説明

磁気記憶媒体の製造方法及び情報記憶装置

【課題】凸凹パターンの記録層を平坦化する磁気記録媒体の製造方法において、表面の平坦度を向上する。
【解決手段】記録層32−1を形成する凸凹パターンを平坦化するため、高研磨レートの第1の充填材36の上に、低研磨レートの第2の充填材38を設け、研磨する。研磨時間を長くすることなく、必要な部分のみが、低研磨レートとなるようにできる。これにより、製造効率、製造マージン等を損なうことなく、表面の高平坦性を得ることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸凹パターンを有する磁気記憶媒体の製造方法及び情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記録再生装置の小型化、大容量化は、急速に進んでいる。磁気記録再生装置の磁気記録媒体は、スパッタ法などにより、ガラスもしくは、アルミ合金基板に、磁性薄膜が積層された構造をとる。記録磁性材料は、磁性粒子を小さくするために、さまざまな工夫がもたらされ、磁気粒子単位は、8nm程度まで小さくなっている。
【0003】
この磁気粒子の微細化は、主に、記録媒体の低ノイズ化に寄与する。ところが、この微細化も限界が叫ばれており、打開策として、いわゆる、ディスクリートトラックメディア、パターンドメディアと呼ばれる媒体が提案されている。
【0004】
これらの媒体は、記録磁性材料の膜をパターンニングすることが特徴である。ディスクリートトラック媒体の場合は半径方向に、ビットパターンド媒体は円周、半径方向ともにパターンニングされ、記録膜は凸凹を有している。
【0005】
また、ヘッドを浮上させ信号を読み書きする必要があるため、凹凸パターンを形成した後、非磁性材料等を凹部に充填すべく形成し、更に研磨等により表面をヘッド浮上に耐えられるよう平坦化する(例えば、特許文献1,2参照)。
【0006】
図13及び図14は、従来考えられている凸凹を有する磁気記憶媒体の製造方法の説明図である。図13は、凹凸パターンを充填材で充填する工程の説明図、図14は、充填した媒体を研磨した後の表面形状の断面図を示す。
【0007】
図13に示すように、非磁性基板100上にスパッタなどにより、必要に応じて、軟磁性下地層や結晶制御下地層等を形成した後、磁性材料からなる記録層102を形成し、更に必要に応じて研磨ストッパー層104を形成する。その後、凹凸をパターニングするためにレジストを形成し、ナノインプリントやEB描画等により、レジストをパターニングする。パターニングされたレジストをマスクとし、磁性膜102をエッチングし、磁性膜102に凹凸パターンを施す。
【0008】
図13において、非磁性基板100上に、磁性層102と、研磨ストッパー層104とからなる凸凹パターンが形成される。この凸凹パターンの凹部に、非磁性の充填材を充填し、非磁性充填層106を形成する。
【0009】
次に、図14に示すように、研磨パッド(図示せず)により、非磁性充填層106の表面を研磨し、平坦化する。この平坦化は、磁気ヘッドの浮上量に影響し、平坦の程度が重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4076889号公報(特開2004−295989号公報)
【特許文献2】特開2007−164845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の方法では、凹部を充填するために、充填材料を形成した後、研磨により表面を平坦化するプロセスにおいて、比較的柔らかい研磨パッドを使用した場合など、特に、広い幅でパターンニングされている凹部は、充填部が過研磨により窪み、段差が発生してしまう。
【0012】
通常、記録層凸部102が研磨されないように、記録層102よりも研磨レートが高い材料を充填材106として、充填し、研磨する。このため、研磨処理を施すと、記録層凸部102は、研磨されなくても、凹部の充填材106が徐々に研磨されていくことや、軟質な研磨パッドが、媒体表面の凹凸にならって、変形することなどが要因と考えられる。
【0013】
特に、サーボパターンを形成するための磁性膜を設けた領域では、幅の広い凹部が存在する。この段差は、適切な研磨時間よりも長く研磨すればするほど、凸部102は、ほとんど削られないのに対し、凹部106のみ削れるため、段差はより大きくなる。例えば、段差が、10数ナノメータでも、高記録密度に対応したヘッドの浮上量は、10ナノメータ以下であるため、浮上量への影響が大きい。又、製造プロセスマージンが小さい。
【0014】
本発明の目的は、研磨後に発生しうる、媒体表面の段差を少なくするための磁気記憶媒体の製造方法及び情報記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的の達成のため、磁気記憶媒体の製造方法は、基板上に記録層を形成する工程と、前記記録層に所定の凸凹パターンと、前記凸凹パターンの凸部上に研磨ストッパ層とを形成する工程と、前記凸凹パターンの凹部と前記研磨ストッパ層上に、前記研磨ストッパ層よりも、研磨レートが高い第1の充填層を形成する工程と、前記第1の充填層上に、前記第1の充填層よりも研磨レートが低い第2の充填層を形成する工程と、前記研磨ストッパ層が露出するまで、前記第2の充填層と、前記第1の充填層とを研磨する工程とを有する。
【0016】
又、情報記憶装置は、前記磁気記憶媒体の製造方法により製造された磁気記憶媒体と、前記磁気記憶媒体に対して情報の記録及び/再生を行うヘッドと、前記浮上型ヘッドの記録と再生動作を制御する制御回路とを有する。
【発明の効果】
【0017】
記録層を形成する凸凹パターンを平坦化するため、高研磨レートの第1の充填材の上に、低研磨レートの第2の充填材を設けたため、研磨時間を長くすることなく、必要な部分のみが、低研磨レートとなるようにできる。これにより、製造効率、製造マージン等を損なうことなく、表面の高平坦性を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の情報記憶装置の一実施の形態の外観図である。
【図2】図1のディスクのサーボゾーンとデータゾーンとの説明図である。
【図3】本発明の磁気記録媒体の製造方法の第1の実施の形態の磁性膜形成工程の説明図である。
【図4】本発明の磁気記録媒体の製造方法の第1の実施の形態の凸凹パターン形成工程の説明図である。
【図5】本発明の磁気記録媒体の製造方法の第1の実施の形態の非磁性充填層形成工程の説明図である。
【図6】本発明の磁気記録媒体の製造方法の第1の実施の形態の研磨工程の説明図である。
【図7】本発明の磁気記録媒体の製造方法の第2の実施の形態の非磁性充填層形成工程の説明図である。
【図8】本発明の磁気記録媒体の製造方法の第2の実施の形態の研磨工程の説明図である。
【図9】本発明の実施例と比較例との、研磨時間と表面粗さRaの測定結果を示す図である。
【図10】本発明の実施例と比較例との研磨時間と段差の測定結果を示す図である。
【図11】本発明の実施例のガス圧と研磨レートの関係図である。
【図12】本発明の実施例の酸素分圧と研磨レートの関係図である。
【図13】従来の磁気記録媒体の製造方法の非磁性充填層形成工程の説明図である。
【図14】従来の磁気記録媒体の製造方法の研磨工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、情報記憶装置、磁気記録媒体の製造方法の第1の実施の形態、磁気記録媒体の第2の実施の形態、実施例、他の実施の形態の順で説明するが、本発明は、この実施の形態に限られない。
【0020】
(情報記憶装置)
図1は、本発明の情報記憶装置の一実施の形態の外観図、図2は、図1のディスクのサーボゾーンとデータゾーンとの説明図である。図1は、情報記憶装置として、ハードディスクドライブを例に示す。
【0021】
図1に示すように、ディスクエンクロージャ(DEという)1は、磁気ディスク装置の各構成要素を収容する。DE1内では、磁気記録媒体である磁気ディスク3が、スピンドルモータ4の回転軸に設けられている。
【0022】
DE1に取り付けられたスピンドルモータ4は、磁気ディスク3を回転する。VCM(ボイスコイルモータ)を用いたアクチュエータ(VCMという)5は、アーム(サスペンションを含む)52を回転する。アームのサスペンションの先端には、磁気ヘッドを含むスライダ53が設けられている。従って、アクチュエータ5は、磁気ヘッドを含むスライダ53を磁気ディスク3の半径方向に移動する。
【0023】
アクチュエータ5は、回転軸を中心に回転するボイスコイルモータ(VCM)で構成される。図1では、磁気ディスク装置に、1枚の磁気ディスク3が搭載され、磁気デイスクの各面に対し、磁気ヘッドを含む2つのスライダ53が、同一のアクチュエータ5で同時に駆動される。
【0024】
磁気ディスク3の外側には、スライダ53を磁気ディスク3から退避し、パーキングするためのランプ機構54が設けられる。サスペンションの先端には、このランプ機構54に係合するリフトタブが設けられる。
【0025】
スライダ53は、リード素子と、ライト素子とを有する。スライダ53は、スライダ本体に、磁気抵抗(MR)素子を含むリード素子を積層し、その上にライトコイルを含むライト素子を積層して、構成される。スライダ53の最下部は、空気軸受け面を形成する。
【0026】
図2に示すように、磁気ディスク3は、データゾーン211とサーボゾーン212とで構成されている。尚、図2において、黒部分が、磁性膜を示す。
【0027】
データゾーン211は、各ビットを構成する磁性膜が分離され、磁気ディスク3の円周方向に列をなして、形成される。一方、サーボゾーン212は、サーボパターンが、磁性膜で形成される。ここでは、サーボパターン212は、プリアンブル221、サーボマーク222、アドレス223、微小位置検出パターン(バーストパターン)224で構成される。
【0028】
このように、ビットパターン媒体では、サーボパターン212で、比較的広い凹部を形成する。
【0029】
(磁気記録媒体の製造方法の第1の実施の形態)
図3乃至図6は、本発明の磁気記録媒体の製造方法の第1の実施の形態の工程図である。図3は、磁性膜形成工程の説明図、図4は、凸凹パターン形成工程の説明図、図5は、非磁性充填層形成工程の説明図、図6は、研磨工程の説明図である。
【0030】
図3に示すように、非磁性基板30上に、スパッタなどにより、必要に応じて、軟磁性下地層や結晶制御下地層等を形成した後、磁性材料からなる記録層32を形成する。更に、磁性記録層32が研磨時にダメージを受けないように、磁性記録層32を形成した後に、研磨レートが低い研磨ストップ層34を形成する。更に必要に応じて、エッチング保護層やエッチングマスク層を形成する。
【0031】
図4に示すように、その後、凹凸をパターニングするためにレジストを形成し、ナノインプリントやEB(Electron Beam)描画等により、レジストをパターニングする。パターニングされたレジストをマスクとし、IBE(Ion Beam Etching)やRIE(Reactive Ion Etching)などで、磁性膜32をエッチングし、磁性膜32に、凹凸パターンを施す。レジストやエッチングマスク層が残る場合は、レジストを除去する。これにより、磁性層32が、分離された磁性層32−1(研磨ストップ層34−1を含む)に変換する。
【0032】
図5に示すように、その後、スパッタ法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、充填材36と、充填材36よりも研磨レートの低い第2の充填材38を順次形成する。
【0033】
そして、図6に示すように、機械研磨や化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)などにより研磨し、表面を平坦化する。
【0034】
図6に示すように、第2の充填材38の研磨レートが低いため、元々凹部であったところに残った第2の充填材38が、研磨ストップ層34−1に近い役割を果たし、窪まないため、段差の発生を防止できる。
【0035】
更には、適切な研磨時間よりも長く研磨しても、第2の充填材38が低研磨レートであるゆえに、段差は拡大しにくいため、製造プロセスマージンの大きい製造プロセスを実現できる。又、第2の充填材38の形成厚さは、製造プロセスのマージンを多くとりたいときは、厚くするのが良いが、凸部上の第2の充填材38を研磨する時間が長くなるため、プロセス時間を短縮する理由から、必要最小限の厚さとすることが好ましい。
【0036】
次に、本発明の実施の形態による充填、平坦化のメリットについて補足する。従来の方法は、磁性膜凸部を研磨しないようにし、余分な充填材の上層部のみを研磨するため、磁性膜もしくは研磨ストッパー層に対し、研磨しやすい材料を充填材として充填し、研磨する。しかし、その研磨しやすさが要因となり、幅の広い凹部が必要以上に研磨され、段差が発生することが課題であった。
【0037】
この課題を解決するためには、充填材自体に、研磨されにくい、すなわち研磨レートの低い材料を用いることで、研磨に対して凹部を窪みにくくすることが考えられるが、この方法では、研磨レートの低い充填材を研磨する時間が長くなってしまう。長くなることで、製造効率が落ちる上、長くなった分、結局は、過研磨により凹部の窪みを深くしてしまう懸念が残る。
【0038】
これに対し、本発明の実施の形態は、高研磨レートの第1の充填材36の上に、低研磨レートの第2の充填材38を設けたため、研磨時間を長くすることなく、必要な部分のみが、低研磨レートとなるようにできる。これにより、製造効率、製造マージン等を損なうことなく、表面の高平坦性を得ることが可能である。
【0039】
尚、凸部上にも一部、低研磨レートの第2の充填材38が存在することになるが、凸部は研磨時の研磨圧力が多くかかるため、凸部上に存在する第2の充填材38は、十分に短時間の研磨で除去することが可能であり、研磨時間は必要最小限にできる。
【0040】
この充填材の研磨レートは、硬度の異なる材料や、砥粒との化学反応の異なる材料を選択するなどで制御可能である。本実施の形態では、以下の方法で、研磨レートを制御することにより、プロセスの効率化を可能とする。
【0041】
一つは、スパッタにより充填材を形成する方法である。この時、スパッタガス圧で、研磨レートを制御する。一般的に、スパッタ時のガス圧を高くすると、膜の密度が低下することが知られている。我々の研究の結果、膜密度の低下により研磨レートが向上することが分かった。
【0042】
ガス圧による研磨レートを制御する場合、同じスパッタリングターゲットを用いて、ガス圧のみを変更することで、第1の充填材36、第2の充填材38を形成することができ、プロセスの効率化を可能とする。
【0043】
他の方法は、充填材を、酸化珪素(SiO2)とし、更に、研磨時の砥粒を、酸化セリアとした化学的機械的研磨(CMP)により研磨する方法である。この時、酸化珪素の酸素量を制御して、研磨レートを制御する。酸化セリア砥粒を用いた酸化珪素膜のCMPは、高レートかつ高品質な研磨が可能であるため、半導体プロセスで使われつつあり、また磁気記録媒体の研磨でも期待できる技術である。
【0044】
この高研磨レートは、酸化セリアと酸化珪素の酸素を介した化学反応が寄与しているものと考えられている。本発明者等は、酸素量を変化させた酸化珪素の研磨を行い、研磨レートを確認したところ、酸化珪素の酸素量により、研磨レートを制御できることを確認した。
【0045】
化学量論組成である酸化珪素(SiO2)のターゲット材を用いても、スパッタすると形成された膜は、通常、酸素が欠乏し、SiOx(x<2)となりやすい。この状態で、酸化セリア砥粒による研磨を行うと、高い研磨レートを得ることが出来ない。しかし、スパッタ時のプロセスガスに、酸素を混合することで、酸素が補給され、研磨レートが向上する。
【0046】
よって、研磨レートの制御は、この酸素ガスの分圧を変化させることで可能であり、たとえば、一つのチャンバで、第1充填材36、第2の充填材38を、酸素分圧を変化させながら効率的に形成することが可能である。また、酸化珪素は、絶縁体であるため、スパッタするには、RFスパッタ法を用いる。他の方法として、SiターゲットのDCスパッタにより、酸素分圧を変化させることで、酸素量を制御した酸化珪素を形成することもできる。
【0047】
次に、充填材の積層膜厚を説明する。充填材36,38を形成する前の媒体の凹凸パターンの凹部の深さを「d」(図6参照)、ヘッド浮上に対し許容される表面段差を「s」とした場合、第1の充填材36、第2の充填材38の膜厚tF1,tF2(図5参照)との関係は、tF1<dであり、かつ│tF1+tF2−d│≦sとすることで、表面段差を、許容値「s」以下にすることが容易となる。
【0048】
実際には、全てを設計どおりに製造することは難しいため、磁性膜凸部もしくは、その上に形成された研磨ストップ層34−1は、研磨プロセスでほぼ研磨されないとした場合、平坦度を得るためには、tF1<dであり、かつtF1+tF2≧dとしても良い。このtF2の上限を、製造マージンとのバランスで決定する。
【0049】
(磁気記録媒体の製造方法の第2の実施の形態)
図7乃至図8は、本発明の磁気記録媒体の製造方法の第2の実施の形態の工程図である。図7は、非磁性充填層形成工程の説明図、図8は、研磨工程の説明図である。
【0050】
図7及び図8の第2の実施の形態でも、磁性層形成工程、凸凹パターン形成工程は、図3、図4で説明したものと同一であり、説明を省略する。図7の非磁性充填層形成工程において、スパッタ法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、充填材36と、充填材36よりも研磨レートの低い第2の充填材38と、第2の充填材38より研磨レートの高い第3の充填層40を順次形成する。
【0051】
そして、図8に示すように、機械研磨や化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)などにより研磨し、表面を平坦化する。
【0052】
この実施の形態では、平坦化品質を高めるために、第3の充填材40を更に形成する。即ち、製造効率を高めるために、研磨レートの低い第2の充填材38の膜厚は、必要最低限とし、更に、平坦化に必要な充填膜厚を得るために、第2の充填材38よりも研磨レートの高い第3の充填材40を、第2の充填材38の上に形成してから、研磨する。
【0053】
このため、磁性膜凸部もしくは、その上に形成された研磨ストップ層34−1は、研磨プロセスでほぼ研磨されないとした場合、平坦度を得るためには、tF1<dであり、かつtF1+tF2≧dとした場合、このtF2の上限を、製造マージンとのバランスで決定し、研磨レートの高い第3の充填材40で、膜厚を調整することができる。
【0054】
研磨レートの低い第2の充填材38の膜厚を最小限としても、平坦化できるため、製造に要する時間を短縮できる。又、充填材36,38,40の形成方法は、第1の実施の形態と同様に、硬度の異なる材料や、砥粒との化学反応の異なる材料を選択する方法や、スパッタにより充填材を形成する時、スパッタガス圧で、研磨レートを制御する方法や、充填材を、酸化珪素(SiO2)とし、研磨時の砥粒を、酸化セリアとした化学的機械的研磨(CMP)により研磨する方法を、適用できる。
【0055】
このように、高い製造効率、十分な製造マージンを確保した上で、高い平坦性をもったパターン媒体を製造可能である。
【実施例】
【0056】
[実施例1](充填および研磨)
図3のように、ガラス基板(ディスク基板)30上に、磁気ヘッド(垂直記録ヘッド)でライトする時の補助となるCoFe系軟磁性下地層、軟磁性下地層の結晶形態を切るためのTaアモルファス下地層、磁性層の結晶形態を制御するためのRu中間層、Co合金磁性層32、研磨をストップさせるためのTaストッパー層34を、DCスパッタにより形成した。
【0057】
ストッパー層34は、後のパターニング後に形成してもよい。またストッパー層34の材料は、Taに限らず、後に充填する充填材36よりも研磨されにくい材料であればよい。一般的には、TaやTaN、SiN、Ti、TiNなどを使用できる。
【0058】
さらに、パターン形成のためのレジストを塗布し、ナノインプリントを用いて、所定の凹凸パターンを有するガラスモールドの形状を転写した。このレジストのパターンをマスクとし、イオンミリングすることで、磁性膜32に、深さ約25nmの凹凸形状を形成した。最後に、酸素アッシングによりレジスト残渣を除去し、充填・平坦化する前までの凹凸形状のある媒体を作製した(図4参照)。
【0059】
次に、再び、スパッタ装置に戻し、RFスパッタリングにより、SiO2ターゲットを用い、3Pa(パスカル)のArガス圧で、20nmの第1の充填材36を成膜した。次に、Arガス圧を0.67Paとして、10nmの第2の充填材38を成膜し、更に、Arガス圧を3Paに戻して、15nmの第3の充填材40を成膜した(図7参照)。
【0060】
本実施例では、膜密度の大小により、研磨レートを制御しているが、充填材36,38,40は、研磨でレートが変化するものであれば、自由に選択することが出来る。たとえば、単純に、機械的硬度の高い、Ta、TaN、WN、TiNなどと、硬度の低いCu、Alなどを組み合わせて使用することも可能である。また、酸化セリアスラリーで研磨する場合は、酸化珪素の酸素量を変化させた材料でもよい。
【0061】
次に、酸化セリアを含むスラリー液およびスウェード調の研磨パッドを用いて、CMPを実施した。このとき、スラリーは、原液を純水で3倍に希釈している。
【0062】
比較のため、充填材を成膜する際に、第1の充填材のみを45nm成膜した従来構成(図13)を作成し、同様に,CMP研磨した媒体も作製した。
【0063】
パターン凸部上のSiO2層が、丁度なくなる標準研磨時間が、本実施例の媒体では、15分、比較媒体では、10分であることを事前に確認し、本実施例では、12分〜18分、比較例では、8分〜12分と、標準研磨時間の80%〜120%の時間で研磨を行った。
【0064】
更に、これら各媒体の研磨後の凹凸段差、および表面平均粗さ(Ra)を、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。
【0065】
図9は、標準研磨時間で規格化した時間を、横軸にし、表面粗さRaを縦軸にプロットした測定結果を示す。図10は、同様に、240nmのL/S(480nm周期のライン&スペース)部を測定した段差をプロットした測定結果を示す。図9及び図10において、点線が、比較媒体の測定結果であり、実線が、実施例の測定結果である。
【0066】
比較媒体と実施例の媒体との両者を比較すると、標準研磨時間でも、比較媒体の方が、表面粗さRa、段差ともに大きい。更に、研磨を続けた(研磨時間を長くした)場合、比較媒体は表面粗さRa、段差とも著しく大きくなってしまう。これに対し、本実施例の媒体は、研磨し続けても、表面粗さRaおよび段差の増加は僅かである。これにより、マージンを持って、平坦化加工が可能であることが、わかる。
【0067】
[実施例2](研磨レート制御1)
ガラス基板30上に、DCスパッタにより、実施例1で用いたTa研磨ストップ層34を30nm成膜した後、SiO2ターゲットを用い、RFスパッタにより、0.67Pa、3Pa、6Paで、酸化珪素を、それぞれ45nm成膜した。これらのサンプルを、スラリー原液を5倍に希釈した以外は、実施例1と同じ研磨方法で、研磨し、成膜レートを測定した。
【0068】
図11は、前記測定による、SiO2ターゲットのスパッタ時のガス圧を横軸に、研磨レートを縦軸にとった関係図である。ガス圧を変化させれば、研磨レートが、5倍以上の範囲で可変であることが分かる。
【0069】
[実施例3](研磨レート制御2)
ガラス基板30上に、DCスパッタにより、実施例1で用いたTa研磨ストップ層を、30nm成膜した後、SiO2ターゲットを用い、RFスパッタにより、SiO2を45nm成膜した。
【0070】
このとき、成膜時の全ガス圧を、3Paとし、アルゴンと酸素の流量比を変えることで、酸素分圧を、0〜0.35Paとした多数のサンプルを作成した。各サンプルについて、実施例1と同じ研磨方法で、研磨し、成膜レートを測定した。
【0071】
図12は、前記測定により、SiO2スパッタ時の酸素分圧(Pa)と研磨レート(nm/min)の関係図である。図12から、酸素分圧を変化させれば、研磨レートが、5倍程度までの範囲で可変であることがわかる。
【0072】
本実施例3では、SiO2ターゲットを用いたが、Siターゲットでも、酸素供給量を全般的に増やすことで、同様に酸素量を制御することが可能である。
【0073】
(他の実施の形態)
前述の実施の形態では、研磨ストップ層を、磁性膜のパターニング工程前に形成しているが、研磨ストッパ層34は、磁性膜のパターニング後に形成してもよい。磁気記録媒体を、磁気ディスクで説明したが、他の形状の磁気記録媒体にも、適用できる。又、ビットパターン媒体を例に説明したが、磁性のトラック間が、非磁性充填材で分離されたディスクリートトラック媒体にも、適用できる。更に、完全浮上型のヘッドで説明したが、一部接触するニアコンタクト型のヘッドにも適用できる。
【0074】
以上、本発明を実施の形態により説明したが、本発明の趣旨の範囲内において、本発明は、種々の変形が可能であり、本発明の範囲からこれらを排除するものではない。
【0075】
以上のように、本発明は、以下の事項を包含する。
【0076】
(付記1)
磁気記憶媒体の製造方法において、基板上に記録層を形成する工程と、前記記録層に所定の凸凹パターンと、前記凸凹パターンの凸部上に研磨ストッパ層とを形成する工程と、前記凸凹パターンの凹部と前記研磨ストッパ層上に、前記研磨ストッパ層よりも、研磨レートが高い第1の充填層を形成する工程と、前記第1の充填層上に、前記第1の充填層よりも研磨レートが低い第2の充填層を形成する工程と、前記研磨ストッパ層が露出するまで、前記第2の充填層と、前記第1の充填層とを研磨する工程とを有することを特徴とする磁気記憶媒体の製造方法。
【0077】
(付記2)
前記第2の充填層を形成する工程と、前記研磨する工程との間に、前記第2の充填層上に、前記第2の充填層よりも研磨レートが高い第3の充填層を形成する工程を更に有することを特徴とする付記1の磁気記憶媒体の製造方法。
【0078】
(付記3)
前記第1の充填層と前記第2の充填層とを、スパッタリング法により形成し、且つ前記スパッタリング法のガス圧により、前記第1の充填層と前記第2の充填層とのそれぞれの前記研磨レートを設定することを特徴とする付記1の磁気記憶媒体の製造方法。
【0079】
(付記4)
前記第1の充填層と前記第2の充填層と前記第3の充填層とを、スパッタリング法により形成し、且つ前記スパッタリング法のガス圧により、前記第1の充填層と前記第2の充填層と前記第3の充填層とのそれぞれの前記研磨レートを設定することを特徴とする付記2の磁気記憶媒体の製造方法。
【0080】
(付記5)
前記第1の充填層と前記第2の充填層とは、酸化珪素を含み、且つスパッタリング法により形成され、且つ前記スパッタリング法の酸素ガス分圧比により、前記第1の充填層と前記第2の充填層とのそれぞれの前記研磨レートを設定することを特徴とする付記1の磁気記憶媒体の製造方法。
【0081】
(付記6)
前記研磨する工程は、CeOを含む砥粒を用いる化学機械的研磨方法による研磨工程であることを特徴とする付記5の磁気記憶媒体の製造方法。
【0082】
(付記7)
前記第1の充填層と前記第2の充填層と前記第3の充填層とは、酸化珪素を含み、且つスパッタリング法により形成され、且つ前記スパッタリング法の酸素ガス分圧比により、前記第1の充填層と前記第2の充填層と前記第3の充填層とのそれぞれの前記研磨レートを設定することを特徴とする付記2の磁気記憶媒体の製造方法。
【0083】
(付記8)
前記研磨する工程は、CeOを含む砥粒を用いる化学機械的研磨方法による研磨工程であることを特徴とする付記7の磁気記憶媒体の製造方法。
【0084】
(付記9)
前記第1の充填層と前記第2の充填層の膜圧をそれぞれtF1,tF2、前記凹部の溝深さをdとする時、tF1<d、且つ(tF1+tF2)≧dを満たす膜圧に積層することを特徴とする付記1の磁気記憶媒体の製造方法。
【0085】
(付記10)
前記磁気記憶媒体は、前記凸凹パターンで形成されたサーボ領域とデータ領域とを有することを特徴とする付記1の磁気記憶媒体の製造方法。
【0086】
(付記11)
前記データ領域が、分離された磁性記録層で構成されたことを特徴とする付記10の磁気記憶媒体の製造方法。
【0087】
(付記12)
付記1乃至付記11のいずれかに記載に磁気記憶媒体の製造方法により製造された磁気記憶媒体と、前記磁気記憶媒体に対して情報の記録及び/再生を行うヘッドと、前記ヘッドの記録と再生動作を制御する制御回路とを有することを特徴とする情報記憶装置。
【産業上の利用可能性】
【0088】
記録層を形成する凸凹パターンを平坦化するため、高研磨レートの第1の充填材の上に、低研磨レートの第2の充填材を設けたため、研磨時間を長くすることなく、必要な部分のみが、低研磨レートとなるようにできる。これにより、製造効率、製造マージン等を損なうことなく、表面の高平坦性を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 磁気ディスク装置(情報記憶装置)
3 磁気ディスク(磁気記憶媒体)
4 スピンドルモータ
5 アクチュエータ
53 スライダ
30 基板
32 磁気記録層
34 研磨ストッパ層
36 第1の充填層
38 第2の充填層
40 第3の充填層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記憶媒体の製造方法において、
基板上に記録層を形成する工程と、
前記記録層に所定の凸凹パターンと、
前記凸凹パターンの凸部上に研磨ストッパ層とを形成する工程と、
前記凸凹パターンの凹部と前記研磨ストッパ層上に、前記研磨ストッパ層よりも、研磨レートが高い第1の充填層を形成する工程と、
前記第1の充填層上に、前記第1の充填層よりも研磨レートが低い第2の充填層を形成する工程と、
前記研磨ストッパ層が露出するまで、前記第2の充填層と、前記第1の充填層とを研磨する工程とを有する
ことを特徴とする磁気記憶媒体の製造方法。
【請求項2】
前記第2の充填層を形成する工程と、前記研磨する工程との間に、前記第2の充填層上に、前記第2の充填層よりも研磨レートが高い第3の充填層を形成する工程を更に有する
ことを特徴とする請求項1の磁気記憶媒体の製造方法。
【請求項3】
前記第1の充填層と前記第2の充填層とを、スパッタリング法により形成し、且つ前記スパッタリング法のガス圧により、前記第1の充填層と前記第2の充填層とのそれぞれの前記研磨レートを設定する
ことを特徴とする請求項1の磁気記憶媒体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の充填層と前記第2の充填層とは、酸化珪素を含み、且つスパッタリング法により形成され、
且つ前記スパッタリング法の酸素ガス分圧比により、前記第1の充填層と前記第2の充填層とのそれぞれの前記研磨レートを設定する
ことを特徴とする請求項1の磁気記憶媒体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の充填層と前記第2の充填層の膜厚をそれぞれtF1,tF2、前記凹部の溝深さをdとする時、tF1<d、且つ(tF1+tF2)≧dを満たす膜厚に積層する
ことを特徴とする請求項1の磁気記憶媒体の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載に磁気記憶媒体の製造方法により製造された磁気記憶媒体と、
前記磁気記憶媒体に対して情報の記録及び/再生を行うヘッドと、
前記ヘッドの記録と再生動作を制御する制御回路とを有する
ことを特徴とする情報記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−231836(P2010−231836A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77255(P2009−77255)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】