説明

磁気記録媒体の評価方法

【課題】 ヘッドに潤滑剤の移着が生じる磁気記録媒体においても、ヘッド浮上特性を正しく評価する方法を提供することにある。
【解決手段】 磁気記録媒体のヘッド浮上特性を評価する際に、参照試料のグライド高さを確認する工程を設ける。より具体的には、連続する2回のグライド高さ測定で合格と判定される磁気記録媒体を参照試料として準備する。ヘッド浮上特性の評価を行う磁気記録媒体に対してグライド高さ測定を行った後、引続いて参照試料のグライド高さ測定を行い、測定ヘッドへの潤滑剤の移着の有無を確認するとともに、測定ヘッドに移着した潤滑剤をクリーニングする。参照試料の測定頻度を減少して行っても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮上型磁気ヘッドにより記録・再生を行う磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体の表面を評価する方法に関し、特に、磁気記録媒体のヘッド浮上特性を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浮上型磁気ヘッドを用いた磁気記録装置においては、磁気記録媒体の表面上で磁気ヘッドを高速で走行させ、磁気ヘッドと磁気記録媒体の間に生じる動圧を利用して磁気ヘッドを浮上させている。磁気記録媒体がディスク形状の場合には、磁気記録媒体を高速で回転することにより磁気ヘッドを浮上させているが、この時の回転数は数千回転/分にも及ぶことから、磁気記録媒体の表面上に突起がある場合には、磁気ヘッドがこの突起に接触あるいは衝突(以下、単に接触と記す。)して、正常な動作が困難となり、場合によっては、磁気ヘッドあるいは磁気記録媒体に損傷を生じることとなる。
磁気記録媒体と磁気ヘッドとの間隙は20nm以下のレベルであることから、磁気記録媒体が有する突起に限らず、ごく微小な異物(塵埃、ダスト、パーティクル等)の付着によっても磁気ヘッドの安定浮上が阻害される。このため、磁気記録媒体の表面上にこれらの突起、異物が存在せず、平滑であることを確認するために、グライド高さと呼ばれる特性の評価が行われてきた(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
しかしながら、記録密度の向上とともに、磁気記録媒体と磁気ヘッドの間隙はますます狭小化しつつあり、従来とは異なる問題が浮上してきている。
磁気記録媒体は、磁気記録層を磁気ヘッドとの接触、摺動による損傷、および腐食から保護するために磁気記録層上にDLC(ダイアモンド・ライク・カーボン)膜等から成る保護膜が形成されており、保護膜上には潤滑性をより高めるため、PFPE(パー・フルオロ・ポリ・エーテル)等の潤滑剤を用いた潤滑膜が形成されている。潤滑剤は、磁気記録媒体を保護するためのものであり、磁気記録媒体上に留まることが望ましいが、磁気ヘッドと磁気記録媒体が接触した場合には、ごく一部であるが磁気ヘッドに移着する。磁気ヘッドは、記録・再生を担う磁気素子と浮上を担うヘッドスライダーを主たる構成要素としており、ヘッドスライダーの形状により浮上特性を設定している。潤滑剤が移着した磁気ヘッドは、ヘッドスライダーの形状に実質的な変化を生じるため、浮上特性が不安定となり、場合によっては、浮上量が低下する。磁気ヘッドと磁気記録媒体の間隙が小さくなるとともに、潤滑剤の移着により生じる浮上特性の変動は無視できない影響をもたらすこととなり、場合によっては磁気記録媒体と磁気ヘッドの接触が生じるようになってきた。
【0004】
潤滑剤の移着の程度は種々の要因により変動する。潤滑剤の材料は無論のこと、潤滑剤の塗布の均一性、潤滑剤の後処理条件等の製造条件によっても変動するが、従来のグライド高さ評価方法では潤滑剤の移着による影響を評価することは困難であった。
【特許文献1】特開平11-260014
【特許文献2】特開平7-326049
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のグライド高さ評価は、グライド高さ測定用のヘッドと磁気記録媒体との接触を検出し、接触が検出された磁気記録媒体を不良と判定し、検出されない磁気記録媒体を良品と判定するのみであり、接触が生じる要因を識別することは困難であった。この結果、潤滑剤の移着が接触の要因となる場合には次の問題を生じる。
第1の問題としては、潤滑剤の移着によりグライド高さ測定ヘッドの浮上量が低下した場合には、引き続くグライド高さ評価においてもグライド高さ測定ヘッドの浮上量は低下したままである。従って、本来、良品と判定すべき磁気記録媒体の評価においても、接触が生じて不良と判定する場合が生じる。
第2の問題としては、グライド高さ評価の最終段階(例えば、グライド高さ測定ヘッドが磁気記録媒体に着陸する段階)で潤滑剤の移着が生じる場合には、評価した磁気記録媒体は、潤滑剤の移着が生じることから本来は不良と判定されるべきところが、最終段階であるがために判定対象とならずに良品として判定される場合が生じる。
【0006】
第3の問題としては、潤滑剤の移着によりグライド高さ測定ヘッドの浮上特性が変動する結果生じるその他の誤判定が生じる。
本発明は上記の問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、磁気記録媒体表面上に存在する突起あるいは異物を検出することに加えて、磁気記録媒体からヘッドへの潤滑剤の移着の程度を把握するとともに、潤滑剤の移着の少ない磁気記録媒体を効率的に選別する評価方法を提供する点にある。さらには、グライド高さ測定ヘッドへ移着した潤滑剤をクリーニングして、連続して使用可能とする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明では、磁気記録媒体のヘッド浮上特性を評価する際に、参照試料のグライド高さ測定を行うこととする。より具体的には、連続する2回のグライド高さ測定で合格と判定される磁気記録媒体を参照試料とし、参照試料のグライド高さ測定を参照試料測定とする。そして、ヘッド浮上特性の評価を行う複数の磁気記録媒体を対象とする複数のグライド高さ測定の間で、少なくとも1回の参照試料測定を行うことを特徴とする。
ヘッド浮上特性の評価を行う磁気記録媒体を対象としてグライド高さ測定を行う毎に、毎回参照試料測定を行っても良い。
【発明の効果】
【0008】
上述のようにしてヘッド浮上特性の評価を行うことにより、単に磁気記録媒体表面上に存在する突起あるいは異物を検出するだけでなく、磁気記録媒体からヘッドへ潤滑剤の移着が生じる磁気記録媒体においても、潤滑剤の移着の程度を把握してヘッド浮上特性を正しく評価することができる。さらには、測定に用いるグライド高さ測定ヘッドに移着した潤滑剤をクリーニングして、引続くヘッド浮上特性の評価において、潤滑剤の移着に伴う誤判定を生じることなく評価することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の詳細について説明する。図1は本発明を実施するための最良の形態を説明するための図で、グライド高さに関する一連の磁気記録媒体評価を実施する手順を概念的に示したものである。
始めに、参照試料測定0(S01)を行い、使用するグライド高さ測定ヘッドが使用可能であることを確認する。
確認の後、評価を行う磁気記録媒体を用いてグライド高さ測定1(S10)を行い、引続き、参照試料を用いて参照試料測定1(S11)を行う。グライド高さ測定1および参照試料測定1を併せて、一つのヘッド浮上特性評価1を構成する。グライド高さ測定1および参照試料測定1の両者とも合格となる場合に、評価した磁気記録媒体は良品と判定される。参照試料測定1が不合格となる場合についての処理は後述する。
【0010】
引続き、評価を行う異なる磁気記録媒体を用いて、グライド高さ測定2(S20)、参照試料測定2(S21)を同様にして実施する。
以下、同様の手順をN回繰り返して一連の磁気記録媒体評価を終了する。
グライド高さ測定の方法は、磁気記録媒体のグライド高さを測定する通常の方法を使用できる。例えば、所定の浮上量に設定したヘッドスライダーを準備し、ヘッドスライダーと磁気記録媒体の接触を検出するためのAE(Acoustic Emission)素子あるいはピエゾ素子等を装着してグライド高さ測定ヘッドとする。グライド高さ測定ヘッドが所定の浮上量となる周速で磁気記録媒体を回転させながら、磁気記録媒体の測定を行う領域にわたってグライド高さ測定ヘッドを移動し(以下、シーク動作と呼ぶ)、磁気記録媒体とグライド高さ測定ヘッドの接触の有無を判定する。接触の有無は、検出素子からの出力が予め定められた基準値を超えるか否かによって判定され、超えた場合に不合格とされる。
【0011】
グライド高さ測定の確度を上げる目的で、同一の磁気記録媒体に対してグライド高さ測定を複数回繰り返すことが可能であることは言うまでもない。
参照試料測定は、グライド高さ測定ヘッドへの潤滑剤の移着の程度を判定する目的とともに、グライド高さ測定ヘッドに移着した潤滑剤のクリーニングを行う目的を併せ持ったもので、グライド高さ測定で用いたグライド高さ測定ヘッドと、参照試料を用いて行う。その方法は、グライド高さ測定の方法と同様にして行う。シーク動作の範囲は、グライド高さ測定ヘッドに潤滑剤が移着していないことを充分に確認するため、およびグライド高さ測定ヘッドに潤滑剤が移着していた場合にはそれを充分にクリーニングするために、参照試料の全面にわたってシーク動作することが好ましい。参照試料測定にかかる時間を短縮する目的で、シーク動作の範囲を参照試料の一部に限定することも可能である。
【0012】
参照試料としては、連続する2回のグライド高さ測定で合格と判定される磁気記録媒体を使用する。これは、磁気記録媒体への潤滑剤の移着がない、もしくは極めて微量で実質的にグライド高さ測定ヘッドの浮上特性を損なうことがない試料を参照試料とするためである。このことにより、参照試料測定において不合格の判定になる場合に、不合格の要因は参照試料自体に起因するものではなく、グライド高さ測定ヘッドに起因するものであると判定可能となる。より具体的には、グライド高さ測定ヘッドと参照試料が接触した信号が検出されて不合格の判定となる場合で、かつグライド高さ測定ヘッド自体は良好な浮上特性を示していた場合には、直前のグライド高さ測定において潤滑剤の移着が生じ、グライド高さ測定ヘッドの浮上量が低下したものと判定することができる。
参照試料として安定性のより高い試料を用いることを目的として、グライド高さ測定で合格する連続回数を3回以上に設定して選択することも無論可能である。
【0013】
参照試料としては、ヘッド浮上特性の性能が確保されている磁気記録媒体であれば充分使用可能である。即ち、参照試料にかかるコストを削減する目的で、他の諸特性において不良と判定される磁気記録媒体を使用することができる。例えば、記録・再生特性(リード・ライト特性とも呼ばれる。)において不良と判定される磁気記録媒体であっても、磁気特性等に問題があるだけであり、グライド高さに問題が生じるものではない。また、参照試料として、グライド高さの性能が確保された特別のディスクを準備して使用することも可能である。例えば、磁気記録層を有しないディスクを用いることもできる。これらの場合において、連続する2回のグライド高さ測定で合格と判定される性能が必要とされることはいうまでもない。
なお、参照試料としては、キャリブレーションディスク(あるいはバンプディスクとも呼ばれる。)は不適である。キャリブレーションディスクは、グライド高さ測定ヘッドの浮上高さ近傍の所望の高さを有する突起を予め設けたディスクであり、グライド高さ測定ヘッドの浮上高さを確認するために用いられる。その目的からして、グライド高さ測定ヘッドと突起が接触することを当初から想定したものであり、グライド高さ測定ヘッドへの潤滑剤の移着による接触と区分ができないためである。
【0014】
グライド高さ測定の結果と参照試料測定の結果の両者を併せて、次の4通りの判定ならびに処理が行われる。
1)グライド高さ測定が合格、参照試料測定が合格の場合
磁気記録媒体の突起等およびグライド高さ測定ヘッドへの潤滑剤の移着が問題のないレベルであることが確認されることとなり、該当する磁気記録媒体は良品と判定され、次の磁気記録媒体の測定に進む。
2)グライド高さ測定が合格、参照試料測定が不合格の場合
磁気記録媒体の突起等は問題がないが、グライド高さ測定ヘッドへの潤滑剤の移着が生じたものと判定され、該当する磁気記録媒体は不良と判定される。グライド高さ測定ヘッドヘ移着した潤滑剤をクリーニングすること、あるいはグライド高さ測定ヘッドに移着した潤滑剤がクリーニングされたことを確認することを目的として、再度参照試料測定を行う。再度の参照試料測定は予め設定した回数を上限として、接触が検出されなくなるまで行う。
【0015】
上限とする回数は、参照試料測定に要する時間を考慮して設定されるが、1回が好ましい。上限に達した場合は、参照試料の交換を行う。
3)グライド高さ測定が不合格、参照試料測定が不合格の場合
磁気記録媒体は突起等を有し、かつ、グライド高さ測定ヘッドへの潤滑剤の移着が生じたものと判定され、該当する磁気記録媒体は不良と判定される。前項と同様にして再度参照試料測定を行う。
4)グライド高さ測定が不合格、参照試料測定が合格の場合
磁気記録媒体は突起等を有するが、グライド高さ測定ヘッドへの潤滑剤の移着は問題がないものと判定され、該当する磁気記録媒体は不良と判定される。グライド高さ測定ヘッドはその状態で使用可能であり、次の磁気記録媒体の測定に進む。
【0016】
上述の4通りの結果に従って、次のステップに進み、所定の磁気記録媒体の評価を終了した段階で一連の評価を終了する。
図1においては、グライド高さ測定を行う毎に参照試料測定を行うこととしているが、参照試料の測定を行う頻度を削減することは可能である。例えば、グライド高さ測定を2回以上連続して行った後に参照試料測定を行うことができる。この場合は、参照試料測定が不合格となった場合には、前回の参照試料測定以降に評価された磁気記録媒体は不合格の判定を行うことととなるため、参照試料測定に要する時間と、複数の磁気記録媒体が不合格と判定されるデメリットを勘案した上で参照試料測定の頻度を適切に設定することとなる。
【実施例1】
【0017】
図1の手順を用いて磁気記録媒体の評価を実施した例について説明する。
使用した磁気記録媒体は、図2に示す断面構成を有する磁気記録媒体で、アルミニウムからなる非磁性基板1上に、下地層2、磁気記録層3、カーボンからなる保護層4、パーフルオロポリエーテルからなる潤滑剤層5を順次形成したもので、直径95mm、厚み1.27mmのディスク形状である。
グライド高さ測定ヘッドとして、ピエゾ素子を検出素子として取付けたヘッドを準備した。初めに、所定の高さの突起を有するキャリブレーションディスクを用いて測定条件のキャリブレーションを行い、グライド高さ測定ヘッドの浮上量が所定の浮上量である7.5nmとなるように磁気記録媒体の回転数を設定し、また合否の判定を行うピエゾ素子の出力信号レベルを50mVに設定した。
【0018】
グライド高さ測定および参照試料測定を行う領域は、磁気記録媒体の有効領域全面を対象とすることとし、シーク動作は磁気記録媒体の内周から始めて、外周に向けて行うこととした。
参照試料としては、量産された磁気記録媒体を用いた。量産工程における各種検査に合格したもので、予め、連続する2回のグライド高さ測定を行い、合格したものを準備した。
評価を行う磁気記録媒体として、表1に示す磁気記録媒体の内のA、Bの2種類の磁気記録媒体を準備した。
【0019】
【表1】

潤滑剤の移着量は、3回のCSS(コンタクト・スタート・ストップ)を行った後に、使用した磁気ヘッドのスライダー面を光学顕微鏡を用いて観察することにより、移着量の程度を判定したものであり、移着量が多い場合に不良と判定される。
ここで、CSSとは次のシーケンスを繰り返すものである。1)静止状態の磁気記録媒体表面上に磁気ヘッドを載置する。2)引続き、磁気記録媒体を徐々に回転して磁気ヘッドを浮上させる。3)所定の時間にわたって回転を維持する。4)磁気記録媒体の回転を徐々に停止して磁気ヘッドを磁気記録媒体表面上に着陸させる。1)から4)を一回のCSSとして、これを繰り返す。
【0020】
グライド高さは、一回のグライド高さ測定の結果により判定したものである。
始めに、前述の参照試料を用いて、参照試料測定0を行った。グライド高さ測定ヘッドが所定のヘッド浮上量となる条件にて、グライド高さ測定ヘッドを内周部から外周部にかけてシーク動作させ、検出素子の出力信号を測定した。出力信号は約30mVとバックグラウンドレベルであり、グライド高さ測定ヘッドは正常な状態にあることを確認した。
次に、磁気記録媒体Aを用いてグライド高さ測定1を行った。グライド高さ測定ヘッドが所定のヘッド浮上量となる条件にて、グライド高さ測定ヘッドを内周部から外周部にかけてシーク動作させ、検出素子の出力信号を測定した。出力信号は100mVを超えて不合格と判定された。
次に、前述の参照試料を用い、参照試料測定0と同様にして参照試料測定1を行った。出力信号は50mVを超えて不合格と判定された。磁気記録媒体Aを測定した際に、グライド高さ測定ヘッドへの潤滑剤の移着があり、グライド高さ測定ヘッドの浮上量が低下したことが判明した。
【0021】
手順に従って、再度参照試料測定1を行った。出力信号は約30mVとバックグラウンドレベルであり、合格と判定された。これは、前回の参照試料測定の際に、グライド高さ測定ヘッドに移着した潤滑剤がクリーニングされて、グライド高さ測定ヘッドの浮上量が回復したためである。
次に、磁気記録媒体Bを用いて、グライド高さ測定1と同様にしてグライド高さ測定2を行った。出力信号は約30mVとバックグラウンドレベルであり、合格と判定された。
次に、前述の参照試料を用いて、参照試料測定0と同様にして参照試料測定2を行った。出力信号は約30mVとバックグラウンドレベルであり、合格と判定された。
以上のようにして、グライド高さ測定ヘッドに潤滑剤が移着した場合においても、参照試料測定を行うことによりグライド高さ測定ヘッドのクリーニングが行われ、以降のグライド高さ測定を良好に行うことができた。
【0022】
最後に、確認のために、前述したキャリブレーションディスクを用いてグライド高さ測定ヘッドのキャリブレーションを行った。所定の高さの突起の検出状態は、初めのキャリブレーションの時と変わらず、グライド高さ測定ヘッドの状態は測定開始前と変わっていないことが確認された。
(比較例1)
図1の測定手順の内で、参照試料測定を省略して磁気記録媒体の評価を行った例について示す。但し、グライド高さ測定ヘッドが良好な状態であることを確認するため、参照試料測定0だけは行っている。
参照試料としては、実施例1と同一の磁気記録媒体を使用し、評価を行う磁気記録媒体として、実施例1と同一の、表1に示すA、Bの2種類の磁気記録媒体を用いた。グライド高さ測定ヘッドも実施例1と同一である。また、グライド高さ測定方法、参照試料測定方法も実施例1と同様の方法である。
【0023】
始めに、参照試料を用いて、参照試料測定0を行った。出力信号は約30mVとバックグラウンドレベルであり、グライド高さ測定ヘッドは正常な状態にあることを確認した。
次に、磁気記録媒体Aを用いてグライド高さ測定1を行った。出力信号は100mVを超えて不合格と判定された。
次に、磁気記録媒体Bを用いて、グライド高さ測定2を行った。出力信号は50mVを超えて不合格と判定された。磁気記録媒体Aを測定した際に、グライド高さ測定ヘッドへの潤滑剤の移着があり、グライド高さ測定ヘッドの浮上量が低下したためである。
グライド高さ測定ヘッドへ潤滑剤が移着したままの状態で測定を行う場合は誤判定が生じることが判明した。
【実施例2】
【0024】
図1の手順を用いて磁気記録媒体の評価を実施した他の例について説明する。
参照試料としては、実施例1と同一の磁気記録媒体を使用し、評価を行う磁気記録媒体として、表1に示すB、C、Dの3種類の磁気記録媒体を用いた。グライド高さ測定ヘッドは実施例1と同一である。また、グライド高さ測定方法、参照試料測定方法も実施例1と同様の方法である。
始めに、参照試料を用いて、参照試料測定0を行った。出力信号は約30mVとバックグラウンドレベルであり、グライド高さ測定ヘッドは正常な状態にあることを確認した。
次に、磁気記録媒体Cを用いてグライド高さ測定1を行った。出力信号は約30mVとバックグラウンドレベルであり、合格と判定された。
次に、参照試料を用いて参照試料測定1を行った。出力信号は50mVを超えて不合格と判定された。磁気記録媒体Cを測定した際に、グライド高さ測定ヘッドへの潤滑剤の移着があり、グライド高さ測定ヘッドの浮上量が低下したことが判明した。グライド高さ測定1と参照試料測定1の両者を併せて判定した結果、磁気記録媒体Cは不合格と判定された。
【0025】
グライド高さ測定単独では、磁気記録媒体Cの潤滑剤の移着に関する性能は判定できないが、参照試料測定を併せて行うことにより、判定が可能となったことを示す。また、グライド高さ測定で合格とされる磁気記録媒体であっても、潤滑剤の移着が生じる場合にはヘッドの浮上量が低下することから、不合格と判定すべきものであることが分かる。
手順に従って、再度参照試料測定1を行った。出力信号は約30mVとバックグラウンドレベルであり、合格と判定された。これは、前回の参照試料測定の際にグライド高さ測定ヘッドに移着した潤滑剤がクリーニングされて、グライド高さ測定ヘッドの浮上量が回復したためである。
次に、磁気記録媒体Bを用いて、グライド高さ測定2を行った。出力信号は約30mVとバックグラウンドレベルであり、合格と判定された。磁気記録媒体Bは正しく判定されたことになる。
【0026】
次に、参照試料を用いて参照試料測定2を行った。出力信号は約30mVとバックグラウンドレベルであり、合格と判定された。
次に、磁気記録媒体Dを用いて、グライド高さ測定3を行った。出力信号は100mVを超え、不合格と判定された。
次に、参照試料を用いて参照試料測定3を行った。出力信号は約30mVとバックグラウンドレベルであり、合格と判定された。
グライド高さ測定3と参照試料測定3を併せて判定すると、磁気記録媒体Dはグライド高さは不合格のレベルにあるものの、潤滑剤の移着は生じないことが判定される。
以上のように、参照試料測定を行うことにより、磁気記録媒体の潤滑剤の移着に関する性能が判定できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の評価方法における評価の手順を示す概念図である。
【図2】評価を行う磁気記録媒体の例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0028】
1 非磁性基板
2 下地層
3 磁気記録層
4 保護層
5 潤滑剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体のヘッド浮上特性を評価する方法であって、
連続する2回のグライド高さ測定で合格と判定される磁気記録媒体を参照試料とし、
前記参照試料のグライド高さ測定を参照試料測定とし、
ヘッド浮上特性の評価を行う複数の磁気記録媒体を対象とする複数の前記グライド高さ測定の間で、少なくとも1回の前記参照試料測定を行うことを特徴とする磁気記録媒体のヘッド浮上特性評価方法。
【請求項2】
ヘッド浮上特性の評価を行う磁気記録媒体に対する前記グライド高さ測定後に、少なくとも一回の前記参照試料測定を行うことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体のヘッド浮上特性評価方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−18933(P2006−18933A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196200(P2004−196200)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】