説明

磁気記録媒体及び磁気記録媒体の製造方法

【課題】 磁気記録読み取り側の表面から識別可能で、かつ経時安定性が良い絵柄を有し、該絵柄の形成に伴って絵柄形成部分に段差を生じないために、該段差に起因する出力変動を発生しない磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】 本発明の磁気記録媒体は、基材層及び磁気記録層を含む複数の層により形成された積層体中に、絵柄形成剤により形成された絵柄を有し、前記絵柄は前記積層体の前記基材層と反対方向の表面から識別可能であり、前記絵柄形成剤は、前記積層体の膜厚方向に分布し、前記積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材層及び磁気記録層を含む複数の層により積層形成され、磁気記録層の磁気読み取り側から識別可能な絵柄を有する磁気記録媒体、該磁気記録媒体の製造方法、及び該磁気記録媒体の製造方法に用いる転写用積層体に関する。特にクレジットカード、銀行カードなどの、カード用基材層上に磁気記録媒層を含む層を積層してなるカード状磁気記録媒体であって、磁気ストライプ部分に磁気読み取り側から識別可能な絵柄の形成された磁気記録媒体、該磁気記録媒体の製造方法、及び該磁気記録媒体の製造方法に用いる転写用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種磁気記録媒体上には、実用上または意匠上の目的で種々の絵柄が形成されるようになっている。
特に、クレジットカード、銀行カードなど高い意匠性を要求される磁気カードにおいては、高意匠性を付与することが重要であり、従来よりカード基材上に形成される磁気ストライプ上に着色層を設け、磁気記録層が元来持つ磁性粉由来の黒色、茶色を完全に隠蔽したカラー着色磁気ストライプが知られており、また近年は磁気記録層上、または磁気記録層上に設けた着色層上に更に絵柄を形成した絵柄付き磁気ストライプも作製されている。
この絵柄付き磁気ストライプを形成するには図11の工程b図に示すように、転写用仮支持体上に剥離層と保護層、または剥離機能を有する保護層を形成し、その上に絵柄を形成したのち、さらに磁気記録層の色相を隠蔽する着色層、磁気記録層、および感熱接着剤層を順に形成して積層体を作製し、該積層体を所望の幅に裁断して磁気ストライプ形成用の転写用積層体を得る。
このようにして得た磁気ストライプ形成用の転写用積層体の転写材をカード基材のオーバーシートに転写し、センターコアと、反対面のオーバーシートと共に熱プレス加工を行い、オーバーシートに磁気ストライプ用の転写材が埋め込まれた絵柄付き磁気ストライプカードを得る(図1参照)。
【0003】
しかし、このように形成された絵柄付き磁気ストライプは、絵柄が形成される領域が磁気記録層の磁気記録読み取り側に位置するため、絵柄部と非絵柄部で、記録再生時の磁気ヘッドと磁気記録層との間の距離であるスペーシングが変化するため再生出力の変動が発生し、その結果情報読み取り時のエラー発生の可能性を増大する傾向が有る。
このような、絵柄形成による絵柄部、非絵柄部の段差を無くす方法として、非絵柄部の空間を埋めるように絵柄部のネガパターンを用いて、非絵柄部の空間を埋める方法が開示されている(特許文献1参照)。そして絵柄部の上部全体に形成される着色層(隠蔽層)と該非絵柄部の凹部に適用される空間充填用のインキとを同じ色相とすることにより非絵柄部へのネガパターンの印刷を目立たなくして、一層充填用インキの効果をあげることも出来る。しかしながら、この方法は、段差に帰因する出力変動を抑制する一定の効果は有るものの完全でなく、また、非絵柄部分を埋めるための新たな塗布工程が必要となり生産効率の低下が避けられなかった。
【0004】
これら課題に対して、磁気記録層上に隠蔽層、及び分散染料で染色できる樹脂塗膜層を形成し、その樹脂塗膜層を昇華性分散染料で染色する磁気テープの製造方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしこの方法は、絵柄形成による凹凸の発生は防止できるものの、隠蔽層の他に染料定着のための樹脂塗膜層を形成する必要がある。また通常昇華性染料はその良好な昇華性と安定性の両立が困難であり、形成した絵柄の耐候保存性、経時安定性については必ずしも十分とは言えない。さらに該方法では最外層である樹脂塗膜層に昇華性染料で絵柄を形成施した後、その上にさらに保護層を形成することになるため、転写工程で一度に積層を行うことができず工程が分断されて製造効率が低下する。
一方特殊な絵柄として、クレジットカード、銀行カードなどセキュリティ性を重要視される磁気カードにおいて、偽造防止の手段として、磁気記録層上に赤外線インクや蛍光剤を用いて絵柄が設けられているものが知られている。これら絵柄は通常は目視で識別できず、その絵柄の形成位置や存在そのものが秘匿され、特定の光源や検出器を用いることで初めて識別可能となることが重要である。しかし、絵柄によって段差が生じると以下に示すようにそのセキュリティー性が低下する。
例えば蛍光剤を用いた蛍光絵柄としては、上述のように太陽光や室内光に含まれる程度の紫外線では視認できず、専用の紫外線照射装置による紫外線照射により初めて蛍光絵柄として視認できることが必要であり、これによりカードの真偽を判断することが行われる。
このため、これら蛍光絵柄を形成した領域の上には隠蔽層が形成され、強度の強い紫外線を専用照射装置で照射したときのみ蛍光絵柄が認識されるようになっている(特許文献3参照)。
【0005】
しかしこれら隠蔽層の膜厚は再生出力の低下を抑えるため、通常は、数μm以下の薄膜とされる。このため蛍光絵柄の段差を完全に解消することは困難であった。したがってたとえ隠蔽層によって太陽光、室内光等では蛍光絵柄が視認できなかったとしても、蛍光絵柄によって形成され、完全には解消されない段差が残存するため、反射光によって絵柄の存在が視認されてしまうという不都合があった。さらにそのような段差の残存は再生出力の変動を生じさせ、信号の質を低下させるという問題も有している。
このような問題の解決を図るため、蛍光剤を用いた絵柄を有する磁気カードの製造方法として、転写用仮支持体上に剥離層、オーバーコート層、絵柄印刷層、隠蔽層、及び蛍光絵柄形成領域のように各層を順次積層して磁気ストライプ形成用の転写材を形成し、これを転写工程を経て予め磁気記録層を形成してあるカード用基体上に転写させる製造方法が記載されている(特許文献4参照)。該方法によれば隠蔽層上に形成される蛍光絵柄形成領域のインクが隠蔽層へと適度に浸透することによって、転写後の隠蔽層に浸透した蛍光剤が紫外線を受けて発光する。このため隠蔽層によって蛍光が遮蔽されることがなく、また蛍光剤によって形成された絵柄による段差も生じないというものである。しかし蛍光剤を隠蔽層中に適度に浸透させるためのインク組成や隠蔽層の樹脂組成の選定を微妙なバランスをとって行わなければならず、わずかな工程変化で蛍光絵柄のにじみや、蛍光絵柄の発光強度不足が起こる可能性が高い。またインクや樹脂の選択が制限され設計の自由度が制約される。
【0006】
さらに、転写工程を経て磁気ストライプ部分に絵柄を形成する従来の絵柄付き磁気記録媒体の製造方法の場合は、以下のような不都合があった。すなわち転写用積層体に形成する絵柄の印刷は、通常、転写用基材上に剥離層、保護層または剥離機能を有する保護層の形成に次いで行われ、その後に着色層、磁気記録層、感熱接着剤層の各層が順次積層形成される。すなわち、絵柄の印刷は磁気ストライプ形成用の転写用積層体の製造工程における初期段階で行わなければならず、絵柄を決定、作製した後にさらに多くの工程と時間を要して磁気ストライプ形成用の転写用積層体が作製される。したがって、絵柄付き磁気ストライプ形成用の転写用積層体が完成した後に絵柄の修正が必要となった場合には、短時間で絵柄の修正を行うことができず、絵柄修正が大幅な納期遅れと効率の悪化を発生させる。
以上のように磁気記録媒体の磁気記録層上に絵柄を形成した場合、高意匠化に伴って信号特性が低下したり、本来の絵柄の機能を十分に果たせなかったりする場合が多々あった。
また従来の絵柄を伴う磁気記録媒体の製造方法では生産効率が良好とは言えなかった。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−168933号公報
【特許文献2】特開2000−155937号公報
【特許文献3】特開2000−002160号公報
【特許文献4】特開平9−309287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、磁気記録媒体の磁気記録読み取り側の表面から識別可能でかつ経時安定性の良い絵柄を有し、該絵柄の形成にともなって絵柄形成部分に段差を生じないために、該段差に起因する再生出力の変動や、また該絵柄が本来果たすべき機能に対する障害の発生しない磁気記録媒体を提供することである。
さらに本発明の目的は、転写工程を経て磁気記録読み取り側の表面から識別可能な絵柄を有する磁気記録媒体を作製する磁気記録媒体の製造方法であって、該絵柄形成部分に段差が生じないため再生出力が変動することがなく、かつ製造効率が良好で、絵柄の形成から磁気記録媒体の作製までの工程が短いため、絵柄変更に迅速に対応できる磁気記録媒体の製造方法を提供することである。
さらに本発明の目的は、前記転写工程において使用される転写用積層体であって、磁気記録層側の表面から識別可能な絵柄を有し、かつ該絵柄の形成によって絵柄形成部分に段差が生じない磁気記録媒体を効率よく作製することができる転写用積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は基材層及び磁気記録層を含む複数の層により形成された積層体中に、絵柄形成剤により形成された絵柄を有し、前記絵柄は前記積層体の前記基材層と反対方向の表面から識別可能であり、前記絵柄形成剤は、前記積層体の膜厚方向に分布し、前記積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して分布していることを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
また本発明は、転写用仮支持体上に、少なくとも一つの磁気記録層を有し、前記転写用仮支持体と接する面とは反対側の該磁気記録層の面に絵柄形成剤により絵柄を形成した転写材を形成し、
【0010】
次いで、前記転写材を転写用仮支持体から基材層上に転写することにより積層体を形成し、
その後、該積層体が積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有するように該絵柄形成剤を拡散させることによる、
基材層及び磁気記録層を含む複数の層により形成された積層体中に、絵柄形成剤により形成された絵柄を有し、前記絵柄は前記積層体の前記基材層と反対方向の表面から識別可能であり、前記絵柄形成剤は、前記積層体の膜厚方向に分布し、前記積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して分布していることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【0011】
さらにまた本発明は転写用仮支持体上に、少なくとも一つの磁気記録層を有し、前記転写用仮支持体と接する面とは反対側の該磁気記録層の面に絵柄形成剤により絵柄を形成した転写材を形成し、
その後、該転写材が転写材中における磁気記録層の中心部から磁気記録層の転写用仮支持体側界面の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録層の転写用仮支持体側界面の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有するように該絵柄形成剤を拡散させた後、
前記転写材を転写用仮支持体から基材層上に転写することにより積層体を形成することによる、
基材層及び磁気記録層を含む複数の層により形成された積層体中に、絵柄形成剤により形成された絵柄を有し、前記絵柄は前記積層体の前記基材層と反対方向の表面から識別可能であり、前記絵柄形成剤は、前記積層体の膜厚方向に分布し、前記積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して分布していることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【0012】
さらにまた本発明は、転写用仮支持体上に、少なくとも一つの磁気記録層を有する転写材を形成し、
次いで、絵柄形成剤により絵柄を形成した基材層の該絵柄上に、前記転写材を転写することにより積層体を形成し、
その後、該積層体が積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有するように該絵柄形成剤を拡散させることによる、
基材層及び磁気記録層を含む複数の層により形成された積層体中に、絵柄形成剤により形成された絵柄を有し、前記絵柄は前記積層体の前記基材層と反対方向の表面から識別可能であり、前記絵柄形成剤は、前記積層体の膜厚方向に分布し、前記積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して分布していることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法を提供する。
さらに本発明は転写用仮支持体上に、磁気記録層と、該磁気記録層上に絵柄形成剤で形成された絵柄を有する転写材、が形成されたことを特徴とする転写用積層体を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の磁気記録媒体は、絵柄を形成する絵柄形成剤が、前記積層体の膜厚方向に分布しており、前記積層体中における磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して分布している。絵柄を有する通常の磁気記録媒体のように、絵柄形成剤が磁気記録層上の特定の領域に高濃度に存在したり、局在したりすることがないので絵柄形成部分に段差が生じることが無く、段差に起因した再生出力の変動が生じない。
本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、磁気記録層を有する転写材の磁気記録層上、または基材上のどちらかもしくは両方に形成された絵柄の絵柄形成剤は、転写材を基材上に転写して積層体を形成する工程の、前または後に、転写材中を拡散し、前記積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して分布しており、積層体表面から識別可能となる。このため絵柄形成部分に対応する段差が生じることはなく、該段差に起因する再生出力の変動も発生しない。
【0014】
本発明の転写用積層体は転写用仮支持体上に、磁気記録層と、磁気記録層上に形成された絵柄を有するため、基材に転写後は絵柄が磁気記録層と基材の間に位置することになる。そして転写前または転写後における絵柄形成剤の拡散により、絵柄形成剤は前記積層体の膜厚方向に分布しており、前記積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して分布している。このため絵柄形成部分に対応する段差が生じることはなく、該段差に起因する再生出力の変動も発生しない。
さらに本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、絵柄が形成される領域は転写用積層体の転写材中でかつ磁気記録層上、または基材上に設定することができるため、転写用積層体の製造工程の最終段階や、あるいは転写用積層体とは別個に形成することが可能である。このため予め転写用積層体の絵柄以外の部分を作製しておき、絵柄が確定してから最終段階で絵柄を形成することができ、絵柄形成からカード作製までの工程を短くできるため絵柄の変更にも迅速に対応することができる。
さらにまた本発明の磁気記録媒体の製造方法において形成される絵柄、または蛍光絵柄は、従来、磁気記録媒体上に絵柄を形成するときに用いられていた着色剤または蛍光剤を基本的にそのまま使用することができる。このため少なくとも従来の製造方法におけると同様の絵柄安定性、耐光性、耐候性を得ることが出来る。さらに本願発明の製造方法で製造された磁気記録媒体の絵柄は、転写材を構成する層の内部に拡散して保持されているため、外部からの光線や、機械的接触に直接晒されることが無く、良好な絵柄安定性、耐久性、耐候性、耐光性を有すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の磁気記録媒体は、基材層及び磁気記録層を含む複数の層により形成された積層体中に、絵柄形成剤により形成された絵柄を有し、前記絵柄は前記積層体の前記基材層と反対方向の表面から識別可能である。
本発明の基材層は、シート状あるいは板状を呈しており、素材としては例えば、塩化ビニル、ナイロン、セルロースジアセテート、ポリエチレンテレフタレート等のプラスティック類、合成紙、クロス紙等の紙類、及びこれらの材料の複合体等があげられるが、これら以外であっても積層体を形成するのに必要な強度、剛性を有する材料であれば特に制限無く使用することができる。
本発明で用いる絵柄形成剤としては、磁気記録媒体上に機能性付与、意匠性付与等のために形成される種々の絵柄の形成用材料として、通常使用される種々の材料を用いることが出来る。それらは着色剤、夜間塗料用の材料のように目視によって識別可能な絵柄を形成するものでもよいし、蛍光剤、赤外線インク用の材料等のように光源や検出器の使用によって識別可能となる絵柄を形成するものであってもよい。あるいは特定の検出装置を用いてはじめて検出可能な元素、化合物等を用いて識別可能となる絵柄を形成するものであってもよい。
本発明の磁気記録媒体において絵柄形成剤に蛍光剤を用いたときは、蛍光剤が磁気記録媒体の厚さ方向に分布し、磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して分布している。このため蛍光剤が例えば磁気カードの表層部分に局在することがなく、前述のように絵柄を設けた場所に段差が生じることがない。したがって特に表層部分を覆う隠蔽層を設けなくても、紫外線照射なしで太陽光や室内光によって蛍光絵柄の存在自体、およびその対応した箇所や内容が識別可能となることがない。したがって偽造防止情報や識別情報をその印刷箇所と印刷内容から容易に知られることを防ぐことができる。
【0016】
本発明において絵柄形成剤は積層体の膜厚方向に分布しており、前記絵柄形成剤は、前記積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して分布している。本発明において「磁気記録読み取り側」とは想定している磁気記録媒体に対して記録再生のための磁気ヘッドが接触する側のことである。
この様な分布は、従来磁気記録媒体中に形成されてきた絵柄のように、絵柄形成剤を磁気記録層上、積層体の表層近くに高い濃度をもって分布させたり、積層体の表層近くに局在させたりして絵柄を形成する方法では達成され得ないものである。本発明のこのような絵柄形成剤の分布は例えば絵柄を形成した後、絵柄形成剤を熱拡散によって隣接する層へと順次拡散することによって形成することもできるし、絵柄を積層形成するときの絵柄形成用塗料の溶剤によって、隣接する層を浸食して形成することもできる。しかし制御のし易さ、絵柄形成剤や積層体を形成する樹脂の選定の自由度の点で熱拡散を用いる方法が好ましい。熱拡散は積層体を構成する層によって拡散の速度に差異はあるものの、基本的に等方的であって、最初に絵柄が形成された領域から積層体中の濃度の低い方向へと漸次絵柄形成剤が拡散する。そのため積層体中の絵柄形成剤の分布の状況は絵柄を形成する積層体中の位置によって概略決定される。
磁気記録媒体中の磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して絵柄形成剤を分布させるには、磁気記録層を挟んで磁気読み取り側の方向とは反対側に位置する層間あるいは磁気記録層上に絵柄を形成すればよい。絵柄形成剤は等方的に拡散し磁気記録読み取り側に拡散した絵柄形成剤が識別可能な絵柄を形成する。絵柄形成剤は膜厚方向とは直角方向にも拡散するが、膜厚が薄いため、絵柄を識別する時点において、絵柄が不鮮明になるほどの拡散が起こることはない。
【0017】
例えば本願発明の製造方法においては、転写用仮支持体上に磁気記録層を含む複数の層を形成し、該転写用仮支持体の磁気記録層を挟んで転写用仮支持体とは反対側に位置する層間、又は該転写用仮支持体と接する面とは反対の面の磁気記録層上に絵柄形成剤により絵柄を形成し、前記転写材を転写用仮支持体から基材上に転写して積層体が形成される、その後、該積層体が積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有するように該絵柄形成剤を拡散させることにより、絵柄形成剤は転写材を通り、転写後に該転写材の表面側となる方向へと拡散して、絵柄形成剤は転写材の膜厚方向に分布し、前記絵柄が磁気記録読み取り側の方向から識別可能な状態となる。前記絵柄形成剤はカード表面には局在せず、絵柄の形成によって磁気ヘッドと磁気記録層との間の距離であるスペーシングの変動を生じないため、磁気再生出力の変動が発生することがない。
【0018】
本願発明の前記製造方法においては、転写材が複数の磁気記録層を有していても良いし、さらに複数の磁気記録層の層間に絵柄が形成されていてもよい。
さらに本願発明の製造方法においては前記磁気記録層を挟んで転写用仮支持体とは反対側の位置に、磁気記録層以外の1または2以上の層を有していても良く、前記磁気記録層と前記時期記録層以外の層、又は前記磁気記録層以外の2以上の層の層間に絵柄が形成されていてもよい。
基材上に形成される積層体の磁気記録層、絵柄形成層以外の構成成分としては、磁気記録層の磁気読み取り側に磁気記録層の色相を隠蔽する着色層を形成することができる。また転写工程を経て積層体を形成するときに基材との接着力を良好にするために、基材と接する位置に感熱接着剤層を形成することができる。さらに絵柄形成剤が磁気記録媒体の表層に露出して接触により他の物品に付着することを防止するために、磁気記録層の磁気読み取り側最表層に絵柄形成剤拡散防止層を用いることができる。
特に基材上に磁気記録層と着色層とをこの順に有し、絵柄形成剤が記録読み取り側の方向に向かって、漸次減少する濃度勾配を有する領域を有し磁気記録層及び着色層に分布している磁気記録媒体は、絵柄が着色層の背景色とともに識別されるため極めて識別性、意匠性が高い。
【0019】
また本発明の磁気記録媒体は絵柄形成剤を転写材の転写前または転写後に磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって拡散させて識別可能な絵柄を形成するため、絵柄形成剤が拡散して識別可能に保持される拡散領域が必要である。該領域は基本的には積層体中で絵柄の磁気記録読み取り側に向かって積層された層のうち、絵柄形成剤が拡散可能な部分が該当するため、磁気記録媒体の厚さ方向における絵柄の形成箇所に依存する。該拡散領域は着色層であってもよいし、着色層、磁気記録層、及び感熱接着剤層であってもよいし、あるいは絵柄の識別性が低下する傾向にあるが磁気記録層のみでも可能である。
該領域の膜厚は薄すぎると保持出来る絵柄形成剤が不十分なため絵柄形成が十分に行われず、また厚さ方向への拡散を抑えられた絵柄形成剤が横方向に拡散して図柄が不鮮明になりやすい。これに対して該領域の膜厚が厚すぎると、表面から識別可能となる位置まで磁気記録読み取り方向に拡散する途中で、やはり拡散領域が広がり過ぎて絵柄が不鮮明となる可能性がある。このために拡散領域に対応する絵柄の磁気記録読み取り方向に位置した積層体の膜厚の総計は、後述する絵柄形成剤拡散防止層の膜厚を除いて2〜50μm程度が好ましく、3〜20μm程度がさらに好ましい。
【0020】
本願発明においては絵柄は、基材上に積層体が形成されたときに磁気記録層と基材との間となる位置であれば任意の位置に形成することができる。したがって、転写工程を経て積層体を形成するときは、絵柄は転写用仮支持体上の転写材中で磁気記録層を挟んで転写用仮支持体とは反対側の任意の位置に積層することができる。
しかしデザイン上の変更が頻繁に行われる絵柄形成層を形成する工程は、積層体を作製する工程のできるだけ最終部分にあることが好ましく、例えば磁気カードの磁気ストライプの上に絵柄を形成するときは、例えば転写用仮支持体上の転写材の最上層に該当する、感熱接着剤層が形成された後の磁気ストライプ形成用転写用積層体の感熱接着剤層上に形成されるか、または磁気ストライプが転写される基材側に絵柄形成層が形成されることが好ましい。このように、例えば予め絵柄を印刷しない無地の磁気ストライプ用の転写用積層体を作成しておくことで、磁気ストライプの絵柄を含む磁気カードのデザインが決定次第、転写用積層体の最上層またはカード用基材に絵柄印刷を行い、転写工程、熱圧プレス工程を経てカード製造を行うことが出来るため、受注から短納期で絵柄付き磁気ストライプの形成された磁気カードの製造が可能となる。
こうして形成された絵柄を転写材内に拡散させる方法としては、転写材を転写前に転写用積層体の状態で加熱する他、基材に転写して磁気記録媒体を形成してから加熱することもできる。特に磁気記録媒体が磁気カードの時は、磁気カードの作製工程において、工程最終段階に複数のカード用基材、磁気ストライプ等を熱圧プレスで積層し一体化する工程があるため、この熱圧プレス工程で絵柄形成剤の拡散を行うことができる。絵柄形成剤の拡散を行う時の条件は、絵柄形成剤の拡散容易性、積層体に使用されている樹脂の種類やTg、を考慮して温度、加熱時間、使用する絵柄形成剤の量等を適宜調整することができる。
【0021】
以下に、本発明の磁気記録媒体の製造方法の例として絵柄の形成された磁気ストライプを有する磁気カードの製造方法について詳細に説明する。
本発明の磁気記録媒体製造方法の実施態様の一つとして、絵柄を最初に磁気ストライプ形成用の転写材側に形成する方法について、図2と、工程図である図9を参照しつつ説明を行う。図2は本発明の製造方法に用いる転写用積層体の断面図である。絵柄を形成可能な転写材中の位置としては磁気記録層に隣接した位置も可能であるが、図9においては絵柄形成からカード作製までの工定数の少なさの点で、生産効率上最も有利な感熱接着剤層の上に絵柄を設ける場合について表示した。本方法においては図2に示すように、転写用仮支持体9に絵柄形成剤拡散防止層1を設けた後、さらに着色層3を形成し、その上に磁気記録層4、さらにその上に感熱接着剤層5を積層して塗布形成し、無地の磁気ストライプ用の転写用積層体を作成しておく。磁気ストライプ上に形成する絵柄が決定次第、前記転写用積層体の感熱接着剤層上に絵柄印刷を施して絵柄を形成し、絵柄形成機能を有する転写用積層体を作製する。
絵柄形成剤は転写用積層体の加熱(図9−(1))、によって、転写後の磁気記録読み取り方向に該当する転写用積層体の転写用仮支持体方向に拡散する。このため転写用仮支持体から剥離され、基材であるオーバーシート上に転写されたときの、転写材の基材と反対側の表面、すなわち磁気記録読み取り側の表面から識別可能な状態となる(図3参照)。
あるいは絵柄形成剤は、磁気ストライプ用の転写材をオーバーシートに転写させた後センターコアと、センターコアの反対側のオーバーシートとともに合体してカード用基材を一体化させる熱プレス工程(図9−(2))により、磁気ストライプ用転写材がオーバーシートに埋め込まれると同時に、絵柄形成剤が転写後の転写材の表面方向(磁気記録読み取り側方向)に拡散して、形成された絵柄が磁気ストライプ表面より識別可能となる。このように絵柄形成剤の拡散は磁気カード作製工程において必須の熱プレス工程だけでおこなってもよいが、このとき、予め転写用積層体の状態におけるエージング工程(図9−(1))を併せて行うと、絵柄形成剤をより確実に拡散できるため好ましい。
【0022】
また、本発明の絵柄形成方法のもう一つの実施態様として、絵柄を基材側、すなわちオーバーシートの磁気ストライプが転写される部分に形成する方法について図4と工程図10に示す。本方法は、絵柄のない磁気ストライプ用の転写用積層体を作成しておく部分までは前記工程図9で示す方法と同じであるが、磁気ストライプの絵柄が決定次第、絵柄をオーバーシートの磁気ストライプが転写される部分に形成し、その上に磁気ストライプ用転写材を転写する。その後オーバーシートをセンターコアと合体し、センターコアの反対側のオーバーシートとともにカード用基材を一体化させる熱プレス工程を行って、磁気ストライプ形成用の転写材をカード基材に埋め込む。このときに形成した絵柄の絵柄形成剤が磁気記録層を通ってオーバーシートに転写された転写材の表面方向(磁気記録読み取り側に拡散することにより、該絵柄が磁気ストライプ表面より識別可能となる。
このようにして製造される磁気カードは、磁気ストライプ部分の断面図(図5)に示すように、センターコア7上に積層されたオーバーシート6上から、保護層を兼ねる絵柄形成剤拡散防止層1をカード表面に露出して磁気ストライプ形成用の転写材である積層体が埋め込められており、磁気ストライプ形成用の転写材の着色層3、磁気記録層4、感熱接着剤層5の厚み方向に亘って絵柄形成剤が拡散した絵柄形成剤拡散領域2を有している。そこでは、感熱接着剤層5に接してオーバーシート6上に形成された絵柄10の絵柄形成剤が、埋め込まれた積層体の磁気記録読み取り側の方向に向かって拡散し、漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して表面方向に分布する。このため絵柄形成剤拡散防止層1側から絵柄が識別可能となっている。
絵柄を予め、カード基材であるオーバーシート側に直接形成する上記方法は、転写用積層体側に形成するもう一方の方法に比べて、磁気カード上の絵柄の印刷位置精度を高く設定できる。このため絵柄とカード用基材との正確な位置合わせが必要な複雑な絵柄を量産する場合に好適に使用することができる。
【0023】
以上の様な手順で磁気ストライプ部分に絵柄を有する磁気カードを形成することが出来るが、本発明の磁気記録媒体の製造方法で用いた絵柄形成方法は、磁気カード上の磁気ストライプ以外の場所にも、また磁気カード以外の磁気記録媒体にも、さらに磁気記録層を有さない積層体へも適用することができる。このような場合の絵柄の形成方法には図9、図10の工程図において磁気記録層を省略したり、他の層を付け加えたり、磁気記録層を他の機能層に置き換えることによって対応することができる。
さらに既述のように磁気ストライプ形成用の転写用積層体を用いて磁気カードを形成した場合は、磁気カードの基材の一部が磁気ストライプによって被覆されるだけであるが、カード用の基材全面を被覆するような転写用積層体、及び転写工程を用いてカード全面にわたる絵柄を形成してもよい。
【0024】
以下に本発明の磁気記録媒体の製造方法に用いる転写用積層体の各構成について、製造工程の順を追ってさらに詳細に説明を行う。
本発明の転写用積層体の態様の一つである磁気ストライプ形成用の転写用積層体は、図2の断面構成図に示すように、転写用基材9上に、必要に応じて形成する絵柄形成剤拡散防止層1、さらに必要に応じて形成する着色層3、必須の構成要素としての磁気記録層4、必要に応じて形成する感熱接着剤層5を順次積層することにより製造することができる。そして磁気記録層上に、また感熱接着剤層を設けるときは感熱接着剤層上に絵柄印刷10を施した絵柄を形成することが好ましい。
【0025】
本発明における磁気記録媒体の製造方法に使用する転写用積層体において、転写用仮支持体として使用できるフィルムとしては公知慣用のフィルムがいずれも使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート等のセルロース誘導体、ポリアミド等のその他プラスチックを挙げることができる。中でも抗張力や耐熱性を兼ね備えたポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、転写基材フィルムの厚さには特に制限はないが、通常3〜100μm、好ましくは5〜50μmである。
【0026】
本発明における磁気記録媒体の製造方法に使用する転写用積層体においては絵柄形成剤拡散防止層を用いることが出来る。絵柄形成剤拡散防止層は加熱により感熱接着剤層、磁気記録層、着色層等を通って磁気カード形成後の磁気記録読み取り方向に拡散した絵柄の絵柄形成剤が、最表層を超えて更に外部に拡散することを防止する。また磁気ストライプ形成用の転写材の転写工程において、絵柄形成剤が熱圧プレス用の金属板に付着するのを防止する。さらに絵柄形成剤拡散防止層は、転写材全体の保護層としての機能を果たす。絵柄形成剤拡散防止層としては、絵柄形成剤拡散防止層の直下まで拡散してきた絵柄形成剤の絵柄を識別できるように、あるいは絵柄が蛍光剤で形成されている場合には目視時に照射される紫外線を透過できるように、絵柄の検出に対応した光、電子線等に対して実質的に透明であることが好ましい。
【0027】
絵柄形成剤拡散防止層を構成する結着剤樹脂としては、絵柄形成剤の種類によっても若干異なるが、例えば、セルロース系樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体、あるいは、さらにビニルアルコール、無水マレイン酸あるいはアクリル酸などを加えた共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等から、ガラス転移点が、絵柄形成剤を拡散させるときの転写用積層体加熱温度や熱圧プレス温度より高いものが好適に使用される。さらに絵柄形成剤の拡散路は分子間隙であると考えられるのでポリイソシアネート化合物などの硬化剤を添加して、樹脂バインダー分子間を架橋することが、拡散を阻止する上では好ましく、層中に空孔を生じやすい各種フィラーを含まないものが好ましい。絵柄形成剤拡散防止層はまた保護層として機能するので耐久性を向上させる点においても硬化剤の使用が好ましい。
特に絵柄形成剤として染料を用いるときは、染料との相溶性および染着性の低い親水性の樹脂が好ましく、昇華性染料の拡散防止層に用いられる樹脂が好適に使用できる。さらに通常の熱可塑性樹脂との接着性、耐熱性、耐水性を考慮するとセルロース系樹脂が好ましく、その中でもニトロセルロース、酢酸セルロースがさらに好ましい。
【0028】
さらに、絵柄形成剤拡散防止層中には、必要に応じて、皮膜改質剤として大豆レシチン、マイクロシリカ、あるいはワックス等を添加することができる。
絵柄形成剤拡散防止層用塗料に使用する溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類を挙げることができ、これらの溶剤は、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0029】
絵柄形成剤拡散防止層は、上記のように調整した拡散防止層用塗料をリバース方式、グラビア方式、ダイコート方式等の公知慣用の方式で転写用仮支持体フィルム上に塗布することにより得られる。
絵柄形成剤拡散防止層の乾燥塗膜厚は、記録再生特性からいえば薄いほど良いが、薄すぎると絵柄形成剤が拡散する孔が生じる場合もあり、十分に絵柄形成剤の拡散を防止出来なくなる。強度、耐久性等とのバランスを考慮すると0.1〜5μmが好ましく、0.3〜2μmがさらに好ましい。
【0030】
本発明の磁気記録媒体の製造方法に使用する転写用積層体は着色層(隠蔽層)を有していても良い。着色層は結着剤樹脂と着色剤を成分として含有しており、隣接する磁気記録層の色相を隠蔽し、かつ着色層中を拡散した絵柄形成剤が着色層中に保持されることにより着色層の色相を背景として識別されるので、絵柄の識別を容易にして意匠性を高めることができる。
着色剤に用いる顔料は、無機顔料としては、アルミナ、酸化チタン、酸化クロム、酸化
鉄、酸化亜鉛、硫酸バリウムなど、有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、アントラキノン系、チオインジゴ系、インダンスレン系など多々あるが特に限定されるものではない。また、上記顔料に代え、あるいは併用してフタロシアニン染料、アゾ染料、ニトロ染料、キノリン染料、メチン染料、アジン染料、ファタレイン染料等の染料を用いることもできる。
また、磁気記録層の色相を効果的に隠蔽可能な顔料として、リン片状金属粉も使用でき、金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等を使用することができる。リン片状金属粉は例えば板状形状にボールミル等で形成されたり、あるいは蒸着薄膜を剥離して形成されるが、これらの形状としては、面方向の大きさは、5〜25μmが好ましく、10〜15μmがさらに好ましい。厚みは0.1〜1μm程度である。
【0031】
着色層用塗料に使用する結着剤樹脂としては、公知慣用の結着剤樹脂が使用でき、また、イソシアネート化合物を用いて熱硬化することもできる。絵柄形成剤の拡散を容易にするためには。例えば、絵柄形成剤拡散防止層のところで述べた結着剤樹脂に加え、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリスチレン樹脂、セラック、アルキッド樹脂等のうち着色層に用いる結着剤樹脂のTgが、転写材に絵柄形成剤の拡散のために加えられる温度より低いものを好適に使用することができる。
このように絵柄の絵柄形成剤は、着色層を通って磁気記録読み取り方向すなわち転写後の転写材の表面方向に拡散させることができる。拡散の速度、難易度は着色層に用いている樹脂の種類によって異なるが、転写材に加えられる温度と着色層に用いる樹脂を適宜選択して調整することができる。
着色層用塗料に使用する溶剤としては、公知慣用の溶剤が使用でき、例えば、既に保護層のところで述べた溶剤等が使用できる。
着色層の形成は、着色剤を結着剤樹脂、および結着剤樹脂を溶解する溶剤中に単独、もしくは2種類以上混合し、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、サンドミル、ディスパー等の公知慣用の方法で分散させて、着色層用塗料を作成し、これをリバース方式、グラビア塗布方式、ダイコート方式等の公知慣用の方式で塗布、乾燥することにより行うことが出来る。
【0032】
着色層の膜厚は、磁気記録層の茶色または黒色を隠蔽するには厚いことが好ましい。しかしながら、着色層の膜厚を大きくしすぎると、スペーシングロスが大きくなり、再生出力特性が低下し、情報読み取り時のエラー発生の可能性が増大する。そのため、着色層の膜厚は、2〜5μm、特に3〜4μmであることが好ましい。
【0033】
本発明の磁気記録媒体の製造方法に用いる転写用積層体の磁気記録層は、例えば磁性粉末、結着剤樹脂および結着剤樹脂を溶解する溶剤を含有した磁気記録層用塗料を転写用仮支持体上に直接、または絵柄形成剤拡散防止層を介してその上に、またはさらに着色層を介してその上に塗設して形成することができる。
該磁気記録層中に含有される磁性粉末としては、γ−酸化鉄、マグネタイト、コバルト
被着酸化鉄、2酸化クロム、鉄系メタル磁性粉、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の公知の磁性粉末を用いることができる。保磁力が20〜320kA/mの範囲のものが好ましい。
磁気記録層に用いる結着剤樹脂としては、公知慣用の結着剤樹脂が使用できる。例えば一般的に、着色層のところで述べた結着剤樹脂等を使用することができる。また、イソシアネート化合物を用いて熱硬化することもできる。また、磁気記録層用塗料に用いる溶剤としては、例えば一般的に保護層のところで述べた溶剤等を使用することができる。
絵柄形成層の絵柄形成剤は磁気記録層を通って磁気記録読み取り方向、すなわち転写後の転写材表面へと拡散させることができる。拡散の速度、難易度は樹脂の種類によって異なるが、転写材に加えられる温度と磁気記録層に用いる樹脂を適宜選択して調整することができる。絵柄形成剤の拡散を容易にするためには磁気記録層に用いる結着剤樹脂のTgが転写材に加えられる温度より低いことが好ましい。
【0034】
磁性塗料には、必要に応じて界面活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル等の助剤類、さらにはカーボンブラックその他のフィラー類を添加することもできる。
磁気記録層用塗料は、例えば上記磁性粉末、結着剤樹脂、溶剤を公知慣用の方法により、混練分散する事によって得られるが、混練分散機としては、例えば二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ヘンシェルミキサー、コボルミル、サンドミル、ディスパー、ホモジナイザー、ニーダー、等が使用できる。
磁気記録層用塗料の塗布方法においては、特に制限はなく、公知慣用の塗布方式を使用して良く、磁気塗料を所定量塗布後、磁性粉末の磁化容易方向が磁気記録層の塗布長手方向になるように配向処理を行って乾燥を行う。塗布方式としては、例えばグラビア方式、リバース方式、トランスファロールコーター方式、キスコーター方式、ダイコーター方式等が使用できる。
また、上記塗布方式により塗布後は、塗膜が乾燥しないうちに磁場配向処理を行うことが記録再生特性の点で好ましく。磁場配向方法は、公知の方式、例えば反発対向永久磁石、ソレノイド型電磁石等を用いることができる。磁場強度としては1000〜6000Gの範囲が好ましい。
磁気記録層の乾燥膜厚は、好ましくは2〜50μmの範囲であり、さらに好ましくは5〜20μmの範囲である。
【0035】
本発明の磁気記録媒体の製造方法に用いる転写用積層体には、転写用積層体とカード用基材を良好に接着させる目的で感熱接着剤層を用いることができる。感熱接着剤層は一般的には、感熱接着性を示す樹脂を含んでおり、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体、あるいは、さらにビニルアルコール、無水マレイン酸あるいはアクリル酸などを加えた共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。
また、感熱接着剤層に用いる溶剤としては、例えば保護層のところで述べた溶剤を使用することができる。感熱接着剤層は感熱接着性を示す樹脂を溶剤に溶解させ、混合攪拌して感熱接着剤塗料を調整し、この接着剤塗料を磁気記録層上にリバース方式、グラビア方式、ダイコート方式などの公知の方式により塗布、乾燥することによって得られる。
感熱接着剤層の膜厚は0.5〜15μmが好ましく、特に0.5〜5μmが好ましい。
絵柄形成剤は感熱接着剤層を通って磁気記録読み取り方向すなわち転写材の表面方向に拡散させることができる。拡散の速度、難易度は感熱接着剤層に用いている樹脂の種類によって異なるが、転写材に加えられる温度と磁気記録層に用いる樹脂を適宜選択して調整することができる。絵柄形成剤の拡散を容易にするためには感熱接着剤層に用いる結着剤樹脂のTgが転写材に加えられる温度より低いことが好ましい。
【0036】
本発明の磁気記録媒体の製造方法に用いる転写用積層体における絵柄の形成は、絵柄形成剤として着色剤を用いるときは、以下の絵柄形成用インクを用いて、その印刷によって行うことができる。このとき絵柄形成用インクは、結着剤樹脂、着色剤、及び溶剤を含んでいる。絵柄形成用インクの着色剤としては、公知の染料、顔料の中から拡散の容易なものを選択して用いることができるが、熱による拡散のし易さから染料が好ましく、従来各種の着色分野で使用されている公知の染料を用いることができる。モノアゾ系、ジスアゾ系、金属錯塩系、アントラキノン系、フタロシアニン系、トリアリルメタン系、ペリレン系等の油溶性染料の使用が好ましい。公知の昇華性染料も使用可能であるが、本発明の製造方法における絵柄形成剤の拡散は磁気記録媒体を製造するときの転写工程中で十分な温度、時間をかけて行うことができるため、通常の昇華性染料に要求される短時間での拡散のための良好な昇華性は必ずしも必要ない。むしろ着色剤の安定性を重視して昇華性染料以外の染料を用いることが好ましい。
絵柄形成用インクに使用する結着剤樹脂としては、公知慣用の結着剤樹脂が使用できる。例えば、絵柄形成剤拡散防止層、着色層、磁気記録層、及び感熱接着剤層等で使用する樹脂が挙げられるが、カード用オーバーシート基材への付着性が良好で、感熱接着剤層上に絵柄を形成しても、感熱接着剤層のオーバーシートへの接着性を阻害しない結着剤樹脂が好ましく、オーバーシートへの良好な接着性を有する感熱接着剤層に用いられる結着剤樹脂が好適に使用できる。
絵柄形成用インクに使用する溶剤としては、公知慣用の溶剤が使用でき、例えば、既に絵柄形成剤拡散防止層、着色層、磁気記録層、感熱接着剤層のところで述べた溶剤等が使用できる。
【0037】
絵柄形成用インクは、絵柄形成剤を結着剤樹脂、および結着剤樹脂を溶解する溶剤中に単独、もしくは2種類以上混合して溶解させ、あるいは二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、サンドミル、ディスパー等の公知慣用の分散装置を用いる方法で分散させて、絵柄形成用インクを作製する。絵柄の印刷には、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット等の公知の印刷方法を用いることが出来るが、特に印刷品質、生産性の点から、グラビア印刷が適している。
絵柄印刷の膜厚は、特に制限はないが膜厚が厚すぎると、一般的に磁気ストライプ形成用転写材はリール状に巻き上げているため、巻き上げ時に非印刷領域と印刷領域との膜厚差による段差が大きくなって転写材を変形させ、磁気ストライプ形成用の転写材と基材との接着性を悪化させる可能性がある。そのため、その膜厚は0.5〜5μmが好ましく、特に0.5〜2.0μmが好ましい。
こうして絵柄形成用インクを使用して例えば磁気ストライプ用転写材の感熱接着剤面、もしくはカード用基材側の磁気ストライプが転写される部分に絵柄を形成する。
【0038】
こうして形成された絵柄を転写材内に拡散させる方法としては、転写用仮支持体上に転写材が存在する状態で、転写工程前に40〜80℃の高温環境下に数時間〜数日間放置し、絵柄形成剤を予め転写用仮支持体側に拡散させて、転写材の転写後に転写材の基材と反対の表面側から識別可能な状態にすることができる。あるいは熱圧プレス工程を用いて磁気カードを作製するときは、転写材をカード基材のオーバーシートに転写した後、センターコアと反対面のオーバーシートと共に熱圧プレス用金属板に挟み込み100〜160℃の温度をかけ数十分から数時間の熱プレス加工を行い、絵柄形成剤を転写後の転写材表面側に拡散させて、作製された磁気カード表面より識別可能な状態にすることができる。
絵柄形成剤が蛍光剤のときは、本発明の磁気記録媒体の製造方法は、以下の蛍光絵柄形成用インクの印刷によって行うことができる。本発明の蛍光絵柄形成用インクは、結着剤樹脂、蛍光剤と溶剤を含んでいる。
蛍光絵柄形成用インクの蛍光剤としては公知の有機系の蛍光物質を広く用いることができる。具体的な有機蛍光物質としては、ベンゾオキサゾールチオフィン系、ジアミノスチルベン系、イミダゾール系、クマリン系、ナフタルイミド系、希土類錯体系等の蛍光染料が拡散も良好で好ましい。また、市販されている蛍光物質としては、Chiba Special Chemicals社製の商品名UVITEX OB、日本化薬社製の商品名Kayalight OS、BASF社製の商品名Thermoplastシリーズ、商品名Fluorolシリーズ、 商品名Lumogenシリーズ、記録素材総合研究所社製 商品名ルミカラー等を用いることができる。拡散の容易さの点で蛍光性染料の使用が好ましい。
上記蛍光剤を用いた蛍光絵柄形成用インクの製造は、有色の着色剤のかわりに蛍光剤を用いる他は、既述の絵柄形成用インクの製造方法と同様にして製造することができる。蛍光剤によって形成された
絵柄形成剤として夜行塗料用や、赤外線塗料用その他の機能性塗料用の染料、顔料を用いるときは上述の着色剤、蛍光剤をこれら機能性塗料用の染料、顔料に置き換えて機能性インクを作製し磁気記録媒体上に絵柄を形成することが出来る。
これらの絵柄形成剤は例えば着色剤と蛍光剤を同時に用いても良いし、さらに他の機能性インクを組み合わせて用いても良い。
【実施例】
【0039】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例
に限定されるものではない、尚、以下「部」は質量部を表すものとする。
絵柄形成剤用の着色剤として有色染料を用いた実施例と、蛍光染料を用いた実施例を以下に続けて示す。
実施例、比較例には以下に示す転写用仮支持体フィルムおよび各塗料を使用する。
A.転写用仮支持体フィルム 厚さ24μmのポリエチレンテレフタレートフィルム
B.絵柄形成剤拡散防止層用塗料(保護層機能を兼ねる)の作製
セルロースアセテート樹脂 8部
(ダイセル化学社製『L−20』Tg:187℃)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂 2部
(イーストマンケミカル社製『CAP−504−0.2』Tg:159℃)
アセトン 25部
酢酸エチル 25部
トルエン 20部
シクロヘキサノン 20部
ポリイソシアネート 4部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)
上記の材料の内、ポリイソシアネートを除く全てを、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させた後に上記のポリイソシアネートを添加し、更にディスパーにて攪拌均一化を行い、絵柄形成剤拡散防止層用塗料を作製した。
【0040】
C.着色層用塗料の作製
リン片状金属粉:アルミニウム粉末 20部
(昭和アルミパウダー社製『210EA』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 16部
(ユニオンカーバイド社製『VAGH』Tg:79℃)
ポリウレタン樹脂 4部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』Tg:−30℃)
メチルエチルケトン 75部
トルエン 75部
シクロヘキサノン 17部
ポリイソシアネート 5部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
上記の材料の内、ポリイソシアネートを除く全てを、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させた後に上記のポリイソシアネートを添加し、更にディスパーにて攪拌均一化を行い、着色層用塗料を作製した。
【0041】
D.磁気記録層用塗料の作製
バリウムフェライト磁性粉 100部
(戸田工業社製『MC−127』;保磁力 220kA/m)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 15部
(日本ゼオン社製『MR−110』Tg:70℃)
ポリウレタン樹脂 10部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
MEK 50部
トルエン 50部
シクロヘキサノン 25部
ポリイソシアネート 10部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
上記材料を用い、特開平09−059541に示す方法により磁気記録層用塗料を作製した。
【0042】
E.感熱接着剤層用塗料の作製
ポリウレタン樹脂 1部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 4部
(日信化学社製『ソルバインC5』Tg:68℃)
MEK 45部
トルエン 50部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、感熱接着剤塗料を作製した。
【0043】
F.絵柄形成用インク〔A〕の作製
クロム錯塩染料のアミン塩 4部
〈C.I.ソルベントブラック43〉
(保土谷化学工業社製『アイゼンスピロンブラックGMHスペシャル』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
MEK 43部
トルエン 43部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、絵柄用インク〔A〕を作製した。
【0044】
G.絵柄形成用インク〔B〕の作製
銅フタロシアニン染料〈C.I.ソルベントブルー70〉 4部
(BASF社製『Neozapon Blue 807』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
MEK 43部
トルエン 43部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、絵柄用インク〔B〕を作製した。
【0045】
H.絵柄形成用インク〔C〕の作製
カーボンブラック 10部
(CABOT CORPORATION社製 『REGAL99R』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(ユニオンカーバイド社製『VAGH』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
MEK 40部
トルエン 40部
ポリイソシアネート 4部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
カーボンブラック、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂と共に2本ロールにて前練肉を行い、その後に他の材料と共にサンドミルを通し、絵柄用インク〔C〕を作製した。
【0046】
I.絵柄形成用インク〔D〕の作製
銅フタロシアニン顔料 10部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(ユニオンカーバイド社製『VAGH』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
MEK 40部
トルエン 40部
ポリイソシアネート 4部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
銅フタロシアニン顔料、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂と共に2本ロールにて前練肉を行い、その後に他の材料と共にサンドミルを通し、絵柄用インク〔D〕を作製した。
【0047】
J.非絵柄部充填用塗料の作製
リン片状金属粉:アルミニウム粉末 20部
(昭和アルミパウダー社製『210EA』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 16部
(ユニオンカーバイド社製『VAGH』)
ポリウレタン樹脂 4部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
メチルエチルケトン 75部
トルエン 75部
シクロヘキサノン 17部
ポリイソシアネート 5部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
上記の材料の内、ポリイソシアネートを除く全てを、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させた後に上記のポリイソシアネートを添加し、更にディスパーにて攪拌均一化を行い、着色層用塗料を作製した。
【0048】
K.蛍光絵柄形成用インク〔A〕の作製
蛍光物質〔A〕 2部
(Ciba Specialty Chemicals社製『UVITEX OB』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
MEK 44部
トルエン 44部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、蛍光絵柄形成用インク〔A〕を作製した。
【0049】
L.蛍光絵柄形成用インク〔B〕の作製
蛍光物質〔B〕 2部
(BASF社製『Lumogen F Violet 570』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
MEK 44部
トルエン 44部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、蛍光絵柄形成用インク〔B〕を作製した。
【0050】
以下にまず絵柄形成剤として有色染料を用いた実施例と比較例を示す。
(実施例1)
転写用仮支持体として、厚さ24μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルムの片面上に上記の絵柄形成剤拡散防止層用塗料、着色層用塗料、磁気記録層用塗料、および感熱接着剤塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ絵柄形成剤拡散防止層、着色層、磁気記録層、および感熱接着剤層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、絵柄形成剤拡散防止層が1μm、着色層が4μm、磁気記録層が9μm、そして感熱接着剤層が1.5μmとなるようにした。
上記作成した転写材の感熱接着剤層面上に、図6に示すように絵柄用インク〔A〕をグラビア印刷方式で、絵柄部分の膜厚が1μmとなるよう絵柄印刷を行った。その後60℃の恒温室に24時間放置して、絵柄の着色剤を感熱接着剤層、磁気記録層、及び着色層を通って転写用積層体の転写用基材方向へ拡散させた。
上記で作製した磁気ストライプ形成用の転写用積層体を用いて転写材を所定の幅に裁断後、ヒートシールテスター(テスター産業社製)によりポリ塩化ビニル製のカード基体用オーバーシート(太平化学社製)に転写材を転写した。その後、転写用仮支持体を除去し、カード基体用センターコアと反対面のオーバーシートと共に平圧プレス機(試験用加硫プレス機(東洋精機製作所社製)を用いて、140℃、1.3MPa、20〜30分の条件下で熱プレス加工し、カード状に打ち抜いて磁気カード図8を作製した。
【0051】
(実施例2)
実施例1の絵柄印刷において、絵柄形成用インクを絵柄形成用インク〔B〕とした以外は、実施例1と同様にして磁気カードを作成した。
(実施例3)
実施例1の絵柄印刷において、絵柄印刷後の磁気ストライプ形成用転写用積層体を60℃の高温室に24時間放置を行わない以外は、実施例1と同様にして、磁気カードを作成した。
(実施例4)
実施例2の絵柄印刷において、絵柄印刷後の磁気ストライプ形成用転写用積層体を60℃の高温室に24時間放置を行わない以外は、実施例2と同様にして、磁気カードを作成した。
(実施例5)
実施例1において、磁気ストライプ用転写材は実施例1と同様に作成し、図7に示すように絵柄印刷をカード用基材であるオーバーシート側の磁気ストライプが転写される部分に、絵柄形成用インク〔A〕を用いてグラビア印刷方式により行った。その後、実施例1の磁気カード作成方法と同様にして磁気カードを作成した。
(実施例6)
実施例5の絵柄印刷において、絵柄形成用インクを絵柄形成用インク〔B〕とした以外は実施例5と同様にして磁気カードを作成した。
【0052】
(比較例1)
転写用仮支持体フィルムとして、厚さ24μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルムの片面上に上記の絵柄形成剤拡散防止層用(保護層用)塗料を乾燥後の膜厚が1μmになるようリバースコーターを使用して塗布、乾燥を行った。
その後に、絵柄形成用インク〔C〕を用い、グラビア印刷により乾燥後の絵柄の膜厚が1μmとなるように絵柄を形成した。その後に、上記絵柄のネガパターンとなるグラビア版を用いて、非絵柄部充填用塗料を乾燥後の膜厚が1μmになるように前記絵柄用インク〔C〕で形成した絵柄部以外の部分に合うように印刷を行った。
その後に、着色層用塗料、磁気記録層用塗料、および感熱接着剤塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ着色剤拡散防止層、着色層、磁気記録層、および感熱接着剤層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、着色層が4μm、磁気記録層が9μm、そして感熱接着剤層が1.5μmとなるようにした。
上記で作製した磁気ストライプ形成用の転写用積層体を所定の幅に裁断後、ヒートシールテスター(テスター産業社製)を用いてポリ塩化ビニル製のカード基体用オーバーシート(太平化学社製)に転写材を転写し、転写用仮支持体を除去した。その後オーバーシートを、カード基体用センターコアと反対面のオーバーシートと共に、平圧プレス機(試験用加硫プレス機、東洋精機製作所社製)を用いて、140℃、1.3MPa、20〜30分の条件下で熱プレス加工し、カード状に打ち抜いて磁気カードを作製した。
(比較例2)
比較例1において、絵柄形成インクを絵柄形成用インク〔D〕とする以外は比較例2と同様にして磁気カードを作成した。
(比較例3)
比較例1において非絵柄部を非絵柄部充填用塗料で充填することを行わず、それ以外は比較例1と同様にして磁気カードを作製した。
【0053】
以下の評価方法で実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例3の磁気カードの評価を行った。
(絵柄安定性)
60℃の恒温層中で1000時間保管した後、磁気カードの絵柄の発色と形状の変化を観察した。実施例1〜実施例6で作製した絵柄付き磁気カードについては、絵柄に変化はなく発色、形状とも維持されていた。

(意匠性)
磁気カードの磁気ストライプ部分について目視で評価した。
○・・・コントラスト、発色共に良好である。
△・・・コントラストが不鮮明、あるいは発色が不十分。
×・・・コントラストが不鮮明でかつ、発色が不十分。
【0054】
(磁気カードの出力変動)
磁気カード表面の凹凸が原因で発生する再生出力の変動を測定することによって、積層体としての磁気カードの段差、凹凸の大きさを評価した。
得られた磁気カードについてISO/IEC7811−6に準拠し、BARNES社製MAGTESTER2000を用いてその記録再生特性の測定を行い、下記式により出力変動を求めた。なお、この磁気カードサンプルを作成するために使用した磁気カード上の磁気ストライプに関しては、それぞれのスペーシングにあわせて磁気記録層の膜厚を調整し、出力平均値が基準カード出力に等しくなるよう調整を行った。
出力変動(%)=((出力最大値−出力最小値)/出力平均値)×100
○・・・5%未満。
△・・・5%以上、10%未満。
×・・・10%以上。
(絵柄決定からの納期と絵柄変更の容易性)
カード完成までの工程数で示した(図9、図10、図11参照)
○・・・絵柄形成からカード完成までの工程数4以下と少なく、カード納期や絵柄変更に迅速に対応が可能である。
×・・・絵柄形成からカード完成までの工程数が7以上と多くカード完成までに時間がかかるため、カード納期や絵柄変更に迅速に対応することができない。
△・・・絵柄形成からカード完成までの工程数が5〜6である。
結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の結果か明らかなように、本実施例1〜6は、従来の絵柄を有する磁気カードと同様の意匠性を確保でき、また、絵柄印刷に用いた染料が磁気記録層、着色層の空隙部分に拡散し着色しているため、絵柄部分と非絵柄部分で磁気ストライプ表面と磁気記録層の間の距離は実質的に変化せず、絵柄に起因する出力変動は全く発生しない。また、絵柄決定からカード完成までの工程数が少ないため、納期を大幅に短縮でき、絵柄変更にも迅速に対応することが出来る。
また、従来用いていた磁気ストライプ表面から磁気記録層までのスペーシングの変化を無くすため、非印刷部に対して印刷部のネガパターンで着色層(隠蔽層)と同じ色相のインキを印刷する方法は、理論的には、絵柄部の印刷、非絵柄部の充填印刷の位置と高さを合わせ込むことは可能であるが、実際には使用する転写基材の伸び等の影響を受け、印刷長手方向、幅方向における印刷合わせの振れの発生は避けられず、出力変動を無くすことは不可能である。またこの方法においてはネガパターンを形成するための工程が増える上、絵柄形成工程からカード完成までの工程数が多いので納期や絵柄変更に迅速に対応することができない。
【0057】
以下に絵柄形成剤として蛍光染料を使用した実施例を示す。
(実施例7)
転写用仮支持体フィルムとして、厚さ24μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルムの片面上に上記の蛍光剤拡散防止層用塗料、着色層用塗料、磁気記録層用塗料、および感熱接着剤塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ蛍光剤拡散防止層、着色層、磁気記録層、および感熱接着剤層を設けた。
各層の乾燥後の膜厚は、蛍光剤拡散防止層が1μm、着色層が4μm、磁気記録層が9μm、そして感熱接着剤層が1.5μmとなるようにした。
蛍光絵柄印刷として、上記作成した転写材の感熱接着剤層面上に蛍光絵柄形成用インク〔A〕をグラビア印刷方式により絵柄部分の膜厚が1μmとなるように図6に示すよう蛍光絵柄印刷を行い、60℃の恒温室に24時間放置した。この段階で転写用仮支持体を剥離して蛍光剤拡散防止層の表面側から紫外線照射装置で紫外線を照射したところ、蛍光絵柄が視認できた。上記エージングの工程によって、蛍光絵柄の蛍光剤が転写用基材側に十分拡散していることがわかる。
上記で作製した磁気ストライプ形成用の転写用積層体を所定の幅に裁断後、ヒートシールテスター(テスター産業社製)によりポリ塩化ビニル製のカード基体用オーバーシート(太平化学社製)に転写材を転写した後、転写用仮支持体フィルムを除去し、カード基体用センターコアと反対面のオーバーシートと共に、平圧プレス機(試験用加硫プレス機、東洋精機製作所社製)を用いて、温度130〜140℃、圧力20kg/cm、時間20〜30分加熱加圧しての条件下で熱圧プレス加工し、その後、カード状に打ち抜いて磁気カード図8を作製した。
【0058】
(実施例8)
実施例7の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄形成用インク〔A〕を蛍光絵柄形成用インク〔B〕とした以外は実施例7と同様にして磁気カードを作成した。
(実施例9)
実施例7の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄印刷後の磁気ストライプ形成用の転写用積層体を60℃の恒温室に24時間放置を行わない以外は、実施例7と同様にして、磁気カードを作成した。
(実施例10)
実施例8の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄印刷後の磁気ストライプ形成用の転写用積層体を60℃の恒温室に24時間放置を行わない以外は、実施例8と同様にして、磁気カードを作成した。
(実施例11)
実施例7において、磁気ストライプ形成用の転写用積層体は実施例7と同様に作成し、蛍光絵柄印刷をカード用基材「オーバーシート」の磁気ストライプが転写される部分に蛍光絵柄形成用インク〔A〕を用いてグラビア印刷方式により図7に示すように、蛍光絵柄印刷を行った。それ以降は、実施例7の磁気カード作成方法と同様にして磁気カードを作成した。
(実施例12)
実施例9の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄形成用インク〔A〕を蛍光絵柄形成用インク〔B〕とした以外は実施例7と同様にして磁気カードを作成した。
【0059】
(比較例4)
磁気記録層が予め形成された透明オーバーシート、センターコア、透明オーバーシート、磁気テープをこの順に積層させて1度の加熱で同時に熱融着して、予め積層されたカード基材を得る。
転写用仮支持体フィルムとして、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルムの片面上に上記の蛍光剤拡散防止層用塗料、着色層用塗料、および感熱接着剤塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ蛍光剤拡散防止層、着色層、および感熱接着剤層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、蛍光剤拡散防止層が1μm、着色層が4μm、そして感熱接着剤層が1μm以下となるように形成した。感熱接着剤層を形成した後に蛍光絵柄形成用インク〔A〕をグラビア印刷方式により乾燥後の厚さが1μm以下となるように蛍光絵柄を形成した。このようにして蛍光絵柄付きの隠蔽層転写シートが形成される。
上記で作製した磁気記録層付きカード基材に蛍光絵柄付き隠蔽層転写シートの蛍光絵柄域側を重ね、平圧プレス機(試験用加硫プレス機、東洋精機製作所社製)により温度120〜130℃、圧力16〜18kg/cm、時間15〜25分加熱加圧して隠蔽カード用隠蔽層転写シートを磁気ストライプ付きカード基材に接着させた後、転写シートのPETフィルムを剥離させ、磁気カードを作成した。
【0060】
(比較例5)
比較例4において、蛍光絵柄形成用インク〔A〕を蛍光絵柄形成用インク〔B〕とする以外は、比較例4と同様にして磁気カードを作成した。
(比較例6)
比較例4において、着色層の膜厚を7μmとする他は比較例4と同様にして磁気カードを作成した。
【0061】
以下に、蛍光絵柄が形成された磁気カードの評価方法を記載する。
(絵柄安定性)
60℃の恒温層中で1000時間保管した後、磁気カードの絵柄の発色と形状の変化を観察した。実施例7〜実施例12で作製した絵柄付き磁気カードについては、絵柄に変化はなく発色、形状とも維持されていた。
(蛍光絵柄の隠蔽性I)
太陽光、室内光下にて、太陽光、室内光下含まれる紫外光による蛍光絵柄の蛍光発光の有無を目視で評価した。
○・・・蛍光発光が全く視認できない。
△・・・蛍光発光は視認できるが絵柄までは認識できない。
×・・・蛍光発光がその絵柄まで視認できる。
【0062】
(蛍光絵柄の隠蔽性II)
太陽光、室内光下にて、可視光反射光による蛍光絵柄印刷の輪郭の視認性の有無を目視で評価した。
○・・・蛍光絵柄の輪郭が視認できず。
△・・・蛍光絵柄の輪郭が視認できるが絵柄までは視認できない。
×・・・蛍光絵柄の絵柄が視認できる。
【0063】
(紫外線照射による蛍光発光)
紫外線照射による蛍光絵柄の蛍光発光強度を目視で評価。
○・・・十分な蛍光発光が得られる。
△・・・蛍光光が不十分で蛍光絵柄の視認性が悪い。
×・・蛍光発光が極めて弱く絵柄の形状を正確に確認できない。
【0064】
(出力変動)
得られた磁気カードについてISO/IEC7811−6に準拠し、BARNES社製MAGTESTER2000を用いてその記録再生特性の測定を行い、下記式により出力変動を求めた。なお、この磁気カードサンプルを作成するために使用した磁気カード上の磁気ストライププに関しては、それぞれのスペーシングにあわせて磁気記録層の膜厚を調整し、出力平均値が基準カード出力に等しくなるよう調整を行った。
出力変動(%)=((出力最大値−出力最小値)/出力平均値)×100
○・・・5%未満。 △・・・5%以上、10%未満。 ×・・・10%以上。
【0065】
【表2】

【0066】
表2の結果から明らかのように、本実施例7〜12は、従来の蛍光絵柄を有する磁気カードの一態様である比較例4、5と同様の蛍光発光強度を確保でき、また太陽光や室内光に含まれる紫外線による蛍光発光により蛍光絵柄が視認されることは無い。さらに、本実施例7〜12は蛍光絵柄印刷に用いた蛍光剤が磁気記録層、着色層に拡散しているため、蛍光絵柄印刷は着色層に太陽光や室内光の可視光反射により蛍光絵柄印刷部分の輪郭が視認可能な変形を与えることが無い。また、蛍光絵柄部分と非蛍光絵柄部分で磁気ストライプ表面と磁気記録層の間の距離は実質的に変化しないため、蛍光絵柄の存在に起因する出力変動は全く発生せず、さらこのように出力変動が発生しないことをカードの真偽判定の基準とすることにより偽造防止がより確実になる。これに対して比較例4及び5では、着色層による隠蔽が不十分で、太陽光や室内光中の紫外線で絵柄の蛍光発光が視認でき、また絵柄の段差が可視の反射光によって視認できるため、蛍光絵柄の存在を秘匿することができない。たとえ着色層の膜厚を厚くしたとしても比較例6に示すようにこの事態は改善されず、むしろ蛍光の発光強度が低下する。
なお絵柄形成工程からカード完成までの工程数が従来より少なく、納期や絵柄変更に迅速に対応することが出来る点は、着色剤を用いて絵柄を形成した実施例1〜実施例6と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、磁気ストライプ部分に磁気読み取り側から識別可能な絵柄の形成された磁気記録媒体、該磁気記録媒体の製造方法、及び該磁気記録媒体の製造方法に用いる転写用積層体、を提供するものであり、例えばクレジットカード、銀行カードなどの、カード用基材層上に磁気記録媒層を含む層を積層してなるカード状磁気記録媒体等に有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】磁気ストライプ形成用の転写用積層体で作製した従来の磁気カードの拡大断面図である。
【図2】本発明の磁気記録媒体の製造方法に使用する転写用積層体の一つの態様を示す断面図である。
【図3】前記転写用積層体のエージングを行ったときに、絵柄形成剤が拡散する様子を概念的に示した断面図である。
【図4】本発明の磁気記録媒体の製造方法の一つの態様であって、オーバーシート基材側に着色層部分を形成する場合を概念的に示した断面図である。
【図5】本発明の磁気記録媒体の製造方法によって作製された磁気カードの一つの態様を示す断面図である。
【図6】実施例1〜4で製造した磁気ストライプ形成用の転写用積層体と該転写用積層体に形成された絵柄を示した概念図である。
【図7】実施例5及び実施例6における絵柄を形成する領域を示した概略図である。
【図8】本発明の磁気記録媒体の製造方法を用いて絵柄を形成された磁気カードの一つの態様を示す概略図である。
【図9】本発明の磁気記録媒体の製造方法を用いて磁気カードを製造する工程の一例を表す図である。
【図10】本発明の磁気記録媒体の製造方法を用いて磁気カードを製造する工程の他の例を表す図である。
【図11】磁気記録層と絵柄を有する磁気カードの従来の製造方法を表す図である。
【符号の説明】
【0069】
1:絵柄形成剤拡散防止層、2:絵柄形成剤拡散領域、3:着色層、4:磁気記録層、5:感熱接着剤層、6:オーバーシート、7:センターコア、8:カード上の絵柄部、9:転写用仮支持体、10:絵柄形成部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層及び磁気記録層を含む複数の層により形成された積層体中に、絵柄形成剤により形成された絵柄を有し、前記絵柄は前記積層体の前記基材層と反対方向の表面から識別可能であり、前記絵柄形成剤は、前記積層体の膜厚方向に分布し、前記積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して分布していることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記絵柄形成剤が着色剤を含有する請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記絵柄形成剤が蛍光剤を含有する請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記絵柄形成剤の濃度分布が、前記磁気記録層の基材層側の界面から磁気読み取り側の方向に向かって漸次減少する請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
磁気記録層の磁気記録読み取り側に着色層を有する請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
磁気記録層の磁気記録読み取り側最表層に絵柄形成剤拡散防止層を有する請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
転写用仮支持体上に、少なくとも一つの磁気記録層を有し、前記転写用仮支持体と接する面とは反対側の該磁気記録層の面に絵柄形成剤により絵柄を形成した転写材を形成し、
次いで、前記転写材を転写用仮支持体から基材層上に転写することにより積層体を形成し、
その後、該積層体が積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有するように該絵柄形成剤を拡散させることによる、
基材層及び磁気記録層を含む複数の層により形成された積層体中に、絵柄形成剤により形成された絵柄を有し、前記絵柄は前記積層体の前記基材層と反対方向の表面から識別可能であり、前記絵柄形成剤は、前記積層体の膜厚方向に分布し、前記積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して分布していることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
転写用仮支持体上に、少なくとも一つの磁気記録層を有し、前記転写用仮支持体と接する面とは反対側の該磁気記録層の面に絵柄形成剤により絵柄を形成した転写材を形成し、
その後、該転写材が転写材中における磁気記録層の中心部から磁気記録層の転写用仮支持体側界面の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録の転写用仮支持体側界面の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有するように該絵柄形成剤を拡散させた後、
前記転写材を転写用仮支持体から基材層上に転写することにより積層体を形成することによる、
基材層及び磁気記録層を含む複数の層により形成された積層体中に、絵柄形成剤により形成された絵柄を有し、前記絵柄は前記積層体の前記基材層と反対方向の表面から識別可能であり、前記絵柄形成剤は、前記積層体の膜厚方向に分布し、前記積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して分布していることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
転写用仮支持体上に、少なくとも一つの磁気記録層を有する転写材を形成し、
次いで、絵柄形成剤により絵柄を形成した基材層の該絵柄上に、前記転写材を転写することにより積層体を形成し、
その後、該積層体が積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有するように該絵柄形成剤を拡散させることによる、
基材層及び磁気記録層を含む複数の層により形成された積層体中に、絵柄形成剤により形成された絵柄を有し、前記絵柄は前記積層体の前記基材層と反対方向の表面から識別可能であり、前記絵柄形成剤は、前記積層体の膜厚方向に分布し、前記積層体中における磁気記録層の中心部から読み取り側の領域において、前記磁気記録層の中心部から磁気記録読み取り側の方向に向かって漸次減少する濃度勾配を有する領域を有して分布していることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
前記転写材が複数の磁気記録層を有する請求項7、8又は9に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項11】
前記複数の磁気記録層の層間に前記絵柄が形成された請求項10に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項12】
前記転写材が、更に、前記磁気記録層を挟んで前記転写用仮支持体とは反対側の位置に、磁気記録層以外の1又2以上の層を有する請求項7、8又は9に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項13】
前記磁気記録層と前記磁気記録層以外の層、又は前記磁気記録層以外の2以上の層の層間に前記絵柄が形成された請求項12に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項14】
転写用仮支持体上に、少なくとも磁気記録層を含む積層体を形成し、該積層体の層間又は該転写用仮支持体と接する面とは反対の面に絵柄形成剤により絵柄が形成されたことを特徴とする転写用積層体。
【請求項15】
磁気記録層の転写用仮支持体側に着色層を有する請求項14に記載の転写用積層体。
【請求項16】
転写用仮支持体に隣接して絵柄形成剤拡散防止層を有する請求項15に記載の転写用積層体。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−48902(P2006−48902A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191844(P2005−191844)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】