説明

磁気部品

【課題】鉄心と巻線との空間に冷却部材が配置された磁気部品の冷却効率を高くし、冷却部材のコストを低減する。
【解決手段】磁気部品を、鉄心1と、巻線2と、巻枠3と、冷却管(管状冷却部材)4と、スペーサ5とで構成する。鉄心1の互いに平行な各棒状部1aに、スペーサ5と巻枠3を介して巻線2が形成されている。冷却管4を、合成樹脂製のスペーサ5内に、鉄心1に巻かれた状態で配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄心と、この鉄心に所定の空間を介して導線が巻かれて形成された巻線と、を有する磁気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
トランス(変圧器)やリアクトル等は、鉄心と、この鉄心に所定の空間を介して導線が巻かれて形成された巻線と、を有する磁気部品を備えている。この磁気部品の一例を図7に示す。この例の磁気部品は、角を丸くした長方形のリング状に形成された鉄心1と、この鉄心1の互いに平行な棒状部1aに所定の空間を介して形成された巻線2とを有する。巻線2は、絶縁性の紙などで形成された巻枠3に導線21を巻くことで形成されている。
【0003】
この磁気部品は、導線21が巻かれた巻枠3内に、鉄心1を棒状部1aで二分割した分割体を挿入し、巻枠3と鉄心1との空間の一部にスペーサを配置することで作製される。
この磁気部品では、作動時に導線に流れる電流と導線の抵抗による銅損や、巻線が誘起する磁界により鉄心に発生するヒステリシス損、渦電流損などの鉄損により熱が発生し、巻線および鉄心の温度が上昇する。磁気部品が高温になると、性能の変化や寿命の短縮を招き、信頼性が低下するため、冷却して作動時の温度上昇を抑える必要がある。
【0004】
そのため、従来より、磁気部品を冷却することが行われており、鉄心と巻線との空間に冷却部材を配置することで、磁気部品を大型化せずに効率的に冷却する方法も提案されている。
特許文献1には、鉄心の外周に第1の絶縁スペースを介して低圧巻線を配設し、さらに外側に第2の絶縁スペースを介して高圧巻線を配設した部材を備えた変圧器であって、第1および第2の絶縁スペースに冷却パネルを配置し、この冷却パネルに冷媒を封入することで、鉄心と各巻線の冷却を効率よく行うことが記載されている。
【0005】
特許文献2には、U字状管等で構成した冷却液案内部を、金属プレート等で構成した熱吸収器に固定することで冷却部材(冷却装置)を作製し、この冷却部材を鉄心と巻線との空間に配置することが記載されている。熱吸収器により鉄心の熱を吸収し、この熱を、冷却液案内部を流れる冷却液で外部に放出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−216311号公報
【特許文献2】特開2005−317982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、各磁気部品に対応させた形状および大きさの冷却パネルが必要となるため、冷却部材に汎用性がなくコストが高くなる。
特許文献2の方法では、鉄心の巻線で囲まれている全ての面が覆われるように熱吸収器を配置することは難しいため、冷却効率の点で改善の余地がある。また、冷却効率を上げるために冷却部材を多数配置することには手間がかかり、コストが高くなる。
【0008】
この発明の課題は、鉄心と巻線との空間に冷却部材が配置された磁気部品として、冷却効率が高く、コストが低いものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明の磁気部品は、鉄心と、この鉄心に所定の空間を介して導線が巻かれて形成された巻線と、前記空間に前記鉄心に巻かれて配置された管状冷却部材と、を有することを特徴とする。前記管状冷却部材としては、冷却媒体を流す冷却管またはヒートパイプを用いることができる。
【0010】
この発明の磁気部品によれば、巻線と鉄心との空間に、鉄心に巻かれて配置された管状冷却部材を有するため、この管状冷却部材により、鉄心の巻線で囲まれている全ての面が覆われることで、冷却効率が高くなる。また、管状冷却部材を用いることで、冷却部材の配置が巻き付けにより簡単に行われ、形状や大きさの異なる磁気部品に対する冷却部材の汎用性が高いため、コストも低減できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明の磁気部品は、鉄心と巻線との空間に冷却部材が配置された磁気部品であって、冷却効率が高く、コストが低いものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の磁気部品を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】第1実施形態の磁気部品の鉄心に対する冷却管の配置を示す正面図である。
【図4】第2実施形態の磁気部品を示す断面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】第2実施形態の磁気部品の鉄心に対するヒートパイプの配置を示す正面図である。
【図7】鉄心と、この鉄心に所定の空間を介して導線が巻かれて形成された巻線と、を有する磁気部品の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1および2に示す第1実施形態の磁気部品は、鉄心1と、巻線2と、巻枠3と、冷却管(管状冷却部材)4と、スペーサ5とで構成されている。
図1に示すように、鉄心1は、角を丸くした長方形のリング状に形成され、互いに平行な棒状部1aで二分割された分割体11,12で構成されている。この鉄心1の各棒状部1aに、所定の空間を介して巻線2が形成されている。巻線2は、絶縁性の紙で形成された巻枠3に導線21を巻くことで形成されている。巻枠3と鉄心1との空間に合成樹脂製のスペーサ5が配置されている。冷却管4は、スペーサ5内に、鉄心1の棒状部1aに巻かれた状態で配置されている。
【0014】
冷却管4は鉄心1に対して、図3に示すように配置されている。すなわち、鉄心1の各棒状部1aに冷却管4が巻かれ、その端部同士が分割体12の側で接続され、反対側の各端部41,42が分割体11の上部に突出している。接続された冷却管4の一方の端部41は冷却水の供給管に接続され、他方の端部42は排出管に接続されている。
この磁気部品は、例えば、以下の方法で作製できる。
【0015】
先ず、冷却管4を巻き付ける枠体として、鉄心1の外側の第1の合成樹脂層51(図2参照)の断面形状に対応させた断面形状と、鉄心1の棒状部1aの長さに対応させた軸方向寸法を有するものを用意する。この枠体に冷却管4を巻き付けて、端部41,42を図3に示すように延ばす。
【0016】
次に、枠体を外してから、冷却管4が巻かれている部分の外側に巻枠3を接着する。この接着剤層が第2の合成樹脂層52(図2参照)となる。次に、この巻枠3に導線21を巻き付けて巻線2を形成する。このようにして、先ず、巻線2、巻枠3、冷却管4、第2の合成樹脂層52(図2参照)からなる巻線部材を1対(2個)作製する。
【0017】
次に、各分割体11,12の鉄心1の棒状部1aをなす部分11a,12aに接着剤を塗布して、両巻線部材の冷却管4が巻かれて形成された空間に、各分割体11,12を各端部から挿入し、接着剤を硬化させる。この硬化した接着剤が、第1の合成樹脂層51を形成する。
【0018】
次に、巻枠3と鉄心1と冷却管4との隙間を接着剤で埋めて硬化させる。この隙間を埋める接着剤も、第1および第2の合成樹脂層51,52を形成する接着剤と同じものを用いる。これらの硬化された接着剤により合成樹脂製のスペーサ5(図1参照)が構成される。次に、左右の棒状部1aに巻かれた冷却管4の分割体12側の端部を接続する。
【0019】
冷却管4としては、熱伝導性が高い金属製のものを使用する。また、冷却管4は、断面積が大きい程、冷却効果が高いため、この例では冷却管4の断面を円形でなく長方形にしている。スペーサ5を構成する合成樹脂(すなわち、第1および第2の合成樹脂層51,52を形成する接着剤)としては、熱伝導性および絶縁性が高いものを使用する。
この磁気部品では、冷却管4を流れる冷却水により直接的にはスペーサ5が冷却される。このスペーサ5は、鉄心1の棒状部1aと巻枠3に接触しているため、鉄心1および巻線2からの熱を吸収している。このスペーサ5の熱が、冷却管4を流れる冷却水に伝わって外部に排出される。これにより、鉄心1と巻線2が効率的に冷却される。
【0020】
また、この磁気部品では、冷却部材の設置が、冷却管4を巻き付けるという簡単な方法で行われ、磁気部品の形状や大きさが異なる場合でも同じ冷却管4を用いることができるため、冷却部材のコストを低減できる。
【0021】
[第2実施形態]
図4および5に示す第2実施形態の磁気部品は、鉄心1と、巻線2と、巻枠3と、ヒートパイプ(管状冷却部材)6と、スペーサ5とで構成されている。
図4に示すように、鉄心1は、角を丸くした長方形のリング状に形成され、互いに平行な棒状部1aで二分割された分割体11,12で構成されている。この鉄心1の各棒状部1aに、所定の空間を介して巻線2が形成されている。巻線2は、絶縁性の紙で形成された巻枠3に導線21を巻くことで形成されている。巻枠3と鉄心1との空間に合成樹脂製のスペーサ5が配置されている。ヒートパイプ6は、スペーサ5内に、鉄心1の棒状部1aに巻かれた状態で配置されている。
【0022】
ヒートパイプ6は鉄心1に対して、図6に示すように配置されている。すなわち、鉄心1の各棒状部1aにヒートパイプ6を巻き、その先端部61を、分割体11の上部に突出させて、この先端部61に放熱用のフィン62を取り付けてある。
この磁気部品は、例えば、以下の方法で作製できる。
【0023】
先ず、ヒートパイプ6を巻き付ける枠体として、鉄心1の外側の第1の合成樹脂層51(図5参照)の断面形状に対応させた断面形状と、鉄心1の棒状部1aの長さに対応させた軸方向寸法を有するものを用意する。この枠体にヒートパイプ6を巻き付けて、その端部61を図6に示すように延ばす。
【0024】
次に、枠体を外してから、ヒートパイプ6が巻かれている部分の外側に巻枠3を接着する。この接着剤層が第2の合成樹脂層52となる。次に、この巻枠3に導線21を巻き付けて巻線2を形成する。このようにして、先ず、巻線2、巻枠3、ヒートパイプ6、第2の合成樹脂層52(図5参照)からなる巻線部材を1対(2個)作製する。
次に、各分割体11,12の鉄心1の棒状部1aをなす部分11a,12aに接着剤を塗布して、両巻線部材のヒートパイプ6が巻かれて形成された空間に、各分割体11,12を各端部から挿入し、接着剤を硬化させる。この硬化した接着剤が、第1の合成樹脂層51を形成する。
【0025】
次に、巻枠3と鉄心1とヒートパイプ6との隙間を接着剤で埋めて硬化させる。この隙間を埋める接着剤も、第1および第2の合成樹脂層51,52を形成する接着剤と同じものを用いる。これらの硬化された接着剤により合成樹脂製のスペーサ5(図4参照)が構成される。次に、ヒートパイプ6の先端部61にフィン62を取り付ける。
【0026】
ヒートパイプ6は、断面積が大きい程、冷却効果が高いため、この例ではヒートパイプ6の断面を円形でなく長方形にしている。スペーサ5を構成する合成樹脂(すなわち、第1および第2の合成樹脂層51,52を形成する接着剤)としては、熱伝導性および絶縁性が高いものを使用する。
【0027】
この磁気部品では、ヒートパイプ6により直接的にはスペーサ5が冷却される。このスペーサ5は、鉄心1の棒状部1aと巻枠3に接触しているため、鉄心1および巻線2からの熱を吸収している。このスペーサ5の熱がヒートパイプ6に伝わることで、ヒートパイプ6内の作動液が蒸発して先端部61に移動する。この先端部61はフィン62を冷却することで冷却されているため、ヒートパイプ6内の作動液がこの先端部61で冷却されて熱を放出し、凝縮されて液体に戻る。これにより、鉄心1と巻線2が効率的に冷却される。
【0028】
また、この磁気部品では、冷却部材の設置が、ヒートパイプ6を巻き付けるという簡単な方法で行われ、磁気部品の形状や大きさが異なる場合でも同じヒートパイプ6を用いることができるため、冷却部材のコストを低減できる。
【符号の説明】
【0029】
1 鉄心
1a 棒状部
11,12 鉄心の分割体
2 巻線
3 巻枠
4 冷却管(管状冷却部材)
5 スペーサ
6 ヒートパイプ(管状冷却部材)
62 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心と、この鉄心に所定の空間を介して導線が巻かれて形成された巻線と、前記空間に前記鉄心に巻かれて配置された管状冷却部材と、を有することを特徴とする磁気部品。
【請求項2】
前記管状冷却部材は、冷却媒体を流す冷却管である請求項1記載の磁気部品。
【請求項3】
前記管状冷却部材はヒートパイプである請求項1記載の磁気部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−40651(P2011−40651A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188334(P2009−188334)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】