説明

磁気歯車

【課題】本発明は、トルク伝達特性を低下させることなく、磁性極片の強度を向上し、損失低減を可能とする磁気歯車を提供することを目的とする。
【解決手段】上記目的を達成するために、例えば、複数の永久磁石磁極を有する第1の永久磁石界磁と、該第1の永久磁石界磁とは極数の異なる複数の永久磁石磁極を有する第2の永久磁石界磁と、前記第1の永久磁石界磁と前記第2の永久磁石界磁との間に、複数の磁性極片を有して前記第1および第2の永久磁石界磁の極数を変調する変調磁極を備えた磁気歯車において、前記複数の磁性極片の間に非磁性バーを備え、前記非磁性バーの一方の端部が第1の非磁性端部保持部材と接続され、前記非磁性バーの他方の端部を第2の非磁性端部保持部材と電気的に絶縁して構成すればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触でトルクを伝達する磁気歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、希土類磁石を活用して高トルク密度を実現した磁束変調型の磁気歯車(磁気ギヤ)が研究開発されている(非特許文献1)。そしてその構成部材、特に磁性極片(ポールピース)の強度向上については、特許文献1に開示されている。
【0003】
また、非特許文献2においては、磁気ギヤ機構において永久磁石を積み厚方向に分割するといった構成が開示されている。非特許文献3においては、磁気ギヤ機構の回転子構造を埋め込み磁石型にする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2009/087408
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K. Atallah and D. Howe: A Novel High-Performance Magnetic Gear: IEEE Transactions on Magnetics、 Vol. 37、 No. 4、 pp. 2844-2846
【非特許文献2】Journal of the Magnetics Society of Japan Vol.33, No.2,2009 「永久磁石式磁気ギヤの効率向上に関する一考察」
【非特許文献3】Journal of the Magnetics Society of Japan Vol.34, No.3,2010 「永久磁石式磁気ギヤの回転子構造に関する検討」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記非特許文献1は、磁気歯車の原理と磁気特性を紹介したものであり、その機構や強度については検討されていない。
【0007】
一方、上記特許文献1は、磁気歯車の磁性極片の一方の端部を端部保持部材と結合して剛構造とし、磁性極片の強度を向上する方法が開示されている。しかし、磁性極片は積層鋼板や圧粉磁心等で構成されるためそれ自身の強度が弱く、高トルク駆動や大型化を図るには不十分である。また、端部保持部材に磁性体を用いた場合、永久磁石磁束が端部保持部材の方へ漏れ、トルク伝達特性を低下させる。
【0008】
さらに、上記特許文献1には、磁性極片とは別の金属バーを用い、その両方の端部を第1と第2の金属製端部保持部材にそれぞれ結合し、磁性極片は金属バーと電気的に絶縁してモールドすることで磁性極片の強度を向上する方法も開示されている。しかし、金属バーと金属製端部保持部材の結合により電流ループが形成され、駆動時に金属バーと金属製端部保持部材に誘導電流が発生し、特に高速駆動時には損失が大幅に増大する。また、金属製端部保持部材が磁性体である場合、永久磁石磁束が端部保持部材の方へ漏れ、トルク伝達特性を低下させる。なお、上記非特許文献2及び3には、磁気ギヤの渦電流による損失などの検討はなされているが、その機構や強度については検討されていない。
【0009】
本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、トルク伝達特性の低下を防止しつつ、磁性極片の強度を向上し、かつ損失低減を可能とする磁気歯車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、例えば、複数の永久磁石磁極を有する第1の永久磁石界磁と、該第1の永久磁石界磁とは極数の異なる複数の永久磁石磁極を有する第2の永久磁石界磁と、前記第1の永久磁石界磁と前記第2の永久磁石界磁との間に、複数の磁性極片を有して前記第1および第2の永久磁石界磁の極数を変調する変調磁極を備えた磁気歯車において、前記複数の磁性極片の間に非磁性バーを備え、前記非磁性バーの一方の端部が第1の非磁性端部保持部材と接続され、前記非磁性バーの他方の端部を第2の非磁性端部保持部材と電気的に絶縁して構成すればよい。前記非磁性バーの一方の端部が第1の非磁性端部保持部材と接続される形態としては、一体的に形成されていてもよいし、ネジや接着剤などでそれぞれの部材を係止するようにしてもよい。
【0011】
また、前記第2の非磁性端部保持部材が回転遠心力による構造分解を防ぐ手段(例えば、前記第2の非磁性端部保持部材に窪みや穴を備えたり、突起した形状)を備えるように構成すれば、回転遠心力に対する耐性を向上させることができる。
【0012】
また、前記非磁性バーは、前記第1の永久磁石界磁と前記第2の永久磁石界磁との間の略中間位置に配置され、前記非磁性バーの、前記第1の永久磁石界磁側から前記第2の永久磁石界磁側へ向けた長さと、前記磁性極片の、前記第1の永久磁石界磁側から前記第2の永久磁石界磁側へ向けた長さとを異ならせるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、磁気歯車の効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1の磁気歯車断面図。
【図2】本発明の実施形態1の非磁性バーと非磁性端部保持部材の構成を示す図。
【図3】本発明の実施形態2の非磁性バーと非磁性端部保持部材の構成を示す図。
【図4】本発明の実施形態3の非磁性バーと非磁性端部保持部材の構成を示す図。
【図5】本発明の実施形態4の非磁性バーと非磁性端部保持部材の構成を示す図。
【図6】本発明の実施形態5の非磁性バーと非磁性端部保持部材の構成を示す図。
【図7】本発明の実施形態6の磁気歯車の1/4断面図。
【図8】本発明の実施形態7の磁気歯車の1/4断面図。
【図9】本発明の実施形態8の磁気歯車の1/4断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図1〜図9を参照して、本発明による磁気歯車の実施形態を説明する。尚、以下の実施形態では、ラジアルギャップ型を用いて説明するが、他の形式(例えば、アキシャルギャップ型やリニア型など)に関しても、同様に実現可能である。
【0016】
〔実施形態1〕
以下、本発明の第1の実施形態について図1と図2を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態1の磁気歯車の断面図である。
【0017】
磁気歯車は、複数の永久磁石磁極を有する第1の永久磁石界磁1と、それとは極数の異なる複数の永久磁石磁極を有する第2の永久磁石界磁2と、複数の磁性極片を有する変調磁極3からなり、それらは互いに異なる速度で相対的に回転できるように構成されている。
【0018】
第1の永久磁石界磁1は、複数の永久磁石磁極11aおよび11bと、バックヨーク12からなる。第2の永久磁石界磁2は、第1の永久磁石界磁1とは極数の異なる複数の永久磁石磁極21aおよび21bと、バックヨーク22からなる。変調磁極3は、第1の永久磁石界磁1の極対数と第2の永久磁石界磁の極対数の和の数となる複数の磁性極片31と、磁性極片31の間にある複数の非磁性バー32と、磁性極片31と非磁性バー32を包含する非磁性ケース33からなる。
【0019】
磁性極片31の材質は、電磁鋼板、または圧粉磁心,アモルファス金属,パーメンジュールなどの軟磁性材料で構成され、磁束変化による渦電流を防止する目的で、電磁鋼板などでは薄い板を積層して構成される。
【0020】
非磁性ケース33の材質は、樹脂モールドか、あるいは繊維強化プラスチック(FRP),炭素繊維,ガラス繊維などで構成される。
【0021】
図2は、実施形態1の非磁性バーと非磁性端部保持部材の構成を示す図である。
【0022】
図2(a)に示すように、非磁性バー32の一方の端部は、第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により強固に構成されている。非磁性バー32の他方の端部には絶縁部材35が配置され、図2(b)に示す第2の非磁性端部保持部材34bと非磁性バー32との間が電気的に絶縁される。そして図3(c)に示すように非磁性バー32と第2の非磁性端部保持部材34bは絶縁部材35を介して固定される。
【0023】
両者を電気的に絶縁しつつ固定する方法としては、例えば、非磁性バー32と非磁性端部保持部材34bの接触部に絶縁部材35をはさんだ後にモールドする方法が考えられる。
【0024】
また、モールド部材が絶縁部材35を兼ね、全体をモールドする方法を用いることもできるし、非磁性バー32と非磁性端部保持部材34bの接触部に絶縁部材35をはさんだ後に非導電性のねじにて固定する方法、あるいは、非磁性バー32と非磁性端部保持部材34bを接着剤にて接着する方法などを用いてもよい。例えば、本実施例では、磁性極片31と非磁性バー32は非磁性ケース33により一体化する構造を想定しており、この場合、非磁性ケース33の材質を樹脂モールドで構成することによりモールド部材が絶縁部材35を兼ね、変調磁極3を簡便に構成できる。
【0025】
なお、第2の非磁性端部保持部材34bがなくても強度が保てる場合は第2の非磁性端部保持部材34bを用いなくとも良い。
【0026】
非磁性バー32や第1および第2の非磁性端部保持部材34a,34bの材質は、非磁性ステンレス,チタン,アルミニウム,真鍮,銅などの非磁性金属、あるいはFRP,炭素繊維,ガラス繊維,樹脂モールドなどで構成される。
【0027】
磁性極片31は、非磁性バー32と非磁性ケース33により一体化されており、さらに非磁性バー32は第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により強固に構成されているため、磁性極片31に働くトルクや応力などの力に対して耐性を持つ。
【0028】
非磁性バー32の一方の端部は、第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により接続しているが、他方の端部は第2の非磁性端部保持部材34bと電気的に絶縁されているため、非磁性バーと非磁性端部保持部材を還流する電流ループを作らない。したがって非磁性バー32に交番磁界が発生しても、単一のバー内を還流する小さい電流が発生するだけであり、非磁性バーの渦電流損失を大幅に抑えることができる。
【0029】
ここで、第1および第2の非磁性端部保持部材34a,34bはいずれも非磁性体であるため、磁気歯車の軸方向外部に配置されても、それが原因で磁束が漏れることはなく、トルク伝達特性を低下させることはない。
【0030】
〔実施形態2〕
次に、本発明の第2の実施形態について図1と図3を用いて説明する。なお、本発明の磁気歯車の断面図は図1と同じである。
【0031】
図3は、実施形態2の非磁性バーと非磁性端部保持部材の構成を示す図である。
【0032】
図3(a)に示すように、複数の非磁性バー32のうち約半数のバーの一方の端部は、第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により強固に構成される。
【0033】
同様に、図3(b)に示すように、残りの約半数のバーの一方の端部は、第2の非磁性端部保持部材34bと一体形成もしくはねじ止め等により強固に構成されている。
【0034】
非磁性バー32の他方の端部には絶縁部材35が配置されている。
【0035】
図3(c)に示すように、端部保持部材と接続していない方のバー端部が他方の端部保持部材に互いに向き合い、両者の間に絶縁部材35が配置され、電気的に絶縁されている。両者を電気的に絶縁しつつ固定する方法は実施形態1に示した通りである。
【0036】
非磁性バー32や第1および第2の非磁性端部保持部材34a,34bの材質は、実施形態1に示した通りである。
【0037】
磁性極片31は非磁性バー32と非磁性ケース33により一体化されており、さらに非磁性バー32の半数は第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により強固に構成され、残りの非磁性バー32は第2の非磁性端部保持部材34bと一体形成もしくはねじ止め等により強固に構成されているため、磁性極片31に働くトルクや応力などの力に対して耐性を持つ。
【0038】
非磁性バー32の一方の端部は、第1の非磁性端部保持部材34aもしくは第2の非磁性端部保持部材34bと一体形成もしくはねじ止め等により接続しているが、他方の端部は電気的に絶縁されているため、非磁性バーと非磁性端部保持部材を還流する電流ループを作らない。したがって非磁性バー32に交番磁界が発生しても、単一のバー内を還流する小さい電流が発生するだけであり、非磁性バーの渦電流損失を大幅に抑えることができる。
【0039】
なお、図3では非磁性バー1本おきに、バーの半数が一方の非磁性端部保持部材と一体形成し、残りの半数のバーを他方の非磁性端部保持部材と一体形成した例を示したが、例えば、交互に1本おきにかみ合わせるように構成しようとすると、製造中にバー自体が物理的干渉を起こしやすくなる可能性もあり、必ずしも半数ごと、あるいは、1本おきである必要はなく、設計思想に合わせて製造すればよい。また、非磁性バーの本数は偶数であっても奇数であってもよい。
【0040】
〔実施形態3〕
次に、本発明の第3の実施形態について図1と図4を用いて説明する。なお、本発明の磁気歯車の断面図は図1と同じである。
【0041】
図4は、実施形態3の非磁性バーと非磁性端部保持部材の構成を示す図である。
【0042】
図4(a)に示すように、非磁性バー32の一方の端部は、第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により強固に構成されている。非磁性バー32の他方の端部には絶縁部材35が配置され、図4(b)に示す第2の非磁性端部保持部材34bと非磁性バー32との間が電気的に絶縁される。そして図4(b)に示すように、第2の非磁性端部保持部材34bの表面のうち、非磁性バーと電気的に絶縁して構成する部分にバーとほぼ同形状の窪み36を設け、その窪みに絶縁部材35を入れてバーをはめ込むことで、図4(c)に示すようにバーと端部保持部材を電気的に絶縁しつつバーを固定することができる。また、実施形態1に示した方法で、両者を電気的に絶縁しつつ固定することもできる。
【0043】
非磁性バー32や第1および第2の非磁性端部保持部材34a,34bの材質は、実施形態1に示した通りである。
【0044】
磁性極片31は非磁性バー32と非磁性ケース33により一体化されており、さらに非磁性バー32の一方の端部は第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により強固に構成されており、さらに他方の端部は第2の非磁性端部保持部材34bの窪み36に電気的な絶縁部材35を介してはめ込んでいるため、磁性極片31に働くトルクや応力、さらには遠心力などに対して大きな耐性を持つ。
【0045】
非磁性バー32の一方の端部は、第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により接続しているが、他方の端部は第2の非磁性端部保持部材34bと電気的に絶縁されているため、非磁性バーと非磁性端部保持部材を還流する電流ループを作らない。したがって非磁性バー32に交番磁界が発生しても、単一のバー内を還流する小さい電流が発生するだけであり、非磁性バーの渦電流損失を大幅に抑えることができる。
【0046】
なお、図4では全ての非磁性バーが第1の非磁性端部保持部材と一体形成された例を示したが、実施形態2に示したように一部の非磁性バーが第1の非磁性端部保持部材と一体形成され、残りの非磁性バーが第2の非磁性端部保持部材と一体形成されていてもよく、その場合は第2の非磁性端部保持部材34bにも窪みを設けることで、さらに強度を向上できる。
【0047】
〔実施形態4〕
次に、本発明の第4の実施形態について図1と図5を用いて説明する。なお、本発明の磁気歯車の断面図は図1と同じである。
【0048】
図5は、実施形態4の非磁性バーと非磁性端部保持部材の構成を示す図である。
【0049】
図5(a)に示すように、非磁性バー32の一方の端部は、第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により強固に構成されている。非磁性バー32の他方の端部には絶縁部材35が配置され、図5(b)に示す第2の非磁性端部保持部材34bと非磁性バー32との間が電気的に絶縁される。そして図5(b)に示すように、第2の非磁性端部保持部材34bの表面のうち、非磁性バーと電気的に絶縁して構成する部分に、内周側から外周側に向かって徐々に厚くなるようにテーパ37を設け、非磁性バー32と非磁性端部保持部材34bの間に絶縁部材35をはさんでバーをはめ込むことで、図5(c)に示すように、バーと端部保持部材を電気的に絶縁しつつバーに働く遠心力に対して耐性を持たせることができる。また、実施形態1に示した方法で、両者を電気的に絶縁しつつ固定することもできる。
【0050】
非磁性バー32や第1および第2の非磁性端部保持部材34a,34bの材質は、実施形態1に示した通りである。
【0051】
磁性極片31は、非磁性バー32と非磁性ケース33により一体化されており、さらに非磁性バー32の一方の端部は第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により強固に構成されており、さらに他方の端部は第2の非磁性端部保持部材34bのテーパ37に電気的な絶縁部材35を介してはめ込んでいるため、磁性極片31に働くトルクや応力、さらには遠心力などに対して大きな耐性を持つ。
【0052】
非磁性バー32の一方の端部は、第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により接続しているが、他方の端部は第2の非磁性端部保持部材34bと電気的に絶縁されているため、非磁性バーと非磁性端部保持部材を還流する電流ループを作らない。したがって非磁性バー32に交番磁界が発生しても、単一のバー内を還流する小さい電流が発生するだけであり、非磁性バーの渦電流損失を大幅に抑えることができる。
【0053】
なお、図5では全ての非磁性バーが第1の非磁性端部保持部材と一体形成された例を示したが、実施形態2に示したように一部の非磁性バーが第1の非磁性端部保持部材と一体形成され、残りの非磁性バーが第2の非磁性端部保持部材と一体形成されていてもよく、その場合は第2の非磁性端部保持部材34bにもテーパを設けることで、さらに強度を向上できる。
【0054】
これにより、回転時の遠心力による構造分解を防ぐことができる。ここで、構造分解とは、回転遠心力により、非磁性バー32,絶縁部材35又は非磁性端部保持部材34bが接触しなくなり、バラバラになる状態を意味する。
【0055】
〔実施形態5〕
次に、本発明の第5の実施形態について図1と図6を用いて説明する。なお、本発明の磁気歯車の断面図は図1と同じである。
【0056】
図6は、実施形態5の非磁性バーと非磁性端部保持部材の構成を示す図である。
【0057】
図6(a)に示すように、非磁性バー32の一方の端部は、第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により強固に構成されている。非磁性バー32の他方の端部には絶縁部材35が配置され、図6(b)に示す第2の非磁性端部保持部材34bと非磁性バー32との間が電気的に絶縁される。そして図6(b)に示すように、第2の非磁性端部保持部材34bの表面のうち、非磁性バーと電気的に絶縁して構成する面の最外周部に突起38を設け、非磁性バー32と非磁性端部保持部材34bの間に絶縁部材35をはさんでバーをはめ込むことで、図6(c)に示すように、バーと端部保持部材を電気的に絶縁しつつバーに働く遠心力に対して耐性を持たせることができる。また、実施形態1に示した方法で、両者を電気的に絶縁しつつ固定することもできる。
【0058】
非磁性バー32や第1および第2の非磁性端部保持部材34a,34bの材質は、実施形態1に示した通りである。
【0059】
磁性極片31は非磁性バー32と非磁性ケース33により一体化されており、さらに非磁性バー32の一方の端部は第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により強固に構成されており、さらに他方の端部は第2の非磁性端部保持部材34bの最外周部の突起38の内側に電気的な絶縁部材35を介してはめ込んでいるため、磁性極片31に働くトルクや応力、さらには遠心力などに対して大きな耐性を持つ。
【0060】
非磁性バー32の一方の端部は、第1の非磁性端部保持部材34aと一体形成もしくはねじ止め等により接続しているが、他方の端部は第2の非磁性端部保持部材34bと電気的に絶縁されているため、非磁性バーと非磁性端部保持部材を還流する電流ループを作らない。したがって非磁性バー32に交番磁界が発生しても、単一のバー内を還流する小さい電流が発生するだけであり、非磁性バーの渦電流損失を大幅に抑えることができる。
【0061】
なお、図6では全ての非磁性バーが第1の非磁性端部保持部材と一体形成された例を示したが、実施形態2に示したように一部の非磁性バーが第1の非磁性端部保持部材と一体形成され、残りの非磁性バーが第2の非磁性端部保持部材と一体形成されていてもよく、その場合は第2の非磁性端部保持部材34bの最外周部にも突起を設けることで、さらに強度を向上できる。当該突起形状により、上記実施例4のテーパ構造より確実に回転時の遠心力による構造分解を防ぐことができる。
【0062】
〔実施形態6〕
次に、本発明の第6の実施形態について図7を用いて説明する。
【0063】
図7は、本発明の実施形態6の磁気歯車の1/4断面図である。図1と異なる点は、図1では円形だった非磁性バー32の断面形状が、図7では径方向に短く周方向に長い偏平な長方形の断面形状を持つ非磁性バー32aとなっている点である。さらに非磁性バー32aは、変調磁極3の外周側と内周側の中間に位置して構成されている。
【0064】
非磁性バー32aを径方向に短く周方向に長い偏平な長方形の断面形状とし、外周側と内周側の中間位置に構成したことによって、第1の永久磁石界磁1および第2の永久磁石界磁2から最も離れた位置に非磁性バーの表面を配置できるため、非磁性バーに発生する渦電流損を低減できる。
【0065】
なお、非磁性バー32aと非磁性端部保持部材の構成は、実施形態1〜実施形態5に示した方法などによる。また、非磁性バー32aの断面形状は径方向に短く周方向に長い偏平な形状であれば、長方形に限らず台形や楕円形などでもよく、バーの強度や作り易さ等を考えた上で設計思想に合わせて製造すればよい。
【0066】
〔実施形態7〕
次に、本発明の第7の実施形態について図8を用いて説明する。
【0067】
図8(a)は、本発明の実施形態7の磁気歯車の1/4断面図である。図7と異なる点は、図7では径方向に短く周方向に長い偏平な長方形の断面形状だった非磁性バー32aが、図8(a)では逆に径方向に長く周方向に短い偏平な長方形の断面形状を持つ非磁性バー32bとなっている点である。さらに非磁性バー32bは、隣接する磁性極片31の中間に位置して構成されている。
【0068】
非磁性バー32bを径方向に長く周方向に短い偏平な長方形の断面形状としたことで、図8(b)に示すように渦電流のループする面積を小さくできるため、非磁性バーに発生する渦電流損を低減できる。また、隣接する磁性極片の中間位置に非磁性バーを構成したことによって、非磁性バーを貫通する磁束密度を小さくでき、非磁性バーに発生する渦電流損を低減できる。
【0069】
なお、非磁性バー32bと非磁性端部保持部材の構成は、実施形態1〜実施形態5に示した方法などによる。また、非磁性バー32bの断面形状は径方向に長く周方向に短い偏平な形状であれば、長方形に限らず台形や楕円形などでもよく、バーの強度や作り易さ等を考えた上で設計思想に合わせて製造すればよい。
【0070】
〔実施形態8〕
次に、本発明の第8の実施形態について図9を用いて説明する。
【0071】
図9は、本発明の実施形態8の磁気歯車の1/4断面図である。図7と異なる点は、図7では径方向に短く周方向に長い偏平な長方形の断面形状だった非磁性バー32aが、図9では径方向に短く周方向に長い偏平な長方形の周方向両端部に径方向に長く周方向に短い偏平な長方形が付き、アルファベットの“H”のような断面形状を持つ非磁性バー32cとなっている点である。
【0072】
非磁性バー32cをアルファベットの“H”のような断面形状としたことで、径方向にかかる力と周方向にかかる力のいずれに対しても広い面で受けることができ、変調磁極3の強度を向上できる。また、第1の永久磁石界磁1および第2の永久磁石界磁2から最も離れた位置に非磁性バーの広い表面を配置できるため、非磁性バーに発生する渦電流損を低減できる。
【0073】
なお、非磁性バー32cと非磁性端部保持部材の構成は、実施形態1〜実施形態5に示した方法などによる。また、非磁性バー32cの断面形状はアルファベットの“H”形ではなく“I”形などでもよく、バーの強度や作り易さ等を考えた上で設計思想に合わせて製造すればよい。
【0074】
〔その他の実施形態〕
なお、これまでの説明では、回転軸の外周方向にエアギャップを持つラジアルギャップ型磁気歯車を用いて説明したが、他の形式(例えば、回転軸の軸方向にエアギャップを持つアキシャルギャップ型や、直線駆動するリニア型など)に関しても、同様に実現可能である。
【0075】
なお、上記実施例で述べてきた磁気ギヤと回転電機(モータ)を一体成形してもよい。この場合、例えば、バックヨーク22より内部にステータ鉄心を設けるよう構成したり、また、第1の永久磁石界磁1の外側にステータ鉄心を設けるよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 第1の永久磁石界磁
2 第2の永久磁石界磁
3 変調磁極
11a,11b,21a,21b 永久磁石磁極
12,22 バックヨーク
31 磁性極片
32,32a,32b,32c 非磁性バー
33 非磁性ケース
34a 第1の非磁性端部保持部材
34b 第2の非磁性端部保持部材
35 絶縁部材
36 窪み
37 テーパ
38 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の永久磁石磁極を有する第1の永久磁石界磁と、該第1の永久磁石界磁とは極数の異なる複数の永久磁石磁極を有する第2の永久磁石界磁と、前記第1の永久磁石界磁と前記第2の永久磁石界磁との間に、複数の磁性極片を有して前記第1および第2の永久磁石界磁の極数を変調する変調磁極を備えた磁気歯車において、
前記複数の磁性極片の間に非磁性バーを備え、前記非磁性バーの一方の端部が第1の非磁性端部保持部材と接続され、前記非磁性バーの他方の端部を第2の非磁性端部保持部材と電気的に絶縁して構成することを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記非磁性バーのうち略半数の非磁性バーの一方の端部が、第1の非磁性端部保持部材と接続し、残りの非磁性バーの一方の端部を第2の非磁性端部保持部材と接続するように構成したことを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記非磁性端部保持部材の表面のうち、前記非磁性バーと電気的に絶縁して構成する部分に、前記非磁性バーの断面形状と略同形状の窪みを設け、該窪みに電気的な絶縁部材を介して前記非磁性バーをはめ込むことを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項4】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記非磁性端部保持部材の表面のうち、前記非磁性バーと電気的に絶縁して構成する部分を、内周側から外周側に向かって徐々に厚くなるように構成することを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項5】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記非磁性端部保持部材の表面のうち、前記非磁性バーと電気的に絶縁して構成する面の最外周部に突起を設けることを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項6】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記非磁性バーの、前記第1の永久磁石界磁側から前記第2の永久磁石界磁側へ向けた長さを、前記磁性極片の、前記第1の永久磁石界磁側から前記第2の永久磁石界磁側へ向けた長さよりも短くし、
前記非磁性バーを前記第1の永久磁石界磁と前記第2の永久磁石界磁との間の略中間位置に配置することを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項7】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記非磁性バーの、近接する一方の磁性極片側から近接する他方の磁性極片側へ向けた長さを、前記両磁性極片間の長さよりも短くし、前記非磁性バーを前記一方の磁性極片と前記他方の磁性極片との間の略中間位置に配置することを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項8】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記非磁性バーの断面形状をアルファベットの“H”もしくは“I”のような形状とすることを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項9】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記非磁性バーと前記磁性極片を、樹脂でモールドして一体構成することを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項10】
請求項1記載の磁気歯車装置と一体成形された回転電機。
【請求項11】
複数の永久磁石磁極を有する第1の永久磁石界磁と、該第1の永久磁石界磁とは極数の異なる複数の永久磁石磁極を有する第2の永久磁石界磁と、前記第1の永久磁石界磁と前記第2の永久磁石界磁との間に、複数の磁性極片を有して前記第1および第2の永久磁石界磁の極数を変調する変調磁極を備えた磁気歯車において、
前記複数の磁性極片の間に非磁性バーを備え、
前記非磁性バーの一方の端部は、第1の非磁性端部保持部材と接続されており、
前記非磁性バーの他方の端部を前記非磁性バーの他方の端部を第2の非磁性端部保持部材と電気的に絶縁して構成し、
前記第2の非磁性端部保持部材が回転遠心力による構造分解を防ぐ手段を備えていることを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項12】
複数の永久磁石磁極を有する第1の永久磁石界磁と、該第1の永久磁石界磁とは極数の異なる複数の永久磁石磁極を有する第2の永久磁石界磁と、前記第1の永久磁石界磁と前記第2の永久磁石界磁との間に、複数の磁性極片を有して前記第1および第2の永久磁石界磁の極数を変調する変調磁極を備えた磁気歯車において、
前記複数の磁性極片の間に非磁性バーを備え、
前記非磁性バーの一方の端部は、第1の非磁性端部保持部材と接続されており、
前記非磁性バーの他方の端部は、第2の非磁性端部保持部材とは接続されておらず、
前記第2の非磁性端部保持部材は電気的に絶縁して構成され、
前記非磁性バーは、前記第1の永久磁石界磁と前記第2の永久磁石界磁との間の略中間位置に配置され、
前記非磁性バーの、前記第1の永久磁石界磁側から前記第2の永久磁石界磁側へ向けた長さと、前記磁性極片の、前記第1の永久磁石界磁側から前記第2の永久磁石界磁側へ向けた長さとを異ならせるように構成したことを特徴とする磁気歯車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−157205(P2012−157205A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15896(P2011−15896)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)