説明

磁気記録デイスク並びにその製造方法及び磁気記録再生方法

【目的】 重ね書き特性及び走行耐久性に優れ、記録波長が1.5μm以下の高密度にディジタルデータ記録ができる磁気記録ディスク並びにその製造方法及び磁気記録再生方法を提供する。
【構成】 非磁性支持体上に、導電性粒子を含有した非磁性層及び抗磁力が1400エルステット゛以上、配向度比が0.85以上であって0.5μm以下の高抗磁力、ランダム配向の薄層磁性層をこの順で、前記非磁性層の塗布液が湿潤状態にあるうちにその塗布液を塗布することにより形成する磁気記録ディスク及びその製造方法であり、ギャップ長δの磁気ヘッドと磁性層の厚さが1.25δ以下の磁性層厚を有する前記磁気記録ディスクとを用いて磁気記録及び再生を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高密度記録用の磁気記録ディスク並びにその製造方法及び磁気記録再生方法に関するものであり、特に最短記録波長が1.5μm以下である記録・再生方法に最適な磁気記録ディスク並びにその製造方法及び磁気記録再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気記録技術は、媒体の繰り返し使用が可能であること、信号の電子化が容易であり周辺機器との組み合わせによるシステムの構築が可能であること、信号の修正も簡単にできること等の他の記録方式にはない優れた利点を有することから、ビデオ、オーディオ、コンピューター用途等を始めとして様々な分野で幅広く利用されてきた。そして、機器の小型化、記録再生信号の質の向上、記録の長時間化、記録容量の増大等の要求に対応するために、記録媒体に対して記録密度のより一層の向上が常に望まれてきた。そのために磁性層の表面性の改良、磁性体粒子の分散性の改良、磁性体の改良が試みられてきた。
【0003】データの外部記憶媒体であるフロッピーディスクに対しても、近年のパソコンの普及、アプリケーション・ソフトの高度化、処理情報の増大の動向の中にあって、10Mバイト以上の高容量化が強く要求されるようになってきた。そして、RLL方式等の従来の1.5倍以上もの広い周波数成分領域を有する高密度符号を用いた記録システムが提案されており、フロッピーディスクに記録される記録信号の最短記録波長が1.5μm以下にもなろうとしている。そして、この記録密度の向上のためには、当然磁気ヘッドのギャップ長もさらに狭くなって、0.5μm以下になろうとしている。記録波長が短く記録密度の大きな記録を可能にするためには、まず第1に磁性層の抗磁力を高める必要がある。例えば、特開昭58−122623号公報、特開昭61−74137号公報等には、ディスク状媒体の磁性層に強磁性金属粉末を用いる方法が提案されている。
【0004】フロッピーディスク等のコンピューター用途の磁気記録方式では、記録波長の異なる記録信号の重ね書き(オーバーライト)が不可欠である。従来は、周波数で2倍の関係にある2種類の信号、1f及び2f信号の重ね書きができれば良かったが、前述のRLL方式では記録波長が短くなっただけではなく周波数比3:8の領域にある複数の信号の重ね書きが要求されている。以上のように記録波長が短く、記録周波数の差が大きい信号を使用する方式で、短波長信号を長波長信号の上にうまく重ね書きをするためには、前記の特開昭58−122623号公報、特開昭61−74137号公報等に開示されてるように、単に磁性層の磁気特性を向上させるだけでは限界があった。すなわち、先に記録されている長波長の記録信号の上に短波長の記録信号を重ね書きしても磁力線が磁性層の深いところまで達しないために、先に記録された長波長の信号が消去できなかった。この問題を解決するためには、磁性層の抗磁力を低下させるか、もしくは磁性層を薄くすることが有効であった。
【0005】しかしながら、磁性層の抗磁力を低下させることは、記録信号の分解能や再生出力が低下するので、高密度の記録が不可能であった。また、磁性層を薄くすると以下のような問題があった。即ち、通常、磁気記録ディスクには、帯電による磁性層表面へのゴミや埃などの付着するドロップ・アウトの発生を防止することが求められ、そのために磁性層中にカーボンブラックを添加することであるが、磁性層を薄くすると磁性層中に保持できるカーボンブラックの量にも限界があった。さらに、磁気特性を高く保持する上からも磁性層中へのカーボンブラックの添加はできるだけ避けることが望ましい。また、磁気記録ディスクへの記録信号が短波長になるほど、ドロップ・アウトの影響を大きく受けるようになり、走行耐久性も劣化させるので、この帯電性の問題は記録密度が高く大容量の磁気記録ディスクを設計する際の重要な課題となる。
【0006】帯電性の問題を改良する他の方法としては、磁性層と非磁性支持体との間にカーボンブラックなどを含有した非磁性層を設けた磁気記録媒体が提案されており、例えば、特開昭55−55432号公報、特開昭50−104003号公報、US3440091号公報、特開昭62−214513号公報、特開昭62−214514号公報、特開昭62−231417号公報、特開昭63−31027号公報等に開示されている。しかしながら、これらの先行技術に開示された磁気記録媒体の磁性層の厚さは現在求められている大容量磁気記録ディスクに対しては、充分に薄いものではなかった。
【0007】また、磁性層が薄くなるに従って剥離し易くなり、剥離した磁性層が新たなドロップ・アウトの発生要因となるのでこの問題にも対処する必要があった。そして、磁性層の剥離の問題は、非磁性支持体との間に非磁性層を形成しても改良する免れることはできなかった。以上のように、磁気記録ディスクとして大容量の媒体とするためには、上記の種々の課題に対処しなければならず、すべてを満足する手段は未だ提案されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、電磁変換特性が良好でかつ走行耐久性に優れる磁気記録媒体及びその製造方法を提供することである。特に、高記録密度での重ね書き特性が優れ、記録容量が大きい磁気記録ディスク及びその製造方法を提供することが本発明の目的である。本発明の他の目的は、記録容量が大きく重ね書き適性が優れたディジタルデータ記録再生方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記本発明の課題は、非磁性支持体上に非磁性層及び磁性層がこの順で形成されている磁気記録ディスクにおいて、該非磁性層は非磁性粒子及び結合剤樹脂を主体とした層であって且つ該非磁性粒子の一部もしくは全部が導電性粒子であり、該磁性層は強磁性粒子及び結合剤樹脂を主体とした層であって、前記磁性層の厚さは0.5μm以下、その抗磁力は1400エルステット゛以上、且つ前記磁性層中における前記強磁性粒子の配向度比は0.85以上であることを特徴とする磁気記録ディスクにより達成される。
【0010】本発明の磁気記録ディスクは、磁性層の抗磁力を1400エルステット゛以上にする事で、出力特性が良好になり、電磁変換特性が優れ、記録周波数の小さい高密度短波長のデジタルデータ記録を行った場合に優れた信頼性を示す。また、磁性層の厚さが0.5μm以下と極めて薄いので、短波長信号の重ね書きも良好に行うことができる。そして、磁性層と非磁性支持体との間に、導電性粒子を含有した非磁性層を設けることによって、帯電しにくくドロップ・アウトの発生の恐れが余りない走行耐久性に優れた磁気記録ディスクとすることができる。さらに、本発明においては配向度比が0.85以上にすることで磁気記録ディスクで要求される円周方向で均一の出力が達成される。
【0011】本発明の磁気記録ディスクを製造する際に、非磁性支持体上に非磁性粒子及び結合剤樹脂を主体とする非磁性層用塗布液を塗布して非磁性塗布層を形成し、該非磁性塗布層が湿潤状態にあるうちに強磁性粒子が結合剤樹脂溶液中に分散された磁性層用塗布液を前記非磁性塗布層の上に形成することによって、前記非磁性層に対する前記磁性層の密着が優れたものとなり磁性層の厚さが0.5μm以下と薄くても磁性層の剥離が起こりにくく走行耐久性に優れ、信頼性の高い磁気記録ディスクを得ることができる。
【0012】また、前記磁性層の強磁性粒子を強磁性金属粒子とすることにより磁性層の磁気特性の優れた磁気記録ディスクとすることができる。
【0013】本発明者等は、本発明の目的の一つである記録波長が短い高密度記録の大容量で且つ重ね書き適性に優れたディジタルデータ記録再生方法について検討した際に、磁気ヘッドのギャップ長と磁性層の厚さとの関係に注目して検討した結果、以下の方法を見いだし本発明の方法をなすに至った。即ち、0.50μm以下のギャップ長δを有する磁気ヘッドと非磁性支持体上に非磁性粒子を含有した非磁性層及び厚さ1.25δ以下、抗磁力1400エルステット゛以下、配向度比0.85以下である磁性層とがこの順で形成されている磁気記録ディスクとを用いて、最短記録波長が1.5μm以下の信号を記録・再生する磁気記録再生方法により上記目的を達成することができる。従来、出力損失の観点から記録波長との関係で好ましい磁性層の厚さが論じられてきたが、本発明の目的とするコンピュータ用途のディジタルデータ記録の分野で重要な重ね書き適性をも考慮した場合、好ましい磁性層の厚さは磁気ヘッドのギャップ長と強く相関していることが分かった。短波長記録用のギャップ長の短い磁気ヘッドを使用した場合、磁性層の厚さがそのギャップ長の1.25倍以下であれば、最短記録波長が1.5μm以下と極めて短くとも、特に重ね書き適性に優れた記録再生方法とすることができる。そして、記録条件が高密度になって、記録トラック幅50μm以下、トラック密度14トラック/mm以上であっても、本発明の記録再生方法を採用することにより、良好な記録再生を行うことができた。勿論、前記の本発明の磁気記録媒体を本発明の記録再生方法に使用することによって、良好な結果を得ることができる。
【0014】本発明の前記磁気記録ディスクの磁性層の厚さは、0.5μm以下であり、好ましくは、0.45μm以下である。磁性層の厚さの下限は特にないが、余り薄くなると再生出力が低下するので注意を要する。非磁性支持体上に形成する前記非磁性層及び前記磁性層の厚さは合計で、1乃至3.0μmの範囲にあればよい。
【0015】本発明の磁気記録ディスクの磁性層に使用される強磁性粒子には、特に制限はなく、従来から公知の、酸化鉄系粒子、酸化クロム系粒子、コバルト被着型酸化鉄系粒子、金属粒子、六方晶系フェライト粒子など各種の強磁性粒子を使用することができる。中でも、磁気特性の面から、強磁性金属粒子もしくは六方晶系フェライト粒子が望ましい。特に、FeまたはNiまたはCoを主成分(75重量%以上)とする強磁性金属粒子であることが本発明の目的を効果的に達成する上で好ましい。
【0016】本発明で使用できる磁性体粒子の粒子サイズをBET法による比表面積で表せば25〜80m2/gであり、好ましくは35〜60m2/gである。25m2/g以下ではノイズが高くなり、80m2/g以上では分散が困難になって、磁性層の表面性を良好にすることができないので好ましくない。また、X線回折分析で測定される結晶子サイス゛で表せば、450〜100オングストロ−ムであり、好ましくは350〜150オングストロ−ムである。
【0017】磁性体粒子のの含水率は0.01〜2重量%とするのが好ましい。結合剤樹脂の種類によって磁性体の含水率を最適化することが必要となる。磁性体粒子のpHは用いる結合剤樹脂との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12であるが、好ましくは6〜10である。特に、結合剤樹脂の分子中に極性基を有する場合、pHに留意することが望ましい。磁性体粒子は、必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は磁性体粒子に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。 磁性体粒子には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが500ppm以下であれば特に特性に影響を与えない。これらの強磁性粒子には所定の原子以外にAl、Si、S,Sc、Ti、V,Cr、Cu,Y,Mo,Rh,Pd,Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P,Co,Mn,Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。
【0018】これらの強磁性微粒子にはあとで述べる分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。強磁性粒子が強磁性金属粒子である場合には、少量の水酸化物、または酸化物を含んでもよい。強磁性金属粒子葉、公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法をあげることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。
【0019】このようにして得られた強磁性金属粒子は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に侵漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。また、本発明に用いられる強磁性粒子は空孔が少ないほうが好ましくその値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。また、強磁性粒子の針状比は12以下が好ましく10以下が望ましい。高記録密度を可能とするため、本発明の磁気記録ディスクは1400エルステット゛以上の抗磁力を有することが好ましい。さらに好ましくは、1500エルステット゛以上である。前記抗磁力は低すぎると自己減磁作用で信号出力の低下を招くため好ましくない。また、高すぎると磁気記録ヘッドによる磁化反転が困難になるため2500エルステット゛以下にすることが望ましい。
【0020】本発明の磁気記録ディスクの磁性層の強磁性粒子として使用できる六方晶フェライトとしては、典型的には平板状で平板面に垂直方向に磁化容易軸を有する強磁性粉末が挙げられる。六方晶フェライトの組成例としては、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等が挙げられ、具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、更に、一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等を挙げられ、特に好ましいものとしてはバリウムフェライト、ストロンチウムフェライトの各Co置換体である。また、上記六方晶フェライトにCo−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Ir−Zn等の元素を添加したものも使用することができる。六方晶フェライトは、通常、六角状の形状であり、その粒子径は六角板状の板の幅を意味し、電子顕微鏡を使用して測定する。本発明ではこの粒子径を0.01〜0.2μm、特に好ましくは0.03〜0.1μmの範囲に規定するものである。また、該微粒子の平均厚さ(板厚)は、0.001〜0.2μm程度であるが、特に0.003〜0.05μmが好ましい。更に、板状比(粒子径/板厚)は、1〜10であり、好ましくは3〜7である。また、これら六方晶フェライト微粉末のBET法による比表面積(SBET )は25〜70m2 /gが好ましい。また、六方晶フェライト微粉末の飽和磁化量は、50emu/g以上が好ましく、50emu/gより小さいと、充分な再生出力が得られなくなり、高密度記録に適さなくなる。
【0021】飽和磁化量及び抗磁力の測定はVSM−PI(東英工業製)を用い最大印加磁場10KOeとした。また比表面積の測定はカンターソーブ(US.カンタークロム社製)を用いた。250℃、30分間窒素雰囲気で脱水後BET一点法(分圧0.30)で測定した。本発明の磁気記録ディスクの残留磁束密度としては、1500G(ガウス)以上であることが望ましい。
【0022】また、本発明の磁気記録ディスクの磁性層中における磁性粒子の配向度比は0.85以上がこのましく望ましくは0.90以上更には0.95以上が最適である。 配向度比はディスク状媒体の円周方向の最小角型比を最大角型比で除した値であり、その値が大きいほど円周方向における出力の変動が少なくなり、磁気記録ディスクとして好ましいものとなる。配向度比を0.85以上にするためには上層磁性層が未乾燥の状態にあるところで、例えば、特公平3−41895号公報に開示されているような永久磁石を使用したランダム配向法、特開昭63−148417号公報、特開平1ー300427号公報、特開平1ー300428公報などに開示されている交流磁場を印加する方法が使用できる。この場合、強磁性金属粒子の針状比が12以下、望ましくは、10以下であることが配向度比0.85以上にするためには必要である。
【0023】本発明の磁気記録ディスクにおける非磁性層は、非磁性粒子と結合剤樹脂を主体とする層であって、その非磁性粒子の一部がカーボンブラック、グラファイト等の導電性粒子であることが必要である。非磁性層の非磁性粒子中における導電性粒子の比率は、本発明の磁気記録ディスクの帯電を防止する観点から、3重量%以上、望ましくは10重量%以上である。
【0024】非磁性層の厚さは、0.5〜10μm、望ましくは0.5〜5μmである。非磁性層の厚さが余り薄いと、磁気記録ディスクの帯電を防止できなくなり、また余り厚いと磁気ヘッドとの当たりが劣化するので好ましくない。
【0025】前記非磁性層中に含有する導電性粒子としては、ゴム用ファ−ネス、ゴム用サ−マル、カラ−用ブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等を用いることができる。前記カーボンブラックの比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5mμ〜300mμ、PHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/CC、が好ましい。本発明に用いられるカ−ボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800,700、VULCAN XC−72、旭カ−ボン社製、#80、#60,#55、#50、#35、三菱化成工業社製、#2400B、#2300、#900,#1000#30,#40、#10B、コンロンビアカ−ボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50,40,15などがあげられる。
【0026】カ−ボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カ−ボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。本発明の磁気記録ディスクの非磁性層で使用できるカ−ボンブラックは例えば「カ−ボンブラック便覧」カ−ボンブラック協会編 を参考にすることができる。これら導電性粒子であるカーボンブラック及び前述の非磁性粉はあらかじめ結合剤で分散処理した後、分散液中に添加してもかまわない。
【0027】本発明の磁気記録ディスクの非磁性層に使用する前記導電性粒子以外の非磁性粒子に特に制限はない。具体的には、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどが単独または組合せで使用される。これら非磁性粉末の粒子サイズは0.01〜2μが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/g、が好ましい。本発明に用いられる非磁性粉末の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでも良い。本発明に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、住友化学社製、AKP−20AKP−30,AKP−50、HIT−50、日本化学工業社製、G5,G7,S−1、戸田工業社製、TF−100,TF−120,TF−140、などがあげられる。
【0028】カ−ボンブラック等を磁性層にも使用することにより、本発明の磁気記録ディスクの帯電がより一層防止することができ、さらに走行耐久性なども改良することができる。但し、磁性層にカーボンブラック等の導電性粒子を含有させる場合、磁気特性を保持する観点から、その添加量は、非磁性層の場合ほど多く使用することができない。その望ましい添加量としては、磁性粒子100重量部当たり、10重量部以下に止めるべきである。磁性層中におけるカ−ボンブラックの機能は、磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカ−ボンブラックにより異なる。従って本発明に使用されるこれらのカ−ボンブラックは下層、上層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、PHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。例えば、下層の導電性の高いカ−ボンブラックを用ることにより帯電を防止し、上層に粒子径の大きいカ−ボンブラックを用い摩擦係数を下げるなどがあげられる。
【0029】本発明の磁気記録ディスクの磁性層及び非磁性層における結合剤樹脂としては、従来公知の熱可塑系樹脂、熱硬化系樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。熱可塑系樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1000〜200000、好ましくは10000〜100000、重合度が約50〜1000程度のものである。このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコ−ル、マレイン酸、アクルリ酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラ−ル、ビニルアセタ−ル、ビニルエ−テル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコ−ン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネ−トプレポリマ−の混合物、ポリエステルポリオ−ルとポリイソシアネ−トの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があげられる。
【0030】これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を上層、または下層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコ−ル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、中から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれらにポリイソシアネ−トを組み合わせたものがあげられる。
【0031】ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエ−テルポリウレタン、ポリエ−テルポリエステルポリウレタン、ポリカ−ボネ−トポリウレタン、ポリエステルポリカ−ボネ−トポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、COOM,SO3M、OSO3M、P=O(OM)2、 O−P=O(OM)2、(以上につきMは水素原子、またはアルカリ金属塩基)、OH、NR2、N+R3(Rは炭化水素基)エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものををもちいることが好ましい。このような極性基の量は10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。特に、磁性層の強磁性粒子に強磁性金属粒子や六方晶系フェライト粒子を使用する場合は、その分散が他の強磁性粒子よりも困難であるので、上記の極性基を含有した結合剤樹脂を使用することにより、強磁性粒子の分散性を高めることができるので有効である。
【0032】本発明の磁気記録ディスクに用いられるこれらの結合剤の具体的な例としてはユニオンカ−バイト社製 VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD,VROH,VYES,VYNC,VMCC,XYHL,XYSG,PKHH,PKHJ,PKHC,PKFE,日信化学工業社製、MPR−TA、MPR−TA5,MPR−TAL,MPR−TSN,MPR−TMF,MPR−TS、MPR−TM、電気化学社製1000W、DX80,DX81,DX82,DX83、日本ゼオン社製MR110、MR100、400X110A、日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バ−ノックD−400、D−210−80、クリスボン6109,7209,東洋紡社製UバイロンR8200,UR8300、RV530,RV280、大日精化社製、ダイフェラミン4020,5020,5100,5300,9020,9022,7020,三菱化成社製、MX5004,三洋化成社製、サンプレンSP−150,旭化成社製、サランF310,F210等が挙げられる。
【0033】本発明の磁気記録ディスクの磁性層中における結合剤樹脂は強磁性粒子に対し、5〜50重量%の範囲、好ましくは10〜30重量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜30重量%、ポリウレタン樹脂合を用いる場合は2〜20重量%、ポリイソシアネ−トは2〜20重量%の範囲でこれらを組み合わせて用いるのが好ましい。本発明において、ポリウレタンを用いる場合はガラス転移温度が−50〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.05〜10Kg/cm2、降伏点は0.05〜10Kg/cm2が好ましい。
【0034】本発明の磁気記録ディスクは前記磁性層及び前記非磁性層の二層からなる。従って、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネ−ト、あるいはそれ以外の樹脂の量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ上層と下層で変えることはもちろん可能である。
【0035】本発明にもちいるポリイソシアネ−トとしては、トリレンジイソシアネ−ト、4−4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,5−ジイソシアネ−ト、o−トルイジンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等のイソシアネ−ト類、また、これらのイソシアネ−ト類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネ−ト等を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製、コロネートL、コロネ−トHL,コロネ−ト2030、コロネ−ト2031、ミリオネ−トMRミリオネ−トMTL、武田薬品社製、タケネ−トD−102,タケネ−トD−110N、タケネ−トD−200、タケネ−トD−202、住友バイエル社製、デスモジュ−ルL,デスモジュ−ルIL、デスモジュ−ルNデスモジュ−ルHL,等がありこれらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで磁性層及び非磁性層の双方に使用することができる。
【0036】本発明の磁気記録ディスクの製造において、非磁性層上に磁性層を形成するのに非磁性支持体上に塗布された非磁性層用塗布層がまだ湿潤状態にあるうちに、磁性層用塗布液をその上に塗布するいわゆるウェット・オン・ウェット方式の塗布方法を採用するのが好ましい。この塗布方式を採用することにより、非磁性層に対する磁性層の密着性を高めることができ、本発明のように磁性層の厚さが0.5μmと非常に薄くとも磁性層の剥れがなく、ドロップ・アウトが生じにくい走行耐久性の優れた磁気記録ディスクを得ることができる。従来の方法のように、非磁性塗布液を塗布、乾燥して非磁性層を形成してからその上に磁性層を塗布する方式では、磁性層が極めて薄いためか本発明の磁気記録ディスク場合、非磁性層と磁性層との密着性が充分でなく非磁性支持体上に形成された層として、2層が一体的な構造になり難い。
【0037】前記のウェット・オン・ウェット方式の具体的な方法としては、(1)磁性塗料で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置によりまず下層を塗布し、その層がまだ湿潤状態にあるうちに、例えば、特公平1−46186号公報、特開昭60−238179合公報及び特開平2−265672号公報に開示されている非磁性支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により上層を塗布する方法、(2) 特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報及び特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵した塗布ヘッドにより、下層の塗布液及び上層の塗布液をほぼ同時に塗布する方法、(3)特開平2−174965号公報に開示されているバックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により、上層及び下層をほぼ同時に塗布する方法、等が挙げられる。
【0038】なお、塗布液中に分散された粒子の凝集を防止するために、例えば、特開昭62−95174号公報及び特開平1−236968号公報に開示されているような方法により、塗布ヘッド内部の塗布液に剪断力を付与することが望ましい。また、ウェット・オン・ウェット塗布方式で留意すべきこととして、塗布液の粘弾性特性(チクソトロピック性)がある。即ち、上層と下層の塗布液の粘弾特性の差が大きいと塗布した際に、上層塗布層と下層塗布層との界面で液の混じり合いが起こり、本発明のように上層の磁性層の厚さが非常に薄い場合、磁性層の表面性が低下するなどの問題を引き起こし易い。塗布液の粘弾性をできるだけ近づけるためには、まず、上層と下層の分散粒子を同一にすることが効果的であるが、本発明の場合は、それができないので、磁性層の塗布液中で磁性粒子が磁性により形成されるストラクチャー構造がもたらす構造粘性と合わせるために、下層の非磁性層塗布液の非磁性粒子としてカーボンブラックのように構造粘性を形成し易い粒子を使用することが望ましい。粒子サイズの小さい非磁性粒子を使用することも有効である。例えば、1μm以下の酸化チタン、酸化アルミ等の粒子では、適度な凝集により粒子の構造粘性を有した塗布液となり易い。
【0039】本発明の磁気記録ディスクの磁性層中には、潤滑剤や研磨剤などを始めとする種々の機能を有する材料が添加できる。そのほか、帯電防止剤、分散剤、可塑剤、防黴剤等が添加できる。潤滑剤としては、従来から知られている各種の液体潤滑剤、固体潤滑剤を使用することができる。 例えば、ジアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個)、ジアルコキシポリシロキサン(アルコキシは炭素数1〜4個)、モノアルキルモノアルコキシポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個、アルコキシは炭素数1〜4個)、フェニルポリシロキサン、フロロアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個)などのシリコンオイル、グラファイト等の導電性微粉末、二硫化モリブデン、二硫化タングステンなどの無機粉末、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン塩化ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等のプラスチック微粉末;α−オレフィン重合物、常温で液状の不飽和脂肪族炭化水素(n−オレフィン二重結合が末端の炭素に結合した化合物、炭素数約20)、炭素数12〜20個の一塩基性脂肪酸と炭素数3〜12個の一価のアルコールから成る脂肪酸エステル類、フルオロカーボン類等が使用できる。中でも脂肪酸エステルがもっと好ましい。
【0040】脂肪酸エステルの原料となる アルコールとしてはエタノール、ブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、2−メチルブチルアルコール、2−ヘキシルデシルアルコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、s−ブチルアルコール等の系モノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ソルビタン誘導体等の多価アルコールが挙げられる。同じく脂肪酸としては酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、アラキン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、パルミトレイン酸等の脂肪族カルボン酸またはこれらの混合物が挙げられる。脂肪酸エステルとしての具体例は、ブチルステアレート、s−ブチルステアレート、イソプロピルステアレート、ブチルオレエート、アミルステアレート、3−メチルブチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレート、ブチルパルミテート、2−エチルヘキシルミリステート、ブチルステアレートとブチルパルミテートの混合物、ブトキシエチルステアレート、2−ブトキシ−1−プロピルステアレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルをステアリン酸でアシル化したもの、ジエチレングリコールジパルミテート、ヘキサメチレンジオールをミリスチン酸でアシル化してジオールとしたもの、グリセリンのオレエート等の種々のエステル化合物を挙げることができる。
【0041】さらに、磁気記録媒体を高湿度下で使用するときしばしば生ずる脂肪酸エステルの加水分解を軽減するために、原料の脂肪酸及びアルコールの分岐/直鎖、シス/トランス等の異性構造、分岐位置を選択することがなされる。これらの潤滑剤は結合剤100重量部に対して0.2〜20重量部の範囲で添加される。潤滑剤としては、更に以下の化合物を使用することもできる。即ち、シリコンオイル、グラファイト、二硫化モリブデン、窒化ほう素、弗化黒鉛、フッ素アルコール、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステル、二硫化タングステン等である。本発明で使用されるこれら潤滑剤の商品例としては、日本油脂社製、NAA−102,NAA−415,NAA−312,NAA−160,NAA−180,NAA−174,NAA−175,NAA−222,NAA−34,NAA−35,NAA−171,NAA−122、NAA−142、NAA−160、NAA−173K,ヒマシ硬化脂肪酸、NAA−42,NAA−44、カチオンSA、カチオンMA、カチオンAB,カチオンBB,ナイミ−ンL−201,ナイミ−ンL−202,ナイミ−ンS−202,ノニオンE−208,ノニオンP−208,ノニオンS−207,ノニオンK−204,ノニオンNS−202,ノニオンNS−210,ノニオンHS−206,ノニオンL−2,ノニオンS−2,ノニオンS−4,ノニオンO−2、ノニオンLP−20R,ノニオンPP−40R,ノニオンSP−60R、ノニオンOP−80R、ノニオンOP−85R,ノニオンLT−221,ノニオンST−221,ノニオンOT−221,モノグリMB,ノニオンDS−60,アノンBF,アノンLG,ブチルステアレ−ト、ブチルラウレ−ト、エルカ酸、関東化学社製、オレイン酸、竹本油脂社製、FAL−205、FAL−123、新日本理化社製、エヌジェルブLO、エヌジョルブIPM,サンソサイザ−E4030,、信越化学社製、TA−3、KF−96、KF−96L、KF96H、KF410,KF420、KF965,KF54,KF50,KF56,KF907,KF851,X−22−819,X−22−822,KF905,KF700,KF393,KF−857,KF−860,KF−865,X−22−980,KF−101,KF−102,KF−103,X−22−3710,X−22−3715,KF−910,KF−3935,ライオンア−マ−社製、ア−マイドP、ア−マイドC,ア−モスリップCP、ライオン油脂社製、デオミンTDO、日清製油社製、BA−41G、三洋化成社製、プロファン2012E、ニュ−ポ−ルPE61、イオネットMS−400,イオネットMO−200 イオネットDL−200,イオネットDS−300、イオネットDS−1000イオネットDO−200などがあげられる。
【0042】研磨剤の具体例としては、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモ−ス6以上の公知の材料が単独または組合せで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90%以上であれば効果にかわりはない。これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5%、PHは2〜11、比表面積は1〜30m2/g、が好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。特に、望ましい研磨剤の具体的な例としては、住友化学社製、AKP−20AKP−30,AKP−50、HIT−50、日本化学工業社製、G5,G7,S−1、戸田工業社製、100ED、140ED、などがあげられる。これらの研磨剤はあらかじめ結合剤で分散処理したのち磁性塗料中に添加してもかまわない。本発明の磁気記録媒体の磁性層表面および磁性層端面に存在する研磨剤は5個/100μm2以上が好ましい。磁性層中に添加される研磨剤の量は、通常、強磁性粒子100重量部当たり、3乃至20重量部である。研磨剤の添加量が少ないと磁気記録ディスクの走行耐久性が充分でなく、また多すぎると出力の低下を招くので望ましくない。
【0043】磁性層中に添加される以上の添加剤は、必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物 等の不純分がふくまれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。下層の非磁性層中にも磁性層と同じ様な各種の添加剤を添加してもよい。特に、本発明では、上層の磁性層が極めて薄いので潤滑剤が充分に保持できないという事情もあり、下層の非磁性層に潤滑剤を含有させておくことによって、磁性層中に適宜補給できるようにし、本発明の磁気記録ディスクの走行性をさらに改善することができる。また本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性塗布液を製造するどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に磁性体と混合する場合、磁性体と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
【0044】本発明で用いられる有機溶媒は任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、イソブチルアルコ−ル、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノール、などのアルコ−ル類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコ−ル等のエステル類、グリコ−ルジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、などのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、などの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン、等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等のものが使用できる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分がふくまれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は必要ならば磁性層と下層でその種類、量を変えてもかまわない。
【0045】上層の磁性層用塗布液に揮発性の高い溶媒をもちい表面性を向上させる、下層の非磁性層塗布液に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性をあげ、下層の非磁性層塗布液には溶解性パラメ−タの高い溶媒を用い充填度を上げるなどがその例としてあげられるがこれらの例に限られたものではないことは無論である。
【0046】本発明に用いられる非磁性支持体はポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルロ−ストリアセテ−ト、ポリカ−ボネ−ト、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、などの公知のフィルムが使用できる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などをおこなっても良い。本発明の磁気記録ディスクの非磁性支持体の厚さは、1〜100μm、望ましくは20〜85μmである。また、非磁性支持体性とその上の非磁性層との間に密着性向上のためのポリエステル樹脂等からなる下塗り層を設けてもかまわない。これらの厚みは、通常、0.01〜2μ、望ましくは、0.05〜0.5μmである。本発明の磁気記録媒体の非磁性層及び磁性層は、非磁性支持体の片面もしくは両面に設けられる。
【0047】本発明の目的を有効に達成するには、非磁性支持体の表面粗さは、中心線平均表面粗さ(Ra)(カットオフ値0.25mm)で0.03μm以下、好ましくは0.02μm以下、さらに好ましくは0.01μmμ以下のものを使用するのが望ましい。また、これらの非磁性支持体は単に前記中心線平均表面粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて非磁性支持体に添加されるフィラ−の大きさと量により自由にコントロ−ルされるものである。これらのフィラ−の一例としては、Ca,Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機樹脂微粉末があげられる。本発明に用いられる非磁性支持体のウエブ走行方向のF−5値は好ましくは5〜50Kg/mm2、ウエブ幅方向のF−5値は好ましくは3〜30Kg/mm2であり、ウエブ長い手方向のF−5値がウエブ幅方向のF−5値より高いのが一般的であるが、特に幅方向の強度を高くする必要があるときはその限りでない。また、支持体のウエブ走行方向および幅方向の100℃30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに望ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに望ましくは0.5%以下である。破断強度は両方向とも5〜100Kg/mm2、弾性率は100〜2000Kg/mm2が望ましい。
【0048】本発明の磁気記録ディスク用磁性層の磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明に使用する磁性体粒子、結合剤樹脂、非磁性粒子、カ−ボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程のどの段階で添加してもかまわない。 また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術のを一部の工程としてを用いることができることはもちろんであるが、混練工程では連続ニ−ダや加圧ニ−ダなど強い混練力をもつものを使用することにより、本発明の磁気記録ディスクの残留磁束密度(Br)を高くすることができる。連続ニ−ダまたは加圧ニ−ダを用いる場合は磁性体粒子と結合剤樹脂のすべてまたはその一部(ただし全結合剤樹脂の30重量%以上であることが望ましい)および磁性粒子100重量部に対し15〜500重量部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106388号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。本発明では、特開昭62−212933号公報に開示されているような同時重層塗布方式を用いることによりより効率的に生産することができるる。
【0049】さらに、磁性層の表面を平滑にする加圧成形処理で使用するカレンダロ−ルとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロ−ルを使用する。また、金属ロ−ル同志で加圧成形処理することもできる。加圧成形の処理温度は、望ましくは70℃以上、さらに望ましくは80℃以上である。線圧力は望ましくは200Kg/cm、さらに好ましくは300Kg/cm以上である。
【0050】本発明の磁気記録媒体の磁性層面の表面固有抵抗は望ましくは105〜5×109オ−ム/sq、磁性層の0.5%伸びでの弾性率はウエブ塗布方向、幅方向とも望ましくは100〜2000Kg/mm2、破断強度は望ましくは1〜30Kg/cm2、磁気記録媒体の弾性率はウエブ塗布方向、幅方向とも望ましくは100〜1500Kg/mm2、残留のびは望ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は望ましくは1%以下、さらに望ましくは0.5%以下、もっとも望ましくは0.1%以下である。
【0051】磁性層中に含まれる残留溶媒は望ましくは100mg/m2以下、さらに望ましくは10mg/m2以下であり、磁性層に含まれる残留溶媒が非磁性層に含まれる残留溶媒より少ないほうが好ましい。磁性層が有する空隙率は磁性層、非磁性層とも望ましくは30容量%以下、さらに望ましくは10容量%以下である。非磁性層の空隙率が磁性層の空隙率より大きいほうが好ましいが非磁性層の空隙率が5%以上であれば小さくてもかまはない。
【0052】本発明の磁気記録媒体は非磁性層と磁性層を有するが、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くするなどである。
【0053】本発明の磁気記録ディスクを使用することにより、高密度の磁気記録が可能であり、特に、コンピューター情報を保存・読み出しに使用されるディジタルデータ記録媒体に必須の重ね書き特性が、例えば、最短記録波長が1.5μm以下であるような高密度記録になっても低下せず且つ走行耐久性も低下しないという利点を有する。その利点は、本発明の磁気ディスクの構成及びその製造方法によってもたらされる前記の特徴によるものであり、特に、非磁性支持体上に形成する層の前記構成及びその層の前記塗布方法に起因している。また、ディジタルデータ記録再生に使用する磁気ヘッドのギャップ長δと磁性層の厚さの関係を、磁性層の厚さを1.25δ以下として、且つその磁性層の下に隣接して導電性粒子を含有した非磁性層を形成した磁気記録ディスクを使用することによっても、記録密度の大きいディジタルデータ記録・再生を有効に行うことができる。その磁気記録ディスクの抗磁力は1400エルステット゛以上で、配向度比は0.85以上であることが好ましい。即ち、磁気ヘッドのギャップ長の1.25倍よりも磁性層の厚さを薄くすることにより、最短記録波長が1.5μm以下であっても重ね書き適性に問題がなく、特に、近年提案されているRLL方式の記録方式にも良好な特性が期待でき、且つ本発明の磁気ディスクの層構成にすることにより、記録波長が短くなることによる走行耐久性の劣化がないようなディジタルデータ記録を行うことができる。本発明の磁気記録ディスクをギャップ長がその磁性層の厚さの1/1.25以上である磁気ヘッドをと組み合わせて使用すれば良好な記録・再生がなされることはいうまでもない。
【0054】本発明の磁気記録再生方法に使用する磁気ヘッドに特に制限はないが、短波長記録に望ましい磁気ヘッドとしては、メタルインギャップ構造のものが好ましくメタルギャップの材料としては、センダスト系合金やアモルファス系の高透磁率の合金が好ましい。前記ギャップ材料の飽和磁化は、8,000ガウス以上、好ましくは10,000ガウス以上である。磁気ヘッドのギャップ長としては、0.5μm以下であり、望ましくは0.45μm以下である。本発明の磁気記録・再生方法が特に効果的なのは、最短記録波長即ち定周速度の場合、磁気記録ディスクの内周面で測られる最短の記録波長が1.5μm以下の場合であり、さらに短くなって1.0μm以下になるとより一層のその効果は顕著となる。
【0055】また、記録波長だけではなく、トラック密度が大きくなっても本発明の磁気記録再生方法は、有効であり、信号のクロストークが少なく、ピークシフトの分離性に優れた記録ができる。そのため、記録トラック幅が50μm以下、トラック密度14トラック/mm以上の条件で、最短記録波長が1.5μm以下の記録をしても重ね書き適性に優れ、走行耐久性も良好な記録・再生が可能である。本発明の新規な特徴を以下の実施例及び比較例によって、具体的に説明する。
【0056】
【実施例】
(非磁性層用塗布液及び磁性層用塗布液の調整)。
<非磁性層用塗布液A>…導電性粒子含有非磁性粒子酸化チタンTiO2 … 80重量部(石原産業製 TY50、平均粒子径:0.34μm、BET法による比表面積:5.9m2/g、pH5.9)
カーボンブラック … 20重量部(平均一次粒子径 :16mμ、DBP吸油量 :80ml/100g、pH:8.0、BET法による比表面積:250m2/g、 揮発分:1.5重量%)
結合剤樹脂 塩化ビニル酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体 … 14重量部 (−N(CH3)3+Cl-の極性基を5×10-6eq/g含有、モノマー組成比: 86:13:1 重合度400)
ポリエステルポリウレタン樹脂 … 5重量部 (ネオヘ゜ンチルク゛リコール/カフ゜ロラクトンホ゜リオール/MDI=0.9/2.6/1、-SO3Na 基1×10-4eq/g含有)
sec−ブチルステアレート … 4重量部 ブトキシエチルステアレート … 2重量部 ブトキシエチルパルミテート … 2重量部 オレイン酸 … 1重量部 メチルエチルケトン … 200重量部<非磁性層用塗布液B>…導電性粒子含有せず非磁性粒子酸化チタンTiO2 … 80重量部(石原産業製 TY50、平均粒子径:0.34μm、BET法による比表面積:5.9m2/g、pH5.9)
結合剤樹脂 塩化ビニル酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体 … 14重量部 (−N(CH3)3+Cl-の極性基を5×10-6eq/g含有、モノマー組成比: 86:13:1 重合度400)
ポリエステルポリウレタン樹脂 … 5重量部 (ネオヘ゜ンチルク゛リコール/カフ゜ロラクトンホ゜リオール/MDI=0.9/2.6/1、-SO3Na 基1×10-4eq/g含有)
sec−ブチルステアレート … 4重量部 ブトキシエチルステアレート … 2重量部 ブトキシエチルパルミテート … 2重量部 オレイン酸 … 1重量部 メチルエチルケトン … 200重量部
【0057】
<磁性層用塗布液A>強磁性粒子 … 100重量部 (組成:Fe/Ni=96/4(原子比)、抗磁力:1620エルステット゛ 、BET法による比表面積:50m2/g、結晶子サイズ:195オンク ゛ストローム、粒子サイズ(平均長軸径):0.20μm、針状比:10、 飽和磁化量σs:130emu/g)
結合剤樹脂 塩化ビニル系共重合体 … 14重量部 (-SO3Na含有量:1×10-4 eq/g、重合度:300)
ポリエステルポリウレタン樹脂 … 5重量部 (ネオヘ゜ンチルク゛リコール/カフ゜ロラクトンホ゜リオール/MDI=0.9/2.6/1、 -SO3Na基を1×10-4 eq/g含有) α−アルミナ … 2重量部 (平均粒子サイズ0.3μm)
カ−ボンブラック … 0.5重量部 (粒子サイズ0.10μm)
イソヘキサデシルステアレート … 6重量部 オレイン酸 … 1重量部 メチルエチルケトン … 200重量部<磁性層用塗布液B>強磁性粒子 … 100重量部 (組成:Fe/Ni=96/4(原子比)、抗磁力:1470エルステット゛ 、BET法による比表面積:50m2/g、結晶子サイズ:195オンク ゛ストローム、粒子サイズ(平均長軸径):0.20μm、針状比:10、 飽和磁化量σs:130emu/g)
結合剤樹脂 塩化ビニル系共重合体 … 14重量部 (-SO3Na含有量:1×10-4 eq/g、重合度:300)
ポリエステルポリウレタン樹脂 … 5重量部 (ネオヘ゜ンチルク゛リコール/カフ゜ロラクトンホ゜リオール/MDI=0.9/2.6/1、 -SO3Na基を1×10-4 eq/g含有) α−アルミナ … 2重量部 (平均粒子サイズ0.3μm)
カ−ボンブラック … 0.5重量部 (粒子サイズ0.10μm)
イソヘキサデシルステアレート … 6重量部 オレイン酸 … 1重量部 メチルエチルケトン … 200重量部<磁性層用塗布液C>強磁性粒子 … 100重量部 (組成:Fe/Ni=96/4(原子比)、抗磁力:1320エルステット゛ 、BET法による比表面積:50m2/g、結晶子サイズ:195オンク ゛ストローム、粒子サイズ(平均長軸径):0.20μm、針状比:10、 飽和磁化量σs:130emu/g)
結合剤樹脂 塩化ビニル系共重合体 … 14重量部 (-SO3Na含有量:1×10-4 eq/g、重合度:300)
ポリエステルポリウレタン樹脂 … 5重量部 (ネオヘ゜ンチルク゛リコール/カフ゜ロラクトンホ゜リオール/MDI=0.9/2.6/1、 -SO3Na基を1×10-4 eq/g含有) α−アルミナ … 2重量部 (平均粒子サイズ0.3μm)
カ−ボンブラック … 0.5重量部 (粒子サイズ0.10μm)
イソヘキサデシルステアレート … 6重量部 オレイン酸 … 1重量部 メチルエチルケトン … 200重量部なお、強磁性粒子の粒子サイズ及び結晶子サイズは、以下のように測定した。
磁性体の粒径 : 透過型電子顕微鏡により長軸の平均粒子径を求めた。
結晶子サイズ : X線回折により強磁性粒子の(4,4,0)面と(2,2,0)面の回折線の半値巾の広がりから求めた。
【0058】以上の非磁性層用塗布液A並びにB及び磁性層用塗布液A,B並びにCの各組成物を、まず、連続ニ−ダで混練したのち、サンドミルを用いてさらに混連分散処理した。得られた分散液に、ポリイソシアネ−ト(日本ポリウレタン(株)製、コロネートL)を非磁性層用の分散液中には、10重量部、磁性層用分散液中には12重量部を加えて、さらにそれぞれに酢酸ブチル40重量部を加えて混連攪拌した後,1μmの平均孔径を有するフィルターを通して濾過し、非磁性層用塗布液A及び磁性層用塗布液A,B及びCを調整した。
【0059】(磁気記録ディスクの作成)
<ウェットオンウェット方式による重層塗布>前記の各非磁性層用塗布液と磁性層用塗布液を表1のように組み合わせて、下記の条件で磁気記録ディスク試料−1〜試料−12を作製した。厚さ62μmで表面粗さが中心線平均表面粗さRa(カットオフ値0.25mm)で0.01μmである、ポリエチレンテレフタレ−ト支持体上に、前記非磁性層用塗布液及び磁性層用塗布液を湿式同時重層塗布により、乾燥後の非磁性層の厚さが2μmになるように、また磁性層の乾燥後の厚さは、2.7、0.7、0.5、0.3μmになるように塗布した。 両層がまだ湿潤状態にあるうちに2つの交流磁場発生装置中を通過させ、磁性粒子のランダム配向処理をした。その際の二つの交流磁場の周波数、磁界強度は上流側から50Hz200Oe,120Hz1300eとした。更に乾燥後、7段のカレンダ装置(線圧300kg/cm、温度90℃)にて処理を行い、3.5インチサイズに打ち抜き表面を研磨テープによりバーニッシュを施した後3.5インチフロッピーディスクの所定の機構部品を使用し、3.5インチフロッピーディスクを作製した。
【0060】
【表1】


<逐次塗布方式による重層塗布>前記非磁性層用塗布液Aを乾燥後の厚さが2μmになるように塗布して、非磁性塗布層を形成し、乾燥して一度巻き取りを行った後に、その形成された非磁性層の上に前記磁性層塗布液Aを乾燥後の磁性層の厚さが0.3μmになるように塗布し、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに2つの交流磁場発生装置中を通過させた。ふたつの交流磁場の周波数、磁界強度は上流側から50Hz200Oe,120Hz1300eとした。更に乾燥後、7段のカレンダ装置(線圧300kg/cm、温度90℃)にて処理を行い、3.5インチサイズに打ち抜き表面を研磨テープによりバーニッシュを施した後3.5インチフロッピーディスクの所定の機構部品を使用し、3.5インチフロッピーディスク媒体の試料−13を作製した。なお、非磁性支持体の表面粗さ(Ra)は、三次元表面粗さ計(小坂研究所製)を用いカットオフ0.25mmで測定した。
【0061】(特性の評価)以上の様に得られたフロッピーディスクの各試料は下記の評価方法で測定しその特性を評価した。
<磁性層の抗磁力及び配向度比>振動試料型磁束計(東英工業製)を用い最大印加磁場5kOeで測定した。
<磁性層の厚さ>層断面の切片試料を作成して、走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−700型)による画像を撮影した断面写真から求めた。
<再生出力>東京エンジニアリング製ディスク試験装置SK606B型を用いギャップ長0.45μmと0.8μmの2種のメタルインギャップヘッド用い、それぞれ記録周波数625kHzで半径24.6mmの位置において記録した後ヘッド増幅機の再生出力をテクトロニクス社製オシロスコープ7633型で測定した。再生出力はギャップ長0.45μmのヘッドを用いた場合の媒体Aの出力を100として相対値で示した。
<重ね書き特性>前記試験装置を用い半径39.5mmの位置で、交流消磁済みサンプルに312.5kHz記録しアドバンテスト社製TR4171型スペクトラムアナライザで312.5KHz成分の出力O1(dB)を測定した後直ちに1MHzを重ね書きしその時の312.5KHz成分の出力O2(dB)から重ね書き O2−O1(dB)を求めた。
<走行耐久性>日本電気(株)製フロッピディスクドライブFD1331型を用い、記録周波数625kHzで全240トラックに記録した後半径が中心から37.25mmの位置において以下のフローを1サイクルとするサーモサイクル試験を実施した。このサ−モ条件下において、パス回数で1200万回まで走行させたときの走行状態をもって走行耐久性を評価した。
【0062】[サ−モサイクルフロー]
(25℃50%RH 1時間)→ 昇温 2時間 →(60℃20%RH 7時間)→ 降温 2時間 → (25℃50%RH 1時間) → 降温 2時間→ (5℃50%RH 7時間 )→昇温 2時間 →(25℃50%RH 1時間)
また50万パス毎に全トラックの出力、ドロップアウトの測定及び媒体表面外観の目視検査を行い出力が初期値の60%、または出力の45%以下の1ビット以上のドロップアウトが発生した場合この試験を中止した。
【0063】以上の評価結果について、磁性層の磁気特性に関しては表2、磁気記録特性については表3、走行耐久性については表4に示す。また、非磁性層及び磁性層の塗布方法の対比は表5に示す。
【0064】
【表2】


【0065】
【表3】


【0066】
【表4】


【0067】
【表5】


【0068】本発明の請求項1に記載された磁気記録ディスクのように、磁性層の厚さが0.5μm以下で、抗磁力が1400エルステット゛以上である試料は、出力、重ね書き特性がともに優れていた。また、磁気ヘッドのキ゛ャッフ゜長が0.80μmの場合は、0.40のものに比し出力が余り高くとれないことが分かった。そして、磁気特性のキ゛ャッフ゜長の1.25倍以下にある厚さの磁性層を有する磁気記録ディスクでは、1.25倍以上の厚さのものに比べて重ね書き特性が良好であった。非磁性層に導電性粒子が含有されていないフロッピーディスクの試料−10、試料−12及び試料−14では、走行耐久性が劣ることが分かった。さらに、非磁性層と磁性層の塗布をウェットオンウェットの湿式同時塗布を行った磁気記録ディスクは、走行耐久性に優れていることが分かった。
【0069】
【発明の効果】厚さが0.5μm以下と非常に薄く、抗磁力が1400エルステット゛以上、配向度比が0.85以上と高抗磁力で面内に等方的に配向した磁性層を有し、非磁性支持体と磁性層との間に導電性粒子を含有した非磁性層層を形成した重層構成にすることにより、重ね書き特性が良好で1.5μm以下の短波長記録ができしかも走行耐久性に優れたディジタルデータ記録用を得ることができる。そして、この磁気記録ディスクは、非磁性層と磁性層とを湿潤状態で重層塗布することにより走行耐久性がさらに高まる。また、キ゛ャッフ゜長δが0.5μm以下である磁気ヘッドと1.25δ以下の厚さの磁性層を有する上記の磁気記録ディスクとを用いて、記録・再生を行うことにより、重ね書き特性が良好な短波長のディジタルデータ記録を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 非磁性支持体上に非磁性層及び磁性層がこの順で形成されている磁気記録ディスクにおいて、該非磁性層は非磁性粒子及び結合剤樹脂を主体とした層であって且つ該非磁性粒子の一部もしくは全部が導電性粒子であり、また該磁性層は強磁性粒子及び結合剤樹脂を主体とした層であって、前記磁性層の厚さは0.5μm以下、その抗磁力は1400エルステット゛以上、且つ前記磁性層中における前記強磁性粒子の配向度比は0.85以上であることを特徴とする磁気記録ディスク。
【請求項2】 非磁性支持体上に非磁性粒子及び結合剤樹脂を主体とする非磁性層用塗布液を塗布して非磁性塗布層を形成し、該非磁性塗布層が湿潤状態にあるうちに強磁性粒子が結合剤樹脂溶液中に分散された磁性層用塗布液を前記非磁性塗布層の上に形成し、次いで乾燥を行って非磁性支持体上に非磁性層及び磁性層を形成する請求項1に記載の磁気記録ディスクの製造方法。
【請求項3】 前記磁性層の強磁性粒子が強磁性金属粒子である請求項1記載の磁気記録ディスク。
【請求項4】 0.50μm以下のギャップ長δを有する磁気ヘッドと非磁性支持体上に、その一部もしくは全部が導電性粒子である非磁性粒子を含有した非磁性層及び厚さ1.25δ以下、抗磁力1400エルステット゛以上、配向度比0.85以上である磁性層とがこの順で形成されている磁気記録ディスクとを用いて最短記録波長が1.5μm以下の信号を記録・再生する磁気記録再生方法。