説明

磁気素子

【課題】 所望の特性を得ることが可能でありながら、生産性が良好であり、コストの低減を図ることができる磁気素子を提供すること。
【解決手段】 信号が入力される第1のコイル50と、第1のコイル50に入力された信号が伝達される第2のコイル60とを具備し、第1のコイル50が巻回される第1の柱脚部26および該第1の柱脚部26の周囲に配置される第1の周壁部22,23,24を具備する第1のコア20と、第2のコイル60が巻回される第2の柱脚部36および該第2の柱脚部36の周囲に配置される第2の周壁部32,33,34を具備する第2のコア30と、を具備する。また、第1のコア20の比透磁率は、第2のコア30の比透磁率よりも高く設けられていると共に、第1の柱脚部26と第2の柱脚部36とが当接し、かつ第1の周壁部22,23,24と第2の周壁部32,33,34とが当接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばバンドパスフィルタとして用いられるトランス等の磁気素子に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気素子の一種であるトランスには、所望の周波数帯域(例えば、13Khz付近)の信号しか通さない、いわゆるバンドパスフィルタ(帯域フィルタ)として機能するものがある。この種のトランスにおいては、インピーダンスを所望の値に合わせることが必要とされると共に、一次側に入力された信号のうち、所定の周波数以上の高周波信号、および所定の周波数以下の低周波信号を二次側において減衰する特性を有することが必要とされる。
【0003】
ところで、インピーダンスは、インダクタンスに比例し、高い周波数においては、交流が流れ難くなり、高周波信号の減衰効果が得られる。そのため、トランスにおいて上述の特性を得る場合、現状では、比透磁率(μ)が10000以上となる、μの高い材質により形成される2つのコアを用いる構成を採用している。なお、以下の説明においては、2つのコアのそれぞれを、第1のコアおよび第2のコアとする。
【0004】
ここで、第1のコアと第2のコアとは、対向配置されるが、かかる第1のコアと第2のコアとの間で形成される磁路には、磁性材料が存在しない空隙である、ギャップ(エアギャップともいう。)が設けられている。かかるギャップの存在により、低周波側の信号を減衰させることが可能となっている。
【0005】
このギャップは、例えばEPコアにおいては、該第1のコアの柱脚部と第2のコアの柱脚部との間に設けられるのが通例である。このギャップは、小さいほど(狭小であるほど)良好な特性が得られることが判明しているため、現状では、22μm程度の寸法を有するものがある。なお、かかるギャップを有する磁気素子の構成としては、特許文献1に開示されているものがある。
【0006】
また、第1のコアと第2のコアの突き合せ部分に、樹脂等を材質とするテープ部材を貼り付け、第1のコアと第2のコアとの間に、テープ部材の厚み寸法分のギャップを確保する構成も存在する。この構成では、テープ部材が第1のコアと第2のコアの境界部分に存在しており、このテープ部材を介して、第1のコアと第2のコアとが互いに接合されている。
【0007】
さらに、所望の値のインダクタンスを備えるトランスを得る他の手法としては、比透磁率(μ)が5000程度の材質により、第1のコアと第2のコアを形成し、第1のコアと第2のコアとを、ギャップを介さずに付き合わせるものがある。
【0008】
【特許文献1】特開2003−31422号公報(要約、図1、図5〜図8参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述のトランスのうち、比透磁率の高い材質を組み合わせると共に、狭小ギャップを有するものでは、該狭小ギャップの形成が困難である、という問題を有する。すなわち、例えば22μmといった、非常に狭いギャップを形成する場合、寸法精度を正確に管理することが難しい。また、第1のコアと第2のコアの突き合せに際しても、突き合せ誤差等が生じる。このため、第1のコアと第2のコアとの間に、所望の狭小ギャップを設けることは、難しい。また、そのような高精度の狭小ギャップを形成する場合、精度面での向上を図る必要があるため、加工コストがかさむ。狭小ギャップを形成する必要があるため、トランスの生産に時間を要し、生産能率が悪化する、という問題もある。
【0010】
また、第1のコアと第2のコアとの間に、テープ部材を介在させる構成では、テープ部材が加熱により溶けてしまう、という問題がある。すなわち、基板へトランスを実装させる場合、リフローによる半田付け等の加熱を伴う工程が存在するが、かかる加熱工程においては、上述の狭小ギャップの厚み寸法を有する薄膜状のテープ部材は、簡単に解けてしまう。このように、テープ部材が溶けてしまうと、ギャップ寸法を正確に管理することができず、所望の特性が得られなくなる。
【0011】
さらに、比透磁率が5000程度の材質によって、第1のコアおよび第2のコアを形成する場合、ギャップが存在しないため、高周波信号が減衰せず、2次側のコイルにおいて高周波をノイズとして拾ってしまう。すなわち、第1のコアと第2のコアとが、比透磁率が5000程度の材質から構成される場合、バンドパスフィルタとしての特性が劣り、機能を発揮しない、という問題がある。
【0012】
以上述べたように、現状においては、狭小ギャップを備えるトランスのような、所望の特性を備えながら、生産性がよく、コストの低減を図れるといった要素を兼ね備えさせるものを形成することが困難となっている。
【0013】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、所望の特性を得ることが可能でありながら、生産性が良好であり、コストの低減を図ることができる磁気素子を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、第1のコアと、第1のコアに当接する第2のコアと、信号が入力されると共に、第1のコアおよび第2のコアの少なくとも一方に巻回されるコイルと、を備え、第1のコアの比透磁率は、第2のコアの比透磁率よりも高く設けられていると共に、第1のコアと第2のコアとの間には、磁気ギャップが存在しない状態で閉磁路が形成されているものである。
【0015】
このように構成した場合には、第1のコアと第2のコアの間には、磁気ギャップが存在しない状態で、閉磁路が形成される。ここで、第2のコアよりも第1のコアの方が、比透磁率が高く設けられていることにより、従来のように第1のコアと第2のコアとの間に磁気ギャップを設けなくても、磁気素子の全体で、所望の特性を得ることができる。すなわち、比透磁率の高い第1のコアによって、高周波信号を減衰させることができると共に、比透磁率の低い第2のコアによって、実効透磁率を合わせ、低周波信号の減衰を助けることが可能となる。このため、狭小ギャップが存在する磁気素子と同等の特性を得ることが可能となる。
【0016】
また、他の発明は、信号が入力される第1のコイルと、第1のコイルに入力された信号が伝達される第2のコイルと、第1のコイルが巻回される第1の柱脚部および該第1の柱脚部の周囲に配置される第1の周壁部を有する第1のコアと、第2のコイルが巻回される第2の柱脚部および該第2の柱脚部の周囲に配置される第2の周壁部を有する第2のコアと、を具備し、第1のコアの比透磁率は、第2のコアの比透磁率よりも高く設けられていると共に、第1の柱脚部と第2の柱脚部とが当接し、かつ第1の周壁部と上記第2の周壁部とが当接しているものである。
【0017】
このように構成した場合には、第1の柱脚部と第2の柱脚部、および第1の周壁部と第2の周壁部との間で、互いにギャップを介さずに当接する状態となる。この場合、第2のコアよりも第1のコアの方が、比透磁率が高く設けられる状態で、第1のコアと第2のコアのそれぞれの比透磁率を調整すれば、従来のように第1のコアと第2のコアとの間にギャップを設けなくても、磁気素子の全体で、所望の特性を得ることができる。すなわち、比透磁率の高い第1のコアによって、高周波信号を減衰させることができると共に、比透磁率の低い第2のコアによって、低周波信号を減衰させることが可能となり、バンドパスフィルタとして、狭小ギャップが存在する磁気素子と同等の特性を得ることが可能となる。
【0018】
また、所望の特性を得るために、第1のコアと第2のコアとの間に狭いギャップを設ける必要がなくなるため、工程数が削減され、生産性を向上させることができる。加えて、工程数が削減されるため、生産コストを抑えることが可能となる。また、第1のコアと第2のコアとの間に狭いギャップを形成すべく、テープ部材を間に介在させる必要もなくなる。そのため、リフロー等の実装時に、テープ部材が熱によって溶けてしまい、ギャップの寸法管理が正確に行えなくなる、という問題も防ぐことができる。
【0019】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、第1のコアの比透磁率は、第2のコアの比透磁率に対して4倍〜100倍の範囲内に設けられているものである。このように構成した場合には、第1のコアと第2のコアとの間における比透磁率の差が大きくなり、従来のような、狭小ギャップがHiμ材の間に存在する構成と同等の特性を備えるバンドパスフィルタを得ることが可能となる。
【0020】
さらに、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、第1のコアの比透磁率は、2000〜30000の範囲内であると共に、第2のコアの比透磁率は、20〜2000の範囲内であるものである。このように構成した場合には、第1のコアと第2のコアとの間における比透磁率の差を大きくとることができ、従来のような、狭小ギャップがHiμ材の間に存在する構成と同等の特性を備えるバンドパスフィルタを得ることが可能となる。
【0021】
さらに、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、第1のコアは、Mn系の磁性部材を材質とすると共に、第2のコアは、Ni系の磁性部材を材質とするものである。このように構成した場合、第1のコアは、Mn系の磁性部材が有する高い比透磁率を備えると共に、第2のコアは、第2のコアは、Ni系の磁性部材が有する、第1のコアよりも低い比透磁率を備える状態となる。そのため、従来のような、狭小ギャップがHiμ材の間に存在する構成と同等の特性を備えるバンドパスフィルタを得ることが可能となる。
【0022】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、第1のコアと第2のコアとは、互いに当接している部分を境に対称な形状を為しているものである。このように構成した場合には、第1のコアと第2のコアとは、同じ面積を有するため、お互いの境界部分を段差部分がない状態で当接させることができ、外部への磁束漏れを低減させることができる。また、第1のコアと第2のコアとの当接に際して、位置決めを行い易くなる。
【0023】
さらに、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、第1のコアと第2のコアとは、EPコアを形成するものである。このように構成した場合には、スペース効率に優れたバンドパスフィルタとすることができる。
【0024】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、第1のコアと第2のコアとの間の比透磁率の差により、第1のコイルから第2のコイルへ伝達される信号の周波数のうち、特定の帯域から外れる周波数の信号の振幅をしきい値以下に減衰させるバンドパスフィルタとして機能させるものである。
【0025】
このように構成した場合には、磁気素子はバンドパスフィルタとして機能するため、第1のコイルに入力させる信号のうち、特定の周波数帯域の信号を第2のコイルに良好に伝達させることができるが、特定の周波数帯域から外れる周波数の信号においては、第1のコイルに入力させる信号を第2のコイルに伝達させる際に、大きく減衰させ、しきい値以下の振幅にすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、所望の特性を得ることが可能な磁気素子において、生産性が良好となると共に、コストの低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る、磁気素子としてのトランス10について、図1から図7に基づいて説明する。図1は、トランス10の全体構成を示す斜視図である。また、図2は、トランス10の構成を示す分解斜視図である。さらに、図3は、トランス10の第1のコア20または第2のコア30の形状を示す正面図である。また、図4は、トランス10の内部構成を示す側断面図である。
【0028】
本実施の形態におけるトランス10は、図2および図4に示すように、第1のコア20と、第2のコア30と、コイルボビン40と、一次巻線50と、二次巻線60とを主要な構成要素としている。これらのうち、第1のコア20と第2のコア30とは、対称形状となっている。なお、これら各部材によって構成されるトランス10は、いわゆるEPコアを備える磁気素子である。
【0029】
図2および図3に示すように、第1のコア20は、実装される基板平面側と第2のコア30に突き合わされる側の2面が開放した状態の、箱型を為すコア部材である。この第1のコア20には、凹嵌部21が設けられている。凹嵌部21は、基板平面側に対向する上壁22と、第2のコア30に対向する側底壁23と、第1のコア20の中心軸線に沿う2つの周壁24a,24bとに囲まれることにより、形成されている。なお、これら上壁22、側底壁23および周壁24a,24bは、第1の周壁部に対応する。
【0030】
なお、以下の説明においては、第1のコア20のうち、実装される基板平面側(後述する実装端子側)を下側とすると共に、上壁22側を上側とする。また、第1のコア20のうち、第2のコア30に突き合せられる面を、対向面25とする。
【0031】
図3および図4に示すように、凹嵌部21は、所定深さを有する逆U字形状の凹み部分である。そのため、凹嵌部21を構成する周壁24a,24bの内壁面は、開放している下方から上方に向かい、周壁24a,24bの外壁面と略平行を為しているが、上方側の正面形状は、略半円形状を為している。それにより、略半円形状の部分においては、上方に向かうにつれて、周壁24a,24bから離間するように設けられている。
【0032】
また、凹嵌部21には、柱脚部26(第1の柱脚部に対応)が設けられている。柱脚部26は、本実施の形態では円柱状に設けられている。また、柱脚部26は、側底壁23から対向面25側に向かって、上壁22の上端面に対し略平行を為して突出している。また、柱脚部26の突出高さは、上述の対向面25と略同一の高さ位置となっている。そのため、第1のコア20と第2のコア30とを突き合せた場合でも、柱脚部26と後述する柱脚部36との間にギャップは形成されない。
【0033】
また、第2のコア30も、上述の第1のコア20と同様の構成となっている。そのため、構造上の詳細な説明については省略する。なお、以下の説明においては、第2のコア20における各部分の符号に関しては、凹嵌部31、上壁32、側底壁33、周壁34a,34b、対向面35、柱脚部36(第2の柱脚部に対応)を用いることとする。また、上壁32、側底壁33および周壁34a,34bは、第2の周壁部に対応する。
【0034】
ここで、第1のコア20の材質は、第2のコア30の材質よりも、比透磁率(μ)が高く設けられている。本実施の形態では、第1のコア20は略10000の比透磁率を有するMn系のフェライトを材質としている。なお、このような、比透磁率が略10000程度またはそれ以上の比透磁率を有する材質は、一般にHiμ(ハイミュー)材と呼ばれている。
【0035】
なお、第1のコア20が備える比透磁率は、略10000に限られるものではなく、2000〜30000の範囲内にあれば良い。しかしながら、第1のコア20が備える比透磁率は、略5000以上の比透磁率を備える(例えば、アモルファス等の材質を用いた場合)のが好ましく、第1のコア20の比透磁率が略10000以上であれば、一層好ましいものとなる。
【0036】
これに対して、第2のコア30の材質は、第1のコア20の材質よりも、比透磁率が低く設けられている。ここで、第1のコア20の比透磁率は、第2のコア30の比透磁率に対して4倍〜100倍の範囲内に設けるのが良い。
【0037】
また、本実施の形態では、かかる第2のコア30の材質が具備する比透磁率としては、略20〜略2000程度の範囲内にあれば良い。より好ましい比透磁率の範囲としては、略20〜略1000とするのが良い。さらに、後述するように、第2のコア30の比透磁率としては、第1のコア20の比透磁率を10000とすると共に、第2のコア30の比透磁率を、それぞれ100,400,850として実験を行っており、いずれも従来の狭小ギャップが存在するトランス(テープ部材により狭小ギャップを形成するトランスも含む。)と同等の特性を得られている。この点を考慮すれば、比透磁率の範囲が100〜850である場合には、従来のトランスと同等の特性が得られる。
【0038】
なお、第1のコア20の比透磁率が略10000であると共に、第2のコア30の比透磁率が850である場合、トランス10の特性としては、18μmのギャップが存在する構成に対応する。また、比透磁率の低い材質としては、Ni系フェライトが挙げられる。
【0039】
また、上述の柱脚部26,36には、コイルボビン40が取り付けられる。コイルボビン40は、例えば樹脂等の絶縁のある材質から構成されている。コイルボビン40は、図2に示すように、一次巻線50と二次巻線60を巻回する巻線部41と、この巻線部41と一体的に設けられている鍔部42と、同じく一体的に設けられている第1の端子台43aおよび第2の端子台43bとを有している。
【0040】
巻線部41は、略円筒状に設けられていて、この巻線部41の略円筒の軸線方向の両端部分には、鍔部42が設けられている。すなわち、鍔部42の存在により、コイルボビン40において、一次巻線50および二次巻線60の巻回部位が定められている。また、鍔部42は、その外観が略U字形状に設けられていて、上述した凹嵌部21の外観形状に対応している。また、巻線部41を貫通するように、貫通孔44が設けられていて、当該貫通孔44には、柱脚部26,36が挿入される。
【0041】
なお、巻線部41に対して、例えばエナメル等の導線が、それぞれ巻回される。それによって、柱脚部26には信号の入力側である一次巻線50(第1のコイルに対応)が、柱脚部36には信号の出力側である二次巻線60(第2のコイルに対応)が形成される。これら一次巻線50および二次巻線60が巻線部41にそれぞれ巻回された状態で、柱脚部26,36をコイルボビン40の貫通孔44に差し込み、該第1のコア20と第2のコア30とが、互いに突き合わされる。その突き合せの後に、第1のコア20と第2のコア30とは、例えば、接着剤または不図示の押さえ部材等を介して接合される。
【0042】
なお、一次巻線50および二次巻線60は、断面が円形状の丸線でも良いが、角線等、丸線以外の断面形状を有する導線により、一次巻線50および二次巻線60を形成しても良い。
【0043】
また、コイルボビン40には、鍔部42と一体的となるように、第1の端子台43aおよび第2の端子台43bが設けられている。第1の端子台43aおよび第2の端子台43bは、鍔部42が為すU字の上部(図4においては、逆U字形状となっているため、鍔部42の下部)に取り付けられていて、しかも巻線部41に差し掛からないように、鍔部42の非対向面側(すなわち、第1の端子台43aと第2の端子台43bとが互いに遠ざかる側)に向かって突出している。また、第1の端子台43aには第1のコア20が、第2の端子台43bには第2のコア30が、夫々載置される。
【0044】
なお、第1の端子台43aおよび第2の端子台43bには、複数の端子(絡げ端子45および実装端子46)が設けられている。これらのうち、絡げ端子45には、巻線部41に巻回される一次巻線50または二次巻線60の一端側または他端側が絡げられる。そのため、絡げ端子45の高さ位置は、実装端子46の高さ位置よりも高く設けられている。また、実装端子46は、回路基板70に実装される。
【0045】
なお、本実施の形態では、巻線部41には、一次巻線50および二次巻線60の2本の巻線が巻回される。しかしながら、巻線部41に巻回される巻線は2本には限られず、3本以上であっても良い。
【0046】
以上のような構成を有するトランス10の特性の実験結果について、図5〜図7に示す。これらの図5〜図7においては、トランス10の減衰率(dB)を縦軸、周波数(Hz)を横軸に示している。なお、これらの実験結果においては、一次巻線50には、1kHz〜10MHzの周波数の信号が与えられている。
【0047】
図5においては、第1のコア20と第2のコア30の比透磁率が、共に10000であると共に、第1のコア20と第2のコア30との間に、テープ部材が挟持されているトランスの特性を破線で、第1のコア20の比透磁率が10000であると共に第2のコア30の比透磁率が100であるトランス10の特性を実線で示している。
【0048】
この図5に示すトランス10の特性は、テープ部材が挟持されているトランスの特性と近似している。この図5においては、トランス10は、50kHz付近において略−3dBとなり、従来のトランスと同等の特性を備えている。なお、13kHzよりも低周波側においては、ばらつきが生じ、測定装置では正確なデータが得られなかったが、ばらついた減衰率の平均値を取ると、トランス10は、従来のテープ部材が挟持されているトランスと同様に、低周波側の周波数の信号は、周波数が低くなるにつれて減衰していることが分かる。
【0049】
なお、高周波用フィルタとしての、減衰率のしきい値は、種々設定可能である。例えば、上述の−3dBとしても良く、それ以外の任意の値としても良い。
【0050】
また、図6においては、第1のコア20と第2のコア30の比透磁率が、共に10000であると共に、第1のコア20と第2のコア30との間に、テープ部材が挟持されているトランスの特性を破線で、第1のコア20の比透磁率が10000であると共に第2のコア30の比透磁率が400であるトランス10の特性を実線で示している。
【0051】
この図6に示すトランス10の特性も、テープ部材が挟持されているトランスの特性と近似しており、トランス10は、50kHz付近において略−3dBとなり、従来のトランスと同等の特性を備えている。なお、図6に示すトランス10においても、13kHzよりも低周波側においては、ばらつきが生じ、測定装置では正確なデータを得ることはできなかったが、ばらついた減衰率の平均値を取ると、トランス10は、従来のテープ部材が挟持されているトランスと同様に、低周波側の周波数の信号は、周波数が低くなるにつれて減衰していることが分かる。
【0052】
さらに、図7においては、第1のコア20と第2のコア30の比透磁率が、共に10000であると共に、第1のコア20と第2のコア30との間に、テープ部材が挟持されているトランスの特性を破線で、第1のコア20の比透磁率が10000であると共に第2のコア30の比透磁率が850であるトランス10の特性を実線で示している。
【0053】
この図7に示すトランス10の特性も、テープ部材が挟持されているトランスの特性と近似しており、トランス10は、50kHz付近において略−3dBとなり、従来のトランスと同等の特性を備えている。なお、図7に示すトランス10においても、13kHzよりも低周波側においては、ばらつきが生じ、測定装置では正確なデータを得ることはできなかったが、ばらついた減衰率の平均値を取ると、トランス10は、従来のテープ部材が挟持されているトランスと同様に、低周波側の周波数の信号は、周波数が低くなるにつれて減衰していることが分かる。
【0054】
以上の実験結果より、第1のコア20を比透磁率が高いHiμ材、第2のコア30を比透磁率の低い材質とし、両者を突き合わせる構成を採用する場合、第1のコア20および第2のコア30が共にHiμ材であると共に、柱脚部26と柱脚部36の間に狭小ギャップを備える従来のトランス10の構成と、同様の特性を持たせることができる。すなわち、平均値で見ると、トランス10は、低周波領域における信号を減衰させている。
【0055】
このような構成のトランス10によれば、第2のコア30よりも第1のコア20の方が、比透磁率が高く設けられ、柱脚部26と柱脚部36、および第1の周壁部と第2の周壁部との間で、互いにギャップを介さずに当接する状態となる。
【0056】
この場合、第2のコア30よりも第1のコア20の方が、比透磁率が高く設けられる状態で、それぞれの比透磁率を設定すれば、第1のコア20と第2のコア30との間にギャップを設けなくても、トランス10の全体で、従来の狭小ギャップを有するトランスと同等の特性(所望の特性)を得ることが可能となる。すなわち、比透磁率の低い第2のコア30の存在により、低周波信号を減衰させることが可能となる。
【0057】
また、第1のコア20として、比透磁率の高い材質を用いているため、トランス10を高インピーダンスとすることが可能となる。さらに、第2のコア30は、第1のコア20よりも比透磁率が低いため、従来のように2つのコア共に比透磁率の高い材質を用いる構成と比較して、損失を低減することも可能となる。
【0058】
また、所望の特性を得るために、第1のコア20と第2のコア30との間に狭いギャップ(狭小ギャップ)を設ける必要がなくなる。それにより、狭小ギャップの加工に要する工程を削減することができ、生産性を高めることが可能となる。また、狭小ギャップの加工を必要としないため、その加工に要するコストを抑えることが可能となる。特に、現状においては、22μm程度と非常に狭いギャップを形成しているため、ギャップをなくすることによる、生産性の増大効果およびコストの削減効果が大きくなる。
【0059】
さらに、従来のように、第1のコア20と第2のコア30との間に狭小ギャップを形成すべく、テープ部材を間に介在させる必要もなくなる。そのため、リフロー等の実装時に、テープ部材が熱によって溶けてしまい、ギャップの寸法管理が正確に行えなくなる、という問題も防ぐことができる。すなわち、テープ部材が介在しないため、リフロー等の実装を問題なく行うことが可能となると共に、狭小ギャップの寸法を正確に管理する必要もなくなる。
【0060】
また、本実施の形態では、第1のコア20の比透磁率は、第2のコア30の比透磁率に対して4倍〜100倍の範囲内に設けられている。このため、第1のコア20と第2のコア30との間における比透磁率の差が大きくなり、従来のような、狭小ギャップがHiμ材の間に存在する構成と同等の特性を備えるバンドパスフィルタを得ることが可能となる。
【0061】
さらに、本実施の形態では、第1のコア20の比透磁率は、2000〜30000の範囲内であると共に、第2のコア30の比透磁率は、20〜2000の範囲内となっている。この場合、第1のコア20と第2のコア30との間における比透磁率の差を大きくとることができ、従来のような、狭小ギャップがHiμ材の間に存在する構成と同等の特性を備えるバンドパスフィルタを得ることが可能となる。
【0062】
また、第1のコア20は、略10000等の高い比透磁率を有するMn系の磁性部材を材質とすると共に、第2のコア30は、Mn系の磁性部材に比べて比透磁率の低いNi系の磁性部材を材質としている。このため、第1のコア20と第2のコア30との間における比透磁率の差により、バンドパスフィルタとして、従来のような狭小ギャップがHiμ材の間に存在する構成と同等の特性を備えさせることが可能となる。
【0063】
さらに、第1のコア20と第2のコア30とは、互いに当接している部分を境に対称な形状を為している。このように構成した場合、第1のコア20と第2のコア30とは、同じ面積を有するため、お互いの境界部分を段差部分がない状態で当接させることができ、外部への磁束漏れを低減させることができる。また、第1のコア20と第2のコア30との当接に際して、位置決めを行い易くなる。
【0064】
また、第1のコア20と第2のコア30とは、EPコアを形成している。このように構成した場合、一次巻線50と二次巻線60とを、スペース効率に優れたバンドパスフィルタとして機能させることができる。また、上述のように、第1のコア20と第2のコア30の比透磁率に、大きな差が存在することにより、トランス10は、従来のような狭小ギャップが存在するバンドパスフィルタと、同等の機能を備えさせることができる。
【0065】
さらに、トランス10は、比透磁率の低い第2のコア20を備えるため、狭小ギャップが存在する従来例およびテープギャップが存在する従来例の温度特性に近づけることができる。
【0066】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態に係る、磁気素子としてのトランス11について、図8に基づいて説明する。なお、本実施の形態においては、上述の第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明する。
【0067】
本実施の形態におけるトランス11は、いわゆるEE型のトランスであり、平面形状がE型を為す第1のコア200と、同じく平面形状がE型を為す第2のコア300と、コイルボビン400と、を具備している。これらのうち、第1のコア200と第2のコア300とは、略同一の形状である。また、第1のコア200と第2のコア300の材質も、上述の第1の実施の形態におけるものと同様であると共に、第1のコア200と第2のコア300の比透磁率も、上述の第1の実施の形態におけるものと同様となっている。
【0068】
また、本実施の形態においても、第1のコア200は略10000の比透磁率を有するMn系のフェライト(Hiμ(ハイミュー)材)を材質としている。また、第2のコア300の材質は、第1のコア200の材質よりも、比透磁率が低く設けられている。ここで、第1のコア200の比透磁率は、第2のコア300の比透磁率に対して4倍〜100倍の範囲内に設けるのが良い。かかる第2のコア300の材質が具備する比透磁率としては、略20〜略2000程度の範囲内にあれば良い。より好ましい比透磁率の範囲としては、略20〜略1000とするのが良い。
【0069】
なお、図5〜図7等の実験結果から、第1のコア200の比透磁率が10000である場合、第2のコア300の比透磁率の範囲が100〜850である場合には、従来のトランスと同等の特性が得られる。また、比透磁率の低い第2のコア300の材質としては、Ni系フェライトが挙げられる。
【0070】
また、第1のコア200が備える比透磁率は、略10000に限られるものではなく、2000〜30000の範囲内にあれば良い。しかしながら、第1のコア200が備える比透磁率は、略5000以上の比透磁率を備える(例えば、アモルファス等の材質を用いた場合)のが好ましく、第1のコア200の比透磁率が略10000以上であれば、一層好ましいものとなる。
【0071】
ここで、本実施の形態における第1のコア200と第2のコア300の有する凹陥部210,310は、上述の第1の実施の形態における凹陥部21と比較して、より開放した状態に設けられている。すなわち、上述の第1の実施の形態における逆U字形状の凹みの凹陥部21,31は、周壁24a,24bおよび上壁22,32等で形作る側壁のうち、実装される基板平面側が開放した状態に設けられている。これに対して、本実施の形態における凹陥部210,310は、上述の第1の実施の形態の上壁22,32がさらに開放した状態に設けられている。
【0072】
そのため、トランス11においては、第1のコア200と第2のコア300のそれぞれの長手方向(図8における矢示X方向)の両端に、一対の周壁240,340が配置される構成となっている(図8においては、一対の周壁240および周壁340をそれぞれ区別するために、周壁240a,240bおよび周壁340a,340bとしている。)。また、本実施の形態においても、凹陥部210,310に、それぞれ柱脚部260(第1の柱脚部に対応)、柱脚部360(第2の柱脚部に対応)が設けられている。なお、本実施の形態では、柱脚部260,360は、第1のコア200および第2のコア300の長手方向に長い、四角柱状に設けられている。そのため、コイルボビン400の貫通孔440も、柱脚部260,360の形状に対応させて、略四角形状の孔部となっている。また、柱脚部260,360は、実装される基板に対して略平行を為す状態で突出している。
【0073】
なお、本実施の形態では、第1の実施の形態の第1のコア20の側底壁23に対応する部分を側底壁230とする。同様に、第2のコア30の側底壁33に対応する部分を、側底壁330とする。
【0074】
また、本実施の形態においても、柱脚部260,360の突出高さは、第1のコア200の対向面250、及び第2のコア300の対向面350と略同一の高さ位置となっている。そのため、第1のコア200と第2のコア300とを突き合せた場合でも、柱脚部260と柱脚部360との間にギャップは形成されない。
【0075】
また、本実施の形態のコイルボビン400は、上述の第1の実施の形態におけるコイルボビン40のように、一対の鍔部42を有する構成とは異なり、3つの鍔部を有している。そのため、コイルボビン400は、コイルボビン40のように1つの巻線部41を有する構成ではなく、2つの巻線部を有する構成となっている。
【0076】
なお、以下の説明においては、図8における3つの鍔部を、第1のコア200から第2のコア300に向かって、順次、上鍔部421,中鍔部422,下鍔部423とする。また、2つの巻線部も、第1のコア200から第2のコア300に向かって、順次、第1の巻線部411(この部分は、上鍔部421と中鍔部422で仕切られる部分)、第2の巻線部412(この部分は、中鍔部422と下鍔部423で仕切られる部分)とする。
【0077】
また、本実施の形態のコイルボビン400も、第1の端子台430と第2の端子台431を具備している。ここで、第1の端子台430および第2の端子台431からは、複数(本実施の形態では、第1の端子台430および第2の端子台431からそれぞれ5本ずつ)のピン端子450が、下方に向かって突出している。ピン端子450は、基板の実装部位に設けられている孔部に差し込まれる部分である。また、このピン端子450には、一次巻線50または二次巻線60の端末がそれぞれ絡げられる。そのため、本実施の形態におけるピン端子450は、上述の第1の実施の形態における絡げ端子45および実装端子46としての役割を果たしている。
【0078】
また、第1の端子台430および第2の端子台431には、その下面から下方に向かって突出する、複数の突起460が設けられている。突起460は、ピン端子450よりも短い長さ寸法を有している。そのため、基板に実装する際に、孔部にピン端子450を差し込んだ状態で、突起460の下面が基板に当接する。それによって、ピン端子450は、その根元まで孔部に差し込まれる状態とはならず、ピン端子450において一次巻線50または二次巻線60の端末を絡げた部位が、基板と干渉するのを防止することが可能となる。すなわち、ピン端子450において、一次巻線50または二次巻線60の端末を絡げるための部位が確保される。
【0079】
なお、ピン端子450に対して、上述の第1の実施の形態における実装端子46の役割のみを持たせるようにし、別途、絡げ端子45に相当する絡げ端子を設けるように構成しても良い。
【0080】
このような各部分を具備するトランス11を組み立てる場合、第1の巻線部411および第2の巻線部412に対して、それぞれ一次巻線50および二次巻線60を巻回させる。また、一次巻線50,60の端末を、それぞれいずれかのピン端子450に絡げる。そして、柱脚部260,360を、貫通孔440に差し込む。第1のコア200と第2のコア300が突き合わされた(接触した)状態となると、周壁240,340の対向面250,350が、互いに当接すると共に、柱脚部260,360の対向面250,350も互いに当接する。それにより、柱脚部260と柱脚部360の間には、狭小ギャップが生じない状態となる。このとき、第1のコア200と第2のコア300とは、磁気ギャップ(狭小ギャップ)が存在しない状態で当接し、その当接により閉磁路が形成されている。
【0081】
かかる突き合せの後に、第1のコア200と第2のコア300とは、例えば、接着剤または不図示の押さえ部材等を介して接合される。以上のようにして、トランス11が組み立てられる。
【0082】
このような構成のトランス11においても、上述の第1の実施の形態のトランス10と同様な作用効果を生じさせることが可能となる。すなわち、第1のコア200と第2のコア300との間にギャップを設けなくても、トランス11の全体で、従来の狭小ギャップを有するトランスと同等の特性(所望の特性)を得ることが可能となる。また、比透磁率の低い第2のコア300の存在により、実効透磁率を合わせ、低周波信号の減衰を助けることが可能となる。
【0083】
また、トランス11においては、コイルボビン400に巻回される一次巻線50と二次巻線60とが、中鍔部422によって明確に仕切られる。そのため、一次巻線50および二次巻線60の巻回が容易になり、トランス11の組み立ての際の作業性を向上させることが可能となる。
【0084】
以上、本発明の第1および第2の実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0085】
上述した第1の実施の形態では、トランス10として、EPコアを形成する第1のコア20および第2のコア30を用いる場合について説明している。また、上述した第2の実施の形態では、トランス11として、EEコアを形成する第1のコア200および第2のコア300を用いる場合について説明している。しかしながら、トランス10,11は、EPコアを用いる場合には限られない。例えば、EIコア、EFコア、ERコア、RMコア等、各種の信号系のコアを、第1のコアおよび第2のコアとして、本発明を適用しても良い。
【0086】
また、上述の第1の実施の形態では、円柱状の柱脚部26を第1の柱脚部とすると共に、同じく円柱状の柱脚部36を第2の柱脚部としている。また、上述の第2の実施の形態では、四角柱状の柱脚部260を第1の柱脚部とすると共に、同じく四角柱状の柱脚部360を第2の柱脚部としている。しかしながら、第1の柱脚部および第2の柱脚部は、円柱状または四角柱状でなくても良く、例えば楕円柱状、三角柱状等、種々変更可能である。
【0087】
さらに、上述の各実施の形態では、導線を巻回する巻線コイルに関する磁気素子について、本発明を適用した場合について説明している。しかしながら、磁気素子は、巻線コイルに限られるものではなく、印刷方式の積層コイル、蒸着・スパッタリングを用いる薄膜コイルに本発明を適用しても良い。
【0088】
また、磁気素子としては、2つの巻線50,60により構成されるトランスに限られるものではなく、3つまたはそれ以上の巻線を有するトランスに、本発明を適用しても良い。例えば、1つの一次巻線を有すると共に、2つの二次巻線を有する構成としても良い。
【0089】
また、上述の実施の形態では、第1のコア20と第2のコア30とは、対称形状を為しているものについて説明している。しかしながら、第1のコア20と第2のコア30とは、互いに非対称形状を為していても良い。また、第1のコア20と第2のコア30とが対称形状を為す場合、目視または触感により第1のコア20と第2のコア30とを容易に識別できる、識別子を備える構成を採用しても良い。
【0090】
さらに、トランス10においては、バンドパスフィルタとして通過させる信号の周波数は、13kHzに限られるものではない。上述のような第1のコア20と第2のコア30の間で、比透磁率に差を有するものであれば、13kHzより高い周波数付近、または13kHzよりも低い周波数付近のいずれの周波数帯域を通過させるものであっても良い。
【0091】
また、上述の各実施の形態においては、2つ巻線(一次巻線50、二次巻線60)を具備するトランス等の磁気素子について説明している。また、3つ以上の巻線を用いる磁気素子についても、上述の変形例で述べている。しかしながら、磁気素子は、2つ以上の巻線を具備する構成には限られず、1つのみの巻線を具備するものを、磁気素子としても良い。この場合、磁気素子は、各種のインダクタ、フィルタ等として機能させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の磁気素子は、電気機器の分野において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るトランスの構成を示す斜視図である。
【図2】図1のトランスの構成を示す分解斜視図である。
【図3】図1のトランスの構成を示す側断面図である。
【図4】図1のトランスの第1のコアまたは第2のコアの形状を示す正面図である。
【図5】図1のトランスの特性の実験結果を示す図であり、第1のコアと第2のコアの比透磁率が共に10000であり、かつ両者の間にテープ部材が挟持されているトランスの特性を破線で、第1のコアの比透磁率が10000であると共に第2のコアの比透磁率が100であるトランスの特性を実線で示している。
【図6】図1のトランスの特性の実験結果を示す図であり、第1のコアと第2のコアの比透磁率が共に10000であり、かつ両者の間にテープ部材が挟持されているトランスの特性を破線で、第1のコアの比透磁率が10000であると共に第2のコアの比透磁率が400であるトランスの特性を実線で示している。
【図7】図1のトランスの特性の実験結果を示す図であり、第1のコアと第2のコアの比透磁率が共に10000であり、かつ両者の間にテープ部材が挟持されているトランスの特性を破線で、第1のコアの比透磁率が10000であると共に第2のコアの比透磁率が850であるトランスの特性を実線で示している。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るトランスの構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0094】
10,11…トランス
20,200…第1のコア
21,210…凹嵌部
22…上壁(第1の周壁部の一部)
23…側底壁(第1の周壁部の一部)
24a,24b…周壁(第1の周壁部の一部)
25,250…対向面
26,260…柱脚部(第1の柱脚部に対応)
30,300…第2のコア
31,310…凹嵌部
32…上壁(第2の周壁部の一部)
33…側底壁(第2の周壁部の一部)
34a,34b…周壁(第2の周壁部の一部)
35,350…対向面
36,360…柱脚部(第2の柱脚部に対応)
50…一次巻線(第1のコイルに対応)
60…二次巻線(第2のコイルに対応)
70…回路基板
240,340…周壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコアと、
上記第1のコアに当接する第2のコアと、
信号が入力されると共に、上記第1のコアおよび上記第2のコアの少なくとも一方に巻回されるコイルと、
を備え、
上記第1のコアの比透磁率は、上記第2のコアの比透磁率よりも高く設けられていると共に、上記第1のコアおよび上記第2のコアの間には、磁気ギャップが存在しない状態で閉磁路が形成されている、
ことを特徴とする磁気素子。
【請求項2】
信号が入力される第1のコイルと、
上記第1のコイルに入力された信号が伝達される第2のコイルと、
上記第1のコイルが巻回される第1の柱脚部および該第1の柱脚部の周囲に配置される第1の周壁部を有する第1のコアと、
上記第2のコイルが巻回される第2の柱脚部および該第2の柱脚部の周囲に配置される第2の周壁部を有する第2のコアと、
を具備し、
上記第1のコアの比透磁率は、上記第2のコアの比透磁率よりも高く設けられていると共に、
上記第1の柱脚部と第2の柱脚部とが当接し、かつ上記第1の周壁部と上記第2の周壁部とが当接している、
ことを特徴とする磁気素子。
【請求項3】
前記第1のコアの比透磁率は、前記第2のコアの比透磁率に対して4倍〜100倍の範囲内に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の磁気素子。
【請求項4】
前記第1のコアの比透磁率は、2000〜30000の範囲内であると共に、前記第2のコアの比透磁率は、20〜2000の範囲内であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気素子。
【請求項5】
前記第1のコアは、Mn系の磁性部材を材質とすると共に、前記第2のコアは、Ni系の磁性部材を材質とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気素子。
【請求項6】
前記第1のコアと前記第2のコアとは、互いに当接している部分を境に対称な形状を為していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気素子。
【請求項7】
前記第1のコアと第2のコアとは、EPコアを形成することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の磁気素子。
【請求項8】
前記第1のコアと前記第2のコアとの間の比透磁率の差により、前記第1のコイルから前記第2のコイルへ伝達される信号の周波数のうち、特定の帯域から外れる周波数の信号の振幅をしきい値以下に減衰させるバンドパスフィルタとして機能させることを特徴とする請求項2記載の磁気素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−74006(P2006−74006A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198874(P2005−198874)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000107804)スミダコーポレーション株式会社 (285)
【Fターム(参考)】