説明

磁気処理装置

【課題】 従来磁気処理装置では磁石が設けられた管壁側は磁力が強いが、通水管の中心に向かうに従って磁力が弱く磁気暴露にムラが生じる。また、流体の磁気暴露時間を多くするためには、磁石の数を多くしたり、複雑な形状のケーシングにしなければならなかった。
【解決手段】 磁束に横切らせて磁気処理する装置において、磁気処理する流体を通過させる流路内部に磁場を形成するための磁石を設けると共に、該流体を通過させるもので該流路内部の磁場に帯状体を多層に絡めた乱流発生部材を配する。或いは、磁気処理する流体を通過させる流路内部に、該流体を通過させるもので帯状体を多層に絡めた磁力を有する乱流発生部材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気作用によって流体の質を変化させることを目的とした磁気処理装置の改良に関するものである。

【背景技術】
【0002】
水道水、天然水、工業用水などは、超微細な粒子や気泡が存在するミクロ不均一系である。このような流体に含まれる不純物を除去若しくは改質することを目的として、従来より強い磁気を作用させて処理する磁気処理が広く実施されている。例えば、磁気処理することで水のクラスター(集合体)を小さくし、浸透性を高める効果や、赤錆発生を防止する効果が高まるとされている。
【0003】
効果的な磁気処理を行うための要件として、磁力(磁束密度)、流速、通過距離が大きく左右する。基本的には、流速の変化に応じた最適な磁束密度で磁気処理する必要がある。この点に関し、非特許文献1には流速は0.5〜2.5m/sで最大の効果が得られ、これより小さいか大きい流速では原則として効果が少なくなると記されている。また、磁束密度についても最適値域は、0.07〜0.20T(テスラ)であり、これより大きくても小さくても効果が低下するとある。
【0004】
流体が磁界を通過する距離を長くして磁気の暴露時間を多くする手段として例えば特許文献1に示す磁化装置がある。この磁化装置は、複数の磁化室を備えた内部ケーシングと、該内部ケーシングの外側に外部ケーシングで覆った構造とし、内部ケーシングを通過させた磁化水をさらに外部ケーシングに通過させて再度磁化作用を付与する方法である。
【0005】
磁気作用をさらに効果的にする手段として、流体に乱流を発生させることが知られている。乱流としては、ミクロレベルの渦を発生させる他、流速を高めることによってキャビテーション(真空泡沫現象)を発生させることでより一層効果を高めることができる。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−040694号公報
【特許文献2】特開平11−114577号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ユ.エム.ソコリスキー著「磁化水」有限会社日ソ通信社 1991年10月15日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の磁気処理装置としては、通水管を挟んで磁石を配し磁束に直角に通水して磁化させる構造が一般的である。しかし、この構造では磁気処理作用に限界が生じる。これは、磁石が設けられた管壁側は磁力が強いが、通水管の中心に向かうに従って磁力が弱く、磁気暴露にムラが生じて著しい効率の低下がみられるためである。
【0009】
しかも、このような構造は磁束密度と流速の設定が難しく、効率的な磁気処理が困難となる問題がある。特に、磁力は距離の2乗に反比例して減衰するため、通水管の径も大きく影響する。
【0010】
また、流体の磁気暴露時間を多くするためには、磁石の数を多くしたり、特許文献1のように暴露する流路を長くするため複雑な形状のケーシングにしなければならなかった。さらに、磁気処理作用を高めるためは、乱流やキャビテーションを発生させることでかなりの効果を上げることができるものの、超音波発生装置を設けたり、特許文献2に示すように通水方向の変化や通水管の径を変化させるなど、コスト面やコンパクト化する上で大きな障害となっていた。

【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明者は上記課題に鑑み鋭意研究した結果、本発明を成し得たものであり、その特徴とするところは、磁束に横切らせて磁気処理する装置において、磁気処理する流体を通過させる流路内部に磁場を形成するための磁石を設けると共に、該流体を通過させるもので該流路内部の磁場に帯状体を多層に絡めた乱流発生部材を配したこと。(第一発明)
【0012】
或いは、磁束に横切らせて磁気処理する装置において、磁気処理する流体を通過させる流路内部に、該流体を通過させるもので帯状体を多層に絡めた磁力を有する乱流発生部材を設けたことにある。(第二発明)
【0013】
本明細書中でいう「乱流発生部材」とは、金属やプラスチックなどの帯状体を多層に絡めたものであり、これを流体の流路内部に詰めることによって流体の流れを乱流にする部材をいう。例えば金属たわしのように薄く細幅で螺旋状にカールさせた金属線を巻回して多層に絡めたものや、スチールウールなどの金属、若しくはテープ状のフィルムやゴムなどのプラスチックを多層に絡めたものである。
【0014】
乱流発生部材を流路に設けることにより、流体の流れを乱流にして磁気処理を効果的にすることができる。この場合、流体の流路内部や流路外部の側方に磁石を設けて流路に磁場を形成し、その磁場に乱流発生部材を配する。
基本的には、乱流発生部材を磁性を有する素材で形成する。これにより、流路内部の磁場に設けた乱流発生部材が二次磁石として機能し、流体が扁平の金属細線を多層に絡めた狭い隙間を磁力を有する金属素材に沿って通過し、流体に対する磁気作用がより効果的となる。
【0015】
乱流発生部材を一次磁石として構成すれば、流体の流路に乱流発生部材を設けるだけで磁気処理することが可能となる。磁力を有する乱流発生部材の形成手段としては、例えば磁性を有する金属に熱処理を施して着磁器で着磁する方法や、テープに磁粉を含浸させたマグネットテープ、磁石を練り込んだゴム、延性の高いFe−Pt磁石などを冷間圧延した薄膜状永久磁石などで乱流発生部材を形成する。この他、薄膜状永久磁石の製法として蒸着や電着などの方法で、基材に磁石の膜を設ける方法が考えられる。
【0016】
乱流発生部材は、磁石による磁場に設ける構造であるため、これを磁性を有しない素材で形成しても流体の磁気処理が可能となる。これは、乱流発生部材によって流体の流れ方向をランダムに変化させるためである。従って、流体の流れ方向に対する磁石の配置は特に限定するものではなく、磁束の方向は任意でよい。一般的には、流体が磁束を直角に横切るように磁石を配置するが、磁束の方向と流体の流れ方向が一致するように流体の流れ方向に磁石を配することも可能である。
【0017】
乱流発生部材によって流体に乱流が生じるが、乱流発生部材の素材を極薄の帯状体で構成することで、流体にキャビテーションが生じる。流体に磁気とキャビテーションを同時に作用させることで相互作用によって磁気処理により一層の効果をもたらすことができる。帯状体の幅や厚さは、特に限定するものではないが、幅5mm以下、厚さ0.5mm以下にして、カールさせたり曲げたりして絡み合わせるのが好ましい。流体にキャビテーションを発生させやすくするためには、帯状体の厚さを薄くするのがよく、約100μ以下の厚さにすることでキャビテーションが生じる効果を得ることができた。
【0018】
非特許文献1では磁気処理の前段階でキャビテーションを生じさせても効果が高められるとある。このため、磁気処理の前にキャビテーションを生成させることを目的として乱流発生部材を本発明装置の上流側に設けることで達成することができる。
【0019】
乱流発生部材を構成する金属素材としては、流路に配するため錆の影響が出ないステンレス鋼やチタンなどが好ましい。乱流発生部材に磁性を求める場合には、例えばSUS430やSUS444などのフェライト系ステンレス鋼がある。また、非磁性では一般的なSUS304や耐食性の高いSUS316などのオーステナイト系ステンレス鋼がある。これらのステンレス鋼を扁平の金属細線に加工したものを多層に絡めた状態にする。加工法としては特に限定するものではないが、例えば、切削や金属たわしを製造する場合のようにステンレス線を圧延して引き延ばす。通常、扁平の金属細線に加工する段階で螺旋状にカールするが、これをそのまま丸めて絡み合わせて乱流発生部材とする。
【0020】
磁石としては、フェライト磁石、サマコバ磁石、ネオジム磁石などの永久磁石や、電磁石である。磁石を流路の内部で磁束が流れ方向に設ける場合は、孔開けや流路の管壁との間に隙間が生じる形状にして流路を塞がないようにする。また、乱流発生部材の周面側に流路を設け、磁石を避けるような流路としてもよい。磁石を流路の内部に設け流体に直接接触する場合は、Fe−Pt磁石など耐食性の高い磁石や、メッキなどの表面処理、耐食性部材による封止などの方法で対処する。

【発明の効果】
【0021】
本発明に係る磁気処理装置は、流路に乱流発生部材を設け磁気処理する流体を通過させる構造としたことにより、次のような極めて優れた効果を有する。
(1)乱流発生部材を一次磁石や二次磁石とすれば、絡めた扁平の金属細線の間の狭い空間を処理流体がランダムに通過するため、磁力を有する金属細線に接触又はその近傍を通過し弱い磁力でも効果が高い。そして、処理流体に対する磁気作用が均質となり、磁気暴露する距離も長くすることができる。また、磁力を有する金属細線を絡めた構造であるため、極性が連続的に逆転し交番磁界効果が高くなる。
(2)乱流発生部材を構成する金属細線の厚さを約100μ以下にすれば、処理流体の流れに乱流に伴うキャビテーションが発生し、より効果的な磁気処理を行うことができる。
(3)乱流発生部材がフィルタの役目をし、不純物の除去や、磁気処理により結晶化した凝集物を流出させにくくして、安価で交換も容易に行える。
(4)乱流発生部材が通過させる処理流体の抵抗となることや、流れの方向がランダムとなるため、処理流体の流速にあまり影響を受けることなく磁気処理効果を得ることができる。
(5)処理流体が乱流発生部材の中をランダムに方向を変えて通過するため、磁束の方向を問わず磁石を任意の位置に設置することができ、用途に応じてコンパクト化することができる。

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一発明に係る磁気処理装置の一実施例を示す縦断面図である。(実施例1)
【図2】本発明の第一発明に係る磁気処理装置の他の実施例を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第一発明に係る磁気処理装置のさらに他の実施例を示す縦断面図である。(実施例2)
【図4】本発明の第二発明に係る磁気処理装置の一実施例を示す縦断面図である。(実施例3)
【図5】図1に示す磁気処理装置の使用状態の一例を示す縦断面図である。(実施例4)
【図6】乱流発生部材の一例を示す斜視図である。
【図7】(a)は乱流発生部材を構成する金属細線を延ばした状態の斜視図、(b)は金属細線の断面図である。
【図8】(a)(b)(c)はそれぞれ本発明に係る磁気処理装置の流路内部に設ける磁石の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る磁気処理装置は、磁気処理する流体を通過させる流路内部に磁場を形成するための磁石を設けると共に、該流体を通過させるもので該流路内部の磁場に帯状体を多層に絡めた乱流発生部材を配したこと。或いは、磁気処理する流体を通過させる流路内部に、該流体を通過させるもので帯状体を多層に絡めた磁力を有する乱流発生部材を設けたことにより、上記課題を解決した。

【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の第一発明に係る磁気処理装置1の一実施例を示すもので、流体を通すパイプPの流路に2つの磁石Mを配し、磁石Mの間に乱流発生部材2を介在させた構造である。磁石Mは、ネオジム磁石であり流路を確保するため中央に貫通孔を設けている。そして、耐食性を高めるためニッケルメッキを施している。乱流発生部材2は、ステンレス鋼を幅約1mm、厚さ約60μの扁平の金属細線に形成し多層に絡めたものである。
【0025】
2つの磁石Mによる磁束の方向は、図の矢印(実線)の方向となるため、本来であれば流体が磁束を横切らないため磁気処理できないが、乱流発生部材2を設けたことにより流体の流れがランダムとなり磁束を横切らせて磁気処理することが可能となる。乱流発生部材2としては、磁性を有するフェライト系ステンレス鋼のSUS444を素材として構成すれば、乱流発生部材2が磁石Mによって二次磁石として磁化させることができる。乱流発生部材2が磁化すれば、多層に絡めた金属細線そのものが磁力を有し、流体が金属細線に接触又はその近傍を通過することで均質で効率的な磁気処理を行うことができる。
【0026】
乱流発生部材2を磁化させる点においては、図2に示すように一の磁石Mに乱流発生部材2を並べて配置してもよい。本例では、磁石Mの両側に乱流発生部材2を設けているが、片側に設けるだけでもよい。また、本例では貫通孔を設けた固定具3で乱流発生部材2を流路内に保持すると共に、固定具3側に金属メッシュ31を配した例を示している。

【実施例2】
【0027】
流路内に磁場を形成する点において、磁石Mは図3に示すようにパイプPの外側に設けてもよい。これにより、流路内の磁場に乱流発生部材2を設けることで実施例1に示した構造と同様の効果が得られる。この場合も、乱流発生部材2の磁性の有無は問わない。

【実施例3】
【0028】
図4は、本発明の第二発明に係る磁気処理装置10の実施例を示し、乱流発生部材2を一次磁石として構成したものである。乱流発生部材2は磁石化したり磁力を備えた素材で構成する。本例の乱流発生部材2は、幅約2mm、厚さ約80μのマグネットテープを絡めた状態でパイプPに詰めたものである。

【実施例4】
【0029】
磁気処理装置1の使用状態としては、例えば図5に示す手押し式の水差し4に利用することができる。この磁気処理装置1は図1に示した構造であり、給水パイプ41の基部にコンパクトに設けることができる。水差し4に水道水を入れるだけで磁気処理装置1によって磁気処理した磁化水を簡単に供給でき、花や野菜などに浸透性の高い磁化水を散布して鮮度保持力を高めることができる。
【0030】
図6は、乱流発生部材2の一例を示すもので、上述したようにSUS444のステンレス鋼を幅約1mm、厚さ約60μの扁平の金属細線に形成し多層に絡めたものである。金属細線は図7(a)に示すようにカールした状態であり、これの外径dは約2mm〜15mm、同図(b)の金属細線の幅wが約5mm〜0.5mm、厚さtが約0.5mm〜0.02mmの範囲から適宜選択する。
【0031】
流路内に流体の流れを妨げる位置に設ける磁石Mとしては、図8(a)のようにセンターに大きな貫通孔を設けたり、同図(b)のように貫通孔の回りに多数の貫通孔を設けた形状や、同図(c)のように周辺を切り欠いた形状にして、流体の流路を確保する。

【符号の説明】
【0032】
1 第一発明に係る磁気処理装置
2 乱流発生部材
3 固定具
31 金属メッシュ
4 水差し
41 給水パイプ
10 第二発明に係る磁気処理装置
M 磁石
P パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束に横切らせて磁気処理する装置において、磁気処理する流体を通過させる流路内部に磁場を形成するための磁石を設けると共に、該流体を通過させるもので該流路内部の磁場に帯状体を多層に絡めた乱流発生部材を配したことを特徴とする磁気処理装置。
【請求項2】
磁束に横切らせて磁気処理する装置において、磁気処理する流体を通過させる流路内部に、該流体を通過させるもので帯状体を多層に絡めた磁力を有する乱流発生部材を設けたことを特徴とする磁気処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−72869(P2011−72869A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224803(P2009−224803)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000238544)
【出願人】(398043517)
【Fターム(参考)】