説明

磁気記録媒体

【課題】 磁性粒子の分散性、充填性が良好な結合剤を使用することにより走行耐久性、電磁変換特性などが優れた磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】 磁性粒子と結合剤からなる磁性層を有する磁気記録媒体において、磁性層の結合剤として分子内にリン酸金属塩基とカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂を用いることを特徴とする磁気記録媒体に関する。好ましくは分子内にリン酸金属塩基とカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂が、ポリエステルポリオール(A)に酸無水物化合物(B)を反応させ、該反応物と芳香族ポリイソシアネート化合物(C)を反応させて得られたもの、あるいはポリエステルポリオール(A)、分子内にカルボキシル基を有しイソシアネート基と反応する官能基を2個以上有する化合物(D)および芳香族ポリイソシアネート化合物(C)を反応させて得られたものであることを特徴とする上記に記載の磁気記録媒体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録媒体に関し、更に詳しくは分散性、充填性に優れ、かつ耐久性、耐摩耗性に優れた磁気テープ、磁気ディスクなどの磁気記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汎用的磁気記録媒体である磁気テープ、フレキシブルディスクは長軸1μm以下の針状磁性粒子を分散剤、潤滑剤、帯電防止剤などの添加剤とともに結合剤溶液に分散させて磁気塗料を作り、これをポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布して作られている。
【0003】
磁性層の結合剤に要求される特性としては、磁性粒子の分散性、充填性、配向性、磁性層の耐久性、耐摩耗性、耐熱性、非磁性支持体との接着性等が挙げられ、結合剤は非常に重要な役割を果たしている。磁性層の結合剤としては従来アジペートタイプあるいはポリカプロラクトンタイプのポリウレタン樹脂とニトロセルロースあるいは塩化ビニル系共重合体との混合系が主に用いられている。
【0004】
塗布型磁気記録媒体における非磁性支持体上に設けた磁性層では耐摩耗性の向上、耐熱性の改良、接着性の改良、耐溶剤性の付与等の目的のために、現在多くの場合硬化剤を併用する二液タイプが用いられている。硬化剤としてはポリイソシアネート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等が知られている。特に反応性、作業性、性能面からポリイソシアネートが汎用的に使用されている。ポリイソシアネートを硬化剤として用いた反応は100℃以下の比較的マイルドな温度条件でも進行し、形成された磁性層や非磁性支持体がダメージを受けにくいという利点がある。硬化反応は通常50〜70℃で処理することにより行われる。
あるいは別の硬化反応処理方法として、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射する方法も挙げられる。具体的には例えば特許文献1、2のような電子線に代表される活性エネルギー線を照射する事で磁性層を硬化させる方法、いわゆるEB硬化方式が挙げられる。
【0005】
一般に、磁気記録媒体では、S/N比(シグナル/ノイズ比)の向上、高記録密度化のために、磁性層の表面を平滑にすることや、より微粒子化した磁性粒子を磁性層中に高充填し、高配向することが必要とされ、これらのために磁性粒子の分散が良好な結合剤が求められている。磁性層の表面が平滑になればなる程、摩擦係数が高くなり、磁気テープの走行性、走行耐久性は悪くなる。そのため耐久性、耐摩耗性、耐熱性、非磁性支持体との接着性の良好な結合剤が求められている。
【0006】
最近では特に、より微粒子化した磁性粉、メタル磁性粉のような高抗磁力(Hc)の磁性粉を磁性層中に高充填し高配向することがなされているが、これらの磁性粉を従来知られた結合剤で分散することは困難になっている。分散不良は電磁変換特性の低下だけではなく、磁性層の空隙率の増加を伴い、空隙率の増加は磁性層の走行耐久性を悪化させる。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−84337(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭59−8126(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、磁性粒子の分散性、充填性、耐摩耗性、耐熱性等が良好な結合剤を使用することにより走行耐久性、電磁変換特性などが優れ、特にコンピュータバックアップテープ用途に適した磁気記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題、すなわち微細化した磁性粒子を高度に分散安定化し、かつ耐久性に優れた磁性層を形成するポリウレタン樹脂を鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は以下の磁気記録媒体である。
磁性粒子と結合剤からなる磁性層を有する磁気記録媒体において、磁性層の結合剤として分子内にリン酸金属塩基とカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂を用いることを特徴とする磁気記録媒体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、長軸長が100nm以下の磁性粉末の分散性が良好で表面平滑性に優れる磁性層が得ることができ、その結果として優れた磁気記録媒体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の磁気記録媒体は磁性層の結合剤として分子内にリン酸金属塩基とカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂を用いる。
【0012】
リン酸金属塩基を結合剤中に導入する手段としては特に限定されないが、例えば下記式(i)〜(vii)で示される燐化合物の少なくとも1種を用いる方法が好ましい。中でも下記構造式で表されるリン化合物(vii)が特に好ましい。なお、導入方法は後述するポリエステルポリオール(A)中に共重合する方法、あるいは鎖延長剤として直接燐化合物を用いて重合する方法が挙げられる。
【0013】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0014】
〔X、Yはヒドロキシル基等のエステル形成性官能基、R1は炭素数3〜10の3価の炭化水素基、R2は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、シクロアルコキシ基、又はアリールオキシ基を示す。アリール基、およびアリールオキシ基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、−OM(Mはアルカリ金属を示す)、またはアミノ基が結合したものでも良い。R3、R4は、炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、次式:−(CH2−OR5m−で表される基(R5は炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基を示す。mは1〜4の任意の数値をとることができる。Mはアルカリ金属原子を示す。〕
【0015】
カルボキシル基を結合剤に導入する手段としては特に限定されないが、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、チオフェンテトラカルボン酸二無水物などを用いる方法が挙げられる。導入方法として1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、チオフェンテトラカルボン酸二無水物などの酸無水物化合物(B)は後述するポリエステルポリオール(A)の分子末端にヒドロキシル基と反応させることにより酸無水物環を開環させ、後述する芳香族ポリイソシアネート(C)を反応させることによりカルボキシル基を導入する方法が挙げられる。また、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸のように分子内にカルボキシル基を有しイソシアネート基と反応する官能基を2個以上有する化合物(D)を用いて、芳香族ポリイソシアネート化合物(C)を反応させることにより導入する方法も挙げられる。なかでもポリエステルポリオール(A)と酸無水物(B)を反応させる方法では3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、あるいはエチレングリコールビストリメリテート二無水物を用いることが好ましく、分子内にカルボキシル基を有しイソシアネート基と反応する官能基を2個以上有する化合物(D)を用いて反応させる方法ではジメチロールブタン酸を用いることが好ましい。
【0016】
ポリエステルポリオール(A)は通常の二塩基酸とグリコールを重縮合反応して得られるものである。これに用いられる脂肪族二塩基酸としてはコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ドデシニルコハク酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、3−ヘキセンジカルボン酸が挙げられ、脂環族二塩基酸としては1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−ビス(4−カルボキシシクロヘキシル)メタン、2,2ビス(4−カルボキシシクロヘキシル)プロパンが挙げられる。これらの中、脂肪族族二塩基酸としてはアジピン酸、セバシン酸、ドデシニルコハク酸、イタコン酸、脂環族二塩基酸としては1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸を用いることが非磁性粒子の分散性の点で好ましい。特に酸成分が脂肪族および/または脂環族二塩基酸50〜100モル%で構成されていることが非磁性粒子の分散性の点で好ましい。
【0017】
グリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族系グリコール、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシプロピル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、2,2ビス(4−ヒドロキシメトキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4ヒドロキシエトキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、3(4),8(9)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール等の脂環族系グリコールが挙げられる。これらの中では特に2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンが好ましい。またポリエステルポリオールの原料の一部に無水トリメリット酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の三官能以上の化合物をポリエステル樹脂の有機溶剤溶解性、塗布作業性等の特性を損なわない範囲で使用してもよい。
【0018】
本発明で用いるポリウレタン樹脂の芳香族ポリイソシアナート(C)としては2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0019】
本発明で用いるポリウレタン樹脂には必要に応じてイソシアネート基と反応する官能基を2個以上有する分子量500未満の側鎖を有する化合物(E)を共重合しても良い。例えば、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート、2−ノルマルブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール、3−フェニル−1,5−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−3−ナトリウムスルホ−2,5−ヘキサンジオール等が挙げられる。これらの中で、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート、2−ノルマルブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールが分散性の点で特に好ましい。
【0020】
これら側鎖を有する化合物(E)はポリウレタン樹脂の溶解性向上に寄与し、本発明におけるポリエステルポリオール(A)、芳香族ポリイソシアナート(C)の組み合わせにおいて高い比率で共重合する事が可能である。化合物(E)成分の共重合比率の増加はウレタン結合基濃度の増加につながり、ウレタン樹脂をより強靱なものにする。すなわち、これらの量比を調節することにより、汎用溶剤に対する高い溶解性と強靱な力学物性を合わせ持ったポリウレタン樹脂が得られる。これらウレタン樹脂としての特性は、磁気テープ用バインダー樹脂としての高い分散能力とテープ耐久性の向上に寄与するものである。
【0021】
また、化合物(E)としてイソシアネートと反応する官能基を1分子中3個以上有する分岐状化合物を用いると後述する架橋反応において反応性の向上に有効である。
具体的な化合物としては、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等のポリオールあるいはこれらポリオールのうち一種へのε-カプロラクトン付加物、プロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0022】
これら化合物(E)の共重合量は、本発明のポリウレタン樹脂のウレタン結合基濃度が4000eq/106gを越えない範囲で用いられることが望ましい。ウレタン結合基濃度が4000eq/106gを越えた場合では、ポリウレタン樹脂としての力学物性をさらに向上する事は可能であるものの、汎用溶剤に対する溶解性が低下し、磁気テープ用バインダー樹脂としての高い分散性能が得られないことがある。ウレタン結合基濃度は側鎖を有する化合物(E)の共重合量、及びポリエステルポリオール(A)の分子量により、調節可能である。単位は樹脂重量1t当たりの当量数(eq/t)を表す。
【0023】
本発明で用いるポリウレタン樹脂には必要に応じてポリエステルポリオール(A)以外のポリエステルポリオールを共重合しても良い。ポリエステルポリオールとして芳香族ポリエステル(F)を用いることが好ましい。構成する酸成分として芳香族二塩基酸成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等が挙げられる。好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸などが挙げられる。
【0024】
グリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族系グリコール、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシプロピル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、2,2ビス(4−ヒドロキシメトキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4ヒドロキシエトキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、3(4),8(9)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール等の脂環族系グリコールが挙げられる。これらの中では特に2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンが好ましい。またポリエステルポリオールの原料の一部に無水トリメリット酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の三官能以上の化合物をポリエステル樹脂の有機溶剤溶解性、塗布作業性等の特性を損なわない範囲で使用してもよい。
【0025】
EB(電子線)硬化性を付与する手段として、さらに不飽和結合基を有し、かつイソシアネートと反応する官能基を有する分子量500未満の化合物(H)を反応させたポリウレタン樹脂を結合剤として用いることも効果的である。化合物(H)としては、例えばグリセリンモノメタクリレート、グリセリンモノアクリレート等が挙げられる。あるいはイソシアネート基と反応する官能基を1個有する化合物として2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチレングリコールメタクリレート、ブトキシヒドロキシプロピルアクリレート、フェノキシヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、モノヒドロキシペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。これらの中で、優れた電子線硬化性を発揮する点でモノヒドロキシペンタエリスリトールトリアクリレートを用いることが好ましい。
【0026】
本発明で用いるポリウレタン樹脂の数平均分子量は5000から100000、望ましくは10000から80000のものを用いる。数平均分子量が5000未満では機械的強度が不足で、走行耐久性が劣ることがある。数平均分子量が100000を超えると溶液粘度が大きくなり、作業性、磁性粉・研磨剤・カーボンブラック等の分散性が悪化する恐れがある。反応方法は原料を溶融状態で行う方法、溶液中で溶解して行う方法のどちらで行っても構わない。
【0027】
反応触媒としてオクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウリレート、トリエチルアミン等を用いてもよい。
また紫外線吸収剤、加水分解防止剤、酸化防止剤などをポリウレタン樹脂の製造前、製造中あるいは製造後に添加してもよい。
【0028】
本発明では磁気記録媒体としての耐久性向上の観点からポリウレタン樹脂がポリイソシアネート化合物(G)により架橋されていることが好ましい。架橋剤であるポリイソシアネート化合物(G)としてはイソシアネートに多価アルコールやイソシアヌレート環を付加したものが挙げられる。ここでのイソシアネート化合物はTDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、XDI(キシレンジイソシアネート)、水添XDIなどが挙げられる。
【0029】
本発明においては、上記ポリウレタン樹脂以外に、可撓性の調節、耐寒性、耐久性向上などの目的のために、他の樹脂を添加することが望ましい。他の樹脂としては塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体等が挙げられる。なお、EB硬化性を付与する場合は前記樹脂に不飽和結合導入変性作業を行ったものとなる。
【0030】
本発明の磁気記録媒体には必要に応じてジブチルフタレート、トリフェニルホスフェートの様な可塑剤、ジオクチルスルホナトリウムサクシネート、t-ブチルフェノール・ポリエチレンエーテル、エチルナフタレン・スルホン酸ソーダ、ジラウリルサクシネート、ステアリン酸亜鉛、大豆油レシチン、シリコーンオイルのような潤滑剤や種々の帯電防止剤を添加することもできる。
【0031】
本発明においてウレタン樹脂は溶剤に溶解して磁性粒子を混合し、支持体上に塗布する。使用する溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸エチルなどのエステル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのグリコール、エーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、またはこれらの混合物などが使用できる。
【0032】
本発明の磁気記録媒体の磁性層に使用される磁性粒子としては、γ−Fe23、γ−Fe23とFe34の混晶、コバルトを被着したγ−Fe23 またはFe24、バリウムフェライト等の強磁性酸化物、Fe−Co,Fe−Co−Ni等の強磁性合金粉末等を挙げることができる。
【0033】
磁性粒子としては高記録密度化の点でメタル粉であることが好ましい。メタル粉の長軸長は100nm以下であることが好ましい。下限は1nm以上であることが好ましい。1nm未満であるとメタル粉が極めて微細となるため、本発明のポリウレタン樹脂では分散性が不足するおそれがあり、100nmを超えると磁気記録媒体の記録密度の点で性能不十分となる場合があるからである。なお、ここで言う長軸長は楕円上の磁性粒子の長い部分をさすものであり、これを顕微鏡観察し、その任意の測定結果100サンプルを平均化して求めたものである。
【0034】
本発明の磁気記録媒体の支持体上部の層構造としては磁性層単層、磁性層と非磁性層との重層が挙げられる。とくに磁性層または磁性層と下層塗布層を支持体上に、支持体下にバックコート層を設けた物であることが好ましい。磁性層と非磁性層との重層の製造方法は非磁性層を塗布してから別途磁性層を塗布しても良いし、同時塗布でも良い。
【実施例】
【0035】
以下実施例により本発明を具体的に例示する。実施例中単に部とあるのは重量部を示す。実施例中の略号は以下の通りである。
AA:アジピン酸
SA:セバシン酸
IA:イタコン酸
HHPA:1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物
DMT:テレフタル酸ジメチルエステル
DMI:イソフタル酸ジメチルエステル
EG:エチレングリコール
HD:1,6−ヘキサンジオール
DMH:2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール
NPG:2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール
HPN:2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3− ヒドロキシプロパネート
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
TMEG:エチレングリコールビストリメリテート二無水物
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート
DMBA:ジメチロールブタン酸
PETA:モノヒドロキシペンタエリスリトールトリアクリレート
リン化合物:
【化8】

(なお、MはNaである。)
MR110:塩化ビニル系共重合体(日本ゼオン(株)製)
MEK:メチルエチルケトン
【0036】
以下に樹脂物性の測定方法について説明する。
【0037】
(ポリエステルポリオール(A)の水酸基価)
ポリエステルポリオール:50gをMEK:120gの混合溶剤に溶解し、MDI:70gを加え、70℃で2時間反応させた。ついで、反応液中の残存イソシアネート基濃度を滴定により、定量し、水酸基価を求めた。
【0038】
(数平均分子量)
ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により、ポリスチレンを標準物質とし、テトラヒドロフランを溶媒として測定した。なお、数平均分子量300未満の低分子のピークは分析時には削除し、300以上の高分子のピークをデータ処理することで数平均分子量とした。
【0039】
(組成分析)
クロロホルムD溶媒中でヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)ジェミニ−200を用いて、1H−NMR分析を行なってその積分比より決定した。
【0040】
(ポリウレタン樹脂の酸価)
ポリウレタン樹脂1gを20cm3のクロロホルムに溶解し、0.1Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定、固形分濃度で割り返し、樹脂106g当たりの当量(eq/106g)を求めた。指示薬はフェノールフタレインを用いた。
【0041】
(ガラス転移温度)
厚み30μmでポリウレタン樹脂フィルムを作成し、4mm×15mmに切断後、アイティー計測制御株式会社製動的粘弾性測定装置DVA−220を用いて、周波数10Hz、測定温度範囲30〜180℃、昇温速度4℃/minにて動的粘弾性を測定した。保存弾性率(E’)の屈折点において、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と屈折点以上における最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0042】
(極性基濃度)
試料0.1gを炭化し、酸に溶解した後、原子吸光分析により求めた。下記式により極性基濃度とした。
Na濃度(ppm)/23(Na原子量)=極性基濃度(eq/t)
【0043】
合成例1:ポリエステルポリオール(a)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却器を具備した反応容器にアジピン酸142部、リン化合物8部、エチレングリコールを30部、1,6−ヘキサンジオールを71部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを104部、およびテトラブチルチタネートを0.2部仕込み、180〜220℃で180分間加熱し、エステル化反応を行った後、反応系を20分で5mmHgまで減圧し、この間240℃まで昇温した。更に系内を徐々に減圧し、10分後に0.3mmHg以下とし、240℃で重縮合反応を30分行った。得られたポリエステルポリオール(a)の樹脂組成、水酸基価、平均分子量、極性基濃度を表1に示した。
【0044】
合成例2:ポリエステルポリオール(b)の合成
合成例1と同様の手法により合成したポリエステルポリオール(b)の樹脂組成、水酸基価、平均分子量、極性基濃度を表1に示した。
【0045】
合成例3:ポリエステルポリオール(c)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却器を具備した反応容器に1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を147部、リン化合物16部、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネートを370部、エチレングリコールを12部、およびテトラブチルチタネートを0.2部仕込み、180〜220℃で180分間加熱し、エステル化反応を行った後、反応系を20分で5mmHgまで減圧し、この間240℃まで昇温した。更に系内を徐々に減圧し、10分後に0.3mmHg以下とし、240℃で重縮合反応を3分行った。得られたポリエステルポリオール(c)の樹脂組成、水酸基価、平均分子量、極性基濃度を表1に示した。
【0046】
合成例4:ポリエステルポリオール(d)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却器を具備した反応容器にアジピン酸を124部、リン化合物を40部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを208部、およびテトラブチルチタネートを0.2部仕込み、180〜220℃で180分間加熱し、エステル化反応を行った後、反応系を5分、5mmHgまで減圧した。得られたポリエステルポリオール(d)の樹脂組成、水酸基価、平均分子量、極性基濃度を表1に示した。
【0047】
合成例5:ポリエステルポリオール(e)の合成
合成例3と同様の手法により合成したポリエステルポリオール(e)の樹脂組成、水酸基価、平均分子量、極性基濃度を表1に示した。
【0048】
合成例6:ポリエステルポリオール(f)の合成
合成例1と同様の手法により合成したポリエステルポリオール(f)の樹脂組成、水酸基価、平均分子量、極性基濃度を表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
合成例7:ポリウレタン樹脂(I)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却器を具備した反応容器にポリエステルポリオール(a)100部、トルエン100部を仕込み、溶解後、120度で加熱して、共沸工程にてトルエンと共に系内の水分を溜去した(トルエン36部溜去)。3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を4部添加して90度にて酸無水物の開環反応を行った。2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール25部、モノヒドロキシペンタエリスリトールトリアクリレート10部、及びメチルエチルケトン64部に溶解した。フェノチアジン0.05部を加え、攪拌後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート54部を加え、触媒としてジブチルチンジラウレート0.05部を添加し、80℃で5時間反応させた。ついでトルエン161部、メチルエチルケトン161部で溶液を希釈し、ポリウレタン樹脂(I)を得た。ポリウレタン樹脂(I)の樹脂組成、分子量、ガラス転移温度、極性基濃度、酸価を表2に示す。
【0051】
合成例8:ポリウレタン樹脂(II)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却器を具備した反応容器にポリエステルポリオール(b)50部、ポリエステルポリオール(e)50部、トルエン100部を仕込み、溶解後、120度で加熱して、共沸工程にてトルエンと共に系内の水分を溜去した(トルエン64部溜去)。ジメチロールブタン酸5部、及びメチルエチルケトン46部に溶解した。攪拌後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート34部を加え、触媒としてジブチルチンジラウレート0.05部を添加し、80℃で5時間反応させた。ついでトルエン116部、メチルエチルケトン116部で溶液を希釈し、ポリウレタン樹脂(II)を得た。ポリウレタン樹脂(II)の樹脂組成、分子量、ガラス転移温度、極性基濃度、酸価を表2に示す。
【0052】
合成例9:ポリウレタン樹脂(IV)の合成
合成実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂(IV)を合成し、樹脂組成、分子量、ガラス転移温度、極性基濃度、酸価を表2に示した。
【0053】
合成例10、11:ポリウレタン樹脂(III)、(V)の合成
合成実施例2と同様の方法でポリウレタン樹脂(III)、(V)を合成し、樹脂組成、分子量、ガラス転移温度、極性基濃度、酸価を表2に示した。
【0054】
比較合成例1:ポリウレタン樹脂(VI)の合成
合成実施例2と同様の方法でポリウレタン樹脂(VI)を合成し、樹脂組成、分子量、ガラス転移温度、極性基濃度、酸価を表2に示した。この例ではカルボキシル基が導入されておらず、本特許請求の範囲外となる。
【0055】
比較合成例2:ポリウレタン樹脂(VII)の合成
合成実施例2と同様の方法でポリウレタン樹脂(VII)を合成し、樹脂組成、分子量、ガラス転移温度、極性基濃度、酸価を表2に示した。この例ではリン酸金属塩基が導入されておらず、本特許請求の範囲外となる。
【0056】
EB硬化型塩ビ樹脂(VIII)の合成
温度計、攪拌機、コンデンサーを具備した反応容器にMR110、100部をメチルエチルケトン245部に溶解させ、ついでフェノチアジン、ハイドロキノンをそれぞれ、下記アクリル化合物に対して200ppm混合した。その後、2−イソシアネートエチルメタクリレート(MOI)5部、ウレタン化触媒のジ−n−ブチルチンジラウレートを上記イソシアネート化合物に対して1000ppm混合し、反応温度60℃で8時間攪拌を行った。得られたEB硬化型塩ビ樹脂(VIII)の分子量、ガラス転移温度を測定し下記に示した。
数平均分子量:25000、ガラス転移温度:60℃
【0057】
【表2】

【0058】
[実施例]
磁気テープの磁性層の光沢と表面粗さは、45度光沢を測定した。表面粗度は光干渉三次元表面粗度計(WYKO製)を用い、測定面積200×200μm2の条件で測定した。
【0059】
また、下記の手順で磁性塗膜を塗布し、特性評価を行った。EB硬化型結合剤樹脂および熱硬化型結合剤樹脂の磁性粒子分散性能は作製した塗膜の表面光沢、及び表面粗さを、触針接触表面粗さ計を用いて測定し評価した。さらに磁性塗膜の電磁変換特性については角形比を調べることによって判断した。また以下具体例について説明する。
【0060】
[実施例1]
磁性粉(メタル粉 2000Oe)と12部とポリウレタン樹脂(I)(固形分濃度30%)5部とEB硬化型塩ビ樹脂(VIII)(固形分濃度30%)5部とアルミナを混練り分散し、磁性塗料を得た。次に、得られた磁性塗料を15μm厚のPETフィルム上に乾燥膜厚4μmの厚みとなるように塗布し、乾燥温度80℃で乾燥後、線圧2.9×105N/m、温度90℃にてカレンダー処理を行い、続いてEB照射(5Mrad)を行い、硬化済みの磁性塗料の皮膜を作製し、磁性層を形成し、表面光沢、表面粗さ、及び角形比を測定した。表面光沢はグロスメーターを用い、表面粗さは触針接触表面粗さ計を用いて測定し評価した。角形比は振動試料型磁力計を使用し、垂直方向の角形比を測定した。
また、磁性層耐久性は、市販のS−VHSビデオデッキにかけ、走行時の温度40℃で100回走行後の磁性層傷付きを観察し、その程度を以下の6段階で評価した。
6:傷つきほとんどなし
5:傷つきわずかにあり
4:傷つきやや目立つ
3:傷つき顕著に目立つ、PETフィルムまで達していない
2:傷つき顕著に目立つ、PETフィルム面がわずかに見える
1:傷つき顕著に目立つ、PETフィルム面が多く見える
【0061】
[実施例2]
磁性粉(メタル粉 2000Oe)と12部とポリウレタン樹脂(II)(固形分濃度30%)5部と塩化ビニル共重合体(日本ゼオン(株)製MR110のMEK溶解品:固形分濃度30%)5部とアルミナを混練り分散し、硬化剤としてイソシアネート化合物のコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)を0.9部加え、磁性塗料を得た。次に得られた磁性塗料を15μm厚のPETフィルム上に厚みが4μになるように2,000ガウスの磁場を印可しつつ塗布乾燥し、磁性層を形成し、表面光沢、表面粗さ、及び角形比を測定した。表面光沢はグロスメーターを用い、表面粗さは触針接触表面粗さ計を用いて測定し評価した。角形比は振動試料型磁力計を使用し、垂直方向の角形比を測定した。
また、磁性層耐久性は、市販のS−VHSビデオデッキにかけ、走行時の温度40℃で100回走行後の磁性層傷付きを観察し、その程度を以下の6段階で評価した。
6:傷つきほとんどなし
5:傷つきわずかにあり
4:傷つきやや目立つ
3:傷つき顕著に目立つ、PETフィルムまで達していない
2:傷つき顕著に目立つ、PETフィルム面がわずかに見える
1:傷つき顕著に目立つ、PETフィルム面が多く見える
【0062】
[実施例3、4]
実施例1のポリウレタン樹脂(I)、EB硬化型塩ビ樹脂(VIII)の代わりにポリウレタン樹脂(III)、(IV)を用いた他は実施例1と同様にして各皮膜サンプルを作製し、磁性層の表面光沢、表面粗さ、角形比、および走行耐久性の評価を行った。
【0063】
[実施例5]
実施例2のポリウレタン樹脂(II)、MR110のMEK溶解品の代わりにポリウレタン樹脂(V)を用いた他は実施例2と同様にして各皮膜サンプルを作製し、磁性層の表面光沢、表面粗さ、角形比、および走行耐久性の評価を行った。
【0064】
[比較例1、2]
実施例5のポリウレタン樹脂(V)の代わりにポリウレタン樹脂(VI)、(VII)を用いた他は実施例5と同様にして各皮膜サンプルを作製し、磁性層の表面光沢、表面粗さ、角形比、および走行耐久性の評価を行った。
【0065】
【表3】

【0066】
表3より実施例1〜5は比較例1、2に比べて磁性層の表面粗さ、および角形比が良好である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
上記ポリウレタン樹脂は磁性粉子の分散性に優れるため、その結果として走行耐久性、電磁変換特性に優れた磁気記録媒体を供給することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子と結合剤からなる磁性層を有する磁気記録媒体において、磁性層の結合剤として分子内にリン酸金属塩基とカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂を用いることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
分子内にリン酸金属塩基とカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂が、ポリエステルポリオール(A)に酸無水物化合物(B)を反応させ、該反応物と芳香族ポリイソシアネート化合物(C)を反応させて得られたもの、あるいはポリエステルポリオール(A)、分子内にカルボキシル基を有しイソシアネート基と反応する官能基を2個以上有する化合物(D)および芳香族ポリイソシアネート化合物(C)を反応させて得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
ポリエステルポリオール(A)の酸成分が、脂肪族および/または脂環族二塩基酸50〜100モル%で構成されることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
分子内にリン酸金属塩基とカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂が、さらに分子内にイソシアネート基と反応する官能基を2個以上有する分子量500未満の側鎖を有する化合物(E)および/または芳香族ポリエステルポリオール(F)を反応させて得られたポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項2または3に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
分子内にリン酸金属塩基とカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂が、ポリイソシアネート系化合物(G)により架橋されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
分子内にリン酸金属塩基とカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂が、さらに分子内に不飽和結合基を有しかつイソシアネート基と反応する官能基を有する分子量500未満の化合物(H)を反応させて得られたものであり、かつ該ポリウレタン樹脂が架橋されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
磁性粒子がメタル粉であり、該メタル粉末の長軸長が100nm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の磁気記録媒体。

【公開番号】特開2007−42214(P2007−42214A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225501(P2005−225501)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】