説明

磁気記憶媒体

【課題】銅と鉄の二元合金あるいは、銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金の磁気記憶媒体は、汚染による媒体の破損や、機械的強度による磁気媒体の破損が生じることなく、磁気記憶媒体あるいは磁気記憶媒体機能を有する。
【解決手段】溶解法により二元合金として、銅鉄合金、あるいは前記銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金を使用すれば、素材の圧延、伸張が容易に実現でき、そのような磁気記憶媒母材を用いて、磁気記憶媒体を作製することができ、銅と鉄の二元合金あるいは、前記二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金を使用することを特徴とする磁性材料による磁気記憶媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を磁気信号に変えまたは、磁気信号を直接磁気記憶媒体に転写する磁気記憶媒体に関わる。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気記憶媒体としてプラスチックに磁性体を塗布加工した磁気カード、またはプラスチックフィルムに磁性体を塗布加工した磁気テープ、ディスク上に磁性体を塗布加工した磁気ディスクなどが用いられて来た。
【特許文献1】特願平08−278828
【特許文献2】特願平09−193333
【特許文献3】特開平08−344494
【特許文献4】特開平04−263209
【特許文献5】特開平04−175553
【特許文献6】特開平08−282921
【非特許文献1】金属1971年10月15日号 頁99 川口寅之輔・小川紘一
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の、磁気記憶媒体であるプラスチックに磁性体を塗布加工した磁気カード、またはプラスチックフィルムに磁性体を塗布加工した磁気テープなどの場合、素材の耐熱性が悪いため、熱的な影響を受け易く、又、強度的にも弱いため、熱の影響を受ける環境による使用や、力が及ぶ部分では、伸びなどの影響による変質が生じ、情報の破損に通じる問題であった。一方、ガラスディスクの上に磁性体を塗布加工した磁気ディスクなどの場合は、表層に磁性体が塗布されているが、表層においては、傷や汚れの影響が生じ易く、又ガラスディスクの場合は、割れ易いという問題もあった。
【0004】
また、形状的に、ある程度の面積を必要とし、狭い幅で使用する例えば線状の磁気記憶媒体を形成することが難しかった。
また合金の製法において、溶解法を用いた以外の製法においては、金属の弾性がなく、脆く、容易に割れが生じるなどの不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来技術において、強度的な問題が媒体の劣化や損傷に繋がり問題となった。また、記憶媒体の必要面積の問題が媒体の大きさの制約から、磁気記憶媒体の小型化が困難であるなどの問題があった。
【0006】
従って、金属のような強度があり、媒体面積の制約が無い媒体があれば、薄板状あるいは線状に引き伸ばした素材を使用することにより、上記のような、汚染による媒体の破損や、機械的強度の問題から媒体の破損が生じることなく、また、線状の媒体が使えるならば、面積に制約されてきた媒体への利用や、線状バーコード磁気記憶媒体としての用途に有効である。
【0007】
また、その素材がバネ材の如き弾性を有すれば、紙、プラスチックなどの材料と併用することで、従来のクレジットカードの如きプラスチックカードの用途においても機械的強度、対汚染の上からも大幅に使い勝手の良いまた、寿命の長い、信頼性の高い磁気記憶媒体としての応用が行い得る。
【0008】
また、環境対策として、製造から廃棄までの履歴を管理することができる。
また、素材の特性、成分を記憶保持し、廃棄処理時において、廃棄処理方法などを記憶しておく媒体としての有用性に対しても、利用が可能となる。
環境対策をより効果的に行うために、機械部品や機械製品から一般製品やその包装・梱包資材まで幅広く磁気媒体は利用されることになる。
【0009】
そこで、溶解法により得られた銅と鉄の二元合金あるいは、前記銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金の磁気記憶媒体として応用することにより、前記強度、対汚染、弾力性において問題解決が可能であり、従来の磁気記憶媒体に比し、耐性の強い磁気記憶媒体が実現できる。
【0010】
一方、非特許文献1に示すように、銅と鉄の二元合金あるいは、前記銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金の磁気記憶媒体として応用は従来から考え方、試験的には存在していたが、実際に磁気記憶媒体を実現するには二元合金の脆さが問題となった。従って、圧延、線引き加工が極めて難しく、実用に至らなかった。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶解法により得られた銅と鉄の二元合金あるいは、前記銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金の磁気記憶媒体は、金属の強度を有し、またバネ材と同等以上の弾性を有し、媒体面積の制約が少ない、薄板状あるいは線状の加工性の良い磁気記憶媒体が得られ、従来の粉末合金等の製法では得られない銅と鉄の二元合金あるいは、前記銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金が得られる。前記溶解法により得られた銅と鉄の二元合金あるいは、前記銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金の磁気記憶媒体は、汚染による媒体の破損や、機械的強度による磁気媒体の破損が生じることなく、磁気記憶媒体あるいは磁気記憶媒体機能を有する製品や管理カードとしての使用が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に用いる前記溶解法により得られた銅50%と鉄50%の二元合金として造られた銅鉄合金の磁気記憶媒体の素材金属の600倍の金属顕微鏡の写真である。
図2に本発明の実施の例である当該溶解法により得られた銅と鉄の二元合金によって造られた銅鉄合金を線上に引き伸ばし、0.2mm径まで細めた後の磁気記憶媒体への電磁的記憶の書き込み電流と当該電流によって書き込まれた磁気信号を通常の磁気ヘッドにより読み取り作業を行ったときの読み取り出力電圧を示す。
【実施例】
【0013】
図1において、高周波炉を用いた溶解法による銅鉄合金の顕微鏡写真を示す。
図1において、黒色部分が銅鉄合金の縞状鉄1、白色部分が銅鉄合金の縞状鉄を覆う銅2である縞状を示す合金が観察できる。
本発明の実施に当たっては、100KW高周波炉を使用した。
【0014】
前記溶解法による銅鉄合金あるいは、前記銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金は、焼結金属による母材とことなり、脆さが無く、容易に熱間圧延にて板状、丸棒状に加工できる。
【0015】
前記溶解法による銅鉄合金あるいは前記銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金を熱間圧延にて板状、丸棒状に加工にものを更に、冷間板加工、棒状加工、線引き加工を施し、板状、棒状、線状の磁気記憶媒体となる素材金属を得ることができる。
【0016】
次に、前記溶解法による銅鉄合金あるいは前記銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金を熱間圧延にて板状、丸棒状に加工にものを更に、冷間板加工、棒状加工、線引き加工を施し、板状、棒状、線状の磁気記憶媒体となる素材金属を温度250℃から400℃で熱処理し、油冷し、磁気記憶媒体合金を得る。
【0017】
磁気記憶媒体として、板状、棒状、線状加工された素材金属の表面に、ニッケルあるいはクロムメッキを施し、あるいは、エポキシ樹脂・ポリミド、防錆塗料を施し、表面処理をすることによって、防錆、耐腐食性を具備した磁気記憶媒体とすることができる。
【0018】
図2に銅と鉄の前記銅鉄合金に温度250℃から400℃で熱処理し、油冷して得られた直径0.02mmの前記線状磁気記憶媒体を磁化させたときの電磁変換特性を示す。図2より横軸に励磁電流、その励磁電流によって書き込まれて磁場による読み取り発生電圧を縦軸に示す。
【0019】
図3に前記直径0.02mmの前記線状磁気記憶媒体を磁化し、記録を読み出したときの再生電圧の記録密度特性を示す。この場合、100FRPI以上までの記録が行い得ることを示す。
【0020】
図4は、0.02mmの前記線状磁気記憶媒体を図5の線状磁気記憶媒体の記憶書き込み、消去、読み取り装置12により、交番磁界を加えて磁化し、磁化した前記線状磁気記憶媒体を記憶書き込み、消去、読み取り装置12により再生された出力信号波形を示す。この場合の記録密度は、10FRPIとした。
【0021】
図5の線状磁気記憶媒体の記憶書き込み、消去、読み取り装置12において、消去信号発生器3は、磁気記憶消去ヘッド10に消去信号を送り、ワイヤに記憶されている磁気の消去を行う。記録信号発生器4は、磁気記憶書き込みヘッド9に接続されており、線状磁気記憶媒体に記憶書き込みを行う。記憶読み取り信号増幅器5は、磁気記憶読み取りヘッド11に接続されており、ワイヤに書き込まれた磁気信号の読み取りを行う。ワイヤ送り出しボビン6には、前記0.02mmの銅と鉄の二元合金の線状磁気記憶媒体が巻き上げてあり、反時計方向の回転によって、前記線状磁気記憶媒体を送り出す構造となっており、一方ワイヤ巻き取りボビン7は、前記線状磁気記憶媒体8に対して、一定のテンションを持ってこれも反時計方向に回転しながら、巻き取りを行う。
【0022】
図6に、4トラック型の磁気カード13を示す。トラック数は、読み取りヘッドに合わせ、任意に増やすことができ、また、書き込み、読み取り装置は、従来の装置で行うことができる。
【0023】
図7に磁気記憶型バーコードとして用いる磁気バーコードタグ15を示す。従来の光学式バーコードリーダに代え、磁気バーコードタグリーダを用いる以外は従来のバーコードリーダシステムの代替が行える。
【0024】
図8に二次元磁気バーコードカード17を示す。従来の二次元バーコードに代え、本発明による薄板状の磁気記憶媒体をカードとして使用した例である。板状磁気記憶媒体18は、媒体面積が広いため、情報書き込み量を増やすことができ、従って、情報量が多いカードへの応用として、有効である。
【0025】
図9に、本発明の磁気記憶媒体として、機械部品として平板型銅鉄合金を使用した場合の実施例を示す。例えば、円筒状機械部品19の表面の一部に板状あるいは、線状の本発明による磁気記憶媒体を接着、溶接など行い当該機械部品の管理に用いる他、廃棄処理時の成分情報や適正な廃棄、再利用方法に関する情報などを書き込み使用することができる。
円筒状機械部品の表面に接着された線状磁気記憶媒体20は、機械部品の円周方向に取り付けられており、回転時に、回転数、回転角度の読み取りとしても使用することができる。円筒状機械部品の表面に接着された板状磁気記憶媒体21や、円筒状機械部品の側面に接着された板状磁気記憶媒体22についても回転中に部品の使用状況や、使用履歴の書き込み、読み取りが行える。
【0026】
本発明による、溶解法により二元合金として、鉄および銅の合金、あるいは前記銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金を使用することを特徴とする磁性材料による磁気記憶媒体および、前記板状、薄板状、円筒状あるいは線状の磁気記憶媒体に金属あるいは樹脂フイルムによる表面処理を行ったことを特徴とする磁気記憶媒体は衝撃、その他機械的強度が高く、プラスチックのように熱に弱くないことから、フライトレコーダや列車運行履歴磁気記録装置、などの丈夫な磁気記憶媒体としての利用が効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、従来の磁気記憶媒体に代え、線状に磁気記憶するバーコードや、または、平板型銅鉄合金を使用し、二次元バーコードまた一般製品の管理、物品の廃棄時の素材再利用、廃棄処理方法、履歴の記憶など、耐汚染、耐腐食、対機械的強度を要する磁気記憶媒体に広く使用できる。
【0028】
図6、図7、図8および図9に示すように、バーコード、磁気カード、商品タグなどへの使用が効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に使用する銅50%と鉄50%の二元合金として造られた銅鉄合金の磁気記憶媒体の600倍の金属顕微鏡の写真である。
【図2】本発明の磁気記憶媒体による電磁変換特性のである。
【図3】本発明の磁気記憶媒体による再生電圧の記録密度特性である。
【図4】本発明の磁気記憶媒体による再生された信号波形である。
【図5】本発明の磁気記憶媒体による磁気記録、再生、消去を行う実施例を示す。
【図6】本発明の磁気記憶媒体として、磁気カードとした場合の実施例を示す。
【図7】本発明の磁気記憶媒体として、商品管理を行うためのタグとして使用した場合の実施例を示す。
【図8】本発明の磁気記憶媒体として、磁気カードとして平板型銅鉄合金を使用した場合の実施例を示す。
【図9】本発明の磁気記憶媒体として、機械部品として平板型銅鉄合金を使用した場合の実施例を示す。
【符号の説明】
【0030】
1:銅鉄合金の縞状鉄
2:銅鉄合金の縞状鉄を覆う銅
3:消去信号発生器
4:記録信号発生器
5:記憶読み取り信号増幅器
6:ワイヤ送り出しボビン
7:ワイヤ巻き取りボビン
8:銅鉄合金線
9:磁気記憶書き込みヘッド
10:磁気記憶消去ヘッド
11:磁気記憶読み取りヘッド
12:線状磁気記憶媒体の記憶書き込み、消去、読み取り装置
13:磁気カード
14:線状磁気記憶媒体
15:磁気バーコードタグ
16:線状磁気記憶媒体
17:二次元磁気バーコードカード
18:板状磁気記憶媒体
19:円筒状機械部品
20:円筒状機械部品の表面に接着された線状磁気記憶媒体
21:円筒状機械部品の表面に接着された板状磁気記憶媒体
22:円筒状機械部品の側面に接着された板状磁気記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解法により二元合金として、鉄60%以上から90%以下、残りの40%未満から10%未満を電解銅の比率とし、あるいは前記銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金を使用することを特徴とする磁性材料による磁気記憶媒体および、前記板状、薄板状、円筒状あるいは線状の磁気記憶媒体に金属あるいは樹脂フイルムによる表面処理を行ったことを特徴とする磁気記憶媒体。
【請求項2】
溶解法により二元合金として、鉄30%以上から60%未満、残りの70%未満から40%未満を電解銅の比率とし、あるいは前記銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金を使用することを特徴とする磁性材料による磁気記憶媒体および、前記板状、薄板状、円筒状あるいは線状の磁気記憶媒体に金属あるいは樹脂フイルムによる表面処理を行ったことを特徴とする磁気記憶媒体。
【請求項3】
溶解法により二元合金として、鉄10%以上から30%未満、残りの90%未満から70%未満を電解銅の比率とし、あるいは前記銅と鉄の二元合金に微量添加物として、コバルト、ニッケル、マンガン、クロムを加えて造られた銅鉄合金を使用することを特徴とする磁性材料による磁気記憶媒体および、前記板状、薄板状、円筒状あるいは線状の磁気記憶媒体に金属あるいは樹脂フイルムによる表面処理を行ったことを特徴とする磁気記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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