説明

磁気記録媒体とその製造方法

【目的】 保磁力Hc並びに保磁力角形比S* を向上した磁気記録媒体とその製造方法を提供することを目的としている。特に基板をガラス基板とした場合に有効な技術である。
【構成】 非磁性(アルミニウム、ガラス等)材料の基板40の上に、貴金属を主成分とする膜41、Crを主成分とする下地膜42、Coを主成分とする磁性膜43、保護膜44を順次設けて磁気記録媒体が構成されている。製造は前記の膜を順次スパッタリングにより成膜して行う。基板40の加熱を必要とする場合は、貴金属を主成分とする膜41の形成後に行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高密度記録に適した磁気記録媒体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】パソコン等で採用されている磁気ハードディスクドライブにおける磁気記録媒体は、パソコン等の小型化に対応できるように記録密度の向上が図られる研究がなされている。この磁気記録媒体は従来アルミニウム基板にNiP メッキ(無電界メッキ)を施し円周方向に砥粒による研磨傷(テクスチャー)を付けた後に、Crを主成分とする下地膜と、Coを主成分とする磁性膜と、カーボンを主成分とする保護膜を順次真空中にてスパッタリングにより成膜し、必要に応じて真空中にて200〜300℃に加熱して製造されている。
【0003】これらの磁気記録媒体の高密度化には高い保磁力Hc、高い保磁力角形比S* 、高い残留角形比RSが要求される。例えば、現在の保磁力Hcは1400〜1600Oe、S* は93%以上、RSは90%以上であるが高密度化の為には、保磁力2000Oe以上、角形比も上記程度が要求される。
【0004】記録密度を向上させるもう一つの手段として、磁気ヘッドの浮上量の低減を図ることが重要である。現在のアルミニウム基板ではテクスチャー加工により基板表面を機械的に荒らしているため、表面の平滑性はRa=60A(オングストローム、以下Aで表示する)程度であり、ヘッドの浮上量は、約700A 程度が限界である。これにより記録密度の向上が阻害されている。そこで、表面の平滑性が高いガラス基板の採用が提案されており、一部実用化が始まっている。
【0005】このガラス基板では、表面の平滑性がRa=10A程度で非常に平滑でヘッドの浮上量はかなり低くでき200A 程度の浮上量も実現できる。しかしこのガラス基板では、アルミ基板と同様の成膜プロセスを使用すると多くの問題が発生する。例えば円周方向の機械的テクスチャーが施せないため、保磁力角形比S* が80%程度に低下してしまい、記録密度を向上できない等の問題点が発生する。保磁力角形比S* の低下を改良する手段として、ガラス基板に、TiとSiとからなる非晶質合金層を形成し、その上に磁性膜、保護膜を順次形成した磁気記録媒体(特開平4−247323号、特開平4−241222号)や、Crを主成分とする非磁性下地膜内に、Mo、Wのうち少なくとも1種を含ませ、この下地膜の上に磁性膜、保護膜を順次形成した磁気記録媒体(特開平5−325163号)が提案されている。これらの磁気記録媒体によれば、保磁力角形比S* として93%程度が得られているが、保磁力Hcは概ね1500〜1650Oe程度である。
【0006】また、ガラス基板上にNiP スパッタ膜を下地に使用し記録再生特性の改善を図る手段も提案されている(特開平5−205244号)。これらは磁性膜にCoNiCr磁性膜や、CoCrPt磁性膜を使用しているがこれらの磁性膜は結晶粒径が大きくなり、ノイズ特性が悪い問題がある。
【0007】ノイズ等の記録再生特性が良好な材料として、CoCrTa、CoCrPtTa等のTaを含有する磁性膜は、テクスチャーを施したアルミニウム基板上では保磁力角形比S*が93%程度のものが得られるが、テクスチャーの施されていないアルミニウム基板では、保磁力角形比S* が80%程度しか得られない欠点を持つ。
【0008】このようにガラス基板上では、保磁力角形比S* は80%程度と低いものしか得られず記録密度を向上できない。また保磁力HcはCoCrTaでは、1400Oe程度、CoCrPtTaでは、1800Oe程度が限界である。
【0009】ガラス基板とアルミニウム基板での保磁力Hcの比較も行われているが、CoCrTaの磁性膜は、ガラス基板を用いた場合、アルミニウム合金基板を用いた場合に比べて保磁力が低い事がわかっている(日立金属技報Vol .10(1994)P39〜44、図3)。
【0010】これらの保磁力が現れるのはCr合金膜が基板上に(200)面が結晶成長し、そのうえにCo合金磁性膜のC軸が前記(200)面内に沿う形でCoが結晶配向するためと考えられている。
【0011】これらの低い保磁力Hcを向上させるために、ガラス基板の上にW下地膜を形成する提案(特開平5−81637号)や、ガラス基板と下地膜の間にTi、Mo、W、Zu、Al、Mu、Si等の金属やSiO 2 、Al2 O 3 、TiN 、AlN 等の酸化物または窒化物膜を形成する提案(特開平2−29923号)も知られている。
【0012】しかしながら、これらの手段によって得られる保磁力Hcは概ね1000〜1300Oe程度である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】前記の従来の種々の改良提案では、保磁力Hcの向上が、記録密度の向上の為には未だ不十分であった。
【0014】本発明は保磁力Hc並びに保磁力角形比S* を向上した磁気記録媒体とその製造方法を提供することを目的としている。
【0015】ヘッドの浮上量を小さくできるガラス基板とした場合、ガラス基板の表面および基板内部にはNa、K等の不純物が、アルミニウム合金基板等の金属基板より多く含まれ、かつ大気成分が吸蔵、吸着されており、成膜時に加熱を受けた際に下地膜としてのCr合金膜の(200)面成長が、前記不純物や大気成分により阻害され、下地膜の上に形成されるCo合金磁性膜のC軸が基板面に対して平行となるような結晶成長が阻害されると考えられる。この為、保磁力角形比S* が高く、かつ保磁力Hcの高い磁気記録媒体が得られない。
【0016】またガラス基板は赤外線ヒータ加熱では、温度が上がりにくく、アルミニウム基板よりも長時間加熱する必要があるため、不純物が真空中に多く放出される。その為下地膜および磁性膜を構成するCr、Coの成長が阻害されやすく、磁気特性が悪い問題が発生していると考えられている。
【0017】更には、ガラス基板においては、従来のCoNiCr磁性膜は粒径が大きく磁化遷移領域におけるジグザグ磁壁の磁気遷移幅を小さくできない。そこで媒体ノイズが高く高密度化には適さない。そこで粒径が小さなCoCrTa系の磁性膜を使用する方がよい。しかしこのCoCrTa系は保磁力Hcが低く保磁力角形比S* も低い問題があるためこれを解決する必要がある。
【0018】このように本発明はこれらCo合金膜、特にCoCrTa等のTaを含有する磁性膜において、特にガラス基板での保磁力Hcの低下、保磁力角形比S* の低下を解決する事を目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】前記の如くの目的を達成した本発明は、アルミニウム基板、ガラス基板等の非磁性基板とCrを主成分とする下地膜の間に貴金属を主成分とする膜を設けるようにしたものである。
【0020】即ち本発明の磁気記録媒体は、非磁性基板上にCrを主成分とする下地膜、Coを主成分とする磁性膜、保護膜が順次積層された磁気記録媒体において、前記非磁性基板とCrを主成分とする下地膜の間に、貴金属を主成分とする膜が設けてあることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0021】又、前記貴金属を主成分とする膜は、Au、Ag、Ir、Os、Pd、Pt、Rd、Ruの膜又はこれらの貴金属の内の少なくとも1種類の材料を主成分とする合金の膜としたことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0022】又、前記非磁性基板は、無電界メッキが施された、アルミニウムを主成分とする基板であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0023】又、前記非磁性基板は、ソーダガラス、強化ガラス、結晶化ガラス、セラミックまたはカーボンのいずれかの非金属基板であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0024】次に本発明の磁気記録媒体の製造方法は、非磁性基板上に、貴金属を主成分とする膜を形成した後、Crを主成分とする下地膜、Coを主成分とする磁性膜、保護膜を順次所定の厚さで形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0025】又、非磁性基板上に、貴金属を主成分とする膜を形成した後、前記非磁性基板を加熱し、Crを主成分とする下地膜、Coを主成分とする磁性膜、保護膜を順次所定の厚さで形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0026】又、前記貴金属を主成分とする膜は、Au、Ag、Ir、Os、Pd、Pt、Rd、Ruの膜又はこれらの貴金属の内の少なくとも1種類の材料を主成分とする合金の膜とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0027】又、非磁性基板は、無電界メッキが施された、アルミニウムを主成分とする基板とした磁気記録媒体の製造方法である。
【0028】又、前記非磁性基板は、ソーダガラス、強化ガラス、結晶化ガラス、セラミックまたはカーボンのいずれかの非金属基板とした磁気記録媒体の製造方法である。
【0029】
【作用】この発明の磁気記録媒体によれば、貴金属を主成分とする膜によって、基板からの不純物、特にガラス基板におけるNa、K 等の拡散を防止する事により、成膜雰囲気の真空中の不純物濃度を下げ、その後成膜する下地膜におけるCrの(200)面の成長を促進し、結晶配向の良い膜の形成を可能にし、同時にその後成膜するCo合金磁性膜の結晶配向の良い膜成長を可能にする。
【0030】これにより、ガラス基板であっても、高保磁力Hcで、かつ保磁力角形比S* が92%以上とテクスチャーを施したアルミ基板並みの優れた磁気特性を実現できる。
【0031】ガラス基板を真空中に導入し、基板上に最初に貴金属を主成分とする膜をスパッタリングにより形成し、その後加熱することにより、基板からのH2 O等のガス放出を低下させ、真空度の低下をおさえることができる。
【0032】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1を参照して説明する。図中(a)が実施例の断面図、(b)が従来品の断面図である。
【0033】基板40として、アルミニウム基板では表面に10ミクロン程度のNiP メッキ(無電界メッキ)を施し、円周方向にテクスチャーが施されたものが使用される。大きさは、外径95mm、65mm、48mm等とし、厚みは1.27mm、0.8mm、0.635mm等とする。また非金属基板としては、ガラス基板では、ソーダガラス、強化ガラス、あるいは、米国CORNING 社製の結晶化ガラス(カナサイト)が使用でき、同様にセラミック基板としては、アルミナ系の基板や、その他カーボンを主成分とする基板も使用することができる。
【0034】これら基板40上に貴金属薄膜41が形成されており、その貴金属はAu、Ag、Ir、Os、Pd、Pt、Rd、Ruの一つ或いはこれら貴金属の内、少なくとも1種類を主成分とする合金膜とされている。その膜厚は例えば、Ptを主成分とする合金(PtSi、PtC 、PtB 、PtNiP 等)を使用した場合は膜厚が、10〜2000A (1〜200nm)、好ましくは200〜1000A (20〜100nm)程度で以下で説明するように保磁力Hc、保磁力角形比S* が優れた磁気記録媒体が得られる。Pt以外の貴金属の合金としては、Agの合金AgSi、AgB 、Irの合金IrSi、IrB 、Osの合金OsSi、OsB 、Pdの合金PdB 、PdC 、Rdの合金RdSi、RdB 、Ruの合金RuSi、RuB を採用することができる。膜厚は前記Ptを主成分とする合金と同様とする。
【0035】この貴金属薄膜41の上に積層してCrを主成分とした下地膜42が形成してある。
【0036】膜厚は10〜2000A (1〜200nm)で、好ましくは300〜1000A(30〜100nm)である。前記膜厚の範囲内では、Crを主成分とした下地膜42の膜厚に保磁力Hcは比例して増加する。
【0037】前記下地膜42の上に積層してCoを主成分とする磁性膜43が形成されている。膜厚は10〜1000A (1〜100nm)程度で、好ましくは、100〜500A (10〜50nm)である。Co合金に含まれる他の組成は、Crが5〜20at%、Taが0.5〜8at%、その他に、Ni、Pt等を含ませることも可能である。
【0038】典型的には、Co-12at%Cr-2at%Ta 等のCoCrTa系、Co-30at%Ni-7.5at%Cr 等のCoNiCr系、Co-13at%Cr-6at%Pt-3at%Ta、Co-13at%Cr-12at%Pt等のCoCrNiPtTa系とすることができる。
【0039】前記磁性膜43の上に積層して保護と潤滑性を付与するためのカーボン系の保護膜44が10〜300A (1〜30nm)程度積層されている。この保護膜44の表面には、必要に応じてフォンブリン系のグリースが、10〜40A (1〜4nm)程度塗布する場合もある。
【0040】図1(a)、(b)に示したように実施例の磁気記録媒体の構造は、従来品に対し、下地膜42と、基板40の間に貴金属薄膜41を設けている点で相違しているものである。
【0041】図2には実施例の磁気特性を示した。磁気特性を測定した磁気記録媒体は、貴金属薄膜41をPtを主成分とする合金膜(PtSi)とし厚さを50nmとした。Crを主成分とした下地膜42はCrとし、厚さ100nm、Coを主成分とする磁性膜43は厚さを35nmとし、Co-12at%Cr-2at%Ta とCo-13at%Cr-6at%Pt-3at%Taの場合について測定した。基板40はアルミニウム基板またはガラス基板(結晶化ガラス)を用いた。また保護膜44は、Cを20nmとした。
【0042】比較のために、同様のアルミニウム基板およびガラス基板でなる基板40に、図1(b)のようにCrを主成分とするCrの下地膜42を100nm、前記と同様の組成のCoを主成分とする磁性膜43を35nm、Cの保護膜44を20nmとした従来技術の場合を測定して図2R>2に示してある。
【0043】また表1には、基板40としてガラス基板(結晶化ガラス)を用い、前記と同様の貴金属薄膜41を50nm、Crを主成分とした下地膜42を100nm、Co-13at%Cr-6at%Pt-3at%Taの磁性膜43を35nm、保護膜44を20nmとした実施例と、従来技術としては、ガラス基板を用いて、貴金属薄膜41を設けることなく、Nip 膜を50nmを設けたものと設けないもの、並びに磁性膜43としては前記と同様のCoCrPtTa膜と、Co-13at%Cr-12at%Ta膜としたものについて磁気特性を示した。
【0044】
表1 磁気特性の下地層依存性(ガラス基板)
加熱温度 Hc Brd S* Rs (℃) (Oe) (Gum) (%) (%)
本実施例 貴金属薄膜/Cr/Co13Cr6Pt3Ta 350 2600 280 94 95 (合金膜)
従来技術 NiP /Cr/Co13Cr6Pt3Ta 350 1900 280 86 98 従来技術 下地なし /Cr/Co13Cr6Pt3Ta 350 1900 280 84 92 従来技術 NiP /Cr/Co13Cr12Pt 350 2300 310 86 87
【0045】図2および表1から明らかなように、実施例では保磁力Hcについては最大2600Oeと向上でき、また保磁力角形比S* については94〜87%と向上でき、従来技術に比べて優れた磁気記録媒体が得られた。
【0046】図3および図4はCo-13at%Cr-6at%Pt-3at%Taの磁性膜43のグレイン径(結晶粒の大きさ)およびグレイン径の分布を調べたものである。図3が実施例の磁性膜43、図4が従来技術の磁性膜43である。
【0047】実施例の磁性膜43のグレイン径は平均230Aであり、従来技術の平均280Aに比べてグレイン径が小さく、またグレインの大きさもそろっていることが判明し、磁気特性に有効に作用していると認められた。
【0048】前記実施例の磁気記録媒体の製造には図5に示したような典型的なインライン型スパッタ装置が望ましい。装置は、大気開放が繰り返される装入室21と排出室22の間に、ゲートバルブ23、23を介設して、スパッタ室24、加熱室25、スパッタ室26、27、28を順次連設して構成されている。前記基板40はパレットと称するディスクキャリア(図示していない)に支持されて装入室21側から矢示29の方向に、排出室22へ向けて、間欠的に移送されて、スパッタ室24、26〜28では両面がターゲット(図示していない)と対向し、また加熱室25では両面がヒータと対向し、成膜或いは加熱が行なわれる。
【0049】加熱室25および各スパッタ室24、26〜28は、1 x10-7Torr以下の到達圧力に高真空ポンプ等により排気される。加熱室25は最低2個の赤外線ヒータを備え、ディスクキャリアで搬送されてくる基板40を、両面から加熱できるように赤外線ヒータが対向して配置されている。加熱室25の次にはスパッタ室26、27、28が複数設置されており、各スパッタ室24、26〜28には最低2個以上のターゲット電極を備え、基板40の両面に同時に成膜できるようになっている。
【0050】各室はゲートバルブ23で仕切られており、ディスクキャリアはスパッタ室の下部に設置されている搬送機構により自由に所定のスパッタ室或いは加熱室へ移動が可能となっている。またスパッタ室をゲートバルブ23で仕切る事によりスパッタ室間のクロスコンタミネーションを防止するような構造になっている。
【0051】前記基板40を装入室21を介して真空中に導入し高真空排気しある程度の脱ガスを行う。成膜時のスパッタ室24、26〜28は、1〜20m Torr程度になるまでアルゴンガスを導入する。膜厚はスパッタガス圧、ターゲット電極に投入するパワー、放電時間で制御する事ができ、スパッタガス圧は1〜10m Torr、投入パワーは0.3〜3.0Kwが望ましい。
【0052】実施例では前記貴金属薄膜41をスパッタ室24で、Crを主成分とした下地膜42をスパッタ室26で、Coを主成分とする磁性膜を43をスパッタ室27で、そしてカーボン系の保護膜44をスパッタ室28で順次連続成膜し排出室22へ排出するようにしている。前記貴金属薄膜41については200〜1000A (20〜100nm)程度、Crを主成分とした下地膜については300〜1000A(30〜100nm)程度、Coを主成分とする磁性膜については100〜500A(10〜50nm)程度に膜厚を制御して、保磁力Hc、保磁力角形比S* とも良好な媒体を得る事ができる。
【0053】加熱は前記貴金属薄膜41の成膜後が望ましく、従来のアルミニウム基板では150〜300℃、前記ガラス基板等の非金属基板では必要に応じて200〜500℃に加熱するのが望ましい。
【0054】従って、加熱の必要が無い場合は、装置は加熱室25の無いもので構成し、貴金属薄膜41、下地膜42、磁性膜43、保護膜44を順次成膜するようにする。
【0055】
【発明の効果】以上に説明した通り本発明によれば、保磁力Hcおよび保磁力角形比S* を向上した磁気記録媒体とできる効果がある。
【0056】また、磁性膜のグレイン径の微細化および粒径の均一化が図られるので、磁気記録媒体の電気的特性、特に記録再成特性のノイズ低減に効果がある。
【0057】更に非磁性基板はガラス基板等でもアルミニウム基板でも略同等の特性を得て、基板の材質に左右されない効果があり、製造の管理も容易となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気記録媒体の一部拡大断面図で、(a)は実施例、(b)は従来技術のものである。
【図2】実施例の磁気特性のグラフで、(a)は保磁力Hcのグラフ、(b)は保磁力角形比S* のグラフである。
【図3】実施例の磁性膜のグレイン径の図で、(a)は顕微鏡(60万倍)写真の模写図、(b)はヒストグラムである。
【図4】従来技術の磁性膜のグレイン径の図で、(a)は顕微鏡(60万倍)写真の模写図、(b)はヒストグラムである。
【図5】実施例の製造装置の構成図である。
【符号の説明】
21 装入室
22 排出室
23 ゲートバルブ
24、26、27、28 スパッタ室
25 加熱室
40 基板
41 貴金属薄膜
42 下地膜
43 磁性膜
44 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】 非磁性基板上にCrを主成分とする下地膜、Coを主成分とする磁性膜、保護膜が順次積層された磁気記録媒体において、前記非磁性基板とCrを主成分とする下地膜の間に、貴金属を主成分とする膜が設けてあることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】 貴金属を主成分とする膜は、Au、Ag、Ir、Os、Pd、Pt、Rd、Ruの膜又はこれらの貴金属の内の少なくとも1種類の材料を主成分とする合金の膜としたことを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項3】 非磁性基板は、無電界メッキが施された、アルミニウムを主成分とする基板であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項4】 非磁性基板は、ソーダガラス、強化ガラス、結晶化ガラス、セラミックまたはカーボンのいずれかの非金属基板であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項5】 非磁性基板上に、貴金属を主成分とする膜を形成した後、Crを主成分とする下地膜、Coを主成分とする磁性膜、保護膜を順次所定の厚さで形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】 非磁性基板上に、貴金属を主成分とする膜を形成した後、前記非磁性基板を加熱し、Crを主成分とする下地膜、Coを主成分とする磁性膜、保護膜を順次所定の厚さで形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】 貴金属を主成分とする膜は、Au、Ag、Ir、Os、Pd、Pt、Rd、Ruの膜又はこれらの貴金属の内の少なくとも1種類の材料を主成分とする合金の膜とする請求項5または6記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】 非磁性基板は、無電界メッキが施された、アルミニウムを主成分とする基板とした請求項5または6記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】 非磁性基板は、ソーダガラス、強化ガラス、結晶化ガラス、セラミックまたはカーボンのいずれかの非金属基板とした請求項5または6記載の磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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