説明

磁気記録媒体の認証システム

【課題】磁気記録媒体の認証を可能にするシステムを提供する。
【解決手段】基板と、記録トラックと、記録トラックを互いに物理的に分離するトラック分離部と、記録トラックに形成され、磁気的に情報を記録可能な磁気記録層で作られる磁気記録領域と、磁気記録領域を分離するように記録トラックの固有の位置に形成され、磁気的に情報の記録が不能な磁気的欠損部と、磁気的欠損部の有無を特定するID情報とを具備する磁気記録媒体と、ID情報を基に磁気的欠損部の位置を特定できる位置特定情報を取得する取得部と、記録再生部と、記録再生部から再生された情報から欠損部の位置を抽出し、抽出された欠損位置と位置特定情報とを比較して磁気記録媒体を認証する認証部とを具備する記録再生装置と、ID情報に対応し、欠損部の位置を特定できる位置特定情報を格納した外部データベースとを具備する磁気記録媒体の認証システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録媒体、記録再生装置及び記録再生方法に係り、特に、例えば、記録媒体に格納されたコンテンツのコピープロテクト或いはアクセスの可否などを管理するための記録媒体、この記録媒体を用いた認証方法、この認証方法を実行可能な認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルデータの普及に伴い、音楽ソフト或いはビデオソフト、アプリケーションソフト等の著作権保護のためのコピープロテクション技術の重要性が増加している。コピープロテクトが特に要求されるソフトウェアの代表例としては、デジタル記録方式を採用したDVD(Digital Versatile Disk)ビデオディスク或いはDVD−ROMディスクなどを挙げることができる。これらデジタル記録のビデオソフトウエアに対するコピープロテクションには、従来、暗号化技術が利用されている。
【0003】
暗号化技術を用いたコピープロテクト方法は、既に暗号化されたデータが記録されるDVDビデオディスク或いはDVD−ROMディスクについては、有効に機能している。しかし、ユーザが新規にデータを記録できるDVD−RAMの場合、次のような問題が生じる。
【0004】
(1)暗号化の際に必要とされる「暗号鍵」の管理が難しい。
【0005】
(2)ユーザの手元に渡ってしまうデータ記録再生装置(例えば、広く普及しているアナログビデオカセットレコーダと同様に録画・再生をデジタルで行えるDVD−RAMレコーダなど)では、強力な暗号化処理が難しく、暗号が破られてしまいやすい。
【0006】
(3)データ記録再生装置側で暗号化及びその復号化が行えるようになっている場合、一旦ユーザが作成して暗号化したデータを別のデータ記録再生装置で復号化した後に再度暗号化する処理を行うことにより、コピープロテクトしたいデータ内容のコピーが容易に行われてしまう。
【0007】
これらの問題のために、デジタルビデオデータの記録再生装置に関しては、従来の暗号化技術を用いたコピープロテクトを有効に機能させることが難しい問題がある。また、DVD−RAMドライブ側でDVD−RAM用データ記録媒体に対して独自の方法でコピープロテクト処理を行おうとすると、そのデータ記録媒体をDVD−ROMドライブで再生し、或いは、逆にDVD−ROMディスクをDVD−RAMドライブで再生する場合に、コピープロテクト処理回路が複雑になるという問題がある。このことは、またDVD−RAMドライブの製品コストをアップさせる要因ともなる。
【0008】
この発明の発明者は、既に記録媒体に認証領域を設け、この認証領域に第1の書き込み条件によりデータの書き換えが可能なRAMビット及び第1の書き込み条件では、データの書き込みが不可能なROMビットを配列して記録データに関するコピープロテクトを実現できる記録媒体を特許文献1で提案している。
【0009】
一方、近年、磁気記録媒体のさらなる高密度化に対応するために、隣接する磁気記録トラックを溝又は非磁性材料からなるガードバンドで分離し、隣接トラック間の磁気的干渉を低減するようにしたディスクリートトラック媒体が注目を集めている。このようなディスクリートトラック媒体を製造する際には、スタンパを用いたインプリント法によって磁気記録トラックをなす磁性体と非磁性体のパターンが形成されている。
【特許文献1】特開2004−39006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された記録媒体によれば、確実なコピープロテクトを実現することができるが、更に簡便な方法によるコピープロテクトが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされてものであり、その目的は、記録データに対する安全かつ確実なコピープロテクトを行うことができ、不正コピーを防止できる記録媒体、認証方法、認証システム及び復元システムを提供することにある。
【0012】
この発明によれば、
基板と、
互いに隣接配置されるように前記基板表面上を延出される記録トラックと、
前記隣接配置された記録トラックを互いに物理的に分離するトラック分離部と、
前記記録トラックに形成され、磁気的に情報を記録可能な磁気記録層で作られる磁気記録領域と、
前記磁気記録領域を分離するように前記記録トラックに形成され、磁気的に情報の記録が不能な磁気的欠損部と、
を具備することを特徴とする磁気記録媒体が提供される。
【0013】
また、この発明によれば、
基板と、
互いに隣接配置されるように前記基板表面上を延出される記録トラックと、
前記隣接配置された記録トラックを互いに物理的に分離するトラック分離部と、
前記記録トラックに周期的に形成され、磁気的に情報を記録可能な磁気記録層で作られる磁気記録ドッドと、
前記磁気記録ドッドの周期的配列を分離するように前記記録トラックに形成され、磁気的に情報の記録が不能な磁気的欠損部と、
を具備することを特徴とする磁気記録媒体が提供される。
【0014】
更に、この発明によれば、
互いに隣接配置されるように前記基板表面上を延出される記録トラックと、互いに隣接配置された前記記録トラックを互いに物理的に分離するトラック分離部と、前記記録トラックに形成され、磁気的に情報を記録可能な磁気記録層で作られる磁気記録領域と、前記磁気記録領域を分離するように前記記録トラックに形成され、磁気的に情報の記録が不能な磁気的欠損部とを具備する磁気記録媒体と、
前記欠損部の位置を特定できる位置特定情報を取得する取得部と、
前記磁気記録媒体の記録層に情報を記録し、前記記録層から情報を再生する記録再生部と、
前記記録再生部から再生された情報から前記欠損部の位置を抽出し、この抽出された欠損位置と前記位置特定情報とを比較して前記磁気記録媒体を認証する認証部と、
を具備することを特徴とする記録再生装置が提供される。
【0015】
更にまた、この発明によれば、
互いに隣接配置されるように前記基板表面上を延出される記録トラックと、互いに隣接配置された前記記録トラックを互いに物理的に分離するトラック分離部と、前記記録トラックに形成され、磁気的に情報を記録可能な磁気記録層で作られる磁気記録領域と、前記磁気記録領域を分離するように前記記録トラックに形成され、磁気的に情報の記録が不能な磁気的欠損部とを具備する磁気記録媒体の前記記録層に情報を記録し、前記記録層から情報を再生する記録再生方法において、
前記欠損部の位置を特定できる位置特定情報を取得し、
前記再生情報から前記欠損部の位置を抽出し、この抽出された欠損位置と前記位置特定情報とを比較して前記磁気記録媒体を認証する
ことを特徴とする記録再生方法が提供される。
【0016】
上述した磁気記録媒体においては、前記磁気記録層が基板表面上を延出され、前記磁気記録領域に磁気記録トラックを定め、前記磁気記録トラックを互いに物理的に分離するトラック分離部が前記磁気記録トラックを前記基板上に並設されて形成され、この磁気記録トラックに前記磁気的欠損部が設けられても良い。
【0017】
さらに前記磁気記録トラックは、トラック方向に対し一定の間隔で分断され、分断部分には、磁気的に情報の記録が不可能な磁気的分断部が具備されていても良い。上記媒体を記録再生ヘッドにより情報記録する際、記録再生ヘッドは磁気的分断部によって一定の周期で分断された磁気記録トラック毎に情報記録を行う。即ち、磁気記録トラックが分断される周期は、記録再生ヘッドが記録する情報1単位分に相当している。
【0018】
上記磁気記録媒体は、磁気記録トラックが磁気的分断部により一定周期で分断されているが、これは本発明の磁気的欠損部とは異なる。磁気的分断部は磁気記録トラックに沿って一定周期で配列しているのに対し、磁気的欠損部は一定周期では配列せず、ID情報と対応した固有の位置に散在している。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、記録装置に記録された情報が一般ユーザによりコピーされた場合に、オリジナル記録とコピー記録とを欠陥情報を用いて選別することが可能となり、認証或いはコピープロテクトを行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明者は、ディスクリートトラック記録媒体について着目し、ディスクリートトラック媒体の構造では、その記録媒体の製造コストを低減しながら、コピープロテクトを簡便な方式で実現し得る可能があるとの発想するに至っている。また、この発想の基にディスクリートトラック記録媒体に限らず、記録媒体のトラック中に欠損部が設けられ、この欠損部の配列を特定するID情報が真正にその欠損部の配列に対応している場合には、この記録媒体に記録されているコンテンツ或いはプログラムは、オリジナルであることを保証することができるとの着想に至っている。
【0021】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係る記録媒体、認証方法、認証システム及び復元システムを説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態に係る磁性記録媒体中の記録領域を概略的に示す平面図である。
【0023】
図1に示されるように記録媒体、例えば、磁気ディスクには、磁気記録トラック2が互いに隣接配置され、トラック方向(記録再生方向)RWに沿って記録領域中を延出されている。この磁気記録トラック2は、この磁気記録トラック2に沿って延出される非磁性体層で形成された非磁性分離部6で互いに物理的に分離されて磁気ディスクにディスクリートトラックを形成している。磁気記録トラック2には、データを磁気的に記録再生可能な複数の帯状の磁性層が磁気記録領域として形成されている。この図1に示される記録媒体が図4を参照して説明される円盤状の磁気ディスクであれば、記録再生方向に相当するトラック方向RWは、そのディスクの円周に沿う方向に定められている。通常の円盤状ディスクでは、その回転方向が記録再生方向に定められ、この回転方向である円周方向に沿って磁気層としての磁気記録トラック2が延出されている。既に知られるように、スタンパを用いたインプリント法によって磁性体層と非磁性体層のパターンが形成されて磁気記録トラック2及び非磁性分離部6に定められる。
【0024】
図1に示されるように、記録媒体の磁気記録トラック2は、その記録層が欠損されて記録領域を分離する欠損部(欠損セグメント)8を備え、この欠損部(欠損セグメント)8が記録媒体中の特定磁気記録トラック2の特定領域4に設けられている。この欠損部8は、非磁性分離部6と同様な非磁性体のセグメントとして形成されても良く、或いは、磁性体で形成されているが、その磁性体層の帯に凹部が形成されて欠損部(セグメント)8に定められても良い。
【0025】
尚、非磁性分離部6も欠損部(セグメント)8と同様に磁性体で形成され、その磁性体層の帯に凹部が形成されて非磁性分離部6に定められても良いことは明らかである。
【0026】
図示しない磁気ヘッドで磁気記録トラック2を検索する場合には、非磁性体のセグメントとして形成されている欠損部8は、磁気的には検知されず、また、磁性体層の帯に凹部が形成されている欠損部8では、磁気ヘッドとの間の距離が大きくなることから、同様に実質的に磁気的には、検知されないこととなる。
【0027】
図1に示されるように帯状に延出される磁気記録トラック2に欠損部8が形成される場合に限らず、図2に示されるようにトラック方向RWに沿って磁気記録トラック2の記録層が分断され、周期的に磁性ドット12が配列された構造(パターンド媒体構造)を備えても良い。即ち、磁気記録トラック2は、トラック方向RWに沿って周期的に多数の磁性ドット12が配列されてトラックに定められ、その周期的に出現する磁性ドット12の一部18が欠損されても良い。即ち、周期的な磁性ドッド12の配列が分離されても良い。周期的に磁性ドット12が配列される磁気記録トラック2の領域には、非磁性分離部6と同様に非磁性体層で形成された非磁性分離ストライプ10が設けられ、この分離ストライプ10及び磁性ドット12が交互に磁気記録トラック2の領域上に配列されている。また、磁気記録トラック2上の欠損部8は、少なくとも一対の分離ストライプ10及び一対の分離ストライプ10間の磁性ドット12が本来形成されるべき部分に相当し、この部分が非磁性分離部6と同様に非磁性体層で形成されている。この分離ストライプ10及び欠損部8は、磁性体で形成されているが、その磁性体層の帯に凹部が形成されて欠損部8に定められても良い。
【0028】
図1及び図2に示される記録媒体では、磁気記録トラック2が互いに分離ストライプ10で分離されているディスクリートトラック構造に形成されているが、図3に示されるように分離ストライプ10が設けられず、記録媒体の全面に磁性層が形成され、磁気記録方向RWに沿って磁気トラック2が並設されているような一般的な磁気記録媒体の特定領域4内に欠損部8が設けられても良い。
【0029】
図4に示す円盤状のディスク20にあっては、特定領域4内の欠損部8,18の有無を特定するID情報22がディスク20の管理領域のセクタ領域に記録されている。このID情報22自体には記録層の欠損位置、例えば、トラックアドレス及びセクタアドレスは記録されていない。ID情報22には、欠損部8,18がある旨及びこの欠損部8,18の配置に固有のコードが記述されることとなる。
【0030】
尚、記録層の欠損部8,18の位置を特定できる情報は、後に説明されるように記録再生装置外のデータベースに保存されるが、記録媒体自体或いはこの記録媒体に情報を記録し、この記録媒体から情報を再生する記録再生装置に組み込まれたメモリに格納されていても良い。記録層の欠損部8,18の位置を特定できる情報は、トラックアドレス及びセクタアドレス等のように記録層の欠損部の位置情報を羅列する場合に限らず、後述の記録層の欠損部の位置情報を記録している外部データベースをアクセスして欠損部の位置情報を読み出す為のアドレス番号等のID情報でも良い。また、ID情報22及び欠損部の位置情報は、磁気記録領域中に、例えば、管理領域中に欠損部8,18の配列(パターン)として記録されても良い。即ち、ID情報22及び欠損部の位置情報は、磁気記録領域中に記録層の有無で生じるパターン或いは磁気的な記録が不可能な部分の配列(パターン)で記録されても良い。
【0031】
次に、図5(a)〜(c)及び図6を参照して、この発明の一実施の形態に係る記録再生装置における認証方法を説明する。
【0032】
図5(a)〜(c)は、図1に示された磁気記録トラックの構造、この磁気記録トラックに記録されるべき情報としてのシークエンスデータ、このシークエンスデータの記録媒体上での記録状態を概略的に示している。図5(a)に示されるように、ある記録領域4内で、磁性トラック2は、一部欠損部8を有し、図5(b)に示されるように、この磁性トラック2に“1”と“0”若しくは“+1”と“−1”等の2値からなるシークエンスデータが記録されるものとする。図5(b)では、理解を容易にする為に、“−1”が白色で“+1”が黒色で示されている。図示しない記録ヘッドには、図5(b)に示されるよう磁気情報としてのシークエンスデータが供給されて図5(a)に示される磁気記録トラック2にこの情報が次々に記録される。この情報記録時には、記録媒体上の欠損位置に関係なく情報記録が実施されるが、磁気トラック2上の欠損部8には、情報が記録されない為、図5(c)に示すように記録媒体上では、矢印28で示すように白、黒及び白に相当するような一部情報、例えば、(−1,+1,−1)が欠損部8に欠損のままに記録される。従って、図5(b)に示されるようなシークエンスデータから一部が欠けた状態で磁気トラック2に記録されることとなる。
【0033】
図6は、図5(c)に示すように記録された情報の再生方法及び認証方法を示すフローチャートである。
【0034】
情報の再生開始時には、予め記録媒体上の管理領域に記録されているID情報22がステップS30に示すように再生磁気ヘッドによって読み取られる。この再生磁気ヘッドから読み込まれた欠陥情報ID22は、ステップS40に示されるように一次的に管理データとしてRAM(図示せず)に格納される。全ての管理情報が読み込まれて次にデータ領域が再生磁気ヘッドによって検索されてプログラム、オーディオデータ或いはビデオデータ等のオブジェクトデータが再生磁気ヘッドによって読み出される。
【0035】
このような管理情報及びオブジェクトデータを含む情報の再生時においては、ステップS30における再生磁気ヘッドからの検出信号は、ステップS32に示すように図示しないゲインアンプ、フィルタ、ピーク検出などの処理の後に、ステップS34に示すようにエラー訂正が施されて復元データに変換されてステップS36に示すように出力される。
【0036】
ここで、エラー訂正はECC(Error Correction Code)回路で実施される。エラー訂正には、例えば、情報記録時に符号化を用いる方法がある。符号化は、例えば、リードソロモン符号、畳み込み符号、連接符号、ビタビ復号、ターボ符号、LDPC符号(low density parity check codes)などがあるが、一般にどの符号を用いてもビット数kのデータブロックに対し、符号化により冗長なデータを加えてnビット(n>k)の誤り訂正符号を得る。この誤り訂正符号は、ビット数kのデータブロックに対しmビットの誤り訂正能力を持つ。即ち、kビットのデータブロック中、mビットまではデータを誤って読みとっても、エラー訂正により元のデータを正しく復元できる。ビット数k、符号長nに対する誤り訂正能力mの値は、符号方式によって異なる。上述した実施の形態に係る欠損部に於いては欠損したデータ量が誤り訂正能力mの値を超えない限り有効に作用する。従って本発明では符号化の具体的な手法は限定されない。例えば、リードソロモン符号では、jバイトの訂正能力を持つ為にj×2バイトのECCコードを用いている。各トラック中における欠損部8に格納可能な欠損データ(2値データ)は、リードソロモン符号の訂正能力を越えない数だけ与えることが当然に好ましく、エラー数がこの訂正能力を超えなければ、例え欠損部8で記録情報が失われていても、記録された情報を復元させることが出来る。この意味では、欠損部で失うデータがエラー訂正能力の範囲内に留まるように欠損部8が磁気記録トラック2に配置されることが必要とされる。
【0037】
エラー訂正された復元データは、再生処理部或いは他のデータ処理部に供給されるとともにステップS38に示されるようにエラー位置確認処理に移行される。このステップS38においては、復元データとエラー訂正前の検出信号とが比較されて復元されたデータ位置に相当するエラーの位置が特定される。即ち、復元後のデータが復元前のデータと比較することで、エラー位置が特定される。特定されたエラーには、欠損部8に記録されるべきであったデータの他に、ディスク上の不良或いはデータ処理時における偶然起きた記録再生データが含まれているが、必ず欠陥部8に相当するエラーは、このステップS38において抽出される。このステップS38において、欠陥部8を原因とするエラー以外のエラー、例えば、特定ビット長以上のエラーは、欠陥部8を原因とするエラーでないとして排除処理をしても良い。
【0038】
抽出されたエラーは、エラー位置のデータに変換されてエラー位置が特定される。即ち、エラーが生じたディスク上の位置として抽出エラー位置データが図示しないRAMに格納される。エラーが生じたディスク上の位置は、ディスク上のトラックアドレス及びセクタアドレスとして特定される。
【0039】
尚、記録された情報が画像或いは音楽の場合、エラー訂正により完全に情報を復元しなくても、ある程度再生情報を閲覧可能である。このような場合には、エラー訂正ではなく、パリティチェックなどのエラー発見機構によって情報エラー位置が判明し、記録層の欠損部8,18の位置として把握しても良い。
【0040】
次に、ステップS42において、ステップS40でRAMに格納されている欠損情報IDが参照されてディスクが欠陥部8を有するディスクであることが確認されると、このIDを基に当該ディスクが欠陥部8を有するディスクであることが確認される。また、ステップS42において、欠損情報IDが当該記録再生装置外の欠陥位置照合データベースに送られ、ステップS44において、この欠損情報IDを参照して欠陥位置照合情報が特定される。この欠陥位置照合情報が当該記録再生装置で取得されると、この欠陥位置照合情報を参照して抽出エラー位置データがその内に含まれているかが確認される。ステップS46に示されるように、抽出エラー位置データの全て或いはその殆どが欠陥位置照合情報に含まれる場合には、当該ディスクに記録されていたプログラム或いはビデオ等のコンテンツデータは、真正なデータであり、オリジナルデータであることが確認される。記録されているデータがオリジナルであることが確認され、承認されると、ステップS36からの出力が図示しないデコーダでデコードされ、或いは、更に他の処理部(図示せず)、例えば、暗号を復号する復号部でオリジナルデータとして処理される。
【0041】

ここで、外部の欠陥位置照合データベースは、インターネットに接続された番組提供者(コンテンツプロバイダー)のデータベースが相当し、記録再生装置は、この番組提供者とコンテンツの供給を契約したユーザが利用する装置が該当する。契約者であるユーザは、欠陥部8の位置情報を番組提供者に知らせ、番組提供者から欠陥情報IDを受けるような場合が該当する。
【0042】
一方、オリジナルの媒体に記録された情報を異なる媒体にコピーした場合には、コピーされる情報は、磁化情報のみであり、実際の欠損部がコピー媒体には存在しないこととなる。従って、上記手法により読取エラー位置を比較した場合に、読取エラーは、コピーされた媒体上では生ぜず、記録領域に記録されていた欠損位置でエラーが起きていない状態が生じる。この場合には記録された情報がオリジナルでないことが判明する為、例えば、記録された情報を無効にする等のコピープロテクションを実施することが出来る。コピープロテクションは情報の暗号化技術を用いればより強固なものとなる。
【0043】
上述した説明では、欠損情報IDで参照される欠陥位置照合情報は、記録再生装置外のデータベースに格納されていることを想定しているが、欠陥位置照合情報が記録再生装置に設けられたメモリ、例えば、ROM或いは不揮発性メモリに格納され、欠損情報IDで参照されても良い。
【0044】
尚、欠陥位置照合情報の記録領域が記録再生装置中にある場合には、記録装置が何らかの外部周辺機器と接続されていなくても認証が可能である。一方、ユーザが所有する装置外、例えばネットワーク上に欠陥位置照合情報が記録されている記録領域が存在する場合、この記録領域に何らかのユーザ認証機構を与えておけば、記録再生装置を使用する一般ユーザが勝手に欠陥位置を変更することが出来なくなり、より強固なコピー管理を実現することができる。
【0045】
(実施例1)
次に、この発明の実施例として暗号化技術を用いたコピープロテクト方法について説明する。
【0046】
上述した記録装置に、サーバーから何らかの情報をコピーして記録する場合のコピープロテクト方法について詳述する。
【0047】
このコピープロテクト方法においては、記録装置中に具備された磁気記録媒体には、セクタ毎にnビット分のサイズを有する欠損部8が記録層に人為的に与えられているものとする。また、磁気記録媒体への記録では、nより大きなmバイトのエラー訂正能力を有するECCコードが付属しているものとする。各セクタに人為的に形成された欠損位置は、サーバーに記録され、記録媒体毎のIDと共に保管されているものとする。
【0048】
サーバーに保管されているコンテンツデータ等の情報が特定ユーザの記録装置(単に特定の記録装置と称する。)に記録される際には、情報は、サーバーが暗号化し、暗号解除キーを作成する。次に、コピー先の媒体のIDをサーバーが受け取り、暗号化した情報を特定の記録装置に送る。この特定の記録装置側では、ECCコードと共にこの暗号化された情報をその記録媒体に記録する。
【0049】
次に、特定の記録装置から他の権限のない記録装置(単に他の記録装置と称する。)へ暗号化された情報を暗号化したままコピーしたとする。この際に特定の記録装置の媒体IDも読みとられ、他の記録装置側へコピーされたとする。ただし、特定の記録装置と他の記録装置の媒体における欠損位置は異なっているものとする。
【0050】
特定の記録装置に記録された情報を再生する場合、まず、特定の記録装置がECC回路を介して情報が復元される。人為的に形成された欠損の数nがエラー訂正能力mを越えない為、欠損を含むセクタに記録された情報も正しくエラー訂正されて出力される。次に、出力された暗号化情報を復元する際には、ECC回路でエラー修正を行った部位と特定の記録装置の媒体IDをサーバー側に送信する。サーバー側では、送られてきたエラー部位と媒体IDとを、サーバー側で保管していた欠陥情報に照合する。サーバー側で保管されていたすべての欠陥部位が、送られてきたエラー部位に含まれる場合、サーバーは、この特定の記録装置を正規の記録装置として認証し、暗号鍵を送信する。従って、この特定の記録装置では、暗号鍵(復号化キー)を受け、これを用いて暗号化された情報を復元することが出来る。
【0051】
他方、情報及び媒体IDがコピーされた他の記録装置では、上記と同様の認証手法を用いた場合、エラー訂正を行った位置、即ち、人為的に形成された欠損位置が特定の記録装置と異なっている。従ってサーバー側で予め保管されている欠損位置と、他の記録装置から送られてきたエラー位置が異なっている為、他の記録装置を正規の記録装置とは認証せずに暗号鍵を送信しないこととなる。従って、特定の記録装置から情報をコピーされた他の記録装置では、暗号化された情報を復元することが出来ないこととなる。以上の動作によりコピープロテクト機能を確実に動作させることができる。
【0052】
(実施例2)
図7(a)〜(c)は、この発明の他の実施の態様に係る記録再生方法及び認証方法を示している。図7(a)は、図1に示された磁気記録トラックの構造を示し、図7(b)は、この磁気記録トラックに記録されるべき情報としてのシークエンスデータを示し、図7(c)は、このシークエンスデータの記録媒体上での記録状態を概略的に示している。
【0053】
情報記録時に際しては、既に説明したように、始めに、媒体欠損位置ID情報及び欠損位置記録領域4から、図7(a)に示すような欠損部8の欠損位置が把握される。次に、図7(b)に示すようなシークエンスデータの記録時には、図7(c)に示すように、この欠損部8の欠損位置を避けてシークエンスデータが記録される。従って、磁気記録トラック2上では、欠損部8を避けてシークエンスデータが分離されて記録される。情報再生時には、同様に媒体欠損位置ID情報及び欠損位置記録領域4から図7(a)に示すような欠損部8の欠損位置が把握され、図7(c)に示すように、この欠損部8の欠損位置を避けてシークエンスデータが再生される。従って、シークエンスデータは、正常に再生される。尚、情報記録時には、記録された情報とこの情報を記録した媒体のIDが記録媒体の管理領域に記録される。
【0054】
しかし、欠損位置を有する他の記録装置の記録媒体に情報がコピーされた場合、記録された情報を再生する場合の欠損位置と、予め記録されている記録媒体のIDにより特定される欠損位置が異なっている。従って、オリジナル記録では無いことが判明する。これにより例えば記録された情報を無効にする等のコピープロテクションを実現することが出来る。
【0055】
(媒体の作成方法)
図1に示される記録媒体は、好ましくは、以下の第1及び第2の製造方法のいずれかを経て作製することができる。
【0056】
第1の製造方法(磁性体加工型)
始めに、記録媒体に設ける欠損位置とこの欠損位置に関連したID情報が作成されて欠損情報として記憶装置に記憶される。
【0057】
次に、インプリントスタンパが図8(a)〜(d)に示されるように作製される。
【0058】
インプリントスタンパの作成工程では、図8(a)に示すように、平坦な面を有するインプリントスタンパ用基板50、好ましくは、Si基板若しくはガラス基板が用意され、この基板50の平坦面上に電子線描画用のレジスト52が塗布される。このレジスト52には、図1に示すような磁気記録トラック2に相当するパターンが電子線描画され、このレジスト52が現像処理されて図8(b)に示されるようにパターンがレジスト52の凹凸として基板50上に形成される。パターンを描画する描画装置は、磁気記録トラック2のパターンをレジストの全周に亘って描画するとともにID情報に従って記録媒体上の管理領域にID情報に相当するコードを書き込み、欠損位置に従って記録媒体上の特定領域4に欠損部8を書き込むこととなる。従って、現像処理されたレジスト52上には、磁気記録トラック2に相当する溝、ID情報に相当する凹凸及び欠損部8に相当する凸部が磁気記録トラック2に相当する溝内に形成される。
【0059】
その後、図8(c)に示されるようにレジスト52上に電鋳によってスタンパ54が形成される。スタンパ54の材料は、Niが好ましいが、これに限定されない。スタンパ54の表面には、レジスト52の凹凸が逆転されて転写される。また、図示しないが、図8(b)に示されるレジスト52がエッチングされてレジスト52の凹凸が基板50に凹凸として転写することでスタンパが形成されても良い。
【0060】
以上の工程によりインプリントスタンパ54が用意される。そして、このインプリントスタンパ54を利用して図8(d)〜(g)に示される工程を経て磁気記録媒体が製造される。
【0061】
磁気記録媒体の製造工程では、図8(d)に示されるように媒体用基板60が用意され、この媒体用基板60上に磁気記録用の磁性層62が製膜される。この磁性層62は、垂直磁気記録に適した材料が好ましく、記録用の強磁性膜が磁性層62として形成される。尚、好ましいは、この記録用の強磁性膜の下には軟磁性材料から成る下地層が形成されて軟磁性下地層及び強磁性膜の2層構造で磁性層62が構成される。この磁性層62上には、図8(d)に示されるように更にインプリント用のレジスト膜64が塗布されてレジスト膜64を備えた基板構造66が用意される。
【0062】
次に、図8(d)に示されるレジスト膜64を備えた基板構造66上にインプリントスタンパが対面され、インプリント法に基づきインプリントスタンパがレジスト膜64に押し付けられてインプリントスタンパ54と基板構造66との間に圧力が与えられる。従って、インプリントスタンパ54の表面の凹凸パターンがレジスト膜64の表面に転写される。この転写の後に、図8(e)に示されるように、インプリントスタンパ54が図8(d)に示される基板構造66から剥離される。
【0063】
更に、図8(f)に示すように凹凸パターンが形成されたレジスト膜64がエッチングされることにより、基板構造66の磁性層62に同様の凹凸パターンが形成されるように加工される。即ち、図8(f)に示すように磁性層62は、レジスト層表面の凹凸パターンに応じてパターン化される。
【0064】
その後、図8(g)に示されるように、磁性層62に磁性体パターンが形成された基板構造66上にカーボン保護膜68が設けられ、更に、このカーボン保護膜68上に潤滑剤が塗布されて磁気記録媒体が完成される。ここで、潤滑剤は、磁気ヘッドが回転する磁気記録媒体上を滑らかに相対的な走行をさせるために設けられている。
【0065】
図8(a)〜(g)を参照して説明した方法により、図1或いは図2に示されるように記録層に欠損部を備えた磁性体トラック及び非磁性体のパターンが形成されている記録媒体が作製される。この記録媒体は、従来の手法と同様の方法で記録装置に組み込まれる。
【0066】
第2の製造方法(基板加工型)
この第22の製造方法においては、図9(a)〜(c)に示されるようにインプリントスタンパは、第1の製造方法と同様の図8(a)〜(c)に示される工程を経て作成される。従って、図9(a)〜(c)に示される工程の説明は、図8(a)〜(c)に示される工程において付した符号と同一符号を付してその説明を省略する。
【0067】
次に、図9(d)に示されるように媒体用基板60が用意され、この媒体用基板60上にインプリント用のレジスト膜64が塗布されて媒体基板構造70が用意される。この媒体基板構造70は、図8(e)に示されるようにインプリントスタンパ54に対面され、インプリント法に基づきインプリントスタンパ54がレジスト膜64に押し付けられて媒体基板構造70とインプリントスタンパ54との間に圧力与えられる。従って、インプリントスタンパ54の表面の凹凸パターンがレジスト膜64の表面に転写される。この転写後に、インプリントスタンパ54がレジスト膜64から剥離される。
【0068】
更に、図9(f)に示すように凹凸パターンが形成されたレジスト膜64がエッチングされることにより、基板構造66の基板60に同様の凹凸パターンが形成される。その後、図9(g)に示されるように凹凸パターンが形成された基板60上に磁気記録用の磁性層72が製膜される。磁性層62は、垂直磁気記録に適した材料が好ましく、記録用の強磁性膜が磁性層62として形成される。尚、好ましいは、この記録用の強磁性膜の下には軟磁性材料から成る下地層が形成されて軟磁性下地層及び強磁性膜の2層構造で磁性層62が構成される。最後に、凹凸パターンを有する基板60上の磁性層62にカーボン保護膜を設け、さらに潤滑剤を塗布して記録媒体が完成される。
【0069】
上述した製造方法により、記録層の欠損部を記録層表面の磁性体凹部パターンとして有する記録媒体を作製することができる。この記録媒体は、従来と同様に記録装置でデータを記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施の形態に係る磁性記録媒体中の記録領域を概略的に示す平面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る磁性記録媒体中の記録領域を概略的に示す平面図である。
【図3】本発明の更に他の実施の形態に係る磁性記録媒体中の記録領域を概略的に示す平面図である。
【図4】図1に示す磁気トラックが形成される磁気記録媒体としての磁気ディスクを概略的に示す平面図である。
【図5】(a)〜(c)は、この発明の実施例に係る再生方法及び認証方法を説明する為の概略図であって、(a)は、図1に示された磁気記録トラックの構造を概略的に示す平面図、(b)は、この磁気記録トラックに記録されるべき情報としてのシークエンスデータを示す模式図及び(c)は、このシークエンスデータの記録媒体上での記録状態を示す模式図である。
【図6】図5(c)に示すように記録されたシークエンスデータの再生方法及び認証方法を示すフローチャートである。
【図7】(a)〜(c)は、この発明の他の実施例に係る再生方法及び認証方法を説明する為の概略図であって、(a)は、図1に示された磁気記録トラックの構造を概略的に示す平面図、(b)は、この磁気記録トラックに記録されるべき情報としてのシークエンスデータを示す模式図及び(c)は、このシークエンスデータの記録媒体上での記録状態を示す模式図である。
【図8】(a)〜(g)は、図1に示される記録媒体を製造する方法における工程を概略的に示す断面図である。
【図9】(a)〜(g)は、図1に示される記録媒体を製造する他の方法における工程を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
2...磁気記録トラック、4...特定記録領域、6...非磁性分離部、8、18...欠損部、10...非磁性分離ストライプ、12...磁性ドッド、22...ID情報、50...基板、52...レジスト、54...インプリントスタンパ、60...媒体用基板、62...磁性層、64...レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、互いに隣接配置されるように前記基板表面上を延出される記録トラックと、互いに隣接配置された前記記録トラックを互いに物理的に分離するトラック分離部と、前記記録トラックに形成され、磁気的に情報を記録可能な磁気記録層で作られる磁気記録領域と、前記磁気記録領域を分離するように前記記録トラックの固有の位置に形成され、磁気的に情報の記録が不能な磁気的欠損部と、前記磁気的欠損部の有無を特定するID情報とを具備する磁気記録媒体と、
前記ID情報を基に前記磁気的欠損部の位置を特定できる位置特定情報を取得する取得部と、前記磁気記録媒体の記録層に情報を記録し、前記記録層から情報を再生する記録再生部と、前記記録再生部から再生された情報から前記欠損部の位置を抽出し、前記抽出された欠損位置と前記位置特定情報とを比較して前記磁気記録媒体を認証する認証部とを具備する記録再生装置と、
前記ID情報に対応し、前記欠損部の位置を特定できる位置特定情報を格納した外部データベースと
を具備する磁気記録媒体の認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−293645(P2008−293645A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199881(P2008−199881)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【分割の表示】特願2005−79581(P2005−79581)の分割
【原出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】