説明

磁気枕

【課題】使用者が自ら自分の体型や好みに合わせた高さに変更することによって磁石を頭部や首に密着させることができるとともに使用中に持続して磁力の効果を発揮させることができる枕の提供。
【解決手段】磁気枕10は、2枚の積層ポリウレタンフォームの周縁部を圧着することにより形成された袋1の中にポリウレタンフォームのチップ4が充填されたものである。積層ポリウレタンフォームは、表面に磁石5が貼着された内側ポリウレタンシート3上に、磁石5を収納するための貫通孔6が形成された外側ポリウレタンシート2が貼り付けられたものである。本発明の磁気枕10によれば、チップ4を動かすことによって使用者が自ら自分の体型に合わせた高さに変更することができる。また、頭を一度載せると、チップ4は袋1の内部で容易に動かないので、就寝時と同じように就寝中も磁石5は使用者の頭部や首に密着し、持続して磁力の効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気の作用によりコリや疲れなどを解消したり軽減したりすることができる磁気枕に関する。
【背景技術】
【0002】
就寝中の姿勢が悪く、肩や首の筋肉が緊張した状態で寝続けると、朝起きた時に肩こりや首の痛みを感じたり、血流の関係でむくみの原因となったりする。そこで、使用する枕の高さや形状はとても重要なものとなる。従来から、枕としてはそば殻やプラスチックビーズ等を充填したものが広く使用されているが、最近では、低反発力を有するウレタンなどの粘弾性発泡体を枕の形状に成形したものが注目されている。
【0003】
上記の枕の表面や内部に磁石を埋め込み、この磁石の磁気の作用を利用してコリや疲れなどを解消させたり低減させたりする目的のものが知られている。例えば、ウレタンフォーム等により上面を斜面にしたクッション体と、このクッション体の上面から手前側側面にかけて被着され波状の突出が形成された表面に永久磁石が定着された上層体とからなる磁気枕(特許文献1参照。)や、ウレタンフォーム等からなる枕本体の一辺の中央部に首が当接するための凹状の切欠きが形成され、この切欠きの内周の両端部の急斜面および切欠きの上縁の緩傾斜面に磁石が配置された枕(特許文献2参照。)などが挙げられる。
【0004】
【特許文献1】実開平5−82360号公報
【特許文献2】特開平11−342057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に記載されているようなウレタンフォーム等で成形されている枕は、一定の形状に成形されているため、使用する人によって高さや形状が合わないことがある。高さや形状が合わないと頭や首が枕から浮いてしまい磁石から離れてしまうので、結果として効果的な磁力の効能が十分に得られなくなる。
【0006】
そば殻やプラスチックビーズ等を充填した枕の表面に磁石を貼着した枕については、使用しているあいだに中身が移動しやすく枕の高さや形状が崩れてしまうので、結果的に磁石が密着しなくなって磁力の効能が十分に発揮されない。
【0007】
そこで、本発明は、使用者が自ら、自分の体型や好みに合わせた高さに変更することによって磁石を頭部や首に密着させることができるとともに使用中に持続して磁力の効果を発揮させることができる枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の磁気枕は、粘弾性を有する素材により形成された袋と、この袋に固定された磁石と、粘弾性を有する素材により形成され、袋の内部に充填されるチップとから構成されるものである。
【0009】
本発明の磁気枕は、傾けたり、振ったりすることにより、袋中のチップが移動する。このとき、袋およびチップが、それぞれ粘弾性を有する素材により形成されているので、チップは粘弾性により袋の内部で粘り、大きく傾けたり、強く振ったりしない限り移動しない。したがって、使用者は、袋に備えられた磁石が自分の体型や好みに応じて頭部や首に合った位置に配置されるように、袋を大きく傾けたり、強く振ったり袋中のチップを移動させて、磁気枕の形状を決めることができる。そして、本発明の磁気枕は、一度頭を載せると、袋の中身であるチップはその粘弾性により形状が変形するとともに周囲のチップと密着して袋の内部で動かなくなる。また、粘弾性を有するチップ同士の表面の摩擦力は大きいので、就寝中でも袋の内部でチップが容易に動くことはない。従って、本発明の磁気枕は、高さや形状が就寝前と変形することなく使用者の体型や好みにあった状態を維持することができるので、就寝時だけでなく就寝中も磁石を頭部や首に密着させることができ、持続して磁力の効果を発揮させることができる。なお、本発明の磁気枕の磁石は、袋の内側表面や外側表面に貼り付けたりするだけでなく、袋を形成する素材内に埋め込んだりしてもよい。
【0010】
粘弾性を有する素材により形成された枕は、粘弾性の影響により低反発力を有するため、頭を載せると枕の表面はゆっくりと沈み込んで形状が安定するとともに圧力が吸収分解され、首から頭にかけて一点に圧力が集中することを防止することができる。
【0011】
本発明の磁気枕の素材としては粘弾性を有する素材が発泡化されたものが望ましい。発泡化されたことにより、素材内部に存在する空隙には多量の空気が存在する。頭を載せると、素材の粘弾性だけでなく素材の空隙に存在する空気が衝撃を吸収する役割を果たす。また、枕にかかる圧力を開放すると、素材は空気を吸い込みながらその形状をすばやく回復することができるので、頭を載せた部分が沈み込んだままになったりしない。粘弾性を有する素材としては、主に樹脂製のものがあり、粘弾性を有する材料であるポリウレタンなどが発泡化されたものであるポリウレタンフォーム等が挙げられる。なお、低反発力とは、反発弾性率が20%以下のものをいい、本発明の磁気枕もこの特性をもつポリウレタンフォーム等を使用する方が望ましい。
【0012】
本発明の磁気枕の袋は、粘弾性を有する素材としてのシート状素材が2枚層状に重ね合わされたものにより形成され、磁石はこれらの2枚のシート状素材の間に固定され、これらの2枚のシート状素材のうち外側のシート状素材には、磁石の位置に合わせて貫通孔が形成されたものがよい。
【0013】
柔らかい表面を有する枕に貼着された固い磁石が就寝中に頭や首に直接あたると、使用者にとって不快感を生じさせる原因となる。しかし、磁石を枕の内部側となる面に貼着すると、磁石と使用者の頭や首との間で磁力が分断されてしまうので、磁力による効果が得にくくなる。本発明の磁気枕の袋は、粘弾性を有するシート状素材が2枚層状に重ね合わされたものによって形成され、磁石はこれらの2枚のシート状素材の間に固定され、これらの2枚のシート状素材のうち外側のシート状素材には、固定された磁石の位置に合わせて貫通孔が形成されたことにより、使用者が本発明の磁気枕に頭を載せた際、磁石が直接頭や首にあたることを防ぐことができるとともに、磁石の磁力を使用者の頭や首に伝えることができる。
【0014】
なお、貫通孔は外側のシート状素材に複数形成され、磁石は複数固定された方が望ましい。磁石が複数固定されたことにより、点在する磁石の磁力が頭や首の全体にわたって伝わるので、広い範囲のコリや疲れを解消させたり低減させたりすることができる。また、粘弾性を有する素材の枕は材料の特性により通気性が悪く内部に熱がこもりやすいが、本発明の磁気枕の表面となる外側のシート状素材には貫通孔が複数形成されているので、内部の熱を発散させることもでき通気性のよい枕とすることができる。なお、磁石は外側のシート状素材に形成された貫通孔の分だけ固定してもよいし、いくつかの貫通孔に合わせて固定してもよい。
【0015】
また、本発明の磁気枕のチップの形状は不均一であることが望ましい。チップの形状が不均一であることにより、チップ同士の表面の摩擦力がより大きくなるので、袋の内部でチップが容易に動くことをさらに防ぐことができる。従って、本発明の磁気枕は、就寝中でも引き続き、高さや形状が就寝前と変形することなく使用者の体型や好みにあった状態を維持することができる。なお、チップの形状は多角形のものや球状のものなどどのようなものであってもよいので、粘弾性を有する素材により製造される製品を成形する際に生じる切れ端など、通常は廃棄されるような余剰分の素材を細かく切断したものなどを用いることができ、資源の無駄を無くすことができる。
【発明の効果】
【0016】
(1)粘弾性を有する素材により形成された袋と、この袋に固定された磁石と、粘弾性を有する素材により形成され、袋の内部に充填されるチップとから構成されることにより、就寝する前に、使用者は本発明の磁気枕の形状を自分の体型や好みにあった高さに合わせて整えることができ、磁気枕の袋に固定された磁石を頭部や首に密着させることができる。また、就寝中もその高さや形状が崩れることなく使用者の体型や好みにあった状態を維持することができるので、就寝時と同じように就寝中も磁石を頭部や首に密着させることができ、持続して磁力の効能を使用者に与えることができる。
【0017】
(2)袋は、粘弾性を有する素材としてのシート状素材が2枚層状に重ね合わされたものにより形成され、磁石はこれらの2枚のシート状素材の間に固定され、これらの2枚のシート状素材のうち外側のシート状素材には、磁石の位置に合わせて貫通孔が形成されたことにより使用者が本発明の磁気枕に頭を載せた際、磁石が直接頭や首にあたることを防ぎつつ、使用者の頭や首に磁石の磁力を伝えることができる。
【0018】
(3)貫通孔が外側のシート状素材に複数形成され、磁石が複数固定されているので、コリや疲れを広い範囲で解消させたり低減させたりすることができるとともに、枕の内部にこもった熱を発散させることができ通気性のよい枕とすることができる。
【0019】
(4)チップの形状が不均一であることにより、袋の内部でチップが容易に動くことを防ぐことができるので、高さや形状が就寝前と変形することなく、就寝中でも引き続き使用者の体型や好みにあった状態を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の実施の形態における磁気枕の正面図である。図2は図1のA−A線断面斜視図である。図1および図2に示すように、本実施形態における磁気枕10は、粘弾性を有する素材としての積層ポリウレタンフォームにより形成された袋1と、袋1に固定された磁石5と、袋1の中に粘弾性を有する素材であるポリウレタンフォームのチップ4が充填されたものである。本発明の磁気枕は例えば、縦が約430mm、横が約630mmの形状を有する。
【0021】
袋1は、袋1の表面と裏面を構成する2枚の積層ポリウレタンフォームの周縁部を接着剤等を用いて圧着して袋状に形成されている。積層ポリウレタンフォームは粘弾性を有するシート状素材である外側ポリウレタンシート2と内側ポリウレタンシート3とを重ね合わせたものである。外側ポリウレタンシート2および内側ポリウレタンシート3はそれぞれ厚さ10mmのポリウレタンシートである。
【0022】
ポリウレタンフォームのチップ4は、矩形体や多角形体、球状などさまざまな形状をしており、これらが袋1に充填されている。チップ4としては、ポリウレタンフォームの成型品を製造する際に生じるポリウレタンフォームの余剰部分などを細かく切断したものが利用される。チップ4は袋1の容量の半分程度に充填されている。これにより、袋1の内部には、袋1の容量の残り半分程度の隙間が存在するので、袋1を振ったりすることにより中身であるチップ4を容易に動かすことができ、簡単に磁気枕10の高さや形状を整えることができるようになっている。チップ4の大きさは適宜決めることができるが、ある程度細かいものの方がよい。中身としてのチップ4が大きすぎると、磁気枕10を使用者の体型や好みにあった形状に整えにくくなるので注意する。
【0023】
図3は図1のB−B線断面図である。図1および図3に示すように、外側ポリウレタンシート2には、磁石5が収納されるための貫通孔6が複数箇所、列状に形成されている。貫通孔6の形状は、直径が13mmであり、厚さ10mmの外側ポリウレタンシート2を貫通するように形成されている。また、内側ポリウレタンシート3の表面であって、外側ポリウレタンシート2に面する側には、外側ポリウレタンシート2に形成された貫通孔6の位置にあわせて磁石5が貼着されている。磁石5は、直径が20mm程度で、内側ポリウレタンシート3に貼着される面は平面を、反対側の面は曲面を有している。
【0024】
次に、本実施形態の磁気枕10の製造方法について説明する。まず、2枚のポリウレタンシートを準備する。外側ポリウレタンシート2となる一方のポリウレタンシートには貼着する磁石5の数を考慮して貫通孔6を複数形成する。次に、もう片方のポリウレタンシートである内側ポリウレタンシート3に磁石5を貼着する。磁石5の位置は外側ポリウレタンシート2に形成した貫通孔6内に磁石5の頭頂部分が収納されるように、予め調整して貼着する。その後、外側ポリウレタンシート2を内側ポリウレタンシート3の上に重ね合わせて全体を接着剤により貼り付け、積層ポリウレタンフォームとする。このとき、貫通孔6の直径は磁石5の直径よりも小さいので、磁石5は、外側ポリウレタンシート3の貫通孔6の周辺部によってもさらに固定されており、磁気枕10の形状を大きく変形させても磁石5は外れにくい構造となっている。
【0025】
そして、2つの積層ポリウレタンフォームを重ね合わせ、4辺ある周縁部のうち3辺を接着剤により圧着して袋状にし、袋1とする。残り1辺の開口部から、袋1の容量の半分程度のポリウレタンフォームのチップ4を詰める。その後、残りの一辺も接着剤等により圧着することによって磁気枕10が完成する。
【0026】
次に、本実施形態の磁気枕10の使用態様について説明する。まず、使用者は、磁気枕10を振ったり中身を手で押し出したりしながら袋1内のチップ4を動かす。そして、使用者自身の体型や好みにあった高さとなるようにチップ4をならして形状を整えた後、横になって頭を載せる。本実施形態の磁気枕10は、表面および中身がポリウレタンフォームにより形成されているので、枕はゆっくりと沈み込んで形状が安定する。このとき、枕の表面には磁石5が格子状に貼着されており、また、磁気枕10は使用者の好みや体型にあった高さや形状に整えられているので、使用者の頭と首の形状に沿って数カ所に磁石5が密着した状態となる。磁石5の表面は曲面であり、角ばったり突出したりしていないので、磁気枕10に頭を載せた際、使用者の頭や首に違和感や不快感を生じさせることはない。
【0027】
本実施形態の磁気枕10は、一度頭を載せると、袋の中身であるチップ4はその粘弾性により形状が変形するとともに周囲のチップ4と密着して袋1の内部で動かなくなる。そこで、就寝中も引き続き、就寝前に使用者が整えた磁気枕10の状態を維持することができる。従って、就寝時と同じように就寝中も磁石5は使用者の頭部や首に密着するので、持続して磁力の効果を得ることができる。
【0028】
なお、外側ポリウレタンシート2の貫通孔6は、磁石5の磁力が頭や首の全体に行きわたるように、かつ、内部にこもった熱を効率よく発散できるよう形成されれば配置の仕方は任意であり、図4に示すような配置としてもよい。
【0029】
なお、本実施形態の磁気枕10は袋1の両面に磁石を貼着した積層ポリウレタンフォームを用いたが、頭を載せる面にのみ磁石を貼着した積層ポリウレタンフォームを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、使用者が自ら自分の体型に合わせた高さに変更することによって磁石を頭部や首に密着させることができるとともに使用中に持続して磁力の効果を発揮させることができるので、磁気枕として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態にかかる磁気枕の正面図である。
【図2】図1のA−A線断面斜視図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】外側ポリウレタンシートに形成される貫通孔の配置例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
10 磁気枕
1 袋
2 外側ポリウレタンシート
3 内側ポリウレタンシート
4 チップ
5 磁石
6 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘弾性を有する素材により形成された袋と、
この袋に固定された磁石と、
粘弾性を有する素材により形成され、前記袋の内部に充填されるチップと
から構成される磁気枕。
【請求項2】
前記袋は、前記粘弾性を有する素材としてのシート状素材が2枚層状に重ね合わされたものにより形成され、前記磁石はこれらの2枚のシート状素材の間に固定され、これらの2枚のシート状素材のうち外側のシート状素材には、前記磁石の位置に合わせて貫通孔が形成された請求項1に記載の磁気枕。
【請求項3】
前記貫通孔は前記外側のシート状素材に複数形成され、前記磁石は複数固定された請求項2に記載の磁気枕。
【請求項4】
前記チップの形状は不均一である請求項1から3のいずれかの項に記載の磁気枕。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−136414(P2006−136414A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326896(P2004−326896)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(504416127)フクパ日本株式会社 (1)
【Fターム(参考)】