磁気記録媒体製造方法および磁気記録媒体
【課題】所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適した方法、および、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ高い記録面平坦性を実現するのに適した磁気記録媒体を、提供すること。
【解決手段】本発明の方法は、例えば、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜12’に対して非一様にエネルギを付与することにより、非磁性膜12’から、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部12Aと非磁性部12Bとを有する記録層12を形成する工程を含む。本発明の磁気記録媒体X1は、連続膜体である記録層12を備え、記録層12は、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部12Aと、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性部12Bとを有する。
【解決手段】本発明の方法は、例えば、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜12’に対して非一様にエネルギを付与することにより、非磁性膜12’から、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部12Aと非磁性部12Bとを有する記録層12を形成する工程を含む。本発明の磁気記録媒体X1は、連続膜体である記録層12を備え、記録層12は、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部12Aと、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性部12Bとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有する磁気記録媒体を製造するための方法、および、そのような磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクなどの記憶装置を構成するための記録媒体として、磁気ディスク(磁気記録媒体)が知られている。磁気ディスクは、ディスク基板と所定の磁性構造を有する記録層とを含む積層構造を有する。コンピュータシステムにおける情報処理量の増大に伴い、磁気ディスクについては高記録密度化の要求が高まっている。
【0003】
磁気ディスクへの情報記録に際しては、磁気ディスクの記録面に対して記録用の磁気ヘッドが近接配置(浮上配置)され、当該磁気ヘッドにより、記録層に対し、その保磁力より強い記録磁界が印加される。磁気ディスクに対して磁気ヘッドを相対移動させつつ磁気ヘッドからの記録磁界の向きを順次反転させることにより、記録層の情報トラックにて、磁化方向が順次反転する複数の記録マーク(磁区)がディスク周方向に連なって形成される。このとき、記録磁界方向を反転させるタイミングが制御されることにより、各々に所定の長さで記録マークが形成される。このようにして、記録層において、磁化方向の変化として所定の信号ないし情報が記録される。
【0004】
また、磁気ディスクの技術分野においては、高記録密度化を図るのに好ましい媒体として、いわゆるディスクリートトラックメディア(DTM)やパターンドメディア(PM)など、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有する磁気ディスクが知られている。このような磁気ディスクについては、例えば下記の特許文献1〜3に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−71467号公報
【特許文献2】特開2005−166115号公報
【特許文献3】特開2005−293730号公報
【0006】
図20および図21は、DTMである従来の磁気ディスク40を表す。図20は、磁気ディスク40の平面図であり、図21は、磁気ディスク40のディスク径方向に沿った部分拡大断面図である。
【0007】
磁気ディスク40は、ディスク基板41、記録層42、および保護層43(図20では図示略)からなる積層構造を有する。記録層42は、複数の記録磁性部42Aと複数の非磁性部42Bとからなる。記録磁性部42Aは、図20にて一部を模式的に太線で示すように磁気ディスク40の回転軸心A’を共通中心としてディスク基板41上にて同心円状に配置され、情報トラックを構成する。また、記録磁性部42Aは所定の磁性材料よりなる。一方、非磁性部42Bは、所定の非磁性材料よりなり、記録磁性部42A間に介在する。保護層43の露出面は磁気ディスク40の記録面44をなす。
【0008】
このような磁気ディスク40への情報記録時には、磁気ディスク40の記録面44に対して記録用の磁気ヘッドが浮上配置され、当該磁気ヘッドによる記録磁界の印加によって、記録層42の一の記録磁性部42Aにて、磁化方向が順次反転する複数の記録マーク(磁区)がディスク周方向に連なって形成される。
【0009】
図22および図23は、従来の磁気ディスク40の製造方法を表す。磁気ディスク40の製造においては、まず、図22(a)に示すように、ディスク基板41上に磁性膜42A’が形成される。次に、図22(b)に示すように、磁性膜42A’上にフォトレジスト膜51が形成される。次に、図22(c)に示すように、リソグラフィ法により、フォトレジスト膜51からレジストパターン52が形成される。レジストパターン52は、上述の非磁性部42Bのパターン形状に対応する開口部52aを有する。当該リソグラフィ法においては、具体的には、所定装置によって所定パターン(潜像)がフォトレジスト膜51に露光形成された後、当該フォトレジスト膜51に現像処理が施される。このようにして、磁性膜42A’上にレジストパターン52が形成される。この後、図22(d)に示すように、レジストパターン52がマスクとして利用されて、磁性膜42A’に対して所定のエッチングが施され、上述の記録磁性部42Aがパターン形成される。
【0010】
磁気ディスク40の製造においては、次に、図23(a)に示すようにレジストパターン52が除去される。次に、図23(b)に示すように非磁性材料42B’が堆積される。具体的には、スパッタリング法により、記録磁性部42A間の隙間および記録磁性部42A上に非磁性材料42B’が堆積される。次に、図23(c)に示すように、堆積された非磁性材料42B’において記録磁性部42A間の隙間にない過剰部分を、例えば機械的研磨により除去する。本工程により、非磁性部42Bが形成され、記録層42が形成されることとなる。この後、図23(d)に示すように、記録層42上に保護層43が形成される。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部42Aを記録層42内に有する磁気ディスク40が製造される。
【0011】
本方法によると、記録面44において充分な平坦性を得ることが困難である。本方法では、図22(d)を参照して上述したように、磁性膜42A’に対するエッチングにより記録磁性部42Aがパターン形成された後、図23(b)に示すように、記録磁性部42A間の隙間を充填すべく非磁性材料42B’が堆積され、そして、図23(c)に示すように、非磁性材料42B’における過剰部分が除去されて記録層42が形成される。このよう過程を経て形成される非連続膜体である記録層42の図中上面については、充分な平坦性を得ることが困難であり、従って、記録層42の表面平坦性が反映される記録面44において充分な平坦性を得ることは困難なのである。
【0012】
一般に、磁気ディスクないしその記録層における面内記録密度が大きいほど、情報記録再生時に磁気ディスクに対して浮上配置される磁気ヘッドについては、より小さな浮上量(磁気ヘッドと記録面の間の距離)が要求される傾向にあるところ、小さな浮上量にて磁気ヘッドが適切に動作するためには、磁気ディスクの記録面は充分に平坦でなければならない。要求される浮上量が小さいほど(即ち、磁気ディスクの面内記録密度か大きいほど)、記録面に求められる平坦性は高くなる傾向にある。
【0013】
しかしながら、上述の従来の方法によると、記録層42ないし記録面44において充分な平坦性を得ることは困難である。このような方法により得られる磁気ディスク40は、磁気ヘッドの低浮上量化を図るうえで好ましくなく、従って、高記録密度化を図るうえで好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、以上のような事情の下で考え出されたものであり、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適した方法、および、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ高い記録面平坦性を実現するのに適した磁気記録媒体を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して非一様にエネルギを付与することにより、当該非磁性膜から、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部と非磁性部とを有する記録層を形成する工程を含む。
【0016】
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態は、熱力学的に準安定状態にあるので、所定の刺激に誘発されて、より安定な状態(例えば、真の平衡状態)に至るまで、当該強磁性材料を主成分とする強磁性相と当該非磁性材料を主成分とする非磁性相とが相分離(スピノーダル分解)し、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を生じ得る。本発明においては、この現象を磁気記録媒体の記録層の形成に利用して、記録層内の記録磁性部をパターン形成する。具体的には、本発明では、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して非一様にエネルギを付与して当該過飽和固溶非磁性膜における所定領域に刺激を与えることによって、当該過飽和固溶非磁性膜にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造の領域を生じさせ、実質的に記録磁性部をパターン形成し、従って、そのような所定パターンを有する記録磁性部を含む記録層を形成する。強磁性グラニュラ構造領域については、各強磁性グラニュラ構造領域が一の記録磁性部を構成するように、或は、複数の強磁性グラニュラ構造領域が一の記録磁性部を構成するように、所定のパターンで生じさせる。
【0017】
また、本方法においては、そのような記録層を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層の表面平坦性が反映される記録面において、充分な平坦性を得るのに適する。
【0018】
以上のように、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法は、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに、適するのである。記録面の平坦性の高い磁気記録媒体は、磁気ヘッドの低浮上量化を図るうえで好ましく、従って、高記録密度化を図るうえで好ましい。
【0019】
本発明の第2の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、凸部を有するスタンパにおける当該凸部を当接させる工程(第1の工程)と、スタンパの凸部を介して非磁性膜を加熱することにより、非磁性膜における当該加熱箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程(第2の工程)とを含む。本方法においては、第1の工程と第2の工程とを順次行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0020】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。発熱体(スタンパ)の接触による局所的な加熱は、過飽和固溶非磁性膜に対する非一様なエネルギ付与手法として効果的である。
【0021】
本発明の第3の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、収束ビームを照射することにより、非磁性膜における当該照射箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程を含む。収束ビームには、収束された電子線や、収束されたレーザ光線が含まれる。
【0022】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。収束ビームの局所的な照射ないしそれによる局所的な加熱は、過飽和固溶非磁性膜に対する非一様なエネルギ付与手法として効果的である。
【0023】
本発明の第4の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、開口部を有するマスクを介してレーザ光またはX線を照射することにより、非磁性膜における当該照射箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程を含む。
【0024】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。マスクを介してのレーザ光またはX線の照射ないしそれによる局所的な加熱は、過飽和固溶非磁性膜に対する非一様なエネルギ付与手法として効果的である。
【0025】
好ましくは、マスクは、過飽和固溶非磁性膜に密着して配置される。このような構成によると、当該マスクにおける過飽和固溶非磁性膜側にて生ずる近接場光も、過飽和固溶非磁性膜に対する付与エネルギとして利用することができる場合がある。近接場光の利用は、レーザ光またはX線の照射出力を低減するうえで好ましい。
【0026】
本発明の第5の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して圧痕を形成する工程と、加熱により、非磁性膜内に、当該圧痕を起点として、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程とを含む。圧痕は、所定の突起部の圧入により過飽和固溶非磁性膜に形成されるものである。
【0027】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。所定の突起部の圧入により過飽和固溶非磁性膜に形成される圧痕は、所定の温度条件下の過飽和固溶非磁性膜において、強磁性材料を主成分とする強磁性相と非磁性材料を主成分とする非磁性相とが相分離することを誘発する起点として機能し得る。
【0028】
本発明の第6の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、基材の表面の部分領域に微細凹凸を形成する工程と、基材上に、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を形成する工程と、加熱により、非磁性膜における基材表面の微細凹凸領域上にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程とを含む。
【0029】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。過飽和固溶非磁性膜に接する微細凹凸は、所定の温度条件下の過飽和固溶非磁性膜において、強磁性材料を主成分とする強磁性相と非磁性材料を主成分とする非磁性相とが相分離することを誘発する起点として機能し得る。
【0030】
本発明の第7の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、基材上に、当該基材表面とは異なる表面エネルギを有する薄膜パターンを形成する工程と、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を、薄膜パターンを覆うように基材上に形成する工程と、加熱により、非磁性膜における薄膜パターン上にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程とを含む。
【0031】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。基材表面とは異なる表面エネルギを有して過飽和固溶非磁性膜に接する薄膜パターンは、所定の温度条件下の過飽和固溶非磁性膜において、強磁性材料を主成分とする強磁性相と非磁性材料を主成分とする非磁性相とが相分離することを誘発する起点として機能する場合がある。
【0032】
本発明の第8の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、基材上に、低融点材料からなる薄膜パターンを形成する工程と、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を、薄膜パターンを覆うように基材上に形成する工程と、加熱により、薄膜パターンを溶融しつつ、非磁性膜における薄膜パターンに対応する位置にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程とを含む。
【0033】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。基材や過飽和固溶非磁性膜より低融点の材料よりなり且つ過飽和固溶非磁性膜に接する薄膜パターンは、所定の温度条件下の過飽和固溶非磁性膜において、強磁性材料を主成分とする強磁性相と非磁性材料を主成分とする非磁性相とが相分離することを誘発する起点として機能する場合がある。
【0034】
本発明の第9の側面によると磁気記録媒体が提供される。この磁気記録媒体は、連続膜体である記録層を備える。記録層は、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部と、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性部とを有する。
【0035】
本磁気記録媒体は、本発明の第1から第8の側面に係るいずれの磁気記録媒体製造方法によっても製造することができる。本磁気記録媒体の製造過程においては、本発明の第1の側面に関して上述した技術的利益を享受することが可能であり、従って、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有する本磁気記録媒体は、高い記録面平坦性を実現するのに適している。
【0036】
本発明の第1から第9の側面において、好ましくは、非磁性材料は、Bおよび/またはCである。また、好ましくは、強磁性材料は、Fe、Co、またはNiを含む。BおよびCは、原子半径が比較的小さく、原子半径の比較的大きなFe,Co,Niなどとは、これらがなす結晶構造における格子点の隙間に侵入して侵入型の固溶体を構成することができる。本発明では、過飽和固溶非磁性膜が侵入型固溶体である場合、強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から過剰な非磁性材料が掃き出され、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、強磁性相と非磁性相とが相分離することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係る磁気ディスクX1を表す。図1は、磁気ディスクX1の平面図であり、図2は、図1の磁気ディスクX1のディスク径方向に沿った部分拡大断面図である。
【0038】
磁気ディスクX1は、ディスク基板11、記録層12、軟磁性層13、および保護層14(図1では図示略)を含む積層構造を有し、ディスクリートトラックメディア(DTM)として構成されたものである。
【0039】
ディスク基板11は、主に、磁気ディスクX1の剛性を確保するための部位であり、例えば、アルミニウム合金、ガラス、または樹脂よりなる。
【0040】
記録層12は、図2に示すように、複数の記録磁性部12Aおよび複数の非磁性部12Bを有する。記録磁性部12Aは、図1にて一部を模式的に太線で示すように磁気ディスクX1の回転軸心Aを共通中心として同心円状に配置され、情報トラックを構成する。また、記録磁性部12Aは、垂直磁気異方性の強磁性グラニュラ構造を有する。具体的には、記録磁性部12Aは、図3に示すように、柱状で垂直磁気異方性を有する強磁性グラニュラ粒子としての強磁性相12aと、当該強磁性グラニュラ粒子間に介在し且つ実質的に磁性を有しない(即ち、少なくとも強磁性相12aに比して充分に磁化の小さい)非磁性相12bとからなる(図3は、磁気ディスクX1において保護層14を省略して表した、記録層12の部分拡大平面図である)。強磁性相12aは、Fe,Co,Niからなる群より選択される強磁性の単体金属、または、当該金属を含んでなる強磁性合金を、主成分として含む。非磁性相12bは、Bおよび/またはCである非磁性材料を主成分として含む。
【0041】
非磁性部12Bは、記録磁性部12A間に介在して実質的に磁性を有しない(即ち、少なくとも記録磁性部12Aないし強磁性相12aに比して充分に磁化の小さい)部位である。また、非磁性部12Bは、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある。当該強磁性材料は、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む。当該非磁性材料は、BおよびCを少なくとも一種類含む。BおよびCは、原子半径が比較的小さく、原子半径の比較的大きなFe,Co,Niなどとは、これらがなす結晶構造における格子点の隙間に侵入して侵入型の固溶体を構成することができる。非磁性部12Bは、このような侵入型固溶状態にあり、且つ、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にあるのである。
【0042】
以上のような記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bからなる記録層12は、連続膜体である。また、記録層12の厚さは例えば5〜50nmであり、記録磁性部12Aの幅は例えば10〜100nmであり、非磁性部12Bの幅は例えば10〜100nmである。
【0043】
軟磁性層13は、記録時等に稼働する磁気ヘッドからの磁束を再び当該磁気ヘッドに還流させる磁路を磁気ディスクX1内に効率よく形成するためのものであり、高透磁率を有して大きな飽和磁化を有するとともに小さな保磁力を有する軟磁性材料よりなる。軟磁性層13を構成するための軟磁性材料としては、例えば、FeC、FeNi、FeCoB、FeCoSiC、およびFeCo−AlOが挙げられる。軟磁性層13の厚さは例えば50〜1000nmである。
【0044】
保護層14は、記録層12や軟磁性層13などを外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボンよりなる。保護層14の露出面は磁気ディスクX1の記録面15をなす。
【0045】
以上のようなディスク基板11、記録層12、軟磁性層13、および保護層14を含む磁気ディスクX1の構造中には、必要に応じて他の層や要素が含まれてもよい。
【0046】
このような磁気ディスクX1の情報記録時には、磁気ディスクX1の記録面15に対して記録用の磁気ヘッド(図示略)が浮上配置され、当該磁気ヘッドによる記録磁界の印加によって、記録層12の一の記録磁性部12Aにて、磁化方向が順次反転する複数の記録マーク(磁区)がディスク周方向に連なって形成される。このとき、情報記録進行中であって磁界が順次印加される記録磁性部12Aと、これの隣りの記録磁性部12Aとが、非磁性部12Bにより分断されているため、当該隣りの記録磁性部12Aの記録マークが消失ないし劣化するというクロスライト現象が抑制される。クロスライト現象が抑制される磁気ディスクは、トラックの狭ピッチ化ないし高記録密度化を図るうえで、好ましい。
【0047】
図4は、磁気ディスクX1の第1の製造方法を表す。本方法においては、まず、図4(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13およびプレ記録層12’を順次形成する。軟磁性層13の形成においては、例えばスパッタリング法により、ディスク基板11上に上述の軟磁性材料を成膜する。プレ記録層12’は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜である。当該強磁性材料は、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む。当該非磁性材料は、BおよびCを少なくとも一種類含む。BおよびCは、原子半径が比較的小さく、原子半径の比較的大きなFe,Co,Niなどとは、これらがなす結晶構造における格子点の隙間に侵入して侵入型の固溶体を構成することができる。プレ記録層12’は、このような侵入型固溶状態にあり、且つ、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にあるのである。プレ記録層12’の形成においては、例えばスパッタリング法により、そのような状態となる組成比で、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料と、BおよびCを少なくとも一種類含む非磁性材料とを、堆積成長させる。プレ記録層12’における強磁性材料の組成比は、好ましくは45〜70atom.%である。非磁性材料の組成比は、好ましくは30〜55atom.%であり、より好ましくは35〜50atom.%である。
【0048】
本方法においては、次に、図4(b)に示すように、スタンパ21をプレ記録層12’に押し当てる。スタンパ21は、凸部21aを有し、例えばNiやNi合金よりなる。凸部21aは、上述の記録磁性部12Aに対応するパターン形状を有する。また、スタンパ21は、図外の発熱機構から熱が伝わるように当該発熱機構と連結されている。本工程では、スタンパ21の凸部21aの先端を、位置合わせしつつ、プレ記録層12’に対して当接させる。
【0049】
次に、図外の発熱機構を駆動して、図4(c)に示すように、スタンパ21の凸部21aを介してプレ記録層12’を加熱し、当該加熱箇所にて記録磁性部12Aを形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。
【0050】
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態は、熱力学的に準安定状態にあるので、所定の刺激に誘発されて、より安定な状態(例えば、真の平衡状態)に至るまで、当該強磁性材料を主成分とする強磁性相と当該非磁性材料を主成分とする非磁性相とが相分離(スピノーダル分解)し、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を生じ得る。本工程においては、この現象を利用して、記録磁性部12Aをパターン形成する。
【0051】
具体的には、プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)においてスタンパ21により加熱される箇所では、スタンパ21からの熱エネルギに誘発されて、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。本工程では、このようにして、プレ記録層12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜体としての記録層12が形成される。
【0052】
本方法においては、次に、スタンパ21を記録層12から離した後、図4(d)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成においては、例えばスパッタリング法により、保護層14に関して上述した構成材料を記録層12上に成膜する。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0053】
本方法においては、図4(c)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図4(a)を参照して上述したように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。
【0054】
以上のように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1は、磁気ヘッドの低浮上量化を図るうえで好ましく、従って、高記録密度化を図るうえで好ましい。
【0055】
本方法においては、図4(b)を参照して上述した工程と図4(c)を参照して上述した工程とを順次行うのに代えて、予め所定温度に昇温したスタンパ21を図4(c)に示すようにプレ記録層12’に押し当てることにより、記録層12を形成してもよい。
【0056】
図5は、磁気ディスクX1の第2の製造方法を表す。本方法においては、まず、図5(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13およびプレ記録層12’を順次形成する。軟磁性層13およびプレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0057】
次に、図5(b)に示すように、プレ記録層12’において記録磁性部12Aを形成すべき箇所に収束ビーム22を照射し、これにより、プレ記録層12’における当該照射箇所にて記録磁性部12Aを形成する。収束ビーム22は、例えば、収束された電子線や、収束されたレーザ光線である。収束ビーム22のビーム径は例えば10〜100nmである。照射時間は例えば0.1〜10秒である。
【0058】
プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)において収束ビーム22が照射される箇所では、当該局所的な照射ないしそれによる局所的な加熱に誘発されて、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。本工程では、このようにして、プレ記録層12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜体としての記録層12が形成される。
【0059】
本方法においては、次に、図5(c)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0060】
本方法においては、図5(b)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図5(a)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。
【0061】
図6は、磁気ディスクX1の第3の製造方法を表す。本方法においては、まず、図6(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13およびプレ記録層12’を順次形成する。軟磁性層13およびプレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0062】
次に、図6(b)に示すように、マスク23を、位置合わせしつつ、プレ記録層12’に対して対向配置する。マスク23は、上述の記録磁性部12Aのパターン形状に対応する開口部23aを有し、次の照射工程にて用いられる光(電磁波)24を充分に遮断する材料よりなる。マスク23の構成材料としは、例えばCr合金やHf合金を採用することができる。
【0063】
次に、図6(c)に示すように、マスク23を介してプレ記録層12’に対して光(電磁波)24を照射することにより、プレ記録層12’における当該照射箇所にて記録磁性部12Aを形成する。光24は、例えばレーザ光線やX線であり、照射時間は例えば1〜60秒である。
【0064】
プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)において光24が照射される箇所では、当該局所的な照射およびそれによる局所的な加熱に誘発されて、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。本工程では、このようにして、プレ記録層12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜体としての記録層12が形成される。
【0065】
本方法においては、次に、図6(d)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0066】
本方法においては、図6(c)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図6(a)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。
【0067】
図7は、磁気ディスクX1の第4の製造方法を表す。本方法においては、まず、図7(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13およびプレ記録層12’を順次形成する。軟磁性層13およびプレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0068】
次に、図7(b)に示すように、プレ記録層12’上にマスク25を形成する。マスク25は、上述の記録磁性部12Aのパターン形状に対応する開口部25aを有する。マスク25の形成においては、例えば、スパッタリング法により所定の金属材料をプレ記録層12’上に成膜した後、当該金属膜をリソグラフィ法によりパターニングする。マスク25の厚さは例えば5〜50nmである。マスク25は、次の照射工程にて用いられる光(電磁波)24を充分に遮断する材料よりなる。マスク25の構成材料としは、例えばCr合金やHf合金を採用することができる。
【0069】
次に、図7(c)に示すように、マスク25を介してプレ記録層12’に対して光(電磁波)24を照射することにより、プレ記録層12’における当該照射箇所にて記録磁性部12Aを形成する。光24は、例えばレーザ光線やX線であり、照射時間は例えば1〜60秒である。
【0070】
プレ記録層12’上に密着形成されているマスク25を介して光24をプレ記録層12’に照射すると、マスク25におけるプレ記録層12’側にて近接場光が生じ、当該近接場光も、プレ記録層12’に対する付与エネルギとして利用することができる。近接場光の利用は、光24の照射出力を低減するうえで好ましい。また、近接場光を利用すると、使用光の波長以下(即ち、使用光の回折限界以下)のサイズの微小露光が可能となることから、微細なパターンを形成しやすい。
【0071】
プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)において光24およびそれに由来する近接場光が照射される箇所では、当該局所的な照射およびそれによる局所的な加熱に誘発されて、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。本工程では、このようにして、プレ記録層12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜体としての記録層12が形成される。
【0072】
本方法においては、次に、図7(d)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0073】
本方法においては、図7(c)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図7(a)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。
【0074】
図8および図9は、磁気ディスクX1の第5の製造方法を表す。本方法においては、まず、図8(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13およびプレ記録層12’を順次形成する。軟磁性層13およびプレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0075】
次に、図8(b)および図8(c)に示すように、プレ記録層12’において上述の記録磁性部12Aを形成すべき箇所内に、スタンパ26を使用して圧痕12’’を形成する。スタンパ26は突部26aを有し、本工程では、当該突部26aをプレ記録層12’に部分的に圧入する。
【0076】
次に、図9(a)に示すように、プレ記録層12’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部12Aを形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程において、プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)内では、圧痕12’’が起点となって相分離が誘発される。具体的には、起点たる圧痕12’’の近傍では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる(相分離の生ずる領域についての例えば図9(a)に示す幅は、圧痕12’’を形成する際にプレ記録層12’表面に加える負荷や、圧痕12’’の深さや幅を調整することによって、制御することが可能である)。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。この後、図9(b)に示すように、プレ記録層12’を機械的に研磨する。このようにして、プレ記録層12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜体としての記録層12が形成される。
【0077】
本方法においては、次に、図9(c)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0078】
本方法においては、図9(a)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図8(a)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。
【0079】
図10は、磁気ディスクX1の第6の製造方法を表す。本方法においては、まず、図10(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13を形成したうえで、軟磁性層13の表面に微細凹凸領域13aを形成する。軟磁性層13の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。微細凹凸領域13aは、上述の記録磁性部12Aに対応するパターン形状を有し、微細凹凸領域13aの表面粗さは例えば0.5〜2nmである。このような微細凹凸領域13aは、例えば、所定のマスクを軟磁性層13上に設けたうえで当該軟磁性層13にドライエッチング処理を施すことにより、形成することができる。
【0080】
次に、図10(b)に示すように、軟磁性層13上にプレ記録層12’を形成する。プレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0081】
次に、図10(c)に示すように、プレ記録層12’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部12Aを形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程において、プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)内では、軟磁性層13表面の微細凹凸領域13aの微細凹凸形状が起点となって相分離が誘発される。具体的には、プレ記録層12’における微細凹凸領域13a上の部位では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。
【0082】
本方法においては、次に、図10(d)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0083】
本方法においては、図10(c)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図10(b)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。
【0084】
図11は、磁気ディスクX1の第7の製造方法を表す。本方法においては、まず、図11(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13を形成したうえで、軟磁性層13上に薄膜パターン27を形成する。軟磁性層13の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。薄膜パターン27は、上述の記録磁性部12Aに対応するパターン形状を有し、軟磁性層13表面とは異なる表面エネルギを有する。そのような薄膜パターン27は、例えばSiNやSiO2よりなる。薄膜パターン27の厚さは例えば0.5〜2nmである。薄膜パターン27の形成においては、まず、薄膜パターン27について上述した構成材料を軟磁性層13上に成膜する。次に、所定のマスクを使用して行うエッチングにより、当該材料膜をパターニングする。
【0085】
本方法においては、次に、図11(b)に示すように、薄膜パターン27を覆うようにして軟磁性層13上にプレ記録層12’を形成する。プレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0086】
次に、図11(c)に示すように、プレ記録層12’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部12Aを形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程において、プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)内では、軟磁性層13表面とは表面エネルギの異なる薄膜パターン27が起点となって相分離が誘発される。具体的には、プレ記録層12’における薄膜パターン27上の部位では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。
【0087】
本方法においては、次に、図11(d)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0088】
本方法においては、図11(c)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図11(b)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。
【0089】
図12は、磁気ディスクX1の第8の製造方法を表す。本方法においては、まず、図12(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13を形成したうえで、軟磁性層13上に薄膜パターン28を形成する。軟磁性層13の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。薄膜パターン28は、上述の記録磁性部12Aに対応するパターン形状を有し、次の加熱工程における加熱温度にて溶融可能な低融点材料よりなる。そのような薄膜パターン28は、例えばSn、In、Agよりなる。薄膜パターン28の厚さは例えば0.5〜2nmである。薄膜パターン28の形成においては、まず、薄膜パターン28について上述した構成材料を軟磁性層13上に成膜する。次に、所定のマスクを使用して行うエッチングにより、当該材料膜をパターニングする。
【0090】
本方法においては、次に、図12(b)に示すように、薄膜パターン28を覆うようにして軟磁性層13上にプレ記録層12’を形成する。プレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0091】
次に、図12(c)に示すように、プレ記録層12’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部12Aを形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程では、このような加熱温度にて、薄膜パターン28が溶融され、プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)内では、溶融状態にある薄膜パターン28が起点となって相分離が誘発される。具体的には、プレ記録層12’における薄膜パターン28上の部位では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。本工程を経ると、薄膜パターン28の全部または一部が記録層12内に拡散して事実上消失する場合がある。
【0092】
本方法においては、次に、図12(d)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0093】
本方法においては、図12(c)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図12(b)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。
【0094】
図13は、本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスクX2のディスク径方向に沿った部分断面図である。磁気ディスクX2は、ディスク基板11、記録層30、軟磁性層13、および保護層14を含む積層構造を有し、DTMとして構成されたものである。磁気ディスクX2は、記録層12に代えて記録層30を有する点において、磁気ディスクX1と異なる。
【0095】
記録層30は、複数の記録磁性部31および複数の非磁性部32を有する。記録磁性部31は、磁気ディスクX1における記録磁性部12Aが同心円状に配置されて情報トラックを構成するのと同様に、磁気ディスクX2の回転軸心を共通中心として同心円状に配置されて情報トラックを構成する。また、各記録磁性部31は、複数のグラニュラ構造部31aおよび非磁性部31bからなる。グラニュラ構造部31aは、各々、ディスク周方向に延び、垂直磁気異方性の強磁性グラニュラ構造を有する。具体的には、グラニュラ構造部31aは、図3に示す記録磁性部12Aと同様に、柱状で垂直磁気異方性を有する強磁性グラニュラ粒子としての強磁性相と、当該強磁性グラニュラ粒子間に介在し且つ実質的に磁性を有しない(即ち、少なくとも強磁性相に比して充分に磁化の小さい)非磁性相とからなる。強磁性相は、Fe,Co,Niからなる群より選択される強磁性の単体金属または強磁性合金を主成分として含む。非磁性相は、Bおよび/Cである非磁性材料を主成分として含む。
【0096】
非磁性部31bは、グラニュラ構造部31a間に介在して実質的に磁性を有しない(即ち、少なくともグラニュラ構造部31aないしその強磁性相に比して充分に磁化の小さい)部位である。また、非磁性部31bは、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある。当該強磁性材料は、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む。当該非磁性材料は、BおよびCを少なくとも一種類含む。BおよびCは、原子半径が比較的小さく、原子半径の比較的大きなFe,Co,Niなどとは、これらがなす結晶構造における格子点の隙間に侵入して侵入型の固溶体を構成することができる。非磁性部31bは、このような侵入型固溶状態にあり、且つ、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にあるのである。
【0097】
非磁性部32は、記録磁性部31間に介在して実質的に磁性を有しない(即ち、少なくとも記録磁性部31のグラニュラ構造部31aないしその強磁性相に比して充分に磁化の小さい)部位である。また、非磁性部32は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある。非磁性部32は、具体的には、非磁性部31bと同様の組成を有する。
【0098】
以上のような記録磁性部31および非磁性部32からなる記録層30は、連続膜体である。また、記録層30の厚さは例えば5〜50nmであり、記録磁性部31のグラニュラ構造部31aの幅は例えば5〜20nmであり、非磁性部31bの幅は例えば5〜20nmであり、非磁性部32の幅は例えば10〜100nmである。
【0099】
図14は、磁気ディスクX2の第1の製造方法を表す。本方法においては、まず、図14(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13を形成したうえで、当該軟磁性層13の表面に微細凹凸領域13bを形成する。軟磁性層13の形成手法については、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したのと同様である。各微細凹凸領域13bは、上述の記録磁性部31のグラニュラ構造部31aに対応するパターン形状を有し、微細凹凸領域13bの表面粗さは例えば0.5〜2nmである。このような微細凹凸領域13bは、例えば、所定のマスクを軟磁性層13上に設けたうえで当該軟磁性層13にドライエッチング処理を施すことにより、形成することができる。
【0100】
次に、図14(b)に示すように、軟磁性層13上にプレ記録層30’を形成する。プレ記録層30’の形成手法は、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したプレ記録層12’の形成手法と同様である。
【0101】
次に、図14(c)に示すように、プレ記録層30’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部31を形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程において、プレ記録層30’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)内では、軟磁性層13表面の微細凹凸領域13bの微細凹凸形状が起点となって相分離が誘発される。具体的には、プレ記録層30’における微細凹凸領域13b上の部位では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、強磁性相と非磁性相とが相分離し、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造のグラニュラ構造部31aが生じる。プレ記録層30’にてグラニュラ構造部31aが形成されない箇所は、非磁性部31b,32を構成することとなる。
【0102】
本方法においては、次に、図14(d)に示すように、記録層30上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部31を記録層30内に有する磁気ディスクX2を製造することができる。
【0103】
本方法においては、図14(c)を参照して上述したように、記録層30内にグラニュラ構造部31aないし記録磁性部31をパターン形成することができる。また、本方法においては、図14(b)に示すように、記録層30を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層30’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層30の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部31を記録層30内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX2を製造するのに、適する。
【0104】
図15は、磁気ディスクX2の第2の製造方法を表す。本方法においては、まず、図15(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13を形成したうえで、軟磁性層13上に薄膜パターン27を形成する。軟磁性層13の形成手法については、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したのと同様である。各薄膜パターン27は、本実施形態では、上述の記録磁性部31のグラニュラ構造部31aに対応するパターン形状を有し、軟磁性層13表面とは異なる表面エネルギを有する。そのような薄膜パターン27の構成材料、厚さ、および形成手法については、磁気ディスクX1の第7の製造方法における薄膜パターン27に関して上述したのと同様である。
【0105】
次に、図15(b)に示すように、軟磁性層13上にプレ記録層30’を形成する。プレ記録層30’の形成手法は、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したプレ記録層12’の形成手法と同様である。
【0106】
次に、図15(c)に示すように、プレ記録層30’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部31を形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程において、プレ記録層30’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜)内では、軟磁性層13表面とは表面エネルギの異なる薄膜パターン27が起点となって相分離が誘発される。具体的には、プレ記録層30’における薄膜パターン27上の部位では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、強磁性相と非磁性相とが相分離し、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造のグラニュラ構造部31aが生じる。プレ記録層30’にてグラニュラ構造部31aが形成されない箇所は、非磁性部31b,32を構成することとなる。
【0107】
本方法においては、次に、図15(d)に示すように、記録層30上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部31を記録層30内に有する磁気ディスクX2を製造することができる。
【0108】
本方法においては、図15(c)を参照して上述したように、記録層30内にグラニュラ構造部31aないし記録磁性部31をパターン形成することができる。また、本方法においては、図15(b)に示すように、記録層30を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層30’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層30の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部31を記録層30内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX2を製造するのに、適する。
【0109】
図16は、磁気ディスクX2の第3の製造方法を表す。本方法においては、まず、図16(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13を形成したうえで、軟磁性層13上に薄膜パターン28を形成する。軟磁性層13の形成手法については、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したのと同様である。各薄膜パターン28は、本実施形態では、上述の記録磁性部31のグラニュラ構造部31aに対応するパターン形状を有し、次の加熱工程における加熱温度にて溶融する低融点材料よりなる。そのような薄膜パターン28の構成材料、厚さ、および形成手法については、磁気ディスクX1の第8の製造方法における薄膜パターン28に関して上述したのと同様である。
【0110】
次に、図16(b)に示すように、軟磁性層13上にプレ記録層30’を形成する。プレ記録層30’の形成手法は、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したプレ記録層12’の形成手法と同様である。
【0111】
次に、図16(c)に示すように、プレ記録層30’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部31を形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程では、このような加熱温度にて、薄膜パターン28が溶融され、プレ記録層30’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)内では、溶融状態にある薄膜パターン28が起点となって相分離が誘発される。具体的には、プレ記録層30’における薄膜パターン28上の部位では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、強磁性相と非磁性相とが相分離し、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造のグラニュラ構造部31aが生じる。プレ記録層30’にてグラニュラ構造部31aが形成されない箇所は、非磁性部31b,32を構成することとなる。本工程を経ると、薄膜パターン28の全部または一部が記録層30内に拡散して事実上消失する場合がある。
【0112】
本方法においては、次に、図16(d)に示すように、記録層30上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部31を記録層30内に有する磁気ディスクX2を製造することができる。
【0113】
本方法においては、図16(c)を参照して上述したように、記録層30内にグラニュラ構造部31aないし記録磁性部31をパターン形成することができる。また、本方法においては、図16(b)に示すように、記録層30を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層30’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層30の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部31を記録層30内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX2を製造するのに、適する。
【実施例】
【0114】
固溶体膜である複数のFeCoNiB膜を、サンプル膜体として作製した。各サンプル膜体の作製においては、スパッタリング法により、所定組成比で厚さ50nmのFeCoNiB膜をガラス基板上に形成した。強磁性材料たるFeCoNi内の組成比を全てのサンプル膜体において同一とし、固溶体膜における非磁性材料たるBについて、サンプル膜体ごとに異なる含有率を設定した。具体的には、FeCoNi内の組成比をFe65Co30Ni5とし、その含有率を30〜100atom.%の範囲のいずれかとし、Bの含有率を0〜70atom.%の範囲のいずれかとした。
【0115】
各サンプル膜体について、飽和磁化、保磁力、および強磁性粒サイズ(柱状グラニュラ粒子の径)を測定した。これらの結果を図17〜図19のグラフに表す。図17のグラフでは、横軸にて固溶体膜のB含有率(atom.%)を表し、縦軸にて固溶体膜の飽和磁化(emu/cc)を表し、各サンプル膜体の測定に係るプロットを実線17Aで結ぶ。図18のグラフでは、横軸にて固溶体膜のB含有率(atom.%)を表し、縦軸にて固溶体膜の保磁力(kOe)を表し、各サンプル膜体の測定に係るプロットを実線18Aで結ぶ。図19のグラフでは、横軸にて固溶体膜のB含有率(atom.%)を表し、縦軸にて固溶体膜内の強磁性粒サイズ(nm)を表し、各サンプル膜体の測定に係るプロットを実線19Aで結ぶ。
【0116】
各サンプル膜体について、150℃で60秒間の加熱処理を施した後、飽和磁化、保磁力、および強磁性粒サイズ(柱状グラニュラ粒子の径)を測定した。これらの結果を図17〜図19のグラフに表す。図17〜図19のグラフでは、当該加熱処理後の各サンプル膜体の測定に係るプロットを破線17B,18B,19Bで結ぶ。
【0117】
図17のグラフからは、B含有率がおよそ30〜55atom.%の範囲にある場合に、加熱処理によってFeCoNiB膜の飽和磁化が大きく変化することが解る。加熱処理前には(実線17A)、B含有率が0atom.%から約25atom.%までの範囲では、FeCoNiとBとが侵入型固溶し、FeCoNiが構成する強磁性結晶(格子)が保たれ、磁性原子どうしの磁気的相互作用がほとんど変化しないので、FeCoNiB膜の飽和磁化は略一定である。B含有率25atom.%あたりで、FeCoNiB膜は過飽和状態に達し始めるので、FeCoNiが構成する強磁性結晶(格子)の一部が壊れ始め、磁性原子どうしの磁気的相互作用が弱くなり始める。B含有率約25atom.%から約35atom.%にかけて、FeCoNiB膜の飽和磁化は急峻に低下する。B含有率が約35atom.%以上では、FeCoNiが構成する強磁性結晶(格子)の大部分が壊れているので、磁性原子どうしの磁気的相互作用は極めて弱く、従って、FeCoNiB膜の飽和磁化は極めて小さい。一方、加熱処理後には(破線17B)、B含有率が0atom.%から約25atom.%までの範囲では、加熱処理によって非磁性相が新たに形成されて、単位体積あたりに占める非磁性相の割合が増加するので、加熱処理前よりも飽和磁化は低下する。B含有率が0atom.%から約50atom.%までの範囲では、純粋な強磁性相(大きな飽和磁化を有する相)の共存下において、B含有率が増加するほど、単位体積あたりに占める非磁性相の割合が徐々に増加するので、FeCoNiB膜の飽和磁化は緩やかに低下する。FeCoNiB膜においては、B含有率が約25atom.%以上で過飽和固溶状態であるところ、B含有率が特に約25atom.%以上の場合にFeCoNiB膜にて生ずる相分離は、主にスピノーダル分解であると考えられる。B含有率50atom.%あたりで、非磁性相による飽和磁化の低減効果の方が、純粋な強磁性相による飽和磁化の低減を軽減する効果よりも相当程度に優勢となり(即ち、単位体積当たりに占める非磁性相の割合が過剰となり)、従って、FeCoNiB膜の飽和磁化は急峻に低下し始める。
【0118】
図18のグラフからは、B含有率がおよそ10〜55atom.%の範囲にある場合に、加熱処理によってFeCoNiB膜の保磁力が大きく変化することが解る。飽和磁化よりも保磁力の方が構造に対して敏感な物性値であるところ、加熱処理前には(実線18A)、0atom.%からB含有率が増大するのに伴い、FeCoNiB膜の保磁力は急峻に低下する。一方、加熱処理後には(破線18B)、純粋な強磁性相(大きな飽和磁化を有する相)が生じるので、B含有率が増加して単位体積あたりの非磁性相の割合が比例的に増加しても、FeCoNiB膜の飽和磁化の低下は緩やかである。
【0119】
図19のグラフからは、過飽和固溶状態にあるFeCoNiB膜が加熱処理によって相分離を生じても強磁性粒サイズが過大とならないことが解る。B含有率が約25atom.%以上では、加熱処理前(実線19A)と加熱処理後(実線19B)とで、FeCoNiB膜における強磁性粒子サイズに大きな変化はない。B含有率が約25atom.%以上では、加熱処理によりFeCoNiB膜にてスピノーダル分解が生じ強磁性相が形成されても、有意な割合の非磁性相が共存するので、非磁性相によって強磁性相が囲まれて強磁性相どうしの結合が妨げられ、強磁性粒サイズは抑制される。B含有率が約25atom.%以下では、B含有率が小さいほど、非磁性相によって強磁性相が囲まれる状態に至りにくくなり(即ち、非磁性相は孤立的に存在する傾向が増大し)、強磁性粒は成長しやすくなる。
【0120】
非磁性材料としてBに代えてCを採用した場合においても、加熱処理前後の飽和磁化、保磁力、および強磁性粒サイズについて、図17〜図19に示す結果と同様の結果が得られた。
【0121】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0122】
(付記1)強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して非一様にエネルギを付与することにより、当該非磁性膜から、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部と非磁性部とを有する記録層を形成する工程を含む、磁気記録媒体製造方法。
(付記2)強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、凸部を有するスタンパにおける当該凸部を当接させる工程と、
前記スタンパの前記凸部を介して前記非磁性膜を加熱することにより、前記非磁性膜における当該加熱箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程とを含む、磁気記録媒体製造方法。
(付記3)強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、収束ビームを照射することにより、前記非磁性膜における当該照射箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程を含む、磁気記録媒体製造方法。
(付記4)強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、開口部を有するマスクを介してレーザ光またはX線を照射することにより、前記非磁性膜における当該照射箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程を含む、磁気記録媒体製造方法。
(付記5)前記マスクは、前記非磁性膜に密着して配置される、付記4に記載の磁気記録媒体製造方法。
(付記6)強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して圧痕を形成する工程と、
加熱により、前記非磁性膜内に、前記圧痕を起点として、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
(付記7)基材の表面の部分領域に微細凹凸を形成する工程と、
前記基材上に、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を形成する工程と、
加熱により、前記非磁性膜における前記基材表面の微細凹凸領域上にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
(付記8)基材上に、当該基材表面とは異なる表面エネルギを有する薄膜パターンを形成する工程と、
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を、前記薄膜パターンを覆うように前記基材上に形成する工程と、
加熱により、前記非磁性膜における前記薄膜パターン上にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
(付記9)基材上に、低融点材料からなる薄膜パターンを形成する工程と、
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を、前記薄膜パターンを覆うように前記基材上に形成する工程と、
加熱により、前記薄膜パターンを溶融しつつ、前記非磁性膜における前記薄膜パターンに対応する位置にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
(付記10)連続膜体である記録層を備え、
前記記録層は、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部と、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性部とを有する、磁気記録媒体。
(付記11)前記非磁性材料は、Bおよび/またはCである、付記1から10のいずれか一つに記載の磁気記録媒体製造方法または磁気記録媒体。
(付記12)前記強磁性材料は、Fe、Co、またはNiを含む、付記1から11のいずれか一つに記載の磁気記録媒体製造方法または磁気記録媒体。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るに磁気ディスクの平面図である。
【図2】図1に示す磁気ディスクの部分拡大断面図である。
【図3】図1に示す磁気ディスクにおける記録層の部分拡大平面図である。
【図4】図1に示す磁気ディスクの第1の製造方法を表す。
【図5】図1に示す磁気ディスクの第2の製造方法を表す。
【図6】図1に示す磁気ディスクの第3の製造方法を表す。
【図7】図1に示す磁気ディスクの第4の製造方法を表す。
【図8】図1に示す磁気ディスクの第5の製造方法における一部の工程を表す。
【図9】図8の後に続く工程を表す。
【図10】図1に示す磁気ディスクの第6の製造方法を表す。
【図11】図1に示す磁気ディスクの第7の製造方法を表す。
【図12】図1に示す磁気ディスクの第8の製造方法を表す。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスクの部分断面図である。
【図14】図13に示す磁気ディスクの第1の製造方法を表す。
【図15】図13に示す磁気ディスクの第2の製造方法を表す。
【図16】図13に示す磁気ディスクの第3の製造方法を表す。
【図17】サンプル膜体における飽和磁化のB含有率依存性を表す。
【図18】サンプル膜体における保磁力のB含有率依存性を表す。
【図19】サンプル膜体における強磁性粒サイズのB含有率依存性を表す。
【図20】ディスクリートトラックメディアである従来の磁気ディスクの平面図である。
【図21】図20に示す磁気ディスクの部分拡大断面図である。
【図22】図20に示す磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図23】図22の後に続く工程を表す。
【符号の説明】
【0124】
X1,X2,40 磁気ディスク
11,41 ディスク基板
12,30,42 記録層
12’,30’ プレ記録層
12A,31,42A 記録磁性部
12B,31b,32,42B 非磁性部
12a 強磁性相
12b 非磁性相
13 軟磁性層
13a,13b 微細凹凸領域
14,43 保護層
15,44 記録面
21,26 スタンパ
22 収束ビーム
23,25 マスク
24 光
27,28 薄膜パターン
31a グラニュラ構造部
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有する磁気記録媒体を製造するための方法、および、そのような磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクなどの記憶装置を構成するための記録媒体として、磁気ディスク(磁気記録媒体)が知られている。磁気ディスクは、ディスク基板と所定の磁性構造を有する記録層とを含む積層構造を有する。コンピュータシステムにおける情報処理量の増大に伴い、磁気ディスクについては高記録密度化の要求が高まっている。
【0003】
磁気ディスクへの情報記録に際しては、磁気ディスクの記録面に対して記録用の磁気ヘッドが近接配置(浮上配置)され、当該磁気ヘッドにより、記録層に対し、その保磁力より強い記録磁界が印加される。磁気ディスクに対して磁気ヘッドを相対移動させつつ磁気ヘッドからの記録磁界の向きを順次反転させることにより、記録層の情報トラックにて、磁化方向が順次反転する複数の記録マーク(磁区)がディスク周方向に連なって形成される。このとき、記録磁界方向を反転させるタイミングが制御されることにより、各々に所定の長さで記録マークが形成される。このようにして、記録層において、磁化方向の変化として所定の信号ないし情報が記録される。
【0004】
また、磁気ディスクの技術分野においては、高記録密度化を図るのに好ましい媒体として、いわゆるディスクリートトラックメディア(DTM)やパターンドメディア(PM)など、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有する磁気ディスクが知られている。このような磁気ディスクについては、例えば下記の特許文献1〜3に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−71467号公報
【特許文献2】特開2005−166115号公報
【特許文献3】特開2005−293730号公報
【0006】
図20および図21は、DTMである従来の磁気ディスク40を表す。図20は、磁気ディスク40の平面図であり、図21は、磁気ディスク40のディスク径方向に沿った部分拡大断面図である。
【0007】
磁気ディスク40は、ディスク基板41、記録層42、および保護層43(図20では図示略)からなる積層構造を有する。記録層42は、複数の記録磁性部42Aと複数の非磁性部42Bとからなる。記録磁性部42Aは、図20にて一部を模式的に太線で示すように磁気ディスク40の回転軸心A’を共通中心としてディスク基板41上にて同心円状に配置され、情報トラックを構成する。また、記録磁性部42Aは所定の磁性材料よりなる。一方、非磁性部42Bは、所定の非磁性材料よりなり、記録磁性部42A間に介在する。保護層43の露出面は磁気ディスク40の記録面44をなす。
【0008】
このような磁気ディスク40への情報記録時には、磁気ディスク40の記録面44に対して記録用の磁気ヘッドが浮上配置され、当該磁気ヘッドによる記録磁界の印加によって、記録層42の一の記録磁性部42Aにて、磁化方向が順次反転する複数の記録マーク(磁区)がディスク周方向に連なって形成される。
【0009】
図22および図23は、従来の磁気ディスク40の製造方法を表す。磁気ディスク40の製造においては、まず、図22(a)に示すように、ディスク基板41上に磁性膜42A’が形成される。次に、図22(b)に示すように、磁性膜42A’上にフォトレジスト膜51が形成される。次に、図22(c)に示すように、リソグラフィ法により、フォトレジスト膜51からレジストパターン52が形成される。レジストパターン52は、上述の非磁性部42Bのパターン形状に対応する開口部52aを有する。当該リソグラフィ法においては、具体的には、所定装置によって所定パターン(潜像)がフォトレジスト膜51に露光形成された後、当該フォトレジスト膜51に現像処理が施される。このようにして、磁性膜42A’上にレジストパターン52が形成される。この後、図22(d)に示すように、レジストパターン52がマスクとして利用されて、磁性膜42A’に対して所定のエッチングが施され、上述の記録磁性部42Aがパターン形成される。
【0010】
磁気ディスク40の製造においては、次に、図23(a)に示すようにレジストパターン52が除去される。次に、図23(b)に示すように非磁性材料42B’が堆積される。具体的には、スパッタリング法により、記録磁性部42A間の隙間および記録磁性部42A上に非磁性材料42B’が堆積される。次に、図23(c)に示すように、堆積された非磁性材料42B’において記録磁性部42A間の隙間にない過剰部分を、例えば機械的研磨により除去する。本工程により、非磁性部42Bが形成され、記録層42が形成されることとなる。この後、図23(d)に示すように、記録層42上に保護層43が形成される。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部42Aを記録層42内に有する磁気ディスク40が製造される。
【0011】
本方法によると、記録面44において充分な平坦性を得ることが困難である。本方法では、図22(d)を参照して上述したように、磁性膜42A’に対するエッチングにより記録磁性部42Aがパターン形成された後、図23(b)に示すように、記録磁性部42A間の隙間を充填すべく非磁性材料42B’が堆積され、そして、図23(c)に示すように、非磁性材料42B’における過剰部分が除去されて記録層42が形成される。このよう過程を経て形成される非連続膜体である記録層42の図中上面については、充分な平坦性を得ることが困難であり、従って、記録層42の表面平坦性が反映される記録面44において充分な平坦性を得ることは困難なのである。
【0012】
一般に、磁気ディスクないしその記録層における面内記録密度が大きいほど、情報記録再生時に磁気ディスクに対して浮上配置される磁気ヘッドについては、より小さな浮上量(磁気ヘッドと記録面の間の距離)が要求される傾向にあるところ、小さな浮上量にて磁気ヘッドが適切に動作するためには、磁気ディスクの記録面は充分に平坦でなければならない。要求される浮上量が小さいほど(即ち、磁気ディスクの面内記録密度か大きいほど)、記録面に求められる平坦性は高くなる傾向にある。
【0013】
しかしながら、上述の従来の方法によると、記録層42ないし記録面44において充分な平坦性を得ることは困難である。このような方法により得られる磁気ディスク40は、磁気ヘッドの低浮上量化を図るうえで好ましくなく、従って、高記録密度化を図るうえで好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、以上のような事情の下で考え出されたものであり、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適した方法、および、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ高い記録面平坦性を実現するのに適した磁気記録媒体を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して非一様にエネルギを付与することにより、当該非磁性膜から、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部と非磁性部とを有する記録層を形成する工程を含む。
【0016】
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態は、熱力学的に準安定状態にあるので、所定の刺激に誘発されて、より安定な状態(例えば、真の平衡状態)に至るまで、当該強磁性材料を主成分とする強磁性相と当該非磁性材料を主成分とする非磁性相とが相分離(スピノーダル分解)し、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を生じ得る。本発明においては、この現象を磁気記録媒体の記録層の形成に利用して、記録層内の記録磁性部をパターン形成する。具体的には、本発明では、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して非一様にエネルギを付与して当該過飽和固溶非磁性膜における所定領域に刺激を与えることによって、当該過飽和固溶非磁性膜にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造の領域を生じさせ、実質的に記録磁性部をパターン形成し、従って、そのような所定パターンを有する記録磁性部を含む記録層を形成する。強磁性グラニュラ構造領域については、各強磁性グラニュラ構造領域が一の記録磁性部を構成するように、或は、複数の強磁性グラニュラ構造領域が一の記録磁性部を構成するように、所定のパターンで生じさせる。
【0017】
また、本方法においては、そのような記録層を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層の表面平坦性が反映される記録面において、充分な平坦性を得るのに適する。
【0018】
以上のように、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法は、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに、適するのである。記録面の平坦性の高い磁気記録媒体は、磁気ヘッドの低浮上量化を図るうえで好ましく、従って、高記録密度化を図るうえで好ましい。
【0019】
本発明の第2の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、凸部を有するスタンパにおける当該凸部を当接させる工程(第1の工程)と、スタンパの凸部を介して非磁性膜を加熱することにより、非磁性膜における当該加熱箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程(第2の工程)とを含む。本方法においては、第1の工程と第2の工程とを順次行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0020】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。発熱体(スタンパ)の接触による局所的な加熱は、過飽和固溶非磁性膜に対する非一様なエネルギ付与手法として効果的である。
【0021】
本発明の第3の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、収束ビームを照射することにより、非磁性膜における当該照射箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程を含む。収束ビームには、収束された電子線や、収束されたレーザ光線が含まれる。
【0022】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。収束ビームの局所的な照射ないしそれによる局所的な加熱は、過飽和固溶非磁性膜に対する非一様なエネルギ付与手法として効果的である。
【0023】
本発明の第4の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、開口部を有するマスクを介してレーザ光またはX線を照射することにより、非磁性膜における当該照射箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程を含む。
【0024】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。マスクを介してのレーザ光またはX線の照射ないしそれによる局所的な加熱は、過飽和固溶非磁性膜に対する非一様なエネルギ付与手法として効果的である。
【0025】
好ましくは、マスクは、過飽和固溶非磁性膜に密着して配置される。このような構成によると、当該マスクにおける過飽和固溶非磁性膜側にて生ずる近接場光も、過飽和固溶非磁性膜に対する付与エネルギとして利用することができる場合がある。近接場光の利用は、レーザ光またはX線の照射出力を低減するうえで好ましい。
【0026】
本発明の第5の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して圧痕を形成する工程と、加熱により、非磁性膜内に、当該圧痕を起点として、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程とを含む。圧痕は、所定の突起部の圧入により過飽和固溶非磁性膜に形成されるものである。
【0027】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。所定の突起部の圧入により過飽和固溶非磁性膜に形成される圧痕は、所定の温度条件下の過飽和固溶非磁性膜において、強磁性材料を主成分とする強磁性相と非磁性材料を主成分とする非磁性相とが相分離することを誘発する起点として機能し得る。
【0028】
本発明の第6の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、基材の表面の部分領域に微細凹凸を形成する工程と、基材上に、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を形成する工程と、加熱により、非磁性膜における基材表面の微細凹凸領域上にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程とを含む。
【0029】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。過飽和固溶非磁性膜に接する微細凹凸は、所定の温度条件下の過飽和固溶非磁性膜において、強磁性材料を主成分とする強磁性相と非磁性材料を主成分とする非磁性相とが相分離することを誘発する起点として機能し得る。
【0030】
本発明の第7の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、基材上に、当該基材表面とは異なる表面エネルギを有する薄膜パターンを形成する工程と、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を、薄膜パターンを覆うように基材上に形成する工程と、加熱により、非磁性膜における薄膜パターン上にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程とを含む。
【0031】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。基材表面とは異なる表面エネルギを有して過飽和固溶非磁性膜に接する薄膜パターンは、所定の温度条件下の過飽和固溶非磁性膜において、強磁性材料を主成分とする強磁性相と非磁性材料を主成分とする非磁性相とが相分離することを誘発する起点として機能する場合がある。
【0032】
本発明の第8の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、基材上に、低融点材料からなる薄膜パターンを形成する工程と、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を、薄膜パターンを覆うように基材上に形成する工程と、加熱により、薄膜パターンを溶融しつつ、非磁性膜における薄膜パターンに対応する位置にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程とを含む。
【0033】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。基材や過飽和固溶非磁性膜より低融点の材料よりなり且つ過飽和固溶非磁性膜に接する薄膜パターンは、所定の温度条件下の過飽和固溶非磁性膜において、強磁性材料を主成分とする強磁性相と非磁性材料を主成分とする非磁性相とが相分離することを誘発する起点として機能する場合がある。
【0034】
本発明の第9の側面によると磁気記録媒体が提供される。この磁気記録媒体は、連続膜体である記録層を備える。記録層は、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部と、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性部とを有する。
【0035】
本磁気記録媒体は、本発明の第1から第8の側面に係るいずれの磁気記録媒体製造方法によっても製造することができる。本磁気記録媒体の製造過程においては、本発明の第1の側面に関して上述した技術的利益を享受することが可能であり、従って、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有する本磁気記録媒体は、高い記録面平坦性を実現するのに適している。
【0036】
本発明の第1から第9の側面において、好ましくは、非磁性材料は、Bおよび/またはCである。また、好ましくは、強磁性材料は、Fe、Co、またはNiを含む。BおよびCは、原子半径が比較的小さく、原子半径の比較的大きなFe,Co,Niなどとは、これらがなす結晶構造における格子点の隙間に侵入して侵入型の固溶体を構成することができる。本発明では、過飽和固溶非磁性膜が侵入型固溶体である場合、強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から過剰な非磁性材料が掃き出され、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、強磁性相と非磁性相とが相分離することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係る磁気ディスクX1を表す。図1は、磁気ディスクX1の平面図であり、図2は、図1の磁気ディスクX1のディスク径方向に沿った部分拡大断面図である。
【0038】
磁気ディスクX1は、ディスク基板11、記録層12、軟磁性層13、および保護層14(図1では図示略)を含む積層構造を有し、ディスクリートトラックメディア(DTM)として構成されたものである。
【0039】
ディスク基板11は、主に、磁気ディスクX1の剛性を確保するための部位であり、例えば、アルミニウム合金、ガラス、または樹脂よりなる。
【0040】
記録層12は、図2に示すように、複数の記録磁性部12Aおよび複数の非磁性部12Bを有する。記録磁性部12Aは、図1にて一部を模式的に太線で示すように磁気ディスクX1の回転軸心Aを共通中心として同心円状に配置され、情報トラックを構成する。また、記録磁性部12Aは、垂直磁気異方性の強磁性グラニュラ構造を有する。具体的には、記録磁性部12Aは、図3に示すように、柱状で垂直磁気異方性を有する強磁性グラニュラ粒子としての強磁性相12aと、当該強磁性グラニュラ粒子間に介在し且つ実質的に磁性を有しない(即ち、少なくとも強磁性相12aに比して充分に磁化の小さい)非磁性相12bとからなる(図3は、磁気ディスクX1において保護層14を省略して表した、記録層12の部分拡大平面図である)。強磁性相12aは、Fe,Co,Niからなる群より選択される強磁性の単体金属、または、当該金属を含んでなる強磁性合金を、主成分として含む。非磁性相12bは、Bおよび/またはCである非磁性材料を主成分として含む。
【0041】
非磁性部12Bは、記録磁性部12A間に介在して実質的に磁性を有しない(即ち、少なくとも記録磁性部12Aないし強磁性相12aに比して充分に磁化の小さい)部位である。また、非磁性部12Bは、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある。当該強磁性材料は、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む。当該非磁性材料は、BおよびCを少なくとも一種類含む。BおよびCは、原子半径が比較的小さく、原子半径の比較的大きなFe,Co,Niなどとは、これらがなす結晶構造における格子点の隙間に侵入して侵入型の固溶体を構成することができる。非磁性部12Bは、このような侵入型固溶状態にあり、且つ、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にあるのである。
【0042】
以上のような記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bからなる記録層12は、連続膜体である。また、記録層12の厚さは例えば5〜50nmであり、記録磁性部12Aの幅は例えば10〜100nmであり、非磁性部12Bの幅は例えば10〜100nmである。
【0043】
軟磁性層13は、記録時等に稼働する磁気ヘッドからの磁束を再び当該磁気ヘッドに還流させる磁路を磁気ディスクX1内に効率よく形成するためのものであり、高透磁率を有して大きな飽和磁化を有するとともに小さな保磁力を有する軟磁性材料よりなる。軟磁性層13を構成するための軟磁性材料としては、例えば、FeC、FeNi、FeCoB、FeCoSiC、およびFeCo−AlOが挙げられる。軟磁性層13の厚さは例えば50〜1000nmである。
【0044】
保護層14は、記録層12や軟磁性層13などを外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボンよりなる。保護層14の露出面は磁気ディスクX1の記録面15をなす。
【0045】
以上のようなディスク基板11、記録層12、軟磁性層13、および保護層14を含む磁気ディスクX1の構造中には、必要に応じて他の層や要素が含まれてもよい。
【0046】
このような磁気ディスクX1の情報記録時には、磁気ディスクX1の記録面15に対して記録用の磁気ヘッド(図示略)が浮上配置され、当該磁気ヘッドによる記録磁界の印加によって、記録層12の一の記録磁性部12Aにて、磁化方向が順次反転する複数の記録マーク(磁区)がディスク周方向に連なって形成される。このとき、情報記録進行中であって磁界が順次印加される記録磁性部12Aと、これの隣りの記録磁性部12Aとが、非磁性部12Bにより分断されているため、当該隣りの記録磁性部12Aの記録マークが消失ないし劣化するというクロスライト現象が抑制される。クロスライト現象が抑制される磁気ディスクは、トラックの狭ピッチ化ないし高記録密度化を図るうえで、好ましい。
【0047】
図4は、磁気ディスクX1の第1の製造方法を表す。本方法においては、まず、図4(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13およびプレ記録層12’を順次形成する。軟磁性層13の形成においては、例えばスパッタリング法により、ディスク基板11上に上述の軟磁性材料を成膜する。プレ記録層12’は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜である。当該強磁性材料は、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む。当該非磁性材料は、BおよびCを少なくとも一種類含む。BおよびCは、原子半径が比較的小さく、原子半径の比較的大きなFe,Co,Niなどとは、これらがなす結晶構造における格子点の隙間に侵入して侵入型の固溶体を構成することができる。プレ記録層12’は、このような侵入型固溶状態にあり、且つ、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にあるのである。プレ記録層12’の形成においては、例えばスパッタリング法により、そのような状態となる組成比で、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料と、BおよびCを少なくとも一種類含む非磁性材料とを、堆積成長させる。プレ記録層12’における強磁性材料の組成比は、好ましくは45〜70atom.%である。非磁性材料の組成比は、好ましくは30〜55atom.%であり、より好ましくは35〜50atom.%である。
【0048】
本方法においては、次に、図4(b)に示すように、スタンパ21をプレ記録層12’に押し当てる。スタンパ21は、凸部21aを有し、例えばNiやNi合金よりなる。凸部21aは、上述の記録磁性部12Aに対応するパターン形状を有する。また、スタンパ21は、図外の発熱機構から熱が伝わるように当該発熱機構と連結されている。本工程では、スタンパ21の凸部21aの先端を、位置合わせしつつ、プレ記録層12’に対して当接させる。
【0049】
次に、図外の発熱機構を駆動して、図4(c)に示すように、スタンパ21の凸部21aを介してプレ記録層12’を加熱し、当該加熱箇所にて記録磁性部12Aを形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。
【0050】
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態は、熱力学的に準安定状態にあるので、所定の刺激に誘発されて、より安定な状態(例えば、真の平衡状態)に至るまで、当該強磁性材料を主成分とする強磁性相と当該非磁性材料を主成分とする非磁性相とが相分離(スピノーダル分解)し、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を生じ得る。本工程においては、この現象を利用して、記録磁性部12Aをパターン形成する。
【0051】
具体的には、プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)においてスタンパ21により加熱される箇所では、スタンパ21からの熱エネルギに誘発されて、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。本工程では、このようにして、プレ記録層12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜体としての記録層12が形成される。
【0052】
本方法においては、次に、スタンパ21を記録層12から離した後、図4(d)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成においては、例えばスパッタリング法により、保護層14に関して上述した構成材料を記録層12上に成膜する。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0053】
本方法においては、図4(c)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図4(a)を参照して上述したように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。
【0054】
以上のように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1は、磁気ヘッドの低浮上量化を図るうえで好ましく、従って、高記録密度化を図るうえで好ましい。
【0055】
本方法においては、図4(b)を参照して上述した工程と図4(c)を参照して上述した工程とを順次行うのに代えて、予め所定温度に昇温したスタンパ21を図4(c)に示すようにプレ記録層12’に押し当てることにより、記録層12を形成してもよい。
【0056】
図5は、磁気ディスクX1の第2の製造方法を表す。本方法においては、まず、図5(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13およびプレ記録層12’を順次形成する。軟磁性層13およびプレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0057】
次に、図5(b)に示すように、プレ記録層12’において記録磁性部12Aを形成すべき箇所に収束ビーム22を照射し、これにより、プレ記録層12’における当該照射箇所にて記録磁性部12Aを形成する。収束ビーム22は、例えば、収束された電子線や、収束されたレーザ光線である。収束ビーム22のビーム径は例えば10〜100nmである。照射時間は例えば0.1〜10秒である。
【0058】
プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)において収束ビーム22が照射される箇所では、当該局所的な照射ないしそれによる局所的な加熱に誘発されて、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。本工程では、このようにして、プレ記録層12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜体としての記録層12が形成される。
【0059】
本方法においては、次に、図5(c)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0060】
本方法においては、図5(b)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図5(a)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。
【0061】
図6は、磁気ディスクX1の第3の製造方法を表す。本方法においては、まず、図6(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13およびプレ記録層12’を順次形成する。軟磁性層13およびプレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0062】
次に、図6(b)に示すように、マスク23を、位置合わせしつつ、プレ記録層12’に対して対向配置する。マスク23は、上述の記録磁性部12Aのパターン形状に対応する開口部23aを有し、次の照射工程にて用いられる光(電磁波)24を充分に遮断する材料よりなる。マスク23の構成材料としは、例えばCr合金やHf合金を採用することができる。
【0063】
次に、図6(c)に示すように、マスク23を介してプレ記録層12’に対して光(電磁波)24を照射することにより、プレ記録層12’における当該照射箇所にて記録磁性部12Aを形成する。光24は、例えばレーザ光線やX線であり、照射時間は例えば1〜60秒である。
【0064】
プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)において光24が照射される箇所では、当該局所的な照射およびそれによる局所的な加熱に誘発されて、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。本工程では、このようにして、プレ記録層12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜体としての記録層12が形成される。
【0065】
本方法においては、次に、図6(d)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0066】
本方法においては、図6(c)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図6(a)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。
【0067】
図7は、磁気ディスクX1の第4の製造方法を表す。本方法においては、まず、図7(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13およびプレ記録層12’を順次形成する。軟磁性層13およびプレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0068】
次に、図7(b)に示すように、プレ記録層12’上にマスク25を形成する。マスク25は、上述の記録磁性部12Aのパターン形状に対応する開口部25aを有する。マスク25の形成においては、例えば、スパッタリング法により所定の金属材料をプレ記録層12’上に成膜した後、当該金属膜をリソグラフィ法によりパターニングする。マスク25の厚さは例えば5〜50nmである。マスク25は、次の照射工程にて用いられる光(電磁波)24を充分に遮断する材料よりなる。マスク25の構成材料としは、例えばCr合金やHf合金を採用することができる。
【0069】
次に、図7(c)に示すように、マスク25を介してプレ記録層12’に対して光(電磁波)24を照射することにより、プレ記録層12’における当該照射箇所にて記録磁性部12Aを形成する。光24は、例えばレーザ光線やX線であり、照射時間は例えば1〜60秒である。
【0070】
プレ記録層12’上に密着形成されているマスク25を介して光24をプレ記録層12’に照射すると、マスク25におけるプレ記録層12’側にて近接場光が生じ、当該近接場光も、プレ記録層12’に対する付与エネルギとして利用することができる。近接場光の利用は、光24の照射出力を低減するうえで好ましい。また、近接場光を利用すると、使用光の波長以下(即ち、使用光の回折限界以下)のサイズの微小露光が可能となることから、微細なパターンを形成しやすい。
【0071】
プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)において光24およびそれに由来する近接場光が照射される箇所では、当該局所的な照射およびそれによる局所的な加熱に誘発されて、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。本工程では、このようにして、プレ記録層12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜体としての記録層12が形成される。
【0072】
本方法においては、次に、図7(d)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0073】
本方法においては、図7(c)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図7(a)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。
【0074】
図8および図9は、磁気ディスクX1の第5の製造方法を表す。本方法においては、まず、図8(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13およびプレ記録層12’を順次形成する。軟磁性層13およびプレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0075】
次に、図8(b)および図8(c)に示すように、プレ記録層12’において上述の記録磁性部12Aを形成すべき箇所内に、スタンパ26を使用して圧痕12’’を形成する。スタンパ26は突部26aを有し、本工程では、当該突部26aをプレ記録層12’に部分的に圧入する。
【0076】
次に、図9(a)に示すように、プレ記録層12’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部12Aを形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程において、プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)内では、圧痕12’’が起点となって相分離が誘発される。具体的には、起点たる圧痕12’’の近傍では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる(相分離の生ずる領域についての例えば図9(a)に示す幅は、圧痕12’’を形成する際にプレ記録層12’表面に加える負荷や、圧痕12’’の深さや幅を調整することによって、制御することが可能である)。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。この後、図9(b)に示すように、プレ記録層12’を機械的に研磨する。このようにして、プレ記録層12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜体としての記録層12が形成される。
【0077】
本方法においては、次に、図9(c)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0078】
本方法においては、図9(a)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図8(a)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。
【0079】
図10は、磁気ディスクX1の第6の製造方法を表す。本方法においては、まず、図10(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13を形成したうえで、軟磁性層13の表面に微細凹凸領域13aを形成する。軟磁性層13の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。微細凹凸領域13aは、上述の記録磁性部12Aに対応するパターン形状を有し、微細凹凸領域13aの表面粗さは例えば0.5〜2nmである。このような微細凹凸領域13aは、例えば、所定のマスクを軟磁性層13上に設けたうえで当該軟磁性層13にドライエッチング処理を施すことにより、形成することができる。
【0080】
次に、図10(b)に示すように、軟磁性層13上にプレ記録層12’を形成する。プレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0081】
次に、図10(c)に示すように、プレ記録層12’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部12Aを形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程において、プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)内では、軟磁性層13表面の微細凹凸領域13aの微細凹凸形状が起点となって相分離が誘発される。具体的には、プレ記録層12’における微細凹凸領域13a上の部位では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。
【0082】
本方法においては、次に、図10(d)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0083】
本方法においては、図10(c)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図10(b)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。
【0084】
図11は、磁気ディスクX1の第7の製造方法を表す。本方法においては、まず、図11(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13を形成したうえで、軟磁性層13上に薄膜パターン27を形成する。軟磁性層13の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。薄膜パターン27は、上述の記録磁性部12Aに対応するパターン形状を有し、軟磁性層13表面とは異なる表面エネルギを有する。そのような薄膜パターン27は、例えばSiNやSiO2よりなる。薄膜パターン27の厚さは例えば0.5〜2nmである。薄膜パターン27の形成においては、まず、薄膜パターン27について上述した構成材料を軟磁性層13上に成膜する。次に、所定のマスクを使用して行うエッチングにより、当該材料膜をパターニングする。
【0085】
本方法においては、次に、図11(b)に示すように、薄膜パターン27を覆うようにして軟磁性層13上にプレ記録層12’を形成する。プレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0086】
次に、図11(c)に示すように、プレ記録層12’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部12Aを形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程において、プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)内では、軟磁性層13表面とは表面エネルギの異なる薄膜パターン27が起点となって相分離が誘発される。具体的には、プレ記録層12’における薄膜パターン27上の部位では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。
【0087】
本方法においては、次に、図11(d)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0088】
本方法においては、図11(c)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図11(b)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。
【0089】
図12は、磁気ディスクX1の第8の製造方法を表す。本方法においては、まず、図12(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13を形成したうえで、軟磁性層13上に薄膜パターン28を形成する。軟磁性層13の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。薄膜パターン28は、上述の記録磁性部12Aに対応するパターン形状を有し、次の加熱工程における加熱温度にて溶融可能な低融点材料よりなる。そのような薄膜パターン28は、例えばSn、In、Agよりなる。薄膜パターン28の厚さは例えば0.5〜2nmである。薄膜パターン28の形成においては、まず、薄膜パターン28について上述した構成材料を軟磁性層13上に成膜する。次に、所定のマスクを使用して行うエッチングにより、当該材料膜をパターニングする。
【0090】
本方法においては、次に、図12(b)に示すように、薄膜パターン28を覆うようにして軟磁性層13上にプレ記録層12’を形成する。プレ記録層12’の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
【0091】
次に、図12(c)に示すように、プレ記録層12’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部12Aを形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程では、このような加熱温度にて、薄膜パターン28が溶融され、プレ記録層12’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)内では、溶融状態にある薄膜パターン28が起点となって相分離が誘発される。具体的には、プレ記録層12’における薄膜パターン28上の部位では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、図3に示すように強磁性相12aと非磁性相12bとが相分離し、強磁性相12aおよび非磁性相12bが混在する強磁性グラニュラ構造の記録磁性部12Aが生じる。プレ記録層12’にて記録磁性部12Aが形成されない箇所は、非磁性部12Bを構成することとなる。本工程を経ると、薄膜パターン28の全部または一部が記録層12内に拡散して事実上消失する場合がある。
【0092】
本方法においては、次に、図12(d)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクX1を製造することができる。
【0093】
本方法においては、図12(c)を参照して上述したように、記録層12内に記録磁性部12Aをパターン形成することができる。また、本方法においては、図12(b)に示すように、記録層12を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層12’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX1を製造するのに、適する。
【0094】
図13は、本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスクX2のディスク径方向に沿った部分断面図である。磁気ディスクX2は、ディスク基板11、記録層30、軟磁性層13、および保護層14を含む積層構造を有し、DTMとして構成されたものである。磁気ディスクX2は、記録層12に代えて記録層30を有する点において、磁気ディスクX1と異なる。
【0095】
記録層30は、複数の記録磁性部31および複数の非磁性部32を有する。記録磁性部31は、磁気ディスクX1における記録磁性部12Aが同心円状に配置されて情報トラックを構成するのと同様に、磁気ディスクX2の回転軸心を共通中心として同心円状に配置されて情報トラックを構成する。また、各記録磁性部31は、複数のグラニュラ構造部31aおよび非磁性部31bからなる。グラニュラ構造部31aは、各々、ディスク周方向に延び、垂直磁気異方性の強磁性グラニュラ構造を有する。具体的には、グラニュラ構造部31aは、図3に示す記録磁性部12Aと同様に、柱状で垂直磁気異方性を有する強磁性グラニュラ粒子としての強磁性相と、当該強磁性グラニュラ粒子間に介在し且つ実質的に磁性を有しない(即ち、少なくとも強磁性相に比して充分に磁化の小さい)非磁性相とからなる。強磁性相は、Fe,Co,Niからなる群より選択される強磁性の単体金属または強磁性合金を主成分として含む。非磁性相は、Bおよび/Cである非磁性材料を主成分として含む。
【0096】
非磁性部31bは、グラニュラ構造部31a間に介在して実質的に磁性を有しない(即ち、少なくともグラニュラ構造部31aないしその強磁性相に比して充分に磁化の小さい)部位である。また、非磁性部31bは、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある。当該強磁性材料は、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む。当該非磁性材料は、BおよびCを少なくとも一種類含む。BおよびCは、原子半径が比較的小さく、原子半径の比較的大きなFe,Co,Niなどとは、これらがなす結晶構造における格子点の隙間に侵入して侵入型の固溶体を構成することができる。非磁性部31bは、このような侵入型固溶状態にあり、且つ、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にあるのである。
【0097】
非磁性部32は、記録磁性部31間に介在して実質的に磁性を有しない(即ち、少なくとも記録磁性部31のグラニュラ構造部31aないしその強磁性相に比して充分に磁化の小さい)部位である。また、非磁性部32は、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある。非磁性部32は、具体的には、非磁性部31bと同様の組成を有する。
【0098】
以上のような記録磁性部31および非磁性部32からなる記録層30は、連続膜体である。また、記録層30の厚さは例えば5〜50nmであり、記録磁性部31のグラニュラ構造部31aの幅は例えば5〜20nmであり、非磁性部31bの幅は例えば5〜20nmであり、非磁性部32の幅は例えば10〜100nmである。
【0099】
図14は、磁気ディスクX2の第1の製造方法を表す。本方法においては、まず、図14(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13を形成したうえで、当該軟磁性層13の表面に微細凹凸領域13bを形成する。軟磁性層13の形成手法については、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したのと同様である。各微細凹凸領域13bは、上述の記録磁性部31のグラニュラ構造部31aに対応するパターン形状を有し、微細凹凸領域13bの表面粗さは例えば0.5〜2nmである。このような微細凹凸領域13bは、例えば、所定のマスクを軟磁性層13上に設けたうえで当該軟磁性層13にドライエッチング処理を施すことにより、形成することができる。
【0100】
次に、図14(b)に示すように、軟磁性層13上にプレ記録層30’を形成する。プレ記録層30’の形成手法は、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したプレ記録層12’の形成手法と同様である。
【0101】
次に、図14(c)に示すように、プレ記録層30’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部31を形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程において、プレ記録層30’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)内では、軟磁性層13表面の微細凹凸領域13bの微細凹凸形状が起点となって相分離が誘発される。具体的には、プレ記録層30’における微細凹凸領域13b上の部位では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、強磁性相と非磁性相とが相分離し、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造のグラニュラ構造部31aが生じる。プレ記録層30’にてグラニュラ構造部31aが形成されない箇所は、非磁性部31b,32を構成することとなる。
【0102】
本方法においては、次に、図14(d)に示すように、記録層30上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部31を記録層30内に有する磁気ディスクX2を製造することができる。
【0103】
本方法においては、図14(c)を参照して上述したように、記録層30内にグラニュラ構造部31aないし記録磁性部31をパターン形成することができる。また、本方法においては、図14(b)に示すように、記録層30を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層30’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層30の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部31を記録層30内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX2を製造するのに、適する。
【0104】
図15は、磁気ディスクX2の第2の製造方法を表す。本方法においては、まず、図15(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13を形成したうえで、軟磁性層13上に薄膜パターン27を形成する。軟磁性層13の形成手法については、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したのと同様である。各薄膜パターン27は、本実施形態では、上述の記録磁性部31のグラニュラ構造部31aに対応するパターン形状を有し、軟磁性層13表面とは異なる表面エネルギを有する。そのような薄膜パターン27の構成材料、厚さ、および形成手法については、磁気ディスクX1の第7の製造方法における薄膜パターン27に関して上述したのと同様である。
【0105】
次に、図15(b)に示すように、軟磁性層13上にプレ記録層30’を形成する。プレ記録層30’の形成手法は、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したプレ記録層12’の形成手法と同様である。
【0106】
次に、図15(c)に示すように、プレ記録層30’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部31を形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程において、プレ記録層30’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜)内では、軟磁性層13表面とは表面エネルギの異なる薄膜パターン27が起点となって相分離が誘発される。具体的には、プレ記録層30’における薄膜パターン27上の部位では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、強磁性相と非磁性相とが相分離し、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造のグラニュラ構造部31aが生じる。プレ記録層30’にてグラニュラ構造部31aが形成されない箇所は、非磁性部31b,32を構成することとなる。
【0107】
本方法においては、次に、図15(d)に示すように、記録層30上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部31を記録層30内に有する磁気ディスクX2を製造することができる。
【0108】
本方法においては、図15(c)を参照して上述したように、記録層30内にグラニュラ構造部31aないし記録磁性部31をパターン形成することができる。また、本方法においては、図15(b)に示すように、記録層30を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層30’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層30の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部31を記録層30内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX2を製造するのに、適する。
【0109】
図16は、磁気ディスクX2の第3の製造方法を表す。本方法においては、まず、図16(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13を形成したうえで、軟磁性層13上に薄膜パターン28を形成する。軟磁性層13の形成手法については、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したのと同様である。各薄膜パターン28は、本実施形態では、上述の記録磁性部31のグラニュラ構造部31aに対応するパターン形状を有し、次の加熱工程における加熱温度にて溶融する低融点材料よりなる。そのような薄膜パターン28の構成材料、厚さ、および形成手法については、磁気ディスクX1の第8の製造方法における薄膜パターン28に関して上述したのと同様である。
【0110】
次に、図16(b)に示すように、軟磁性層13上にプレ記録層30’を形成する。プレ記録層30’の形成手法は、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したプレ記録層12’の形成手法と同様である。
【0111】
次に、図16(c)に示すように、プレ記録層30’の全体を一括的に加熱することによって記録磁性部31を形成する。加熱温度は例えば100〜300℃である。本工程では、このような加熱温度にて、薄膜パターン28が溶融され、プレ記録層30’(強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶〔侵入型〕した状態にある非磁性膜)内では、溶融状態にある薄膜パターン28が起点となって相分離が誘発される。具体的には、プレ記録層30’における薄膜パターン28上の部位では、Fe、Co、およびNiを少なくとも一種類含む強磁性材料が形成する結晶構造(強磁性を示す)から、BおよびCを少なくとも一種類含む過剰な非磁性材料が掃き出される。そして、非磁性材料を掃き出した強磁性材料どうしが凝集し且つ掃き出された非磁性材料どうしが凝集することにより、強磁性相と非磁性相とが相分離し、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造のグラニュラ構造部31aが生じる。プレ記録層30’にてグラニュラ構造部31aが形成されない箇所は、非磁性部31b,32を構成することとなる。本工程を経ると、薄膜パターン28の全部または一部が記録層30内に拡散して事実上消失する場合がある。
【0112】
本方法においては、次に、図16(d)に示すように、記録層30上に保護層14を形成する。保護層14の形成手法については、磁気ディスクX1の第1の製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部31を記録層30内に有する磁気ディスクX2を製造することができる。
【0113】
本方法においては、図16(c)を参照して上述したように、記録層30内にグラニュラ構造部31aないし記録磁性部31をパターン形成することができる。また、本方法においては、図16(b)に示すように、記録層30を構成することとなる過飽和固溶非磁性膜たるプレ記録層30’を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜体として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜体においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜体におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層30の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部31を記録層30内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクX2を製造するのに、適する。
【実施例】
【0114】
固溶体膜である複数のFeCoNiB膜を、サンプル膜体として作製した。各サンプル膜体の作製においては、スパッタリング法により、所定組成比で厚さ50nmのFeCoNiB膜をガラス基板上に形成した。強磁性材料たるFeCoNi内の組成比を全てのサンプル膜体において同一とし、固溶体膜における非磁性材料たるBについて、サンプル膜体ごとに異なる含有率を設定した。具体的には、FeCoNi内の組成比をFe65Co30Ni5とし、その含有率を30〜100atom.%の範囲のいずれかとし、Bの含有率を0〜70atom.%の範囲のいずれかとした。
【0115】
各サンプル膜体について、飽和磁化、保磁力、および強磁性粒サイズ(柱状グラニュラ粒子の径)を測定した。これらの結果を図17〜図19のグラフに表す。図17のグラフでは、横軸にて固溶体膜のB含有率(atom.%)を表し、縦軸にて固溶体膜の飽和磁化(emu/cc)を表し、各サンプル膜体の測定に係るプロットを実線17Aで結ぶ。図18のグラフでは、横軸にて固溶体膜のB含有率(atom.%)を表し、縦軸にて固溶体膜の保磁力(kOe)を表し、各サンプル膜体の測定に係るプロットを実線18Aで結ぶ。図19のグラフでは、横軸にて固溶体膜のB含有率(atom.%)を表し、縦軸にて固溶体膜内の強磁性粒サイズ(nm)を表し、各サンプル膜体の測定に係るプロットを実線19Aで結ぶ。
【0116】
各サンプル膜体について、150℃で60秒間の加熱処理を施した後、飽和磁化、保磁力、および強磁性粒サイズ(柱状グラニュラ粒子の径)を測定した。これらの結果を図17〜図19のグラフに表す。図17〜図19のグラフでは、当該加熱処理後の各サンプル膜体の測定に係るプロットを破線17B,18B,19Bで結ぶ。
【0117】
図17のグラフからは、B含有率がおよそ30〜55atom.%の範囲にある場合に、加熱処理によってFeCoNiB膜の飽和磁化が大きく変化することが解る。加熱処理前には(実線17A)、B含有率が0atom.%から約25atom.%までの範囲では、FeCoNiとBとが侵入型固溶し、FeCoNiが構成する強磁性結晶(格子)が保たれ、磁性原子どうしの磁気的相互作用がほとんど変化しないので、FeCoNiB膜の飽和磁化は略一定である。B含有率25atom.%あたりで、FeCoNiB膜は過飽和状態に達し始めるので、FeCoNiが構成する強磁性結晶(格子)の一部が壊れ始め、磁性原子どうしの磁気的相互作用が弱くなり始める。B含有率約25atom.%から約35atom.%にかけて、FeCoNiB膜の飽和磁化は急峻に低下する。B含有率が約35atom.%以上では、FeCoNiが構成する強磁性結晶(格子)の大部分が壊れているので、磁性原子どうしの磁気的相互作用は極めて弱く、従って、FeCoNiB膜の飽和磁化は極めて小さい。一方、加熱処理後には(破線17B)、B含有率が0atom.%から約25atom.%までの範囲では、加熱処理によって非磁性相が新たに形成されて、単位体積あたりに占める非磁性相の割合が増加するので、加熱処理前よりも飽和磁化は低下する。B含有率が0atom.%から約50atom.%までの範囲では、純粋な強磁性相(大きな飽和磁化を有する相)の共存下において、B含有率が増加するほど、単位体積あたりに占める非磁性相の割合が徐々に増加するので、FeCoNiB膜の飽和磁化は緩やかに低下する。FeCoNiB膜においては、B含有率が約25atom.%以上で過飽和固溶状態であるところ、B含有率が特に約25atom.%以上の場合にFeCoNiB膜にて生ずる相分離は、主にスピノーダル分解であると考えられる。B含有率50atom.%あたりで、非磁性相による飽和磁化の低減効果の方が、純粋な強磁性相による飽和磁化の低減を軽減する効果よりも相当程度に優勢となり(即ち、単位体積当たりに占める非磁性相の割合が過剰となり)、従って、FeCoNiB膜の飽和磁化は急峻に低下し始める。
【0118】
図18のグラフからは、B含有率がおよそ10〜55atom.%の範囲にある場合に、加熱処理によってFeCoNiB膜の保磁力が大きく変化することが解る。飽和磁化よりも保磁力の方が構造に対して敏感な物性値であるところ、加熱処理前には(実線18A)、0atom.%からB含有率が増大するのに伴い、FeCoNiB膜の保磁力は急峻に低下する。一方、加熱処理後には(破線18B)、純粋な強磁性相(大きな飽和磁化を有する相)が生じるので、B含有率が増加して単位体積あたりの非磁性相の割合が比例的に増加しても、FeCoNiB膜の飽和磁化の低下は緩やかである。
【0119】
図19のグラフからは、過飽和固溶状態にあるFeCoNiB膜が加熱処理によって相分離を生じても強磁性粒サイズが過大とならないことが解る。B含有率が約25atom.%以上では、加熱処理前(実線19A)と加熱処理後(実線19B)とで、FeCoNiB膜における強磁性粒子サイズに大きな変化はない。B含有率が約25atom.%以上では、加熱処理によりFeCoNiB膜にてスピノーダル分解が生じ強磁性相が形成されても、有意な割合の非磁性相が共存するので、非磁性相によって強磁性相が囲まれて強磁性相どうしの結合が妨げられ、強磁性粒サイズは抑制される。B含有率が約25atom.%以下では、B含有率が小さいほど、非磁性相によって強磁性相が囲まれる状態に至りにくくなり(即ち、非磁性相は孤立的に存在する傾向が増大し)、強磁性粒は成長しやすくなる。
【0120】
非磁性材料としてBに代えてCを採用した場合においても、加熱処理前後の飽和磁化、保磁力、および強磁性粒サイズについて、図17〜図19に示す結果と同様の結果が得られた。
【0121】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0122】
(付記1)強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して非一様にエネルギを付与することにより、当該非磁性膜から、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部と非磁性部とを有する記録層を形成する工程を含む、磁気記録媒体製造方法。
(付記2)強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、凸部を有するスタンパにおける当該凸部を当接させる工程と、
前記スタンパの前記凸部を介して前記非磁性膜を加熱することにより、前記非磁性膜における当該加熱箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程とを含む、磁気記録媒体製造方法。
(付記3)強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、収束ビームを照射することにより、前記非磁性膜における当該照射箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程を含む、磁気記録媒体製造方法。
(付記4)強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、開口部を有するマスクを介してレーザ光またはX線を照射することにより、前記非磁性膜における当該照射箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程を含む、磁気記録媒体製造方法。
(付記5)前記マスクは、前記非磁性膜に密着して配置される、付記4に記載の磁気記録媒体製造方法。
(付記6)強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して圧痕を形成する工程と、
加熱により、前記非磁性膜内に、前記圧痕を起点として、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
(付記7)基材の表面の部分領域に微細凹凸を形成する工程と、
前記基材上に、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を形成する工程と、
加熱により、前記非磁性膜における前記基材表面の微細凹凸領域上にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
(付記8)基材上に、当該基材表面とは異なる表面エネルギを有する薄膜パターンを形成する工程と、
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を、前記薄膜パターンを覆うように前記基材上に形成する工程と、
加熱により、前記非磁性膜における前記薄膜パターン上にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
(付記9)基材上に、低融点材料からなる薄膜パターンを形成する工程と、
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を、前記薄膜パターンを覆うように前記基材上に形成する工程と、
加熱により、前記薄膜パターンを溶融しつつ、前記非磁性膜における前記薄膜パターンに対応する位置にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
(付記10)連続膜体である記録層を備え、
前記記録層は、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部と、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性部とを有する、磁気記録媒体。
(付記11)前記非磁性材料は、Bおよび/またはCである、付記1から10のいずれか一つに記載の磁気記録媒体製造方法または磁気記録媒体。
(付記12)前記強磁性材料は、Fe、Co、またはNiを含む、付記1から11のいずれか一つに記載の磁気記録媒体製造方法または磁気記録媒体。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るに磁気ディスクの平面図である。
【図2】図1に示す磁気ディスクの部分拡大断面図である。
【図3】図1に示す磁気ディスクにおける記録層の部分拡大平面図である。
【図4】図1に示す磁気ディスクの第1の製造方法を表す。
【図5】図1に示す磁気ディスクの第2の製造方法を表す。
【図6】図1に示す磁気ディスクの第3の製造方法を表す。
【図7】図1に示す磁気ディスクの第4の製造方法を表す。
【図8】図1に示す磁気ディスクの第5の製造方法における一部の工程を表す。
【図9】図8の後に続く工程を表す。
【図10】図1に示す磁気ディスクの第6の製造方法を表す。
【図11】図1に示す磁気ディスクの第7の製造方法を表す。
【図12】図1に示す磁気ディスクの第8の製造方法を表す。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスクの部分断面図である。
【図14】図13に示す磁気ディスクの第1の製造方法を表す。
【図15】図13に示す磁気ディスクの第2の製造方法を表す。
【図16】図13に示す磁気ディスクの第3の製造方法を表す。
【図17】サンプル膜体における飽和磁化のB含有率依存性を表す。
【図18】サンプル膜体における保磁力のB含有率依存性を表す。
【図19】サンプル膜体における強磁性粒サイズのB含有率依存性を表す。
【図20】ディスクリートトラックメディアである従来の磁気ディスクの平面図である。
【図21】図20に示す磁気ディスクの部分拡大断面図である。
【図22】図20に示す磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図23】図22の後に続く工程を表す。
【符号の説明】
【0124】
X1,X2,40 磁気ディスク
11,41 ディスク基板
12,30,42 記録層
12’,30’ プレ記録層
12A,31,42A 記録磁性部
12B,31b,32,42B 非磁性部
12a 強磁性相
12b 非磁性相
13 軟磁性層
13a,13b 微細凹凸領域
14,43 保護層
15,44 記録面
21,26 スタンパ
22 収束ビーム
23,25 マスク
24 光
27,28 薄膜パターン
31a グラニュラ構造部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して非一様にエネルギを付与することにより、当該非磁性膜から、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部と非磁性部とを有する記録層を形成する工程を含む、磁気記録媒体製造方法。
【請求項2】
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、凸部を有するスタンパにおける当該凸部を当接させる工程と、
前記スタンパの前記凸部を介して前記非磁性膜を加熱することにより、前記非磁性膜における当該加熱箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程とを含む、磁気記録媒体製造方法。
【請求項3】
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して圧痕を形成する工程と、
加熱により、前記非磁性膜内に、前記圧痕を起点として、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
【請求項4】
基材の表面の部分領域に微細凹凸を形成する工程と、
前記基材上に、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を形成する工程と、
加熱により、前記非磁性膜における前記基材表面の微細凹凸領域上にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
【請求項5】
連続膜体である記録層を備え、
前記記録層は、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部と、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性部とを有する、磁気記録媒体。
【請求項1】
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して非一様にエネルギを付与することにより、当該非磁性膜から、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部と非磁性部とを有する記録層を形成する工程を含む、磁気記録媒体製造方法。
【請求項2】
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対し、凸部を有するスタンパにおける当該凸部を当接させる工程と、
前記スタンパの前記凸部を介して前記非磁性膜を加熱することにより、前記非磁性膜における当該加熱箇所にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程とを含む、磁気記録媒体製造方法。
【請求項3】
強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜に対して圧痕を形成する工程と、
加熱により、前記非磁性膜内に、前記圧痕を起点として、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
【請求項4】
基材の表面の部分領域に微細凹凸を形成する工程と、
前記基材上に、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性膜を形成する工程と、
加熱により、前記非磁性膜における前記基材表面の微細凹凸領域上にて、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
【請求項5】
連続膜体である記録層を備え、
前記記録層は、強磁性相および非磁性相が混在する強磁性グラニュラ構造を含む記録磁性部と、強磁性材料と非磁性材料とが過飽和に固溶した状態にある非磁性部とを有する、磁気記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2007−257736(P2007−257736A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80853(P2006−80853)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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