説明

磁気記録媒体用基板及び磁気記録装置

【課題】内周端部付近の部分に比べ回転時における外周端部付近の部分に掛かる力を軽減した磁気記録媒体用基板を提供する。
【解決手段】円板状で中央に貫通孔4を有する樹脂性基板で、厚さが内周端部5から外周端部6に向かって徐々に薄くなっていくことを特徴とする。また、基板の少なくとも一方の面が内周端部5から外周端部6に向かって一定の角度を有する、もしくは、基板の少なくとも一方の面が内周端部5から外周端部6までの曲面であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク記録装置の基板に用いられる磁気記録媒体用基板及びそれを使用した磁気記録装置に関し、特に、樹脂製の基板を用いた磁気記録媒体用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータなどに用いられる磁気ディスク記録媒体には、従来からアルミニウム基板又はガラス基板が用いられている。そして、この基板上に金属磁気薄膜が形成され、金属磁気薄膜を磁気ヘッドで磁化することにより情報が記録される(例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照。)。
【0003】
例えばアルミニウム基板を用いる場合、アルミニウム板をプレス成形して円盤状にした後、表面に対して高精度の研削・研磨加工及び洗浄工程を施すことにより、表面を平滑化し、続いて、メッキ処理を施すことにより、ニッケル−リン(Ni−P)合金を基板の表面に形成する、その後、研磨加工、テクスチャー加工を施し、さらにスパッタリングによりCo系合金の磁性層を形成することで磁気記録媒体を製造している。
【0004】
また、ガラス基板を用いる場合、ガラス素材を溶融し、溶融したガラスをプレス成形し、円盤状のガラス基板を作製する。そして、ガラス基板の表面に対して高精度の研削・研磨加工及び洗浄工程を施すことにより、表面を平滑化した後、アルカリの溶媒融塩によるイオン交換によって表面を化学強化処理し、精密洗浄工程を経た後、テクスチャー加工を施し、さらにスパッタリングによりCo系合金の磁性層を形成することで磁気記録媒体を製造している。
【0005】
ところで、磁気記録媒体用基板としてプラスチック基板などの樹脂性基板を採用する試みがなされている。この場合、樹脂性基板上に磁性層を形成することで磁気記録媒体を製造している。
【0006】
次に、磁気記録装置の構成を説明する。図7は従来の磁気記録装置の構成図である。図7(A)磁気記録装置の斜視図であり、図7(B)は磁気記録装置の断面図である。ディスク71は母材を磁気記録媒体用基板とし、その上に記憶領域である磁性層が形成されている、中央に貫通孔の開いた円板状のものである。また、図7(B)に示すようにスピンドル72はディスク71の貫通孔を貫いて複数のディスク71を固定している。そして、スピンドル72がモータにより回転することでディスク71が回転方向に回転する。磁気ヘッド73はディスク71上の記憶領域に磁気情報の読み書きを行うものであり、アーム74に取り付けられている。そして、アーム74が走査(シーク)方向に移動することにより、磁気ヘッド73はディスク71上の所定の記憶領域に移動しその場所で磁気情報の読み書きを行う。また、図7(B)に示すディスクはL/UL(Load Unload)方式を採用したものであり、ディスク71の停止時には、アーム74が記憶領域の外側に移動することにより、磁気ヘッド73は、ランプ(ヘッド退避部)75に退避する。
【0007】
【特許文献1】特開2003−54965号公報
【特許文献2】特開2003−55001号公報
【特許文献3】特開2000−163740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、磁気記録媒体用基板のような円板状の回転体においては、回転時に円盤状の各部分に掛かる力はその部分の重さとその部分の速度の積(回転モーメント)で表わされる。従来の磁気記録媒体用基板では、円板全体が均一の厚みで作成されているため、全ての部分において同じ重さを有している。そして、円板上の回転体では外側に行くほど角速度が大きくなる。したがって、従来の磁気記録媒体用基板では、回転時には外側に行くほど回転モーメントが大きくなり、面ブレが生じたときには内側の回転モーメントとの差によりその面ブレが増幅され、大きな面ブレが発生していた。
【0009】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、内周端部付近の部分に比べ回転時における外周端部付近の部分に掛かる力を軽減した磁気記録媒体用基板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の磁気記録媒体用基板は、円板状で中央に貫通孔を有する樹脂性基板で、厚さが内周端部から外周端部に向かって徐々に薄くなっていくことを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の磁気記録媒体用基板であって、前記基板の少なくとも一方の面が前記内周端部から前記外周端部に向かって一定の角度を有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の磁気記録媒体用基板であって、前記基板の少なくとも一方の面が前記内周端部から前記外周端部までの曲面であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の磁気記録媒体用基板であって、前記外周端部の厚さと前記内周端部の厚さの比率が0.2〜0.9であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の磁気記録媒体用基板であって、前記外周端部の厚さと前記内周端部の厚さの差が0.05mm〜5.0mmであることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の磁気記録媒体用基板であって、前記少なくとも一方の面における前記外周端部より内側方向に所定距離が平坦であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の磁気記録媒体用基板であって、前記内周端部から前記平坦部分まで一定の角度を有することを特徴とするものである。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の磁気記録媒体用基板であって、前記内周端部から前記平坦部分まで曲面であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項6乃至8のいずれか一つに記載の磁気記録媒体用基板であって、前記外周端部の厚さと前記内周端部の厚さの比率が0.2〜0.9であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項6乃至8のいずれか一つに記載の磁気記録媒体用基板であって、前記外周端部の厚さと前記内周端部の厚さの差が0.05mm〜5.0mmであることを特徴とするものである。
【0020】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10に記載の磁気記録媒体用基板であって、前記樹脂性基板の両方の面が徐々に薄くなることを特徴とするものである。
【0021】
請求項12に記載の磁気記録装置は、円板状で中央に貫通孔を有する樹脂性の磁気記録媒体用基板と、前記貫通孔を貫通するよう前記磁気記録媒体用基板に固定され前記磁気記録媒体用基板を回転させるスピンドルと、前記磁気記録媒体用基板の少なくとも一方の面に形成される磁性層と、前記磁性層への磁気情報の読み書きを行う磁気ヘッドとを備える時期記録装置であって、前記磁気記録媒体用基板は、外周端部の厚さが内周端部の厚さに比べ薄く、前記外周端部の厚さと前記内周端部の厚さの比率が0.2〜0.9であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1乃至11に記載の磁気記録媒体用基板、又は請求項12に記載の磁気記録装置によると、円板状の磁気記録媒体用基板の外側の部分の厚さが内側部分の厚さに比べて、厚く構成されている。これにより、外側の部分の重さが内側に比べ軽くなるため、内側部分に比べ外側部分に働く力が小さくなり、面ブレが生じたときにその面ブレを増幅させることなく回転が安定し、それにより磁気ヘッドでの情報の読み書きを安定させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
〔第1の実施形態〕
以下、この発明の第1の実施形態に係る磁気記録媒体用基板について図1及び図2を参照して説明する。図1はこの発明の第1の実施形態に係る磁気記録媒体用基板を厚さ方向から見た図である。図2はこの発明の第1の実施形態に係る磁気記録媒体用基板の断面図である。そして、図2は図1における一点鎖線II-IIに沿って切った断面図である。
【0024】
図1に示すように磁気記録媒体用基板1は円盤状の形状を有し、図2に示すように、基板の中央Oに貫通孔4が形成されている。この磁気記録媒体用基板1は非磁性材料により構成されており、この実施形態では、非磁性材料の1例として樹脂を用いた場合について説明する。
【0025】
次に、磁気記録媒体用基板1の材料について説明する。磁気記録媒体用基板1には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は活性線硬化性樹脂の他、様々な樹脂を用いることができる。
【0026】
磁気記録媒体用基板1には、熱可塑性樹脂として、例えば、ポリカーボネイト、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)、環状ポリオレフィン樹脂、メタクリルスチレン樹脂(MS樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ABS樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂、PBT樹脂など)、ポリオレフィン樹脂(PE樹脂、PP樹脂など)、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、又は、アクリル樹脂などを用いることができる。また、熱硬化性樹脂として、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂(BMC樹脂など)、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又は、ポリベンゾウイミダゾール樹脂などを用いることができる。その他、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN樹脂)などを用いることができる。
【0027】
さらに、活性線硬化性樹脂として、例えば、紫外線硬化性樹脂が用いられる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化性アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化性ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化性エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化性ポリオールアクリレート系樹脂、紫外線硬化性エボキシ樹脂、紫外線硬化シリコン系樹脂、又は、紫外線硬化アクリル樹脂などを挙げることができる。
【0028】
また、塗説された硬化前の層に活性線を照射することによって硬化するときに、光開始剤を用いて硬化反応を促進させることが好ましい。このとき光増感剤を併用しても良い。
【0029】
また、空気中の酸素が上記硬化反応を抑制する場合は、酸素濃度を低下させる、または除去するために、例えば不活性ガス雰囲気下で活性線を照射することもできる。活性線としては、赤外線、可視光、紫外線などを適宜選択することができるが、特に紫外線を選択することが好ましいが、特に限定されるものではない。また、活性線の照射中、または前後に加熱によって硬化反応を強化させても良い。
【0030】
さらに、磁気記録媒体用基板1には、液晶ポリマー、有機/無機ハイブリッド樹脂(例えば、高分子成分にシリコンを骨格として取り込んだもの)などを用いても良い。なお、上記に挙げた磁気記録媒体用基板1に用いられる樹脂の一例であり、この発明に係る基板がこれらの樹脂に限定されることはない。2種以上の樹脂を混合して樹脂製の基板としても良く、また、別々の層として異なる成分を隣接させて基板としても良い。
【0031】
磁気記録媒体用基板1の製造方法は、磁気記録媒体用基板1の形状に対応した形状を有する金型を用いて、射出成形法、注型成形法、シート成形法、射出圧縮成形法、又は圧縮成形法などの成形法によって作製することができる。さらに、必要に応じて、成形した基板をカッティングし、打ち抜き、又はプレス成形を行って磁気記録媒体用基板1を製造しても良い。
【0032】
そして、磁気記録媒体用基板1は、1つの材質で構成されておりどの部分においても同じ密度で構成されている。
【0033】
磁気記録媒体用基板1は、磁性層が形成される表面2及び裏面3が内周端部5から外周端部6に向かって傾斜を有している。ここで、磁気記録媒体用基板1の貫通孔4の周囲が内周端部5であり、磁気記録媒用基板1の最も外側の周囲が外周端部6である。これにより、外周端部に向かって磁気記録媒体用基板1の厚さが徐々に薄くなる。本実施形態では、表面2及び裏面3ともに記憶領域となっており、表面2及び裏面3のいずれでも磁気ヘッドにより磁気情報の読み書きが行われるため、いずれの面にも傾斜を設けている。表面2と裏面3は対象な形状を有する同一の構成であるため、以下では表面2側の構成で説明する。
【0034】
そして、内周端部5の厚さはd1(mm)であり、外周端部の厚さはd2(mm)であり、d1>d2である。ここで、d1とd2の差であるd1−d2は0.05mm以上5.0mm以下に含まれることが好ましい。より好ましくは、0.1mm以上4.0mm以下に含まれることが好ましい。さらに、内周端部5の厚さと外周端部6の厚さの比率であるd2/d1は0.2以上0.9以下に含まれることが好ましい。より好ましくは、0.3以上0.8以下に含まれることが好ましい。
【0035】
樹脂製の磁気記録媒体用基板1を作製した後、メッキ法などの製膜方法によって、磁気記録媒体用基板1の全表面に対して皮膜層を形成する。その後、皮膜層を研磨し、研磨後の皮膜層上に磁性層を形成して磁気記録媒体とする。
【0036】
ここで、磁気記録媒体用基板1上に磁性層を形成して磁気記録媒体とするが、この磁性層は非常に薄いため、ヘッドの動作は磁気記録媒体用基板1の形状に依存する。
【0037】
さらに、製造した磁気記録媒体に対し、背景技術で説明した図6のように、スピンドル62、磁気ヘッド63、アーム64、及びランプ(ヘッド退避部)65を取り付けることで磁気記録装置とする。
【0038】
以上のように、本実施形態における磁気記録媒体用基板1、その基板で構成された磁気記録装置は、内周端部5から外周端部6に向かうにしたがい徐々に薄くなっていく構成になっている。そして、本実施形態における磁気記録媒体用基板1は材質及び密度が均一であるため、外周端部6に向かうにしたがい軽くなっていくことになる。そのため、高速回転時の面ブレに影響の大きい外周部分の重量配分が小さくなり、回転軸に近い部分の重量配分が多くなるため、高速回転時においては回転軸が安定し且つ面ブレが抑えられ、磁気ヘッドによる磁気情報の安定した読み書きが行えるようになる。
【0039】
〔第2の実施形態〕
図3はこの発明の第2の実施形態に係る磁気記録媒体用基板の断面図である。本実施形態に係る磁気記録媒体用基板1Aは一方の面(ここでは表面2)に記憶領域である磁性層が存在し、その記憶領域に対し磁気ヘッドにより読み書きが行われ、他方の面(ここでは裏面3)には磁性層が存在せず、裏面3側には磁気ヘッドが配置されていない構成である。
【0040】
磁気記録媒体用基板1Aは円板状の形状を有する。この磁気記録媒体用基板1Aも第1の実施形態と同様に、基板の中央Oに貫通孔4が形成されている。この磁気記録媒体用基板1Aは非磁性材料により構成されており、この実施形態では、非磁性材料の1例として樹脂を用いた場合について説明する。
【0041】
磁気記録媒体用基板1Aは、磁性層が形成される表面2が内周端部5から外周端部6に向かって傾斜を有している。ここで、磁気記録媒体用基板1Aの貫通孔4の周囲が内周端部5であり、磁気記録媒用基板1Aの最も外側の周囲が外周端部6である。これにより、外周端部に向かって磁気記録媒体用基板1Aの厚さが徐々に薄くなるよう構成している。裏面3は磁気記憶領域がないため、磁気情報の読み書きには使用されない面であり傾斜なく平坦に構成されている。
【0042】
そして、内周端部5の厚さはd1(mm)であり、外周端部の厚さはd2(mm)であり、d1>d2である。ここで、d1とd2の差であるd1−d2は0.05mm以上5.0mm以下に含まれることが好ましい。より好ましくは、0.1mm以上4.0mm以下に含まれることが好ましい。さらに、内周端部5の厚さと外周端部6の厚さの比率であるd2/d1は0.2以上0.9以下に含まれることが好ましい。より好ましくは、0.3以上0.8以下に含まれることが好ましい。
【0043】
以上のように、一方の面だけに記憶領域が存在する場合には、その一方の面のみを内周端部5から外周端部6に向かうにしたがい徐々に薄くなる構成にしている。本実施形態では磁気記録媒体用基板1Aは材質及び密度が一定であるため、このような構成を採ることにより、外周端部6に向かうにしたがい軽くなる。このように一方の面のみに記憶領域を有する磁気記録媒体用基盤1Aでは、その一方の面にのみ傾斜をつければいいため、両面の場合と比べて製造工程を省略でき、さらに、面ブレが抑えられ磁気ヘッドによる磁気情報の安定した読み書きが行える。
【0044】
〔第3の実施形態〕
図4はこの発明の第3の実施形態に係る磁気記録媒体用基板の断面図である。本実施形態に係る磁気記録媒体用基板1Bは表面2及び裏面3のいずれの面にも記憶領域である磁性層が形成されており、いずれの面にも磁気ヘッドが配置されている構成である。
【0045】
磁気記録媒体用基板1Bは円板状の形状を有する。この磁気記録媒体用基板1Bも第1の実施形態と同様に、基板の中央Oに貫通孔4が形成されている。この磁気記録媒体用基板1Bは非磁性材料により構成されており、この実施形態では、非磁性材料の1例として樹脂を用いた場合について説明する。
【0046】
磁気記録媒体用基板1Bは、表面2及び裏面3が曲面で構成されている。そして、磁気記録媒体用基板1Bの厚さが内周端部5から外周端部6に向かって徐々に薄くなる。ここで、磁気記録媒体用基板1Bの貫通孔4の周囲が内周端部5であり、磁気記録媒用基板1Bの最も外側の周囲が外周端部6である。本実施形態では、表面2及び裏面3ともに記憶領域を有しており、表面2及び裏面3のいずれでも磁気ヘッドにより磁気情報の読み書きが行われるため、いずれの面も曲面で構成している。表面2と裏面3とは対象な形状を有し同一の構成であるため、以下では表面2側の構成で説明する。
【0047】
本実施形態では、内周端部5の厚さはd1(mm)であり、外周端部の厚さはd2(mm)であり、d1>d2である。ここで、d1とd2の差であるd1−d2は0.05mm以上5.0mm以下に含まれることが好ましい。より好ましくは、0.1mm以上4.0mm以下に含まれることが好ましい。さらに、内周端部5の厚さと外周端部6の厚さの比率であるd2/d1は0.2以上0.9以下に含まれることが好ましい。より好ましくは、0.3以上0.8以下に含まれることが好ましい。
【0048】
以上のように、本実施形態における磁気記録媒体用基板1B、その基板で構成された磁気記録装置は、内周端部5から外周端部6に向かうにしたがい徐々に薄くなっていく構成になっている。そして、本実施形態における磁気記録媒体用基板1Bは材質及び密度が均一であるため、外周端部6に向かうにしたがい軽くなっていくことになる。したがって、外に行くに従い回転により掛かる力が弱くなる。したがって回転による面ブレが抑えられ、磁気ヘッドによる磁気情報の安定した読み書きが行えるようになる。また、曲面で構成されているため、記憶領域において平坦に近い領域をより多く確保でき、磁気ヘッドによる読み書きをより安定させることが可能となる。
【0049】
〔第4の実施形態〕
図5はこの発明の第4の実施形態に係る磁気記録媒体用基板の断面図である。本実施形態に係る磁気記録媒体用基板1Cは一方の面(ここでは表面2)に記録領域である磁性層が形成されており、その記録領域に対し磁気ヘッドで読み書きが行われ、他方の面(ここでは裏面3)には磁気記録領域が存在せず、裏面3側には磁気ヘッドが配置されていない構成である。
【0050】
磁気記録媒体用基板1Cは円盤状の形状を有する。この磁気記録媒体用基板1Cも第1の実施形態と同様に、基板の中央Oに貫通孔4が形成されている。この磁気記録媒体用基板1Cは非磁性材料により構成されており、この実施形態では、非磁性材料の1例として樹脂を用いた場合について説明する。
【0051】
磁気記録媒体用基板1Cは、表面2が曲面で構成されている。そして、磁気記録媒体用基板1Bの厚さが内周端部5から外周端部6に向かって徐々に薄くなる。ここで、磁気記録媒体用基板1Cの貫通孔4の周囲が内周端部5であり、磁気記録媒用基板1Cの最も外側の周囲が外周端部6である。裏面3は磁気記憶領域がないため、次期情報の読み書きには使用されない面であり平坦に構成されている。
【0052】
本実施形態では、内周端部5の厚さはd1(mm)であり、外周端部の厚さはd2(mm)であり、d1>d2である。ここで、d1とd2の差であるd1−d2は0.05mm以上5.0mm以下に含まれることが好ましい。より好ましくは、0.1mm以上4.0mm以下に含まれることが好ましい。さらに、内周端部5の厚さと外周端部6の厚さの比率であるd2/d1は0.2以上0.9以下に含まれることが好ましい。より好ましくは、0.3以上0.8以下に含まれることが好ましい。
【0053】
以上のように、一方の面だけに記憶領域が存在する場合には、その一方の面のみを内周端部5から外周端部6に向かうにしたがい徐々に薄くなる構成にしている。本実施形態では磁気記録媒体用基板1Cは材質及び密度が一定であるため、このような構成を採ることにより、外周端部6に向かうにしたがい軽くなる。このように一方の面のみに記憶領域を有する磁気記録媒体用基盤1Cでは、その一方の面のみを曲面にすればいいため、両面を曲面にする場合と比べて製造工程を省略でき、また、面ブレが抑えられ磁気ヘッドによる磁気情報の安定した読み書きが行え、さらに、記憶領域において平坦に近い領域をより多く確保でき、磁気ヘッドによる読み書きをより安定させることが可能となる。
【0054】
〔第5の実施形態〕
図6はこの発明の第5の実施形態に係る磁気記録媒体用基板の断面図である。本実施形態に係る磁気記録媒体用基板1Dは表面2及び裏面3のいずれの面にも記憶領域である磁性層が形成されており、いずれの面にも磁気ヘッドが配置されている構成である。
【0055】
磁気記録媒体用基板1Dは円盤状の形状を有する。この磁気記録媒体用基板1Dも第1の実施形態と同様に、基板の中央Oに貫通孔4が形成されている。この磁気記録媒体用基板1Dは非磁性材料により構成されており、この実施形態では、非磁性材料の1例として樹脂を用いた場合について説明する。
【0056】
磁気記録媒体用基板1Dは、表面2及び裏面3のいずれの面も内周端部5から距離L(この発明における所定距離)は徐々に薄くなるように傾斜をつけて構成され、それより外側の外周端部6に向かう領域は平坦に構成されている。ここで、磁気記録媒体用基板1Dの貫通孔4の周囲が内周端部5であり、磁気記録媒用基板1Dの最も外側の周囲が外周端部6である。本実施形態では、表面2及び裏面3ともに記憶領域を有しており、表面2及び裏面3のいずれでも磁気ヘッドにより磁気情報の読み書きが行われるため、いずれの面も外周端部で傾斜を有している構成である。表面2と裏面3とは対象な形状を有し同一の構成であるため、以下では表面2側の構成で説明する。
【0057】
本実施形態では、内周端部5の厚さはd1(mm)であり、外周端部の厚さはd2(mm)であり、d1>d2である。ここで、d1とd2の差であるd1−d2は0.05mm以上5.0mm以下に含まれることが好ましい。より好ましくは、0.1mm以上4.0mm以下に含まれることが好ましい。さらに、内周端部5の厚さと外周端部6の厚さの比率であるd2/d1は0.2以上0.9以下に含まれることが好ましい。より好ましくは、0.3以上0.8以下に含まれることが好ましい。
【0058】
以上のように、表面2及び裏面3のいずれも貫通孔4から距離Lまでは平坦な面を有し、その外側では外に向かうに従い徐々に基準面Aから離れていく傾斜で構成されている。これにより、磁気ヘッドもその曲面に沿って徐々に基準面Aから離れてく。そして、ヘッド退避部と表面2との接続点における磁気ヘッドの移動方向は角度θで基準面Aから離れる方向である。そして、ディスクの回転の停止時に磁気ヘッドがヘッド退避部に退避するときには、接続点において角度θで基準面からはなれる方向で移動し、その後、ヘッド退避部に移り角度φでさらに基準面から離れる方向で移動する。すなわち、磁気ヘッドの移動におけるディスクからヘッド退避部へ移行する接続点では、磁気ヘッドの移動方向が角度θから角度φに変化することになる。そして、この角度θと角度φの角度差が小さく押さえられているため、磁気ヘッドの移動はこの接続点においてスムースに接続されることが可能になる。また、表面の全面が傾斜を有している場合と比較し、表面2又は裏面3における傾斜部と平坦部の境目における接続のスムースさが軽減するが、平坦部では磁気ヘッドの読み書きをより安定させることができる。
【0059】
ここで、表面2及び表面3の平坦な面の部分における貫通孔4からの距離Lは基板の外径に依存する。すなわち、距離Lは、外形をRとした場合、0.75<L<0.95Rの関係を有する距離である。
【0060】
以上のように、本実施形態における磁気記録媒体用基板1D、その基板で構成された磁気記録装置は、内周端部5から外周端部6に向かうにしたがい距離Lまで徐々に薄くなっていきその外側では平坦な領域として構成されている。そして、本実施形態における磁気記録媒体用基板1Dは材質及び密度が均一であるため、内周端部5の付近と比べて外周端部6に付近は軽くなっている。したがって、外周端部6付近では内周端部5付近に比べて回転により掛かる力が弱くなる。したがって回転による面ブレが抑えられ、磁気ヘッドによる磁気情報の安定した読み書きが行えるようになる。また、記憶領域に平坦な部分が確保されているため、その平坦な部分での磁気ヘッドによる読み書きをより安定させることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では直線的な傾斜で説明しているがこれは曲面であっても良い、また、一方の面にのみ記憶領域がある場合には、その一方の面だけに傾斜又は曲面を有し、他方の面は全面が平坦な構成でもよい。
【0062】
(実施例)
基板の大きさ:外形65mm、内径:20mm
内周端部の厚み:2.5mm
外周端部の厚み:1.0mm
厚みの差:1.5mm
比率:0.4
評価方法:レーザドップラー振動計を用い5400rpmで回転させたときの、基板の振幅(面ブレ)量を計算した。
評価結果 面ブレ:4.5nm
比較例(平坦)の結果 面ブレ:15nm
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る磁気記録媒体用基板を厚さ方向から見た図
【図2】この発明の第1の実施形態に係る磁気記録媒体用基板の断面図
【図3】この発明の第2の実施形態に係る磁気記録媒体用基板の断面図
【図4】この発明の第3の実施形態に係る磁気記録媒体用基板の断面図
【図5】この発明の第4の実施形態に係る磁気記録媒体用基板の断面図
【図6】この発明の第5の実施形態に係る磁気記録媒体用基板の断面図
【図7】(A)磁気記録装置の斜視図(B)磁気記録装置の断面図
【符号の説明】
【0064】
1、1A、1B、1C、1D 磁気記録媒体用基板
2 表面
3 裏面
4 貫通孔
5 内周端部
6 外周端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状で中央に貫通孔を有する樹脂性基板で、厚さが内周端部から外周端部に向かって徐々に薄くなっていくことを特徴とする磁気記録媒体用基板。
【請求項2】
前記基板の少なくとも一方の面が前記内周端部から前記外周端部に向かって一定の角度を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項3】
前記基板の少なくとも一方の面が前記内周端部から前記外周端部までの曲面であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項4】
前記外周端部の厚さと前記内周端部の厚さの比率が0.2〜0.9であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項5】
前記外周端部の厚さと前記内周端部の厚さの差が0.05mm〜5.0mmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項6】
前記少なくとも一方の面における前記外周端部より内側方向に所定距離が平坦であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項7】
前記内周端部から前記平坦部分まで一定の角度を有することを特徴とする請求項6に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項8】
前記内周端部から前記平坦部分まで曲面であることを特徴とする請求項6に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項9】
前記外周端部の厚さと前記内周端部の厚さの比率が0.2〜0.9であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一つに記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項10】
前記外周端部の厚さと前記内周端部の厚さの差が0.05mm〜5.0mmであることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一つに記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項11】
前記樹脂性基板の両方の面が徐々に薄くなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一つに記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項12】
円板状で中央に貫通孔を有する樹脂性の磁気記録媒体用基板と、
前記貫通孔を貫通するよう前記磁気記録媒体用基板に固定され前記磁気記録媒体用基板を回転させるスピンドルと、
前記磁気記録媒体用基板の少なくとも一方の面に形成される磁性層と、
前記磁性層への磁気情報の読み書きを行う磁気ヘッドと
を備える時期記録装置であって、
前記磁気記録媒体用基板は、
外周端部の厚さが内周端部の厚さに比べ薄く、前記外周端部の厚さと前記内周端部の厚さの比率が0.2〜0.9である
ことを特徴とする磁気記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−54253(P2009−54253A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221650(P2007−221650)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】