説明

磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末及びその製造法、非磁性下地層用非磁性塗料並びに磁気記録媒体

【課題】 本発明は、わずかな分散力で粒子がほぐれやすく、非磁性塗料中における分散性に優れた磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末、該非磁性下地層用非磁性粒子粉末を用いて得られる非磁性下地層用非磁性塗料、及び、非磁性下地層を薄層化した場合にもドロップアウトを低減することが可能な磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】 ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末と共にモース硬度7.0〜9.0、比重が4.5以上の無機粒子粉末をヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末に対して0.01〜0.2重量%存在させた磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末、該非磁性粒子粉末を用いた非磁性塗料並びに前記非磁性粒子粉末を用いた磁気記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、わずかな分散力で粒子がほぐれやすく、非磁性塗料中における分散性に優れた磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末、該非磁性下地層用非磁性粒子粉末を用いて得られる非磁性下地層用非磁性塗料、及び、非磁性下地層を薄層化した場合にもドロップアウトを低減することが可能な磁気記録媒体を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、オーディオ用、ビデオ用、コンピューター用の磁気記録再生用機器の小型軽量化、長時間記録化、高密度記録化、及び記録容量の増大化が求められており、以前と比べ、記録されるキャリアー信号の周波数が短波長領域に移行し、磁気テープの表面からの磁化深度が著しく浅くなると共に、磁気記録媒体の高出力特性、殊に、S/N比を向上させるために、磁気記録層を薄層化する傾向にある。
【0003】
しかしながら、上記磁気記録層が薄層化することによって、磁気記録層の表面平滑化が困難になること及び塗膜強度の低下が問題となってきており、現在、上記磁気記録層の薄層化に対しては、ベースフィルム等の非磁性支持体上に針状へマタイト粒子粉末等の非磁性粒子粉末を結合剤樹脂中に分散させてなる下地層(以下、「非磁性下地層」という。)を少なくとも一層設けることにより、磁気記録媒体の表面平滑性及び強度向上を図っている。
【0004】
近年、オーディオテープやビデオテープの更なる長時間記録化、及びパーソナルコンピュータやオフィスコンピューターの普及から外部記憶媒体としてデータを記録するための磁気テープ(バックアップテープ)のより一層の記録容量向上が強く要求されているが、テープ1巻当たりの大きさが規定されているオーディオ、ビデオテープ及びバックアップテープの場合、長時間記録化や高記録容量化のためには、テープ全厚を薄くして1巻当たりのテープ長さを長くする必要がある。そのため、磁気記録層のみならず、非磁性下地層及び非磁性支持体の薄層化も強く要求されており、例えば、従来のバックアップテープは非磁性下地層厚みが3〜5μmであったものが、近年では1〜3μmまで薄層化してきている。
【0005】
殊に、非磁性下地層を薄層化した場合、非磁性粒子粉末の分散レベルが磁気記録媒体の表面平滑性に大きく影響し、従来の膜厚では問題とならなかった非磁性粒子粉末の分散粒子径であっても、薄層化することにより非磁性下地層表面上に突起を生じ、該突起が磁気記録層表面上にまで影響することにより、磁気記録層の表面平滑性が悪くなり、ドロップアウトが発生しやすくなる。
【0006】
また、オーディオテープ、ビデオテープ及びコンピュータのバックアップテープは高速で繰り返し使用されるため、非磁性下地層を薄層化した場合でも、テープ強度が従来並みに維持できることが要求されている。
【0007】
更に、磁気記録媒体の生産レートを向上させる努力がなされており、その方法のひとつとして非磁性粒子粉末の分散性向上があり、二次凝集体が少なく、わずかな分散力で粒子ひとつひとつにほぐれて樹脂や溶剤に濡れやすい非磁性粒子粉末が求められてきている。
【0008】
従来、磁気記録媒体の諸特性改善のために非磁性下地層用非磁性粒子粉末としてモース硬度の高い無機化合物を用いる試みがなされており、非磁性下地層の非磁性顔料中に、モース硬度5以上の板状顔料粒子を含有させる方法(特許文献1)、非磁性下地層にモース硬度4以上の無機粉末を含ませる方法(特許文献2)、非磁性下地層に2種類以上のモース硬度5以上の非磁性粉末を含ませる方法(特許文献3)、非磁性下地層に添加する非磁性粉末の比重を上層の強磁性粉末よりも大きいものにする方法(特許文献4)等が知られている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−253069号公報
【特許文献2】特開2002−15414号公報
【特許文献3】特開平9−63041号公報
【特許文献4】特開平4−325916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非磁性下地層を薄層化した場合でも、表面平滑性及び強度に優れると共に、ドロップアウトが少ない磁気記録媒体を得ることのできる非磁性下地層用非磁性粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0011】
即ち、前出特許文献1乃至3には、非磁性下地層にモース硬度の高い無機粉末を含ませることが記載されているが、後出比較例に示す通り、非磁性塗料を製造する段階で、モース硬度の高い無機粒子粉末を含有させる、もしくは、モース硬度の高い無機粒子粉末を用いたのでは、非磁性粒子粉末の二次凝集体が解砕されていないため、高い分散性を得ることができず、非磁性下地層を薄層化した場合、得られる磁気記録媒体のドロップアウトの低減、表面平滑性、及び耐久性が十分とは言い難いものである。
【0012】
また、特許文献4には、下層に添加する非磁性粉末の比重が強磁性粉末よりも0.5以上大きいものを用いることが記載されているが、硬さについては特に言及されておらず、非磁性粒子粉末の二次凝集体を効率よく解砕できないため、この非磁性粒子粉末を用いて得られる磁気記録媒体のドロップアウトの低減が十分とは言い難いものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末と共にモース硬度7.0〜9.0の無機粒子粉末が存在する非磁性粒子粉末は、わずかな分散力で粒子がほぐれやすく、非磁性塗料中における分散性に優れていることから、該非磁性粒子粉末を用いて得られる非磁性塗料は分散性に優れると共に、非磁性下地層を薄層化した場合にもドロップアウトを低減することが可能な磁気記録媒体が得られることを見いだし、本発明をなすに至った。
【0014】
即ち、本発明は、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末と共にモース硬度7.0〜9.0の無機粒子粉末が存在することを特徴とする磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末である(本発明1)。
【0015】
また、本発明は、無機粒子粉末の比重が4.5以上であることを特徴とする本発明1の磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末である(本発明2)。
【0016】
また、本発明は、無機粒子粉末の存在量がヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末に対して0.01〜0.2重量%であることを特徴とする本発明1又は2の磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末である(本発明3)。
【0017】
また、本発明は、無機粒子粉末がタングステンカーバイドであることを特徴とする本発明1及至3いずれかの磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末である(本発明4)。
【0018】
また、本発明は、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末と無機粒子粉末のいずれか1種以上の粒子表面が、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物、ケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも一種からなる化合物によって被覆されていることを特徴とする本発明1及至4のいずれかの磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末である(本発明5)。
【0019】
また、本発明は、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末に無機粒子粉末を添加した後に、湿式分散処理を行うことを特徴とする本発明1及至4のいずれかの磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末の製造法である(本発明6)。
【0020】
また、本発明は、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末に無機粒子粉末を添加して、湿式分散処理を行った後に、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末と無機粒子粉末のいずれか1種以上の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物、ケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも一種からなる化合物によって被覆することを特徴とする本発明5の磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末の製造法である(本発明7)。
【0021】
また、本発明は、非磁性粒子粉末、結合剤樹脂と溶剤を含む非磁性塗料において、前記非磁性粒子粉末が本発明1乃至5のいずれかの非磁性下地層用非磁性粒子粉末であることを特徴とする非磁性塗料である(本発明8)。
【0022】
また、本発明は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む非磁性下地層及び該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記非磁性粒子粉末が本発明1乃至5のいずれかの非磁性下地層用非磁性粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体である(本発明9)。
【0023】
また、本発明は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む非磁性下地層、該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層及び、前記非磁性支持体の他方の面に形成されるバックコート層からなる磁気記録媒体において、前記非磁性粒子粉末が本発明1乃至5のいずれかの非磁性下地層用非磁性粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体である(本発明10)。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る非磁性粒子粉末は、わずかな分散力で粒子がほぐれやすく、非磁性塗料中における分散性に優れているので、磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として好適である。
【0025】
本発明に係る非磁性塗料は、本発明に係る分散性に優れた磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末を用いることにより、高い表面平滑性及び強度を有する非磁性下地層を得ることができるので、磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性塗料として好適である。
【0026】
本発明に係る磁気記録媒体は、生産性に優れると共に、本発明に係る非磁性粒子粉末を用いることにより、非磁性下地層を薄層化した場合にもドロップアウトを低減することが可能であるので、高密度磁気記録媒体として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0028】
先ず、本発明に係る磁気記録媒体用の非磁性下地層用非磁性粒子粉末(以下、「非磁性粒子粉末」という。)について述べる。
【0029】
本発明に係る非磁性粒子粉末は、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末と共に硬度7.0〜9.0の無機粒子粉末が存在する非磁性粒子粉末からなる。
【0030】
本発明におけるヘマタイト粒子又は含水酸化鉄粒子は、粒子内部にAl、Zr、Ti、P、Sn、Sb又はMn等の異種元素を含有させてもよい。殊に、得られる磁気記録媒体の強度向上を考慮した場合、粒子内部にアルミニウムを含有させたヘマタイト粒子又は含水酸化鉄粒子を用いることが好ましい。粒子内部に含有させる異種元素は、各元素換算で0.05〜50重量%が好ましく、より好ましくは0.10〜40重量%、更により好ましくは0.15〜30重量%である。
【0031】
本発明におけるヘマタイト粒子又は含水酸化鉄粒子の粒子形状は、針状、紡錘状、米粒状、球状、粒状、多面体状、フレーク状、鱗片状及び板状等のいずれの形状であってもよい。得られる磁気記録媒体の塗膜強度を考慮すれば、軸比(平均一次長軸径と平均一次短軸径の比)(以下、「軸比」という。)が2.0〜20.0の針状、紡錘状及び米粒状が好ましく、より好ましくは2.25〜18.0、更により好ましくは2.5〜15.0である。
【0032】
本発明におけるヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末の平均一次長軸径は、0.005〜0.30μmであり、好ましくは0.010〜0.25μm、より好ましくは0.015〜0.20μmである。
【0033】
本発明におけるヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末のBET比表面積値は通常25〜300m/gである。
【0034】
本発明におけるヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末の分散圧5barにおける体積基準平均径(D505barは、通常、2.70μmを超える値を有している。本発明において、(D505barが2.70μm以下の非磁性粒子粉末を得るためには、粒子粉末の(D505barもまた可能な限り低いものが好ましい。その上限値は、より好ましくは5.00μmであり、更により好ましくは4.50μmである。
【0035】
本発明におけるヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末の分散圧3barにおける体積基準平均径(D503barは、通常、3.00μmを超える値を有している。本発明において、(D503barが3.00μm以下の非磁性粒子粉末を得るためには、粒子粉末の(D503barもまた可能な限り低いものが好ましい。その上限値は、より好ましくは6.00μmであり、更により好ましくは5.50μmである。
【0036】
本発明における無機粒子粉末は、モース硬度7.0〜9.0のものであれば何を用いてもよく、好ましくは7.5〜9.0、より好ましくは8.0〜9.0である。具体的にはモース硬度が9であるタングステンカーバイド(WC)、ボロンカーバイド(BC)、炭化珪素(SiC)、アルミナ(Al)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化タリウム(TaC)、窒化チタン(TiN)、モース硬度が8である炭化チタン(TiC)、モース硬度が7である酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化クロム(III)(Cr)、石英(SiO)等が挙げられる。モース硬度が7.0未満の場合には、本発明におけるヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末の凝集体を粉砕しにくく、わずかな分散力で粒子がほぐれる非磁性粒子粉末を得ることが困難となる。また、モース硬度が9.0を超える場合には、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末の凝集体を粉砕する効果は大きく変わらず、ダイヤモンドのように高価なものとなるため、工業的には適さない。
【0037】
本発明における無機粒子粉末の比重は4.5以上が好ましく、殊に、含水酸化鉄粒子粉末を用いる場合には比重4.5以上ものが好ましく、また、ヘマタイト粒子粉末を用いる場合には比重5.5以上のものが好ましい。比重5.5以上のものとして、具体的にはタングステンカーバイド(WC)比重:15.6、炭化タリウム(TaC)比重:14.5、炭化ジルコニウム(ZrC)比重:6.9、酸化ジルコニウム(ZrO)比重:5.9等が挙げられ、又、比重4.5〜5.5のものとしては、窒化チタン(TiN)比重:5.2、酸化クロム(III)(Cr)比重:5.2、炭化チタン(TiC)比重:4.9等が挙げられる。無機粒子粉末の比重が高いほど、少量の存在でヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末の凝集体を効率良く粉砕することができるため、好ましくは比重が15.6のタングステンカーバイド(WC)が好適に用いられる。
【0038】
本発明のヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末に存在させる無機粒子粉末の粒子径は、0.08〜1.20μmが好ましく、より好ましくは0.09〜1.10μmであり、更により好ましくは0.10〜1.00μmである。
【0039】
本発明の無機粒子の形状は、粒状、針状、球状のいずれでもよい。
【0040】
本発明における無機粒子粉末の存在量は、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末に対して0.01〜0.20重量%が好ましく、より好ましくは0.02〜0.15重量%、更により好ましくは0.03〜0.10重量%である。0.01重量%未満の場合には、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末に存在する凝集体を一次粒子までほぐす効果が低く、本発明の目的とする非磁性粒子粉末を得ることが困難である。0.01〜0.20重量%の存在量により、分散圧3barにおける体積基準平均粒子径(D503barを十分に低減することができるため、0.20重量%を越えて必要以上に存在させる意味がない。
【0041】
本発明に係る非磁性粒子粉末のモース硬度7.0〜9.0の無機粒子粉末を除いた平均一次長軸径は、0.005〜0.30μmが好ましく、より好ましくは0.010〜0.25μm、更により好ましくは0.015〜0.20μmである。
【0042】
平均一次長軸径が0.30μmを超える場合には、非磁性粒子が大粒子となり、これを用いて非磁性下地層を形成した場合には、塗膜の表面平滑性が損なわれやすい。平均一次長軸径が0.005μm未満の場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすく、その結果、粗大粒子が生成し非磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への均一な分散が困難となる。
【0043】
本発明に係る非磁性粒子の粒子形状は、針状、紡錘状、米粒状、球状、粒状、多面体状、フレーク状、鱗片状及び板状等のいずれの形状であってもよい。得られる磁気記録媒体の塗膜強度を考慮すれば、軸比が2.0〜20.0の針状、紡錘状及び米粒状が好ましく、より好ましくは2.5〜18.0、更により好ましくは3.0〜15.0である。
【0044】
本発明に係る非磁性粒子粉末のBET比表面積値は、25〜300m/gである。
【0045】
本発明に係る非磁性粒子粉末の分散圧5barにおける体積基準平均径(D505barは、0.01〜2.70μmであり、好ましくは0.01〜2.60μm、より好ましくは0.01〜2.50μmである。
【0046】
本発明に係る非磁性粒子粉末の分散圧3barにおける体積基準平均径(D503barは、0.01〜3.00μmであり、好ましくは0.01〜2.90μm、より好ましくは0.01〜2.80μmである。分散圧3barにおける体積基準平均径(D503barが3.00μmを超える場合には、非磁性下地層を薄層化した場合に、得られた磁気記録媒体の表面性が低下し、ドロップアウトが増加するため好ましくない。殊に、本発明に係る比重4.5以上の無機粒子粉末が存在する非磁性粒子粉末の場合には、3barでの体積基準平均径(D503barは、0.01〜2.90μmが好ましく、より好ましくは0.01〜2.80μm以下、更により好ましくは0.01〜2.70μmである。無機粒子粉末の比重が4.5未満の場合、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末の二次凝集体をほぐすために、強い分散力が必要となり、生産能力が低下するため好ましくない。
【0047】
本発明に係る非磁性粒子粉末は、必要により、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末と無機粒子粉末のいずれか1種以上の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた一種又は二種以上の化合物で被覆してもよく、化合物で被覆しない場合に比べ、分散圧3barにおける体積基準平均粒子径(D503barを小さくすることができる。
【0048】
化合物による被覆量は、化合物が被覆された非磁性粒子粉末に対してAl換算、SiO換算又はAl換算量とSiO換算量との総和で0.01〜20重量%が好ましい。
【0049】
0.01重量%未満である場合には、3barにおける体積基準平均粒子径(D503barの改良効果が得られない。0.01〜20重量%の被覆量により、分散圧3barにおける体積基準平均粒子径(D503barの改良効果が得られるので、20重量%を超えて必要以上に被覆する意味がない。
【0050】
化合物で被覆されている本発明に係る非磁性粒子粉末(以下、「本発明5に係る非磁性粒子粉末」という。)は、化合物で被覆されていない本発明1及至本発明4に係る非磁性粒子粉末の場合とほぼ同程度の粒子サイズ及びBET比表面積値を有している。又、分散圧5barにおける体積基準平均径(D505bar及び3barにおける体積基準平均径(D503barは化合物を被覆することによって向上し、分散圧5barにおける体積基準平均径(D505barは、0.01〜2.50μmが好ましく、より好ましくは0.01〜2.40μm、更に好ましくは0.01〜2.30μmである。また、分散圧3barにおける体積基準平均径(D503barは、0.01〜2.80μmが好ましく、より好ましくは0.01〜2.70μm、更に好ましくは0.01〜2.60μmである。
【0051】
次に、本発明に係る非磁性下地層用非磁性塗料について述べる。
【0052】
本発明に係る非磁性下地層用非磁性塗料は、非磁性粒子粉末、結合剤樹脂及び溶剤とからなる。また、必要に応じて、磁気記録媒体の製造に通常用いられている潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
【0053】
結合剤樹脂としては、磁気記録媒体の製造にあたって汎用されている熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化型樹脂等を単独又は組み合わせて用いることができる。具体的には、熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、メタクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、ウレタンエラストマー、ナイロン−シリコーン系樹脂、ニトロセルロース−ポリアニド樹脂、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース等セルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、クロロビニルエーテル−アクリル酸共重合体、アミノ樹脂、ポリブタジエン等の合成ゴム系樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂及び電子線硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、(不飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタンカーボネート樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコン樹脂、ポリイソシアネート、電子線硬化型アクリルウレタン樹脂等を用いることができる。また、各結合剤樹脂には極性基として、−COOM、−SOM及び−OPO(但し、MはH、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は炭化水素基である。)等の酸性基、リン酸エステル類及びアルキルベタイン型の両性類基、−OH、−NH等が含まれていてもよい。本発明に係る非磁性粒子粉末のビヒクル中における分散性を考慮すれば、極性基として−COOM、−SOM又はアルキルベタイン型両性類基が含まれている結合剤樹脂が好ましい。
【0054】
本発明に係る非磁性粒子粉末と結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対して非磁性粒子粉末が5〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。
【0055】
溶剤としては、磁気記録媒体に汎用されているアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びテトラヒドロフラン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル及び酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル及びジオキサン等のグリコールエーテル類及びその混合物等を使用することができる。
【0056】
溶剤の使用量は、非磁性粒子粉末100重量部に対してその総量で65〜1000重量部である。65重量部未満では塗料とした場合に粘度が高くなりすぎ塗布が困難となる。1000重量部を超える場合には、塗膜を形成する際の溶剤の揮発量が多くなりすぎ工業的に不利となる。
【0057】
次に、本発明に係る磁気記録媒体について述べる。
【0058】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層及び該非磁性下地層上に形成された磁気記録層とからなる。また、必要に応じて、非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面にバックコート層を形成させてもよい。殊に、コンピュータ記録用のバックアップテープの場合には、巻き乱れの防止や走行耐久性向上の点から、バックコート層を設けることが好ましい。
【0059】
本発明における非磁性支持体としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリスルフォン、セルローストリアセテート、ポリベンゾオキサゾール等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等金属の箔や板及び各種の紙を使用することができる。得られる磁気記録媒体の強度を考慮すれば、ポリエステル類、ポリアミド又は芳香族ポリアミドが好ましい。
【0060】
非磁性支持体の厚みは、その材質及び用途により種々異なるが、通常好ましくは1.0〜300μm、より好ましくは2.0〜200μmである。殊に、記録容量を上げるために薄層化する傾向にあるコンピュータ記録用のバックアップテープの場合、その厚みは、通常1.0〜7.0μmが好ましく、より好ましくは2.0〜6.0μmである。
【0061】
本発明における非磁性下地層は、前述の本発明に係る非磁性下地層用非磁性塗料を用いて形成される。
【0062】
非磁性支持体上に形成された非磁性下地層のカレンダー処理後の塗膜厚さは、0.1〜5.0μmが好ましく、より好ましくは0.3〜4.0μmであり、更により好ましくは0.5〜3.0μmである。殊に、記録容量を上げるために薄層化する傾向にあるコンピュータデータ記録用のバックアップテープの場合、その厚みは、通常0.1〜3.0μmが好ましく、より好ましくは0.3〜2.5μm、更により好ましくは0.5〜2.0μmである。0.1μm未満の場合には、非磁性支持体の表面粗さを改善することが困難となると共に、得られる磁気記録媒体の強度も不十分となりやすい。5.0μmを超える場合には、磁気記録媒体の薄層化が困難となるため好ましくない。
【0063】
本発明に係る非磁性粒子粉末を用いた非磁性下地層用非磁性塗料より得られた非磁性下地層は、塗膜の光沢度が180〜300%、好ましくは185〜300%、より好ましくは190〜300%であって、塗膜の表面粗度Raが0.5〜7.5nm、好ましくは0.5〜7.0nm、より好ましくは0.5〜6.5nmであって、塗膜の強度は、ヤング率(相対値)が126〜160、好ましくは128〜160である。
【0064】
比重4.5以上の無機粒子粉末による本発明に係る非磁性粒子粉末を用いた非磁性下地層用非磁性塗料より得られた非磁性下地層は、塗膜の光沢度が185〜300%、好ましくは190〜300%、より好ましくは195〜300%であって、塗膜の表面粗度Raが0.5〜7.0nm、好ましくは0.5〜6.5nm、より好ましくは0.5〜6.0nmであって、塗膜の強度は、ヤング率(相対値)が126〜160、好ましくは128〜160である。
【0065】
アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物、ケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも一種からなる化合物によって被覆されている本発明に係る非磁性粒子粉末を用いた非磁性下地層用非磁性塗料より得られた非磁性下地層は、塗膜の光沢度が190〜300%、好ましくは195〜300%、より好ましくは200〜300%であって、塗膜の表面粗度Raが0.5〜6.5nm、好ましくは0.5〜6.0nm、より好ましくは0.5〜5.5nmであって、塗膜の強度は、ヤング率(相対値)が130〜160、好ましくは132〜160である。
【0066】
本発明における磁気記録層は、磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含んでいる。
【0067】
磁性粒子粉末としては、マグヘマイト粒子粉末(γ−Fe)やマグネタイト粒子粉末(FeO・Fe、0<x≦1)等の磁性酸化鉄粒子粉末にCo又はCo及びFeを被着させたCo被着型磁性酸化鉄粒子粉末、前記Co被着型磁性酸化鉄粒子粉末にFe以外のCo、Al、Ni、P、Zn、Si、B、希土類金属等の異種元素を含有させたCo被着型磁性酸化鉄粒子粉末、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末、鉄以外のCo、Al、Ni、P、Zn、Si、B、希土類金属等を含有する鉄合金磁性粒子粉末、Ba、Sr、又はBa−Srを含有する板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末並びにこれらにCo、Ni、Zn、Mn、Mg、Ti、Sn、Zr、Nb、Cu、Mo等の2価及び4価の金属から選ばれた保磁力低減剤の一種又は二種以上を含有させた板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末等のいずれをも用いることができる。
【0068】
尚、近年の短波長記録、高密度記録を考慮すれば、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末、鉄以外のCo、Al、Ni、P、Zn、Si、B、希土類金属等を含有する針状鉄合金磁性粒子粉末、板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末等が好ましい。
【0069】
磁性粒子粉末は、平均一次長軸径(板状粒子の場合は平均一次粒子径)が0.01〜0.50μmであることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.30μmである。該磁性粒子粉末の粒子の形状は針状もしくは板状が好ましい。ここで「針状」とは、文字通りの針状はもちろん、紡錘状や米粒状等を含む意味である。
【0070】
また、磁性粒子粉末の粒子形状が針状の場合、軸比は2.0以上が好ましく、より好ましくは5.0以上であり、ビヒクル中における分散性を考慮すれば、その上限値は15.0が好ましく、より好ましくは10.0である。
【0071】
磁性粒子粉末の粒子形状が板状の場合、板状比(粒子の平均一次粒子径と粒子の平均一次厚みの比)(以下、「板状比」という。)は2.0以上であることが好ましく、より好ましくは3.0以上であり、ビヒクル中における分散性を考慮すれば、その上限値は20.0が好ましく、より好ましくは15.0である。
【0072】
磁性粒子粉末の磁気特性は、保磁力値が39.8〜318.3kA/m(500〜4000Oe)、好ましくは43.8〜318.3kA/m(550〜4000Oe)であって、飽和磁化値が40〜200Am/kg(40〜200emu/g)、好ましくは50〜180Am/kg(50〜180emu/g)である。
【0073】
高密度記録化等を考慮して、磁性粒子粉末として鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末又は針状鉄合金磁性粒子粉末を用いた場合の磁気特性は、保磁力値が63.7〜278.5kA/m(800〜3500Oe)、好ましくは71.6〜278.5kA/m(900〜3500Oe)、飽和磁化値が90〜200Am/kg(90〜200emu/g)、好ましくは90〜180Am/kg(100〜180emu/g)である。
【0074】
結合剤樹脂としては、前記非磁性下地層用非磁性塗料を作製するために用いた結合剤樹脂を使用することができる。
【0075】
非磁性下地層上に設けられた磁気記録層のカレンダー処理後の塗膜厚さは、0.01〜2.00μmが好ましく、より好ましくは0.02〜1.50μmであり、更により好ましくは0.02〜1.00μmである。殊に、記録容量を上げるために薄層化する傾向にあるコンピュータデータ記録用のバックアップテープの場合、その厚みは、通常0.01〜0.30μmが好ましく、より好ましくは0.02〜0.20μmである。0.01μm未満の場合には、均一な塗布が困難であり、塗りむら等の現象が出やすくなるため好ましくない。2.00μmを超える場合には、反磁界の影響により再生出力が小さくなるため好ましくない。
【0076】
磁性粒子粉末と結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対して磁性粒子粉末が100〜2000重量部、好ましくは200〜1500重量部である。
【0077】
磁気記録層中には、通常用いられている潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
【0078】
帯電防止剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化スズ、酸化チタン−酸化スズ−酸化アンチモン等の導電性粉末及び界面活性剤等を用いることができる。
【0079】
本発明におけるバックコート層中には、結合剤樹脂と共に、バックコート層の表面電気抵抗値及び光透過率低減、並びに強度向上を目的として、帯電防止剤及びフィラー材を含有させることが好ましい。また、必要に応じて、通常の磁気記録媒体の製造に用いられる潤滑剤、研磨剤等が含まれていてもよい。
【0080】
結合剤樹脂としては、前記非磁性下地層用非磁性塗料を作製するために用いた結合剤樹脂を使用することができる。
【0081】
フィラー材としては、ヘマタイト、アルミナ、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、酸化セリウム、二酸化チタン、シリカ、酸化亜鉛、窒化ホウ素及び硫酸バリウム等から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
【0082】
コンピュータデータ記録用のバックアップテープの中でも、高記録容量化のために記録トラック幅を狭くした場合には、オフトラックによる再生出力の低下が問題となるため、トラックサーボが必要となる。トラックサーボ方式には磁気記録層又はバックコート層にサーボトラックバンドを形成し、それを磁気的に読み取ってサーボトラッキングする磁気サーボ方式とバックコート層に凹部アレイからなるサーボトラックバンドをレーザー照射等で形成し、それを光学的に読み取ってサーボトラッキングする光学サーボ方式がある。
【0083】
殊に、バックコート層にサーボトラックバンドを形成する磁気サーボ方式の場合には、帯電防止剤及びフィラー材に加えて、磁性粒子粉末を含有させることが必須となる。磁性粒子粉末としては、前記磁性層に用いた磁性粒子粉末を使用することができる。
【0084】
非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面に設けられたバックコート層のカレンダー処理後の塗膜厚さは、0.1〜4.0μmが好ましく、より好ましくは0.2〜2.0μmであり、更により好ましくは0.2〜1.5μmである。0.1μm未満の場合には、バックコート層の強度が不十分となり、また、塗りむら等の現象が出やすくなるため好ましくない。4.0μmを超える場合には、バックコート層の膜厚が厚すぎるため、テープ全厚が厚くなり、高記録容量化が困難となる。
【0085】
カーボンブラックと前記フィラー材の合計量と結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対してカーボンブラックと前記フィラー材の合計量として40〜250重量部、好ましくは50〜200重量部である。
【0086】
本発明に係る磁気記録媒体は、保磁力値は39.8〜318.3kA/m(500〜4000Oe)が好ましく、より好ましくは43.8〜318.3kA/m(550〜4000Oe)、塗膜の光沢度は165〜300%が好ましく、より好ましくは170〜300%、更により好ましくは175〜300%、塗膜の表面粗度Raは11.5nm以下が好ましく、より好ましくは2.0〜11.0nm、更により好ましくは2.0〜10.5nm、ヤング率は126〜160が好ましく、より好ましくは128〜160、ドロップアウト(D/O)は18個/msec以下が好ましく、より好ましくは16個/msec以下である。
【0087】
高記録容量化を考慮して、磁性粒子粉末として鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末、針状鉄合金磁性粒子粉末又は板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末を用いた本発明に係る磁気記録媒体の場合には、保磁力値は63.7〜318.3kA/m(800〜4000Oe)が好ましく、より好ましくは71.6〜318.3kA/m(900〜4000Oe)、塗膜の光沢度は185〜300%が好ましく、より好ましくは190〜300%、更により好ましくは195〜300%、塗膜の表面粗度Raは9.0nm以下が好ましく、より好ましくは2.0〜8.5nm、更により好ましくは2.0〜8.0nm、ヤング率は128〜160が好ましく、より好ましくは130〜160、ドロップアウト(D/O)は16個/msec以下が好ましく、より好ましくは14個/msec以下である。
【0088】
比重4.5以上の無機粒子粉末を用いて得られた非磁性粒子粉末を用いた本発明に係る磁気記録媒体の場合には、保磁力値は63.7〜318.3kA/m(800〜4000Oe)が好ましく、より好ましくは71.6〜318.3kA/m(900〜4000Oe)、塗膜の光沢度は190〜300%が好ましく、より好ましくは195〜300%、更により好ましくは200〜300%、塗膜の表面粗度Raは8.5nm以下が好ましく、より好ましくは2.0〜8.0nm、更により好ましくは2.0〜7.5nm、ヤング率は130〜160が好ましく、より好ましくは132〜160、ドロップアウト(D/O)は14個/msec以下が好ましく、より好ましくは12個/msec以下である。
【0089】
次に、本発明に係る非磁性粒子粉末の製造法について述べる。
【0090】
本発明に係る磁気記録媒体用の非磁性下地層用非磁性粒子粉末は、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末にモース硬度7.0〜9.0の無機粒子粉末を添加後、湿式分散することによって得ることができる。
【0091】
ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末と無機粒子粉末を湿式分散させるための分散機器としては、湿式ビーズレス連続分散機・乳化機、湿式媒体分散機及び、それらを組み合わせたものを用いることができる。
【0092】
モース硬度7.0〜9.0の無機粒子粉末の添加量は、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末100重量部に対して0.01〜0.20重量部である。該無機粒子粉末の添加量が上記範囲外の場合には、本発明の目的とする非磁性粒子粉末が得られない。
【0093】
湿式分散処理後は濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を施してもよい。
【0094】
本発明に係る非磁性粒子粉末は、必要により、モース硬度7.0〜9.0の無機粒子粉末を添加して湿式分散処理後に、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる一種又は二種以上の化合物で被覆してもよい。
【0095】
化合物による被覆は、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末にモース硬度7.0〜9.0の無機粒子粉末を添加して、湿式分散して得られる非磁性粒子粉末の水懸濁液に、アルミニウム化合物、ケイ素化合物又は当該両化合物を添加して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記非磁性粒子粉末の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる一種又は二種以上の化合物で被覆し、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を施してもよい。
【0096】
アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩等が使用できる。
【0097】
ケイ素化合物としては、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等が使用できる。
【0098】
次に、本発明における磁気記録媒体の製造法について述べる。
【0099】
前記磁気記録層及び前記バックコート層の形成にあたって用いる溶剤としては、磁気記録媒体に汎用されているアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びテトラヒドロフラン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル及び酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル及びジオキサン等のグリコールエーテル類及びその混合物等を使用することができる。
【0100】
溶剤の使用量は、粒子粉末100重量部に対してその総量で65〜1000重量部である。65重量部未満では塗料とした場合に粘度が高くなりすぎ塗布が困難となる。1000重量部を超える場合には、塗膜を形成する際の溶剤の揮発量が多くなりすぎ工業的に不利となる。
【0101】
非磁性下地層、磁気記録層、バックコート層は、各層を構成する成分及び溶剤を一般に使用される混練機及び分散機により混練・分散処理を行い、各塗料を作製する。該各塗料を用いて、非磁性支持体上の一面に非磁性下地層、磁気記録層の順に塗布、乾燥後、カレンダー処理を行う。その際の塗布方法としては、磁性層と非磁性層をほぼ同時に塗布するWet on Wet法でも、非磁性下地層を塗布・乾燥後、その上に磁気記録層を塗布するWet on Dry法のどちらでもよい。また、必要により、バックコート層を設ける場合には、非磁性下地層及び磁気記録層とは反対面の非磁性支持体上にバックコート層用塗料を塗布、乾燥後、カレンダー処理を行い、磁気記録媒体を得る。
【0102】
<作用>
本発明において最も重要な点は、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末にモース硬度7.0〜9.0の無機粒子粉末を添加し、湿式分散処理して得られた非磁性粒子粉末は、わずかな分散力で粒子がほぐれやすいという事実である。
【0103】
本発明に係る非磁性粒子粉末が、わずかな分散力で粒子がほぐれやすい理由について、本発明者は、次のように考えている。ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末にモース硬度7.0〜9.0の無機粒子粉末を添加し、湿式分散処理することで、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末に存在する強固な二次凝集体が、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末よりもモース硬度の高い無機粒子粉末による衝撃粉砕により、一次粒子にまでほぐされるためと考えている。また、該無機粒子粉末の比重がヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末よりも大きいものの場合は、衝撃力がより高くなることで、少ない存在量でさらに効果的に、一次粒子にまでほぐすことができる。
【0104】
また、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる一種又は二種以上の化合物により表面を被覆する場合には、二次凝集体が少なく、一次粒子にまでほぐされた粒子粉末表面をアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる一種又は二種以上の化合物により均一に覆うことができたため、非磁性塗料中における分散性に優れた磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末が得られると考えている。
【0105】
そして、前記非磁性粒子粉末を含有する非磁性下地層用非磁性塗料は、わずかな分散力で分散性に優れた塗料が得られるという事実である。
【0106】
本発明に係る非磁性下地層用非磁性塗料のわずかな分散力で分散性に優れた塗料が得られる理由について、本発明者は、非磁性粒子粉末として、前述の本発明に係る非磁性粒子粉末が、3barにおける体積基準平均粒子径(D503barが分散圧5barにおける体積基準平均径(D505barとほぼ同じであり、従来よりも弱い分散力で一次粒子にまでほぐれる非磁性粒子粉末を用いたことによるものと考えている。
【0107】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、生産性に優れると共に、非磁性下地層を薄層化した場合にもドロップアウトを低減することが可能であるという事実である。
【0108】
本発明に係る磁気記録媒体が、非磁性下地層を薄層化しても表面平滑性が優れると共に、ドロップアウトが少なくなる理由として、本発明者は、分散性に優れた非磁性塗料から得られた塗膜を非磁性下地層として用いることにより、非磁性下地層が薄層化しても表面上に突出する二次凝集粒子塊を低減することができたことによるものと考えている。
【実施例】
【0109】
以下、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0110】
粒子の平均一次長軸径、平均一次短軸径及び平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真に示される粒子約350個について一次長軸径、一次短軸径又は一次粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0111】
軸比は平均一次長軸径と平均一次短軸径との比で示し、板状比は平均一次粒子径と平均一次厚みの比で示した。
【0112】
比表面積値はBET法により測定した値で示した。
【0113】
ヘマタイト粒子粉末及び含水酸化鉄粒子粉末の粒子内部や粒子表面に存在するAl量、Si量及びヘマタイト粒子粉末及び含水酸化鉄粒子粉末に存在させる無機粒子粉末のW量、Ti量、Zr量、Al量、Ca量等は、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。また、Co被着マグネタイト粒子粉末及びCo被着マグヘマイト粒子粉末のCo量及び板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末のTi量、Ni量及びFe量は、上記と同様にして測定した。
【0114】
ヘマタイト粒子粉末、含水酸化鉄粒子粉末及び本発明の非磁性粒子粉末の分散圧5barにおける体積基準平均径(D505barは、あらかじめ試料を60mesh(目開き 250μm)の篩に通し、篩を通過した該試料を乾燥機にて80℃で3時間乾燥した後、「レーザー回折式粒度分布測定装置 model HELOS LA/KA」(SYMPATEC社製)の乾式分散ユニットを用いて、分散圧0.5MPa(5bar)にて測定した。分散圧3barにおける体積基準平均径(D503barは、同様の方法で分散圧を0.3MPa(3bar)にすることにより測定した。
【0115】
磁性粒子粉末の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業株式会社製)を用いて外部磁場795.8kA/m(10kOe)(但し、Co被着型磁性酸化鉄粒子粉末を用いた場合には39.79kA/m(5kOe))の下で測定した値であり、磁気テープの諸特性は外部磁場795.8kA/m(10kOe)(但し、Co被着型磁性酸化鉄粒子粉末を磁性粒子粉末として用いた場合には39.79kA/m(5kOe))の下で測定した結果である。
【0116】
塗料粘度は、得られた塗料の25℃における塗料粘度Eを、「E型粘度計EMD−R」(株式会社東京計器製)を用いて測定し、ずり速度D=1.92sec−1における値で示した。
【0117】
塗膜の表面光沢度は、「グロスメーター UGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて入射角45°で測定した値であり、標準板光沢を86.3%とした時の値を%で示したものである。
【0118】
表面粗度Raは、「Surfcom−575A」(東京精密株式会社製)を用いて塗膜の中心線平均粗さを測定した。
【0119】
塗膜の強度は、「オートグラフ」(株式会社島津製作所製)を用いて塗膜のヤング率を測定して求めた。ヤング率は市販ビデオテープ「AV T−120」(日本ビクター株式会社製)との相対値で表した。相対値が高いほど塗膜の強度が良好であることを示す。
【0120】
磁気記録媒体のドロップアウト(D/O)は、磁気テープを「ドラムテスターBX−3168」(ベルデックス社製)にかけ、相対速度2.5m/secにおいて得られるエンベロープより、単位時間当たりのドロップアウトの個数をカウントすることにより求めた。
【0121】
磁気記録媒体を構成する非磁性支持体、非磁性下地層及び磁気記録層の各層の厚みは、下記のようにして測定した。
【0122】
「デジタル電子マイクロメーター K351C」(安立電気株式会社製)を用いて、先ず、非磁性支持体の膜厚(A)を測定する。次に、非磁性支持体と該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層との厚み(B)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みとの総和)を同様にして測定する。更に、非磁性下地層上に磁気記録層を形成することにより得られた磁気記録媒体の厚み(C)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みと磁気記録層の厚みとの総和)を同様にして測定する。そして、非磁性下地層の厚みは(B)−(A)で示し、磁気記録層の厚みは(C)−(B)で示した。
【0123】
また、非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面にバックコート層を設けた場合には、上記と同様に、「デジタル電子マイクロメーター K351C」(安立電気株式会社製)を用いて、先ず、非磁性支持体の膜厚(A)を測定する。次に、非磁性支持体と該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層との厚み(B)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みとの総和)を同様にして測定する。更に、非磁性下地層上に磁気記録層を形成することにより得られた磁気記録媒体の厚み(C)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みと磁気記録層の厚みとの総和)を同様にして測定する。更に、磁気記録層とは反対の非磁性支持体面に設けたバックコート層との厚み(D)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みと磁気記録層の厚みとバックコート層の厚みとの総和)を同様にして測定する。そして、非磁性下地層の厚みは(B)−(A)で示し、磁気記録層の厚みは(C)−(B)で示し、バックコート層の厚みは(D)−(C)で示した。
【0124】
<実施例1−1:非磁性粒子粉末の製造>
粒子粉末1(種類:ヘマタイト粒子粉末、粒子形状:針状、平均一次長軸径:0.142μm、平均一次短軸径:0.0209μm、軸比:6.8、BET比表面積値:49.8m/g、分散圧5barにおける体積基準平均径(D505bar:3.71μm、分散圧3barにおける体積基準平均径(D503bar:4.53μm)12kgを、凝集を解きほぐすために、純水120lに攪拌機を用いて邂逅し、無機粒子1(種類:タングステンカーバイド(製品名 WC−10、株式会社アライドマテリアル製)、粒子形状:粒状、モース硬度:9.0、比重:15.4、平均一次粒子径:0.95μm、BET比表面積値:1.2m/g)を6g添加した後、更に、「TKパイプラインホモミクサー」(製品名、特殊機化工業株式会社製)を回転数3600rpmにて60分間通して、タングステンカーバイド粒子粉末が存在するヘマタイト粒子粉末のスラリーを得た。
【0125】
続いて、このタングステンカーバイド粒子粉末が存在するヘマタイト粒子粉末のスラリーを縦型サンドグラインダー「マイティーミルMHG−1.5L」(製品名、井上製作所株式会社製)を用いて、軸回転数2000rpmにおいて5回パスさせて、タングステンカーバイド粒子粉末が存在するヘマタイト粒子粉末の分散スラリーを得た。
【0126】
得られた分散スラリーは、325mesh(目開き44μm)における篩残分は0%であった。この分散スラリーを濾別、水洗して、タングステンカーバイド粒子粉末が存在するヘマタイト粒子粉末のケーキを得た。このタングステンカーバイド粒子粉末が存在するヘマタイト粒子粉末のケーキを120℃で乾燥した後、乾燥粉末11.0kgをエッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入して、392N/cm(40Kg/cm)で20分間混合攪拌を行い、粒子の凝集を軽く解きほぐした。
【0127】
得られた非磁性粒子粉末の粒子形状は針状であり、平均一次長軸径は0.143μm、平均一次短軸径が0.0211μm、軸比が6.8であった。BET比表面積値は48.1m/g、分散圧5barにおける体積基準平均径(D505barは1.99μm、3barにおける体積基準平均径(D503barは2.37μmであった。なお、非磁性粒子粉末中のタングステンカーバイドの存在量はW換算で0.041重量%であった。
【0128】
<実施例2−1:非磁性下地層の製造(構成:非磁性下地層 1)>
前記非磁性粒子粉末12gと結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合して混合物(固形分率72%)を得、この混合物を更にプラストミルで30分間混練して混練物を得た。
【0129】
この混練物を1.5mmφガラスビーズ95g、追加の結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って塗料組成物を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、非磁性下地層用非磁性塗料を調整した。
【0130】
得られた非磁性下地層用非磁性塗料の組成は、下記の通りであった。
【0131】
非磁性粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 10.0重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 10.0重量部、
シクロヘキサノン 44.6重量部、
メチルエチルケトン 111.4重量部、
トルエン 66.9重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 3.0重量部、
潤滑剤(ブチルステアレート) 1.0重量部。
【0132】
得られた非磁性塗料の塗料粘度は230mPa・sであった。
【0133】
上記非磁性下地層用非磁性塗料を厚さ6.3μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、次いで、乾燥させることにより実施例2−1を形成した。非磁性下地層の特性を評価するために、得られた塗布片の半分に対してカレンダー処理を行った後、60℃で24時間硬化反応を行った。
【0134】
得られた実施例2−1は、膜厚が2.5μm、塗膜の光沢度が217%、表面粗度Raが5.1nm、ヤング率(相対値)が133であった。
【0135】
<実施例2−7:非磁性下地層の製造(構成:非磁性下地層2)>
上記と同様に調整した非磁性下地層用非磁性塗料を厚さ4.5μmの芳香族ポリアミドフィルム上に塗布し、次いで、乾燥させることにより実施例2−6を形成した。非磁性下地層の特性を評価するために、得られた塗布片の半分に対してカレンダー処理を行った後、60℃で24時間硬化反応を行った。
【0136】
得られた実施例2−7は、膜厚が1.7μm、光沢度が210%、表面粗度Raが5.6nm、ヤング率(相対値)が131であった。
【0137】
<実施例3−1:磁気記録媒体の製造(構成:磁気記録媒体層1)>
磁性粒子(1)(種類:鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末、平均長軸径:0.063μm、平均短軸径:0.0116μm、軸比:5.4、保磁力値:187.0kA/m(2,350Oe)、飽和磁化値:131.8Am/kg(131.8emu/g))12g、研磨剤(商品名:AKP−30、住友化学株式会社製)1.2g、カーボンブラック(商品名:#3250B、三菱化成株式会社製)0.12g、結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合して混合物(固形分率78%)を得、この混合物を更にプラストミルで30分間混練して混練物を得た。
【0138】
この混練物を1.5mmφガラスビーズ95g、追加結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って磁性塗料を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、磁気記録層用磁性塗料を調整した。
【0139】
得られた磁気記録層用磁性塗料の組成は下記の通りであった。
鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 10.0重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 10.0重量部、
研磨剤(AKP−30) 10.0重量部、
カーボンブラック(#3250B) 1.0重量部、
潤滑剤(ミリスチン酸:ステアリン酸ブチル=1:2) 3.0重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 5.0重量部、
シクロヘキサノン 65.8重量部、
メチルエチルケトン 164.5重量部、
トルエン 98.7重量部。
【0140】
磁気記録層用塗料を前記実施例2−1の上に塗布した後、磁場中において配向・乾燥し、次いで、カレンダー処理を行った後、60℃で24時間硬化反応を行い12.7mm幅にスリットして磁気記録媒体 1(実施例3−1)を得た。
【0141】
得られた磁気記録媒体(実施例3−1)は、磁気記録層の膜厚が0.2μm、保磁力値が192.1kA/m(2414Oe)、光沢度が215%、表面粗度Raが5.4nm、ヤング率(相対値)が135、D/Oが9個/msecであった。
【0142】
<実施例3−7:磁気記録媒体の製造(構成:磁気記録媒体層2)>
上記と同様に調整した磁気記録層用磁性塗料を前記実施例2−7の上に塗布した後、磁場中において配向・乾燥した。
【0143】
カーボンブラック(平均一次粒子径 25nm)12.0g、カーボンブラック(平均一次粒子径 370nm)1.8g、酸化鉄1.8g、結合剤樹脂溶液(ニトロセルロース30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合して混合物(固形分率78%)を得、この混合物を更にプラストミルで30分間混練して混練物を得た。
【0144】
この混練物を1.5mmφガラスビーズ95g、追加結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行ってバックコート塗料を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、バックコート層用塗料を調整した。
【0145】
得られたバックコート層用塗料の組成は下記の通りであった。
カーボンブラック(一次粒子径 25nm) 100.0重量部、
カーボンブラック(一次粒子径 370nm) 15.0重量部、
酸化鉄 15.0重量部、
ニトロセルロース樹脂 55.0重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 35.0重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 18.0重量部、
シクロヘキサノン 325.0重量部、
メチルエチルケトン 655.0重量部、
トルエン 325.0重量部。
【0146】
上記で得られたバックコート層用塗料を磁気記録層とは反対面の非磁性支持体上に塗布した後、乾燥し、次いで、カレンダー処理を行った。バックコート層の厚みは0.5μmであった。その後、60℃で24時間硬化反応を行い、0.5インチ幅にスリットして磁気記録層2(実施例3−7)を得た。
【0147】
得られた磁気記録媒体(実施例3−7)は、磁気記録層の膜厚が0.2μm、保磁力値が192.2kA/m(2415Oe)、光沢度が211%、表面粗度Raが5.7nm、ヤング率(相対値)が133、D/Oが10個/msecであった。
【0148】
前記実施例1−1、2−1、2−7、3−1、及び3−7に従って非磁性粒子粉末、非磁性下地層及び磁気記録媒体を作製した。各製造条件及び得られた非磁性粒子粉末、非磁性下地層及び磁気記録媒体の諸特性を示す。
【0149】
粒子粉末1〜5:
各種のヘマタイト粒子粉末及びゲータイト粒子粉末を準備し、上記実施例1−1と同様にして凝集が解きほぐされたヘマタイト粒子粉末及びゲータイト粒子粉末を得た。
【0150】
ヘマタイト粒子粉末及びゲータイト粒子粉末の諸特性を表1に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
無機粒子粉末1〜7:
無機粒子粉末として表2に示す特性を有する無機粒子粉末を用意した。
【0153】
【表2】

【0154】
実施例1−2〜1−6、比較例1及び2:
粒子粉末の種類、湿式分散処理工程にて添加させる無機粒子粉末の種類及び添加量を種々変えた以外は、前記実施例1−1と同様にして非磁性粒子粉末を得た。
なお、比較例1は粒子粉末1に、無機粒子粉末を添加せず、湿式分散処理工程を行ったものである。
【0155】
実施例1−7:
粒子粉末1の針状ヘマタイト粒子粉末12kgと水120lとを用いて、前記実施例1−1と同様にして針状ヘマタイト粒子粉末とタングステンカーバイド粒子粉末を含むスラリーを得た。得られたタングステンカーバイド粒子粉末を含む非磁性粒子粉末の再分散スラリーのpH値を10.5とした。
【0156】
次に、該スラリーに水を加えスラリー濃度を98g/lに調整した。このスラリー120lを加熱して60℃とし、このスラリー中に1.0mol/lのNaAlO溶液5737ml(針状ヘマタイト粒子粉末に対してAl換算で1.3重量%に相当する)を加え、30分間保持した後、酢酸を用いてpH値を7.5に調整した。この状態で30分間保持した後、濾過、水洗、乾燥、粉砕して粒子表面がアルミニウムの水酸化物により被覆されている実施例1−7の非磁性粒子粉末を得た。
【0157】
実施例1−8〜1−11:
粒子粉末の種類、湿式分散処理工程における無機粒子粉末の種類及び添加量、表面処理工程における被覆物の種類及び添加量を種々変えた以外は、前記実施例1−7と同様にして非磁性粒子粉末を得た。
【0158】
このときの製造条件を表3に、得られた非磁性粒子粉末の諸特性を表4に示す。
【0159】
【表3】

【0160】
【表4】

【0161】
<非磁性下地層の製造>
実施例2−2〜2−6、2−8〜2−13、比較例3〜8:
非磁性粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例2−1又は2−7と同様にして非磁性塗料を得た。比較例5及び8については、非磁性塗料を作製する段階で、非磁性粒子粉末100重量部に対して無機粒子粉末2を0.05重量部添加し、前記実施例2−1又は2−7と同様にして非磁性下地層を得た。
【0162】
このときの製造条件及び得られた非磁性塗料及び非磁性下地層の諸特性を表5に示す。
【0163】
【表5】

【0164】
<磁気記録媒体の製造>
実施例3−2〜3−6、実施例3−8〜3−13及び比較例15〜20:
非磁性下地層の種類及び磁性粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例3−1又は3−7と同様にして磁気記録媒体を製造した。
【0165】
尚、使用した磁性粒子1乃至4の諸特性を表6に示す。
【0166】
【表6】

【0167】
このときの製造条件及び得られた磁気記録媒体の諸特性を表7に示す。
【0168】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明に係る非磁性粒子粉末は、分散圧3barにおける体積基準平均粒子径(D503barが小さく、わずかな分散力で粒子がほぐれやすいため、非磁性塗料中における分散性に優れているので、磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として好適である。
【0170】
本発明に係る非磁性塗料は、分散性に優れると共に、高い表面平滑性及び強度を有する非磁性下地層を得ることができるので、磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性塗料として好適である。
【0171】
本発明に係る磁気記録媒体は、分散性に優れた非磁性塗料から得られた塗膜を非磁性下地層として用いることにより、生産性に優れると共に、非磁性下地層を薄層化した場合にもドロップアウトを低減することが可能であるので、高密度磁気記録媒体として好適である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末と共にモース硬度7.0〜9.0の無機粒子粉末が存在することを特徴とする磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末。
【請求項2】
無機粒子粉末の比重が4.5以上であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末。
【請求項3】
無機粒子粉末の存在量がヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末に対して0.01〜0.2重量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末。
【請求項4】
無機粒子粉末がタングステンカーバイドであることを特徴とする請求項1及至請求項3のいずれかに記載の磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末。
【請求項5】
ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末と無機粒子粉末のいずれか一種以上の粒子表面が、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物、ケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも一種からなる化合物によって被覆されていることを特徴とする請求項1及至請求項4のいずれかに記載の磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末。
【請求項6】
ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末に無機粒子粉末を添加した後に、湿式分散処理を行うことを特徴とする請求項1及至請求項4のいずれかに記載の磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末の製造法。
【請求項7】
ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末に無機粒子粉末を添加して、湿式分散処理を行った後に、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末と無機粒子粉末のいずれか一種以上の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物、ケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも一種からなる化合物によって被覆することを特徴とする請求項5記載の磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末の製造法。
【請求項8】
非磁性粒子粉末、結合剤樹脂と溶剤を含む非磁性塗料において、前記非磁性粒子粉末が請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の非磁性下地層用非磁性粒子粉末であることを特徴とする非磁性塗料。
【請求項9】
非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む非磁性下地層及び該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記非磁性粒子粉末が請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の非磁性下地層用非磁性粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項10】
非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む非磁性下地層、該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層及び、前記非磁性支持体の他方の面に形成されるバックコート層からなる磁気記録媒体において、前記非磁性粒子粉末が請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の非磁性下地層用非磁性粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体。


【公開番号】特開2007−128629(P2007−128629A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322876(P2005−322876)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】