説明

磁気記録媒体

【構成】 有機高分子体からなる基材フィルムの少なくとも片面に磁性層を設けてなる磁気記録媒体であって、該基材フィルム中の、最大径が200μm以上であり、深さが該基材フィルム厚みの50%以上である欠点の個数が1個/m2 以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【効果】 走行性に優れ、かつドロップアウトの少ない、優れたデ−タストレ−ジ用フィルムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気記録媒体用フィルム、特にコンピュ−タのメモリ−用途であるデジタルデ−タストレ−ジ用として好適に用いられる磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、ビデオテ−プ、デ−タメモリ−用テ−プなどの磁気記録媒体では高密度記録化が要求され、特公平3−26453号公報などの方法が提案されている。またそのベ−スフィルムについては平坦性、無欠点性などが特に要求され、例えば特開昭58−155940号公報などが提案されている。また特に近年、テ−プは長時間化の傾向にあり、そのベ−スフィルムの薄膜化および高弾性化が望まれている。例えば特公平5−59813号公報などにポリエチレン−2,6−ナフタレ−トを使用した、また特公昭55−34494号公報、特公平2−27426号公報、特公平2−51463号公報などに芳香族ポリアミドを用いた磁気記録媒体が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の手段を用いる場合に下記の問題がある。
【0004】第1に、デジタルビデオテ−プやコンピュ−タ用デ−タストレ−ジ用テ−プなどでは、特に高密度記録化の要求のため、無欠点性が必要となり、従来のオ−ディオ用あるいは一般ビデオ用テ−プではその要求に答えられない。
【0005】第2に、高密度記録化のため、その基材フィルム表面は特に平滑性が求められるが、その達成によって走行性が著しく損なわれる、すなわち二律背反の関係にあり、両者を具備したフィルムを製造することは困難であった。さらに、基材フィルムの欠点によって、テ−プの走行が停止する問題が懸念され、その改善が必要となっている。
【0006】以上の理由から、従来の手法では、実際の使用の上での要求を満たすことは困難であった。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる問題点を解決するために、本発明は、以下の構成からなる。すなわち有機高分子体からなる基材フィルムの少なくとも片面に磁性層を設けてなる磁気記録媒体であって、該基材フィルム中の、最大径が200μm以上であり、深さが該基材フィルム厚みの50%以上である欠点の個数が1個/m2 以下であることを特徴とする磁気記録媒体に関することである。
【0008】本発明で使用される基材フィルムには、有機高分子体が使用されるが、好ましくは主としてポリエステルフィルム、芳香族ポリアミドまたは芳香族ポリイミドフィルムが使用される。ここで「主として」とは、ポリエステル、芳香族ポリアミドまたは芳香族ポリイミドを50モル%以上含むことを指す。
【0009】ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレン−2,6−ナフタレ−ト、ポリエチレンα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン4,4−ジカルボキシレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−トなどが挙げられるが、特にポリエチレン−2,6−ナフタレ−トおよびポリエチレンテレフタレ−トが好ましい。また上記ポリエステルはホモポリエステルであってもよいし、また他のポリエステルとのコポリエステルであってもよいし、また単に混合したものでも良い。
【0010】また、芳香族ポリアミドとは、次の一般式(I)および/または一般式(II)で表される繰り返し単位を50モル%以上、好ましくは70モル%以上含むものからなる。
【0011】一般式(I)
【化1】


一般式(II)
【化2】


ここでAr1 、Ar2 、Ar3 は、例えば、
【化3】


などが挙げられ、X、Yは−O−、−CH2 −、−CO−、−SO2 −、−S−、−C(CH3 2 −等から選ばれるが、これに限定されるものではない。更にこれらの芳香環上の水素原子の一部が、塩素、フッ素、臭素などのハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、アルキル基、アルコキシル基などの置換基で置換されているものも含み、また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されているものも含む。なお、Ar1 、Ar2 、Ar3 は同じかまたは異なってもよい。またこれらは2種以上の共重合体であっても良いし、混合体であっても良い。さらに上記以外の芳香族または脂肪族の共重合成分を50モル%未満の割合で共重合されていても良い。ここで共重合可能な成分としてはシクロヘキシレンなどの脂環族化合物、ヘキシレンなどの脂肪族化合物を挙げることができる。また上記の芳香環がパラ位で結合されたものが、全芳香環の50モル%以上、好ましくは75モル%以上をを占める重合体が、フィルムのヤング率が高く耐熱性も良好となるため好ましい。また芳香環上の水素原子の一部がハロゲン基(特に塩素)で置換された芳香環が全体の30モル%以上であると耐湿性が向上し、吸湿による寸法変化、剛性低下などの特性が改善されるために好ましい。
【0012】また、芳香族ポリイミドとは、重合体の繰り返し単位の中に芳香環とイミド環を1つ以上含むものであり、一般式(III )および/または一般式(IV)で表される繰り返し単位を50モル%以上、好ましくは70モル%以上含むものである。
【0013】一般式(III )
【化4】


一般式(IV)
【化5】


ここでAr4 、Ar6 は少なくとも1個の芳香環を含み、イミド環を形成する2つのカルボニル基は芳香環上の隣接する炭素原子に結合している。このAr4 は、芳香族テトラカルボン酸あるいはこの無水物に由来する。代表例としては次のようなものが挙げられる。
【0014】
【化6】


ここでZは−O−、−CH2 −、−CO−、−SO2 −、−S−、−C(CH3 2 −等から選ばれるが、これに限定されるものではない。またAr6 は無水カルボン酸あるいはこのハライドに由来する。Ar5 、Ar7 は例えば
【化7】


などが挙げられ、X、Yは−O−、−CH2 −、−CO−、−SO2 −、−S−、−C(CH3 2 −等から選ばれるが、これに限定されるものではない。更にこれらの芳香環上の水素原子の一部が、塩素、フッ素、臭素などのハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、アルキル基、アルコキシル基などの置換基で置換されているものも含み、また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されているものも含む。また本発明の芳香族ポリイミドには他の繰り返し単位が共重合、あるいは単に混合されていても良い。
【0015】また、本発明のポリエステル、芳香族ポリアミドあるいは芳香族ポリイミドには、フィルムの物性を損なわない程度に滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤その他の添加剤等が添加されていても良い。
【0016】本発明の基材フィルムの少なくとも一方向のヤング率が800Kg/mm2 以上であることが好ましい。すなわち磁気テ−プの出力は、テ−プと磁気ヘッドのヘッドタッチ性の向上に伴って上がるが、そのために基材フィルムの高ヤング率が求められる。記録方法が固定ヘッド方式の場合は長手方向の、ヘリカルスキャン方式の場合は幅方向の高ヤング率が特に必要であり、基材フィルムのいずれの方向のヤング率も800Kg/mm2 未満であれば、いずれの記録方式を採用しても高出力は得られない。なお基材フィルムの少なくとも一方向のヤング率は、好ましくは900Kg/mm2 以上、特に好ましくは1000Kg/mm2 以上である。なお、すべての方向のヤング率が800Kg/mm2 以上であることが好ましいのは言うまでもない。なお、デジタルデ−タストレ−ジ用テ−プではヘリカルスキャン方式を採用しているので、前述の通り、ヘッドタッチ性向上のため、基材フィルムの幅方向のヤング率が900Kg/mm2 以上であることが好ましい。なお、基材フィルムの幅方向のヤング率は好ましくは1000Kg/mm2 以上、さらに好ましくは1100Kg/mm2 である。なお、本発明のヤング率を達成するため、有機高分子フィルムに非磁性金属の層を設けても良い。
【0017】本発明の基材フィルムの一方の面(A面)の中心線平均粗さRaAは0.010μm未満であることが好ましい。ここでA面は磁性面とすることが好ましく、電磁変換特性の向上のために平滑な面であることが好ましい。すなわち、A面の中心線平均粗さRaAが0.010μm以上であれば、出力の低下を引き起こす。より好ましくは、A面の中心線平均粗さRaAは0.008μm未満、更に好ましくはRaAが0.006μm未満ある。
【0018】また、B面の中心線平均粗さRaBは0.030μm未満であることが好ましい。ここでB面は走行面とするため粗面であることが好ましいが、RaBが0.030μm以上であれば、基材フィルムをロ−ル状にした際や、磁性体を設けてリ−ル状にした際に、磁性面側に凹みを生じせしめ、ひいては出力の低下を引き起こす。なお、B面の中心線平均粗さは、好ましくはRaBが0.020μm〜0.002μm、より好ましくはRaBが0.010μm〜0.005μmである。この表面粗さを達成するためには、B層に粒子を含有せしめても良い。ここでB層とはB面を構成する層を指す。すなわち粒子径が10〜500nm、さらに好ましくは50〜400nmの範囲であり、材料としては、例えば架橋ポリビニルベンゼン、アクリル粒子、架橋ポリスチレン、ポリエステル粒子などの有機高分子からなる粒子、あるいは酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、コロイダルシリカ等の無機粒子が挙げられる。該粒子の形状については、突起高さや突起の形状を制御しやすい観点から球状粒子であることが特に好ましい。またフィルム表面に形成する突起の高さをそれぞれ均一にするために、該粒子の粒度分布が相対標準偏差で0.5以下であることが特に好ましい。該粒子の含有量は0.001〜3重量%、好ましくは0.01〜1重量%である。該粒子を含有せしめる方法としては、重合前、重合中、重合後のいずれに添加しても良い。なお平滑性を損なわない限りにおいてはA層に粒子を添加しても良い。ここでA層とはA面を構成する層を指す。その際は上記B層に含有せしめる粒子、含有量および添加法を適用しても良いし、また他の粒子、含有量および添加法を用いても良い。なお、本発明の基材フィルムはA層およびB層を含む、少なくとも2層以上からなる積層フィルムであることが好ましい。
【0019】本発明の該基材フィルムのA面およびB面のいずれかあるいは両方に下記の水溶性高分子や微細粒子、あるいはその両方とからなる水性塗液を塗布せしめてなる塗膜を形成しても良い。塗膜を形成する際には、塗膜形成後の表面粗さについてB面が中心線平均粗さで0.020μm未満の面であり、A面については中心線平均粗さで0.010μm未満の範囲の面であることが好ましい。上記の水溶性高分子としては、分子量が1万〜200万、好ましくは10万〜100万のものが使用される。かかる水溶性高分子としては、ポリビニルアルコ−ル、トラガントゴム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチンメチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−ス等が適用できる。本発明の塗膜中および塗膜表面に存在する微細粒子とは、粒子径が5nm以上のものであり、高さは100nm以下、好ましくは50nm以下である。かかる微細粒子としては、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、架橋ポリビニルベンゼン、アクリル樹脂粒子や、該粒子表面にフィルムと接着する成分を積層せしめた粒子などが用いられる。ここで高さとは、塗膜形成面(ポリエステルフィルムの表面)から塗膜表面上に存在する微粒子の最大高さを指し、その値は100nm以下である。本発明の効果を損なわない限りにおいて、塗膜は他の成分を含有することができる。かかる他の成分としては、水溶性ポリエステル、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ワックスなどや、これらの混合物が挙げられる。
【0020】本発明では基材フィルム中の、最大径が200μm以上であり、深さが該基材フィルム厚みの50%以上である欠点の個数が1個/m2 以下である必要がある。すなわち、深さが該基材フィルム厚みの50%以上である欠点があれば、磁性層を設けてテ−プとした際に、磁性層の脱落が起こり、電磁変換特性の1つであるドロップアウトを引き起こす。特に該欠点のうち最大径が200μm以上の欠点では、ドロップアウトに加え、使用途中でテ−プ走行を停止させる、いわゆるメディアエラ−と呼ばれる重大問題を引き起こす原因である、後で述べる「光透過性欠点」となるため好ましくない。なお、最大径が200μm以上であり、深さが該基材フィルム厚みの50%以上である欠点の個数は、0.1個/m2 以下、より好ましくは皆無である。ここで、「皆無」とは、フィルム1m2 当たりの上記欠点個数が0個であることを指す。このような、深さが該基材フィルム厚みの50%以上となる欠点は、たとえば基材フィルムの穴空きや、厚みの減少が挙げられる。
【0021】また、基材フィルム中の、最大径R(μm)であり深さが該基材フィルム厚みの50%以上である欠点の個数A(個/m2 )が下記式を満足することが好ましい。
【0022】R>150 A≦2R>100 A≦5すなわち、この範囲を越えるような欠点の多い基材フィルムでは、電磁変換特性の一つであるドロップアウトが多くなる。
【0023】さらに、本発明の基材フィルム中の、最大長L(μm)である異物欠点の個数B(個/m2 )が下記式を満足することが好ましい。
【0024】L>300 B=0L>200 B≦1L>100 B≦3ここで異物欠点とは、欠点の内部あるいは周辺部分に核となる該フィルム以外の成分からなる異物が存在する欠点を指す。ここで核となる該フィルム以外の成分からなる異物としては、例えば変性ポリマ−、金属や金属酸化物、および繊維状物などが挙げられる。異物欠点の場合でも、この範囲を越えるような欠点の多い基材フィルムでは、電磁変換特性の一つであるドロップアウトが多くなる。
【0025】上記各欠点条件を満足するため、ポリマ−の溶融状態、あるいは溶液状態にて所定の濾過精度を有するフィルタ−を通過せしめてポリマ−中に存在する粗大異物を除去する方法、キャスティングおよび延伸装置を平滑化する方法、およびキャスティングおよび延伸装置をクリ−ン化する方法、およびキャスティングおよび延伸装置の雰囲気をクリ−ン化する方法のいずれか、あるいは組合わせ、あるいはすべてを採用することが好ましい。ここでフィルタ−の濾過精度とは、粒子をポリマ−あるいは溶媒などに分散し、フィルタ−を通過させた時に、丁度95%フィルタ−上に補足された粒子の粒径として定義する。当然この濾過精度の値が小さくなるほど、より小さな異物の除去が可能となる。本発明のフィルタ−の濾過精度としては4000nm未満、好ましくは3000nm未満、さらに好ましくは1500nm未満である。なお複合フィルムとする場合は、少なくとも磁性面側のポリマ−を通過させるフィルタ−は、上記の範囲であることが好ましい。
【0026】一方キャスティングおよび延伸装置の平坦化としては、高さ、あるいは深さが30μm以上の突起が皆無であることが好ましい。
【0027】さらにキャスティングおよび延伸装置をクリ−ン化としては、高さが30μm以上である異物がなくなる様に、水またはその他有機溶剤にて洗浄することが好ましい。
【0028】また、キャスティングおよび延伸装置の雰囲気をクリ−ン化する方法としては、周囲をエアフィルタ−にて覆う方法、あるいはいわゆるクリ−ンル−ムにて製膜する方法がある。この際の雰囲気のクリ−ン度は、好ましくはアメリカ連邦規格Fed.Std.209Bに定めるクリ−ンル−ム規格で、クラス1000よりクリ−ンであること、好ましくはクラス100よりクリ−ンであること、より好ましくはクラス10よりクリ−ンであることである。
【0029】なお本発明の磁気記録媒体は、最大径が200μm以上である光透過性欠点の個数が皆無であることが好ましい。すなわち、このような欠点がテ−プ中に存在すると、前述のメディアエラ−を引き起こし、記録自体が不可能となり易い。なお、最大径が150μm以上200μm未満の範囲の光透過性欠点の個数が皆無であること、150μm未満の光透過性欠点の個数が皆無であることが好ましい。
【0030】なお本発明の磁気記録媒体は、総厚みで8μm未満であることが好ましい。ここで総厚みとは基材フィルムに磁性層、バック層および保護層などをすべて設けた後の厚みを指す。すなわち総厚みが8μm以上であれば、カセットにした際の長時間化が困難となる。なお総厚みは、好ましくは7μm未満、より好ましくは6μm未満である。
【0031】次に本発明フィルムの製造方法について述べるがこれに限定されるものではない。
【0032】まずポリエステルを基材フィルムとして使用の場合は、まずポリエステルペレット十分に乾燥させる。その後にポリエステルペレットを溶融状態とし、濾過精度が4000nm未満のフィルタ−によって濾過せしめ、口金からシ−ト状物として押出する。複合フィルムとする場合、および粒子を添加する場合の粒子添加法、溶融法、押出法および積層法については公知の方法を適用する。得られた該シ−ト状物をフィルム長手方向あるいは幅方向に一方向に延伸し、その後に該方向の直角方向に延伸を行ない2軸方向に配向せしめる。さらに強力化する場合は、該延伸が終了した後、さらにフィルム長手方向および幅方向に再延伸する。なお、該フィルムに塗膜を設ける場合は、口金からのシ−ト状物あるいは、該シ−ト状物を一方向に延伸した後に、その少なくとも片面に、水溶性高分子および/又は微細粒子とからなる水溶液を塗布し、乾燥し、その後2軸配向せしめる。延伸終了後に該フィルム両端を把持した状態で、ステンタ−にて180〜250℃の温度範囲で5秒以上熱処理し、最終的には所定の幅に裁断し製品とする。
【0033】また、基材フィルムとして芳香族ポリアミドを使用する場合は、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性有機溶媒中で酸クロライドとジアミンの溶液重合にて得る。この際に発生する塩化水素は水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化リチウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤あるいはエチレンオキサイド、トリエチルアミン、ジエタノ−ルアミンなどの有機の中和剤によって中和する。これらのポリマ溶液はそのまま製膜原液として使用しても良く、また、一旦単離したのち有機溶剤あるいは硫酸などの無機溶剤に再溶解して用いても良い。また表面粗さの調整などのため、粒子を添加する場合は、この際に添加することが好ましい。なお添加方法および希釈方法は公知の方法が適用できる。このようにして得られた製膜原液を、いわゆる溶液製膜法によってフィルム化する。なお、溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがあり、いずれの方法を用いても差支えないが、ここでは乾湿式法を例にとる。
【0034】まず製膜原液を口金からドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜自体が自己支持性を持つまで乾燥する。続いて該薄膜を支持体から剥離し、水中を通過させ脱塩、脱溶媒する。この際に該薄膜の延伸を行っても良い。続いて該薄膜の両端を把持した状態で、ステンタ−にて該薄膜を乾燥する。さらに該薄膜の両端を把持した状態で、ステンタ−にて100〜400℃の温度範囲で5秒間以上熱処理し、最終的には所定の幅に裁断し製品とする。
【0035】なお磁気記録媒体とするには、該フィルムの表面に磁性体粉末を含んだ高分子バインダ−を塗布する方法、あるいはコバルト等の磁性金属を減圧下で蒸着する方法によって磁性体を施し、表面処理などを施した後に所定の幅に裁断し、カセット等に組み込み製品とする。このようにして得られたテ−プは、コンピュ−タメモリ−用のデジタルデ−タストレ−ジ用途に特に好適である。
【0036】
【特性の測定法】本発明の特性値は次の測定法、評価基準によるものである。
【0037】■ヤング率の測定フィルムを試料幅10mm、長さ150mmに切断し、チャック間100mmにして引張速度300mm/分、チャ−ト速度500mm/分にて、インストロンタイプの万能引張試験装置で引張る。得られた荷重−伸び曲線の立上がり部の接線よりヤング率を求める。
【0038】■表面粗さ(Ra)
小坂研究所製の高精度薄膜段差測定器ET−10を用いて測定した。条件は下記のとおりであり、20回の測定の平均値をもって値とした。
【0039】・触針先端半径:0.5μm・触針荷重 :5mg・測定長 :0.5mm・カットオフ値:0.08mmなお、Raの定義は、たとえば奈良治郎著「表面粗さの測定・評価法」(総合技術センタ−、1983)に示されているものである。
【0040】■基材フィルムの欠点個数の測定欠点個数については下記の方法で測定する。
【0041】まず得られたフィルムに、偏光を通過させ、その上から偏光板にて最も暗くなる状態としてフィルムを観察する。偏光の状態が著しく変化している部分を欠点としてサンプリングし、顕微鏡にて観察し、欠点の種類を分類する。
【0042】欠点の深さについては、サンプリングした欠点をフィルム面に対して垂直な面で切開し、その断面を走査型電子顕微鏡にて観察して求めた。なお基材フィルム厚みは、欠点以外の箇所の10点を上記と同じく方法で測定し、その平均値として求めた。なお、顕微鏡観察で、穴が貫通しているものについては当然、深さが該基材フィルム厚みの50%以上となる欠点として分類する。該欠点の最大径は顕微鏡写真から求める。
【0043】なお異物欠点は、透過顕微鏡にて観察し、核となる異物がある欠点であり、その最大長は顕微鏡写真から求める。
【0044】また異物欠点であっても、深さが該基材フィルム厚みの50%以上となる欠点が100μmの距離に隣接する場合は、深さが該基材フィルム厚みの50%以上となる欠点として計数し、異物欠点としては計数しない。
【0045】上記方法でフィルム1m2 当たりの個数を求める。
【0046】■ドロップアウトの測定得られたフィルムの磁性面側に、以下の組成からなる磁性塗膜を乾燥後の膜厚で2μmとなるように塗設した。
【0047】・γ−Fe2 3 微粉末:200重量部・ポリウレタン樹脂 : 30重量部・ニトロセルロ−ス : 10重量部・塩化ビニル : 10重量部・ポリイソシアネ−ト : 5重量部(溶媒:メチルエチルケトン)このようにして得られた磁性層塗設後のフィルムを、1/2インチにスリットし、松下電器(株)製NV−3700型ビデオデッキにより、常速にて4.4メガヘルツの信号を記録し、該テ−プを再生し、大倉インダストリ−(株)製ドロップアウトカウンタ−にて15μsec−20dBにおけるドロップアウト数を20分間測定し、1分間当たりのドロップアウト数(個/分)に換算した。
【0048】■磁気記録媒体の欠点個数上記によって得られたドロップアウトの箇所をサンプリングし、透過顕微鏡にて観察し、光源の光が透過しているものを透過性欠点と分類する。得られた値を1m2 当たりの個数に換算した。なお、顕微鏡での観察で、穴が貫通しているものについては当然、光透過性欠点として分類する。
【0049】
【実施例】次に実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。
【0050】(実施例1)N−メチルピロリドン(NMP)3200部に2−クロルパラフェニレンジアミン114部、4、4−ジアミノジフェニルエ−テル40部を溶解させ、これに2−クロルテレフタル酸クロリド237.5部を添加し、2時間撹拌し重合した。これを水酸化リチウムで中和して、ポリマ−濃度10重量%、粘度3000ポイズの芳香族ポリアミド溶液を得た。この溶液に、一次粒径16nmの乾式シリカをポリマ当たり2重量%添加した。
【0051】このようにして得られたポリマ−溶液を用いて、クリ−ン度がクラス1000の製膜室内で製膜した。まずこのポリマ−溶液を濾過精度4μmのフィルタ−で濾過した後、高さおよび深さ30μm以上の突起、および異物が皆無であるベルト上に流延し、180℃の熱風で2分間加熱して溶媒を蒸発させ、自己支持性を得たフィルムをベルトから連続的に剥離した。次にNMPの濃度勾配をつけた水槽内へフィルムを導入して残存溶媒と中和で生じた無機塩の水抽出を行った。この際にフィルムの長手方向に1.2倍に延伸を実施した。続いて、280℃のステンタ−にて水分を乾燥、幅方向に1.3倍に延伸、および熱処理を、合計1.5分間行い、20℃/秒の速度で徐冷した。最終的に、厚さ5μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0052】(実施例2)エチレングリコ−ルと、ジメチルナフタレ−トの重合により、実質的に粒子を含まないポリエチレンナフタレ−トのペレットAを得た。このペレットAを磁性面側とし、平均粒径0.3μmで粒度分布の球状の架橋ポリスチレン粒子で、該粒子の含有量が0.2重量%であるペレットBを走行面側とする複合フィルムを、クリ−ン度がクラス1000の製膜室内で製膜した。まずペレットAについては溶融押出機から、濾過精度1.2μmのフィルタ−にて濾過し、ペレットBについてはペレットAで用いたものとは別の溶融押出機から、濾過精度5μmのフィルタ−にて濾過し、スリット状口金真上に設置したピノ−ルでポリマ−厚み方向に積層し、未延伸フィルムを作った。その未延伸フィルムを長手方向に135℃で3.5倍に延伸した。なお延伸装置をあらかじめ清掃し、高さおよび深さ30μm以上の突起、および異物は皆無であった。その後、ステンタ−にて横方向に135℃で5倍に延伸し、さらにステンタ−にて横方向に200℃で1.3倍に延伸し、延伸終了後にステンタ−にて200℃で10秒間、熱処理を施し、厚さ5μmのフィルムを製造した。
【0053】(実施例3)実施例1の方法において、フィルム長手方向の1.2倍の延伸に対して1.15倍の延伸に、幅方向の1.3倍の延伸に対して1.4倍延伸する他は、実施例1と同じ方法で本発明を実施した。
【0054】(実施例4)実施例2の方法において、長手方向の延伸の後に下記の水性塗液を磁性面に塗布した他は、実施例2と同じ方法で本発明を実施した。
【0055】カルナバワックス 0.1重量%水溶性ポリエステル 0.4重量%コロイダイルシリカ 0.03重量%(平均粒径18nm)
(実施例5)実施例2の方法について、ポリエチレンナフタレ−トの代わりにポリエチレンテレフタレ−トを用い、長手方向に108℃で3.00倍に延伸し、その後、ステンタ−にて横方向に90℃で3.75倍に延伸し、その後さらにステンタ−にて横方向に200℃で1.3倍に延伸し、その後に真空下で磁性面にアルミニウムを0.2μm蒸着する他は、実施例2と同じ方法で本発明を実施した。
【0056】(比較例1)実施例1の方法について、高さおよび深さ30μm以上の突起、および異物が皆無であるベルトの代わりに、高さ30μmの突起が10個/m2のベルトを使用する他は、実施例1と同じ方法で本発明を実施した。
【0057】(比較例2)実施例2の方法について、延伸装置を清掃せず、高さ30μm以上の突起が15個である延伸装置を使用する他は、実施例2と同様の方法で本発明を実施した。
【0058】(比較例3)実施例5の方法において、延伸装置をあらかじめ清掃せず、高さ30μm以上の突起が15個である延伸装置を使用し、かつ延伸終了後にアルミニウムを蒸着しない他は、実施例5と同様の方法で本発明を実施した。
【0059】
【表1】


【0060】
【発明の効果】本発明フィルムは、有機高分子からなる無欠点性の優れた基材フィルムにより、ドロップアウトの少ない、メディアエラ−の発生しない磁気テ−プ、特に詳しくはデ−タストレ−ジ用テ−プに適した磁気記録媒体を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機高分子体からなる基材フィルムの少なくとも片面に磁性層を設けてなる磁気記録媒体であって、該基材フィルム中の、最大径が200μm以上であり、深さが該基材フィルム厚みの50%以上である欠点の個数が1個/m2 以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】 該基材フィルムの少なくとも一方向のヤング率が800Kg/mm2 以上であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】 該基材フィルムの一方の面(A面)の中心線平均粗さRaAが0.010μm未満であり、かつ他方の面(B面)の中心線平均粗さRaBが0.030μm未満の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】 有機高分子基材フィルムが主としてポリエステル、芳香族ポリアミドまたは芳香族ポリイミドからなることを特徴とする請求項1〜3に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】 基材フィルム中の、最大径が200μm以上であり、深さが該基材フィルム厚みの50%以上である欠点の個数が皆無であることを特徴とする請求項1〜4に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】 基材フィルム中の、最大径R(μm)であり、深さが該基材フィルム厚みの50%以上である欠点の個数A(個/m2 )が下記式を満足することを特徴とする請求項1〜5に記載の磁気記録媒体。
R>150 A≦2R>100 A≦5
【請求項7】 基材フィルム中の、最大長L(μm)である異物欠点の個数B(個/m2 )が下記式を満足することを特徴とする請求項1〜6に記載の磁気記録媒体。
L>300 B=0L>200 B≦1L>100 B≦3
【請求項8】 総厚みが8μm未満であることを特徴とする請求項1〜7に記載の磁気記録媒体。
【請求項9】 磁気記録媒体中の、最大径が200μm以上である光透過性欠点の個数が皆無であることを特徴とする請求項1〜8に記載の磁気記録媒体。
【請求項10】 該磁気記録媒体がデジタルデ−タストレ−ジ用途であることを特徴とする請求項1〜9に記載の磁気記録媒体。