの冷媒出入口312側への冷媒の流れのみを許容するように制御される。
【0172】
一方、低温側冷媒回路5には、低温側容器31bの冷媒出入口313と冷却用熱交換器12の冷媒流入口13aとの間に第3開閉弁58が設けられ、冷却用熱交換器12の冷媒流出口13b側と低温側容器31bの冷媒出入口313との間に第4開閉弁59が設けられている。
【0173】
なお、第3開閉弁58は、空調制御装置100により低温側容器31bの冷媒出入口313側から冷却用熱交換器12の冷媒流入口13a側への冷媒の流れのみを許容するように制御される。また、第4開閉弁59は、冷却用熱交換器12の冷媒流出口13b側から低温側容器31bの冷媒出入口313側への冷媒の流れのみを許容するように制御される。
【0174】
このような構成によっても、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、本実施形態における高温側冷媒回路4に設けられた第1、第2開閉弁46、47が本発明の第1逆流防止手段を構成し、低温側冷媒回路5に設けられた第3、第4開閉弁58、59が本発明の第2逆流防止手段を構成している。
【0175】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図10に基づいて説明する。図10は、本実施形態の自動車用空調装置1の全体構成図である。
【0176】
本実施形態では、車室内を冷房する冷房モードのみの冷媒回路を有する磁気冷凍システム2について説明する。なお、本実施形態では、第1〜第3実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0177】
本実施形態の磁気冷凍システム2は、図10に示すように、磁気冷凍機3、磁気冷凍機3で生成した温熱により昇温した冷媒を放熱器(第1熱交換器)7に循環させる放熱側冷媒回路(第1冷媒循環回路)8、磁気冷凍機3で生成した冷熱により降温した冷媒を冷却用熱交換器(第2熱交換器)12に循環させる低温側冷媒回路(第2冷媒循環回路)5等を備えて構成されている。
【0178】
本実施形態の磁気冷凍機3の熱交換容器31は、内部に磁気作業物質30を収容すると共に冷媒が流通する作業室311が形成された中空円柱状の容器で構成されている。熱交換容器31の一端側には、同軸上に冷媒ポンプ34が配置されている。
【0179】
熱交換容器31には、冷媒ポンプ34と反対側の端面に冷媒出入口312が形成されており、冷媒ポンプ34側の端面に冷媒ポンプ34のシリンダボア344に連通する連通路314が形成されている。
【0180】
本実施形態の冷媒ポンプ34は、熱交換容器31の連通路314に対応する第1ボア部344aと、後述する低温側冷媒回路5に連通する第2ボア部344bを有して構成されている。なお、シリンダボア344は、第1ボア部344a内の冷媒と第2ボア部344b内の冷媒とが流通可能に構成されており、第1ボア部344aの熱が直接第2ボア部344bに輸送される。
【0181】
なお、第2ボア部344bと低温側冷媒回路5とを連通する連通路345は、低温側冷媒回路5から冷媒を吸入する冷媒吸入部345a、および低温側冷媒回路5に冷媒を吐出する冷媒吐出部345bで構成されている。そして、連通路345の冷媒吸入部345aには、冷媒を吸入する際に開放されるサクションバルブ345cが設けられ、冷媒吐出部345bには、冷媒を吐出する際に開放されるディスチャージバルブ345dが設けられている。なお、本実施形態では、冷媒ポンプ34における低温側冷媒回路5と連通する連通路345が、熱交換容器31における冷媒出入口312に対応する冷媒出入口として構成している。
【0182】
放熱側冷媒回路8は、熱交換容器31における冷媒出入口312の冷媒吐出部312bから吐出された冷媒を、放熱器7の冷媒流入口7aに導く共に、放熱器7の冷媒流出口13bから流出した冷媒を冷媒出入口312の冷媒吸入部312aに戻す冷媒循環回路である。
【0183】
従って、放熱側冷媒回路8は、熱交換容器31の冷媒吐出部312b→放熱器7→熱交換容器31の冷媒吸入部312aといった順に冷媒が循環する。なお、放熱器7は、エンジンルーム内に配置されて、冷媒流入口7aから流入した冷媒と外気とを熱交換させる熱交換器である。
【0184】
また、本実施形態の低温側冷媒回路5は、冷媒ポンプ34における連通路345の冷媒吐出部345bから吐出された冷媒を、冷却用熱交換器12の冷媒流入口12aに導く共に、冷却用熱交換器12の冷媒流出口12bから流出した冷媒を冷媒ポンプ34における連通路345の冷媒吸入部345aに戻す冷媒循環回路である。
【0185】
従って、低温側冷媒回路5は、冷媒ポンプ34における連通路345の冷媒吐出部345b→冷却用熱交換器12→冷媒ポンプ34における連通路345の冷媒吸入部345aといった順に冷媒が循環する。
【0186】
次に、本実施形態の磁気冷凍システム2における磁気冷凍機3の作動の概略について説明する。
【0187】
冷媒ポンプ34における第1ボア部344a内のピストン343が下死点付近に位置し、永久磁石323aが熱交換容器31の上方側の作業室311に近づくと、上方側の作業室311に収容された磁気作業物質30に磁場が印加され、上方側の作業室311内の冷媒が昇温される(磁場印加過程)。この際、第2ボア部344b内のピストン343が上死点付近に位置する。
【0188】
その後、第1ボア部344a内のピストン343が下死点側から上死点側へと移動すると、上方側の作業室311内の冷媒が冷媒ポンプ34側から冷媒出入口312側に移動して、冷媒吐出部312b付近に存する高温冷媒が放熱器7側に吐出される(冷媒吐出過程)。この際、第2ボア部344b内のピストン343が上死点側から下死点側へと移動して、冷却用熱交換器12から流出した冷媒が、連通路345の冷媒吸入部345aを介して、第2ボア部344b内に吸入される。
【0189】
その後、第1ボア部344a内のピストン343が上死点付近に位置し、永久磁石323aが熱交換容器31の上方側の作業室311から遠ざかると、上方側の作業室311に収容された磁気作業物質30から磁場が除去され、上方側の作業室311内の冷媒が降温される(磁場除去過程)。この際、第2ボア部344b内のピストン343が下死点付近に位置する。なお、第2ボア部344bには、磁気作業物質30から磁場が除去されることで降温した第1ボア部344a内の冷媒が流入し、第2ボア部344b内の冷媒が降温する。
【0190】
その後、第1ボア部344a内のピストン343が上死点側から下死点側へと移動して、加熱用熱交換器13から流出した冷媒が冷媒吸入部312a付近に吸入される。この際、第2ボア部344b内のピストン343が下死点側から上死点側へと移動して、第2ボア部344b内の冷媒が、連通路345の冷媒吐出部345bを介して、冷却用熱交換器12側に吐出される。
【0191】
このような磁場印加過程、冷媒吐出過程、磁場除去過程、冷媒吸入過程といった四つの工程によって、熱交換容器31の上方側の作業室311に収容された磁気作業物質30の磁気熱量効果により生ずる冷熱を冷却用熱交換器12側に輸送される。これにより、冷却用熱交換器12にて車室内に送風する送風空気を冷却することが可能となる。なお、熱交換容器31の上方側の作業室311に収容された磁気作業物質30の磁気熱量効果により生ずる温熱は放熱器7側に輸送されて、外気に放熱される。
【0192】
以上説明した本実施形態によれば、磁気作業物質30に生ずる冷熱により降温した冷媒を冷却用熱交換器12に直接流入させることができるので、磁気作業物質30に生ずる冷熱を輸送する際の熱交換ロスを低減することができ、磁気冷凍システムのCOPの向上を図ることできる。
【0193】
なお、本実施形態では、車室内を冷房する冷房モードのみの冷媒回路を有する磁気冷凍システム2について説明したが、磁気冷凍システム2を、車室内を暖房する暖房モードのみの冷媒回路を有する構成としてもよい。この場合、例えば、本実施形態の放熱器7を室内空調ユニット10のケース11内に配置して、車室内へ送風する送風空気を加熱する加熱用熱交換器として機能させ、冷却用熱交換器12をエンジンルーム内に配置して、外気と熱交換する吸熱器として機能させればよい。
【0194】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図11、図12に基づいて説明する。図11は、本実施形態の自動車用空調装置1の全体構成図であり、図12は、本実施形態の磁気冷凍機の拡大図である。
【0195】
本実施形態では、磁気冷凍機3における一対の冷媒出入口312、313の具体的構成、および冷媒ポンプ34の具体的構成等が第1〜第4実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第1〜第4実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0196】
図11および図12に示すように、本実施形態の一対の冷媒出入口312、313それぞれは、各冷媒吸入部312a、313aが、熱交換容器31の長手方向からみたときに同円周上に位置するように設けられている。また、各冷媒吐出部312b、313bは、熱交換容器31の長手方向からみたときに同円周上に位置するように設けられている。本実施形態では、冷媒吐出部312b、313bが、冷媒吸入部312a、313aよりも熱交換容器31の径方向外側に位置するように配置されている。なお、冷媒吸入部312a、313aを、冷媒吐出部312b、313bよりも熱交換容器31の径方向外側に位置するように配置してもよい。
【0197】
各冷媒吸入部312a、313aそれぞれには、サクションバルブ313cが設けられ、各冷媒吐出部312b、313bそれぞれには、ディスチャージバルブ313dが設けられている。なお、各サクションバルブ313cは、冷媒吸入部312a、313aに対応して熱交換容器31の長手方向からみたときに同円周上に位置するように設けられている。同様に、各ディスチャージバルブ313dは、冷媒吐出部312b、313bに対応して熱交換容器31の長手方向からみたときに同円周上に位置するように設けられている。
【0198】
そして、高温側出入口312における各冷媒吸入部312aは、吸入側マニホールド312eを介して互いに連通すると共に、各冷媒吐出部312bが吐出側マニホールド312fを介して互いに連通している。同様に、低温側出入口313における各冷媒吸入部313aが吸入側マニホールド313eを介して互いに連通すると共に、各冷媒吐出部313bが吐出側マニホールド313fを介して互いに連通している。なお、吸入側マニホールド312e、313eと吐出側マニホールド312f、313fとの間には、図示しない断熱部材が配置されており、両マニホールド間での熱移動が抑制されている。
【0199】
ここで、熱交換容器31内における各冷媒吸入部312a、313a、および各冷媒吐出部312b、313bを構成する空間の容積は、後述する冷媒ポンプ34における一回当たりの冷媒の吐出容積(シリンダ容積)よりも小さくなるように構成されている。なお、各冷媒吸入部312a、313a、および各冷媒吐出部312b、313bを構成する空間の容積とは、各バルブ312c、313c、312d、313dの配置空間(各バルブの可動範囲を含む)の容積(デッドボリューム)の総容積に相当している。
【0200】
また、磁場印加除去装置32の一部を構成する永久磁石323a、323bは、ロータ322a、322bの外周面において180°ずれた位置に設けられている。例えば、図12に示すように、一方の永久磁石323aが上方側に位置する場合に、他方の永久磁石323bが下方側に位置するように設けられている。
【0201】
次に、本実施形態の冷媒ポンプ34について説明すると、本実施形態では、冷媒ポンプ34として、回転軸321a、321bの軸方向に対してラジアル方向にピストン346を摺動させる多気筒型のラジアルピストンポンプを採用している。
【0202】
具体的には、本実施形態の冷媒ポンプ34は、円筒状のハウジング340、ハウジング340内に回転可能に支持されると共に、偏芯カム348が一体に形成された駆動軸、ハウジング340に放射状に複数設けられたシリンダボア347、偏芯カム348の回転に応じて各シリンダボア347内を往復動するピストン346等で構成されている。なお、本実施形態では、熱交換容器31と冷媒ポンプ34のハウジング340とが一体化されている。
【0203】
本実施形態の冷媒ポンプ34は、上述の実施形態で説明した冷媒ポンプと同様に、磁気作業物質30への磁場の印加、除去に同期して、各容器31a、31bに対する冷媒の吸入、吐出を行うように構成されている。
【0204】
例えば、冷媒ポンプ34は、高温側容器31aにおける上方側に位置する作業室311内の磁気作業物質30に磁場が印加されると共に、低温側容器31bにおける上方側に位置する作業室311内の磁気作業物質30から磁場が除去された際に、各容器31a、31bにおける上方側に位置する各作業室311に順次冷媒を吐出すると共に、各容器31a、31bにおける下方側に位置する各作業室311から順次冷媒を吸入する。
【0205】
逆に、冷媒ポンプ34は、高温側容器31aにおける上方側の作業室311内の磁気作業物質から磁場が除去されると共に、低温側容器31bにおける上方側に位置する作業室311内の磁気作業物質30に磁場が印加された際に、各容器31a、31bにおける上方側に位置する各作業室311から順次冷媒を吸入すると共に、各容器31a、31bにおける下方側に位置する各作業室311に順次冷媒を吐出する。
【0206】
このように磁気冷凍機3では、磁気作業物質30への磁場の印加、除去に同期して、各容器31a、31bにおける各作業室311から順次冷媒を吸入、吐出することができるので、各容器31a、31bにおける冷媒吐出部312b、313b付近の冷媒を連続して外部に吐出することができる。
【0207】
次に、本実施形態に係る磁気冷凍機3の作動の概略を説明する。冷媒ポンプ34における上方側に位置するシリンダボア347内のピストン346が下死点付近に位置し、永久磁石323aが高温側容器31aの上方側に位置する各作業室311に近づくと、上方側に位置する各作業室311に収容された磁気作業物質30に磁場が順次印加(増磁)される(磁場印加過程)。この際、磁気熱量効果によって磁気作業物質30が発熱して、上方側に位置する各作業室311内の冷媒が順次昇温される。
【0208】
その後、冷媒ポンプ34における上方側に位置するシリンダボア347内のピストン346が下死点側から上死点側へと移動して、上方側に位置する各作業室311内の冷媒が冷媒ポンプ34側から高温側出入口312側に移動する。この際、高温側出入口312の冷媒吐出部312bに設けられたディスチャージバルブ312dが開放されて、冷媒吐出部312b付近に存する高温冷媒が吐出側マニホールド312fを介して加熱用熱交換器13側に吐出される(冷媒吐出過程)。
【0209】
その後、冷媒ポンプ34における上方側に位置するシリンダボア347内のピストン346が上死点付近に位置し、永久磁石323aが高温側容器31aの上方側に位置する各作業室311から遠ざかると、上方側に位置する各作業室311に収容された磁気作業物質30から磁場が除去(減磁)される(磁場除去過程)。
【0210】
そして、冷媒ポンプ34における上方側に位置するシリンダボア347内のピストン346が上死点側から下死点側へと移動して、上方側に位置する各作業室311内の冷媒が高温側出入口312側から冷媒ポンプ34側に移動する。この際、高温側出入口312の冷媒吸入部312aに設けられたサクションバルブ312cが開放されて、加熱用熱交換器13から流出した冷媒が吸入側マニホールド312eを介して冷媒吸入部312a付近に吸入される(冷媒吸入過程)。そして、冷媒ポンプ34のピストン346が下死点付近に位置に戻ると、再び磁場印加過程となる。
【0211】
このような磁場印加過程、冷媒吐出過程、磁場除去過程、冷媒吸入過程といった四つの工程が高温側容器31aの各作業室311で順次繰り返されることで、高温側容器31aの各作業室311に収容された磁気作業物質30の磁気熱量効果により生ずる温熱を加熱用熱交換器13側に輸送することができる。
【0212】
一方、高温側容器31aの上方側に位置する各作業室311内の磁気作業物質30の磁場印加過程時に、低温側容器31bの上方側に位置する各作業室311では、当該作業室311から永久磁石323bが遠ざかり、上方側に位置する各作業室311に収容された磁気作業物質30に磁場が順次除去される(磁場除去過程)。
【0213】
その後、冷媒ポンプ34における上方側に位置するシリンダボア347内のピストン346が下死点側から上死点側へと移動して、上方側に位置する各作業室311内の冷媒が冷媒ポンプ34側から低温側出入口313側に移動する。この際、低温側出入口313の冷媒吐出部313bに設けられたディスチャージバルブ313dが開放されて、冷媒吐出部313b付近に存する低温冷媒が吐出側マニホールド313fを介して冷却用熱交換器12側に吐出される(冷媒吐出過程)。
【0214】
さらに、冷媒ポンプ34における上方側に位置するシリンダボア347内のピストン346が上死点付近に移動し、永久磁石323bが低温側容器31bの上方側に位置する各作業室311に近づくと、上方側に位置する各作業室311に収容された磁気作業物質30に磁場が印加される(磁場印加過程)。
【0215】
そして、冷媒ポンプ34における上方側に位置するシリンダボア347内のピストン346が上死点側から下死点側へと移動して、上方側に位置する各作業室311内の冷媒が低温側出入口313側から冷媒ポンプ34側に移動する。この際、低温側出入口313の冷媒吸入部313aに設けられたサクションバルブ313cが開放されて、冷却用熱交換器12から流出した冷媒が吸入側マニホールド313eを介して冷媒吸入部313a付近に吸入される(冷媒吸入過程)。そして、冷媒ポンプ34のピストン346が下死点付近に位置に戻ると、再び磁場除去過程となる。
【0216】
このような磁場除去過程、冷媒吐出過程、磁場印加過程、冷媒吸入過程といった四つの工程が低温側容器31bの各作業室311で順次繰り返されることで、低温側容器31bの各作業室311に収容された磁気作業物質30の磁気熱量効果により生ずる冷熱を冷却用熱交換器12側に輸送することができる。
【0217】
以上説明した本実施形態の磁気冷凍システムでは、磁気作業物質30に生ずる温熱により昇温した冷媒を加熱用熱交換器13に直接流入させると共に、磁気作業物質30に生ずる冷熱により降温した冷媒を冷却用熱交換器12に直接流入させることができるので、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0218】
これに加えて、本実施形態では、熱交換容器31内における各冷媒吸入部312a、313a、および各冷媒吐出部312b、313bを構成する空間の容積を、冷媒ポンプ34における一回当たりの冷媒の吐出容積(シリンダ容積)よりも小さくなるように構成している。このため、磁気作業物質30に生ずる温熱により昇温した冷媒および磁気作業物質30に生ずる冷熱により降温した冷媒が熱交換容器31内で滞留することを抑制することができ、磁気作業物質(30)に生ずる温熱および冷熱を効率よく熱交換容器31の外部に輸送することができる。
【0219】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図13に基づいて説明する。図13は、本実施形態の自動車用空調装置1の全体構成図である。なお、本実施形態では、第1〜第5実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0220】
本実施形態では、第5実施形態において各冷媒吸入部312a、313aおよび各冷媒吐出部312b、313bに設けたサクションバルブ312c、313cおよびディスチャージバルブ312d、313dを廃し、その代わりにチェック弁44、45、56、57を設ける構成としている。
【0221】
具体的には、高温側容器31aの各冷媒吸入部312aには、加熱用熱交換器13の冷媒流出口13b側から高温側容器31aの各冷媒吸入部312a側への冷媒の流れを許容する第1チェック弁44が設けられ、高温側容器31aの各冷媒吐出部312bには、高温側容器31aの各冷媒吐出部312b側から加熱用熱交換器13の冷媒流入口13a側への冷媒の流れを許容する第2チェック弁45が設けられている。
【0222】
同様に、低温側容器31bの各冷媒吸入部313aには、冷却用熱交換器12の冷媒流出口12b側から低温側容器31bの各冷媒吸入部313a側への冷媒の流れを許容する第3チェック弁56が設けられ、低温側容器31bの各冷媒吐出部313bには、低温側容器31bの各冷媒吐出部313b側から冷却用熱交換器12の冷媒流入口12a側への冷媒の流れを許容する第4チェック弁57が設けられている。
【0223】
なお、各冷媒吸入部312a、313aに設けられた各第1、第3チェック弁44、56は、各冷媒吸入部312a、313aに対応して、熱交換容器31を長手方向からみたときに同円周上に位置するように配置されている。また、各冷媒吐出部312b、313bに設けられた各第2、第4チェック弁45、57は、各冷媒吐出部312b、313bに対応して、熱交換容器31を長手方向からみたときに同円周上に位置するように配置されている。
【0224】
このような構成によっても、磁気作業物質30に生ずる温熱により昇温した冷媒を加熱用熱交換器13に直接流入させると共に、磁気作業物質30に生ずる冷熱により降温した冷媒を冷却用熱交換器12に直接流入させることができるので、上述した第5実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0225】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について図14に基づいて説明する。図14は、本実施形態の自動車用空調装置1の全体構成図である。なお、本実施形態では、第1〜第6実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0226】
本実施形態では、第6実施形態において各冷媒吸入部312a、313aおよび各冷媒吐出部312b、313bに設けたチェック弁44、45、56、57を廃し、その代わりに空調制御装置100からの制御信号に応じて開閉する開閉弁46、47、58、59を設ける構成としている。
【0227】
具体的には、高温側容器31aの各冷媒吸入部312aには、加熱用熱交換器13の冷媒流出口13b側から高温側容器31aの各冷媒吸入部312a側への冷媒の流れのみを許容するように制御される第1開閉弁46が設けられ、高温側容器31aの各冷媒吐出部312bには、高温側容器31aの各冷媒吐出部312b側から加熱用熱交換器13の冷媒流入口13a側への冷媒の流れのみを許容するように制御される第2開閉弁47が設けられている。
【0228】
同様に、低温側容器31bの各冷媒吸入部313aには、冷却用熱交換器12の冷媒流出口12b側から低温側容器31bの各冷媒吸入部313a側への冷媒の流れのみを許容するように制御される第3開閉弁58が設けられ、低温側容器31bの各冷媒吐出部313bには、低温側容器31bの各冷媒吐出部313b側から冷却用熱交換器12の冷媒流入口12a側への冷媒の流れのみを許容するように制御される第4開閉弁59が設けられている。
【0229】
なお、各冷媒吸入部312a、313aに設けられた各第1、第3開閉弁46、58は、各冷媒吸入部312a、313aに対応して、熱交換容器31を長手方向からみたときに同円周上に位置するように配置されている。また、各冷媒吐出部312b、313bに設けられた各第2、第4開閉弁47、59は、各冷媒吐出部312b、313bに対応して、熱交換容器31を長手方向からみたときに同円周上に位置するように配置されている。
【0230】
このような構成によっても、磁気作業物質30に生ずる温熱により昇温した冷媒を加熱用熱交換器13に直接流入させると共に、磁気作業物質30に生ずる冷熱により降温した冷媒を冷却用熱交換器12に直接流入させることができるので、上述した第5、第6実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0231】
(第8実施形態)
上述の第5実施形態では、図12に示すように、サクションバルブ312c、313cをディスチャージバルブ312d、313dよりも作業室311に近い位置に配置している。このため、ディスチャージバルブ312d、313dから冷媒を吐出する際に、サクションバルブ312c、313cの周囲のデッドスペース等に滞留した冷媒とディスチャージバルブ312d、313dから吐出する冷媒とが、混ざり合って不必要に熱交換してしまう虞がある。
【0232】
そこで、第8実施形態では、熱交換容器31の長手方向において、ディスチャージバルブ312d、313dをサクションバルブ312c、313cよりも作業室311に近い位置に配置する構成としている。すなわち、ディスチャージバルブ312d、313dを作業室311に近接する配置形態としている。
【0233】
図15の部分拡大断面図に示すように、本実施形態では、冷媒吸入部312a、313aを、冷媒吐出部312b、313bよりも熱交換容器31の径方向外側に位置するように配置している。
【0234】
そして、吸入孔316aおよび吐出孔316bが形成された板状のバルブプレート316を作業室311に隣接する位置に配置している。なお、バルブプレート316に形成された吸入孔316aは、作業室311内に冷媒を吸入するための連通孔を構成し、吐出孔316bは、作業室311内から冷媒を吐出するための連通孔を構成している。
【0235】
ディスチャージバルブ312d、313dを、バルブプレート316に隣接する位置に配置し、サクションバルブ312c、313cを、バルブプレート316からバルブの可動範囲以上離れた位置に配置する構成としている。つまり、ディスチャージバルブ312d、313dは、直接的にバルブプレート316の吐出孔316bを開閉するように構成され、サクションバルブ312c、313cは、間接的にバルブプレート316の吸入孔316aを開閉するように構成されている。
【0236】
このように、ディスチャージバルブ312d、313dを作業室311に近接する配置形態とすれば、サクションバルブ312c、313cの周囲に滞留する冷媒とディスチャージバルブ312d、313dを介して作業室311から吐出する冷媒との不必要な熱交換を抑制することが可能となる。これにより、磁気作業物質30に生ずる温熱および冷熱を輸送する際の熱交換ロスを低減することができ、磁気冷凍システムのCOPの向上を図ることができる。
【0237】
(第9実施形態)
本実施形態では、各バルブ312c、313c、312d、313dをロータリ弁で構成する例を説明する。
【0238】
図16の磁気冷凍機の拡大図に示すように、各バルブ312c、313c、312d、313dを構成するロータリ弁は、作業室311に隣接して配置されて作業室311と連通する吸入孔317aおよび吐出孔317bが形成されたバルブプレート317、および熱交換容器31の周方向に回転してバルブプレート317の吸入孔317aおよび吐出孔317bを開閉する回転ディスク318で構成されている。
【0239】
バルブプレート317に形成された吸入孔317aは、作業室311内に冷媒を吸入するための連通孔を構成し、吐出孔317bは、作業室311内から冷媒を吐出するための連通孔を構成している。
【0240】
図17のB−B断面図、および図18のC−C断面図に示すように、回転ディスク318は、駆動手段である電動モータ35による動力によって回転するように、回転軸321a、321bに連結されており、回転軸321a、321bの回転と同期してバルブプレート317の吸入孔317aおよび吐出孔317bをタイミングをずらして開閉するように構成されている。
【0241】
具体的には、回転ディスク318には、作業室311内に冷媒を吸入する際に、軸方向にバルブプレート317の吸入孔317aと対向する位置に表裏を貫通する吸入側貫通孔318aが形成されている。同様に、回転ディスク318には、作業室311内から冷媒を吐出する際に、軸方向にバルブプレート317の吐出孔317bと対向する位置に表裏を貫通する吐出側貫通孔318bが形成されている。
【0242】
本実施形態のように、各バルブ312c、313c、312d、313dをロータリ弁で構成する場合、サクションバルブ312c、313c周囲における冷媒の滞留を抑制することができ、サクションバルブ312c、313c周囲に滞留する冷媒と、ディスチャージバルブ312d、313dを介して作業室311から吐出する冷媒との不必要な熱交換を抑制することが可能となる。これにより、磁気作業物質30に生ずる温熱および冷熱を輸送する際の熱交換ロスを低減することができ、磁気冷凍システムのCOPの向上を図ることができる。
【0243】
また、ロータリ弁の回転ディスク318を磁場印加除去装置32を駆動するための動力、つまり、電動モータ35の動力によって回転させる構成としているので、磁気冷凍システムを簡素な構成で実現することができる。さらに、サクションバルブ312c、313c、およびディスチャージバルブ312d、313dを一体的に構成することができ、磁気冷凍システムをより簡素な構成で実現することができる。
【0244】
(第10実施形態)
本実施形態では、サクションバルブ312c、313cをロータリ弁で構成し、ディスチャージバルブ312d、313dをリード弁で構成する例を説明する。
【0245】
図19の磁気冷凍機の拡大図に示すように、サクションバルブ312c、313cを構成するロータリ弁は、作業室311に隣接して配置されて作業室311と連通する吸入孔317aが形成されたバルブプレート317、および熱交換容器31の周方向に回転してバルブプレート317の吸入孔317aを開閉する回転ディスク318で構成されている。
【0246】
そして、図20のD−D断面図、および図21のE−E断面図に示すように、回転ディスク318は、駆動手段である電動モータ35による動力によって回転するように、回転軸321a、321bに連結されており、回転軸321a、321bの回転と同期してバルブプレート317の吸入孔317aを開閉するように構成されている。なお、回転ディスク318には、作業室311内に冷媒を吸入する際に、軸方向にバルブプレート317の吸入孔317aと対向する位置に表裏を貫通する吸入側貫通孔318aが形成されている。
【0247】
なお、ディスチャージバルブ312d、313dを構成するリード弁は、バルブプレート317に形成された吐出孔317bを、弾力性を有する板材で開閉するように構成されている。
【0248】
本実施形態のように、サクションバルブ312c、313cだけをロータリ弁で構成する場合であっても、サクションバルブ312c、313c周囲における冷媒の滞留を抑制することができ、サクションバルブ312c、313c周囲に滞留する冷媒と、ディスチャージバルブ312d、313dを介して作業室311から吐出する冷媒との不必要な熱交換を抑制することが可能となる。これにより、磁気作業物質30に生ずる温熱および冷熱を輸送する際の熱交換ロスを低減することができ、磁気冷凍システムのCOPの向上を図ることができる。
【0249】
(第11実施形態)
上述の第2、第6実施形態では、第1、第2逆流防止手段としてチェック弁44、45、56、57で構成する例について説明したが、第1、第2逆流防止手段として冷媒流れの逆方向に比べて冷媒流れの順方向に抵抗が小さい流体ダイオードで構成してもよい。これによれば、磁気冷凍システムを簡素な構成で実現することができる。なお、第1、第2逆流防止手段のうち、一方を流体ダイオード71、72で構成するようにしてもよい。
【0250】
ここで、流体ダイオードとしては、ノズル式流体ダイオード71や渦巻き式流体ダイオード72を採用することができる。
【0251】
図22は、ノズル式流体ダイオード71の模式的な断面図である。ノズル式流体ダイオード71は、筒状部材で構成され、図22に示すように、冷媒流路における冷媒流れ上流側から冷媒流れ下流側に向かって円錐状に縮小したテーパ部71aを有して構成されている。
【0252】
このノズル式流体ダイオード71では、冷媒が逆方向に流れる場合(図中黒線矢印参照)には、冷媒が順方向に流れる場合(図中白抜き矢印参照)に比べて、テーパ部71aにおける抵抗が大きくなる。
【0253】
図23は、渦巻き式流体ダイオード72を説明するための説明図であり、図23の(a)が、模式的な斜視図、(b)が冷媒の順方向への流れを示す(a)の上面図、(c)が冷媒の逆方向への流れを示す(b)の上面図である。
【0254】
渦巻き式流体ダイオード72は、図23(a)に示すように、内部に円筒状の渦室が形成された渦ケース721、渦ケース721内の渦室の中心軸方向に延びるように設けられた軸ノズル722、渦室の外周の接線方向に延びるように設けられた接線ノズル723を有して構成されている。
【0255】
この渦巻き式流体ダイオード72では、冷媒流れ上流側から下流側へ冷媒が流れる場合、図23(b)の白抜き矢印で示すように、軸ノズル722からの冷媒が渦ケース721内の渦室にて渦を生ずることなく接線ノズル723に流れる。
【0256】
これに対して、冷媒流れ下流側から上流側へ冷媒が流れる場合、図23(c)の黒矢印で示すように、接線ノズル723からの冷媒が渦ケース721内の渦室にて渦を巻きながら軸ノズル722に流れる。これにより、渦巻き式流体ダイオード72では、冷媒流れ下流側から上流側へと冷媒が逆方向に流れる場合、冷媒流れ上流側から下流側へと冷媒が順方向に流れる場合に比べて、抵抗が大きくなる。
【0257】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0258】
(1)上述の各実施形態では、磁場印加除去装置32の磁場発生手段を永久磁石323a、323bで構成した例を説明したが、これに限定されず、磁場発生手段を通電により磁場を生ずる電磁石で構成してもよい。
【0259】
(2)上述の各実施形態の如く、冷媒ポンプ34および磁場印加除去装置32の駆動源を1つの電動モータ35で構成することが好ましいが、冷媒ポンプ34および磁場印加除去装置32の駆動源を別個に設ける構成としてもよい。
【0260】
また、第9、第10実施形態の如く、各バルブ312c、313c、312d、313dの駆動源および磁場印加除去装置32の駆動源を1つの電動モータ35で構成することが好ましいが、それぞれの駆動源を別個に設ける構成としてもよい。
【0261】
(3)上述の各実施形態では、磁気冷凍システム2を自動車用空調装置1に適用した例について説明したが、これに限定されず、他の装置に適用してもよい。
【0262】
(4)上述の各実施形態は、可能な範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0263】
2 磁気冷凍システム
30 磁気作業物質
31 熱交換容器(容器)
311 作業室
312 高温側出入口(一方の冷媒出入口)
312c サクションバルブ(吸入弁)
312d ディスチャージバルブ(吐出弁)
313 低温側出入口(他方の冷媒出入口)
312c サクションバルブ(吸入弁)
312d ディスチャージバルブ(吐出弁)
32 磁場印加除去装置(磁場印加除去手段)
321a 高温側回転軸(回転軸)
321b 低温側回転軸(回転軸)
323 永久磁石(磁場発生部)
34 冷媒ポンプ(冷媒移動手段)
35 電動モータ(駆動手段)
345 連通路(他方の冷媒出入口)
345c サクションバルブ(吸入弁)
345d ディスチャージバルブ(吐出弁)
37 変速機構(動力伝達機構)
4 高温側冷媒回路(第1冷媒循環回路)
44 第1チェック弁(第1逆流防止手段)
45 第2チェック弁(第1逆流防止手段)
46 第1開閉弁(第1逆流防止手段)
47 第2開閉弁(第1逆流防止手段)
5 低温側冷媒回路(第2冷媒循環回路)
56 第3チェック弁(第2逆流防止手段)
57 第4チェック弁(第2逆流防止手段)
58 第3開閉弁(第2逆流防止手段)
59 第4開閉弁(第2逆流防止手段)
7 放熱器(第1熱交換器)
8 放熱側冷媒回路(第1冷媒循環回路)
11 ケース
12 冷却用熱交換器(第2熱交換器)
13 加熱用熱交換器(第1熱交換器)
18 エアミックスドア(温度調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気熱量効果を有する磁気作業物質(30)が配置されると共に冷媒が流通する複数の作業室(311)が周方向に放射状に形成された円筒状の容器(31)と、
前記磁気作業物質(30)への磁場の印加および除去を繰り返す磁場印加除去手段(32)と、
前記容器(31)における長手方向の両端面に設けられた一対の冷媒出入口(312、313)のうち、一方の冷媒出入口(312)の冷媒吐出部(312b)から流出した冷媒が第1熱交換器(13)を通って前記一方の冷媒出入口(312)の冷媒吸入部(312a)に戻るように構成される第1冷媒循環回路(4)と、
前記一対の出入口(312、313)のうち、他方の冷媒出入口(313)の冷媒吐出部(313b)から流出した冷媒が第2熱交換器(12)を通って前記他方の冷媒出入口(313)の冷媒吸入部(313a)に戻るように構成される第2冷媒循環回路(5)と、
前記一方の冷媒出入口(312)側と前記他方の冷媒出入口(313)側との間で前記冷媒を移動させる冷媒移動手段(34)と、を備え、
前記冷媒移動手段(34)は、
前記磁場印加除去手段(32)によって前記磁気作業物質(30)に磁場を印加された後に、前記他方の冷媒出入口(313、345)側から前記一方の冷媒出入口(312)側へ冷媒を移動させることで、前記一方の冷媒出入口(312)の前記冷媒吐出部(312b)から前記第1冷媒循環回路(4)へ流出させ、
前記磁場印加除去手段(32)によって前記磁気作業物質(30)から磁場を除去された後に、前記一方の冷媒出入口(312)側から前記他方の冷媒出入口(313、345)側へ冷媒を移動させることで、前記他方の冷媒出入口(313)の前記冷媒吐出部(313b)から前記第2冷媒循環回路(5)へ流出させるように構成され、
前記冷媒吸入部(312a、313a)および前記冷媒吐出部(312b、313b)を構成する空間の容積は、前記冷媒移動手段(34)における一回当りの冷媒の吐出容積よりも小さいことを特徴とする磁気冷凍システム。
【請求項2】
磁気熱量効果を有する磁気作業物質(30)が配置されると共に冷媒が流通する複数の作業室(311)が周方向に放射状に形成された円筒状の容器(31)と、
前記磁気作業物質(30)への磁場の印加および除去を繰り返す磁場印加除去手段(32)と、
前記容器(31)における長手方向の両端面に設けられた一対の冷媒出入口(312、313、345)のうち、一方の冷媒出入口(312)の冷媒吐出部(312b)から流出した冷媒が第1熱交換器(13)を通って前記一方の冷媒出入口(312)の冷媒吸入部(312a)に戻るように構成される第1冷媒循環回路(4)と、
前記一対の出入口(312、313、345)のうち、他方の冷媒出入口(313、345)の冷媒吐出部(313b、345b)から流出した冷媒が第2熱交換器(12)を通って前記他方の冷媒出入口(313)の冷媒吸入部(313a、345a)に戻るように構成される第2冷媒循環回路(5)と、
前記一方の冷媒出入口(312)側と前記他方の冷媒出入口(313)側との間で前記冷媒を移動させる冷媒移動手段(34)と、を備え、
前記冷媒移動手段(34)は、
前記磁場印加除去手段(32)によって前記磁気作業物質(30)に磁場を印加された後に、前記他方の冷媒出入口(313、345)側から前記一方の冷媒出入口(312)側へ冷媒を移動させ、
前記磁場印加除去手段(32)によって前記磁気作業物質(30)から磁場を除去された後に、前記一方の冷媒出入口(312)側から前記他方の冷媒出入口(313、345)側へ冷媒を移動させることを特徴とする磁気冷凍システム。
【請求項3】
前記冷媒吸入部(312a、313a、345a)には、前記作業室(311)内に冷媒を吸入する際に開放される吸入弁(312c、313c、345c)が設けられ、
前記冷媒吐出部(312b、313b、345b)には、前記作業室(311)から冷媒を吐出する際に開放される吐出弁(312d、313d、345d)が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気冷凍システム。
【請求項4】
前記吐出弁(312d、313d、345d)は、前記容器(31)の長手方向において、前記吸入弁(312c、313c、345c)よりも前記作業室(311)に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の磁気冷凍システム。
【請求項5】
前記吸入弁(312c、313c、345c)および前記吐出弁(312d、313d、345d)のうち、少なくとも前記吸入弁(312c、313c、345c)は、前記作業室(31)に隣接して配置されると共に前記作業室(311)内と連通する連通孔(317a、317b)が形成されたバルブプレート(317)、および前記容器(31)の周方向に回転して前記連通孔(317a、317b)を開閉する回転ディスク(318)を有するロータリ弁で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の磁気冷凍システム。
【請求項6】
前記ロータリ弁は、前記磁場印加除去手段(32)を駆動するための動力を利用して前記回転ディスク(318)が回転するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の磁気冷凍システム。
【請求項7】
前記一方の冷媒出入口(312)における前記冷媒吸入部(312a)および前記冷媒吐出部(312b)には、前記冷媒吐出部(312b)、前記第1熱交換器(13)における冷媒流入口(13a)、前記第1熱交換器(13)における冷媒流出口(13b)、前記冷媒吸入部(312a)といった順に冷媒が一方向へ流れることを許容する第1逆流防止手段(44〜47)が設けられ、
前記他方の冷媒出入口(313)における前記冷媒吸入部(313a)および前記冷媒吐出部(313b)には、前記冷媒吐出部(313b)、前記第2熱交換器(12)における冷媒流入口(12a)、前記第2熱交換器(12)における冷媒流出口(12b)、前記冷媒吸入部(313a)といった順に冷媒が一方向へ流れることを許容する第2逆流防止手段(56〜59)が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気冷凍システム。
【請求項8】
前記第1逆流防止手段(44〜47)および前記第2逆流防止手段(56〜59)の少なくとも一方は、冷媒流れの逆方向に比べて冷媒流れの順方向に抵抗が小さい流体ダイオード(71、72)で構成されていることを特徴とする請求項7に記載の磁気冷凍システム。
【請求項9】
前記冷媒吸入部(312a、313a、345a)および前記冷媒吐出部(312b、313b、345b)は、前記複数の作業室(311)に対応して複数設けられ、
前記冷媒吸入部(312a、313a、345a)は、前記容器(31)の長手方向から見たときに同円周上に位置するように設けられ、
前記冷媒吐出部(312b、313b、345b)は、前記容器(31)の長手方向から見たときに同円周上に位置するように設けられていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の磁気冷凍システム。
【請求項10】
前記磁場印加除去手段(32)は、磁場を発生させる磁場発生部(323a、323b)、前記磁場発生部(323a、323b)を回転可能に支持する回転軸(321a、321b)、前記回転軸(321a、321b)を駆動する駆動手段(35)を含んで構成され、
前記磁場発生部(323a、323b)は、前記回転軸(321a、321b)の回転に伴って周期的に前記磁気作業物質(30)に近づくように設けられていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の磁気冷凍システム。
【請求項11】
前記駆動手段(35)による動力を前記冷媒移動手段(34)に伝達する動力伝達機構(37a、37b)を備え、
前記冷媒移動手段(34)は、前記動力伝達機構(37a、37b)を介して伝達された動力により、前記一方の冷媒出入口(312)および前記他方の冷媒出入口(313、345)との間で冷媒を往復移動させることを特徴とする請求項10に記載の磁気冷凍システム。
【請求項12】
前記冷媒移動手段(34)は、前記複数の作業室(311)に対応する複数のシリンダ(344、347)および複数のピストン(343、346)を有する多気筒型のピストンポンプで構成されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の磁気冷凍システム。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1つの磁気冷凍システムが適用された自動車用空調装置であって、
車室内に送風する送風空気の空気流路を構成するケース(11)を備え、
前記第1熱交換器(13)は、前記ケース(11)内に配置され、前記送風空気を加熱する加熱用熱交換器を構成し、
前記第2熱交換器(12)は、前記ケース(11)内に配置され、前記送風空気を冷却する冷却用熱交換器を構成することを特徴とする自動車用空調装置。
【請求項14】
前記第1熱交換器(13)は、前記ケース(11)内における前記第2熱交換器(12)よりも前記送風空気の空気流れ下流側に配置されていることを特徴とする請求項13に記載の自動車用空調装置。
【請求項15】
前記第1熱交換器(13)に流入する前記送風空気の風量を調整して車室内に吹き出す空気の温度を調整する温度調整手段(18)を備えることを特徴とする請求項13または14に記載の自動車用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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