磁気転写用マスターディスク並びにその評価方法、及び、磁気記録媒体並びにその評価方法
【課題】磁気転写用マスターディスクや磁気記録媒体の評価において、オフトラック状態で信号波形を取り込み、この信号特性を視覚的に、迅速に把握する。
【解決手段】磁性層を有するディスク面が複数のセクタに分割され、サーボゾーンに磁気ヘッドをトラック中心に位置決めするための複数相のバーストデータが予め記録されている磁気ディスクの評価方法である。磁気ヘッドをフィードフォワード制御を行わずに、オフトラック状態で位置決めし、読み取った隣接する2相のバーストデータ同士の出力の差を2相のバーストデータの出力の和で除した比をX−Yグラフの1の軸にとり、2相のバーストデータそれぞれの出力をX−Yグラフの他の1の軸にとってプロットし、この作業を周方向に配置された複数のセクタに対し行い、得られたグラフ形状より、視覚的にサーボデータの記録状態の良否を判断する。
【解決手段】磁性層を有するディスク面が複数のセクタに分割され、サーボゾーンに磁気ヘッドをトラック中心に位置決めするための複数相のバーストデータが予め記録されている磁気ディスクの評価方法である。磁気ヘッドをフィードフォワード制御を行わずに、オフトラック状態で位置決めし、読み取った隣接する2相のバーストデータ同士の出力の差を2相のバーストデータの出力の和で除した比をX−Yグラフの1の軸にとり、2相のバーストデータそれぞれの出力をX−Yグラフの他の1の軸にとってプロットし、この作業を周方向に配置された複数のセクタに対し行い、得られたグラフ形状より、視覚的にサーボデータの記録状態の良否を判断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気転写用マスターディスク並びにその評価方法、及び、磁気記録媒体並びにその評価方法に係り、特に、視覚的に良否の判定ができる磁気転写用マスターディスクの評価方法並びにその評価方法により得られた磁気転写用マスターディスク、及び、磁気記録媒体の評価方法並びにその評価方法により得られた磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及しているハードディスクドライブに使用される磁気ディスク(ハードディスク)は、磁気ディスクメーカーよりドライブメーカーに納入された後、ドライブに組み込まれる前に、フォーマット情報やアドレス情報が書き込まれるのが一般的である。この書き込みは、磁気ヘッドにより行うこともできるが、これらのフォーマット情報やアドレス情報が書き込まれているマスターディスクより一括転写する方法が効率的であり、好ましい。
【0003】
この磁気転写技術は、マスターディスクと被転写ディスク(スレーブディスク)とを密着させた状態で、片側又は両側に電磁石装置、永久磁石装置等の磁界生成手段を配設して転写用磁界を印加し、マスターディスクの有する情報(たとえばサーボ信号)に対応する磁化パターンの転写を行うものである。
【0004】
このような磁気転写に使用されるマスターディスクや、被転写ディスクであるスレーブディスクのサーボ信号等の欠陥の有無を検出して、不良のディスクを排除し、これにより磁気記録を確実ならしめるべく、従来より各種の提案がなされている(たとえば、特許文献1〜3。)。
【0005】
このうち、特許文献1は、サーボ信号等欠陥の検出及び補償を行う磁気ディスク装置に関するもので、サーボ信号上の欠陥により発生した誤ったポジション信号を、実際のヘッドの位置ずれと区別して認識することを特徴としている。
【0006】
特許文献2は、磁気ディスク装置のヘッド位置決め制御に関するもので、オフセットによる隣接トラック間のオーバーライト等の影響を防止し、ヘッド位置決め精度を向上させることを特徴としている。特許文献3は、サーボ信号復調方式に関するもので、セクタマークの検出誤差を防止し、デジタル部品の点数を減少でき、調整の手間を省くことを特徴としている。
【特許文献1】特開平5−62393号公報
【特許文献2】特開平7−122010号公報
【特許文献3】特開平7−57410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような従来技術においては、磁気記録媒体のサーボ特性の評価は、実機ドライブを用いたオントラック評価であり、サーボ信号記録、ドライブ組み込み、サーボ特性評価のルーチンが必要である。
【0008】
そのため、磁気転写用マスターディスクのように、オフラインでサーボ記録を行う磁気記録媒体では、評価時間が長くなり、この評価の短縮化が強く求められていた。そして、特に、オフトラック状態での簡易評価方法が望ましいとされていた。
【0009】
また、位置決めパターンとして、振幅サーボを使用している媒体ではA/B、又はC/Dバースト信号の信号関係が重視されていたが、A〜Dバースト全体の信号特性を迅速に把握する手段はなかった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、磁気転写用マスターディスクや磁気記録媒体(スレーブディスク)の評価において、オフトラック状態で信号波形を取り込み、この信号特性を視覚的に、迅速に把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に係る本発明は、磁性層を有するディスク面が複数のセクタに分割され、各セクタに設けられたサーボゾーンに磁気ヘッドをトラック中心に位置決めするための複数相のバーストデータを有するサーボデータが予め記録されている磁気転写用マスターディスクの評価方法において、評価用の磁気ヘッドを前記サーボデータによるフィードフォワード制御を行わずに、オフトラック状態で位置決めし、前記評価用の磁気ヘッドで読み取った隣接する2相のバーストデータ同士の出力の差を該2相のバーストデータの出力の和で除した比をX−Yグラフの1の軸にとり、該2相のバーストデータそれぞれの出力を前記X−Yグラフの他の1の軸にとってプロットし、この作業を周方向に配置された複数のセクタに対し行い、得られたグラフ形状より、視覚的に前記サーボデータの記録状態の良否を判断することを特徴とする磁気転写用マスターディスクの評価方法を提供する。
【0012】
請求項1に係る本発明によれば、磁気ヘッドをオフトラック状態で位置決めし、読み取った隣接する2相のバーストデータ同士の出力の差を2相のバーストデータの出力の和で除した比をX−Yグラフの1の軸にとり、2相のバーストデータそれぞれの出力をX−Yグラフの他の1の軸にとってプロットし、この作業を周方向に配置された複数のセクタに対し行い、得られたグラフ形状より、視覚的に前記サーボデータの記録状態の良否を判断する。
【0013】
すなわち、たとえばバーストデータがA、B、C及びDの4相よりなる場合に、オフトラック状態で信号波形を取り込み、波形信号処理を実施し(2相のバーストデータA、B、又はC、Dの出力をX−Yグラフにプロットし)、バースト部(A、B、C、D)出力の関係を視覚化することにより、A〜Dのバースト全体の信号特性を視覚的に、迅速に把握できる。
【0014】
通常、オントラック状態でのサーボ精度の評価は、A/Bバーストの出力が等しくなるようにヘッド位置決めを行う。しかし、この方式では、Repeatable Run Out(定常的な軌跡ぶれ、以下、「RRO」と略す)などの要因が影響すると、純粋なバースト部のパターン性能を評価することができなくなる。
【0015】
これに対し、本発明によれば、オフトラック状態ではヘッドの軌跡が基準となるため、RRO等の影響がなく、バースト部の信号が精度よく評価可能となる。したがって、本発明の評価手法は、磁気転写用マスターディスクに対し非常に有効な手法である。
【0016】
請求項2に係る本発明は、請求項1に記載の磁気転写用マスターディスクの評価方法により良品と判断されたことを特徴とする磁気転写用マスターディスクを提供する。請求項2に係る本発明によれば、上記の評価方法により良品と判断された磁気転写用マスターディスクを、視覚的な評価により、かつ迅速に得られる。
【0017】
請求項3に係る本発明は、請求項2に記載の磁気転写用のマスターディスクの表面に被転写用磁気記録媒体を密着させる密着工程と、磁界生成手段を設け、前記被転写用磁気記録媒体と前記マスターディスクの円周方向に磁界を加え、前記マスターディスクの磁気パターンを前記被転写用磁気記録媒体に転写させる磁気転写工程と、を経て磁気記録されたことを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
【0018】
請求項3に係る本発明によれば、良品と判断された磁気転写用マスターディスクを使用して、被転写用磁気記録媒体(スレーブディスク)に磁気転写を行う。したがって、品質の良好なスレーブディスクが得られる。
【0019】
請求項4に係る本発明は、磁性層を有するディスク面が複数のセクタに分割され、各セクタに設けられたサーボゾーンに磁気ヘッドをトラック中心に位置決めするための複数相のバーストデータを有するサーボデータが予め記録されている磁気記録媒体の評価方法において、評価用の磁気ヘッドを前記サーボデータによるフィードフォワード制御を行わずに、オフトラック状態で位置決めし、前記評価用の磁気ヘッドで読み取った隣接する2相のバーストデータ同士の出力の差を該2相のバーストデータの出力の和で除した比をX−Yグラフの1の軸にとり、該2相のバーストデータそれぞれの出力を前記X−Yグラフの他の1の軸にとってプロットし、この作業を周方向に配置された複数のセクタに対し行い、得られたグラフ形状より、視覚的に前記サーボデータの記録状態の良否を判断することを特徴とする磁気記録媒体の評価方法を提供する。
【0020】
請求項4に係る本発明によれば、磁気転写用マスターディスクのみならず、他の種類の磁気記録媒体、特にスレーブディスクのサーボデータの記録状態の良否を判断できる。
【0021】
請求項5に係る本発明は、前記磁気記録媒体が請求項3に記載の被転写用磁気記録媒体である請求項4に記載の磁気記録媒体の評価方法を提供する。
【0022】
請求項5に係る本発明によれば、評価される磁気記録媒体が、良品と判断された磁気転写用マスターディスクを使用して磁気転写を行った被転写用磁気記録媒体(スレーブディスク)である。したがって、品質の良好なスレーブディスクのサーボデータの記録状態の良否を判断できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、磁気転写用マスターディスクや磁気記録媒体(スレーブディスク)の評価において、オフトラック状態で信号波形を取り込み、この信号特性を視覚的に、迅速に把握できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面に従って、本発明に係る磁気転写用マスターディスク並びにその評価方法、及び、磁気記録媒体並びにその評価方法の好ましい実施の形態について詳説する。先ず、磁気転写用マスターディスクについて説明し、次いで、磁気転写について説明し、そして、本発明の特徴部分である磁気転写用マスターディスク及び磁気記録媒体の評価方法ついて説明する。
【0025】
図1は本発明の磁気転写用マスターディスク10(以下、マスターディスク10という)の部分斜視図であり、図2は図1のA−A線に沿った断面図であり、被転写用ディスク(スレーブディスク14)を想像線で示したものである。
【0026】
図1及び図2に示されるように、マスターディスク10は、金属製のマスター基板11と磁性層12とで構成され、マスター基板11の表面に転写情報に対応する微細な凹凸パターンP(たとえばサーボ情報パターン)を有するとともに、その凹凸パターンPに磁性層12が被覆されている。
【0027】
これにより、マスター基板11の片面に磁性層12が被覆された微細な凹凸パターンPを有する情報担持面13が形成される。図1から解るように、この微細な凹凸パターンPは、平面視で長方形であり、磁性層12が形成された状態でトラック方向(図の矢印方向)の長さpと、半径方向の長さLとよりなる。
【0028】
この長さpと長さLとの最適値は、記録密度や記録信号波形により異なるが、たとえば長さpを80nm、長さLを200nmにできる。この微細な凹凸パターンPはサーボ信号の場合は、半径方向に長く形成される。この場合、たとえば半径方向の長さLが0.05〜20μm、トラック方向(円周方向)の長さpが0.01〜5μmであることが好ましい。
【0029】
この範囲で半径方向の方が長い凹凸パターンPを選ぶことがサーボ信号を担持するパターンとして好ましい。凹凸パターンPの深さt(突起の高さ)は、30〜800nmの範囲が好ましく、50〜300nmの範囲がより好ましい。
【0030】
マスター基板11は、電鋳により作製され、図3に示されるように、中心孔11Gを有する円盤状に形成され、片面の(情報担持面13)の内周部11D及び外周部11Eを除く円環状領域11Fに凹凸パターンPが形成される。このマスター基板11の製造の詳細は後述するが、主に、情報を凹凸パターンPで形成した原版上に電鋳を施して、電鋳層から成る金属盤を原版上に形成して、この金属盤に凹凸パターンPを転写する電鋳工程と、金属盤を原版上から剥離する剥離工程とにより製造される。
【0031】
電鋳層としては各種金属や合金類を使用できるが、本実施の形態では好ましい一例として、Ni電鋳層の例で以下に説明する。このNi電鋳層は柔軟性をもたせるため、規定された結晶構造を有するように、電鋳時の電流密度を制御しながら電鋳する。
【0032】
次に、上記の如く構成される本発明のマスターディスク10の製造方法を詳細に説明する。
【0033】
図4はマスターディスク10を製造するステップを示す工程図である。先ず、図4(a)に示されるように、表面が平滑且つ清浄なシリコーンウエハーによる原板15(ガラス板、石英板でもよい)の上に、密着層形成等の前処理を行い、電子線レジスト液をスピンコート等で塗布してレジスト膜16を形成し、ベーキングする。
【0034】
そして、高精度な回転ステージ又はX−Yステージを備えた電子ビーム露光装置(図示せず)にて、そのステージに搭載した原板15にサーボ信号等に対応して変調した電子ビームBを照射し、レジスト膜16に所望の凹凸パターンP' を描画露光する。
【0035】
次に、図4(b)に示されるように、レジスト膜16を現像処理し、露光部分を除去して残ったレジスト膜16によって所望の凹凸パターンP' を形成する。この凹凸パターンP' 上にたとえばスパッタリングによりNi導電膜(薄いので図示せず)を付与し、電鋳可能な原版17を作製する。
【0036】
次に、図4(c)に示されるように、原版17の全面に電鋳装置で電鋳処理を施し、Ni金属による所望厚さの金属盤18(Ni電鋳層)を積層する。Niは面心立方格子の結晶構造を有しており、電鋳時の電流密度を制御して規定の結晶構造となるように電鋳する。
【0037】
図5は、電鋳装置60の断面図である。この電鋳装置60は、鍍金液(浴)62を貯留する鍍金槽64と、鍍金槽64よりオーバーフローした鍍金液62を受けるドレーン槽66と、陽極となるNiペレット68、68…が充填され、鍍金槽64よりオーバーフローした鍍金液62を受けるアノード室70と、原版17を保持する陰極72等より構成される。
【0038】
鍍金槽64には鍍金液供給配管74より鍍金液62が供給されるようになっている。また、鍍金槽64よりドレーン槽66にオーバーフローした鍍金液62は、ドレーン槽排水配管76より回収されるようになっている。また、鍍金槽64よりアノード室70にオーバーフローした鍍金液62は、アノード室排水配管78より回収されるようになっている。
【0039】
鍍金槽64とアノード室70とは、隔壁板80により区切られている。また、鍍金槽64側の隔壁板80の表面には、電極遮蔽板82が陰極72と対向するように固定されている。この電極遮蔽板82は、電鋳した膜厚が面内で均一になるように、電極の所定部分を覆うように形成されているものである。
【0040】
以上の構成からなる電鋳装置60において、陰極72に原版17を保持させ、陰極72に負電極を接続し、アノード室70の正電極を接続して通電することにより、マスター基板11の電鋳が行われる。
【0041】
電鋳装置60における鍍金液62としては、公知の組成のもの、たとえばスルファミン酸ニッケル浴が使用できる。また、電鋳処理による金属盤18の積層において、電流密度と時間を制御して、残留応力の非常に小さいNi電鋳層が形成されることが好ましい。
【0042】
図4に戻り、次に、前述のように規定した結晶構造を有する金属盤18を原版17から剥離し、残留するレジスト膜16を除去・洗浄する。これにより、図4(d)に示されるように、反転した凹凸パターンPを有し、且つ所定サイズに打ち抜く前の外径Dを有するマスター基板11の原盤11' が得られる。
【0043】
この原盤11' を打ち抜いて、図4(e)に示される外径dの所定サイズのマスター基板11が得られる。このマスター基板11の凹凸パターン面に磁性層12を成膜することでマスターディスク10を製造することができる。
【0044】
なお、マスターディスク10の他の製造工程としては、原版17に電鋳を施して第2原版を作製する。そして、この第2原版を使用して電鋳を行い、反転した凹凸パターンを有する金属盤を作製し、所定サイズに打ち抜いてマスター基板としてもよい。
【0045】
更には、第2原版に電鋳を行うか、樹脂液を押しつけて硬化を行って第3原版を作製し、この第3原版に電鋳を行って金属盤を作製し、更に反転した凹凸パターンを有する金属盤を剥離してマスター基板としてもよい。第2原版又は第3原版を繰り返し使用し、複数の金属盤18を作製することができる。
【0046】
また、原版の作製において、レジスト膜を露光・現像処理した後、エッチング処理を行って、原版の表面にエッチングによる凹凸パターンを形成してからレジスト膜を除去してもよい。
【0047】
磁性層12の形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、又はメッキ法、塗布法等により成膜する。磁性層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN等)、Ni、Ni合金(NiFe等)、を用いることができる。特にFeCo、FeCoNiを好ましく使用することができる。磁性層12の厚さは50〜500nmの範囲が好ましく、100〜400nmの範囲が更に好ましい。
【0048】
なお、磁性層12の上に、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、スパッタカーボン等の保護膜を設けることが好ましく、保護膜の上に更に潤滑剤層を設けても良い。この場合、保護膜として厚さが3〜30nmのDLC膜と潤滑剤層とする構成が好ましい。
【0049】
また、磁性層と保護膜との間に、Si等の密着強化層を設けるようにしても良い。潤滑剤はスレーブディスク14との接触過程で生じるずれを補正する際の、摩擦による傷の発生などの耐久性の劣化を改善する効果を有する。
【0050】
次に、上記の如く製造したマスターディスク10の凹凸パターンPをスレーブディスク14に転写する磁気転写方法について説明する。図6は本発明のマスターディスク10を使用して磁気転写を行うための磁気転写装置20の要部斜視図である。
【0051】
磁気転写時には図8(a)に示される後述する初期直流磁化を行った後のスレーブディスク14のスレーブ面(磁気記録面)を、マスターディスク10の情報担持面13に接触させ、所定の押圧力で密着させる。そして、このスレーブディスク14とマスターディスク10との密着状態で、磁界生成手段30により転写用磁界を印加して、マスターディスク10の凹凸パターンPをスレーブディスク14に転写する。
【0052】
スレーブディスク14は、両面又は片面に磁気記録層が形成されたハードディスク、フレキシブルディスク等の円盤状記録媒体であり、マスターディスク10に密着させる以前に、グライドヘッド、研磨体などにより表面の微小突起及び付着塵埃を除去するクリーニング処理(バーニッシィング等)が必要に応じて施される。
【0053】
スレーブディスク14の磁気記録層には、塗布型磁気記録層、メッキ型磁気記録層、又は金属薄膜型磁気記録層を採用できる。金属薄膜型磁気記録層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi等)、Ni、Ni合金(NiFe等)、を用いることができる。
【0054】
これらは磁束密度が大きいこと、磁界印加方向と同じ方向(面内記録なら面内方向)の磁界異方性を有していることにより、明瞭な転写を行えるため好ましい。そして、磁性材料の下(支持体側)に必要な磁気異方性を付与するために、非磁性の下地層を設けることが好ましい。この下地層には、結晶構造と格子定数を磁性層12に合わすことが必要である。その為には、Cr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru等を用いることが好ましい。
【0055】
マスターディスク10による磁気転写は、スレーブディスク14の片面にマスターディスク10を密着させて片面に転写を行う場合と、図示しないが、スレーブディスク14の両面に一対のマスターディスク10を密着させて両面で同時転写を行う場合とがある。
【0056】
転写用磁界を印加する磁界生成手段30は、密着保持されたスレーブディスク14とマスターディスク10の半径方向に延びるギャップ31を有するコア32にコイル33が巻き付けられた電磁石装置34、34が上下両側に配設されており、上下で同じ方向にトラック方向と平行な磁力線G(図7参照)を有する転写用磁界を印加する。図7は、円周トラック14A、14A…と磁力線Gとの関係を示したものである。
【0057】
磁界印加時には、スレーブディスク14とマスターディスク10とを一体的に回転させつつ磁界生成手段30によって転写用磁界を印加させ、マスターディスク10の凹凸パターンをスレーブディスク14のスレーブ面に磁気的に転写する。なお、この構成以外に磁界生成手段の方を回転移動させるようにしてもよい。
【0058】
転写用磁界は、最適転写磁界強度範囲(スレーブディスク14の保磁力Hcの0.6〜1.3倍)の最大値を超える磁界強度がトラック方向のいずれにも存在せず、最適転写磁界強度範囲内の磁界強度となる部分が1つのトラック方向で少なくとも1カ所以上存在し、これと逆向きのトラック方向の磁界強度が何れのトラック方向位置においても最適転写磁界強度範囲内の最小値未満である磁界強度分布の磁界をトラック方向の一部分で発生させている。
【0059】
図8は、面内記録による磁気転写方法の基本工程を説明する説明図である。先ず、図8(a)に示されるように、予めスレーブディスク14に初期磁界Hi をトラック方向の一方向に印加して初期磁化(直流消磁)を施しておく。
【0060】
次に、図8(b)に示されるように、このスレーブディスク14の記録面(磁気記録部)とマスターディスク10の凹凸パターンPが形成された情報担持面13とを密着させ、スレーブディスク14のトラック方向に初期磁界Hi とは逆方向に転写用磁界Hd を印加して磁気転写を行う。転写用磁界Hd が凹凸パターンPの凸部の磁性層12に吸い込まれてこの部分の磁化は反転せず、その他の部分の磁界が反転する結果、図8(c)に示されるように、スレーブディスク14の磁気記録面にはマスターディスク10の凹凸パターンPが磁気的に転写記録される。
【0061】
このような磁気転写において、スレーブディスク14とマスターディスク10とを良好に密着させることが高精度な転写を行う上で重要である。
【0062】
このスレーブディスク14は、磁気記録装置(ハードディスクドライブ)に組み込んで好適に使用できる。これに使用されるハードディスクドライブとしては、各ドライブメーカーより販売されている公知の各種装置を使用すればよい。
【0063】
次に、本発明の特徴部分である磁気転写用マスターディスク10及び磁気記録媒体(スレーブディスク14)の評価方法ついて説明する。
【0064】
図9は、磁気転写用マスターディスク10の磁性層パターンを示した図であり、既述の図1よりは倍率が小さく、全体像が得られるように示されている。このマスターディスク10の表面には、複雑な磁性層パターンにより構成されるサーボウェッジ10A、10A…(ハッチング部分)と、サーボウェッジ10A、10A…の間に形成されるギャップ10B、10B…と呼ばれる磁性層のない部分(白地部分)が交互に形成されている。
【0065】
図10は、磁気転写用マスターディスク10、又はマスターディスク10により磁気転写磁気ディスク(スレーブディスク14)を回転させ、磁気ヘッドがサーボウェッジ10A、10A…を通過するときに再生される信号の波形を示したものである。図10において、期間T10Aの範囲がサーボウェッジ10Aの1ピッチ分の信号であり、期間T10Bはギャップ10Bの1ピッチ分の信号(信号なし)である。
【0066】
サーボウェッジ10Aの1ピッチ分の信号は、先頭(図の左)より、最初のプリアンブル50、サーボタイミングマーク52、セクターアドレス54、シリンダーアドレス56、定周期のバースト信号58(58A、58B、58C、及び58Dの4種よりなる)、及び最後のプリアンブル60よりなる。
【0067】
図11は、バースト信号58(以下、単に「A、B、C、及びD」と記す)の詳細図である。このうち、(A)は、各バースト信号とヘッドの走行位置Hとの関係を示す図であり、(B)は、各バースト信号によるヘッド出力を示すグラフである。
【0068】
図11(A)に示されるように、各バースト信号同士は、幅の1/2ピッチずつずれて形成されている。すなわち、バースト信号Aとバースト信号Dとは幅の1/2ピッチずれて形成されており、バースト信号Dとバースト信号Bとは幅の1/2ピッチずれて形成されており、バースト信号Bとバースト信号Cとは幅の1/2ピッチずれて形成されており、バースト信号Cとバースト信号Aとは幅の1/2ピッチずれて形成されている。
【0069】
図11(A)に示される状態で、ヘッド出力は、図11(B)に示されるように、バースト信号Aで50%であり、バースト信号Bで50%であり、バースト信号Cで100%であり、バースト信号Dで0%となっている。
【0070】
先ず、オフトラック状態で、ディスク1周分の波形データを取得する。各セクタのAuto Gain Control(以下、「AGC」と略す)の出力を検出し、AGC部開始点にインデックスをたてる。このインデックスを基準とし、定位置に存在するA、B、C、Dのバースト部信号を取得する。
【0071】
そして、各セクタのA、B、C、Dバースト部出力を用い、(A−B)/(A+B)及び(C−D)/(C+D)を算出する。この、(A−B)/(A+B)及び(C−D)/(C+D)をX−Yグラフの横軸とし、A、B、C、Dのバースト部出力を縦軸とし、2次元プロットする。このプロットした状態を以下の図12〜図15に示す。それぞれの図において、(A)は、(A−B)/(A+B)をX−Yグラフの横軸としたものであり、(B)は、(C−D)/(C+D)をX−Yグラフの横軸としたものである。
【0072】
このように図示することにより、数値的解析なしに各バースト部のパターン状態を視覚的に確認することができる。各図のシミュレーションは、サーボトラック幅を190nmとし、Readヘッドのトラック幅を140nmとした場合のものである。
【0073】
図12は、理想的なパターンを示すものであり、AとBとは対象形状になっており、CとDとは同様に対象形状になっている。
【0074】
図13は、バースト部の幅をA〜Dの間で均等に大きくしたものである。
【0075】
図14は、バースト部の幅を大きくしたものであるが、AとBの間と、CとDの間で異なるようにしたものである。
【0076】
図15は、図14と同様にバースト部の幅を大きくしたものであるが、AとBの間と、CとDの間での半径位置がずれているものである。
【0077】
次に図13〜図15の各データの解析例を述べる。
【0078】
図13(A)の例では、(A−B)/(A+B)とA、B、C、Dの各バースト出力との関係では、AとBの線が屈曲状態にあり、CとDの線がハート形状にあることがわかる。そして、A、B、C、D部のバーストの幅が大きく、半径方向でオーバーラップしていることがわかる。
【0079】
図13(B)において、(C−D)/(C+D)とA、B、C、Dの各バースト出力との関係では、A、BとC、Dとが入れ替わった図13(A)の逆の状態にある。
【0080】
図14(A)の例では、(A−B)/(A+B)とA、B、C、Dの各バースト出力との関係では、C、D部が完全に一致していないことから、AとB、及びCとDの中心位置が半径方向に対してズレていることを一見して理解することができる。
【0081】
図14(B)において、(A)と(B)の形状が異なることより、Aのバースト出力とBのバースト出力との間、及び、Cのバースト出力とDのバースト出力との間の半径方向の長さに差があることを一見して理解することができる。
【0082】
図15(A)の例では、(A−B)/(A+B)とA、B、C、Dの各バースト出力との関係では、C、D部が一致せず、履歴をもっていることを理解することができる。図15(B)の例では、(C−D)/(C+D)とA、B、C、Dの各バースト出力との関係では、A、BとC、Dとが入れ替わった図15(A)の逆の状態にある。すなわち、図15(A)と同様に、A、B部が一致せず、履歴をもっていることを理解することができる。このように、図15の例では、Aのバースト出力とBのバースト出力との相対位置、及び、Cのバースト出力とDのバースト出力との相対位置が設計値からずれていることを一見して理解することができる。
【0083】
図16は、磁気記録媒体の評価方法の他の実施形態を示す。この実施形態は、図12(A)〜図15(A)と同様に、(A−B)/(A+B)をX−Yグラフの横軸とし、A、B、C、Dのバースト部出力を縦軸とし、2次元プロットした状態を示す。
【0084】
そして、図16(A)は、パターン修正前の状態である。このグラフにおいて、(A−B)/(A+B)をX軸としたときのA、Bが曲線であること、及び、C、Dがハート形状になっていることより、A、B、C、Dのバースト幅が広く、相互にオーバーラップしていることを一見して理解することができる。
【0085】
この図16(A)による評価結果を基に、バースト信号パターンの再設計を行い、再度評価した結果を図16(B)に示す。このグラフにおいて、(A−B)/(A+B)をX軸としたときのA、Bが直線であること、及び、C、Dが長方形であること、すなわち、いずれも理想的なバースト信号パターンであることを一見して理解することができる。
【0086】
以上説明したように、本発明によれば、磁気転写用マスターディスク10や磁気記録媒体(スレーブディスク14)の評価において、オフトラック状態で信号波形を取り込み、この信号特性を視覚的に、迅速に把握できる。
【0087】
以上、本発明に係る磁気転写用マスターディスク並びにその評価方法、及び、磁気記録媒体並びにその評価方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0088】
たとえば、本実施形態において、バースト信号58を58A、58B、58C、及び58Dの4種よりなる信号としているが、これ以外の態様、たとえばバースト信号を6種の信号とする態様も採用できる。
【0089】
また、サーボウェッジ10Aの1ピッチ分の信号も、図10に示される態様以外のパターンとすることも可能である。
【0090】
更に、本実施形態のマスターディスク10は、内径を有する円環状(ドーナツ状)のものであるが、内径を有しない円盤状のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明のマスターディスクの部分斜視図
【図2】図1のA−A線に沿った断面図
【図3】マスター基板の平面図
【図4】本発明のマスターディスクの製造方法の一実施の形態における工程図
【図5】電鋳装置の断面図
【図6】磁気転写装置の要部斜視図
【図7】転写用磁界の印加方法を示す平面図
【図8】磁気転写方法の基本工程を示す工程図
【図9】磁気転写用マスターディスクの磁性層パターンを示した図
【図10】磁気ヘッドがサーボウェッジを通過するときに再生される信号の波形を示した図
【図11】バースト信号の詳細図
【図12】本発明の評価方法の例を示すX−Yグラフ
【図13】本発明の評価方法の他の例を示すX−Yグラフ
【図14】本発明の評価方法の更に他の例を示すX−Yグラフ
【図15】本発明の評価方法の更に他の例を示すX−Yグラフ
【図16】本発明の評価方法の更に他の例を示すX−Yグラフ
【符号の説明】
【0092】
10…マスターディスク(磁気転写用マスターディスク)、10A…サーボウェッジ、10B…ギャップ、11…マスター基板、12…磁性層、14…スレーブディスク、20…磁気転写装置、58…バースト信号、P…凹凸パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気転写用マスターディスク並びにその評価方法、及び、磁気記録媒体並びにその評価方法に係り、特に、視覚的に良否の判定ができる磁気転写用マスターディスクの評価方法並びにその評価方法により得られた磁気転写用マスターディスク、及び、磁気記録媒体の評価方法並びにその評価方法により得られた磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及しているハードディスクドライブに使用される磁気ディスク(ハードディスク)は、磁気ディスクメーカーよりドライブメーカーに納入された後、ドライブに組み込まれる前に、フォーマット情報やアドレス情報が書き込まれるのが一般的である。この書き込みは、磁気ヘッドにより行うこともできるが、これらのフォーマット情報やアドレス情報が書き込まれているマスターディスクより一括転写する方法が効率的であり、好ましい。
【0003】
この磁気転写技術は、マスターディスクと被転写ディスク(スレーブディスク)とを密着させた状態で、片側又は両側に電磁石装置、永久磁石装置等の磁界生成手段を配設して転写用磁界を印加し、マスターディスクの有する情報(たとえばサーボ信号)に対応する磁化パターンの転写を行うものである。
【0004】
このような磁気転写に使用されるマスターディスクや、被転写ディスクであるスレーブディスクのサーボ信号等の欠陥の有無を検出して、不良のディスクを排除し、これにより磁気記録を確実ならしめるべく、従来より各種の提案がなされている(たとえば、特許文献1〜3。)。
【0005】
このうち、特許文献1は、サーボ信号等欠陥の検出及び補償を行う磁気ディスク装置に関するもので、サーボ信号上の欠陥により発生した誤ったポジション信号を、実際のヘッドの位置ずれと区別して認識することを特徴としている。
【0006】
特許文献2は、磁気ディスク装置のヘッド位置決め制御に関するもので、オフセットによる隣接トラック間のオーバーライト等の影響を防止し、ヘッド位置決め精度を向上させることを特徴としている。特許文献3は、サーボ信号復調方式に関するもので、セクタマークの検出誤差を防止し、デジタル部品の点数を減少でき、調整の手間を省くことを特徴としている。
【特許文献1】特開平5−62393号公報
【特許文献2】特開平7−122010号公報
【特許文献3】特開平7−57410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような従来技術においては、磁気記録媒体のサーボ特性の評価は、実機ドライブを用いたオントラック評価であり、サーボ信号記録、ドライブ組み込み、サーボ特性評価のルーチンが必要である。
【0008】
そのため、磁気転写用マスターディスクのように、オフラインでサーボ記録を行う磁気記録媒体では、評価時間が長くなり、この評価の短縮化が強く求められていた。そして、特に、オフトラック状態での簡易評価方法が望ましいとされていた。
【0009】
また、位置決めパターンとして、振幅サーボを使用している媒体ではA/B、又はC/Dバースト信号の信号関係が重視されていたが、A〜Dバースト全体の信号特性を迅速に把握する手段はなかった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、磁気転写用マスターディスクや磁気記録媒体(スレーブディスク)の評価において、オフトラック状態で信号波形を取り込み、この信号特性を視覚的に、迅速に把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に係る本発明は、磁性層を有するディスク面が複数のセクタに分割され、各セクタに設けられたサーボゾーンに磁気ヘッドをトラック中心に位置決めするための複数相のバーストデータを有するサーボデータが予め記録されている磁気転写用マスターディスクの評価方法において、評価用の磁気ヘッドを前記サーボデータによるフィードフォワード制御を行わずに、オフトラック状態で位置決めし、前記評価用の磁気ヘッドで読み取った隣接する2相のバーストデータ同士の出力の差を該2相のバーストデータの出力の和で除した比をX−Yグラフの1の軸にとり、該2相のバーストデータそれぞれの出力を前記X−Yグラフの他の1の軸にとってプロットし、この作業を周方向に配置された複数のセクタに対し行い、得られたグラフ形状より、視覚的に前記サーボデータの記録状態の良否を判断することを特徴とする磁気転写用マスターディスクの評価方法を提供する。
【0012】
請求項1に係る本発明によれば、磁気ヘッドをオフトラック状態で位置決めし、読み取った隣接する2相のバーストデータ同士の出力の差を2相のバーストデータの出力の和で除した比をX−Yグラフの1の軸にとり、2相のバーストデータそれぞれの出力をX−Yグラフの他の1の軸にとってプロットし、この作業を周方向に配置された複数のセクタに対し行い、得られたグラフ形状より、視覚的に前記サーボデータの記録状態の良否を判断する。
【0013】
すなわち、たとえばバーストデータがA、B、C及びDの4相よりなる場合に、オフトラック状態で信号波形を取り込み、波形信号処理を実施し(2相のバーストデータA、B、又はC、Dの出力をX−Yグラフにプロットし)、バースト部(A、B、C、D)出力の関係を視覚化することにより、A〜Dのバースト全体の信号特性を視覚的に、迅速に把握できる。
【0014】
通常、オントラック状態でのサーボ精度の評価は、A/Bバーストの出力が等しくなるようにヘッド位置決めを行う。しかし、この方式では、Repeatable Run Out(定常的な軌跡ぶれ、以下、「RRO」と略す)などの要因が影響すると、純粋なバースト部のパターン性能を評価することができなくなる。
【0015】
これに対し、本発明によれば、オフトラック状態ではヘッドの軌跡が基準となるため、RRO等の影響がなく、バースト部の信号が精度よく評価可能となる。したがって、本発明の評価手法は、磁気転写用マスターディスクに対し非常に有効な手法である。
【0016】
請求項2に係る本発明は、請求項1に記載の磁気転写用マスターディスクの評価方法により良品と判断されたことを特徴とする磁気転写用マスターディスクを提供する。請求項2に係る本発明によれば、上記の評価方法により良品と判断された磁気転写用マスターディスクを、視覚的な評価により、かつ迅速に得られる。
【0017】
請求項3に係る本発明は、請求項2に記載の磁気転写用のマスターディスクの表面に被転写用磁気記録媒体を密着させる密着工程と、磁界生成手段を設け、前記被転写用磁気記録媒体と前記マスターディスクの円周方向に磁界を加え、前記マスターディスクの磁気パターンを前記被転写用磁気記録媒体に転写させる磁気転写工程と、を経て磁気記録されたことを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
【0018】
請求項3に係る本発明によれば、良品と判断された磁気転写用マスターディスクを使用して、被転写用磁気記録媒体(スレーブディスク)に磁気転写を行う。したがって、品質の良好なスレーブディスクが得られる。
【0019】
請求項4に係る本発明は、磁性層を有するディスク面が複数のセクタに分割され、各セクタに設けられたサーボゾーンに磁気ヘッドをトラック中心に位置決めするための複数相のバーストデータを有するサーボデータが予め記録されている磁気記録媒体の評価方法において、評価用の磁気ヘッドを前記サーボデータによるフィードフォワード制御を行わずに、オフトラック状態で位置決めし、前記評価用の磁気ヘッドで読み取った隣接する2相のバーストデータ同士の出力の差を該2相のバーストデータの出力の和で除した比をX−Yグラフの1の軸にとり、該2相のバーストデータそれぞれの出力を前記X−Yグラフの他の1の軸にとってプロットし、この作業を周方向に配置された複数のセクタに対し行い、得られたグラフ形状より、視覚的に前記サーボデータの記録状態の良否を判断することを特徴とする磁気記録媒体の評価方法を提供する。
【0020】
請求項4に係る本発明によれば、磁気転写用マスターディスクのみならず、他の種類の磁気記録媒体、特にスレーブディスクのサーボデータの記録状態の良否を判断できる。
【0021】
請求項5に係る本発明は、前記磁気記録媒体が請求項3に記載の被転写用磁気記録媒体である請求項4に記載の磁気記録媒体の評価方法を提供する。
【0022】
請求項5に係る本発明によれば、評価される磁気記録媒体が、良品と判断された磁気転写用マスターディスクを使用して磁気転写を行った被転写用磁気記録媒体(スレーブディスク)である。したがって、品質の良好なスレーブディスクのサーボデータの記録状態の良否を判断できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、磁気転写用マスターディスクや磁気記録媒体(スレーブディスク)の評価において、オフトラック状態で信号波形を取り込み、この信号特性を視覚的に、迅速に把握できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面に従って、本発明に係る磁気転写用マスターディスク並びにその評価方法、及び、磁気記録媒体並びにその評価方法の好ましい実施の形態について詳説する。先ず、磁気転写用マスターディスクについて説明し、次いで、磁気転写について説明し、そして、本発明の特徴部分である磁気転写用マスターディスク及び磁気記録媒体の評価方法ついて説明する。
【0025】
図1は本発明の磁気転写用マスターディスク10(以下、マスターディスク10という)の部分斜視図であり、図2は図1のA−A線に沿った断面図であり、被転写用ディスク(スレーブディスク14)を想像線で示したものである。
【0026】
図1及び図2に示されるように、マスターディスク10は、金属製のマスター基板11と磁性層12とで構成され、マスター基板11の表面に転写情報に対応する微細な凹凸パターンP(たとえばサーボ情報パターン)を有するとともに、その凹凸パターンPに磁性層12が被覆されている。
【0027】
これにより、マスター基板11の片面に磁性層12が被覆された微細な凹凸パターンPを有する情報担持面13が形成される。図1から解るように、この微細な凹凸パターンPは、平面視で長方形であり、磁性層12が形成された状態でトラック方向(図の矢印方向)の長さpと、半径方向の長さLとよりなる。
【0028】
この長さpと長さLとの最適値は、記録密度や記録信号波形により異なるが、たとえば長さpを80nm、長さLを200nmにできる。この微細な凹凸パターンPはサーボ信号の場合は、半径方向に長く形成される。この場合、たとえば半径方向の長さLが0.05〜20μm、トラック方向(円周方向)の長さpが0.01〜5μmであることが好ましい。
【0029】
この範囲で半径方向の方が長い凹凸パターンPを選ぶことがサーボ信号を担持するパターンとして好ましい。凹凸パターンPの深さt(突起の高さ)は、30〜800nmの範囲が好ましく、50〜300nmの範囲がより好ましい。
【0030】
マスター基板11は、電鋳により作製され、図3に示されるように、中心孔11Gを有する円盤状に形成され、片面の(情報担持面13)の内周部11D及び外周部11Eを除く円環状領域11Fに凹凸パターンPが形成される。このマスター基板11の製造の詳細は後述するが、主に、情報を凹凸パターンPで形成した原版上に電鋳を施して、電鋳層から成る金属盤を原版上に形成して、この金属盤に凹凸パターンPを転写する電鋳工程と、金属盤を原版上から剥離する剥離工程とにより製造される。
【0031】
電鋳層としては各種金属や合金類を使用できるが、本実施の形態では好ましい一例として、Ni電鋳層の例で以下に説明する。このNi電鋳層は柔軟性をもたせるため、規定された結晶構造を有するように、電鋳時の電流密度を制御しながら電鋳する。
【0032】
次に、上記の如く構成される本発明のマスターディスク10の製造方法を詳細に説明する。
【0033】
図4はマスターディスク10を製造するステップを示す工程図である。先ず、図4(a)に示されるように、表面が平滑且つ清浄なシリコーンウエハーによる原板15(ガラス板、石英板でもよい)の上に、密着層形成等の前処理を行い、電子線レジスト液をスピンコート等で塗布してレジスト膜16を形成し、ベーキングする。
【0034】
そして、高精度な回転ステージ又はX−Yステージを備えた電子ビーム露光装置(図示せず)にて、そのステージに搭載した原板15にサーボ信号等に対応して変調した電子ビームBを照射し、レジスト膜16に所望の凹凸パターンP' を描画露光する。
【0035】
次に、図4(b)に示されるように、レジスト膜16を現像処理し、露光部分を除去して残ったレジスト膜16によって所望の凹凸パターンP' を形成する。この凹凸パターンP' 上にたとえばスパッタリングによりNi導電膜(薄いので図示せず)を付与し、電鋳可能な原版17を作製する。
【0036】
次に、図4(c)に示されるように、原版17の全面に電鋳装置で電鋳処理を施し、Ni金属による所望厚さの金属盤18(Ni電鋳層)を積層する。Niは面心立方格子の結晶構造を有しており、電鋳時の電流密度を制御して規定の結晶構造となるように電鋳する。
【0037】
図5は、電鋳装置60の断面図である。この電鋳装置60は、鍍金液(浴)62を貯留する鍍金槽64と、鍍金槽64よりオーバーフローした鍍金液62を受けるドレーン槽66と、陽極となるNiペレット68、68…が充填され、鍍金槽64よりオーバーフローした鍍金液62を受けるアノード室70と、原版17を保持する陰極72等より構成される。
【0038】
鍍金槽64には鍍金液供給配管74より鍍金液62が供給されるようになっている。また、鍍金槽64よりドレーン槽66にオーバーフローした鍍金液62は、ドレーン槽排水配管76より回収されるようになっている。また、鍍金槽64よりアノード室70にオーバーフローした鍍金液62は、アノード室排水配管78より回収されるようになっている。
【0039】
鍍金槽64とアノード室70とは、隔壁板80により区切られている。また、鍍金槽64側の隔壁板80の表面には、電極遮蔽板82が陰極72と対向するように固定されている。この電極遮蔽板82は、電鋳した膜厚が面内で均一になるように、電極の所定部分を覆うように形成されているものである。
【0040】
以上の構成からなる電鋳装置60において、陰極72に原版17を保持させ、陰極72に負電極を接続し、アノード室70の正電極を接続して通電することにより、マスター基板11の電鋳が行われる。
【0041】
電鋳装置60における鍍金液62としては、公知の組成のもの、たとえばスルファミン酸ニッケル浴が使用できる。また、電鋳処理による金属盤18の積層において、電流密度と時間を制御して、残留応力の非常に小さいNi電鋳層が形成されることが好ましい。
【0042】
図4に戻り、次に、前述のように規定した結晶構造を有する金属盤18を原版17から剥離し、残留するレジスト膜16を除去・洗浄する。これにより、図4(d)に示されるように、反転した凹凸パターンPを有し、且つ所定サイズに打ち抜く前の外径Dを有するマスター基板11の原盤11' が得られる。
【0043】
この原盤11' を打ち抜いて、図4(e)に示される外径dの所定サイズのマスター基板11が得られる。このマスター基板11の凹凸パターン面に磁性層12を成膜することでマスターディスク10を製造することができる。
【0044】
なお、マスターディスク10の他の製造工程としては、原版17に電鋳を施して第2原版を作製する。そして、この第2原版を使用して電鋳を行い、反転した凹凸パターンを有する金属盤を作製し、所定サイズに打ち抜いてマスター基板としてもよい。
【0045】
更には、第2原版に電鋳を行うか、樹脂液を押しつけて硬化を行って第3原版を作製し、この第3原版に電鋳を行って金属盤を作製し、更に反転した凹凸パターンを有する金属盤を剥離してマスター基板としてもよい。第2原版又は第3原版を繰り返し使用し、複数の金属盤18を作製することができる。
【0046】
また、原版の作製において、レジスト膜を露光・現像処理した後、エッチング処理を行って、原版の表面にエッチングによる凹凸パターンを形成してからレジスト膜を除去してもよい。
【0047】
磁性層12の形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、又はメッキ法、塗布法等により成膜する。磁性層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN等)、Ni、Ni合金(NiFe等)、を用いることができる。特にFeCo、FeCoNiを好ましく使用することができる。磁性層12の厚さは50〜500nmの範囲が好ましく、100〜400nmの範囲が更に好ましい。
【0048】
なお、磁性層12の上に、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、スパッタカーボン等の保護膜を設けることが好ましく、保護膜の上に更に潤滑剤層を設けても良い。この場合、保護膜として厚さが3〜30nmのDLC膜と潤滑剤層とする構成が好ましい。
【0049】
また、磁性層と保護膜との間に、Si等の密着強化層を設けるようにしても良い。潤滑剤はスレーブディスク14との接触過程で生じるずれを補正する際の、摩擦による傷の発生などの耐久性の劣化を改善する効果を有する。
【0050】
次に、上記の如く製造したマスターディスク10の凹凸パターンPをスレーブディスク14に転写する磁気転写方法について説明する。図6は本発明のマスターディスク10を使用して磁気転写を行うための磁気転写装置20の要部斜視図である。
【0051】
磁気転写時には図8(a)に示される後述する初期直流磁化を行った後のスレーブディスク14のスレーブ面(磁気記録面)を、マスターディスク10の情報担持面13に接触させ、所定の押圧力で密着させる。そして、このスレーブディスク14とマスターディスク10との密着状態で、磁界生成手段30により転写用磁界を印加して、マスターディスク10の凹凸パターンPをスレーブディスク14に転写する。
【0052】
スレーブディスク14は、両面又は片面に磁気記録層が形成されたハードディスク、フレキシブルディスク等の円盤状記録媒体であり、マスターディスク10に密着させる以前に、グライドヘッド、研磨体などにより表面の微小突起及び付着塵埃を除去するクリーニング処理(バーニッシィング等)が必要に応じて施される。
【0053】
スレーブディスク14の磁気記録層には、塗布型磁気記録層、メッキ型磁気記録層、又は金属薄膜型磁気記録層を採用できる。金属薄膜型磁気記録層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi等)、Ni、Ni合金(NiFe等)、を用いることができる。
【0054】
これらは磁束密度が大きいこと、磁界印加方向と同じ方向(面内記録なら面内方向)の磁界異方性を有していることにより、明瞭な転写を行えるため好ましい。そして、磁性材料の下(支持体側)に必要な磁気異方性を付与するために、非磁性の下地層を設けることが好ましい。この下地層には、結晶構造と格子定数を磁性層12に合わすことが必要である。その為には、Cr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru等を用いることが好ましい。
【0055】
マスターディスク10による磁気転写は、スレーブディスク14の片面にマスターディスク10を密着させて片面に転写を行う場合と、図示しないが、スレーブディスク14の両面に一対のマスターディスク10を密着させて両面で同時転写を行う場合とがある。
【0056】
転写用磁界を印加する磁界生成手段30は、密着保持されたスレーブディスク14とマスターディスク10の半径方向に延びるギャップ31を有するコア32にコイル33が巻き付けられた電磁石装置34、34が上下両側に配設されており、上下で同じ方向にトラック方向と平行な磁力線G(図7参照)を有する転写用磁界を印加する。図7は、円周トラック14A、14A…と磁力線Gとの関係を示したものである。
【0057】
磁界印加時には、スレーブディスク14とマスターディスク10とを一体的に回転させつつ磁界生成手段30によって転写用磁界を印加させ、マスターディスク10の凹凸パターンをスレーブディスク14のスレーブ面に磁気的に転写する。なお、この構成以外に磁界生成手段の方を回転移動させるようにしてもよい。
【0058】
転写用磁界は、最適転写磁界強度範囲(スレーブディスク14の保磁力Hcの0.6〜1.3倍)の最大値を超える磁界強度がトラック方向のいずれにも存在せず、最適転写磁界強度範囲内の磁界強度となる部分が1つのトラック方向で少なくとも1カ所以上存在し、これと逆向きのトラック方向の磁界強度が何れのトラック方向位置においても最適転写磁界強度範囲内の最小値未満である磁界強度分布の磁界をトラック方向の一部分で発生させている。
【0059】
図8は、面内記録による磁気転写方法の基本工程を説明する説明図である。先ず、図8(a)に示されるように、予めスレーブディスク14に初期磁界Hi をトラック方向の一方向に印加して初期磁化(直流消磁)を施しておく。
【0060】
次に、図8(b)に示されるように、このスレーブディスク14の記録面(磁気記録部)とマスターディスク10の凹凸パターンPが形成された情報担持面13とを密着させ、スレーブディスク14のトラック方向に初期磁界Hi とは逆方向に転写用磁界Hd を印加して磁気転写を行う。転写用磁界Hd が凹凸パターンPの凸部の磁性層12に吸い込まれてこの部分の磁化は反転せず、その他の部分の磁界が反転する結果、図8(c)に示されるように、スレーブディスク14の磁気記録面にはマスターディスク10の凹凸パターンPが磁気的に転写記録される。
【0061】
このような磁気転写において、スレーブディスク14とマスターディスク10とを良好に密着させることが高精度な転写を行う上で重要である。
【0062】
このスレーブディスク14は、磁気記録装置(ハードディスクドライブ)に組み込んで好適に使用できる。これに使用されるハードディスクドライブとしては、各ドライブメーカーより販売されている公知の各種装置を使用すればよい。
【0063】
次に、本発明の特徴部分である磁気転写用マスターディスク10及び磁気記録媒体(スレーブディスク14)の評価方法ついて説明する。
【0064】
図9は、磁気転写用マスターディスク10の磁性層パターンを示した図であり、既述の図1よりは倍率が小さく、全体像が得られるように示されている。このマスターディスク10の表面には、複雑な磁性層パターンにより構成されるサーボウェッジ10A、10A…(ハッチング部分)と、サーボウェッジ10A、10A…の間に形成されるギャップ10B、10B…と呼ばれる磁性層のない部分(白地部分)が交互に形成されている。
【0065】
図10は、磁気転写用マスターディスク10、又はマスターディスク10により磁気転写磁気ディスク(スレーブディスク14)を回転させ、磁気ヘッドがサーボウェッジ10A、10A…を通過するときに再生される信号の波形を示したものである。図10において、期間T10Aの範囲がサーボウェッジ10Aの1ピッチ分の信号であり、期間T10Bはギャップ10Bの1ピッチ分の信号(信号なし)である。
【0066】
サーボウェッジ10Aの1ピッチ分の信号は、先頭(図の左)より、最初のプリアンブル50、サーボタイミングマーク52、セクターアドレス54、シリンダーアドレス56、定周期のバースト信号58(58A、58B、58C、及び58Dの4種よりなる)、及び最後のプリアンブル60よりなる。
【0067】
図11は、バースト信号58(以下、単に「A、B、C、及びD」と記す)の詳細図である。このうち、(A)は、各バースト信号とヘッドの走行位置Hとの関係を示す図であり、(B)は、各バースト信号によるヘッド出力を示すグラフである。
【0068】
図11(A)に示されるように、各バースト信号同士は、幅の1/2ピッチずつずれて形成されている。すなわち、バースト信号Aとバースト信号Dとは幅の1/2ピッチずれて形成されており、バースト信号Dとバースト信号Bとは幅の1/2ピッチずれて形成されており、バースト信号Bとバースト信号Cとは幅の1/2ピッチずれて形成されており、バースト信号Cとバースト信号Aとは幅の1/2ピッチずれて形成されている。
【0069】
図11(A)に示される状態で、ヘッド出力は、図11(B)に示されるように、バースト信号Aで50%であり、バースト信号Bで50%であり、バースト信号Cで100%であり、バースト信号Dで0%となっている。
【0070】
先ず、オフトラック状態で、ディスク1周分の波形データを取得する。各セクタのAuto Gain Control(以下、「AGC」と略す)の出力を検出し、AGC部開始点にインデックスをたてる。このインデックスを基準とし、定位置に存在するA、B、C、Dのバースト部信号を取得する。
【0071】
そして、各セクタのA、B、C、Dバースト部出力を用い、(A−B)/(A+B)及び(C−D)/(C+D)を算出する。この、(A−B)/(A+B)及び(C−D)/(C+D)をX−Yグラフの横軸とし、A、B、C、Dのバースト部出力を縦軸とし、2次元プロットする。このプロットした状態を以下の図12〜図15に示す。それぞれの図において、(A)は、(A−B)/(A+B)をX−Yグラフの横軸としたものであり、(B)は、(C−D)/(C+D)をX−Yグラフの横軸としたものである。
【0072】
このように図示することにより、数値的解析なしに各バースト部のパターン状態を視覚的に確認することができる。各図のシミュレーションは、サーボトラック幅を190nmとし、Readヘッドのトラック幅を140nmとした場合のものである。
【0073】
図12は、理想的なパターンを示すものであり、AとBとは対象形状になっており、CとDとは同様に対象形状になっている。
【0074】
図13は、バースト部の幅をA〜Dの間で均等に大きくしたものである。
【0075】
図14は、バースト部の幅を大きくしたものであるが、AとBの間と、CとDの間で異なるようにしたものである。
【0076】
図15は、図14と同様にバースト部の幅を大きくしたものであるが、AとBの間と、CとDの間での半径位置がずれているものである。
【0077】
次に図13〜図15の各データの解析例を述べる。
【0078】
図13(A)の例では、(A−B)/(A+B)とA、B、C、Dの各バースト出力との関係では、AとBの線が屈曲状態にあり、CとDの線がハート形状にあることがわかる。そして、A、B、C、D部のバーストの幅が大きく、半径方向でオーバーラップしていることがわかる。
【0079】
図13(B)において、(C−D)/(C+D)とA、B、C、Dの各バースト出力との関係では、A、BとC、Dとが入れ替わった図13(A)の逆の状態にある。
【0080】
図14(A)の例では、(A−B)/(A+B)とA、B、C、Dの各バースト出力との関係では、C、D部が完全に一致していないことから、AとB、及びCとDの中心位置が半径方向に対してズレていることを一見して理解することができる。
【0081】
図14(B)において、(A)と(B)の形状が異なることより、Aのバースト出力とBのバースト出力との間、及び、Cのバースト出力とDのバースト出力との間の半径方向の長さに差があることを一見して理解することができる。
【0082】
図15(A)の例では、(A−B)/(A+B)とA、B、C、Dの各バースト出力との関係では、C、D部が一致せず、履歴をもっていることを理解することができる。図15(B)の例では、(C−D)/(C+D)とA、B、C、Dの各バースト出力との関係では、A、BとC、Dとが入れ替わった図15(A)の逆の状態にある。すなわち、図15(A)と同様に、A、B部が一致せず、履歴をもっていることを理解することができる。このように、図15の例では、Aのバースト出力とBのバースト出力との相対位置、及び、Cのバースト出力とDのバースト出力との相対位置が設計値からずれていることを一見して理解することができる。
【0083】
図16は、磁気記録媒体の評価方法の他の実施形態を示す。この実施形態は、図12(A)〜図15(A)と同様に、(A−B)/(A+B)をX−Yグラフの横軸とし、A、B、C、Dのバースト部出力を縦軸とし、2次元プロットした状態を示す。
【0084】
そして、図16(A)は、パターン修正前の状態である。このグラフにおいて、(A−B)/(A+B)をX軸としたときのA、Bが曲線であること、及び、C、Dがハート形状になっていることより、A、B、C、Dのバースト幅が広く、相互にオーバーラップしていることを一見して理解することができる。
【0085】
この図16(A)による評価結果を基に、バースト信号パターンの再設計を行い、再度評価した結果を図16(B)に示す。このグラフにおいて、(A−B)/(A+B)をX軸としたときのA、Bが直線であること、及び、C、Dが長方形であること、すなわち、いずれも理想的なバースト信号パターンであることを一見して理解することができる。
【0086】
以上説明したように、本発明によれば、磁気転写用マスターディスク10や磁気記録媒体(スレーブディスク14)の評価において、オフトラック状態で信号波形を取り込み、この信号特性を視覚的に、迅速に把握できる。
【0087】
以上、本発明に係る磁気転写用マスターディスク並びにその評価方法、及び、磁気記録媒体並びにその評価方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0088】
たとえば、本実施形態において、バースト信号58を58A、58B、58C、及び58Dの4種よりなる信号としているが、これ以外の態様、たとえばバースト信号を6種の信号とする態様も採用できる。
【0089】
また、サーボウェッジ10Aの1ピッチ分の信号も、図10に示される態様以外のパターンとすることも可能である。
【0090】
更に、本実施形態のマスターディスク10は、内径を有する円環状(ドーナツ状)のものであるが、内径を有しない円盤状のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明のマスターディスクの部分斜視図
【図2】図1のA−A線に沿った断面図
【図3】マスター基板の平面図
【図4】本発明のマスターディスクの製造方法の一実施の形態における工程図
【図5】電鋳装置の断面図
【図6】磁気転写装置の要部斜視図
【図7】転写用磁界の印加方法を示す平面図
【図8】磁気転写方法の基本工程を示す工程図
【図9】磁気転写用マスターディスクの磁性層パターンを示した図
【図10】磁気ヘッドがサーボウェッジを通過するときに再生される信号の波形を示した図
【図11】バースト信号の詳細図
【図12】本発明の評価方法の例を示すX−Yグラフ
【図13】本発明の評価方法の他の例を示すX−Yグラフ
【図14】本発明の評価方法の更に他の例を示すX−Yグラフ
【図15】本発明の評価方法の更に他の例を示すX−Yグラフ
【図16】本発明の評価方法の更に他の例を示すX−Yグラフ
【符号の説明】
【0092】
10…マスターディスク(磁気転写用マスターディスク)、10A…サーボウェッジ、10B…ギャップ、11…マスター基板、12…磁性層、14…スレーブディスク、20…磁気転写装置、58…バースト信号、P…凹凸パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性層を有するディスク面が複数のセクタに分割され、各セクタに設けられたサーボゾーンに磁気ヘッドをトラック中心に位置決めするための複数相のバーストデータを有するサーボデータが予め記録されている磁気転写用マスターディスクの評価方法において、
評価用の磁気ヘッドを前記サーボデータによるフィードフォワード制御を行わずに、オフトラック状態で位置決めし、前記評価用の磁気ヘッドで読み取った隣接する2相のバーストデータ同士の出力の差を該2相のバーストデータの出力の和で除した比をX−Yグラフの1の軸にとり、該2相のバーストデータそれぞれの出力を前記X−Yグラフの他の1の軸にとってプロットし、
この作業を周方向に配置された複数のセクタに対し行い、
得られたグラフ形状より、視覚的に前記サーボデータの記録状態の良否を判断することを特徴とする磁気転写用マスターディスクの評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気転写用マスターディスクの評価方法により良品と判断されたことを特徴とする磁気転写用マスターディスク。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気転写用のマスターディスクの表面に被転写用磁気記録媒体を密着させる密着工程と、
磁界生成手段を設け、前記被転写用磁気記録媒体と前記マスターディスクの円周方向に磁界を加え、前記マスターディスクの磁気パターンを前記被転写用磁気記録媒体に転写させる磁気転写工程と、
を経て磁気記録されたことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項4】
磁性層を有するディスク面が複数のセクタに分割され、各セクタに設けられたサーボゾーンに磁気ヘッドをトラック中心に位置決めするための複数相のバーストデータを有するサーボデータが予め記録されている磁気記録媒体の評価方法において、
評価用の磁気ヘッドを前記サーボデータによるフィードフォワード制御を行わずに、オフトラック状態で位置決めし、前記評価用の磁気ヘッドで読み取った隣接する2相のバーストデータ同士の出力の差を該2相のバーストデータの出力の和で除した比をX−Yグラフの1の軸にとり、該2相のバーストデータそれぞれの出力を前記X−Yグラフの他の1の軸にとってプロットし、
この作業を周方向に配置された複数のセクタに対し行い、
得られたグラフ形状より、視覚的に前記サーボデータの記録状態の良否を判断することを特徴とする磁気記録媒体の評価方法。
【請求項5】
前記磁気記録媒体が請求項3に記載の被転写用磁気記録媒体である請求項4に記載の磁気記録媒体の評価方法。
【請求項1】
磁性層を有するディスク面が複数のセクタに分割され、各セクタに設けられたサーボゾーンに磁気ヘッドをトラック中心に位置決めするための複数相のバーストデータを有するサーボデータが予め記録されている磁気転写用マスターディスクの評価方法において、
評価用の磁気ヘッドを前記サーボデータによるフィードフォワード制御を行わずに、オフトラック状態で位置決めし、前記評価用の磁気ヘッドで読み取った隣接する2相のバーストデータ同士の出力の差を該2相のバーストデータの出力の和で除した比をX−Yグラフの1の軸にとり、該2相のバーストデータそれぞれの出力を前記X−Yグラフの他の1の軸にとってプロットし、
この作業を周方向に配置された複数のセクタに対し行い、
得られたグラフ形状より、視覚的に前記サーボデータの記録状態の良否を判断することを特徴とする磁気転写用マスターディスクの評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気転写用マスターディスクの評価方法により良品と判断されたことを特徴とする磁気転写用マスターディスク。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気転写用のマスターディスクの表面に被転写用磁気記録媒体を密着させる密着工程と、
磁界生成手段を設け、前記被転写用磁気記録媒体と前記マスターディスクの円周方向に磁界を加え、前記マスターディスクの磁気パターンを前記被転写用磁気記録媒体に転写させる磁気転写工程と、
を経て磁気記録されたことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項4】
磁性層を有するディスク面が複数のセクタに分割され、各セクタに設けられたサーボゾーンに磁気ヘッドをトラック中心に位置決めするための複数相のバーストデータを有するサーボデータが予め記録されている磁気記録媒体の評価方法において、
評価用の磁気ヘッドを前記サーボデータによるフィードフォワード制御を行わずに、オフトラック状態で位置決めし、前記評価用の磁気ヘッドで読み取った隣接する2相のバーストデータ同士の出力の差を該2相のバーストデータの出力の和で除した比をX−Yグラフの1の軸にとり、該2相のバーストデータそれぞれの出力を前記X−Yグラフの他の1の軸にとってプロットし、
この作業を周方向に配置された複数のセクタに対し行い、
得られたグラフ形状より、視覚的に前記サーボデータの記録状態の良否を判断することを特徴とする磁気記録媒体の評価方法。
【請求項5】
前記磁気記録媒体が請求項3に記載の被転写用磁気記録媒体である請求項4に記載の磁気記録媒体の評価方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−286145(P2006−286145A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107908(P2005−107908)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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