説明

磁気記録媒体

【目的】高温高湿下に長期に渡って保存しても、保存以前に得られる高い電磁変換特性を劣化させることなく維持する磁気記録媒体に関する。
【構成】非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記磁性層に配向処理された前記強磁性金属粉末の表面を形成する元素の平均存在比率が、Fe原子数100に対してNa原子数1未満、アルカリ土類元素の原子数40以下、希土類元素の原子数1〜50であり、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であることを特徴とする磁気記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高温高湿下に長期に渡って保存しても、保存以前に得られる高い電磁変換特性を劣化させることなく維持する磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高記録密度磁気記録媒体への要求としては、益々高度なものが要求されてきている。この要求に対して、磁性粉末として強磁性金属磁性粉末を用いることによって、記録密度の向上を図る方法がよく知られている。しかし、この方法だけでは、近年望まれている高記録密度磁気記録媒体への要求を充分に満たすことは出来なかった。
【0003】そこで、他なる方法として高周波数から低周波数に及ぶ広範囲での再生出力を向上させるために、磁気記録媒体の重層構造化が行われている。これは、高周波数対応の上層と、低周波数対応の下層とを設け、広範囲の周波数に対応させ、記録密度の向上を図る方法である。特に、この時要求される技術としては上層の薄膜化である。
【0004】更に、より一層の高記録密度の要求に対しては、磁性層の薄膜化を図ることによる自己減磁、再生減磁の低減をする方法がある。これは、磁気記録媒体の重層構造において、上層を薄膜の磁性層、下層を非磁性層にする方法である。そしてこれらの方法に加えて、更に磁性粉末を改良することにより記録密度の向上が図られている。
【0005】このように保存以前の段階で高記録密度の磁気記録媒体を得ることは比較的容易ではあるが、あらゆる環境下、特に高温高湿下に長期に渡って保存した時に、高い電磁変換特性を維持し続けることは極めて困難である。例えば、高温高湿下に保存後の再生出力の低下、ドロップアウトの増加に対する解決方法として、磁性粉末の水溶性カルシウム量を100ppm以下にすることが特開平4−146519号公報に記載されているが、この方法では高温高湿下に保存したときに保存以前に得られる高い電磁変換特性を維持する磁気記録媒体を得ることは出来ず、この条件を満たしていても高温高湿下に保存したとき、再生出力の低下、ドロップアウトの増加を十分に防止することはできなかった。
【0006】そこで、本発明者らは、高温高湿下に長期に渡って保存したときに保存以前に得られる高い電磁変換特性を維持し、充分な信頼性を保証された磁気記録媒体を得るために、あらゆる環境下での保存実験を行い、検討を行った結果、高温高湿下に長期に渡って磁気記録媒体を保存すると、保存以前に得られる再生出力が大幅に低下し、ドロップアウトが増加し、ヘッドの目詰まりが発生する現象を見出した。この現象は磁気記録媒体の磁性層が単層でも発生するが、特に重層構造において顕著に発生することがわかった。この現象の原因について、鋭意研究の結果、本発明者らは次のことが起因していることを突き止めた。
【0007】通常、高温高湿下に保存したときに発生しやすい問題としては、強磁性金属粉末の酸化による磁性粉末の劣化が考えられる。この可能性について検討を行ったが、特に強磁性金属粉末が酸化しているという結果は得られなかった。しかし、高温高湿下に長期に渡り保存すると磁性層表面に多数の突起が発生することがわかった。本発明者は、この突起によりスペーシング損失が起こり再生出力の低下に繋がり、またこの突起とヘッドとが衝突することにより突起が磁性層表面から脱落し、脱落したものがヘッド上に集積しヘッド目詰まりを起こしたり、更に、脱落が頻繁に起こりドロップアウトの増加を起こすと推測した。
【0008】次に、本発明者らは突起の発生箇所における解析を行った。その結果、この発生箇所には特有の物質が存在することが判明した。その物質は脂肪酸金属塩の結晶(例えばステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等)であった。この突起の発生箇所に特有の脂肪酸金属塩(水に対して不溶性の金属セッケン)の発生を抑制することにより、前記に掲げた問題である高温高湿下に長期に渡り保存しても充分な信頼性が保証され、保存以前に得られる高い電磁変換特性を維持する磁気記録媒体を提供できるものと考えられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記問題に鑑み高温高湿下に長期に渡り保存してもドロップアウトの増加、再生出力の低下、ヘッドの目詰まり等を発生せずに、保存以前に得られる高い電磁変換特性を維持した磁気記録媒体を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明者らは、非磁性支持体上に特定の強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有することにより、高温高湿下に長期に渡り保存しても保存以前に得られる高い電磁変換特性を維持した磁気記録媒体を得ることを見出し、本発明1〜10に到った。すなわち、本発明の課題は下記の構成によって達成される。
【0011】1.非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記磁性層に配向処理された前記強磁性金属粉末の表面を形成する元素の平均存在比率が、Fe原子数100に対してNa原子数1未満、アルカリ土類元素の原子数40以下、希土類元素の原子数1〜50であり、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であることを特徴とする磁気記録媒体。
【0012】ここで、アルカリ土類元素としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Raなどが挙げられ、これらから選ばれる1種以上の元素を含有、また希土類元素としてはSm、Nd、Y、La、Prなどが挙げられ、これらから選ばれる1種以上の元素を含有する。
【0013】2.非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記強磁性金属粉末全体における元素の重量比が、Fe原子100重量部に対してAl原子2〜10重量部、希土類元素の原子1〜8重量部、アルカリ土類元素の原子0.1〜5重量部、Na原子0.01重量部未満であり、かつ前記強磁性金属粉末の表面を形成する元素の平均存在比率が、Fe原子数100に対してAl原子数70〜300、希土類元素の原子数0.5〜60、アルカリ土類元素の原子数40以下、Na原子数4未満であり、かつ前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であることを特徴とする磁気記録媒体。
【0014】3.非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記強磁性金属粉末は水浸したときに、該強磁性金属粉末より遊離するアルカリ土類元素の金属イオンが30ppm未満、ナトリウムイオンが200ppm未満、かつ塩酸溶液に溶解するナトリウムが300ppm未満であって、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であることを特徴とする磁気記録媒体。
【0015】4.非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記強磁性金属粉末は、水浸したときに遊離する金属イオンが90ppm以下である遊離状態での酸解離定数が8以上14未満の元素、及び水浸したときに遊離する金属イオンが200ppm未満であり、かつ塩酸溶液への溶解量が300ppm未満である遊離状態での酸解離定数が14以上の元素を含有し、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であることを特徴とする磁気記録媒体。
【0016】5.非磁性支持体上に強磁性金属粉末を含有する上層と磁性粉末又は非磁性粉末を含有する下層とを設けてなる磁気記録媒体において、前記磁性粉末又は非磁性粉末は水浸したときに、該磁性粉末又は非磁性粉末より遊離するナトリウムイオンが100ppm未満、かつ塩酸溶液に溶解するナトリウムが130ppm未満であって、前記上層と前記下層の少なくとも一方に炭素原子数12〜24個の脂肪酸を含有することを特徴とする磁気記録媒体。
【0017】6.非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記磁性層に配向処理された前記強磁性金属粉末の表面を形成する元素の平均存在比率が、Fe原子数100に対してNa原子数1以上、アルカリ土類元素の原子数40以下、希土類元素の原子数1〜50であり、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であり、かつ該脂肪酸のうちの遊離脂肪酸量が8.0mg/m以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【0018】7.非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記強磁性金属粉末全体における元素の重量比が、Fe原子100重量部に対してAl原子2〜10重量部、希土類元素の原子1〜8重量部、アルカリ土類元素の原子0.1〜5重量部、Na原子0.1重量部未満であり、かつ前記強磁性金属粉末の表面を形成する元素の平均存在比率が、Fe原子数100に対してAl原子数70〜300、希土類元素の原子数0.5〜60、アルカリ土類元素の原子数1〜40、Na原子数4以上であり、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であり、かつ該脂肪酸のうちの遊離脂肪酸量が8.0mg/m以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【0019】8.非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記強磁性金属粉末は水浸したときに該強磁性金属粉末より遊離するアルカリ土類元素の金属イオンが30ppm以下、ナトリウムイオンが200ppm以上、及び/又は塩酸溶液に溶解するナトリウムが300ppm以上であって、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であり、かつ該脂肪酸のうちの遊離脂肪酸量が8.0mg/m以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【0020】9.非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記強磁性金属粉末は、水浸したときに遊離する金属イオンが90ppm以下である遊離状態での酸解離定数が8以上14未満の元素及び水浸したときに遊離する金属イオンが200ppm未満であり、及び/又は塩酸溶液への溶解量が300ppm以上である遊離状態での酸解離定数が14以上の元素を含有し、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であり、かつ該脂肪酸のうちの遊離脂肪酸量が8.0mg/m以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【0021】10.非磁性支持体上に強磁性金属粉末を含有する上層と磁性粉末又は非磁性粉末を含有する下層とを設けてなる磁気記録媒体において、前記磁性粉末又は非磁性粉末は水浸したときに、該磁性粉末又は非磁性粉末より遊離するナトリウムイオンが100ppm以上、及び/又は塩酸溶液に溶解するナトリウムイオンが130ppm以上であって、前記上層と前記下層の少なくとも一方に炭素原子数12〜24個の脂肪酸を含有し、かつ該脂肪酸のうちの遊離脂肪酸量が8.0mg/m以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【0022】又以下に述べる実施態様がより好ましい。前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、少なくとも1層の下層を設けた磁気記録媒体であることが好ましく、又、磁性層の乾燥膜厚は0.02〜1.0μmが好ましく、更に好ましくは、0.1〜0.6μmである。また重層構造にしたときの下層の乾燥膜厚は0.2〜2.0μmが好ましく、更に好ましくは、0.3〜1.5μmである。
【0023】又、請求項1〜請求項4及び請求項6〜請求項9記載の発明において、前記下層に含有される前記磁性粉末又は非磁性粉末は水浸したときに、該磁性粉末又は該非磁性粉末より遊離するナトリウムイオンが130ppm未満であることが好ましい。又、下層の前記磁性粉末又は非磁性粉末が針状であることが好ましく、又該下層に炭素原子数12〜24個の脂肪酸を含有した磁気記録媒体によって達成することが好ましい。
【0024】以下本発明を詳述する。本発明者らは高温高湿下に長期保存する際に、磁性層表面に突起が発生することを見出し、この突起と高記録密度の磁気記録媒体の電磁変換特性の劣化に相関があることを見出した。この突起が発生する条件の検討を行った結果、以下の3つの条件が満たされるときに突起が発生することがわかった。
【0025】第1の条件は非磁性支持体上の層中の脂肪酸の存在状態、第2の条件は磁性層に含有される強磁性金属粉末の特性、又は磁性層に含有される強磁性金属粉末と下層に含有される磁性粉末又は非磁性粉末の特性、第3の条件は高温高湿(40〜60℃/70〜90%RH)下に保存されることである。
【0026】即ち、これらの条件のうち一つでも除かれれば突起の発生は防止できる。しかし、掲げた第3の条件は保存状態であり磁気記録媒体から制御は出来ない。従って、他の2つの条件をコントロールすることにより高温高湿下に長期保存しても保存以前に得られる高い電磁変換特性を維持する磁気記録媒体を得ることが出来た。
【0027】この突起の発生するメカニズムは明らかではないが、次の反応が予想される。
a.高温高湿下での媒体に付着した水に磁気記録媒体中の磁性粉末又は非磁性粉末よりナトリウムイオンが溶出b.高温高湿下での媒体に付着した水に遊離脂肪酸が溶解c.水に溶解した脂肪酸とナトリウムイオンが反応RCOOH + Na → RCOONa + HRCOOH: ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸などRCOONaは水への溶解性が高いd.c.のHにより、磁気記録媒体中の磁性粉末又は非磁性粉末よりカルシウムイオン、バリウムイオンなどが溶出e. RCOONa と水に溶出したカルシウムイオン、バリウムイオンなどが反応2RCOONa + Ca2+ → (RCOO) Ca↓+ 2Na2RCOONa + Ba2+ → (RCOO) Ba↓+ 2Naこの反応において、金属イオン(Ca2+、Ba2+など)は水に対して不溶性の金属セッケンを生成する元素であれば同様の反応を示すf.(RCOO)Ca、(RCOO)Baは水に対して不溶性であるため結晶化し、析出してこれが突起の発生原因となる。
【0028】前記反応は工業的に金属セッケンを製造する方法の一つである。金属セッケンの一般的な製造方法は、■複分解法(水溶媒系、アルコール溶媒系)、■直接法(溶融法、半溶融法、スラリー法、固相法、溶媒法)の2つに大別される。
【0029】■複分解法の特徴・反応速度が速く、低温においても容易に進行する・金属セッケンは一般的に水不溶性であるため、アルカリセッケン(水可溶性)と金属塩の水溶液を混合することにより、生成した金属セッケンは直ちに沈殿物として析出され、反応は瞬時に完了するRCOOH + NaOH → RCOONa + HO (中和反応)
2RCOONa+CaCl→(RCOO)Ca+2NaCl(複分解)
【0030】■直接法の特徴・反応速度が遅く、反応温度が高い・脂肪酸と金属の酸化物、水酸化物とを生成する金属セッケンの融点以上の温度に保ち、反応によって生じた水を系外に蒸発させて反応を進める2RCOOH + CaO → (RCOO)Ca + HO2RCOOH+Ca(OH)→(RCOO)Ca+2H
【0031】前記■の直接法による反応では生成する金属セッケンの融点以上(例えばステアリン酸カルシウムの場合、融点は約150℃)で反応をさせなければならないので、本発明でいう高温高湿下とは大きく隔たり、直接法の反応が磁気記録媒体の保存時におこっているとは考えにくい。
【0032】従って、本発明において起こっている反応は前記の複分解法であり、反応から明らかなように、この反応の特徴は脂肪酸とカルシウム、バリウムなどの水に不溶性の金属セッケンを生成する元素との直接的な反応ではなく、間接的に反応が起こっていると考えられる。
【0033】突起の発生を抑制するには前記に記載した反応a、bを抑制すると反応cが抑制され、それ以後の反応が起こりにくくなる。従って、反応a、bを抑制することが突起の発生に大きく起因する。その解決方法を次に示す。
・ナトリウムイオンの水への溶出を抑制する・脂肪酸の水への溶出を抑制する・カルシウム、バリウムなどの水に不溶性の金属セッケンを生成する元素の溶出を抑制する以上3つの解決方法により、突起の発生が抑制され、高温高湿下に保存後も高い電磁変換特性を維持する磁気記録媒体が得られる。
【0034】ナトリウムイオンの水への溶出を抑制するために、磁性層に配向処理された強磁性金属粉末の表面に存在する元素の平均存在比率を制御することによりナトリウムイオンの溶出量を制御する。また、ナトリウムイオンの水への溶出及びカルシウム、バリウムなどの水に不溶性の金属セッケンを生成する元素の溶出を抑制するために、強磁性金属粉末の全体組成と表面状態を制御することにより、ナトリウムイオン、アルカリ土類元素の溶出量を制御する。
【0035】本発明に用いられる請求項1に示される配向、乾燥した磁性塗膜中に存在する強磁性金属粉末の表面を形成する元素の平均存在比率はXPS表面分析装置を用いてその値を測定する。
【0036】次にその方法について説明する。XPS表面分析装置を以下の条件にセットする。
X線アノード;Mg分解能;1.5〜1.7eV(分解能は清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定する)
XPS表面分析装置としては、特に限定はなく、いかなる機種も使用することが出来るが、本発明においては、VG社製ESCALAB−200Rを用いた。
【0037】以下の測定範囲でナロースキャンを行い、各元素のスペクトルを測定した。この時、データの取り込み間隔は、0.2eVとし、目的とするピークが以下に示す最低カウント数以上のカウントが得られるまで積算することが必要である。
【0038】
ピーク 測定範囲 最低検出強度 (結合エネルギーeV) (カウント)
C1s 305〜280 任意 Fe2p3/2 730〜700 60万 Na(KL2323) 280〜250 60万オージェピーク得られたスペクトルに対して、C1sのピーク位置が284.6eVになるようにエネルギー位置を補正する。
【0039】次に、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM Ver.2.3(以下、VAMASソフトと称する)上で処理を行うために、前記のスペクトルを各装置メーカーが提供するソフトを用いて、VAMASソフトを使用することができるコンピューターに転送する。そして、VAMASソフトを用い、転送されたスペクトルをVAMASフォーマットに転換した後、データ処理を行う。
【0040】定量処理に入る前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理を行う。各元素のピーク位置を中心として、次表に示す定量範囲でピークエリア強度(cps*eV)を求める。以下に示した感度係数を使用し、各元素の原子数%を求める。原子数はFe原子数100に対する原子数に換算し定量値とする。
元素 ピーク位置 定量範囲 感度係数 (B.E.:ev) (B.E.:ev)
Fe 719.8付近 高B.E.側5ev, 10.54 低B.E.側7evNa 264.0付近 高B.E.側2ev, 7.99 付近にある極小値, 低B.E.側6ev 上記元素以外については以下の条件で測定した。
【0041】
【表1】


【0042】〈試料準備方法〉上記測定をする前に媒体(磁気テープ)の前処理を行う。
【0043】磁気テープからバインダー樹脂をプラズマ低温灰化処理法で除去し磁性粒子を露出させる。処理方法はバインダー樹脂は灰化されるが磁性粒子はダメージを受けない条件を選択する。例えば、以下に記す装置及び処理条件で処理した後、配向処理された強磁性金属粉末の表面を形成する元素の平均存在比率を測定した。
【0044】装 置; 盟和商事PL−850X処理条件;FORWARD POWER 100WREFLECTED POWER 5W真空度 10Pa導入ガス種 Air放電時間 1minまた、請求項2,7に示される強磁性金属粉末全体における元素の重量比は、波長分散型蛍光X線分析装置(WDX)を用いて、各元素の蛍光X線強度を測定した後、ファンダメンタルパラメーター法(以下、FP法と称する。)に従い算出して求める。
【0045】蛍光X線の測定には、理学電気社製のWDXシステム3080を、以下の条件にて使用する。
【0046】X線管球 ;ロジウム管球出力 ;50KV,50mA分光結晶 ;LiF(Fe、Co、Ni、Nd、La、Y、Sr、Ca、Baに対して)、PET(Alに対して)、RX−4(Siに対して)、RX−40(Naに対して)
アブソーバ(Alに対して);1/1(Feのみ1/10)
スリット ;COARSEフィルター;OUTPHA ;15〜30(Al、Si、Naに対して)、10〜30(Fe、Co、Ni、Nd、La、Y、Sr、Ca、Baに対して)
計数時間;ピーク=40秒、バックグラウンド=40秒(ピーク前後の2点を測定)
尚、蛍光X線の測定を行うには、前記装置に限定されるものではなく、種々の装置を使用することが出来る。
【0047】標準試料には、以下の8種類の金属化合物を使用する。
【0048】標準試料1は、Analytical Reference Materials international社製の合金SRM1219(Cを0.15重量%、Mnを0.42重量%、Pを0.03重量%、Siを0.55重量%、Cuを0.16重量%、Niを2.16重量%、Crを15.64 重量%、Moを0.16重量%、Vを0.06重量%を各々含有する)である。
【0049】標準試料2は、Analytical Reference Materials international社製の合金SRM1250(Niを37.78重量%、Crを0.08重量%、Moを0.01重量%、Coを16.10重量%、Alを0.99重量%を各々含有する)である。
【0050】標準試料3は、磁性酸化鉄粉末(Mnを0.14重量%、Pを0.15重量%、Sを0.19重量%、Siを0.36重量%、Coを3.19重量%、Znを1.26重量%、Caを0.07重量%、Naを0.02重量%を各々含有する)である。
【0051】標準試料4は、強磁性金属粉末(Ndを2.73重量%、Naを0.001重量%含有する)である。
【0052】標準試料5は強磁性金属粉末(Srを0.97重量%含有する)である。
【0053】標準試料6は強磁性金属粉末(Baを1.40重量%,Caを0.40重量%含有する)である。
【0054】標準試料7は強磁性金属粉末(Laを2.69重量%含有する)である。
【0055】標準試料8は強磁性金属粉末(Yを1.98重量%含有する)である。
【0056】前記標準試料1及び2における元素の重量%は、メーカー供与のデータシートの値であり、前記標準試料3から8における元素の重量%は、ICP発光分析装置による分析値である。この値を以下のFP法の計算における標準試料の元素組成値として入力する。FP法の計算には、テクノス製のファンダメンタルパラメータソフトウェアVersion2.1を用い、次の条件にて計算する。
【0057】試料モデル ;バルク試料バランス成分試料;Fe入力成分 ;測定X線強度(KCPS)
分析単位 ;重量%算出された各元素の重量比は、Fe原子100重量%に対する他の元素の重量%として換算し、定量値としたものである。
【0058】さらに、強磁性金属粉末の表面における組成元素の平均存在比率は以下の方法で求められる。
【0059】強磁性金属粉末の表面における組成中のFe,Co,Ni,Nd,Si,Al,Sr,Ca,Ba,Y,Na,La各元素の平均存在比率については、XPS表面分析装置を用いてその値を求めた。
【0060】以下にその方法について説明する。
【0061】先ずXPS表面分析装置を以下の条件にセットする。
【0062】X線アノード;Mg分離能 ;1.5〜1.7eV(分解能は、清浄なAgの3d5/2ピークの半値巾で規定する。)
なお、試料の固定には、いわゆる粘着テープは使用しない。XPS表面分析装置の機種としては、特に限定はなく、種々の装置を使用することができるが、本願においては、VG社製ESCALAB−200Rを用いた。
【0063】以下の測定範囲でナロースキャンを行い、各元素のスペクトルを測定した。この時、データの取込み間隔は0.2eVとし、表2に示す最低カウント数以上のカウントが得られるまで積算した。
【0064】得られたスペクトルに対して、Cのピーク位置が284.6eVになるようにエネルギー位置を補正する。
【0065】次に、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM Ver.2.3(以下、VAMASソフトと称する)上で、データ処理を行うために、上記スペクトルを各装置メーカーが提供するソフトを用いて、VAMASソフトを使用することができるコンピュータに転送する。
【0066】そして、VAMASソフトを用い、転送されたスペクトルをVAMASフォーマットに変換した後、以下のデータ処理を行う。
【0067】定量処理に入る前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理を行う。
【0068】定量処理は、次の通りである。
【0069】各元素のピーク位置を中心として下表に示す定量範囲でピークエリア強度を求める。次に下表に示す感度係数を使用し、各元素の原子数%を求めた。原子数%は、Fe原子数100に対する原子数に換算し定量値とした。
【0070】
【表2】


【0071】他に請求項3,4,5,8,9,10 及び14に示されるナトリウムイオンの水への溶出を抑制する方法としては、強磁性金属粉末が水浸したときに強磁性金属粉末より遊離するアルカリ土類元素の金属イオンやナトリウムイオン及び塩酸溶液に溶解するナトリウムの量を制御する方法がある。この強磁性金属粉末より遊離するアルカリ土類元素の金属イオンやナトリウムイオン及び塩酸溶液に溶解するナトリウムの量を以下に示す煮沸法によって求める。
【0072】■サンプルを乳鉢で粉砕する■粉砕したサンプルを天秤にて5.00g精秤する■それを200mlのテフロンビーカーに入れる■純水100mlをホールピペットで取り、ビーカーに入れる■温度調節付の電熱器に乗せ、5分間煮沸する■水道水で20℃付近まで冷却する■100mlのメスフラスコに、No.5Cの濾紙でロートを用いて濾過する(使用する濾紙は、予め純水でよく洗浄してから使用する)
■濾液10mlをホールピペットで取り、測定濃度範囲(0〜5ppm)になるように希釈する(例;5倍→50ml 10倍→100ml 20倍→200ml)
■希釈した溶液を原子吸光分析装置で各元素毎に測定するこの時塩酸溶液添加による抽出法は、前記■の時、純水とともに0.24N−HClを2ml加えるだけで、その他の測定方法は前記操作同様である。
【0073】得られた測定値を、測定値(ppm)×希釈倍率×100÷5に代入することで量を求めることが出来る。
【0074】また、強磁性金属粉末に含有される特定の酸解離定数を有する元素を水浸したときに遊離する金属イオンの量及び該元素の塩酸溶液への溶解量を制御することによっても本発明が解決しようとする課題が解決される。すなわち、金属イオンでの酸解離定数が8以上14未満の元素の水溶液への溶出量が少なくても、金属イオンでの酸解離定数が14以上の元素の水溶液への溶出量が多いと前記cの反応によりプロトンが生成され、前記dの反応が促進され金属イオンでの酸解離定数が8以上14未満の元素が溶出し、アルカリセッケンと反応して水に不溶な金属セッケンを生成し、これが突起の発生原因となる。この時は、前記aの反応を抑制する必要がある。
【0075】従って、金属イオンでの酸解離定数が8以上14未満の元素の量と酸解離定数が14以上の元素の量を特定量に抑制することによって、塗料の分散性、安定性が向上し高い電磁変換特性が得られる。
【0076】金属イオンでの酸解離定数が8以上14未満の元素としては、Tl, Ni2+,Co2+,Mn2+,Ba2+,Ca2+,Sr2+, Mg2+,Nd3+,Pr3+,Ce3+,La3+,Y3+が好ましく、より好ましくはBa2+,Ca2+,Sr2+,Nd3+,La3+,Y3+の元素である。
【0077】また、金属イオンでの酸解離定数が14以上の元素としては、Na,Li,K,Rb,Csが挙げらる。
【0078】本発明の強磁性金属粉末は、第一鉄塩とアルカリを混合した水懸濁液に、酸化性ガスを吹き込むことによって得られるオキシ水酸化鉄を出発原液とする。このオキシ水酸化鉄の種類としては、α−FeOOHが好ましく、その製法としては、第一鉄塩を水酸化アルカリで中和してFe(OH)2 の水懸濁液とし、この懸濁液に酸化性ガスを吹き込んで針状のα−FeOOHとする第一の製法がある。一方、第一鉄塩を炭酸アルカリで中和してFeCO3 の水懸濁液とし、この懸濁液に酸化性ガスを吹き込んで紡錘状のα−FeOOHとする第二の製法がある。このようなオキシ水酸化鉄は第1鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応させて水酸化第一鉄を含有する水溶液を得、これを空気酸化等により酸化して得られたものであることが好ましい。この際、第一鉄塩水溶液にNi塩や、Ca塩、Ba塩、Sr塩等のアルカリ土類元素の塩、Cr塩、Zn塩などを共存させてもよく、このような塩を適宜選択して用いることによって粒子形状(軸比)などをコントロールすることができる。
【0079】第一鉄塩としては、塩化第1鉄、硫酸第1鉄等が好ましい。またアルカリとしてはNaOH、NH4 OH、(NH42 CO3 、Na2 CO3 等が好ましい。また、Ni塩としては塩化ニッケル等、Ca塩、Ba塩、Sr塩としては、それぞれ、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化クロム、塩化亜鉛等の塩化物が好ましい。
【0080】上記のような含水酸化鉄を出発原料とし、このスラリーを用いて次の操作を行う。また、本発明において、Coを導入する場合は前記のように、Alおよび/またはSi、希土類元素を導入する前とするが、具体的には硫酸コバルト、塩化コバルト等のCo化合物を用い、この水溶液を前記のオキシ水酸化鉄のスラリーに攪拌混合することによる。
【0081】次に、Alおよび/またはSiを導入するが、以下のように行う。すなわち、好ましくはCoを含有するオキシ水酸化鉄のスラリーを調製した後、このスラリーにAl化合物および/またはSi化合物を含有する水溶液と、希土類元素の化合物を含有する水溶液とを各々添加し、攪拌混合すればよい。
【0082】Al化合物、Si化合物を含有する水溶液の濃度は、0.5〜1.5Mとすればよく、いずれか一方の化合物のみを含有するものであってもよく、両方の化合物を含有する場合は合計量で上記範囲とすればよい。用いるAl化合物としてはアルミン酸ナトリウム、メタアルミン酸ナトリウム等があり、Si化合物としてはケイ酸ナトリウム等がある。
【0083】本発明において導入するのが好ましい希土類元素としては、Nd、Sm、Pr、La、Y等が挙げられる。
【0084】上記の水溶液を調製するのに用いられる希土類元素の化合物としては、塩化ネオジウム、塩化サマリウム、塩化プラセオジウム、塩化ランタン、塩化イットリウム等の塩化物、硝酸ネオジウム、硝酸ガドリニウム等の硝酸塩などが挙げられる。また2種以上の希土類元素を併用してもよい。
【0085】本発明においては、上記のようにAlおよび/またはSiを含有する水溶液と希土類元素を含有する水溶液とを別々に調製して添加することが好ましいが、場合によってはAlおよび/またはSiと希土類元素とを含有する水溶液を調製して添加してもよい。
【0086】また、別々に調製して添加する態様においては、両液を同時に添加してもよく、一方の液を添加したのち他方の液を添加するものとしてもよい。後者の方法を採る場合Alおよび/またはSiを含有する水溶液を先に、希土類元素を含有する水溶液をその後添加する方が好ましい。
【0087】本発明では、このようにして、アルカリ土類元素、Alおよび/またはSiと希土類元素、さらに好ましくは、Coを含有するオキシ水酸化鉄を得る。
【0088】これを十分に水洗して乾燥し、非還元性雰囲気中で、300〜800℃の温度で熱処理をする。熱処理温度が300℃以下では、α−FeOOHが脱水して生じたα−Fe23 粒子中の空孔が多くなり、その結果、還元後の強磁性金属粉末の特性が劣ることとなる。また、熱処理温度が800℃を越える温度では、α−Fe23 粒子の融解が始まり粒子の形状が変化したり、あるいは焼結が進行し、その結果得られた強磁性金属粉末の特性は劣化する。次に、熱処理後の強磁性金属粉末を水素ガス気流下300〜600℃の温度で還元し、公知の方法で表面に酸化皮膜を形成させて強磁性金属粉末を得る。
【0089】また強磁性金属粉末のNa量(請求項1〜4に示されるようにする量)は、非還元性雰囲気中で熱処理する前、あるいは熱処理後、あるいは酸化皮膜を形成後に水洗することによって達成される。
【0090】更に、強磁性金属粉末のみならず下層に含有される磁性粉末又は非磁性粉末のナトリウムイオンの溶出量を抑制することで、強磁性金属粉末、下層に含有される磁性粉末又は非磁性粉末を浸水したときに不溶性の金属セッケンを生成する元素の水溶液への溶出を防ぐことが出来る。
【0091】本発明においては、脂肪酸の水への溶出を抑制することによっても突起の発生原因である脂肪酸金属塩の結晶の発生を抑制することも可能である。従って、脂肪酸のうちの遊離脂肪酸、つまり磁性粉末などに吸着していない脂肪酸量を抑制することによって解決され、この時磁性層に配向処理された強磁性金属粉末の表面を形成する元素のうちのFe原子数に対するナトリウム原子数を一定量に押さえる必要はなく、また強磁性金属粉末全体における元素の重量比においてもFe原子に対してナトリウム原子の量を一定量に押さえることなく脂肪酸金属塩の結晶を抑制することが出来る。
【0092】遊離脂肪酸量は磁気記録媒体に含有される脂肪酸のうちの8.0mg/m以下が好ましく、より好ましくは4.0mg/m以下、更に好ましくは1.0mg/m以下である。遊離脂肪酸の量は、後述の実施例に記載の測定方法により求められる。
【0093】脂肪酸は磁気記録媒体に含有されれば如何なるところに存在していても構わないが、下層に炭素原子数12〜24個の脂肪酸を含有していることが好ましい。
【0094】請求項1〜4及び6〜9の発明の好ましい態様としては、非磁性支持体と磁性層との間に少なくとも1層の下層を設けることである。この下層に含有される磁性粉末又は非磁性粉末は水浸したときに磁性粉末又は非磁性粉末より遊離するナトリウムイオンが130ppm未満であることが好ましく、更に好ましくは50ppm以下である。
【0095】本発明の下層に用いられる磁性粉末としては、特開平4−248177号の段落番号0018,0019に記載の磁性粉末等を使用することが出来、強磁性酸化鉄粉末、強磁性金属粉末、六方晶板状粉末等いずれの磁性粉末を使用してもよい。これらの中でも強磁性酸化鉄粉末,強磁性金属粉末が好適である。
【0096】また、非磁性粉末としては各種公知の非磁性粉末を適宜選択して使用することが出来、アゾ系の有機色素顔料等の有機粉末、カーボンブラック、グラファイト、TiO、硫酸バリウム、ZnS、MgCO、CaCO、ZnO、CaO、二硫化タングステン、二硫化モリブデン、窒化硼素、MgO、SnO、SiO、Cr、α−Al、α−Fe、α−FeOOH、SiC、酸化セリウム、コランダム、人造ダイヤモンド、α−酸化鉄、ざくろ石、ガーネット、珪石、窒化珪素、炭化珪素、炭化モリブデン、炭化硼素、炭化タングステン、チタンカーバイド、トリポリ、珪藻土、ドロマイト等の無機粉末を挙げることが出来る。これらの中で好ましいのは、カーボンブラック、CaCO、TiO、硫酸バリウム、α−Al、α−Fe、α−FeOOH、Cr等の無機粉末である。さらに好ましくは、カーボンブラック、TiO、α−Feであり、α−Feが最も好ましい。TiOを用いる場合はカーボンブラックとの併用が好ましい。
【0097】また、この磁性粉末又は非磁性粉末はいかなる形状のものを用いても良いが、針状であることが好ましい。本発明においては、粉末の形状が針状のものを用いると、下層の表面の平滑性を向上させることが出来、その上に積層される磁性層の表面の平滑性も向上させることが出来る。その平均長軸径が0.3μm未満であり、好ましくは0.20μm未満であり、平均短軸径は0.05μm未満であり、好ましくは0.03μm未満である。非磁性粉末の軸比としては、通常2〜15であり、好ましくは3〜10である。ここでいう軸比とは、平均短軸径に対する平均長軸径の比(平均長軸径/平均短軸径)のことをいう。このとき用いる針状粉末としてはCo被着γ−Fe、α−Fe、TiOが好ましく、針状のα−Feが特に好ましい。
【0098】また、非磁性粉末の比表面積としては、通常10〜250m/gであり、好ましくは20〜150m/gである。ここで非磁性粉末の比表面積はBET法と称される比表面積の測定方法によって測定された表面積を単位グラム当たりの平方メートルで表したものである。この比表面積並びにその測定方法については、「粉体の測定」(J.M.Dallavelle,ClyeorrJr. 共著、牟田その他訳; 産業図書社刊)に詳述されており、また「化学便覧」応用編1170頁〜1171頁(日本化学会編;丸善(株)昭和41年4月30日発行)にも記載されている。
【0099】比表面積の測定は、例えば粉末を105℃前後で13分間加熱処理しながら、脱気して粉末に吸着されているものを除去し、その後この粉末を測定装置に導入して窒素の初期圧力を0.5kg/mに設定し、窒素により液体窒素温度(−105℃)で10分間測定を行う。測定装置としては例えばカウンターソープ(湯浅アイオニクス社製)を使用する。
【0100】また、非磁性粉末がSi化合物及び/又はAl化合物により表面処理されていることが好ましい。かかる表面処理のなされた非磁性粉末を用いると磁性層である上層の表面状態を良好にすることが出来る。前記Si及び/又はAlの含有量としては、非磁性粉末に対してSi、Alとも0.1〜10重量%であることが好ましい。更に、磁性層表面にはオーバーコート層を設けてもよい。
【0101】本発明は、前記した反応を種々の方法で抑制することによって、高温高湿下に長期に渡って保存しても保存以前に得られるものと同じ高い電磁変換特性を有する磁気記録媒体を得ることが出来るものである。
【0102】本発明において、非磁性支持体の形態は特に制限はなく、主にテープ状、フィルム状、シート状、カード状、ディスク状、ドラム状などの形態を取り得、非磁性支持体の厚みも用途に応じて適宜に最適なものが選択される。また、非磁性支持体は、たとえばコロナ放電処理等の表面処理を施されたものであってもよい。
【0103】更に、非磁性支持体の磁性層が設けられていない面(裏面)には、磁気記録媒体の走行性の向上、帯電防止及び転写防止などを目的として、バックコート層を設けることが好ましく、磁性層と非磁性支持体との間に下引き層を設けることも出来る。
【0104】磁性層または下層は、前記した特定の強磁性金属粉末、磁性粉末又は非磁性粉末を含有するほかは特に制限はなく、種々の方法を用いて形成することが可能である。
【0105】磁性層又は下層はバインダー及びその他の成分を含有してもよい。
【0106】磁性層又は下層に用いるバインダーとしては、例えばポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体等の塩化ビニル系樹脂等が代表的なものであり、これらの樹脂は−SOM、−OSOM、−COOM及び−PO(OMスルホベタイン基から選ばれた少なくとも一種の極性基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0107】但し、前記極性基においてMは水素原子又はNa、K、Li等のアルカリ金属を表し、またMは水素原子、Na、K、Li等のアルカリ金属又はアルキル基を表す。
【0108】本発明においては、バインダーとして前記樹脂を全バインダーの20〜80重量%の使用量で併用することができる。
【0109】本発明においては、磁性層又は下層の品質の向上を図るために、研磨剤、潤滑剤、硬化剤、分散剤、帯電防止剤及び導電性微粉末等の添加剤をその他の成分として含有させることが出来る。
【0110】研磨剤としては、例えば特開平4−214218号の段落番号0105に記載の公知の物質を使用することが出来る。この研磨剤の平均粒子径は、通常0.05〜0.6μmであり、好ましくは0.05〜0.5μmであり、特に好ましくは0.05〜0.3μmである。この研磨剤の磁性層又は下層における含有量としては、通常3〜20重量部であり、好ましくは5〜15重量部である。
【0111】潤滑剤としては、脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを使用することが出来る。この場合、脂肪酸の添加量は磁性粉末又は非磁性粉末に対して0.2〜10重量%が好ましく、特に好ましくは0.5〜5重量%である。脂肪酸と脂肪酸エステルとを併用して潤滑効果をより高めたい場合には、脂肪酸と脂肪酸エステルは重量比で10:90〜90:10が好ましい。脂肪酸としては一塩基酸であっても二塩基酸であってもよく、炭素原子数は6〜30個が好ましく、より好ましくは12〜24個である。
【0112】脂肪酸の具体例としては、特開平4−214218号の段落番号0102に記載の脂肪酸が、脂肪酸エステルの具体例としては、同公報の段落番号0103に記載の脂肪酸エステルが挙げられる。
【0113】また、前記脂肪酸、脂肪酸エステル以外の潤滑剤としてそれ自体公知の物質を使用することが出来、例えばシリコーンオイル、フッ化カーボン、脂肪酸アミド、α−オレフィンオキサイド等を使用することが出来る。
【0114】分散剤としては、同公報の段落番号0093に記載の化合物を挙げることが出来る。これらの分散剤は、通常、磁性粉末又は非磁性粉末に対して0.5〜5重量%の範囲で用いられる。
【0115】帯電防止剤としては、同公報の段落番号0107に記載の界面活性剤を挙げることが出来る。この帯電防止剤は、通常バインダーに対して0.01〜40重量%の範囲で添加される。更に本発明においては、帯電防止剤として導電性微粉末を好ましく用いることが出来る。前記帯電防止剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化錫、銀粉、酸化銀、硝酸銀、銀の有機化合物、銅粉等の金属粒子等、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化チタン等の金属酸化物等の顔料を酸化錫皮膜又はアンチモン固溶酸化錫皮膜等の導電性物質でコーティング処理したもの等を挙げることができる。
【0116】前記導電性微粉末の平均粒子径としては、5〜700nmであり、より好ましくは5〜200nmである。この導電性微粉末の含有量としては、磁性粉末又は非磁性粉末100重量部に対して、1〜20重量部であり、好ましくは2〜7重量部である。
【0117】本発明にかかる磁気記録媒体は、磁性層の塗設を下層が湿潤状態にあるときに行う所謂ウェット−オン−ウェット塗布方式で塗設することが好ましい。このウェット−オン−ウェット塗布方式は公知の重層構造の磁気記録媒体の製造に使用される方法を適宜に採用することが出来る。
【0118】例えば、一般的には磁性粉末、バインダー、分散剤、潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等と溶媒とを混練して高濃度磁性塗料を調整し、次いでこの高濃度磁性塗料を希釈して磁性塗料を調整したあと、この磁性塗料を非磁性支持体の表面に塗布する。前記溶媒としては、例えば特開平4−21418号の段落番号0119に記載の溶媒を用いることが出来る。これらの各種溶媒は単独で使用することも出来るし、またそれらの二種以上を併用することも出来る。
【0119】磁性層形成成分の混練にあたっては、各種の混練分散機を使用することが出来る。この混練分散機としては同公報の段落番号0112に記載のものを挙げることが出来る。
【0120】混練分散機のうち、0.05〜0.5KW(磁性粉末1kgあたり)の消費電力負荷を提供することの出来る混練分散機は、加圧ニーダー、オープンニーダー、連続ニーダー、二本ロールミル、三本ロールミルである。
【0121】また、塗料の塗布にあたっては、ウェット−オン−ウェット塗布方式では、リバースロールと押し出しコーターとの組み合わせ、グラビアロールと押し出しコーターとの組み合わせ等も使用することが出来る。更にはエアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、キャストコーター、スプレイコーター等を組み合わせることが出来る。
【0122】ウェット−オン−ウェット塗布方式における重層塗布においては、下層が湿潤状態のままで上層を塗布を行うので、下層の表面(即ち、上層との境界面)が滑らかになるとともに上層の表面性が良好になり、かつ上下層間の接着性も向上する。
【0123】この結果、特に高密度磁気記録媒体に要求される性能を満たしたものとなる。また膜強度が向上し、耐久性も十分となり、ウェット−オン−ウェット塗布方式により、ドロップアウトも低減することができ、信頼性も向上する。
【0124】次にカレンダリングにより表面平滑化処理を行ってもよい。その後は、必要に応じてバーニッシュ処理又はブレード処理を行ってスリッティングされる。
【0125】表面平滑処理においては、カレンダ条件として温度、線圧力、処理スピード(C/S)等を挙げることができ、本発明においては前記温度を50〜140℃、前記線圧力を50〜1200kg/cm、前記C/Sを20〜600m/分に保持することが好ましい。これらの範囲を外れると、磁気記録媒体の表面性を良好な状態に保つことが困難になる。
【0126】
【実施例】以下の実施例によって本発明の構成、効果を具体的に説明するが、以下に示す成分、割合、操作順序は本発明の範囲に逸脱しない範囲において種々変更可能であり、以下の実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。尚、以下の実施例において、「部」はすべて重量部である。又。各表における***、****は、含有していない、又は検出限界以下の意である。
【0127】下記組成を有する最上層用磁性塗料及び下層用塗料の各成分を、それぞれニーダー及びサンドミルを用いて混練分散して上層用磁性塗料及び下層用塗料を調製した。
{上層用磁性塗料}
強磁性金属粉末(長軸径:0.12μm、Hc(保磁力):1900 Oe、BET:55m/g、σs(飽和磁化):125emu/g、結晶子サイズ:150Å、針状比:8、pH:9.0) 100部(組成を表3,4,6,7,9,11,13及び15に示す)
スルホン酸カリウム基含有塩化ビニル系樹脂 10部 (日本ゼオン(株)製 MR−110)
スルホン酸ナトリウム基含有ポリウレタン樹脂 10部 (東洋紡績(株)製、UR−8700)
α−アルミナ(平均粒径0.15μm) 8部 脂肪酸 1部 (表に指定がある以外はステアリン酸)
ブチルステアレート 1部 シクロヘキサノン 100部 メチルエチルケトン 100部 トルエン 100部{下層用塗料A}
Co−γ−Fe(表3,5,6,7,8,9,12,13,15及び17に示す) 100部 [(長軸径:0.20μm、Hc(保磁力):700 Oe、BET値:45m/g、σs(飽和磁化):75emu/g、結晶子サイズ:250Å、pH:8.5、針状比:10、)Si、Al化合物で表面処理、Si含有量0.1重量%、Al含有量0.3重量%、水溶性Na量、塩酸溶解性Naを示す]
スルホン酸カリウム基含有塩化ビニル系樹脂 12部 (日本ゼオン(株)製 MR−110)
スルホン酸ナトリウム基含有ポリウレタン樹脂 8部 (東洋紡績(株)製、UR−8700)
α−アルミナ(平均粒径0.2μm) 5部 カーボンブラック(DBP吸油量:85ml/100g、pH:8.2、BET値:260m/g、揮発分:1.2%、着色力:140%)(15nm) 10部 脂肪酸 1部 (炭素原子数を表3,5,6,7,8,9,12,13,15及び17に示す)
ブチルステアレート 1部 シクロヘキサノン 100部 メチルエチルケトン 100部 トルエン 100部得られた上層用磁性塗料及び下層用塗料Aのそれぞれに、ポリイソシアネート化合物(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)5部を添加した。
{下層用塗料B}下層用塗料Bは、下層用塗料AにおけるCo−γ−Feに代えて針状α−Fe[長軸径:0.13μm、軸比:7、BET値:55m/g、pH:7.5、結晶子サイズ:200Å、Si、Al化合物で表面処理(Si:0.1wt%、Al:0.3wt%)]を用いた以外は下層用塗料Aと同様にして得た。
{下層用塗料C}下層用塗料AにおけるCo−γ−Feに代えて球状α−Fe[平均粒径:35nm、BET:40m/g、pH:6.5、Si、Al化合物で表面処理(Si:0.1wt%、Al:0.3wt%)]を用いた以外は下層用塗料Aと同様にして得た。
(実施例1−1〜10−5及び比較例5−1〜10−4)各表に示した、強磁性金属粉末を含有する前述の上層用磁性塗料及び下層用塗料を用いて、ウェット−オン−ウェット方式で厚さ10μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した後、塗膜が未乾燥であるうちに磁場配向処理を行ない、続いて乾燥を施してから、カレンダーで表面平滑化処理を行ない、各表に示された厚さを有する下層及び上層からなる磁性層を形成した。
【0128】更に、この磁性層とは反対側の前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの面(裏面)に下記の組成を有する塗料を塗布し、この塗膜が乾燥後、上述したカレンダー条件にしたがってカレンダー加工をすることによって、厚さ0.8μmのバックコート層を形成し、広幅の原反磁気テープを得た。
【0129】
カーボンブラック(ラベン1035コロンビアカーボン社製)(平均粒径25nm) 40部 硫酸バリウム(平均粒子径300nm) 10部 ニトロセルロース 25部 ポリウレタン系樹脂 25部 (日本ポリウレタン(株)製、N−2301)
ポリイソシアネート化合物 10部 (日本ポリウレタン(株)製、コロネートL)
シクロヘキサノン 400部 メチルエチルケトン 250部 トルエン 250部こうして得られた原反磁気テープをスリットして、8mm幅のビデオ用磁気記録媒体を作成した。この磁気記録媒体につき、以下の評価を行った。その結果を表3,5〜8,10,12,14,16及び17に示した。
《評価》
〈磁性塗膜に存在する強磁性金属粉末の表面組成〉;本文中の記載方法で測定した。
〈強磁性金属粉末の全体組成〉;本文中の記載方法で測定した。
〈強磁性金属粉末の表面組成〉;本文中の記載方法で測定した。
〈水浸した際、強磁性粉末より遊離する金属イオンの量〉;本文中の記載方法で測定した。
〈塩酸溶液に浸した際、強磁性粉末より遊離するナトリウムの量〉;本文中の記載方法で測定した。
〈遊離脂肪酸の測定方法〉a.253cmの試料にシクロヘキサン50mlを加え、これを1時間還流煮沸した後、室温に戻し、試料を少量のシクロヘキサンで洗浄してから抽出液(還流後の液)を合わせた。
b.この抽出液に濃度40ppmに調整したパルミチン酸メチル/シクロヘキサン溶液を5ml加える。
c.ロータリーエバポレーターを用いてこの溶液からシクロヘキサンを蒸発させる。
d.濃縮された抽出物に新たにシクロヘキサン0.2mlを加え、そのうち1μlをガスクロマトグラフィーにかける。
e.パルミチン酸メチル及び脂肪酸の濃度とピーク面積との関係から予め作成しておいた検量線から抽出された脂肪酸の量を求める。この値を単位面積1m当たりに換算する。
*ガスクロマトグラフィーは横河電気(株)製「HP5890A」、カラムはヒューレッドパッカード社製「ウルトラ1」を使用した。
〈再生出力〉ソニー社製8ミリビデオカメラCCDV−900により、7MHz及び9MHzでのRF出力(dB)を測定した。
*保存前と、50℃/80%RH120時間保存(カセットの状態)後の両方のサンプルを測定した。
【0130】〈ヘッドクロッグ〉ソニー社製8ミリビデオデッキEVO−550を使用し、全長録画したテープを表に示した環境下で100パス繰り返し走行させたうちのヘッドクロッグ(ヘッド目詰まり)を起こしたパスの回数を測定した。
*保存前と、50℃/80%RH120時間保存(カセットの状態)後の両方のサンプルを測定した。
【0131】〈ドロップアウト〉サンプルを保存する前後に測定する。ソニー社製8mmビデオデッキEVS−900を使用し、Hi8モードで測定した。入力信号としてはモノクロ信号の階段波を録画し、シバソク社製ドロップアウトカウンターVH01BZを使用して10μs/−12dB以上出力の低下した回数の単位時間1分当たりの平均値を求めた。
*保存前と50℃/80%RH120時間保存(カセットの状態で)後の両方のサンプルを測定した。
【0132】
【表3】


【0133】
【表4】


【0134】
【表5】


【0135】
【表6】


【0136】
【表7】


【0137】
【表8】


【0138】
【表9】


【0139】
【表10】


【0140】
【表11】


【0141】
【表12】


【0142】
【表13】


【0143】
【表14】


【0144】
【表15】


【0145】
【表16】


【0146】
【表17】


【0147】次に、本発明の別なる実施例(酸化チタンを用いた例)について説明する。
【0148】下記組成を有する最上層用磁性塗料及び下層用塗料の各成分を、それぞれニーダー及びサンドミルを用いて混練分散して上層用磁性塗料及び下層用塗料を調製した。
【0149】{上層用磁性塗料}実施例1−1〜10−5と同じ。但し、強磁性金属粉末の組成を表18、19、21、22、24、26、27及び28に示す。
【0150】{下層用塗料C}前記下層用塗料AにおけるCo−γ−Feに代えて球状α−Fe[平均粒径:35nm、BET値:40m2 /g、pH:6.5、Si、Al化合物で表面処理(Si:0.1wt%、Al:0.3wt%)]を用いた以外は下層用塗料Aと同様にして得た。
【0151】{下層用塗料D}前記下層用塗料AにおけるCo−γ−Feに代えて球状TiOを用いた以外は下層用塗料Aと同様にして得た。球状TiO[平均粒径:32nm、BET値:40m/g、pH:7.5、結晶系:ルチル、Si、Al化合物で表面処理(Si:0.1wt%、Al:0.3wt%)]
【0152】{下層用塗料E}前記下層用塗料AにおけるCo−γ−Feに代えて針状TiOを用いた以外は下層用塗料Aと同様にして得た。針状TiO[長軸径:0.12μm、軸比:6、BET:40m/g、pH:7.0、結晶子サイズ:220Å、Si、Al化合物で表面処理(Si:0.1wt%、Al:0.4wt%)]
【0153】(実施例1−12〜10−8)各表に示した、強磁性金属粉末を含有する前述の上層用磁性塗料及び下層用塗料を用いて、ウェット−オン−ウェット方式で厚さ10μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した後、塗膜が未乾燥であるうちに磁場配向処理を行ない、続いて乾燥を施してから、カレンダーで表面平滑化処理を行ない、各表に示された厚さを有する下層及び上層からなる磁性層を形成した。
【0154】更に、この磁性層とは反対側の前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの面(裏面)に上記の組成を有する塗料を塗布し、この塗膜が乾燥後、上述したカレンダー条件にしたがってカレンダー加工をすることによって、厚さ0.8μmのバックコート層を形成し、広幅の原反磁気テープを得た。
【0155】以下、実施例1−1〜10−5と同じくスリットし、評価した。その結果を次に示す。
【0156】
【表18】


【0157】
【表19】


【0158】
【表20】


【0159】
【表21】


【0160】
【表22】


【0161】
【表23】


【0162】
【表24】


【0163】
【表25】


【0164】
【表26】


【0165】
【表27】


【0166】
【表28】


【0167】
【表29】


【0168】
【表30】


【0169】
【表31】


【0170】
【表32】


【0171】上記の表の結果から明らかな如く、本発明が極めて優れていることがわかる。
【0172】
【発明の効果】本発明による磁気記録媒体は、高温高湿下に長期に渡り保存してもドロップアウトの増加、再生出力の低下、ヘッドの目詰まり等を発生せずに、保存以前に得られる高い電磁変換特性を維持することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記磁性層に配向処理された前記強磁性金属粉末の表面を形成する元素の平均存在比率が、Fe原子数100に対してNa原子数1未満、アルカリ土類元素の原子数40以下、希土類元素の原子数1〜50であり、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記強磁性金属粉末全体における元素の重量比が、Fe原子100重量部に対してAl原子2〜10重量部、希土類元素の原子1〜8重量部、アルカリ土類元素の原子0.1〜5重量部、Na原子0.01重量部未満であり、かつ前記強磁性金属粉末の表面を形成する元素の平均存在比率が、Fe原子数100に対してAl原子数70〜300、希土類元素の原子数0.5〜60、アルカリ土類元素の原子数40以下、Na原子数4未満であり、かつ前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項3】非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記強磁性金属粉末は水浸したときに、該強磁性金属粉末より遊離するアルカリ土類元素の金属イオンが30ppm未満、ナトリウムイオンが200ppm未満、かつ塩酸溶液に溶解するナトリウムが300ppm未満であって、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項4】非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記強磁性金属粉末は、水浸したときに遊離する金属イオンが90ppm以下である遊離状態での酸解離定数が8以上14未満の元素、及び水浸したときに遊離する金属イオンが200ppm未満であり、かつ塩酸溶液への溶解量が300ppm未満である遊離状態での酸解離定数が14以上の元素を含有し、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項5】非磁性支持体上に強磁性金属粉末を含有する上層と磁性粉末又は非磁性粉末を含有する下層とを設けてなる磁気記録媒体において、前記磁性粉末又は非磁性粉末は水浸したときに、該磁性粉末又は非磁性粉末より遊離するナトリウムイオンが100ppm未満、かつ塩酸溶液に溶解するナトリウムが130ppm未満であって、前記上層と前記下層の少なくとも一方に炭素原子数12〜24個の脂肪酸を含有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項6】非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記磁性層に配向処理された前記強磁性金属粉末の表面を形成する元素の平均存在比率が、Fe原子数100に対してNa原子数1以上、アルカリ土類元素の原子数40以下、希土類元素の原子数1〜50であり、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であり、かつ該脂肪酸のうちの遊離脂肪酸量が8.0mg/m以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項7】非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記強磁性金属粉末全体における元素の重量比が、Fe原子100重量部に対してAl原子2〜10重量部、希土類元素の原子1〜8重量部、アルカリ土類元素の原子0.1〜5重量部、Na原子0.1重量部未満であり、かつ前記強磁性金属粉末の表面を形成する元素の平均存在比率が、Fe原子数100に対してAl原子数70〜300、希土類元素の原子数0.5〜60、アルカリ土類元素の原子数1〜40、Na原子数4以上であり、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であり、かつ該脂肪酸のうちの遊離脂肪酸量が8.0mg/m以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項8】非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記強磁性金属粉末は水浸したときに該強磁性金属粉末より遊離するアルカリ土類元素の金属イオンが30ppm以下、ナトリウムイオンが200ppm以上、及び/又は塩酸溶液に溶解するナトリウムが300ppm以上であって、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であり、かつ該脂肪酸のうちの遊離脂肪酸量が8.0mg/m以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項9】非磁性支持体上に少なくとも強磁性金属粉末を含有する磁性層を有し、かつ脂肪酸を含有する磁気記録媒体において、前記強磁性金属粉末は、水浸したときに遊離する金属イオンが90ppm以下である遊離状態での酸解離定数が8以上14未満の元素及び水浸したときに遊離する金属イオンが200ppm未満であり、及び/又は塩酸溶液への溶解量が300ppm以上である遊離状態での酸解離定数が14以上の元素を含有し、前記脂肪酸の炭素原子数が12〜24個であり、かつ該脂肪酸のうちの遊離脂肪酸量が8.0mg/m以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項10】非磁性支持体上に強磁性金属粉末を含有する上層と磁性粉末又は非磁性粉末を含有する下層とを設けてなる磁気記録媒体において、前記磁性粉末又は非磁性粉末は水浸したときに、該磁性粉末又は非磁性粉末より遊離するナトリウムイオンが100ppm以上、及び/又は塩酸溶液に溶解するナトリウムイオンが130ppm以上であって、前記上層と前記下層の少なくとも一方に炭素原子数12〜24個の脂肪酸を含有し、かつ該脂肪酸のうちの遊離脂肪酸量が8.0mg/m以下であることを特徴とする磁気記録媒体。