磁気記録再生装置、磁気記録方法、及び磁気再生方法
【課題】磁気ディスクの記録密度を効率的に向上させることができる磁気記録再生装置、磁気ディスクに高密度で記録を書き込む磁気記録方法、及び高密度で磁気ディスクに書き込まれた記録を読み出す磁気再生方法を提供する。
【解決手段】磁気ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う記録再生装置において、磁気ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、磁気ディスクに記録ビットを形成し、情報信号の記録を行う、互いに異なるアジマス角を有する複数の記録ヘッドと、磁気ディスクに記録された情報信号の読み出しを行う複数の読み取りヘッドと、記録ヘッド及び前記読み取りヘッドを走査するためのヘッド送り機構と、記録ヘッド及び/又は前記読み取りヘッドにより記録及び再生する情報信号を増幅させる増幅部と、情報信号をA/D変換するA/Dコンバータと、記録データの再構成部とを備える。
【解決手段】磁気ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う記録再生装置において、磁気ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、磁気ディスクに記録ビットを形成し、情報信号の記録を行う、互いに異なるアジマス角を有する複数の記録ヘッドと、磁気ディスクに記録された情報信号の読み出しを行う複数の読み取りヘッドと、記録ヘッド及び前記読み取りヘッドを走査するためのヘッド送り機構と、記録ヘッド及び/又は前記読み取りヘッドにより記録及び再生する情報信号を増幅させる増幅部と、情報信号をA/D変換するA/Dコンバータと、記録データの再構成部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録再生装置、磁気記録方法、及び磁気再生方法に関し、より詳細には、磁気ディスクに高密度でデータの記録を行い、また高密度で書き込まれた記録の再生を行う磁気記録再生装置、磁気ディスクに高密度で記録を書き込む磁気記録方法、及び高密度で磁気ディスクに書き込まれた記録を読み出す磁気再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、可撓性を有する磁気ディスク(フレキシブルディスク)に対して磁気的に情報信号の記録及び再生を行う記録再生装置が提案され、広く普及している。
【0003】
ところで、近年では、記録再生装置に対する小型化・大容量化の要求が益々高まってきており、これに伴って磁気ディスクに対するより一層の高記録密度化を達成することが要求されている。
【0004】
磁気ディスクの記録密度の向上とは、同一面積により多くの記録ビットを形成することである。しかしながら、磁気ディスクの情報を記録できる面積は、磁気ディスクの大きさが変わらなければ同じである。従って、例えば特許文献1に示されるように、記録ビットの大きさを小さくすることにより、同一面積により多くの記録ビットを形成し、より多くの情報を記録することが提案されている。しかしながら、記録ビットの大きさを小さくして磁気ディスクの高記録密度化を図ると、隣接する記録ビット間から発生する磁気エネルギーも小さくなる。このため、情報を読み取って再生する際の読み取りヘッドの感度を高くしなければならないという問題があった。
【0005】
また、従来の記録再生装置では、例えば特許文献2に示されるように、一組の記録ヘッド及び読み取りヘッドを磁気ディスク上で走査させて情報を記録再生していた。すなわち、記録ヘッドで記録ビット同士が重ならないように記録ビットを形成して情報を記録し、読み取りヘッドでその記録された情報を読み取って再生していた。しかしながら、記録ビットは細長い形状であるため、その長手方向のデータ構造が冗長となってしまう。従って、同一面積に多くの記録ビットを形成することができず、磁気ディスクの記録密度の向上が弊害され、磁気ディスクの高記録密度化を達成することができなかった。
【特許文献1】特開2005−182974号公報
【特許文献2】特開2005−071464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述したような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、磁気ディスクの記録密度を効率的に向上させることができる磁気記録再生装置、磁気ディスクに高密度で記録を書き込む磁気記録方法、及び高密度で磁気ディスクに書き込まれた記録を読み出す磁気再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
磁気ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う記録再生装置において、本発明の上記目的は、前記磁気ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、前記磁気ディスクに記録ビットを形成し、情報信号の記録を行う、互いに異なるアジマス角を有する複数の記録ヘッドと、前記磁気ディスクに記録された情報信号の読み出しを行う複数の読み取りヘッドと、前記記録ヘッド及び前記読み取りヘッドを走査するためのヘッド送り機構と、前記記録ヘッド及び/又は前記読み取りヘッドにより記録及び再生する情報信号を増幅させる増幅部と、情報信号をA/D変換するA/Dコンバータと、記録データの再構成部とを備えたことを特徴とする磁気記録再生装置を提供することによって達成される。
【0008】
また、本発明の上記目的は、前記記録ヘッドの前記アジマス角は±45°以下であり、また前記読み取りヘッドは、前記記録ヘッドに対応するアジマス角を有する薄膜磁気センサで構成されることを特徴とする磁気記録再生装置を提供することによって、効果的に達成される。
【0009】
また、本発明の上記目的は、前記アジマス角は絶対値が同じで正負が異なる組合せであることを特徴とする磁気記録再生装置を提供することによって、より効果的に達成される。
【0010】
また、本発明の上記目的は、前記のいずれかの磁気記録再生装置を用いて、記録ディスク上にアジマス角が0°である記録ヘッドで記録ビット(φ0)を形成するステップと、該記録ビット(φ0)上に、0°以外のアジマス角(φ1)を有する記録ヘッドで、記録ビット(φ0)の一部が上書きされるように記録ビット(φ1)を形成するステップと、さらに、上書きされた記録ビット(φ1)の上に、さらに異なるアジマス角(φ2,3・・・)を有する記録ヘッドで記録ビット(φ2,3・・・)が形成されるステップとを含み、磁気ディスクに対して情報信号の記録を行う、ことを特徴とする磁気記録方法を提供することによって達成される。
【0011】
また、本発明の上記目的は、前記複数の記録ヘッドは、3種類であることを特徴とする磁気記録再生装置を提供することによって、より効果的に達成される。
【0012】
また、本発明の上記目的は、上書きされる記録ビット(φ1,2,3・・・)は、隣接する記録ビット間に1ビット分以上間隔が空けられて形成されることを特徴とする磁気記録方法を提供することによって、効果的に達成される。
【0013】
さらにまた、本発明の上記目的は、磁気ディスクに記録された情報信号の再生を行う磁気再生方法において、一度に再構成する最小単位領域の記録データセット(h)を未知数、読み取り信号を観測量(gm)とし、下記の観測方程式を解くことで重複して記録された磁気観測量データを得て、磁気ディスクに記録された磁気記録データを再構成することを特徴とする磁気再生方法を提供することによって、より効果的に達成される。
[観測方程式]
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る磁気記録装置及び磁気記録方法によれば、記録ヘッドの大きさを変えることなく、すなわち記録ヘッドにより磁気ディスク上に形成される記録ビットの大きさを小さくすることなく、また磁気ディスクの大きさを変えることなく、磁気ディスクの記録密度を向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係る磁気再生方法によれば、記録ビットの一部を重ねて(記録ビットの一部を上書きして)形成しても、記録された記録データを再構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る磁気記録再生装置、磁気記録方法、及び磁気再生方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1に、本発明に係る磁気記録再生装置の概略図を示す。図1では、垂直磁気記録方式の書き込み用ヘッド(記録ヘッド)と、読み取り用ヘッド(読み取りヘッド)であるGMRヘッドが磁気ディスクの極近傍を浮遊して磁気データを読み書きする様子を示している。すなわち、本発明に係る磁気記録再生装置は、図示するように、アジマス角の異なる複数の記録ヘッドと、読み取りヘッドと、磁気ディスクを回転駆動させるスピンドルモータと、記録・読み取りヘッドを走査するための機構と、測定信号の増幅部と、A/Dコンバータと、記録データの再構成部とを少なくとも具備することにより構成されている。
【0018】
なお、本明細書でいうアジマス角(φ)とは、図2に示すように、磁気ディスク平面内で磁気ディスク送り方向と垂直の方向を基準としてヘッドの長手方向がなす角度である。
【0019】
本発明に係る磁気記録再生装置では、互いに異なるアジマス角(φ)を有する複数の記録ヘッドを具備している。なお、図1では、アジマス角が0°である記録ヘッドp、アジマス角がφ1である記録ヘッドq、アジマス角がφ2である記録ヘッドrの3種類の記録ヘッドを有する磁気記録再生装置を示している。また、記録ヘッドpにより形成される記録ビットを記録ビット(φ0)とし、記録ヘッドqにより形成される記録ビットを記録ビット(φ1)とし、記録ヘッドrにより形成される記録ビットを記録ビット(φ2)と示す。さらにまた、記録ヘッドpで、磁気ディスク上に最初に記録ビット(φ0)を形成し、記録ビット(φ0)の表面上に、記録ヘッドqで記録ビット(φ1)を形成し、その後、記録ヘッドrで、記録ビット(φ0)又は記録ビット(φ1)の表面上に記録ビット(φ2)が形成される。
【0020】
記録ヘッドp,q,rは、磁気ディスクの主面上を摺動しながら、この磁気ディスクの記録面に形成された記録トラックに沿って記録ビットを形成し、情報信号の記録を行う。
【0021】
記録ヘッドのアジマス角(φ)が異なると、形成される記録ビットの角度が異なる。すなわち、記録ヘッドp,q,rのアジマス角がそれぞれ異なると、記録ビット(φ0)、記録ビット(φ1)、記録ビット(φ2)の角度も記録ヘッドに対応して異なる。これにより、磁気ディスクの同じ位置に、記録ビット(φ0)の上面に記録ビット(φ1)が重なるように(上書きされるように)、さらに記録ビット(φ1)の上面に記録ビット(φ2)が重なるように形成されても、下に形成された記録ビット(すなわち記録ビット(φ0)及び記録ビット(φ1))が、上書きされた記録ビット(すなわち記録ビット(φ1)及び記録ビット(φ2))により完全に上書きすることがなく、記録ビット(φ0)、記録ビット(φ1)、記録ビット(φ2)の少なくとも一部が読み取りヘッドから見えている。従って、磁気ディスクの同じ記録位置に複数のデータを記録することができ、同一面積により多くの情報を記録することができるようになるため、磁気ディスクの記録密度を向上させることができる。
【0022】
なお、記録ヘッドq,rのアジマス角(φ1,φ2)は±45°以下であることが好ましい。記録ヘッドq,rのアジマス角(φ1,φ2)が±45°を超えると、記録ヘッドq,rのトラック方向の位置制御が困難となると考えられるからである。
【0023】
また、記録ヘッドq,rのアジマス角(φ1,φ2)は例えば±30°のように、絶対値が同じで正負の符号が異なる組合せが好ましい。これにより、記録ビット(φ0),(φ1),(φ2)同士の重なり合いを小さくすることができ、情報を効率的に磁気ディスクに書き込むことができる。しかしながら、例えばアジマス角=φ、3φというような絶対値が異なる角度の組合せを用いても本発明の目的を達成できる。
【0024】
それぞれアジマス角の異なる3種類の記録ヘッドp,q,rを用いることにより、従来4ビットしか記録できなかった領域に、約2倍の9ビットの記録ビットを形成することができる。すなわち、磁気ディスクの記録密度を2倍強向上させることができる。また、アジマス角の異なる4種類、あるいはそれ以上の種類の記録ヘッドを用いると、磁気ディスクの記録密度を2倍以上とすることができる。
【0025】
しかしながら、本発明に係る磁気記録再生装置において、異なるアジマス角を有する記録ヘッドの数は、記録データの再構成を考慮すると、上述したように3種類程度であることが好ましい。
【0026】
読み取りヘッドは、記録ヘッドにより磁気ディスクに記録された情報信号の読み出しを行う。本発明に係る磁気記録再生装置では、読み取りヘッドは記録ヘッドのアジマス角(φ)に対応する角度を有し、また記録ヘッドと同じ数だけ具備されている。すなわち、図1に示す磁気記録再生装置は、記録ヘッドpに対応し、アジマス角が0°である読み取りヘッドs、記録ヘッドqに対応し、アジマス角がφ1である読み取りヘッドt、記録ヘッドrに対応し、アジマス角がφ2である読み取りヘッドuの3種類の読み取りヘッドを具備している。なお、読み取りヘッドにより読み取られた記録データの再構成については後述する。
【0027】
また、図1に示すように記録ヘッド、読み取りヘッド共に細長い形状をしているため、磁気ディスク上に形成される磁化である記録ビットは短冊状の分布となる。
【0028】
このような記録ヘッド及び読み取りヘッドは、ヘッド送り機構により走査される。ヘッド送り機構は、例えばステッピングモータやリニアモータなどのような高精度で位置決め制御を行うことが可能な駆動機構を用いて構成されており、記録ヘッド及び読み取りヘッドを磁気ディスクの径方向に移動自在としている。このヘッド送り機構は、制御回路部によって動作を制御される。また、ヘッド送り機構は、例えばボイスコイルモータや、マイクロステッパなどを用いて構成されていてもよい。
【0029】
記録ヘッド及び/又は読み取りヘッドにより記録及び再生する情報信号を増幅部で増幅させ、この情報信号をA/DコンバータでA/D変換し、記録データの再構成部で記録データを再構成し、データを読み出す。
【0030】
磁気ディスクは回転機構であるスピンドルモータにより回転駆動される。スピンドルモータは、ディスク着脱機構によって磁気ディスクが磁気記録再生装置に装着された際に、磁気ディスクのハブに吸着固定(チャッキング)して、この磁気ディスクを所定の速度で回転駆動させる。なお、スピンドルモータは、その駆動動作を制御回路部(図示せず)によって制御されている。
【0031】
なお、このような磁気記録再生装置は、着脱自在とされた磁気ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う、いわゆるリムーバル型の磁気ディスク装置である。なお、本発明は、このようなリムーバル型の磁気ディスク装置への適用に限定されるものではなく、装置本体に対する着脱を不可能とされた磁気ディスクに対して記録及び/又は再生を行うような固定型の磁気ディスク装置であっても良い。
【0032】
本発明に係る磁気記録装置は、アジマス角の異なる複数の記録ヘッドを備えることにより、磁気ディスク上の同じ記録位置に、角度の異なる複数の記録ビットを形成することができる。すなわち、アジマス角を変えた複数の記録ヘッドにより、形成される記録ビットの角度を変えることができるので、同じ記録位置に記録ビットが形成されても、記録ビット同士が完全に重なり合うことがなくなる。従って、同じ記録位置に複数のデータを記録することができるようになるため、磁気ディスクの記録密度が向上する。
【0033】
以下では、本発明に係る磁気情報記録再生装置を用いて、磁気ディスクに対して情報信号の記録を行う磁気記録方法について説明する。
【0034】
すなわち、本発明に係る磁気記録方法は、記録ディスク上にアジマス角が0°である記録ヘッドで記録ビット(φ0)を形成するステップと、この記録ビット(φ0)上に、0°以外のアジマス角(φ1)を有する記録ヘッドで、記録ビット(φ0)の一部が上書きされるように記録ビット(φ1)を形成するステップと、さらに、上書きされた記録ビット(φ1)の上に、さらに異なるアジマス角(φ2,3・・・)を有する記録ヘッドで記録ビット(φ2,3・・・)が形成されるステップとが含まれている。
【0035】
図3は、図1に示す3種類のアジマス角を有する3種類の記録ヘッドp,q,rを有する磁気記録再生装置を用いた場合における、記録ビット(φ0),(φ1),(φ2)の形成例を示す図である。
【0036】
すなわち、図3(a)に示すように、まず、アジマス角(φ)が0°である記録ヘッドpを用い、記録ディスク上に、従来と同様の記録ビット、すなわち記録ビット(φ0)である記録ビット1〜4を形成する。なお、本形成例では、4ビット分の記録ビットの配列を示す。
【0037】
次に、この記録ビット1〜4が形成された領域の上(すなわち、記録ビット1〜4の表面上)に、図3(b)に示すように、アジマス角(φ)がφ1である記録ヘッド記録ヘッドqにより、記録ビット(φ1)である記録ビット5〜7を形成する。
【0038】
さらにまた、記録ビット5〜7が形成された領域の上(すなわち、記録ビット5〜7の表面上)に、図3(c)に示すように、アジマス角(φ)が、記録ヘッドp,qとも異なる角度であるφ2を有する記録ヘッドrにより、記録ビット1〜7の表面上に、記録ビット(φ2)である記録ビット8〜9を形成する。
【0039】
このように記録ヘッドqのアジマス角(φ1)を、記録ヘッドpのアジマス角(φ0)と変えることで、記録ヘッドqにより形成される記録ビット5〜7の角度も変わるので、最初に形成された記録ビット1〜4が、記録ビット5〜7に完全に上書きされることがない。すなわち、記録ビット5〜7が形成されても、記録ビット5〜7の間から記録ビット1〜4のそれぞれの一部が必ず見える。また、記録ヘッドrのアジマス角(φ2)を、記録ヘッドp,qのアジマス角(φ0,φ1)とさらに変えることで、記録ヘッドrにより形成される記録ビット8〜9の角度も変わるので、先に形成された記録ビット1〜7が完全に上書きされることはない。すなわち、記録ビット8〜9が形成されても、記録ビット8〜9の間から記録ビット1〜7の一部が必ず見える。すなわち、記録ビット1〜4と同じ記録位置に、記録ビット5〜7を形成し、さらに記録ビット8〜9を形成し、新たなデータを記録することができる。
【0040】
従って、3種類のアジマス角(φ0,φ1,φ2)を有する記録ヘッドp,q,rを用いることにより、従来は磁気ディスクの同じ記録位置に4ビット(すなわち記録ビット1〜4)しか形成できなかったものが、本願発明にかかる磁気情報記録再生装置によると、9ビット(すなわち記録ビット1〜9)形成できるようになり、2倍以上の記録容量とすることができる。
【0041】
この記録ビットの形成例を数値シミュレーションを用いて模擬した解析結果を図4に示す。また、図5に、図4(a)〜(p)のそれぞれの場合の理想的な記録例を示す。
【0042】
なお、図4中において白い部分をN極、黒い部分をS極とする。記録で困難と考えられるのは、図4(e),(k)に示すような、N極がまわりをS極で囲まれた場合、または逆にS極がまわりをN極で囲まれた場合であるが、その場合にもまわりに上書きされることなく、元の記録が残っている。
【0043】
磁気ディスクの磁性記録層の磁化Mの分布は次式で表されるLandau-Lifshitz-Gilbert(LLG)方程式を満たす。なお、データを記録した後の定常の磁化分布を知ることが目的であるので、LLG方程式を解いた定常状態でのMを解とした。
【0044】
【数1】
ここで、γは磁気回転比、αは減衰定数、Msは飽和磁化、Heffは有効結合磁界で交換結合磁界、異方性磁界、静磁界、および外部磁界からなる。シミュレータにはThe Object Oriented Micro Magnetic Framework(OOMMF)を用い、解析に用いた各種パラメータを表1に示す。ただし、図中では垂直な方向に異方性を持ち、記録磁界として、材料の飽和磁化の3.2倍の一様磁界を与えた。
【0045】
【表1】
【0046】
次に、本発明に係る磁気記録装置を用いて磁気ディスク上に記録ビットを形成する他の実施例を図6に示す。
図6に示す記録ビットの形成例は、図3と同様に3種類のアジマス角(φ0,φ1,φ2)を有する記録ヘッドp,q,rを用いて記録ビット(φ0,φ1,φ2)を形成するが、図3と異なる点は、記録ヘッドrで形成される記録ビット(φ2)である記録ビット8〜10が、図3(c)に示す記録ビット8〜9と比べて1ビット分ずれた位置に形成されている点である。なお、図6(a),(b)は、図3(a)及び(b)と実質的に同一であるので説明を省略する。また、記録密度は図3等と同等である。
【0047】
図6(c)に示すように、記録ヘッドrによって、記録ビット8〜10が形成されている。図6(c)は、記録ビット8は、その左端が記録ビット1の左端の上に重なるように、右端が図示されない記録ビットの右端の上に重なるように形成され、記録ビット9は、その左端が記録ビット3の左端の上に重なるように、右端が記録ビット2の右端の上に重なるように形成され、さらに記録ビット10は、その左端が図示しない記録ビットの端の上に重なるように、右端が記録ビット4の右端の上に重なるように形成されている。
【0048】
これに対し、図3(c)では、記録ビット8〜10がそれぞれ1ビット分ずれて形成されている。すなわち、図3(c)は、記録ビット8は、その左端が記録ビット2及び6の上に、右端が記録ビット1及び5の上に重なるように形成され、記録ビット9は、その左端が記録ビット4及び記録ビット7上に、右端が記録ビット3及び6が重なるように形成される。
【0049】
このように、1ビット分ずらして記録ビットを形成しても、先に形成された記録ビットが完全に上書きされることがない。従って、磁気ディスクの同じ記録位置に新たなデータを記録させることができるので、磁気ディスクの記録容量を増大させることができる。
【0050】
さらに別の変更例を図7に示す。図7は、図3、図6と同様に3種類のアジマス角(φ0,φ1,φ2)を有する3種類の記録ヘッドを用いているが、図3、図6と異なる点は、記録ヘッドq,rと比べて、アジマス角φ1,φ2を大きくしたことである。なお、図7(a)は、図3(a)及び図6(a)と実質的に同一であるので説明を省略する。さらにまた、記録密度は図3、図6と同等である。
【0051】
図7(b)に示すように、アジマス角(φ)が0°である記録ヘッドpにより形成された記録ビット1〜4上に、図3、図6に示す記録ヘッドqよりも、大きなアジマス角φ1を有する記録ヘッドq′により、記録ビット(φ2)である記録ビット5〜7を形成する。
【0052】
図示するように、図7に用いられる記録ヘッドq′は、図3に用いられる記録ヘッドqよりも、記録ビット1つ分、すなわち1ビット分だけアジマス角φ1が大きくなっている。従って、図7に用いられる記録ヘッドq′により形成される記録ビット5は、その左端が図示しない記録ビットの左端の上面に重なるように、そして右端が記録ビット2の上面に重なるように形成されている。また、記録ビット6は、その左端が記録ビット2の左端の上面に重なるように、そして右端が記録ビット4の右端の上面に重なるように形成されている。さらに記録ビット7が、その左端が記録ビット4の左端の上面に重なるように、そしてその右端が、図中において記録ビット4の2つ下に形成される記録ビット(図示せず)の右端の上面に重なるように形成されている。
【0053】
このように記録ビット5〜7が形成された上面から、さらに図7(c)に示すように、記録ヘッドq′と符号は反対だが絶対値は同じアジマス角φ2を有する記録ヘッドr′により、記録ビット(φ2)である記録ビット8〜10が形成されている。
【0054】
すなわち、記録ビット8が、その左端が記録ビット6の左端の上面に重なるように、そして右端が記録ビット1の1つ上に形成される記録ビット(図示せず)の右端の上面に重なるように形成されている。また、記録ビット9は、その左端が記録ビット7の左端の上面に重なるように、そして右端が記録ビット5の右端の上面に重なるように形成されている。さらにまた、記録ビット10は、その左端が記録ビット1の2つ下に形成される記録ビット(図示せず)の左端の上面に重なるように、また右端が記録ビット6の右端の上面に重なるように形成されている。
【0055】
図7に示すように、記録ヘッドのアジマス角(φ)を変更しても、磁気ディスクの記録容量を増大させることができる。
【0056】
なお、上述したように記録ヘッドのアジマス角(φ)は、様々な角度を利用することができる。しかしながら、アジマス角(φ)が45°より大きくなると、トラック方向における記録ヘッドの位置制御が困難になると考えられる。従って、記録ヘッドのアジマス角(φ)は45°以下であることが好ましい。
【0057】
さらに本発明に係る磁気記録再生装置を用いた別の記録ビットの作成例を図8に示す。
【0058】
図8は、上述した図3、図6、図7と同様に、3種類のアジマス角(φ0,φ1,φ2)を有する3種類の記録ヘッドを用いているが、図3、図6、図7と異なる点は、記録ヘッドのアジマス角φ1,φ2の絶対値が異なることである。すなわち、図8は、図3でいう記録ヘッドq及び記録ヘッドrが、絶対値の異なるアジマス角(φ1,φ2)を有する場合の記録例を示したものである。なお、図8(a)は、図3(a)、図6(a)、図7(a)と実質的に同一であるので説明を省略する。さらにまた、記録密度は図3、図6、図7と同等である。
【0059】
すなわち、図8では、アジマス角φ1を有する記録ヘッドとして、図3及び図6と同じアジマス角を有する記録ヘッドqを用い、アジマス角φ2を有する記録ヘッドとして、図7と同じアジマス角を有する記録ヘッドr′を用いた。
【0060】
図8(b)に示すように、アジマス角が0°である記録ヘッドpにより形成された記録ビット1〜4の上面にその一部が重なるように、アジマス角がφ1である記録ヘッドqで記録ビット5〜7を形成している。
【0061】
すなわち、記録ビット5は、その左端が記録ビット1の1つ上に形成される記録ビット(図示せず)の左端の上面に重なるように、また右端が記録ビット1の右端の上面に重なるように形成されている。記録ビット6は、その左端が記録ビット2の左端の上面に重なるように、また右端が記録ビット3の右端の上面に重なるように形成されている。また、記録ビット7は、その左端が記録ビット4の左端の上面に重なるように、また右端が記録ビット4の1つ下に形成される記録ビット(図示せず)の右端と重なるように形成されている。
【0062】
このように記録ビット5〜7が形成された上面から、さらに図8(c)に示すように、記録ヘッドqと絶対値が異なるアジマス角φ2を有する記録ヘッドr′で記録ビット8〜9が形成されている。
【0063】
すなわち、記録ビット8は、その左端が記録ビット6の左端の上面に重なるように、また右端が記録ビット1の1つ上に形成される記録ビット(図示せず)の右端の上面に重なるように形成される。また記録ビット9は、その左端が記録ビット4の1つ下に形成される記録ビット(図示せず)の左端の上面に重なるように、また右端が記録ビット6の右端の上面に重なるように形成されている。
【0064】
従って、図8に示すように、絶対値の異なるアジマス角φ1,φ2を有する複数の記録ヘッドを用いても情報を記録することができ、磁気ディスクの記録容量を増大させることができる。すなわち、記録ヘッドのアジマス角は、図3、図6、図7に示すように絶対値が必ずしも同じである必要はない。
【0065】
しかしながら、記録ビット同士が重なり合う部分をより少なくし、効率的に情報を記録して再生するためには、例えばφ、3φのように絶対値の異なるアジマス角を有する記録ヘッドの組合せよりも、図3、図6、図7に示すように絶対値は同じで、符号が正負となるようなアジマス角を有する記録ヘッドの組合せの方が好ましい。
【0066】
また、このように絶対値の異なるアジマス角を有する複数の記録ヘッドを用いると、後述するように、読み取り(再生)の際の組合せ数が膨大となってしまう。
【0067】
以上に説明したように、本明細書では、3種類のアジマス角(φ0,φ1,φ2)を有する3種類の記録ヘッドp,q,rを用いて記録ビットを形成する様子を示したが、4種類以上の異なるアジマス角をそれぞれ有する4種類以上の記録ヘッドを用いて記録ビットを形成すると、磁気ディスクの記録容量を2倍以上とすることができる。しかしながら、記録データの再構成を考慮すると、3種類程度の異なるアジマス角をそれぞれ有する3種類程度の記録ヘッドを用いることが適当である。
【0068】
次に、上記のように形成された記録ビットを読み取り、再生する方法について説明する。
【0069】
図1では、例としてそれぞれ異なる角度を有する3種類の薄膜磁気センサから構成される読み取りヘッドが示されている。
【0070】
図1に示される3種類の薄膜磁気センサである読み取りヘッドs,t,uはそれぞれ、図3に示す記録ヘッドp,q,rに対応する角度を有している。すなわち、上述したように読み取りヘッドsはアジマス角が0°である記録ヘッドpに対応し、読み取りヘッドtはアジマス角がφ1である記録ヘッドqに対応し、読み取りヘッドuはアジマス角がφ2である記録ヘッドrに対応する。
【0071】
すなわち、図9に示すように、斜線部の領域を一度に再構成する最小単位とすると、斜線部の記録データの再構成はこれらの先験情報を用いることで24=16通りの組合せ最適化で済むことになる。なお、図9は、図3に示すように記録ビットが形成され記録された記録データの再構成の最小単位を示す。
【0072】
このようにそれぞれ異なる角度を有する3種類の薄膜磁気センサで構成された読み取りヘッドを用いて磁気ディスク上を走査し、記録データ(記録ビット)を未知数、得られる読み取り信号を観測量とする観測方程式(数2)を解くことで一部が重なり合うように形成された記録ビットによる記録データを再構成することができる。
【0073】
【数2】
ここで、gmは観測値ベクトルであり、例えば図10の7つの位置で観測した場合は7次元ベクトルである。また、hは一度に再構成する最小単位領域の記録データセットであり、例えば図10のように最小単位に7箇所の記録ビットがある場合には7次元ベクトルで表現できる。g(h)はhに対する観測信号ベクトルのモデル(計算値)である。なお、iはデータセットを示すIDであり、組み合わせ総数のN種類存在する。
【0074】
また、読み取りヘッドからの出力を計測する観測方程式は一般的に下記(数3)で表すことができる。なお、この(数3)は、上記観測方程式(数2)を記録ビットの書き込み領域で離散化表現したものである。
【0075】
【数3】
ここで、gは読み取りヘッドからの出力、k1〜kiは重み定数、h1〜hiは記録ビットであり、iは記録ヘッドの数により異なる。
【0076】
なお、重み定数は、あらかじめ分かっている記録ビットを観測することや、例えば図11に示すように、記録ビットが形成される各領域の面積比から適当に決定することができる(以下、同様)。また、記録ビットが形成される各領域の面積とは、記録ビットh1が形成される領域の面積、記録ビットh2が形成される領域の面積・・・の各面積の面積比をいう。また、h1は最上面の領域に形成される記録ビット(本例では記録ビット8〜9)であり、h2は最上面の一つ下の面(すなわち上から2番目の面)の領域に形成される記録ビット(本例では記録ビット5〜7)である(h3以下も同様)。
【0077】
以下に、図3に示すように、3種類の記録ヘッドp,q,rで形成された記録ビットを、読み取りヘッドs,t,uで読み取られたデータから、磁気ディスクに形成された記録ビットを推定する手順について詳細に説明する。
【0078】
すなわち、図12に示すように、読み取りヘッドuで出力g1を検出して記録ヘッドrで形成された記録ビットh1を推定し(ステップS1)、読み取りヘッドtで出力g2を検出して記録ヘッドqで形成された記録ビットh2を推定し(ステップS2)、読み取りヘッドsで出力g3を検出して記録ヘッドpで形成された記録ビットh3を推定する(ステップS3)。これにより、本磁気記録再生装置で磁気ディスク上に記録された記録データを再構成し、情報の再生を行う。
【0079】
まず、図13に示すように、最上面の領域に記録された記録ビットh1(記録ビット8〜9)を読み取りヘッドuで読み取る(ステップS1)。この場合には、記録ビットh1のみの影響をうけるので、観測方程式は下記の(数4)となり、各記録ビットに対して独立となる。
【0080】
【数4】
なお、g1は読み取りヘッドuからの出力である。この出力g1から、直接、最上面に形成された(最後に重ね書きされた)記録ビット8〜10(記録ビットh1)を推定できる。
【0081】
なお、図13に示す位置に読み取りヘッドuがある場合には、読み取りヘッドから出力される出力信号の位相を検出することにより記録ビットを検知し、観測量をサンプルする。
【0082】
次に、図14に示すように、上から2番目の面の領域に形成された記録ビットh2(記録ビット5〜7)を読み取りヘッドtで読み取る(ステップS2)。この場合には、記録ビットh1及び記録ビットh2の2つの記録ビットの影響をうけるので、観測方程式は下記の(数5)となる。
【0083】
【数5】
なお、g2は読み取りヘッドからの出力である。また、記録ビットh2は、最上面の領域に形成された記録ビットh1が既知であれば、下記の(数6)から推定できる。
【0084】
【数6】
【0085】
さらに、図15に示すように、上から3番目の面の領域(本例においては最下面)に形成された記録ビットh3(記録ビット1〜4)を読み取りヘッドsで読み取る(ステップS3)。この場合には、記録ビットh1、記録ビットh2、及び記録ビットh3の3つの記録ビットの影響をうけるので、観測方程式は下記の(数7)となる。
【数7】
【0086】
ここで、g3は読み取りヘッドからの出力である。また、記録ビットh3は、記録ビットh3の上の領域の面に形成された記録ビットh1及びh2が既知であれば、下記の(数8)から推定できる。
【数8】
なお、ステップS3の精度を向上させるために、例えば図16に示すようなアジマス角を持った読み取りヘッドからの出力値を用いた観測方程式も同時に用い、最小2乗法などによって記録ビットの推定を行ってもよい(ステップS3′)。また、最小2乗法以外にも最尤推定法、カルマンフィルタなどの統計的推定理論を適用することもできる(ステップS3′′)。
【0087】
なお、観測方程式の解法には簡便かつ高速な最適化アルゴリズムを適用できる。また、記録ビットで構成される記録データの再構成には、「それぞれの記録ビットは0か1の2値である。」、「データ構造は記録の際にあらかじめ分かっている。」という先験情報を利用することができる。記録データの再構成はこれらの先験情報を用いることで少ない数の組合せ最適化で済む。
【0088】
(数2)の解により、図3に示すように一部が重なり合うように形成された記録ビットの記録データを再構成することができる。図9では24=16通りある。
【0089】
なお、図9に示す図3の記録データの再構成以外にも、図6〜図8に示す全てのデータ構造の再構成について上述したような総当り法を用いて記録ビットで構成された記録データの再生を検証した結果、すべての例において正解と一致し、再構成することができることが分かった。
【0090】
すなわち、図17に示す斜線部の領域は、図6に示すように記録ビットが形成され記録された記録データの再構成の最小単位、図18に示す斜線部の領域は、図7の記録データの再構成の最小単位、図19に示す斜線部の領域は、図8の再構成の最小単位と対応している。図17では25=32通り、図18では26=64通り、図19では211=2048通りとなる。図19では絶対値が異なるアジマス角を用いることで再構成の際の組合せ数が膨大になっている。
【0091】
また、図20に示すように記録データをあらゆる角度と並進位置において読み取りヘッドからの出力を計測し、以下のような観測方程式を構成しCT(Computed Tomography)の原理を用いて再構成することも可能である。なお、CT法の手法にはFBP法、CBP法、EL−ME法等様々な手法があるが、ここでは例としてFBP法の適用例について説明する。
【0092】
すなわち、ヘッドはXY座標系でX軸方向に並進スキャンし、試料はXY座標系の原点を中心にθだけ回転している。XY座標系は試料に固定された座標系である。z軸、Z軸を共に試料面から垂直上方向にとる。試料からある一定の距離だけZ軸方向に離れた位置での磁界分布のZ軸成分をh(x,y)とし、ヘッドの両端で観測される電圧変化をg(X,θ)とする。θだけ回転した試料上をヘッドがX軸方向にスキャンし、電圧変化g(X,θ)を観測する。電圧変化g(X,θ)はヘッドの膜厚が薄いため、ヘッドの下端面での磁界分布h(x,y)のY方向の積分値としては数9のように得ることができる。
【0093】
【数9】
ここで、hは磁気データ分布、gは読み取りヘッドからの出力、Xは並進位置、θは回転角度である。
【0094】
以上のように、本発明に係る磁気記録再生装置、磁気記録方法、及び磁気再生方法によれば、記録ヘッドの大きさを変えることなく、すなわち記録ヘッドにより磁気ディスク上に形成される記録ビットの大きさを小さくすることなく、また磁気ディスクの大きさを変えることなく、磁気ディスクの記録密度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係る磁気記録再生装置の概略図である。
【図2】アジマス角の説明図である。
【図3】本発明に係る磁気記録再生装置を用いた場合の記録ビットの形成例を示す図である。
【図4】図3に示す記録ビットの形成例を数値シミュレーションを用いて模擬した解析結果である。
【図5】図4に示す解析結果の理想的な記録例を示す。
【図6】本発明に係る磁気記録再生装置を用いた場合の記録ビットの形成の変更例を示す図である。
【図7】本発明に係る磁気記録再生装置を用いた場合の記録ビットの形成の変更例を示す図である。
【図8】本発明に係る磁気記録再生装置を用いた場合の記録ビットの形成の変更例を示す図である。
【図9】図3に示す記録ビットの再構成を行う最小単位を示す図である。
【図10】未知のデータを観測した観測量gの計測位置を示す図である。
【図11】記録ビットの形成例の拡大図を示す。
【図12】本発明に係る磁気記録装置により形成された記録ビットの記録データを再構成する様子を示す図である。
【図13】記録ヘッドrで形成された記録ビットを再構成する様子を示す図である。
【図14】記録ヘッドqで形成された記録ビットを再構成する様子を示す図である。
【図15】記録ヘッドpで形成された記録ビットを再構成する様子を示す図である。
【図16】記録ビットを再構成する様子の変更例を示す図である。
【図17】図6に示す記録ビットの再構成を行う最小単位を示す図である。
【図18】図7に示す記録ビットの再構成を行う最小単位を示す図である。
【図19】図8に示す記録ビットの再構成を行う最小単位を示す図である。
【図20】CT法を用いて記録データを再構成する場合の原理を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1〜10 記録ビット
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録再生装置、磁気記録方法、及び磁気再生方法に関し、より詳細には、磁気ディスクに高密度でデータの記録を行い、また高密度で書き込まれた記録の再生を行う磁気記録再生装置、磁気ディスクに高密度で記録を書き込む磁気記録方法、及び高密度で磁気ディスクに書き込まれた記録を読み出す磁気再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、可撓性を有する磁気ディスク(フレキシブルディスク)に対して磁気的に情報信号の記録及び再生を行う記録再生装置が提案され、広く普及している。
【0003】
ところで、近年では、記録再生装置に対する小型化・大容量化の要求が益々高まってきており、これに伴って磁気ディスクに対するより一層の高記録密度化を達成することが要求されている。
【0004】
磁気ディスクの記録密度の向上とは、同一面積により多くの記録ビットを形成することである。しかしながら、磁気ディスクの情報を記録できる面積は、磁気ディスクの大きさが変わらなければ同じである。従って、例えば特許文献1に示されるように、記録ビットの大きさを小さくすることにより、同一面積により多くの記録ビットを形成し、より多くの情報を記録することが提案されている。しかしながら、記録ビットの大きさを小さくして磁気ディスクの高記録密度化を図ると、隣接する記録ビット間から発生する磁気エネルギーも小さくなる。このため、情報を読み取って再生する際の読み取りヘッドの感度を高くしなければならないという問題があった。
【0005】
また、従来の記録再生装置では、例えば特許文献2に示されるように、一組の記録ヘッド及び読み取りヘッドを磁気ディスク上で走査させて情報を記録再生していた。すなわち、記録ヘッドで記録ビット同士が重ならないように記録ビットを形成して情報を記録し、読み取りヘッドでその記録された情報を読み取って再生していた。しかしながら、記録ビットは細長い形状であるため、その長手方向のデータ構造が冗長となってしまう。従って、同一面積に多くの記録ビットを形成することができず、磁気ディスクの記録密度の向上が弊害され、磁気ディスクの高記録密度化を達成することができなかった。
【特許文献1】特開2005−182974号公報
【特許文献2】特開2005−071464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述したような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、磁気ディスクの記録密度を効率的に向上させることができる磁気記録再生装置、磁気ディスクに高密度で記録を書き込む磁気記録方法、及び高密度で磁気ディスクに書き込まれた記録を読み出す磁気再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
磁気ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う記録再生装置において、本発明の上記目的は、前記磁気ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、前記磁気ディスクに記録ビットを形成し、情報信号の記録を行う、互いに異なるアジマス角を有する複数の記録ヘッドと、前記磁気ディスクに記録された情報信号の読み出しを行う複数の読み取りヘッドと、前記記録ヘッド及び前記読み取りヘッドを走査するためのヘッド送り機構と、前記記録ヘッド及び/又は前記読み取りヘッドにより記録及び再生する情報信号を増幅させる増幅部と、情報信号をA/D変換するA/Dコンバータと、記録データの再構成部とを備えたことを特徴とする磁気記録再生装置を提供することによって達成される。
【0008】
また、本発明の上記目的は、前記記録ヘッドの前記アジマス角は±45°以下であり、また前記読み取りヘッドは、前記記録ヘッドに対応するアジマス角を有する薄膜磁気センサで構成されることを特徴とする磁気記録再生装置を提供することによって、効果的に達成される。
【0009】
また、本発明の上記目的は、前記アジマス角は絶対値が同じで正負が異なる組合せであることを特徴とする磁気記録再生装置を提供することによって、より効果的に達成される。
【0010】
また、本発明の上記目的は、前記のいずれかの磁気記録再生装置を用いて、記録ディスク上にアジマス角が0°である記録ヘッドで記録ビット(φ0)を形成するステップと、該記録ビット(φ0)上に、0°以外のアジマス角(φ1)を有する記録ヘッドで、記録ビット(φ0)の一部が上書きされるように記録ビット(φ1)を形成するステップと、さらに、上書きされた記録ビット(φ1)の上に、さらに異なるアジマス角(φ2,3・・・)を有する記録ヘッドで記録ビット(φ2,3・・・)が形成されるステップとを含み、磁気ディスクに対して情報信号の記録を行う、ことを特徴とする磁気記録方法を提供することによって達成される。
【0011】
また、本発明の上記目的は、前記複数の記録ヘッドは、3種類であることを特徴とする磁気記録再生装置を提供することによって、より効果的に達成される。
【0012】
また、本発明の上記目的は、上書きされる記録ビット(φ1,2,3・・・)は、隣接する記録ビット間に1ビット分以上間隔が空けられて形成されることを特徴とする磁気記録方法を提供することによって、効果的に達成される。
【0013】
さらにまた、本発明の上記目的は、磁気ディスクに記録された情報信号の再生を行う磁気再生方法において、一度に再構成する最小単位領域の記録データセット(h)を未知数、読み取り信号を観測量(gm)とし、下記の観測方程式を解くことで重複して記録された磁気観測量データを得て、磁気ディスクに記録された磁気記録データを再構成することを特徴とする磁気再生方法を提供することによって、より効果的に達成される。
[観測方程式]
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る磁気記録装置及び磁気記録方法によれば、記録ヘッドの大きさを変えることなく、すなわち記録ヘッドにより磁気ディスク上に形成される記録ビットの大きさを小さくすることなく、また磁気ディスクの大きさを変えることなく、磁気ディスクの記録密度を向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係る磁気再生方法によれば、記録ビットの一部を重ねて(記録ビットの一部を上書きして)形成しても、記録された記録データを再構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る磁気記録再生装置、磁気記録方法、及び磁気再生方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1に、本発明に係る磁気記録再生装置の概略図を示す。図1では、垂直磁気記録方式の書き込み用ヘッド(記録ヘッド)と、読み取り用ヘッド(読み取りヘッド)であるGMRヘッドが磁気ディスクの極近傍を浮遊して磁気データを読み書きする様子を示している。すなわち、本発明に係る磁気記録再生装置は、図示するように、アジマス角の異なる複数の記録ヘッドと、読み取りヘッドと、磁気ディスクを回転駆動させるスピンドルモータと、記録・読み取りヘッドを走査するための機構と、測定信号の増幅部と、A/Dコンバータと、記録データの再構成部とを少なくとも具備することにより構成されている。
【0018】
なお、本明細書でいうアジマス角(φ)とは、図2に示すように、磁気ディスク平面内で磁気ディスク送り方向と垂直の方向を基準としてヘッドの長手方向がなす角度である。
【0019】
本発明に係る磁気記録再生装置では、互いに異なるアジマス角(φ)を有する複数の記録ヘッドを具備している。なお、図1では、アジマス角が0°である記録ヘッドp、アジマス角がφ1である記録ヘッドq、アジマス角がφ2である記録ヘッドrの3種類の記録ヘッドを有する磁気記録再生装置を示している。また、記録ヘッドpにより形成される記録ビットを記録ビット(φ0)とし、記録ヘッドqにより形成される記録ビットを記録ビット(φ1)とし、記録ヘッドrにより形成される記録ビットを記録ビット(φ2)と示す。さらにまた、記録ヘッドpで、磁気ディスク上に最初に記録ビット(φ0)を形成し、記録ビット(φ0)の表面上に、記録ヘッドqで記録ビット(φ1)を形成し、その後、記録ヘッドrで、記録ビット(φ0)又は記録ビット(φ1)の表面上に記録ビット(φ2)が形成される。
【0020】
記録ヘッドp,q,rは、磁気ディスクの主面上を摺動しながら、この磁気ディスクの記録面に形成された記録トラックに沿って記録ビットを形成し、情報信号の記録を行う。
【0021】
記録ヘッドのアジマス角(φ)が異なると、形成される記録ビットの角度が異なる。すなわち、記録ヘッドp,q,rのアジマス角がそれぞれ異なると、記録ビット(φ0)、記録ビット(φ1)、記録ビット(φ2)の角度も記録ヘッドに対応して異なる。これにより、磁気ディスクの同じ位置に、記録ビット(φ0)の上面に記録ビット(φ1)が重なるように(上書きされるように)、さらに記録ビット(φ1)の上面に記録ビット(φ2)が重なるように形成されても、下に形成された記録ビット(すなわち記録ビット(φ0)及び記録ビット(φ1))が、上書きされた記録ビット(すなわち記録ビット(φ1)及び記録ビット(φ2))により完全に上書きすることがなく、記録ビット(φ0)、記録ビット(φ1)、記録ビット(φ2)の少なくとも一部が読み取りヘッドから見えている。従って、磁気ディスクの同じ記録位置に複数のデータを記録することができ、同一面積により多くの情報を記録することができるようになるため、磁気ディスクの記録密度を向上させることができる。
【0022】
なお、記録ヘッドq,rのアジマス角(φ1,φ2)は±45°以下であることが好ましい。記録ヘッドq,rのアジマス角(φ1,φ2)が±45°を超えると、記録ヘッドq,rのトラック方向の位置制御が困難となると考えられるからである。
【0023】
また、記録ヘッドq,rのアジマス角(φ1,φ2)は例えば±30°のように、絶対値が同じで正負の符号が異なる組合せが好ましい。これにより、記録ビット(φ0),(φ1),(φ2)同士の重なり合いを小さくすることができ、情報を効率的に磁気ディスクに書き込むことができる。しかしながら、例えばアジマス角=φ、3φというような絶対値が異なる角度の組合せを用いても本発明の目的を達成できる。
【0024】
それぞれアジマス角の異なる3種類の記録ヘッドp,q,rを用いることにより、従来4ビットしか記録できなかった領域に、約2倍の9ビットの記録ビットを形成することができる。すなわち、磁気ディスクの記録密度を2倍強向上させることができる。また、アジマス角の異なる4種類、あるいはそれ以上の種類の記録ヘッドを用いると、磁気ディスクの記録密度を2倍以上とすることができる。
【0025】
しかしながら、本発明に係る磁気記録再生装置において、異なるアジマス角を有する記録ヘッドの数は、記録データの再構成を考慮すると、上述したように3種類程度であることが好ましい。
【0026】
読み取りヘッドは、記録ヘッドにより磁気ディスクに記録された情報信号の読み出しを行う。本発明に係る磁気記録再生装置では、読み取りヘッドは記録ヘッドのアジマス角(φ)に対応する角度を有し、また記録ヘッドと同じ数だけ具備されている。すなわち、図1に示す磁気記録再生装置は、記録ヘッドpに対応し、アジマス角が0°である読み取りヘッドs、記録ヘッドqに対応し、アジマス角がφ1である読み取りヘッドt、記録ヘッドrに対応し、アジマス角がφ2である読み取りヘッドuの3種類の読み取りヘッドを具備している。なお、読み取りヘッドにより読み取られた記録データの再構成については後述する。
【0027】
また、図1に示すように記録ヘッド、読み取りヘッド共に細長い形状をしているため、磁気ディスク上に形成される磁化である記録ビットは短冊状の分布となる。
【0028】
このような記録ヘッド及び読み取りヘッドは、ヘッド送り機構により走査される。ヘッド送り機構は、例えばステッピングモータやリニアモータなどのような高精度で位置決め制御を行うことが可能な駆動機構を用いて構成されており、記録ヘッド及び読み取りヘッドを磁気ディスクの径方向に移動自在としている。このヘッド送り機構は、制御回路部によって動作を制御される。また、ヘッド送り機構は、例えばボイスコイルモータや、マイクロステッパなどを用いて構成されていてもよい。
【0029】
記録ヘッド及び/又は読み取りヘッドにより記録及び再生する情報信号を増幅部で増幅させ、この情報信号をA/DコンバータでA/D変換し、記録データの再構成部で記録データを再構成し、データを読み出す。
【0030】
磁気ディスクは回転機構であるスピンドルモータにより回転駆動される。スピンドルモータは、ディスク着脱機構によって磁気ディスクが磁気記録再生装置に装着された際に、磁気ディスクのハブに吸着固定(チャッキング)して、この磁気ディスクを所定の速度で回転駆動させる。なお、スピンドルモータは、その駆動動作を制御回路部(図示せず)によって制御されている。
【0031】
なお、このような磁気記録再生装置は、着脱自在とされた磁気ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う、いわゆるリムーバル型の磁気ディスク装置である。なお、本発明は、このようなリムーバル型の磁気ディスク装置への適用に限定されるものではなく、装置本体に対する着脱を不可能とされた磁気ディスクに対して記録及び/又は再生を行うような固定型の磁気ディスク装置であっても良い。
【0032】
本発明に係る磁気記録装置は、アジマス角の異なる複数の記録ヘッドを備えることにより、磁気ディスク上の同じ記録位置に、角度の異なる複数の記録ビットを形成することができる。すなわち、アジマス角を変えた複数の記録ヘッドにより、形成される記録ビットの角度を変えることができるので、同じ記録位置に記録ビットが形成されても、記録ビット同士が完全に重なり合うことがなくなる。従って、同じ記録位置に複数のデータを記録することができるようになるため、磁気ディスクの記録密度が向上する。
【0033】
以下では、本発明に係る磁気情報記録再生装置を用いて、磁気ディスクに対して情報信号の記録を行う磁気記録方法について説明する。
【0034】
すなわち、本発明に係る磁気記録方法は、記録ディスク上にアジマス角が0°である記録ヘッドで記録ビット(φ0)を形成するステップと、この記録ビット(φ0)上に、0°以外のアジマス角(φ1)を有する記録ヘッドで、記録ビット(φ0)の一部が上書きされるように記録ビット(φ1)を形成するステップと、さらに、上書きされた記録ビット(φ1)の上に、さらに異なるアジマス角(φ2,3・・・)を有する記録ヘッドで記録ビット(φ2,3・・・)が形成されるステップとが含まれている。
【0035】
図3は、図1に示す3種類のアジマス角を有する3種類の記録ヘッドp,q,rを有する磁気記録再生装置を用いた場合における、記録ビット(φ0),(φ1),(φ2)の形成例を示す図である。
【0036】
すなわち、図3(a)に示すように、まず、アジマス角(φ)が0°である記録ヘッドpを用い、記録ディスク上に、従来と同様の記録ビット、すなわち記録ビット(φ0)である記録ビット1〜4を形成する。なお、本形成例では、4ビット分の記録ビットの配列を示す。
【0037】
次に、この記録ビット1〜4が形成された領域の上(すなわち、記録ビット1〜4の表面上)に、図3(b)に示すように、アジマス角(φ)がφ1である記録ヘッド記録ヘッドqにより、記録ビット(φ1)である記録ビット5〜7を形成する。
【0038】
さらにまた、記録ビット5〜7が形成された領域の上(すなわち、記録ビット5〜7の表面上)に、図3(c)に示すように、アジマス角(φ)が、記録ヘッドp,qとも異なる角度であるφ2を有する記録ヘッドrにより、記録ビット1〜7の表面上に、記録ビット(φ2)である記録ビット8〜9を形成する。
【0039】
このように記録ヘッドqのアジマス角(φ1)を、記録ヘッドpのアジマス角(φ0)と変えることで、記録ヘッドqにより形成される記録ビット5〜7の角度も変わるので、最初に形成された記録ビット1〜4が、記録ビット5〜7に完全に上書きされることがない。すなわち、記録ビット5〜7が形成されても、記録ビット5〜7の間から記録ビット1〜4のそれぞれの一部が必ず見える。また、記録ヘッドrのアジマス角(φ2)を、記録ヘッドp,qのアジマス角(φ0,φ1)とさらに変えることで、記録ヘッドrにより形成される記録ビット8〜9の角度も変わるので、先に形成された記録ビット1〜7が完全に上書きされることはない。すなわち、記録ビット8〜9が形成されても、記録ビット8〜9の間から記録ビット1〜7の一部が必ず見える。すなわち、記録ビット1〜4と同じ記録位置に、記録ビット5〜7を形成し、さらに記録ビット8〜9を形成し、新たなデータを記録することができる。
【0040】
従って、3種類のアジマス角(φ0,φ1,φ2)を有する記録ヘッドp,q,rを用いることにより、従来は磁気ディスクの同じ記録位置に4ビット(すなわち記録ビット1〜4)しか形成できなかったものが、本願発明にかかる磁気情報記録再生装置によると、9ビット(すなわち記録ビット1〜9)形成できるようになり、2倍以上の記録容量とすることができる。
【0041】
この記録ビットの形成例を数値シミュレーションを用いて模擬した解析結果を図4に示す。また、図5に、図4(a)〜(p)のそれぞれの場合の理想的な記録例を示す。
【0042】
なお、図4中において白い部分をN極、黒い部分をS極とする。記録で困難と考えられるのは、図4(e),(k)に示すような、N極がまわりをS極で囲まれた場合、または逆にS極がまわりをN極で囲まれた場合であるが、その場合にもまわりに上書きされることなく、元の記録が残っている。
【0043】
磁気ディスクの磁性記録層の磁化Mの分布は次式で表されるLandau-Lifshitz-Gilbert(LLG)方程式を満たす。なお、データを記録した後の定常の磁化分布を知ることが目的であるので、LLG方程式を解いた定常状態でのMを解とした。
【0044】
【数1】
ここで、γは磁気回転比、αは減衰定数、Msは飽和磁化、Heffは有効結合磁界で交換結合磁界、異方性磁界、静磁界、および外部磁界からなる。シミュレータにはThe Object Oriented Micro Magnetic Framework(OOMMF)を用い、解析に用いた各種パラメータを表1に示す。ただし、図中では垂直な方向に異方性を持ち、記録磁界として、材料の飽和磁化の3.2倍の一様磁界を与えた。
【0045】
【表1】
【0046】
次に、本発明に係る磁気記録装置を用いて磁気ディスク上に記録ビットを形成する他の実施例を図6に示す。
図6に示す記録ビットの形成例は、図3と同様に3種類のアジマス角(φ0,φ1,φ2)を有する記録ヘッドp,q,rを用いて記録ビット(φ0,φ1,φ2)を形成するが、図3と異なる点は、記録ヘッドrで形成される記録ビット(φ2)である記録ビット8〜10が、図3(c)に示す記録ビット8〜9と比べて1ビット分ずれた位置に形成されている点である。なお、図6(a),(b)は、図3(a)及び(b)と実質的に同一であるので説明を省略する。また、記録密度は図3等と同等である。
【0047】
図6(c)に示すように、記録ヘッドrによって、記録ビット8〜10が形成されている。図6(c)は、記録ビット8は、その左端が記録ビット1の左端の上に重なるように、右端が図示されない記録ビットの右端の上に重なるように形成され、記録ビット9は、その左端が記録ビット3の左端の上に重なるように、右端が記録ビット2の右端の上に重なるように形成され、さらに記録ビット10は、その左端が図示しない記録ビットの端の上に重なるように、右端が記録ビット4の右端の上に重なるように形成されている。
【0048】
これに対し、図3(c)では、記録ビット8〜10がそれぞれ1ビット分ずれて形成されている。すなわち、図3(c)は、記録ビット8は、その左端が記録ビット2及び6の上に、右端が記録ビット1及び5の上に重なるように形成され、記録ビット9は、その左端が記録ビット4及び記録ビット7上に、右端が記録ビット3及び6が重なるように形成される。
【0049】
このように、1ビット分ずらして記録ビットを形成しても、先に形成された記録ビットが完全に上書きされることがない。従って、磁気ディスクの同じ記録位置に新たなデータを記録させることができるので、磁気ディスクの記録容量を増大させることができる。
【0050】
さらに別の変更例を図7に示す。図7は、図3、図6と同様に3種類のアジマス角(φ0,φ1,φ2)を有する3種類の記録ヘッドを用いているが、図3、図6と異なる点は、記録ヘッドq,rと比べて、アジマス角φ1,φ2を大きくしたことである。なお、図7(a)は、図3(a)及び図6(a)と実質的に同一であるので説明を省略する。さらにまた、記録密度は図3、図6と同等である。
【0051】
図7(b)に示すように、アジマス角(φ)が0°である記録ヘッドpにより形成された記録ビット1〜4上に、図3、図6に示す記録ヘッドqよりも、大きなアジマス角φ1を有する記録ヘッドq′により、記録ビット(φ2)である記録ビット5〜7を形成する。
【0052】
図示するように、図7に用いられる記録ヘッドq′は、図3に用いられる記録ヘッドqよりも、記録ビット1つ分、すなわち1ビット分だけアジマス角φ1が大きくなっている。従って、図7に用いられる記録ヘッドq′により形成される記録ビット5は、その左端が図示しない記録ビットの左端の上面に重なるように、そして右端が記録ビット2の上面に重なるように形成されている。また、記録ビット6は、その左端が記録ビット2の左端の上面に重なるように、そして右端が記録ビット4の右端の上面に重なるように形成されている。さらに記録ビット7が、その左端が記録ビット4の左端の上面に重なるように、そしてその右端が、図中において記録ビット4の2つ下に形成される記録ビット(図示せず)の右端の上面に重なるように形成されている。
【0053】
このように記録ビット5〜7が形成された上面から、さらに図7(c)に示すように、記録ヘッドq′と符号は反対だが絶対値は同じアジマス角φ2を有する記録ヘッドr′により、記録ビット(φ2)である記録ビット8〜10が形成されている。
【0054】
すなわち、記録ビット8が、その左端が記録ビット6の左端の上面に重なるように、そして右端が記録ビット1の1つ上に形成される記録ビット(図示せず)の右端の上面に重なるように形成されている。また、記録ビット9は、その左端が記録ビット7の左端の上面に重なるように、そして右端が記録ビット5の右端の上面に重なるように形成されている。さらにまた、記録ビット10は、その左端が記録ビット1の2つ下に形成される記録ビット(図示せず)の左端の上面に重なるように、また右端が記録ビット6の右端の上面に重なるように形成されている。
【0055】
図7に示すように、記録ヘッドのアジマス角(φ)を変更しても、磁気ディスクの記録容量を増大させることができる。
【0056】
なお、上述したように記録ヘッドのアジマス角(φ)は、様々な角度を利用することができる。しかしながら、アジマス角(φ)が45°より大きくなると、トラック方向における記録ヘッドの位置制御が困難になると考えられる。従って、記録ヘッドのアジマス角(φ)は45°以下であることが好ましい。
【0057】
さらに本発明に係る磁気記録再生装置を用いた別の記録ビットの作成例を図8に示す。
【0058】
図8は、上述した図3、図6、図7と同様に、3種類のアジマス角(φ0,φ1,φ2)を有する3種類の記録ヘッドを用いているが、図3、図6、図7と異なる点は、記録ヘッドのアジマス角φ1,φ2の絶対値が異なることである。すなわち、図8は、図3でいう記録ヘッドq及び記録ヘッドrが、絶対値の異なるアジマス角(φ1,φ2)を有する場合の記録例を示したものである。なお、図8(a)は、図3(a)、図6(a)、図7(a)と実質的に同一であるので説明を省略する。さらにまた、記録密度は図3、図6、図7と同等である。
【0059】
すなわち、図8では、アジマス角φ1を有する記録ヘッドとして、図3及び図6と同じアジマス角を有する記録ヘッドqを用い、アジマス角φ2を有する記録ヘッドとして、図7と同じアジマス角を有する記録ヘッドr′を用いた。
【0060】
図8(b)に示すように、アジマス角が0°である記録ヘッドpにより形成された記録ビット1〜4の上面にその一部が重なるように、アジマス角がφ1である記録ヘッドqで記録ビット5〜7を形成している。
【0061】
すなわち、記録ビット5は、その左端が記録ビット1の1つ上に形成される記録ビット(図示せず)の左端の上面に重なるように、また右端が記録ビット1の右端の上面に重なるように形成されている。記録ビット6は、その左端が記録ビット2の左端の上面に重なるように、また右端が記録ビット3の右端の上面に重なるように形成されている。また、記録ビット7は、その左端が記録ビット4の左端の上面に重なるように、また右端が記録ビット4の1つ下に形成される記録ビット(図示せず)の右端と重なるように形成されている。
【0062】
このように記録ビット5〜7が形成された上面から、さらに図8(c)に示すように、記録ヘッドqと絶対値が異なるアジマス角φ2を有する記録ヘッドr′で記録ビット8〜9が形成されている。
【0063】
すなわち、記録ビット8は、その左端が記録ビット6の左端の上面に重なるように、また右端が記録ビット1の1つ上に形成される記録ビット(図示せず)の右端の上面に重なるように形成される。また記録ビット9は、その左端が記録ビット4の1つ下に形成される記録ビット(図示せず)の左端の上面に重なるように、また右端が記録ビット6の右端の上面に重なるように形成されている。
【0064】
従って、図8に示すように、絶対値の異なるアジマス角φ1,φ2を有する複数の記録ヘッドを用いても情報を記録することができ、磁気ディスクの記録容量を増大させることができる。すなわち、記録ヘッドのアジマス角は、図3、図6、図7に示すように絶対値が必ずしも同じである必要はない。
【0065】
しかしながら、記録ビット同士が重なり合う部分をより少なくし、効率的に情報を記録して再生するためには、例えばφ、3φのように絶対値の異なるアジマス角を有する記録ヘッドの組合せよりも、図3、図6、図7に示すように絶対値は同じで、符号が正負となるようなアジマス角を有する記録ヘッドの組合せの方が好ましい。
【0066】
また、このように絶対値の異なるアジマス角を有する複数の記録ヘッドを用いると、後述するように、読み取り(再生)の際の組合せ数が膨大となってしまう。
【0067】
以上に説明したように、本明細書では、3種類のアジマス角(φ0,φ1,φ2)を有する3種類の記録ヘッドp,q,rを用いて記録ビットを形成する様子を示したが、4種類以上の異なるアジマス角をそれぞれ有する4種類以上の記録ヘッドを用いて記録ビットを形成すると、磁気ディスクの記録容量を2倍以上とすることができる。しかしながら、記録データの再構成を考慮すると、3種類程度の異なるアジマス角をそれぞれ有する3種類程度の記録ヘッドを用いることが適当である。
【0068】
次に、上記のように形成された記録ビットを読み取り、再生する方法について説明する。
【0069】
図1では、例としてそれぞれ異なる角度を有する3種類の薄膜磁気センサから構成される読み取りヘッドが示されている。
【0070】
図1に示される3種類の薄膜磁気センサである読み取りヘッドs,t,uはそれぞれ、図3に示す記録ヘッドp,q,rに対応する角度を有している。すなわち、上述したように読み取りヘッドsはアジマス角が0°である記録ヘッドpに対応し、読み取りヘッドtはアジマス角がφ1である記録ヘッドqに対応し、読み取りヘッドuはアジマス角がφ2である記録ヘッドrに対応する。
【0071】
すなわち、図9に示すように、斜線部の領域を一度に再構成する最小単位とすると、斜線部の記録データの再構成はこれらの先験情報を用いることで24=16通りの組合せ最適化で済むことになる。なお、図9は、図3に示すように記録ビットが形成され記録された記録データの再構成の最小単位を示す。
【0072】
このようにそれぞれ異なる角度を有する3種類の薄膜磁気センサで構成された読み取りヘッドを用いて磁気ディスク上を走査し、記録データ(記録ビット)を未知数、得られる読み取り信号を観測量とする観測方程式(数2)を解くことで一部が重なり合うように形成された記録ビットによる記録データを再構成することができる。
【0073】
【数2】
ここで、gmは観測値ベクトルであり、例えば図10の7つの位置で観測した場合は7次元ベクトルである。また、hは一度に再構成する最小単位領域の記録データセットであり、例えば図10のように最小単位に7箇所の記録ビットがある場合には7次元ベクトルで表現できる。g(h)はhに対する観測信号ベクトルのモデル(計算値)である。なお、iはデータセットを示すIDであり、組み合わせ総数のN種類存在する。
【0074】
また、読み取りヘッドからの出力を計測する観測方程式は一般的に下記(数3)で表すことができる。なお、この(数3)は、上記観測方程式(数2)を記録ビットの書き込み領域で離散化表現したものである。
【0075】
【数3】
ここで、gは読み取りヘッドからの出力、k1〜kiは重み定数、h1〜hiは記録ビットであり、iは記録ヘッドの数により異なる。
【0076】
なお、重み定数は、あらかじめ分かっている記録ビットを観測することや、例えば図11に示すように、記録ビットが形成される各領域の面積比から適当に決定することができる(以下、同様)。また、記録ビットが形成される各領域の面積とは、記録ビットh1が形成される領域の面積、記録ビットh2が形成される領域の面積・・・の各面積の面積比をいう。また、h1は最上面の領域に形成される記録ビット(本例では記録ビット8〜9)であり、h2は最上面の一つ下の面(すなわち上から2番目の面)の領域に形成される記録ビット(本例では記録ビット5〜7)である(h3以下も同様)。
【0077】
以下に、図3に示すように、3種類の記録ヘッドp,q,rで形成された記録ビットを、読み取りヘッドs,t,uで読み取られたデータから、磁気ディスクに形成された記録ビットを推定する手順について詳細に説明する。
【0078】
すなわち、図12に示すように、読み取りヘッドuで出力g1を検出して記録ヘッドrで形成された記録ビットh1を推定し(ステップS1)、読み取りヘッドtで出力g2を検出して記録ヘッドqで形成された記録ビットh2を推定し(ステップS2)、読み取りヘッドsで出力g3を検出して記録ヘッドpで形成された記録ビットh3を推定する(ステップS3)。これにより、本磁気記録再生装置で磁気ディスク上に記録された記録データを再構成し、情報の再生を行う。
【0079】
まず、図13に示すように、最上面の領域に記録された記録ビットh1(記録ビット8〜9)を読み取りヘッドuで読み取る(ステップS1)。この場合には、記録ビットh1のみの影響をうけるので、観測方程式は下記の(数4)となり、各記録ビットに対して独立となる。
【0080】
【数4】
なお、g1は読み取りヘッドuからの出力である。この出力g1から、直接、最上面に形成された(最後に重ね書きされた)記録ビット8〜10(記録ビットh1)を推定できる。
【0081】
なお、図13に示す位置に読み取りヘッドuがある場合には、読み取りヘッドから出力される出力信号の位相を検出することにより記録ビットを検知し、観測量をサンプルする。
【0082】
次に、図14に示すように、上から2番目の面の領域に形成された記録ビットh2(記録ビット5〜7)を読み取りヘッドtで読み取る(ステップS2)。この場合には、記録ビットh1及び記録ビットh2の2つの記録ビットの影響をうけるので、観測方程式は下記の(数5)となる。
【0083】
【数5】
なお、g2は読み取りヘッドからの出力である。また、記録ビットh2は、最上面の領域に形成された記録ビットh1が既知であれば、下記の(数6)から推定できる。
【0084】
【数6】
【0085】
さらに、図15に示すように、上から3番目の面の領域(本例においては最下面)に形成された記録ビットh3(記録ビット1〜4)を読み取りヘッドsで読み取る(ステップS3)。この場合には、記録ビットh1、記録ビットh2、及び記録ビットh3の3つの記録ビットの影響をうけるので、観測方程式は下記の(数7)となる。
【数7】
【0086】
ここで、g3は読み取りヘッドからの出力である。また、記録ビットh3は、記録ビットh3の上の領域の面に形成された記録ビットh1及びh2が既知であれば、下記の(数8)から推定できる。
【数8】
なお、ステップS3の精度を向上させるために、例えば図16に示すようなアジマス角を持った読み取りヘッドからの出力値を用いた観測方程式も同時に用い、最小2乗法などによって記録ビットの推定を行ってもよい(ステップS3′)。また、最小2乗法以外にも最尤推定法、カルマンフィルタなどの統計的推定理論を適用することもできる(ステップS3′′)。
【0087】
なお、観測方程式の解法には簡便かつ高速な最適化アルゴリズムを適用できる。また、記録ビットで構成される記録データの再構成には、「それぞれの記録ビットは0か1の2値である。」、「データ構造は記録の際にあらかじめ分かっている。」という先験情報を利用することができる。記録データの再構成はこれらの先験情報を用いることで少ない数の組合せ最適化で済む。
【0088】
(数2)の解により、図3に示すように一部が重なり合うように形成された記録ビットの記録データを再構成することができる。図9では24=16通りある。
【0089】
なお、図9に示す図3の記録データの再構成以外にも、図6〜図8に示す全てのデータ構造の再構成について上述したような総当り法を用いて記録ビットで構成された記録データの再生を検証した結果、すべての例において正解と一致し、再構成することができることが分かった。
【0090】
すなわち、図17に示す斜線部の領域は、図6に示すように記録ビットが形成され記録された記録データの再構成の最小単位、図18に示す斜線部の領域は、図7の記録データの再構成の最小単位、図19に示す斜線部の領域は、図8の再構成の最小単位と対応している。図17では25=32通り、図18では26=64通り、図19では211=2048通りとなる。図19では絶対値が異なるアジマス角を用いることで再構成の際の組合せ数が膨大になっている。
【0091】
また、図20に示すように記録データをあらゆる角度と並進位置において読み取りヘッドからの出力を計測し、以下のような観測方程式を構成しCT(Computed Tomography)の原理を用いて再構成することも可能である。なお、CT法の手法にはFBP法、CBP法、EL−ME法等様々な手法があるが、ここでは例としてFBP法の適用例について説明する。
【0092】
すなわち、ヘッドはXY座標系でX軸方向に並進スキャンし、試料はXY座標系の原点を中心にθだけ回転している。XY座標系は試料に固定された座標系である。z軸、Z軸を共に試料面から垂直上方向にとる。試料からある一定の距離だけZ軸方向に離れた位置での磁界分布のZ軸成分をh(x,y)とし、ヘッドの両端で観測される電圧変化をg(X,θ)とする。θだけ回転した試料上をヘッドがX軸方向にスキャンし、電圧変化g(X,θ)を観測する。電圧変化g(X,θ)はヘッドの膜厚が薄いため、ヘッドの下端面での磁界分布h(x,y)のY方向の積分値としては数9のように得ることができる。
【0093】
【数9】
ここで、hは磁気データ分布、gは読み取りヘッドからの出力、Xは並進位置、θは回転角度である。
【0094】
以上のように、本発明に係る磁気記録再生装置、磁気記録方法、及び磁気再生方法によれば、記録ヘッドの大きさを変えることなく、すなわち記録ヘッドにより磁気ディスク上に形成される記録ビットの大きさを小さくすることなく、また磁気ディスクの大きさを変えることなく、磁気ディスクの記録密度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係る磁気記録再生装置の概略図である。
【図2】アジマス角の説明図である。
【図3】本発明に係る磁気記録再生装置を用いた場合の記録ビットの形成例を示す図である。
【図4】図3に示す記録ビットの形成例を数値シミュレーションを用いて模擬した解析結果である。
【図5】図4に示す解析結果の理想的な記録例を示す。
【図6】本発明に係る磁気記録再生装置を用いた場合の記録ビットの形成の変更例を示す図である。
【図7】本発明に係る磁気記録再生装置を用いた場合の記録ビットの形成の変更例を示す図である。
【図8】本発明に係る磁気記録再生装置を用いた場合の記録ビットの形成の変更例を示す図である。
【図9】図3に示す記録ビットの再構成を行う最小単位を示す図である。
【図10】未知のデータを観測した観測量gの計測位置を示す図である。
【図11】記録ビットの形成例の拡大図を示す。
【図12】本発明に係る磁気記録装置により形成された記録ビットの記録データを再構成する様子を示す図である。
【図13】記録ヘッドrで形成された記録ビットを再構成する様子を示す図である。
【図14】記録ヘッドqで形成された記録ビットを再構成する様子を示す図である。
【図15】記録ヘッドpで形成された記録ビットを再構成する様子を示す図である。
【図16】記録ビットを再構成する様子の変更例を示す図である。
【図17】図6に示す記録ビットの再構成を行う最小単位を示す図である。
【図18】図7に示す記録ビットの再構成を行う最小単位を示す図である。
【図19】図8に示す記録ビットの再構成を行う最小単位を示す図である。
【図20】CT法を用いて記録データを再構成する場合の原理を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1〜10 記録ビット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う記録再生装置において、
前記磁気ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、
前記磁気ディスクに記録ビットを形成し、情報信号の記録を行う、互いに異なるアジマス角を有する複数の記録ヘッドと、
前記磁気ディスクに記録された情報信号の読み出しを行う複数の読み取りヘッドと、
前記記録ヘッド及び前記読み取りヘッドを走査するためのヘッド送り機構と、
前記記録ヘッド及び/又は前記読み取りヘッドにより記録及び再生する情報信号を増幅させる増幅部と、
情報信号をA/D変換するA/Dコンバータと、
記録データの再構成部とを備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドの前記アジマス角は±45°以下であり、また前記読み取りヘッドは、前記記録ヘッドに対応するアジマス角を有する薄膜磁気センサで構成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項3】
前記アジマス角は絶対値が同じで正負が異なる組合せであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の磁気記録再生装置。
【請求項4】
前記複数の記録ヘッドは、3種類であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁気記録再生装置。
【請求項5】
記録ディスク上にアジマス角が0°である記録ヘッドで記録ビット(φ0)を形成するステップと、
該記録ビット(φ0)上に、0°以外のアジマス角(φ1)を有する記録ヘッドで、記録ビット(φ0)の一部が上書きされるように記録ビット(φ1)を形成するステップと、
さらに、上書きされた記録ビット(φ1)の上に、さらに異なるアジマス角(φ2,3・・・)を有する記録ヘッドで記録ビット(φ2,3・・・)が形成されるステップとを含み、磁気ディスクに対して情報信号の記録を行う、ことを特徴とする磁気記録方法。
【請求項6】
上書きされる記録ビット(φ1,2,3・・・)は、隣接する記録ビット間に1ビット分以上間隔が空けられて形成されることを特徴とする請求項5に記載の磁気記録方法。
【請求項7】
磁気ディスクに記録された情報信号の再生を行う磁気再生方法において、
一度に再構成する最小単位領域の記録データセット(h)を未知数、読み取り信号を観測量(gm)とし、下記の観測方程式を解くことで重複して記録された磁気観測量データを得て、磁気ディスクに記録された磁気記録データを再構成することを特徴とする磁気再生方法。
[観測方程式]
【請求項1】
磁気ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う記録再生装置において、
前記磁気ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、
前記磁気ディスクに記録ビットを形成し、情報信号の記録を行う、互いに異なるアジマス角を有する複数の記録ヘッドと、
前記磁気ディスクに記録された情報信号の読み出しを行う複数の読み取りヘッドと、
前記記録ヘッド及び前記読み取りヘッドを走査するためのヘッド送り機構と、
前記記録ヘッド及び/又は前記読み取りヘッドにより記録及び再生する情報信号を増幅させる増幅部と、
情報信号をA/D変換するA/Dコンバータと、
記録データの再構成部とを備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドの前記アジマス角は±45°以下であり、また前記読み取りヘッドは、前記記録ヘッドに対応するアジマス角を有する薄膜磁気センサで構成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項3】
前記アジマス角は絶対値が同じで正負が異なる組合せであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の磁気記録再生装置。
【請求項4】
前記複数の記録ヘッドは、3種類であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁気記録再生装置。
【請求項5】
記録ディスク上にアジマス角が0°である記録ヘッドで記録ビット(φ0)を形成するステップと、
該記録ビット(φ0)上に、0°以外のアジマス角(φ1)を有する記録ヘッドで、記録ビット(φ0)の一部が上書きされるように記録ビット(φ1)を形成するステップと、
さらに、上書きされた記録ビット(φ1)の上に、さらに異なるアジマス角(φ2,3・・・)を有する記録ヘッドで記録ビット(φ2,3・・・)が形成されるステップとを含み、磁気ディスクに対して情報信号の記録を行う、ことを特徴とする磁気記録方法。
【請求項6】
上書きされる記録ビット(φ1,2,3・・・)は、隣接する記録ビット間に1ビット分以上間隔が空けられて形成されることを特徴とする請求項5に記載の磁気記録方法。
【請求項7】
磁気ディスクに記録された情報信号の再生を行う磁気再生方法において、
一度に再構成する最小単位領域の記録データセット(h)を未知数、読み取り信号を観測量(gm)とし、下記の観測方程式を解くことで重複して記録された磁気観測量データを得て、磁気ディスクに記録された磁気記録データを再構成することを特徴とする磁気再生方法。
[観測方程式]
【図1】
【図2】
【図5】
【図20】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図5】
【図20】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−32365(P2009−32365A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197726(P2007−197726)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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