説明

磁気貼着シート

【課題】 身体への貼着が容易であり、且つ、磁気によって身体に悪影響を与える虞の無い磁気貼着シートを提供する。
【解決手段】 磁気貼着シート1は、帯状に形成され伸縮性を有するウレタン不織布よりなる基材5と、基材5の一方面に形成された粘着剤層2と、粘着剤層2の貼着面上に取り付けられた剥離紙12とから構成されている。粘着剤層2は、アクリル系の粘着剤7に磁性粉末である磁性アルミマンガン合金粉末10が配合されている。磁性アルミマンガン合金粉末10は、粘着剤7に対して5〜20重量%含まれている。そして、この磁性アルミマンガン合金粉末10によって、粘着剤層2における磁束密度は0.3〜1.0mTとなるように設定されている。従って、身体に悪影響を与えるような過度な磁気を作用させずに効率的な血行の促進が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は磁気貼着シートに関し、特に、血行を促進するために身体に貼着して使用される磁気貼着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、身体に貼着して使用される貼着シートには種々の付加価値を有するものがある。その中で、身体に貼着することで血行を促進させる貼着シートとしては、肌に固定するための粘着剤にトウガラシエキス等を含有させるものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
又、絆創膏型に形成され、粘着性シート基材の接着面にS極とN極とを交互に着磁してなる磁性体シートを配置し、その磁力によって血行を促進するものが提案されている(特許文献2)。
【0004】
更に、貼着シートの粘着剤に磁気を帯びた金属粉末が含有されているものがあり、この貼着シートについて以下に説明する。
【0005】
図5は特許文献3で開示された磁気貼着テープの斜視図である。
【0006】
図を参照して、磁気貼着テープは、長手方向に沿って伸縮性を有する布製の基体31と、基体31の片面に形成された粘着剤層32とから構成されている。この粘着剤層32には、例えばアルニコ系磁石やフェライト系磁石等の磁性金属粉末33が配合されている。この磁性金属粉末33の種類及び配合量によって、磁気貼着テープの磁束密度が3〜300mT(30〜3000ガウス)となるように設定する事が特に好ましいとされている。
【0007】
そして、この磁気貼着テープを身体に貼着することによって、磁気貼着テープの磁気により血行が促進されることになる。
【特許文献1】特開2002−80386号公報
【特許文献2】特開平11−290465号公報
【特許文献3】特開平8−52172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来の貼着シートでは、まず、特許文献1で開示された貼着用テーピング材では、トウガラシエキス等によって肌に刺激を与えるため、継続して使用し難いものとなっていた。又、特許文献2で開示された救急絆創膏型磁気治療器では、磁気が発生する面積が磁石型に比べて大きくなったとは言え、効果の期待できる身体のツボに適切に貼着することが困難であった。
【0009】
更に、特許文献3で開示された磁気貼着テープでは、磁束密度が3〜300mTとなるように設定するのが特に好ましいとされている。しかし、薬事法では200mT以下となるように定められているため、磁気貼着テープの磁束密度の設定によっては身体に悪影響を与える虞が有った。
【0010】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、身体への貼着が容易であり、且つ、磁気によって身体に悪影響を与える虞の無い磁気貼着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、身体に貼り付けて使用する磁気貼着シートであって、シート状の基材と、基材の一方面に形成され、粘着剤に磁性粉末が配合された粘着剤層とを備え、粘着剤に対して磁性粉末が5〜20重量%含まれると共に、粘着剤層における磁束密度は0.3〜1.0mTであり、粘着剤層の貼着面の面積は少なくとも100cmを有するものである。
【0012】
このように構成すると、身体に対して必要に応じた適度な磁気が作用する。又、磁性粉末の含有量が抑えられているため貼着時の違和感が少ない。
【0013】
請求項2記載の発明は、身体に連続的に貼り付けて使用する複数の磁気貼着シートであって、各々が、シート状の基材と、基材の一方面に形成され、粘着剤に磁性粉末が配合された粘着剤層とを備え、粘着剤に対して磁性粉末が5〜20重量%含まれると共に、粘着剤層における磁束密度は0.3〜1.0mTであり、各々の粘着剤層の貼着面の合計面積は、少なくとも100cmを有するものである。
【0014】
このように構成すると、身体に対して必要に応じた適度な磁気が作用する。又、磁性粉末の含有量が抑えられているため貼着時の違和感が少ない。更に、磁気貼着シートが複数であるため、自在な方向に貼り付けることができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、基材は帯状のシートを含むものである。
【0016】
このように構成すると、身体に巻き付けて貼着する等、種々の部位に使用できる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、磁性粉末は、磁性アルミマンガン合金粉末を含むものである。
【0018】
このように構成すると、安価で磁気特性に優れた磁性粉末になると共に、皮膚アレルギーを引き起こす物質を含む虞が無くなる。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の構成において、磁性粉末の平均粒子径は、50.0μm以下であるものである。
【0020】
このように構成すると、身体に貼り付けた時の磁性粉末による異物感が低減する。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の構成において、粘着剤層は、基材に対して部分的に形成されるものである。
【0022】
このように構成すると、貼着時において身体と基材との間に隙間を有する部分が形成される。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、基材は、少なくとも一方向に伸縮自在であるものである。
【0024】
このように構成すると、身体の形状の変化に合わせて伸縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、身体に対して必要に応じた適度な磁気が作用するため、過度な磁気を作用させることなく、効率的な血行促進が図られる。又、磁性粉末の含有量が抑えられているため貼着時の違和感が少ないことから、使用感が向上する。
【0026】
請求項2記載の発明は、身体に対して必要に応じた適度な磁気が作用するため、過度な磁気を作用させることなく、効率的な血行促進が図られる。又、磁性粉末の含有量が抑えられているため貼着時の違和感が少ないことから、使用感が向上する。更に、磁気貼着シートが複数であるため、自在な方向に貼り付けることができるため、使い勝手が向上する。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、身体に巻き付けて貼着する等、種々の部位に使用できるため、可動部位に貼り付け易くなり、又、身体可動範囲の制限等のテーピング効果を有する磁気貼着シートとなる。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、安価で磁気特性に優れた磁性粉末になると共に、皮膚アレルギーを引き起こす物質を含む虞が無くなるため、コスト的に更に有利になると共に、安全性に優れた磁気貼着シートとなる。
【0029】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、身体に貼り付けた時の磁性粉末による異物感が低減するため、使用感が更に向上する。
【0030】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、貼着時において身体と基材との間に隙間を有する部分が形成されるため、貼着時の通気性が向上する。
【0031】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、身体の形状の変化に合わせて伸縮することが可能となるため、貼着時であっても動きやすく、剥がれ難くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1はこの発明の第1の実施の形態による磁気貼着シートの一部破断の概略斜視図であり、図2は図1で示したII−IIラインの拡大断面図である。
【0033】
これらの図を参照して、磁気貼着シート1は、帯状に形成され伸縮性及び通気性を有するウレタン不織布よりなる基材5と、基材5の一方面に形成された粘着剤層2と、粘着剤層2の貼着面上に取り付けられた剥離紙12とから構成されている。そして、これらをロール状に巻回すると、図1のような状態となる。
【0034】
粘着剤層2は、アクリル系の粘着剤7に磁性粉末である磁性アルミマンガン合金粉末10が配合されており、磁性アルミマンガン合金粉末10によって、粘着剤層2は磁気を有することになる。
【0035】
そして、使用時にはロール状の磁気貼着シート1の一方端を引き出し、所定の長さで切り取った後、剥離紙12を剥がして身体に貼着する。そして、粘着剤層2の磁性アルミマンガン合金粉末10から発生する磁気によって身体の血行を促進させる。
【0036】
次に、磁気貼着シート1において設定される種々の数値について説明する。
【0037】
まず、磁気貼着シート1の基材5の短手方向の長さ(幅)は50mmに設定されている。又、基材5の長手方向の長さは5mであり、このような形状の磁気貼着シート1をロール状に巻回している。
【0038】
基材5は帯状に形成されているため、身体に巻き付けて貼着することができる等、種々の部位に磁気貼着シート1を使用できる形状となっている。従って、身体の可動部位に貼り付け易いものとなっている。又、身体に巻き付けることによって、その可動範囲を制限することができる等、テーピング効果を有する。又、磁気貼着シート1全体から磁気が作用するため、身体のツボに適切に貼着することが容易となる。
【0039】
更に、基材5は伸縮性を有しているため、剥離紙12を剥離した後、即ち貼着使用時には、磁気貼着シート1は伸縮性を有することになる。磁気貼着シート1が伸縮性を有することで、身体の形状の変化に合わせて伸縮することが可能となる。従って、磁気貼着シート1を貼着した状態であっても動きやすく、剥がれ難くなる。
【0040】
次に、磁気貼着シート1の粘着剤層2が有する磁束密度は、0.3〜1.0mTとなるように設定されている。磁束密度が0.3〜1.0mTに設定されることによって、薬事法で定められた200mT以下の磁束密度となり、磁気貼着シート1の貼着時には、身体に対して必要に応じた適度な磁気が作用する。そのため、過度な磁気を身体に作用させることが無く、効率的な血行促進が図られる。
【0041】
次に、粘着剤7と磁性アルミマンガン合金粉末10との配合の割合について説明する。磁性アルミマンガン合金粉末10は、粘着剤7に対して5〜20重量%となるように配合されている。このように、粘着剤層2における磁性アルミマンガン合金粉末10の含有量は5〜20重量%に抑えられるため、磁気貼着シート1の貼着時における磁性アルミマンガン合金粉末10による違和感が少なくなる。従って、使用感が向上する。更に、粘着剤層2において、磁性アルミマンガン合金粉末10の含有量が大きいと相対的に粘着剤7の割合が低くなってしまうため、磁気貼着シート1の貼着力が低下してしまう。上記のように設定された含有量では、磁性アルミマンガン合金粉末10の含有による貼着力の低下はほとんど無いため、使用状態が安定する。
【0042】
又、磁性アルミマンガン合金粉末10は、その平均粒子径が50.0μm以下となるように設定されている。磁性アルミマンガン合金粉末10の平均粒子径を50.0μm以下とすることによって、磁気貼着シート1を身体に貼着した時の磁性アルミマンガン合金粉末10による異物感が低減する。従って、使用感が更に向上することになる。
【0043】
ここで、磁性アルミマンガン合金粉末10の効果について説明する。
【0044】
アルミニウムを主成分とする磁性アルミマンガン合金粉末10を使用することで、酸化鉄が主成分で安価に製造することができるフェライト磁石よりも磁気特性に優れたものとなる。且つ、磁力の強いネオジウム磁石等の希土類磁石よりも安価に製造することが可能となる。又、磁性アルミマンガン合金粉末10と同様に、アルミニウムを主成分とするアルニコ磁石は、ニッケルを含んでいるため、磁気貼着シート1を貼着することで金属皮膚アレルギーを引き起こす可能性がある。
【0045】
以上より、磁性アルミマンガン合金粉末10を使用することで、安価で磁気特性に優れた磁性粉末になると共に、磁気貼着シート1には金属皮膚アレルギーを引き起こす物質を含む虞が無くなる。従って、コスト的に有利になると共に、安全性に優れた磁気貼着シート1となる。
【0046】
ここで、磁気貼着テープ1の製造方法について説明する。
【0047】
まず、磁性アルミマンガン合金粉末10(アルミマンガン磁石)の製造方法について説明する。アルミマンガン磁石の製造方法については、例えば特開平1−22007や特願2002−126181に記載されている。アルミマンガン合金を、例えばアトマイズ法により粉末状態とし、それを篩いにかけてその平均粒子径が50μm以下となるようなアルミマンガン合金粉末を抽出する。その後、アルミマンガン合金粉末に530〜830℃での熱処理をおこなう。
【0048】
次に、熱処理されたアルミマンガン合金粉末を、アクリル系の粘着剤7と配合し、攪拌機で充分に攪拌する。この時、アルミマンガン合金粉末は、粘着剤7に対して5〜20重量%となるように設定する。
【0049】
そして、ウレタン不織布よりなる基材5の一方面に、粘着剤7とアルミマンガン合金粉末との混合物を塗布し、粘着剤層2を形成する。その後、粘着剤7を基材5と剥離紙12とで挟むように、剥離紙12を貼り付け、ロール状に巻回する。
【0050】
このように製品仕上り状態にした後、着磁機によってアルミマンガン合金粉末を着磁して磁性アルミマンガン合金粉末10にすると共に、粘着剤層2の磁束密度を0.3〜1.0mTとなるように設定する。このような製造方法で磁気貼着シート1は製造される。
【0051】
図3はこの発明の第2の実施の形態による磁気貼着シートの一部破断の概略斜視図であり、図4は図3で示したIV−IVラインの拡大断面図である。
【0052】
尚、説明に当たっては、基本的には第1の実施の形態によるものと同一であるため、その相違点を中心に説明する。
【0053】
これらの図を参照して、この実施の形態にあっては、粘着剤層2の塗布状態が大きく異なっている。即ち、粘着剤層2には、長手方向の一方端から他方端まで、長手方向に延びる隙間9a、9bが形成されている。このように粘着剤層2を形成すると、磁気貼着シート1を身体に貼着した時、身体と基材5との間に隙間9a、9bを有することになる。従って、身体に粘着剤層2を介さない部分ができるため、磁気貼着シート1を貼着した時の通気性が向上する。
【0054】
尚、上記の第2の実施の形態では、粘着剤層は特定形状に形成されているが、粘着剤層は基材に対して部分的に形成されるものであれば、他の形状であっても良い。
【0055】
又、上記の各実施の形態では、基材は帯状に形成されているが、基材はシート状に形成されているものであれば良い。尚、本明細書におけるシート状の基材は、帯状のシートを含むものである。
【0056】
更に、上記の各実施の形態では、粘着剤層に含まれる磁性粉末は磁性アルミマンガン合金粉末であるが、磁性粉末の材料は、フェライト磁石、又はアルミ、ニッケル及びコバルトを用いたアルニコ磁石、又はネオジウム、鉄及びホウ素を主成分とするネオジウム磁石、又はサマリウム及びコバルトを主成分とするサマリウムコバルト磁石等であっても良い。又、磁性粉末は磁性金属粉末に限られるものではなく、金属以外の物質による粉末であっても良い。
【0057】
更に、上記の各実施の形態では、磁性アルミマンガン合金粉末の平均粒子径を50.0μm以下となるように設定しているが、磁性アルミマンガン合金粉末の平均粒子径は50.0μmより大きくても良い。
【0058】
更に、上記の各実施の形態では、基材はウレタン不織布製であるが、織布、エラストマー系のフィルム、不織布、又はこれらを複合させた材料であっても良い。
【0059】
更に、上記の各実施の形態では、粘着剤はアクリル系であるが、特開平8−52172、特開2002−80386に記載されているように、メタアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、又はシリコーン系粘着剤等であっても良い。又、硬化剤、可塑剤、又は安定剤等の添加剤を各々の粘着剤に含有したものであっても良い。
【0060】
更に、上記の各実施の形態では、基材5の短手方向の長さ(幅)は50mmに設定されているが、基材5の幅は、38mmや75mm等の所望の幅に設定しても良いことは言うまでも無い。
【0061】
更に、上記の各実施の形態では、基材は伸縮性及び通気性を有しているが、少なくとも一方向に伸縮自在であれば良い。又は、基材は伸縮性や通気性を有していなくても良い。
【実施例】
【0062】
ここで、第1の実施の形態による磁気貼着シート1の効果について実験をおこなった。その詳細について説明する。
【0063】
まず、磁気貼着シート1の製造方法については前述した通りであるが、本実施例における製造方法の具体的な部分について以下に示す。
【0064】
アルミマンガン合金粉末は、山陽特殊製鋼(株)製のものを使用し、篩い分け324メッシュ以下で、平均粒子径を45μmに調整した。このアルミマンガン合金粉末は、アルゴンガス雰囲気中において温度650℃で30分間熱処理をおこなった。
【0065】
又、粘着剤に対してアルミマンガン合金粉末を5、20、35、50重量%となるように各々を配合し、充分な攪拌をおこなった。そして、この混合物が40g/mとなるように離型紙に塗布し、これを80g/mのウレタン不織布よりなる基材の一方面に転写し、粘着剤層を形成した。その後、粘着剤層に剥離紙を貼り合わせ、50℃の温風で10分間乾燥させた。
【0066】
このように製造された粘着加工原反を幅50mm、長さ5mに形成し、ロール状に巻回した後、着磁機を用いて、各々の粘着剤層の磁束密度が0.1、0.3、1.0、1.5mTとなるようにアルミマンガン合金粉末を着磁した。着磁機は、マスマテリアル(株)製の着磁機を使用した。
【0067】
上記のように製造された磁気貼着シートを身体に貼着することによって得られる効果を、ドップラー型血流測定装置を用いて実験した。ドップラー型血流測定装置は、日本電機三栄(株)製の特殊型の装置を使用した。被験者は健康な20代男性とし、測定箇所は左の人差し指先とした。
【0068】
又、実験室内の室温は20℃、湿度は45%であり、室内は静かな環境とした。このような室内で被験者は30分間安静に過ごした後、まず貼着前の血流量を測定した。測定後、被験者の首筋から三角筋にかけて、左肩に長さ20cmの磁気貼着シートを貼着した。その後、20分間安静に過ごした後、貼着後の血流量を測定した。測定後、磁気貼着シートを取り外し、10分間以上の休憩を挟んだ後、上記の測定方法を繰り返した。尚、貼着シート(幅5cm)の長さは20cmであるため、この磁気貼着シートの身体に対する貼着面は100cmである。
【0069】
このような測定を、種々の設定数値を有する磁気貼着シートの各々について10回おこなった。そして、各々についての平均値を算出し、この平均値を用いて貼着前の血流量に対する貼着後の血流量の増加率を示したのが、下記の表である。尚、参考値として磁気を帯びない貼着シートを貼着した場合の測定結果も示しており、磁気の有無以外、貼着シートの貼着は同じ条件でおこなったものである。
【0070】
【表1】

上記の表を参照して、全ての設定数値における磁気貼着シートについて、ある程度の血流増加量が確認され、効果が得られることが分かった。その中で、最も効率的な効果を有する範囲は磁束密度が0.3〜1.0mTであって、磁性アルミマンガン合金粉末が粘着剤に対して5〜20重量%含まれる範囲である。この範囲の境界の意義について説明する。
【0071】
まず、磁気を帯びない貼着シートを貼着した場合の血液増加量と、最も低い数値である、磁束密度0.1mT、磁性アルミマンガン合金粉末が5重量%の磁気貼着シートを貼着した場合の血液増加量とについて比較する。この磁気貼着シートを貼着することでの血液増加量は5.6%である。しかし、磁気貼着シートを貼着しない場合においても、単なる貼着シートを貼着した場合における血液増加量は2.3%ある。即ち、両者にほとんど差は無いと言えるため、この磁気貼着シートを貼着することの効果はあまり期待できない。
【0072】
次に、磁束密度が0.3〜1.0mTの範囲の境界について説明する。磁束密度が0.1mTから0.3mTになると、磁性アルミマンガン合金粉末が5重量%の場合、血流増加量は5.6%から10.7%となり、効率的な血流増加量の増加となる。又、磁性アルミマンガン合金粉末が20重量%の場合では、血流増加量は10.6%から19.2%となり、こちらも効率的な血流増加量の増加となる。従って、磁束密度が0.1mTと0.3mTとの間において、効率的な血液増加量の境界が存在すると言える。
【0073】
又、磁束密度が1.0mTから1.5mTになると、磁性アルミマンガン合金粉末が5重量%及び20重量%のどちらの血流増加量においても、血流増加量の増加は極めて少なく、効率的な効果を得られない。従って、磁束密度が1.0mTと1.5mTとの間において、効率的な血液増加量の境界が存在すると言える。
【0074】
尚、磁性アルミマンガン合金粉末が35重量%及び50重量%の場合は、磁束密度の変化による血液増加量の変化がほとんど無いことから、磁束密度の差に対して特段の境界は存在しないと言える。
【0075】
次に、粘着剤に対して含まれる磁性アルミマンガン合金粉末が5〜20重量%の範囲の境界について説明する。磁性アルミマンガン合金粉末が5重量%から20重量%になると、磁束密度が0.3mTの場合、血液増加量は10.7%から19.2%となり、効率的な血流増加量の増加となる。又、磁束密度が1.0mTの場合では、血流増加量は22.5%から23.4%と、それ程大きな増加はしていないが、この血流増加量23.4%は、表1で示した血流増加量全体における最大値に近い値である。従って、最も効率的に大きな血液増加量の効果を発揮する磁気貼着シートの設定数値として、上記の範囲を含むことが好ましい。
【0076】
そして、磁性アルミマンガン合金粉末が20重量%から35重量%になると、磁束密度が0.3mTの場合、血液増加量は19.2%から23.3%となり、血液増加量は若干増加する。しかし、上述した磁性アルミマンガン合金粉末が5重量%から20重量%になる場合と比較すると、血液増加量の変化はほとんど無いと言える。又、磁束密度が1.0mTの場合では、血液増加量は23.4%から23.1%となり、血流増加量の変化は極めて少なく、効率的な効果を得られない。従って、磁性アルミマンガン合金粉末が20重量%と35重量%との間において、効率的な血液増加量の境界が存在すると言える。
【0077】
上述の通り、最も効率的に血行促進の効果を発揮する設定数値は、磁気貼着シートの貼着面が100cmの条件の下では、粘着剤層の磁束密度が0.3〜1.0mT、磁性アルミマンガン合金粉末が粘着剤に対して5〜20重量%含まれる範囲である。
【0078】
以下に、磁気貼着シート以外での血流増加の参考例を示す。
【0079】
まず、室温は20℃、湿度は45%の静かな室内において、30分間安静に過ごした被験者の血流量を測定する。次に、ランニングマシンで0.2km/分の速さで20分間ランニングした後の血流量を測定する。このような場合、ランニング後の血流増加量は98%であった。
【0080】
又、室温は20℃、湿度は45%の静かな室内において、30分間安静に過ごした被験者の血流量を測定する。次に、遠赤外線綿入り毛布を縦に二つ折りにし、これで首から下の上半身を覆い、20分間安静に過ごした後の血流量を測定する。このような場合、遠赤外線綿入り毛布を覆った後の血流増加量は23.2%であった。この血流増加量は、本実施例における磁気貼着シートによる血流増加量と同程度の値となっている。
【0081】
尚、上記の実施例では磁気貼着シートを身体に貼着する貼着面は100cmに設定されているが、貼着面は100cm以上あれば同様の効果を奏することが判明した。又、100cm以上の貼着面は、連続して貼り付けられた場合における同一仕様の複数の磁気貼着シートの合計面積であっても良く、同様の効果を奏することが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】この発明の第1の実施の形態による磁気貼着シートの一部破断の概略斜視図である。
【図2】図1で示したII−IIラインの拡大断面図である。
【図3】この発明の第2の実施の形態による磁気貼着シートの一部破断の概略斜視図である。
【図4】図3で示したIV−IVラインの拡大断面図である。
【図5】従来の磁気貼着テープの斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
1…磁気貼着シート
2…粘着剤層
5…基材
7…粘着剤
9…隙間
10…磁性アルミマンガン合金粉末
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体に貼り付けて使用する磁気貼着シートであって、
シート状の基材と、
前記基材の一方面に形成され、粘着剤に磁性粉末が配合された粘着剤層とを備え、
前記粘着剤に対して前記磁性粉末が5〜20重量%含まれると共に、前記粘着剤層における磁束密度は0.3〜1.0mTであり、前記粘着剤層の貼着面の面積は少なくとも100cmを有する、磁気貼着シート。
【請求項2】
身体に連続的に貼り付けて使用する複数の磁気貼着シートであって、
各々が、
シート状の基材と、
前記基材の一方面に形成され、粘着剤に磁性粉末が配合された粘着剤層とを備え、
前記粘着剤に対して前記磁性粉末が5〜20重量%含まれると共に、前記粘着剤層における磁束密度は0.3〜1.0mTであり、
各々の前記粘着剤層の貼着面の合計面積は、少なくとも100cmを有する、磁気貼着シート。
【請求項3】
前記基材は帯状のシートを含む、請求項1又は請求項2記載の磁気貼着シート。
【請求項4】
前記磁性粉末は、磁性アルミマンガン合金粉末を含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の磁気貼着シート。
【請求項5】
前記磁性粉末の平均粒子径は、50.0μm以下である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の磁気貼着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層は、前記基材に対して部分的に形成される、請求項1から請求項5のいずれかに記載の磁気貼着シート。
【請求項7】
前記基材は、少なくとも一方向に伸縮自在である、請求項1から請求項6のいずれかに記載の磁気貼着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−13372(P2010−13372A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172893(P2008−172893)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000222141)東洋アルミエコープロダクツ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】