説明

磁気歯車装置

【課題】回転軸を介して軸受に作用する磁気吸引力を小さくすることができ、且つ、伝達トルクを確保することができる磁気歯車装置を提供する。
【解決手段】磁気歯車装置1は、複数の第1歯車5と、複数の磁石環6と、複数の第1歯車5及び複数の磁石環6が固定される第1の回転軸3と、複数の第2歯車7と、複数の第2歯車7が固定される第2の回転軸4を備えている。複数の第1歯車5は、磁性板の外周に複数の歯16を設けて形成され、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層されている。複数の磁石環6は、複数の第1歯車5間に介在されている。複数の第2歯車7は、磁性板の外周に複数の歯を設けて形成され、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層される。そして、複数の第1歯車5間に介在されることで第2歯車7の複数の歯19が第1歯車5の複数の歯16に非接触で重なり合う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気吸引力または斥力を利用して動力を伝達する磁気歯車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯車は、トルクなどの動力を伝達する機械要素である。一般的な歯車は、原動側の歯と従動側の歯が接触することで動力を伝達するため、原動側の歯と従動側の歯との間に摩擦が生じる。したがって、原動側の歯と従動側の歯との間には、潤滑剤が必要になる。また、原動側の歯と従動側の歯との接触による騒音も発生する。そこで、近年、歯の接触の無い磁気歯車が開発されている。磁気歯車は、非接触でトルクを伝達するため、潤滑剤を必要とせず、且つ、無騒音で駆動させることができる。
【0003】
一方、ロボットや複写機等に用いられる減速機構には、過大なトルクが作用したときにそのトルクを遮断(動力伝達を遮断)するトルクリミッタ機能を有するものが要求されている。磁気歯車は、トルクリミッタ機能を有するため、簡単な構造でトルクリミッタ機能を備えた減速機構を構成することができる。
【0004】
磁気歯車装置としては、例えば、特許文献1に記載されているものがある。この特許文献1に記載された磁気歯車装置は、片面に磁気歯が設けられた磁気円盤と、外周面に磁性帯を有する磁気円筒とを備えている。これら磁気円盤と磁気円筒は、磁気歯と磁性帯が所定の間隔をあけて対向するように配置されている。
【0005】
また、磁気歯車装置としては、特許文献2に記載されているものがある。この特許文献2に記載された磁気歯車装置は、所定の空隙をあけて対向する駆動側の回転円盤及び被駆動側の回転円盤と、各回転円盤の外周部に配置された放射状の永久磁石から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2007/010780号パンフレット
【特許文献2】特開2005−114162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された磁気歯車装置では、磁気歯と磁性帯との間に生じる磁気吸引力によって、磁気円盤及び磁気円筒の軸に軸方向に交差する方向に作用する力が加わってしまうため、軸受が摩耗するという問題があった。また、磁気歯と磁性帯との間に生じる磁気吸引力を小さくして軸受に加わる力を軽減すると、伝達トルクが小さくなり、実用的な伝達トルクを得られないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載された磁気歯車装置では、駆動側の回転円盤と被駆動側の回転円盤との間に生じる磁気吸引力によって、両回転円盤の軸に軸方向に作用する力が加わってしまうため、軸受が摩耗するという問題があった。また、両回転円盤間に生じる磁気吸引力を小さくして軸受に加わる力を軽減すると、伝達トルクが小さくなり、実用的な伝達トルクを得られないという問題があった。
【0009】
磁束密度は距離の自乗に反比例して減少するので、強い磁気力を得ようとすると、距離を小さく取る必要がある。特許文献1,2に記載された磁気歯車装置は、磁石間の距離を小さくしてトルクを確保するため、軸受に作用する磁気吸引力が大きくなる。これにより、軸受が損傷しやすくなるという問題が生じる。磁気歯車装置は、非接触で動力を伝達するため、本来、整備・保守が不要になるという特徴を有する。ところが、特許文献1,2に記載された磁気歯車装置では、軸受が損傷しやすいため、整備・保守が必要になってしまう。
【0010】
なお、伝達トルクを大きくした磁気歯車装置としては、例えば、楕円と真円の差動を利用した波動式のものが提案されている。ところが、波動式の磁気歯車装置では、コギングトルク(トルク変動)が非常に大きくなり、滑らかなトルク伝達を行うことができないという問題がある。
【0011】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、回転軸を介して軸受に作用する磁気吸引力を小さくすることができ、且つ、伝達トルクを確保することができる磁気歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するため、本発明の磁気歯車装置は、複数の第1歯車と、複数の磁石環と、第1の回転軸と、複数の第2歯車と、第2の回転軸とを備えている。複数の第1歯車は、磁性板の外周に複数の歯を設けて形成され、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層されている。複数の磁石環は、複数の第1歯車間に介在されている。複数の第1歯車及び複数の磁石環は、第1の回転軸に固定されている。複数の第2歯車は、磁性板の外周に複数の歯を設けて形成され、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層される。そして、複数の第1歯車間に介在されることで第2歯車の複数の歯が第1歯車の複数の歯に非接触で重なり合う。この複数の第2歯車は、第2の回転軸に固定されている。
【0013】
この磁気歯車装置は、複数の磁石環によって複数の第1歯車と複数の第2歯車を磁化し、第1歯車と第2歯車との間に生じる磁気吸引力を利用して動力を伝達する。第1歯車と第2歯車との間に生じる軸方向の磁気吸引力は、第1歯車と第2歯車との間の間隙を等しくすることによりキャンセルされる。また、第1歯車と第2歯車との間に磁気吸引力を生じさせる磁束は、第1の回転軸及び第2の回転軸の軸方向に向いた磁束が支配的となるため、軸方向に交わる方向の磁気吸引力は小さくなる。したがって、軸受に作用する磁気吸引力を小さくすることができ、軸受の損傷を防止或いは抑制することができる。
【0014】
また、本発明の磁気歯車装置は、永久磁石または着磁された保磁力を有する部材により形成された複数の歯を有する複数の第1歯車及び複数の第2歯車と、第1の回転軸と、第2の回転軸とを備えている。複数の第1歯車は、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層されて第1の回転軸に固定されている。複数の第2歯車は、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層されると共に、複数の第1歯車間に介在されることで複数の歯が第1歯車の歯に非接触で重なり合う。
【0015】
この磁気歯車装置は、永久磁石または着磁された保磁力を有する部材により形成された複数の第1歯車と複数の第2歯車との間に生じる磁気吸引力を利用して動力を伝達する。第1歯車と第2歯車との間に磁気吸引力を生じさせる磁束は、第1の回転軸及び第2の回転軸の軸方向に向いた磁束が支配的となるため、軸方向に交差する方向の磁気吸引力は小さくなる。したがって、軸受に作用する磁気吸引力を小さくすることができ、軸受の損傷を防止或いは抑制することができる。
【0016】
また、本発明の磁気歯車装置は、複数の太陽歯車と、複数の太陽側磁石環と、太陽側回転軸と、複数の遊星歯車と、遊星側回転軸と、複数の内歯車と、内歯側磁石環とを備えている。複数の太陽歯車は、磁性板の外周に複数の歯を設けて形成され、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層されている。太陽側磁石環は、複数の太陽歯車間に介在されている。複数の太陽歯車及び前記複数の太陽側磁石環は、太陽側回転軸に固定されている。複数の遊星歯車は、磁性板の外周に複数の歯を設けて形成され、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層されている。そして、複数の太陽歯車間に介在されることで遊星歯車の複数の歯が太陽歯車の複数の歯に非接触で重なり合っている。この複数の遊星歯車は、遊星側回転軸に固定されている。複数の内歯車は、リング状に形成され、内周に複数の歯を有している。この複数の内歯車は、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層されると共に、複数の遊星歯車間に介在されることで複数の歯が遊星歯車の複数の歯に非接触で重なり合っている。内歯側磁石環は、複数の内歯車間に介在されている。
【0017】
この磁気歯車装置は、太陽側磁石環によって複数の太陽歯車と複数の遊星歯車を磁化し、太陽歯車と遊星歯車との間に生じる磁気吸引力を利用して動力を伝達する。また、内歯側磁石環によって複数の遊星歯車と複数の内歯車を磁化し、遊星歯車と内歯車との間に生じる磁気吸引力を利用して動力を伝達する。したがって、遊星歯車の数を増やせば、伝達トルクも増大する。
【0018】
太陽歯車と遊星歯車との間に生じる軸方向の磁気吸引力は、太陽歯車と遊星歯車との間の間隙を等しくすることによりキャンセルされる。また、太陽歯車と遊星歯車との間に磁気吸引力を生じさせる磁束は、太陽側回転軸及び遊星側回転軸の軸方向に向いた磁束が支配的となるため、軸方向に交差する方向の磁気吸引力は小さくなる。
遊星歯車と内歯車との間に生じる軸方向の磁気吸引力は、遊星歯車と内歯車との間隙を等しくすることによりキャンセルされる。また、遊星歯車と内歯車との間に磁気吸引力を生じさせる磁束は、遊星側回転軸の軸方向に向いた磁束が支配的となるため、軸方向に交差する方向の磁気吸引力は小さくなる。
したがって、軸受に作用する磁気吸引力を小さくすることができ、軸受の損傷を防止或いは抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の磁気歯車装置によれば、軸受に作用する磁気吸引力を小さくすることができ、且つ、伝達トルクを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の磁気歯車装置の第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明の磁気歯車装置の第1の実施の形態に係る第1歯車と第2歯車の噛み合い状態を示す説明図である。
【図3】本発明の磁気歯車装置の第1の実施の形態に係る第1歯車及び第2歯車における歯の角部が尖っている場合の磁束密度分布を示す説明図である。
【図4】本発明の磁気歯車装置の第1の実施の形態に係る第1歯車及び第2歯車における歯の角部が円弧状になっている場合の磁束密度分布を示す説明図である。
【図5】本発明の磁気歯車装置の第2の実施の形態を示す部分断面図である。
【図6】本発明の磁気歯車装置の第3の実施の形態を示す部分断面図である。
【図7】本発明の磁気歯車装置の第4の実施の形態を示す部分断面図である。
【図8】本発明の磁気歯車装置の第5の実施の形態を示す断面図である。
【図9】図8に示すA−A線に沿う断面図である。
【図10】本発明の磁気歯車装置の第6の実施の形態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の磁気歯車装置を実施するための形態について、図1〜図9を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0022】
1.第1の実施の形態
まず、本発明の磁気歯車装置の第1の実施の形態の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本発明の磁気歯車装置の第1の実施の形態の断面図である。図2は、本発明の磁気歯車装置の第1の実施の形態に係る第1歯車と第2歯車の噛み合い状態を示す説明図である。
【0023】
図1に示すように、磁気歯車装置1は、ケース2と、第1の回転軸3と、第2の回転軸4と、複数の第1歯車5と、複数の磁石環6と、複数の第2歯車7を備えている。複数の第1歯車5と複数の磁石環6は、第1の回転軸3に固定され、複数の第2歯車7は、第2の回転軸4に固定されている。
【0024】
ケース2は、非磁性材料により形成された中空部を有する筐体である。このケース2の中空部には、複数の第1歯車5及び複数の第2歯車7等が配置される。このケース2は、複数の第2歯車7の一側を露出させる開口部2aを有している。
【0025】
第1の回転軸3及び第2の回転軸4は、非磁性材料から形成されている。これら2つの回転軸3,4は、互いに平行に配置されており、ケース2の中空部を貫通している。第1の回転軸3は、軸受12によってケース2に回転可能に取り付けられている。また、第2の回転軸4は、軸受13によってケース2に回転可能に取り付けられている。
【0026】
軸受12,13は、それぞれ転動体12a,13aを有する転がり軸受(ボールベアリング)である。この軸受12,13の転動体12a,13aは、非磁性材料または炭素含有量が多い材料によって形成することが好ましい。通常の玉軸受は、硬度を確保するための焼き入れを行うため、炭素含有量は多いが、そのような通常の玉軸受を用いてもよい。なお、本発明に係る軸受は、転がり軸受に限定されるものではなく、例えば、すべり軸受、流体軸受等を適用することもできる。
【0027】
第1の回転軸3には、外周部を切り欠くことにより平面部3a(図2参照)が形成されている。この平面部3aは、複数の第1歯車5及び複数の磁石環6が第1の回転軸3の軸周りに回転することを防止する。第2の回転軸4の外周面には、突部4aが設けられている。この突部4aは、複数の第2歯車7が第2の回転軸4の軸周りに回転することを防止する。
【0028】
第1歯車5は、軟磁性材料によって形成された略円形の磁性板であり、中心部に設けられた軸固定用孔15と、外周部に設けられた複数の歯16を有している。複数の第1歯車5は、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層された状態で第1の回転軸3に固定されており、中心が第1の回転軸3の軸心に一致している。
【0029】
軸固定用孔15は、第1の回転軸3に嵌合する形状であり、円弧部と直線部を有している。複数の歯16は、第1歯車5の周方向の一方に向かってインボリュート曲線状に凸となる凸面16aと、周方向の一方に向かってインボリュート曲線状に凹となる凹面16bを有している。そして、歯幅方向(第1の回転軸3の軸方向)に隣り合う第1歯車5の各歯16は、それぞれ歯幅方向に一致して重なり合っている。
【0030】
図1に示すように、複数の磁石環6は、複数の第1歯車5間に介在されており、磁場を発生して第1歯車5及び第2歯車7を磁化させる。また、複数の磁石環6は、複数の第1歯車5のスペーサとしての役割も兼ねている。
【0031】
磁石環6は、リング状の永久磁石であり、一方の面がS極となり、他方の面がN極となっている。つまり、磁石環6は、厚み方向(第1歯車5の歯幅方向)に磁化されており、異なる磁極が第1歯車5を挟んで対向するように積層されている。磁石環6の外周部は、カバー環17によって覆われている。このカバー環17は、遠心力による磁石環6の破壊を防止するものである。カバー環17の材料は、特に限定されないが、例えば、軽いポリアセタール(POM)などの合成樹脂により形成することができる。
【0032】
第2歯車7は、第1歯車5と同様に、軟磁性材料によって形成された略円形の磁性板である。この第2歯車7は、第1歯車5よりも径が大きくなっており、中心部に設けられた軸固定用孔18と、外周部に設けられた複数の歯19を有している。複数の第2歯車7は、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層された状態で第2の回転軸4に固定され、中心が第2の回転軸4の軸心に一致している。
【0033】
軸固定用孔18は、第2の回転軸4に嵌合する形状になっている。複数の歯19は、第2歯車7の周方向の一方に向かってインボリュート曲線状に凸となる凸面19aと、周方向の一方に向かってインボリュート曲線状に凹となる凹面19bを有している。そして、歯幅方向(第2の回転軸4の軸方向)に隣り合う第2歯車7の各歯19は、それぞれ歯幅方向に一致して重なり合っている。
【0034】
複数の第2歯車7間には、非磁性材料により形成されたスペーサ8が介在されている。このスペーサ8を、磁石環6と同様の磁石環(サブ磁石環)にすることもできる。スペーサ8を磁石環にすることにより、第1歯車5及び第2歯車7を通る磁束が多くなるため、伝達トルクを大きくすることができる。なお、スペーサ8を磁石環にする場合は、径を大きくして、外周部を第2歯車7の歯19付近に位置させるとよい。
【0035】
複数の第2歯車7は、複数の第1歯車5間に配置されている。これにより、第2歯車7の複数の歯19と第1歯車5の複数の歯16は、非接触で歯幅方向に重なり合っている。そして、隣り合う第1歯車5と第2歯車7との間隙は、ほぼ等しくなっている。
【0036】
また、第2歯車7の歯19のおける凸面19aは、第1歯車5の歯16における凸面16aの突出する方向とは反対の方向に突出している。これにより、第1歯車5の歯16における凸面16aのインボリュート曲線は、第2歯車7の歯19における凸面19aのインボリュート曲線と歯幅方向で重なり合う。一方、第1歯車5の歯16における凹面16bのインボリュート曲線は、第2歯車7の歯19における凹面19bのインボリュート曲線と歯幅方向で重なり合う。その結果、第1歯車5の歯16と第2歯車7の歯19とが重なり合う(噛み合う)時間を長くすることができ、且つ、第1歯車5及び第2歯車が回転する際に歯16と歯19を連続的に重なり合わせる(噛み合わせる)ことができる。
【0037】
第1歯車5の歯16と第2歯車7の歯19は、磁石環6により発生する磁場の影響を受けて磁化する。これにより、複数の第1歯車5と第2歯車7との間に磁気吸引力が生じる。したがって、第1歯車5を原動歯車として回転させると、第2歯車7が従動歯車となって第1歯車5に追従して回転する。一方、第2歯車7を原動歯車として回転させると、第1歯車5が従動歯車となって第2歯車7に追従して回転する。
【0038】
本実施の形態の磁気歯車装置1によれば、第1歯車5と第2歯車7が磁気吸引力によって噛み合うため、潤滑剤が必要なく、また、噛み合いによる騒音を無くすことができる。したがって、異物の混入を避ける必要がある食料品の加工機械や医療用機械に用いて好適な歯車装置を提供することができる。
【0039】
また、磁気歯車装置1によれば、隣り合う第1歯車5と第2歯車7との間隙がほぼ等しいため、第1の回転軸3に対して作用する軸方向の磁気吸引力と第2の回転軸4に対して作用する軸方向の磁気吸引力が互いに打ち消し合う。また、歯車5,7間に磁気吸引力を生じさせる磁束は、回転軸3,4と平行な向きのものが支配的になるため、回転軸3,4に交わる方向へ作用する磁気吸引力は極めて小さくなる。その結果、軸受12,13に作用する磁気吸引力を小さくすることができ、軸受12,13の損傷や摩耗を防止或いは抑制することができる。
【0040】
また、磁気歯車装置1によれば、第1歯車5及び第2歯車7の枚数を増加させたり、第1歯車5と第2歯車7との間隙を小さくしたりするだけで、複数の歯16,18間に生じる磁気吸引力を増大させることができる。したがって、歯車の径方向に大きくしなくても伝達トルクを増大させることができる。
【0041】
磁気歯車機構は、軸受に作用する磁気吸引力が小さくて伝達トルクが大きいことの他に、伝達トルクの変動が小さいことも望まれている。そこで、磁気歯車装置1では、歯車5,7の複数の歯16,19の先端の角部を、丸みを有するように円弧状に形成し、伝達トルクの変動を小さくしている。
【0042】
図3は、第2歯車7の歯19における角部が尖っている場合の磁束密度分布を示す説明図である。図4は、第2歯車7の歯19における角部を円弧状にした場合の磁束密度分布を示す説明図である。
【0043】
図3を参照すると、歯19の角部が尖っている場合は、歯19の先端部に磁束が集中することがわかる。その結果、コギングトルク(トルク変動)が大きくなってしまう。一方、図4を参照すると、歯19の角部が円弧状になっている場合は、歯19を通る磁束が分散され、磁束密度が滑らかになることがわかる。その結果、コギングトルク(トルク変動)を小さくすることができる。
【0044】
2.第2の実施の形態
次に、本発明の磁気歯車装置の第2の実施の形態について、図5を参照して説明する。
図5は、本発明の磁気歯車装置の第2の実施の形態を示す部分断面図である。
【0045】
第2の実施の形態の磁気歯車装置21は、第1の実施の形態の磁気歯車装置1と同様の構成を有している。この磁気歯車装置21が磁気歯車装置1と異なる点は、磁石環6の磁極の向きである。そのため、ここでは、磁石環6の磁極の向きについて説明し、磁気歯車装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、磁気歯車装置21の磁石環6は、同一の磁極が第1歯車5を挟んで対向するように積層されている。このように磁石環6を配置すると、磁束の立ち上がりが第1の実施の形態よりも大きくなるため、歯16の先端側(歯19の基端側)まで磁束を通過させることができる。つまり、歯16,19間の磁束密度を大きくすることができる。その結果、第1歯車5と第2歯車7との間に生じる磁気吸引力を増大させることができ、より大きな伝達トルクを得ることができる。
【0047】
3.第3の実施の形態
次に、本発明の磁気歯車装置の第3の実施の形態について、図6を参照して説明する。
図6は、本発明の磁気歯車装置の第3の実施の形態を示す部分断面図である。
【0048】
第3の実施の形態の磁気歯車装置31は、第2の実施の形態の磁気歯車装置21と同様の構成を有している。この磁気歯車装置31が磁気歯車装置21と異なる点は、第1の回転軸33に複数の軸用磁石環34を取り付けた点である。そのため、ここでは、第1の回転軸33及び軸用磁石環34について説明し、磁気歯車装置21と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0049】
図6に示すように、磁気歯車装置31の第1の回転軸33には、複数の軸用磁石環34が取り付けられている。第1の回転軸33は、磁性材料から形成されており、いわゆるヨークになっている。この第1の回転軸33には、軸用磁石環34を取り付けるための凹部33aが設けられている。
【0050】
軸用磁石環34は、第1歯車5の取付ピッチ(第1歯車5の厚みと磁石環6の厚みを足した長さ)と同じ厚みを有するリング状の永久磁石であり、外径が第1の回転軸33の外径と等しくなっている。
【0051】
軸用磁石環34は、内周部がS極で外周部がN極である第1の軸用磁石環34Aと、内周部がN極で外周部がS極である第2の軸用磁石環34Bの2種類がある。第1の軸用磁石環34AのN極は、第1歯車5を挟んで対向する磁石環6のN極に対向し、第2の軸用磁石環34BのS極は、第1歯車5を挟んで対向する磁石環6のS極に対向している。
【0052】
磁気歯車装置31によれば、磁束の立ち上がりが第2の実施の形態よりも大きくなり。且つ、歯16,19に磁束が集中するため、歯16,19間の磁束密度を大きくすることができる。その結果、第1歯車5と第2歯車7との間に生じる磁気吸引力を増大させることができ、より大きな伝達トルクを得ることができる。
【0053】
4.第4の実施の形態
次に、本発明の磁気歯車装置の第4の実施の形態について、図7を参照して説明する。
図7は、本発明の磁気歯車装置の第4の実施の形態を示す部分断面図である。
【0054】
第4の実施の形態の磁気歯車装置41は、第1の実施の形態の磁気歯車装置1と同様の構成を有している。この磁気歯車装置41が磁気歯車装置1と異なる点は、第1歯車45及び第2歯車47が磁石になっている点である。そのため、ここでは、第1歯車45及び第2歯車47について説明し、磁気歯車装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0055】
図7に示すように、磁気歯車装置41の複数の第1歯車45及び複数の第2歯車47は、保磁力を有する材料から形成されており、着磁することで磁石になっている。第1歯車45は、略円形の板体からなり、中心部に設けられた軸固定用孔55と、外周部に設けられた複数の歯56を有している。この第1歯車45の一方の面はS極になっており、他方の面がN極になっている。第2歯車47は、第1歯車45よりも径の大きい略円形の板体からなり、中心部に設けられた軸固定用孔58と、外周部に設けられた複数の歯59を有している。この第2歯車47の一方の面はS極になっており、他方の面がN極になっている。
【0056】
複数の第1歯車45は、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層された状態で第1の回転軸3に固定されており、中心が第1の回転軸3の軸心に一致している。これら複数の第1歯車45間には、スペーサ48が介在されている。一方、複数の第2歯車47は、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層された状態で第2の回転軸4に固定されており、中心が第2の回転軸4の軸心に一致している。これら複数の第2歯車47間には、スペーサ8が介在されている。
【0057】
複数の第2歯車47は、複数の第1歯車45間に配置されている。これにより、第2歯車47の複数の歯59と第1歯車45の複数の歯56は、非接触で歯幅方向に重なり合っている。そして、隣り合う第1歯車45と第2歯車47は、異なる磁極が対向している。そして、隣り合う第1歯車45と第2歯車47との間隙は、ほぼ等しくなっている。
【0058】
磁気歯車装置41では、複数の第1歯車45と第2歯車47との間に磁気吸引力が生じる。したがって、第1歯車45を原動歯車として回転させると、第2歯車47が従動歯車となって第1歯車45に追従して回転する。一方、第2歯車47を原動歯車として回転させると、第1歯車45が従動歯車となって第2歯車47に追従して回転する。
【0059】
磁気歯車装置41においても、第1の実施の形態の磁気歯車装置1と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、軸受12,13(図1参照)に作用する磁気吸引力を小さくすることができ、軸受12,13の損傷や摩耗を防止或いは抑制することができる。また、歯車を径方向に大きくしなくても、第1歯車45及び第2歯車47の枚数を増加させたり、第1歯車45と第2歯車47との間隙を小さくしたりするだけで、伝達トルクを増大させることができる。
【0060】
本実施の形態では、保磁力を有する材料により第1歯車45及び複数の第2歯車47を形成し、着磁することで磁石とした。しかしながら、本発明に係る第1歯車及び第2歯車としては、例えば、板材に磁石を貼り付けて形成することもできる。また、第1歯車及び第2歯車は、少なくとも歯の部分が磁石になっていればよい。
【0061】
5.第5の実施の形態
次に、本発明の磁気歯車装置の第5の実施の形態について、図8及び図9を参照して説明する。
図8は、本発明の磁気歯車装置の第5の実施の形態の断面図である。図9は、図8に示すA−A線に沿う断面図である。
【0062】
図8に示す磁気歯車装置61は、遊星磁気歯車装置である。この磁気歯車装置61は、ケース62と、太陽歯車ユニット63と、遊星歯車ユニット64と、内歯車ユニット65を備えている。
【0063】
ケース62は、筒部材71と、筒部材71の軸方向の一端に固定された入力側ブラケット72と、筒部材71の軸方向の他端に固定された出力側ブラケット73から構成されている。入力側ブラケット72は、太陽歯車ユニット63の後述する太陽側回転軸75が貫通する貫通孔72aを有している。また、出力側ブラケット73は、遊星歯車ユニット64の後述する出力軸88が貫通する貫通孔73aを有している。
【0064】
太陽歯車ユニット63は、太陽側回転軸(入力軸)75と、複数の太陽歯車76と、複数の太陽側磁石環77とから構成されている。複数の太陽歯車76と複数の太陽側磁石環77は、太陽側回転軸75に固定されている。
【0065】
太陽側回転軸75は、非磁性材料から形成されている。この太陽側回転軸75は、軸受82によってケース62の入力側ブラケット72、遊星歯車ユニット64の後述する入力側遊星キャリア84及び出力側遊星キャリア85に回転可能に取り付けられている。太陽側回転軸75の軸心は、遊星キャリア84,85の中心に一致している。
【0066】
太陽歯車76は、第1の実施の形態に係る第1歯車5と同様に、軟磁性材料によって形成された略円形の磁性板であり、中心部に設けられた軸固定用孔79と、外周部に設けられた複数の歯80を有している(図9参照)。複数の太陽歯車76は、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層された状態で太陽側回転軸75に固定されており、中心が太陽側回転軸75の軸心に一致している。
【0067】
太陽歯車76の複数の歯80は、太陽歯車76の周方向の一方に向かってインボリュート曲線状に凸となる凸面80aと、周方向の一方に向かってインボリュート曲線状に凹となる凹面80bを有している。そして、歯幅方向に隣り合う太陽歯車76の各歯80は、それぞれ歯幅方向に一致して重なり合っている。
【0068】
太陽側磁石環77は、複数の太陽歯車76間に介在されており、磁場を発生して太陽歯車76及び遊星歯車ユニット64の後述する遊星歯車87を磁化させる。また、太陽側磁石環77は、複数の太陽歯車76のスペーサとしての役割も兼ねている。この太陽側磁石環77は、厚み方向に磁化されたリング状の永久磁石であり、同一の磁極が太陽歯車76を挟んで対向するように積層されている。また、太陽側磁石環77の外周部は、合成樹脂によって形成されたカバー環81によって覆われている。カバー環81は、第1の実施の形態に係るカバー環17と同様に、遠心力による太陽側磁石環77の破壊を防止するものであり、材料は特に限定されない。
【0069】
遊星歯車ユニット64は、入力側遊星キャリア84と、出力側遊星キャリア85と、4つの遊星側回転軸86(図9参照)と、複数の遊星歯車87から構成されている。複数の遊星歯車87は、各遊星側回転軸86には、複数の遊星歯車87が固定されている。
【0070】
入力側遊星キャリア84は、円板状に形成されており、ケース62の入力側ブラケット72に対向している。また、出力側遊星キャリア85は、入力側遊星キャリア84と略等しい径の円板状に形成されており、ケース62の出力側ブラケット73に対向している。この出力側遊星キャリア85には、出力軸88が設けられている。出力軸88の軸心は、出力側遊星キャリア85及び入力側遊星キャリア84の中心に一致している。また、出力軸88は、軸受89によって出力側ブラケット73に回転可能に取り付けられている。
【0071】
4つの遊星側回転軸86は、非磁性材料から形成されており、軸受91によってケース62の入力側遊星キャリア84及び出力側遊星キャリア85に回転可能に取り付けられている。これら4つの遊星側回転軸86は、太陽側回転軸75と平行になっており、太陽側回転軸75を中心とした円上に等間隔に配置されている(図9参照)。
【0072】
遊星歯車87は、太陽側回転軸75と同様に、軟磁性材料によって形成された略円形の磁性板である。この遊星歯車87は、太陽側回転軸75とほぼ同じ径であり、中心部に設けられた軸固定用孔92と、外周部に設けられた複数の歯93を有している(図9参照)。複数の遊星歯車87は、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層された状態で各遊星側回転軸86に固定されており、中心が遊星側回転軸86の軸心に一致している。
【0073】
遊星歯車87の複数の歯93は、遊星歯車87の周方向の一方に向かってインボリュート曲線状に凸となる凸面93aと、周方向の一方に向かってインボリュート曲線状に凹となる凹面93bを有している。そして、歯幅方向に隣り合う遊星歯車87の各歯93は、それぞれ歯幅方向に一致して重なり合っている。また、各遊星側回転軸86において、複数の遊星歯車87間には、非磁性材料により形成されたスペーサ94が介在されている。
【0074】
内歯車ユニット65は、複数の内歯車96と、複数の内歯側磁石環97から構成されている。内歯車96は、太陽側回転軸75及び遊星歯車87と同様に、軟磁性材料によって形成されたリング状の磁性板である。複数の内歯車96は、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層された状態でケース62の筒部材71における内周面に固定されており、中心が太陽側回転軸75の軸心に一致している。
【0075】
内歯車96は、内周部に設けられた複数の歯98を有している。複数の歯98は、内歯車96の周方向の一方に向かってインボリュート曲線状に凸となる凸面98aと、周方向の一方に向かってインボリュート曲線状に凹となる凹面98bを有している(図9参照)。そして、歯幅方向に隣り合う内歯車96の各歯98は、それぞれ歯幅方向に一致して重なり合っている。
【0076】
内歯側磁石環97は、複数の太陽歯車76間に介在されており、磁場を発生して遊星歯車87及び内歯車96を磁化させる。また、内歯側磁石環97は、内歯車96のスペーサとしての役割も兼ねている。この内歯側磁石環97は、厚み方向に磁化されたリング状の永久磁石であり、同一の磁極が内歯車96を挟んで対向するように積層されている。
【0077】
複数の遊星歯車87は、複数の太陽歯車76及び複数の内歯車96間に配置されている。これにより、遊星歯車87の複数の歯93は、太陽歯車76の複数の歯80及び内歯車96の複数の歯98に対して非接触で歯幅方向に重なっている。そして、隣り合う遊星歯車87と太陽歯車76との間隙が、ほぼ等しくなっていると共に、隣り合う遊星歯車87と内歯車96との間隙もほぼ等しくなっている。
【0078】
図9に示すように、遊星歯車87の歯93における凸面93aは、太陽歯車76の歯80における凸面80aの突出する方向とは反対の方向に突出している。また、複数の内歯車96の歯98における凸面98aは、遊星歯車87の歯93における凸面93aの突出する方向と同じ方向に突出している。その結果、遊星歯車87の歯93が太陽歯車76の歯80及び内歯車96の歯98に重なる時間を長くすることができ、且つ、歯93を歯80及び歯98に連続的に重なる(噛み合う)ようにすることができる。
【0079】
太陽歯車76の歯80と遊星歯車87の歯93は、太陽側磁石環77により発生する磁場の影響を受けて磁化する。これにより、複数の太陽歯車76と複数の遊星歯車87との間に磁気吸引力が生じる。一方、遊星歯車87の歯93と内歯車96の歯98は、内歯側磁石環97により発生する磁場の影響を受けて磁化する。これにより、複数の遊星歯車87と複数の内歯車96との間に磁気吸引力が生じる。したがって、太陽側回転軸75を介して太陽歯車76を回転させると、遊星歯車87が自転しながら太陽歯車76の周りを回転する。その結果、出力側遊星キャリア85が回転し、出力軸88より減速回転を得ることができる。
【0080】
本実施の形態の磁気歯車装置61によれば、太陽歯車76と遊星歯車87、内歯車96と遊星歯車87は、が磁気吸引力によって噛み合うため、潤滑剤が必要なく、また、噛み合いによる騒音を無くすことができる。
【0081】
また、軸受82,86,89(図8参照)に作用する磁気吸引力を小さくすることができ、軸受82,86,89の損傷や摩耗を防止或いは抑制することができる。さらに、歯車を径方向に大きくしなくても、太陽歯車76、遊星歯車87及び内歯車96の枚数を増加させたり、太陽歯車76と遊星歯車87、遊星歯車87と内歯車96との間隙を小さくしたりするだけで、伝達トルクを増大させることができる。なお、複数の遊星歯車87が固定された遊星側回転軸8(本例では4つ)を増やすことで伝達トルクを増大させることもできる。
【0082】
なお、本実施の形態では、磁気歯車装置61を減速機として説明したが、遊星歯車87を原動歯車として回転させれば、磁気歯車装置61が増速機となる。
【0083】
6.第6の実施の形態
次に、本発明の磁気歯車装置の第6の実施の形態について、図10を参照して説明する。
図10は、本発明の磁気歯車装置の第6の実施の形態を示す部分断面図である。
【0084】
第6の実施の形態の磁気歯車装置101は、第5の実施の形態の磁気歯車装置61と同様の構成を有している。この磁気歯車装置101が磁気歯車装置61と異なる点は、太陽側磁石環77と内歯側磁石環97との相対的な磁極の向きである。そのため、ここでは、太陽側磁石環77と内歯側磁石環97の磁極の向きについて説明し、磁気歯車装置61と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0085】
遊星歯車機構では、太陽歯車の径が小さくなり、その歯を磁化する磁石環も小さくなる。そのため、太陽歯車と遊星歯車間に発生する磁気吸引力は、小さくなる。そこで、磁気歯車装置101では、太陽側回転軸75の軸心に対して直交する方向に対向する太陽側磁石環77と内歯側磁石環97の磁極を反対にした。
【0086】
このように太陽側磁石環77と内歯側磁石環97を配置すると、遊星歯車87を介して内歯側磁石環97の磁力を太陽歯車76側に呼び込むことができる。その結果、内歯車96の歯98と遊星歯車87の歯93との間の磁束密度を小さくして、太陽歯車76の歯80と遊星歯車87の歯93との間の磁束密度を大きくすることができる。これにより、太陽歯車76側の伝達トルクを増大することができる。
【0087】
また、磁束密度は、空隙の2乗に反比例するため、太陽歯車76と遊星歯車87との間の距離を小さくすると、太陽歯車76の歯80と遊星歯車87の歯93との間に生じる磁気吸引力を大きくすることができる。太陽歯車76と遊星歯車87との間の距離を小さくする場合は、太陽歯車76の厚みを増加させることが好ましい。なぜなら、遊星歯車87と内歯車96との間の距離G1よりも、太陽歯車76と遊星歯車87との間の距離G2を小さくすると(G1>G2)、内歯車96側の磁束密度よりも太陽歯車76側の磁束密度が大きくなるからである。その結果、太陽歯車76側の伝達トルクを増大することができる。
【符号の説明】
【0088】
1,21,31,41,61,101…磁気歯車装置、 2,62…ケース、 3,33…第1の回転軸、 4…第2の回転軸、 5,45…第1歯車、 6…磁石環、 7,47…第2歯車、 8,48,94…スペーサ、 12…軸受、 16,19,56,59,80,93,98…歯、 16a,19a,80a,93a,98a…凸面、 16b,19b,80b,93b,98b…凹面、 17,81…カバー環、 33a…凹部、 34A…第1の軸用磁石環、 34B…第2の軸用磁石環、 63…太陽歯車ユニット、 64…遊星歯車ユニット、 65…内歯車ユニット、 71…筒部材、 72…入力側ブラケット、 73…出力側ブラケット、 75…太陽側回転軸、 76…太陽歯車、 77…太陽側磁石環、 84…入力側遊星キャリア、 85…出力側遊星キャリア、 86…遊星側回転軸、 87…遊星歯車、 88…出力軸、 96…内歯車、 97…内歯側磁石環

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性板の外周に複数の歯を設けて形成され、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層された複数の第1歯車と、
前記複数の第1歯車間に介在された複数の磁石環と、
前記複数の第1歯車及び前記複数の磁石環が固定された第1の回転軸と、
磁性板の外周に複数の歯を設けて形成され、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層されると共に、前記複数の第1歯車間に配置されることで前記複数の歯が前記第1歯車の複数の歯に非接触で重なり合う複数の第2歯車と、
前記複数の第2歯車が固定された第2の回転軸と、
を備える磁気歯車装置。
【請求項2】
前記複数の磁石環は、前記複数の第1歯車間のスペーサを兼ねる請求項1に記載の磁気歯車装置。
【請求項3】
前記複数の磁石環は、前記歯幅方向に磁化されており、同一の磁極が前記第1歯車を挟んで対向するように配置されている請求項1または2に記載の磁気歯車装置。
【請求項4】
前記第1の回転軸は、磁性材から形成されており、
隣り合う第1歯車の中心間の距離に等しい厚みを有し、径方向に磁化された複数の軸用磁石環を備え、
前記複数の軸用磁石環は、前記複数の磁石環の内周に対向し、前記複数の磁石環との間に斥力が生じるように前記第1の回転軸に取り付けられる請求項3に記載の磁気歯車装置。
【請求項5】
前記第1歯車及び前記第2歯車の歯は、外周方向の一方にインボリュート曲線状に凸となる凸面と、外周方向の一方にインボリュート曲線状に凹となる凹面とを有し、
前記第1歯車の歯における凸面のインボリュート曲線は、前記第2歯車の歯における凸面のインボリュート曲線と歯幅方向で重なり合う請求項1〜4のいずれかに記載の磁気歯車装置。
【請求項6】
前記第1歯車の歯及び前記第2歯車の歯の先端の角部は、丸みを有するように円弧状に形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の磁気歯車装置。
【請求項7】
前記複数の第2歯車間に介在され、前記複数の第2歯車と共に前記第2の回転軸に固定される複数のサブ磁石環を備える請求項1〜6のいずれかに記載の磁気歯車装置。
【請求項8】
永久磁石または着磁された保磁力を有する部材により形成された複数の歯を有し、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層された複数の第1歯車と、
前記複数の第1歯車が固定された第1の回転軸と、
永久磁石または着磁された保磁力を有する部材により形成された複数の歯を有し、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層されると共に、前記複数の第1歯車間に介在されることで前記複数の歯が前記第1歯車の複数の歯に非接触で重なり合う複数の第2歯車と、
前記複数の第2歯車が固定された第2の回転軸と、
を備える磁気歯車装置。
【請求項9】
磁性板の外周に複数の歯を設けて形成され、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層された複数の太陽歯車と、
前記複数の太陽歯車間に介在された複数の太陽側磁石環と、
前記複数の太陽歯車及び前記複数の太陽側磁石環が固定された太陽側回転軸と、
磁性板の外周に複数の歯を設けて形成され、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層されると共に、前記複数の太陽歯車間に介在されることで前記複数の歯が前記太陽歯車の複数の歯に非接触で重なり合う複数の遊星歯車と、
前記複数の遊星歯車が固定された遊星側回転軸と、
リング状に形成され、内周に複数の歯を有し、歯幅方向に所定の間隔をあけて積層されると共に、前記複数の遊星歯車間に介在されることで前記複数の歯が前記遊星歯車の複数の歯に非接触で重なり合う複数の内歯車と、
前記複数の内歯車間に介在された複数の内歯側磁石環と、
を備える磁気歯車装置。
【請求項10】
前記太陽側回転軸の軸心に対して直交する方向に対向する前記太陽側磁石環と前記内歯側磁石環の磁極が反対になっている請求項9に記載の磁気歯車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−196451(P2011−196451A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63129(P2010−63129)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年11月19日 日本AEM学会発行「第18回「MAGDA」コンファレンスin東京 電磁現象及び電磁力に関するコンファレンス講演論文集」 平成22年2月18日 財団法人大分県産業創造機構発行「大分県地域結集型研究開発プログラム「次世代電磁力応用機器開発技術の構築」平成21年度研究成果発表会論文集」 平成22年218日開催 国立大学法人大分大学主催「大分県地域結集型研究開発プログラム「次世代電磁力応用機器開発技術の構築」平成21年度研究成果発表会」
【出願人】(591218307)株式会社ニッセイ (17)
【出願人】(508324433)財団法人大分県産業創造機構 (17)