説明

磁気拘束装置のための可動極延長体及びこのような可動極延長体を有する磁気拘束装置

本発明は、強磁性の工作物(P)を保持するための磁気拘束装置(1)のための可動な極延長体(4)に関し、所定の長手方向(X−X)に延びた固定された極部材(5)と、前記固定された極部材(5)に取り付けられた少なくとも2つの極部材(6,7)とが設けられており、前記少なくとも2つの極部材(6,7)が、前記固定された極部材(5)に対して可動である。可動な極延長体は、前記固定された極部材85)に作用的に連結されたホルダ手段(8)を有することを特徴とし、前記ホルダ手段(8)は、前記所定の長手方向(X−X)に沿って第1の作動位置(P1)と第2の作動位置(P2)との間を可動であり、前記少なくとも2つの可動な極部材(6,7)に、これらを前記固定された極部材(5)と接触して保持するように作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ請求項1及び19の前提部に定義されているような、磁気拘束装置のための可動な極延長体、及びこのような可動な極延長体を有する磁気拘束装置に関する。
【0002】
ここで使用される場合、磁気拘束装置という用語は、
−永久磁石装置、すなわち、拘束のために又はその状態を活性から不活性へ又はその逆に変化させるために使用される場合にいかなる電力供給をも必要とせず、装置内の適切な配列における永久磁石を備えて形成された装置
−永電磁装置、すなわち、拘束のために使用される場合にいかなる電力供給をも必要とせず、作動又は作動停止される場合に電力供給を必要とし、可逆永久磁石を備えて形成されており、必要であれば、装置内の適切な配列における静止永久磁石を備える装置
−電磁装置、すなわち、拘束のために使用される場合に電力供給を必要とし、その磁気コアが強磁性材料から形成されている装置
を指すことが意図されている。
【0003】
強磁性工作物を拘束するための磁気装置は、機械加工中及び装置の作動中に工作物を変形させることなく工作物を拘束することを要求することが知られている。
【0004】
特に、変形の問題は、工作物が磁気装置の拘束面に対して完全に付着しない場合にそれぞれ生じる。
【0005】
ほとんどの場合、工作物は、磁気装置によって加えられる大きな力により、拘束の間に弾性変形を生じ、工作物が磁気装置から解放された時に元の形状に回復する傾向があり、これにより、機械加工精度を低下させる。
【0006】
前記欠点を排除するために、可動な極延長体が導入されており、この可動な極延長体は、磁気拘束面を工作物に適応させることによって工作物の変形を制限することができる。
【0007】
このような可動な極延長体の例は、本出願人によるイタリア国特許第1222875号明細書に開示されており、この明細書は、従来技術の可動な極延長体の技術的特徴及び作動的特徴を説明するために、引用したことにより全体が本明細書に記載されたものとする。
【0008】
この開示を考慮すると、従来の極延長体の側面図を示す図1をも参照すると、摺動面716の傾斜により可動部分715は部分的に定置部分714の軸線の方向に、すなわち装置の基準面に対して直交方向に且つ可動部分715自体に対して部分的に横方向に、移動させられる。
【0009】
磁気装置(この図には示されていない)が作動させられると、極延長体713の可動部分は工作物(この図には示されていない)の形状に合致し、これらの位置に磁気的にロックされ、これにより、工作物のあらゆる鉛直方向及び水平方向の移動を阻止する。
【0010】
これは、磁気装置によって加えられる、定置部分714と可動部分715との間のかなりの磁気的な引付力と、延長部が互いに向き合って配置されている場合に、延長部の様々な摺動面の接合及び組み合わされた作用とにより、生じる。
【0011】
しかしながら、前記イタリア国特許第1222875号明細書に開示された可動な極延長体は、明らかな利点を提供するが、これらの極延長体は、依然として、以下のような欠点を有する:
−磁気装置が作動された時に極延長体から磁束の一部が漏れる。
−例えば45゜の傾斜を有する傾斜した面上での2つの相補的な部分の摺動が、極延長体の可動部分と定置部分との間の接触面積を低減する。なぜならば、行程が工作物拘束のために使用されることができる磁束の量を増減させるからである。
−例えば45゜の傾斜を有する傾斜した面上での極延長体の可動部分の摺動が、拘束プレート上に位置する別の工作物を妨害する。
−例えば45゜の傾斜を有する、各極延長体のための1つの傾斜した面の提供は、極延長体が、様々な摺動面に向き合うことを考慮して適切に向き付けられることを要求し、このことは、隣接する可動な極延長体の表面の方向に対する可動な極延長体の傾斜した面の方向が補償されることを伴う。
−磁気プレートへの可動な極延長体の固定は複雑で且つ時間を浪費し、延長体に孔が形成されることを必要とし、また、磁気プレートに可動な極延長体を固定するための与えられた数の工程を必要とし、これは製造コストを増大させる。
−例えば45゜の傾斜を有する傾斜した面を備えた可動な極延長体の使用は、同じ磁極部材寸法条件において、極延長体がより大きな高さを有することを必要とする。
【0012】
上述の従来技術を考慮して、本発明の目的は、従来の極延長体の前記欠点を排除することである。
【0013】
本発明によれば、この目的は、それぞれ請求項1及び請求項18の前提部に定義されているような、磁気拘束装置のための可動な極延長体、及びこのような可動な極延長体を有する磁気拘束装置によって達成される。
【0014】
本発明は、漏れを最小限に抑制し且つ確実な工作物保持を保証するために、広範囲な磁束循環を許容しながら、拘束される工作物の領域に自動的に合致することができる、機械加工される及び/又は持ち上げられる工作物を保持するための磁気拘束装置において使用するための、可動な極延長体を提供する。
【0015】
好適には、本発明は、可動な極延長体と工作物との間の間隙を排除し、これにより、磁束循環を最適化し、等しい寸法の従来の可動な延長体と比較して、拘束力を40%増大させる。
【0016】
さらに、本発明によって、可動な極延長体の相互の向き付けがもはや必要とされない。
【0017】
可動な極延長体の本発明の特徴は、切りくず等の汚れの侵入、及びその結果としての作動障害をも回避する。
【0018】
本発明の可動な極延長体は、傾斜した面を備えて形成された極延長体よりもより小さな高さ寸法を有しており、このことは、極延長体の多用性を高める。
【0019】
また、極延長体の円形の構造は、延長体をプレートに固定するための特定の工具の使用を回避することにより、磁気装置の拘束プレートへの可動な極延長体の固定を簡単にする。
【0020】
発明の特徴及び利点は、添付された図面に限定することなく例示された1つの実用的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の可動な極延長体の側面図である。
【図2】本発明において開示された極延長体を有する磁気拘束装置の斜視図である。
【図3】本発明において開示された可動な極延長体の第1の実施形態の分解図である。
【図4】本発明において開示された可動な極延長体の第1の実施形態の分解図である。
【図5A】図3及び図4の可動な極延長体の上面図である。
【図5B】図5Aの線I−Iに沿った、可動な極延長体の断面図であり、可動な極延長体が第1の作動位置を占めている。
【図5C】図5Aの線I−Iに沿った、可動な極延長体の断面図であり、可動な極延長体が第2の作動位置を占めている。
【図6A】本発明の可動な極延長体の第2の実施形態の上面図である。
【図6B】本発明の可動な極延長体の第2の実施形態の、図6Aの線II−IIに沿った断面図である。
【図7A】本発明の可動な極延長体の第3の実施形態の上面図である。
【図7B】図7Aの線III−IIIに沿った可動な極延長体の断面図であり、可動な極延長体が第1の作動位置を占めている。
【図7C】図7Aの線III−IIIに沿った可動な極延長体の断面図であり、可動な極延長体が第2の作動位置を占めている。
【0022】
ここで図2を参照すると、前述のような永電磁装置等の磁気拘束装置1の斜視図が示されており、その作動は当業者に公知であるので、ここではさらに説明しない。
【0023】
この磁気拘束装置1は、拘束プレート2によって規定された磁気面を有する。
【0024】
拘束プレート2には、例えば正方形の区分を有する複数の極片3が取り付けられており、これらの極片は、技術上知られる磁気回路によって作動及び作動停止させられ、ここではさらに説明しない。
【0025】
この複数の極片3のある極片3Aは、前により詳細に説明したように、個々の可動な極延長体4と機械的に関連させられていてよい。
【0026】
それぞれの可動な極延長体4は、強磁性の工作物Pの支持及び拘束を提供し、工作物は、例えば、フライス盤又は同様の機械等の機械工具によって機械加工される(図示せず)。
【0027】
図3〜図7Cに示されているように、それぞれの可動な極延長体4は:
−所定の長手方向X−Xに延びた固定された極部材5と、
−前記固定された極部材5に連結された少なくとも2つの極部材6及び7とを含み、少なくとも2つの極部材6及び7は前記固定された極部材に対して可動であり、また、
−ホルダ手段8を含む。
【0028】
特に、ホルダ手段8は、前記所定の長手方向X−Xに、第1の作動位置P1(図4A,6A)と第2の作動位置P2(図4B,6B)との間を可動である。
【0029】
以下でさらに説明されるように、ホルダ手段8及び少なくとも2つの可動な極部材6及び7は、第1の作動位置P1と第2の作動位置P2との間を様々な方向に可動である。
【0030】
例えば、固定されたエレメント5が、磁気装置1の拘束プレート2の表面に対して垂直な長手方向X−Xに延びている場合、それぞれの可動な極部材4を収容するためのホルダ手段8は、前記長手方向X−Xに軸方向に移動してよく、これに対して、少なくとも2つの可動な極部材6及び7は、所定の傾斜角を形成するように、前記所定の長手方向X−Xに対して傾斜された方向に移動してよい。
【0031】
つまり、少なくとも2つの可動な極部材6,7はそれぞれ、前記ホルダ手段8が移動する所定の長手方向X−Xとは異なる方向に移動してよい。
【0032】
少なくとも2つの可動な部材6,7及び固定された極部材5は、相補的な輪郭同士の表面接触嵌め合いによって連結されている。
【0033】
有利には、ホルダ手段8は、固定された極部材5に作用的に取り付けられている。
【0034】
ホルダ手段8は、前記少なくとも2つの可動な極部材6,7に、これらの可動な極部材を前記固定された極部材5と接触させておくように作用する。
【0035】
さらに、この接触は、磁気装置が作動させられると、工作物Pの確実な拘束を保証しながら磁気漏れを最小限に抑制するように、高い磁束循環を提供する。
【0036】
したがって、ホルダ手段8は、前記第1の作動位置P1と前記第2の作動位置P2との間で移動することができる磁気面を規定しており、可動な極延長体4の磁気性能を高めるために、磁束収集装置として作用することによって、磁気面3の磁極部材3Aから磁束の一部を伝達することもできる。
【0037】
ホルダ手段8は以下の特性を有する:
−ホルダ手段は、前記所定の長手方向X−Xに、第1の作動位置P1(図4A,6A)と第2の作動位置P2(図4B,6B)との間を可動である
−ホルダ手段は、磁気面3の磁極部材3Aからの磁束の一部の収集装置として作用する
−ホルダ手段は、前記少なくとも2つの可動な極部材6及び7に、これらを前記固定された極部材5に接触させておくように作用する。
【0038】
つまり、ホルダ手段8は、可動な極部材ホルダ手段である。
【0039】
有利には、ホルダ手段は、前記固定された極部材5と摺動可能に係合した中空部材9を含み、この中空部材9は、相補的な輪郭同士の嵌め合いによって、前記固定された極部材5の少なくとも1つの部分5Aを保持することができ、また、少なくとも2つの可動な極部材6及び7を収容することができる。
【0040】
特に、中空部材9は、端壁9Aを有しており、この端壁9Aは、前記固定された極部材5の前記少なくとも1つの部分5Aを収容するように、この端壁9Aから前記長手方向X−Xに延びた側壁9Bを備える。
【0041】
端壁9Aは、特に図3及び図4に示されているように、工作物Pが可動な極延長体4に位置する場合に支持面として働く。
【0042】
しかしながら、中空部材9の端壁9Aには、工作物Pが平坦ではない面を有するならば、このような工作物Pの面と合致するような形状が形成されていてもよい。
【0043】
第1の作動位置P1と第2の作動位置P2との間の、固定された極部材5に対する中空部材9の行程を制限するために、当接手段10が設けられており、この当接手段は、前記長手方向X−Xに対して平行に、固定された極部材5の外面へ開放したスロット10Aと、中空部材9の側壁9Bに形成された孔10Cを通過した後に、スロット10A内を摺動するように設計された案内ピン10Bとの組合せから成り、前記孔10Cは前記スロット10Aに面している。
【0044】
当接手段10は、スロット10Aにおける案内ピン10Bの摺動により、第1の作動位置P1と第2の作動位置P2との間にホルダ手段8を拘束する。
【0045】
特に、スロット10Aは、ホルダ手段8の行程の上部(位置P1)と下部(位置P2)とを制限している。
【0046】
当業者は、スロット10Aと、案内ピン10Bと、孔10Cとの前記組合せと構造的及び/又は機能的に等しいその他のタイプの当接手段を明らかに認識してよい。
【0047】
固定された極部材5の底部に、磁気装置1の拘束プレート2の磁極部材3Aへの機械的な固定のための締結手段15が設けられている。
【0048】
これらの締結手段15は、例えば、磁気装置1の極片3Aに形成された対応するねじ穴16と係合するねじ15Aから成る。
【0049】
当業者は、ねじ15Aと、ねじ山16Aとの前記組合せと構造的及び/又は機能的に等しいその他のタイプの締結手段を明らかに認識してよい。
【0050】
固定された極部材5と、2つの極部材6及び7と、ホルダ手段8とを
形成する材料は、好適には強磁性材料である。
【0051】
ここで図3から図5Cまでを参照すると、本発明の第1の実施形態が示されており、固定された極部材5は、円形の断面を有するように示されている。
【0052】
ホルダ手段8も、円形の断面を有しており、相補的な輪郭同士の嵌合によって、前記固定された極部材5の少なくとも1つの部分5Aを収容することができる。
【0053】
ここでは、ホルダ手段8は、中空の円筒状の容器から成る。ホルダ手段8の端壁9Aは、強磁性の工作物Pを支持するための平坦な面を有しており、この面は、磁気装置の拘束面に対して平行である。ホルダ手段8の側壁9Bは、前記固定された極部材5の少なくとも1つの部分5Aを収容する。
【0054】
中空の円筒状の容器は、所定の長手方向X−Xに、第1の作動位置P1(図5A)と第2の作動位置P2(図5B)との間を自由に移動する。
【0055】
したがって、中空の円筒状の容器が第1の作動位置P1に位置する場合、可動な極延長体4は最大延長状態となり、中空の円筒状の容器が第2の作動位置P2に位置する場合、可動な極延長体4は最小延長状態となる。
【0056】
ホルダ手段8は長手方向軸線X−Xに沿って可動である。なぜならば、固定された極部材5は、少なくとも2つの面12及び13を規定する受容部11を有しており、これらの面が、少なくとも2つの可動部材6及び7との、相補的な輪郭同士の表面接触嵌合を提供しているからである。
【0057】
有利には、少なくとも2つの可動な極部材6及び7は、前記少なくとも2つの面12及び13のうちの1つとそれぞれ摺動可能に接触している。
【0058】
この特徴は、間隙が存在しないことにより、可動な極延長体4によって生ぜしめられる磁束漏れ及び磁力減少を最小限に抑制する。
【0059】
2つの面は、好適には、互いに反対に向けられており、底部14に向かって集束している。これらの面は、二次曲面としても知られる、二次代数曲面等の曲面によって形成されていてよい。
【0060】
特に、面12及び13は、可動な極部材6及び7の面と合致する輪郭を得るための特別な機械加工によって得られる。
【0061】
本発明のこの好適な実施形態において、固定された極部材5の受容部1の特別な機械加工により、少なくとも2つの二次代数曲面12及び13は、実質的に円筒形状を有することができる。
【0062】
この場合、図3及び図4も参照すると、これらの円筒状の面12及び13の母線は、所定の長手方向X−Xに対して40゜〜50゜、好適には45゜を形成している。
【0063】
したがって、2つの円筒状の面12及び13は受容部を形成しており、この受容部に沿って、可動な極部材6及び7が摺動することができ、これにより、ホルダ手段8も第1の作動位置P1と第2の作動位置P2との間で移動することができる。
【0064】
すなわち、可動な極部材6及び7は、前記長手方向X−Xに対して、40゜〜50゜、好適には45゜傾斜した方向に摺動するのに対し、ホルダ手段8は、拘束プレート2に対して直交方向に、第1の作動位置P1(図5A)と第2の作動位置P1(図5B)との間を移動する。
【0065】
有利には、添付された図面に示された特別な実施形態は、従来の延長部と比較してより小さな高さの極延長体を提供し、このことは、機械加工工具の有効高さを増大する。
【0066】
可動な極延長体4が最小延長状態(P2)にある場合、可動な極部材6及び7は、固定された極部材5に形成された受容部11内に保持されている。
【0067】
2つの曲面12及び13のみがここでは示されているが、受容部11は、特別の設計の要求に従って複数の曲面を形成していてもよい。
【0068】
図5A、図5B及び図5Cに示されているように、弾性手段17も選択的に設けられており、この弾性手段17は、前記2つの可動な極部材6及び7を前記固定された極部材5の2つの面12及び13と接触させて保持し且つホルダ手段8を第1の作動位置P1、すなわち可動な極延長体4の最大延長位置に保持するために、2つの可動な極部材6及び7に対して作用する。
【0069】
特に、弾性手段17は、前記少なくとも2つの可動な極部材6及び7の間に配置された少なくとも1つのばねを含む。
【0070】
図5A、図5B及び図5Cに示された実施形態において、可動部材6及び7を円筒状の面12及び13に対してより強く付着させるために2つのばねが設けられている。
【0071】
この第1の実施形態において、当接手段10は、前記長手方向X−Xに対して平行な、固定された極部材5の外面に開放した3つのスロット10Aと、個々のスロット10Aにおいて摺動する3つの個々の案内ピン10Bとから成り、このようなピンは、中空の部材9の側壁9Bに形成された個々の孔10Cを通過し、それぞれの孔10Cは個々のスロット10Aに面している。
【0072】
ここで図6A及び図6Bを参照すると、本発明の第2の実施形態が示されており、この第2の実施形態は、固定された極部材5の少なくとも2つの傾斜した面12A及び13Aが所定の長手方向X−Xに対して異なる傾斜を有するという点において、第1の実施形態とは異なる。
【0073】
特に、2つの傾斜した面12A及び13Aは、少なくとも2つの可動な極部材6及び7のための個々の摺動面を規定しており、それぞれの可動な極部材は、前記固定された極部材5の個々の面と摺動可能に接触している。
【0074】
有利には、個々の傾斜した面12A及び13Aは互いに反対に向けられている、例えば、これらの個々の傾斜した摺動面のそれぞれは、前記所定の長手方向X−Xに対して40゜〜50゜、好適には45゜の角度を形成している。
【0075】
つまり、可動な極部材6及び7は、前記長手方向X−Xに対して、40゜〜50゜、好適には45゜で傾斜した方向に摺動するのに対し、ホルダ手段8は拘束プレート2に対して直交方向に移動する。
【0076】
この第2の実施形態においても、前記少なくとも2つの可動な極部材6及び7を固定された極部材5の傾斜面12A及び13Aと接触させておくために、弾性手段が2つの可動な極部材6及び7に作用するように設計されているならば、これらの弾性手段17は、前記少なくとも2つの可動な極部材6及び7の間に配置された少なくとも1つのばねを含む。
【0077】
好適には、固定された極部材5と可動な極部材6及び/又は7との間に、それぞれの可動な極部材6及び/又は7のための1つのばねが配置される。
【0078】
ここで図7A〜図7Cを参照すると、本発明の第3の実施形態が示されており、この第3の実施形態は、極延長体4が四角形を有するという点において、第1及び第2の実施形態とは異なる。
【0079】
特に、固定された極部材5及びホルダ手段8は、四角形の断面形状を有している。これらは、極延長体4が関連した磁気装置1の極片の表面と同じ寸法を有しており、これにより、磁束漏れ及び磁力低減の原因を最小限に抑制しながら、連続的な磁束伝導区分を保証する。
【0080】
この特定の実施形態において、固定された極部材5は、依然として、所定の長手方向X−Xに対して傾斜した少なくとも2つの面12B及び13Bを有する。
【0081】
特に、2つの傾斜した面12B及び13Bは、少なくとも2つの可動な極部材6及び7のための個々の摺動面を規定しており、可動な極部材はそれぞれ、前記固定された極部材5の個々の面12B及び13Bと摺動可能に接触している。
【0082】
有利には、個々の傾斜した面12B及び13Bは、互いに反対に向けられており、例えばこれらの個々の傾斜した摺動面はそれぞれ、前記所定の長手方向X−Xに対して40゜〜50゜、好適には45゜の角度を形成している。
【0083】
すなわち、可動な極部材6及び7は、前記長手方向X−Xに対して40゜〜50゜、好適には45゜の角度で傾斜した方向に摺動するのに対し、ホルダ手段8は拘束プレート2に対して直交方向に移動する。
【0084】
第3の実施形態においても、ホルダ手段は、所定の長手方向X−Xに沿って第1の作動位置P1(図7B)と第2の作動位置P2(図7C)との間を自由に移動する中空の平行六面体状の容器から成る。
【0085】
上述のものに代えて、前記実施形態のいずれかにおいて、固定された極部材5とホルダ手段8とが、多角形(六角形、八角形等)、楕円形、又は角が丸みづけられた多角形であってよい。
【0086】
上述の極延長体4を備える磁気装置1の作動に関して、中空の部材9の端壁9Aは、弾性手段17の作用に応答して、まず、可動な極延長体4が最大延長状態を占める作動位置P1に位置する。
【0087】
工作物Pが極延長体4に載置されると、ホルダ手段8は、工作物Pの重量を受けることによって、所定の長手方向X−Xに、第1の作動位置P1から、第1の作動位置P1と第2の作動位置P2との間の中間位置まで移動するか、又は第2の作動位置P2に当接する。
【0088】
それぞれの可動な極延長体4のホルダ手段8は、固定された極部材5から独立して長手方向X−Xに移動することができるので、それぞれの可動な極延長体4の高さが変化することができ、それゆえに、工作物Pが載置される面と、磁気装置1の拘束プレート2との間の距離が、工作物Pの既存の変形に従って変化する。
【0089】
ねじ15Aを対応するねじ穴16に締結することによって磁気装置1に関連させられた、円形又は正方形の断面形状を有する、上述のような多数の極延長体の使用は、拘束される工作物Pの形状に自動的に従うことができる、全ての極延長体の面から形成された工作物P拘束プレートを提供する。極延長体に、中空部材9を最大許容延長状態に保持するように設計された弾性エレメント17が設けられている場合、この形状の合致は、依然として作動していない磁気装置1において生じる。
【0090】
それぞれの極延長体4の固定された極部材5に対する、可動な極部材6及び7の配置により、可動な極ホルダ手段8は、軸線X−Xの方向に、すなわち、磁気装置1の拘束面2に対して直交方向に移動することができる。
【0091】
磁気装置1が作動させられるとき、工作物Pの形状及び重量に既に適応された可動な極ホルダ手段8を備えた全ての可動な極延長体4は、その位置にロックされ、これにより、工作物Pの鉛直方向又は水平方向の移動を阻止する。
【0092】
工作物Pと、ホルダ手段8と、可動な極部材6及び7と、固定された極部材5と、磁極片3Aとの連続的な一貫した接触は、間隙及び磁束漏れを最小限に抑制し、つまり磁束は、拘束された工作物Pに有効に伝達される。
【0093】
このことは、関連する装置の磁気面における起磁力を増大する必要なしに、極延長体4の高い拘束力と極めて確実な作動とを保証する。
【0094】
上述の極延長体は、有利には、磁気持上げ又は運搬装置においても、直立した又は反転された位置において使用されてもよい。
【0095】
極延長体が反転された位置において使用される場合、ホルダ手段8は、弾性手段17が設けられていなくとも最大延長状態を占め、全ての可動な部材の重量が、下向きの摺動を生ぜしめるのに十分である。
【0096】
持ち上げられる工作物Pが極延長体上に配置されると、可動な極延長体4のホルダ手段8は、工作物Pの局所的な変形を補償するために必要な分だけ後退する。つまり、全ての可動な極延長体4は、工作物Pに従うように適応された拘束面を形成し、全ての関連する極延長体が工作物Pと直接に接触している。
【0097】
磁気装置が作動させられると、それぞれの極延長体4のホルダ手段8と可動な極部材6及び7とは、上述のように、その相対位置においてロックされ、これにより、持ち上げられる工作物を確実に保持する。
【0098】
当業者は、請求項に定義されるような発明の範囲から逸脱することなく、特定の必要に応じて、これまでに説明されたような構成に対して多くの変更が加えられてもよいことを明らかに認めるであろう。
【符号の説明】
【0099】
1 磁気拘束装置、 2 拘束プレート、 3 極片、 3A 極片、 4 極延長体、 5 固定された極部材、 5A 部分、 6,7 極部材、 8 ホルダ手段、 9 中空部材、 9A 端壁、 9B 側壁、 10 当接手段、 10A スロット、 10B 案内ピン、 10C 孔、 11 受容部、 12,13 面、 12A,13A 傾斜面、 14 底部、 15 締結手段、 15A ねじ、 16 ねじ穴、 16A ねじ山、 17 弾性手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性の工作物(P)を保持するための磁気拘束装置(1)のための可動な極延長体であって、
所定の長手方向(X−X)に延びた固定された極部材(5)が設けられており、
該固定された極部材(5)に連結された少なくとも2つの極部材(6,7)が設けられており、該少なくとも2つの極部材(6,7)が前記固定された極部材(5)に対して可動である形式のものにおいて、
前記固定された極部材(5)に作用的に連結されたホルダ手段(8)が設けられており、該ホルダ手段(8)が、
前記所定の長手方向(X−X)に沿って第1の作動位置(P1)と第2の作動位置(P2)との間を可動であり、
前記少なくとも2つの可動な極部材(6,7)に、該可動な極部材を前記固定された極部材(5)と係合接触させて保持するために作用することを特徴とする、強磁性の工作物を保持するための磁気拘束装置のための可動な極延長体。
【請求項2】
前記少なくとも2つの可動な極部材(6,7)がそれぞれ、前記所定の長手方向(X−X)に対して異なる方向に可動であることを特徴とする、請求項1記載の可動な極延長体。
【請求項3】
前記ホルダ手段(8)が、前記固定された極部材(5)と摺動可能に係合した中空部材(9)を含み、該中空部材(9)が、前記固定された極部材(5)の少なくとも1つの部分(5A)を、相補的な輪郭同士の嵌め合いによって保持することができることを特徴とする、請求項1又は2記載の可動な極延長体。
【請求項4】
前記中空部材(9)が端壁(9A)を有しており、該端壁(9A)が、前記固定された極部材(5)の前記少なくとも1つの部分(5A)を収容するように前記端壁から前記長手方向(X−X)に延びた側壁(9B)を備えることを特徴とする、請求項3記載の可動な極延長体。
【請求項5】
前記長手方向(X−X)に沿って前記第1の作動位置(P1)と前記第2の作動位置(P2)との間を摺動するように前記ホルダ手段(8)を駆動するための当接手段(10)が設けられており、これによって、前記固定された極部材(5)に対する前記ホルダ手段(8)の行程を制限していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の可動な極延長体。
【請求項6】
前記固定された極部材(5)が、前記所定の長手方向(X−X)に関する少なくとも2つの曲面(12,13)と、底部(14)とを形成する受容部(11)を有しており、前記少なくとも2つの可動な極部材(6,7)がそれぞれ、前記少なくとも2つの曲面(12,13)のうちの1つのそれぞれの曲面と摺動可能に係合接触していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の可動な極延長体。
【請求項7】
前記少なくとも2つの曲面(12,13)が、互いに反対に向けられており且つ前記底部(14)に向かって集束していることを特徴とする、請求項6記載の可動な極延長体。
【請求項8】
前記少なくとも2つの曲面(12,13)が、二次代数曲面であることを特徴とする、請求項7記載の可動な極延長体。
【請求項9】
前記少なくとも2つの二次代数曲面(12,13)が、実質的に円筒状であることを特徴とする、請求項8記載の可動な極延長体。
【請求項10】
前記少なくとも2つの可動な極部材(6,7)を前記固定された極部材(5)と接触させて保持するために前記2つの可動な極部材(6,7)に作用する弾性手段(17)が設けられていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の可動な極延長体。
【請求項11】
前記弾性手段(17)が、前記少なくとも2つの可動な極部材(6,7)と前記固定された極部材(5)との間に配置された少なくとも1つのばねを含むことを特徴とする、請求項10記載の可動な極延長体。
【請求項12】
前記固定された極部材(5)が、前記所定の長手方向(X−X)に対して傾斜した少なくとも2つの平坦な面を有しており、前記少なくとも2つの可動な極部材(6,7)がそれぞれ、前記固定された極部材の1つの個々の傾斜した面と摺動可能に係合接触していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の可動な極延長体。
【請求項13】
前記少なくとも2つの面(12A,12B,13A,13B)が、前記少なくとも2つの可動な極部材(6,7)のための個々の摺動面(12A,13A)を形成しており、前記個々の面(12,13A)が、互いに反対方向に向けられていることを特徴とする、請求項12記載の可動な極延長体。
【請求項14】
前記個々の面(12A,12B,13A,13B)のそれぞれが、前記所定の長手方向(X−X)に対して40゜〜50゜、好適には45゜の角度を形成していることを特徴とする、請求項13記載の可動な極延長体。
【請求項15】
前記少なくとも2つの可動な極部材(6,7)を前記固定された極部材(5)と接触させて保持するために2つの可動な極部材(6,7)に作用する弾性手段(17)が設けられていることを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項記載の可動な極延長体。
【請求項16】
前記固定された極部材(5)が、該固定された極部材を前記磁気拘束装置(1)の前記拘束プレート(2)に固定するための締結手段(15)を有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の可動な極延長体。
【請求項17】
前記ホルダ手段(8)と、前記固定された極部材(5)とが、円形の断面形状を有することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の可動な極延長体。
【請求項18】
前記ホルダ手段(8)と、前記固定された極部材(5)とが、多角形又は楕円形の断面形状、又は角が丸みづけられた多角形の断面形状を有することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の可動な極延長体。
【請求項19】
磁気拘束装置であって、複数の極片を収容するためのフレームが設けられており、前記複数の極片のそれぞれが、拘束面を形成する強磁性の極部材を有する形式のものにおいて、
前記複数の極片のうちの少なくとも1つが、可動な極延長体(4)に関連するように設計されており、前記可動な極延長体(4)が、請求項1から18までのいずれか1項記載の特徴によって定義されるものであることを特徴とする、磁気拘束装置。
【請求項20】
前記磁気拘束装置が作動させられると、前記可動な極延長体(4)のための前記ホルダ手段(8)が、少なくとも部分的に、前記磁気装置(1)によって発生された磁束のための収集装置として働くことを特徴とする、請求項19記載の磁気拘束装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公表番号】特表2010−532719(P2010−532719A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515619(P2010−515619)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001477
【国際公開番号】WO2009/007807
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(509323200)テクノマグネーテ ソチエタ ペル アツィオーニ (6)
【氏名又は名称原語表記】TECNOMAGNETE S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Nerviano 31, I−20020 Lainate (MI), Italy
【出願人】(501193001)ポリテクニコ ディ ミラノ (18)
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO−Italy
【Fターム(参考)】