説明

磁界および近接場発生素子、その使用方法、光アシスト磁気記録方法、並びに、光アシスト磁気記録装置

【課題】磁界の発生効率を低下させることなく、簡易な構成で磁界の発生領域と近接場の発生領域との位置関係を調節しやすくする。
【解決手段】通電部21は、第1の導体部11、第2の導体部12、および、これらの導体部を電気的に接続する接続部22を有している。第1の導体部11および第2の導体部12は空隙部23を挟んで対向している。第1の導体部11には、空隙部23を挟んで第2の導体部12へと突出する突出部35が形成されている。突出部35には、空隙部23に向かって突出する角部33が形成されている。通電部21に電流を流すと領域34において磁界強度が最大となる。また、通電部21に光を照射すると角部33の近傍に強い近接場が発生する。角部33を移動することにより、磁界発生領域34に対する近接場の発生領域を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界および近接場発生素子、その使用方法、光アシスト磁気記録方法、並びに、光アシスト磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、磁気記録媒体において記録容量の大容量化が求められている。その高密度磁気記録の技術として、光アシスト磁気記録方式が提案されている。この方式に用いる磁気記録媒体は保磁力が高く、室温下においては熱揺らぎに強いという性質がある。そして、記録を行う際には、磁気記録媒体の表面に光を集光し、局所的に磁気記録媒体を昇温させる。昇温された領域では、保磁力が低下するため、通常の磁気ヘッドによる記録が可能となる。
【0003】
近年、磁気記録の高密度化に伴い、集光サイズをより小さくする目的で、光の回折限界を超えた近接場を用いた技術が提案されている。例えば、特許文献1では、導体部を狭窄させ、その狭窄部に光を照射することで近接場を発生させる。そして、発生した近接場のエネルギーを磁気記録媒体の昇温に用いると共に、導体部に電流を流すことにより磁界を発生させ、磁気記録媒体に磁界を印加して記録を行う方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、磁気記録媒体の記録部の保磁力が記録磁界の大きさと等しくなる磁化固定点が、記録磁極のトレーリングエッジよりもリーディング側に設けられるように、磁界発生領域と加熱領域の位置を設定することが提案されている。これにより、記録の急峻性および熱擾乱耐性の確保の効果を得ている。なお、記録の急峻性とは、記録磁界の強度変化よりも、昇温後の媒体の自然冷却による保磁力の増加の方が早いため、自然冷却による保磁力の増加を利用することで、記録を短時間で行えるという性質である。熱擾乱耐性とは、記録磁極による記録後に熱擾乱によって磁界反転が生じるのを防止する性質である。
【0005】
さらに、特許文献3では、磁界発生用のコイルを配置し、その内側に近接場発生素子である散乱体を設けた構造となっている。そして、光アシスト磁気記録方式において、記録媒体を加熱する際に、磁界発生用のコイルがバックグランド光を低減する方法が提案されている。これにより、散乱体に当たらなかった光がバックグランド光として媒体に入射し、記録領域よりも広い範囲で媒体を加熱してしまうのを防いでいる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−120294号公報
【特許文献2】特開2001−189002号公報
【特許文献3】特開2007−52885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光アシスト磁気記録装置において、記録素子の発生磁界の態様、近接場の照射エリアのサイズ、磁気記録媒体の磁気特性等の条件が異なると、適切な磁気記録を施すために必要な磁界の発生領域と近接場の発生領域との位置関係が異なったものとなる。したがって、上記の条件に応じて、磁界の発生領域と近接場の発生領域との位置関係が設定可能であることが望ましい。
【0008】
これに対して、特許文献1は、磁界および近接場を発生させることが可能な構造を開示している。しかし、特許文献1によると、磁界と近接場を狭窄部においてほぼ同じ位置に発生させている。
【0009】
また、特許文献2では、磁界発生領域と加熱領域の位置関係を積極的に設定している。しかし、特許文献2においては、特許文献1のように導体部に設けた狭窄部の周辺に磁界と近接場との両方を発生させるという構成とは異なるため、磁界の発生領域と近接場との発生領域とを近接させるのに限界がある。つまり、特許文献2の構成では、位置設定が可能な範囲に限界がある。
【0010】
さらに、特許文献3のように、コイルの内側に三角形状の散乱体を設置している構造においては、記録密度向上のためにより微細化することを考えた場合、微小な散乱体や、先端の鋭い突起などの微小な構造を用いる必要がある。しかし、このような微小構造をコイルの内側に作製するのは困難である。また、近接場を発生させる空隙部の中に散乱体を設置した構造では、散乱体を設置するために散乱体の大きさに比べて十分に広い空隙部を確保する必要がある。その結果、磁界を発生させるコイルの曲率半径が空隙部を確保するために大きくなり、磁界の発生効率が低下してしまうという問題がある。
【0011】
以上に鑑み、本発明の目的は、磁界の発生効率を低下させることなく、簡易な構成で磁界の発生領域と近接場の発生領域との位置関係を調節しやすい磁界および近接場発生素子、その使用方法、光アシスト磁気記録方法、並びに、光アシスト磁気記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の問題を解決するために、本発明の磁界および近接場発生素子は、第1の軸方向に関して空間を挟んで互いに対向すると共に、前記空間に向かって前記第1の軸方向に直交する第2の軸方向から光が入射された場合に、前記空間において光の入射側とは反対側の端部に近接場を発生させる第1および第2の導体部と、前記第1および第2の導体部を電気的に接続させる、前記第2の軸方向から見て前記空間を含まないように配置された接続部とを備えており、前記第1および第2の導体部の少なくとも一方が、前記第1および第2の軸方向の両方に直交する第3の軸方向に関して前記接続部から離隔した位置において、前記第1および第2の導体部の他方との間に前記空間を挟んで前記他方へと突出する突出部を有しており、前記空間に向かって突出する角部が前記突出部に形成されている。
【0013】
これにより、以下のとおり、磁界および近接場発生素子に電流を印加したときに接続部近傍に発生する磁界の発生領域とは独立に、近接場強度が最大となる位置を設定することが可能となる。第1および第2の導体部の一方から接続部を通じて他方へと向かう電流を印加すると、接続部近傍に磁界が発生する。一方、第1および第2の導体部間の空間に光を照射すると、角部で強度が最大となるような近接場を発生させることができる。したがって、磁界の発生位置と近接場の発生位置とを分離することができる。さらに、突出部を接続部から第3の軸方向に関して離れた箇所に配置することで、接続部における電流に突出部の形状が影響を与えにくくなる。したがって、角部の位置を変更するために突出部の形状を変化させても、接続部周辺に発生する磁界分布に与える影響は小さい。以上から、接続部近傍に発生する磁界とは独立して近接場が発生する位置を設定することが可能となる。
【0014】
また、上述の狭窄部と同様に、接続部の周辺に磁界を発生させるため、磁界の発生効率が高い。また、接続部に近接して角部を設けることができるため、磁界の発生領域に近接場の発生領域を近接させることができる。また、角部の周辺に近接場を発生させるので、散乱体を用いる場合と比べて簡易な構成で近接場を発生させると共に、角部を配置する空間はそれほど大きくする必要がなく、磁界の発生効率を低下させることもない。
【0015】
なお、本発明において、第1および第2の導体部に挟まれた空間は、空隙であってもよいし、光が減衰しにくい材質等からなる絶縁体が配置されていてもよい。
【0016】
また、本発明の別の観点において、本発明の磁界および近接場発生素子は、第1の軸方向に関して空間を挟んで互いに対向すると共に、前記空間に向かって前記第1の軸方向に直交する第2の軸方向から光が入射された場合に、前記空間において光の入射側とは反対側の端部に近接場を発生させる第1および第2の導体部と、前記第1および第2の導体部を電気的に接続させる、前記第2の軸方向から見て前記空間を含まないように配置された接続部とを備えており、前記第1の導体部が、前記第1および第2の軸方向の両方に直交する第3の軸方向に関して前記接続部から離隔した位置において、前記空間を挟んで前記第2の導体部へと突出する突出部を有し、前記第2の導体部が、前記第3の軸方向に関して前記接続部から離隔した位置において、前記空間を挟んで前記第1の導体部へと突出する突出部を有し、前記第1および第2の導体部が有する前記突出部のそれぞれにおいて、前記空間に向かって突出する角部が形成されている。
【0017】
これによると、第1および第2の導体部の両方に突出部を形成することで角部を2箇所設けている。したがって、上述の観点の効果に加えて、近接場が集中する箇所を2箇所にすることが可能となる。
【0018】
また、本発明においては、前記角部が、前記突出部において前記第3の軸方向に関して前記接続部に近い方の端部に形成されていることが好ましい。これによると、角部を接続部に近接して配置することができる。
【0019】
また、本発明においては、前記第1および第2の導体部のいずれかにおいて前記角部が、前記第1および第2の導体部の一方から前記接続部を通じて他方へと向かう電流を印加した際に発生する磁界の強度分布の中心を通る、前記第3の軸に平行な直線上に配置されているが好ましい。これによると、近接場が大きくなる位置と磁界が大きくなる位置とを第1の軸方向に関して一致させるので、例えば、物体に対して第1の軸方向について同じ位置に近接場と磁界とを印加することができる。
【0020】
また、本発明においては、前記第1および第2の導体部のいずれかにおいて前記第1の軸方向に関する前記突出部の一端が、前記第1の軸方向に関して、前記第1および第2の導体部の一方から前記接続部を通じて他方へと向かう電流を印加した際に発生する磁界の強度分布の中心と同じ位置に配置されていることが好ましい。これによると、第1の軸方向に関して、突出部の一端の位置を磁界が大きくなる位置に一致させている。突出部の一端は、角部と同様、近接場が発生しやすい部分である。したがって、物体に対して第1の軸方向について同じ位置に近接場と磁界とを印加することができる。
【0021】
また、本発明の磁界および近接場発生素子の使用方法においては、上記の磁界および近接場発生素子を使用する方法である。そして、偏光方向の主成分が前記第1の軸方向に沿った光を前記第2の軸方向から前記空間に入射する。上述の磁界および近接場発生素子においては、照射する光が第1の軸方向を主成分とする直線偏光のときに、近接場強度が最も大きくなる。このため、第1の軸方向を主要な偏光成分とする光を入射して素子を使用することで、光源に投入する電力を低減することができる。
【0022】
また、本発明の光アシスト磁気記録方法においては、上記の磁界および近接場発生素子を使用して磁気的情報を磁気記録媒体に記録する光アシスト磁気記録方法である。そして、前記空間に光を入射した際に発生する近接場によって磁気記録媒体を加熱すると共に、前記第1および第2の導体部の一方から前記接続部を通じて他方へと向かう電流を印加した際に発生する磁界を磁気記録媒体において近接場によって加熱された領域に印加する。このように、上述の磁界および近接場発生素子を光アシスト磁気記録素子として利用することができる。
【0023】
また、本発明の光アシスト磁気記録装置においては、の磁界および近接場発生素子を備え、磁気記録媒体に磁気的情報を記録する光アシスト磁気記録装置である。そして、前記空間に光を入射する光源と、前記第1および第2の導体部に接続された第1および第2の電極とをさらに備えており、前記光源からの光が前記空間に入射した際に発生する近接場によって磁気記録媒体を加熱すると共に、前記第1および第2の電極間に電流を印加した際に発生する磁界を磁気記録媒体において近接場によって加熱された領域に印加する。このように、上述の磁界および近接場発生素子を光アシスト磁気記録装置に採用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、磁界が発生する領域とは独立に、近接場強度が最大となる位置を設定することが可能となる。また、簡易な構成で近接場を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明の好適な一実施形態である第1の実施形態に関わる光アシスト磁気記録装置1について説明する。図1(a)は、光アシスト磁気記録装置1の正面図である。光アシスト磁気記録装置1は、サスペンション52とスライダ53とを有している。また、光アシスト磁気記録装置1は、磁気記録媒体51を回転させる図示しない回転駆動機構を有している。スライダ53は、磁気記録媒体51の上方に配置されるようにサスペンション52に保持されている。サスペンション52は、図示しないスライダ駆動機構によって駆動され、磁気記録媒体51の移動方向に直交する方向にスライダ53を磁気記録媒体51に沿って移動させることができるように構成されている。
【0026】
図1(b)は、図1(a)のスライダ53周辺を磁気記録媒体51側から見た図である。図1(b)に示すように、スライダ53の先端近傍には、磁気記録のための記録素子54が設けられている。記録素子54は磁気記録媒体51に対向している。図1(c)は、図1(b)の記録素子54の一部を拡大した図である。記録素子54は、通電部21を有しており、通電部21に接続された電極部26aおよび26b(第1および第2の電極)を通じて電流源25から電流が流されると、磁界を発生させる。また、記録素子54は、後述のように光源24から光が照射されると近接場を発生させる。
【0027】
光アシスト磁気記録装置1は、以下のように磁気記録媒体51に磁気的情報を記録する。まず、記録素子54は、磁気記録媒体51へと近接場を印加することにより、磁気記録媒体51を局所的に加熱する。そして、磁気記録媒体51において近接場によって加熱された領域に磁界を印加することによって磁気記録を施す。
【0028】
一方、上記のように、磁気記録媒体51は回転駆動機構によって回転されると、スライダ53の周辺においては図1(a)や図1(b)に示す方向に移動する。これによって、磁気記録媒体51において図1(a)や図1(b)に示す方向に沿った領域が、次々と記録素子54に対向した位置を通過する。記録素子54の位置を保持しつつ磁気記録媒体51を回転させた場合に、磁気記録媒体51において記録素子54に対向する位置を順に通過する領域を、以下においてトラック領域と呼称する。トラック領域は、磁気記録媒体51においてその回転方向に沿った帯状の領域である。記録素子54の位置を保持しつつ、磁気記録媒体51を回転させながら記録素子54が磁気記録媒体51に磁気記録を施すことにより、磁気記録媒体51において一つのトラック領域に順に磁気記録が施されていく。
【0029】
また、上記の通り、スライダ53は、磁気記録媒体51の移動方向に直交する方向に移動することができる。これによって、磁気記録媒体51において別のトラック領域へと記録素子54を移動させ、別のトラック領域に磁気記録を施させることもできる。
【0030】
このように、磁気記録媒体51が近接場によって加熱されることで、磁気記録媒体51の保磁力が低下する。その状態で記録素子54に磁界を発生させることで、磁気記録媒体51の保磁力が低下した領域に対して磁気記録を行うことが可能となる。
【0031】
以下、記録素子54の構成について説明する。図2は、記録素子54を図1(a)の磁気記録媒体51側から斜めに見た図である。図2において、図中の右方向をX軸方向(第1の軸方向)、手前から奥に向かう方向をY軸方向(第3の軸方向)、および、上方向をZ軸方向(第2の軸方向)と規定する。X軸〜Z軸は右手系のデカルト座標系を構成する。記録素子54は通電部21を有している。通電部21は、第1の導体部11と第2の導体部12と接続部22とからなり、光が透過する材質からなる基板41上に形成されている。図3は、図2をZ軸の正側から見た図である。
【0032】
図2および図3に示すように、第1の導体部11と第2の導体部12は、互いに厚みが等しい平板状の導体であり、いずれもZ軸方向が厚み方向となるように配置されている。また、第1の導体部11と第2の導体部12は、Y軸方向に関して互いの最大幅が等しく、Y軸方向に関して両端面が同じ位置になるように配置されている。第1の導体部11と第2の導体部12は、X軸方向に関して空隙部23を挟んで対向している。
【0033】
接続部22は、第1の導体部11と第2の導体部12を電気的に接続している。接続部22は、第1の導体部11と第2の導体部12との間に配置されており、第1の導体部11から空隙部23を跨ぎ第2の導体部12まで直線状に延びている。接続部22は、Y軸方向に関して第1の導体部11および第2の導体部12より小さい幅を有しており、第1の導体部11および第2の導体部12と同じ厚みを有している。接続部22は、空隙部23から遠い方の端面が第1の導体部11および第2の導体部12の端面とY方向に関して一致するように配置されている。
【0034】
第1の導体部11、第2の導体部12、および接続部22は、例えば金、銀、アルミニウム、白金、銅、または、それらの合金から構成されている。第1の導体部11、第2の導体部12および接続部22の材質は、互いに全く同一でも構わないし、異なっても構わない。また、上記のとおり、第1の導体部11および第2の導体部12には電極部26aおよび26bが接続されている。これらの電極部間に電流を印加することによって、第1の導体部11から接続部22を通り第2の導体部12へと向かって電流を流すことができる。また、これとは逆方向に電流を流すこともできる。
【0035】
記録素子54は、通電部21への照射光を発生させるための光源24を有している。光源24は、通電部21よりもZ軸の負側に配置されている。図2に示すように、光源24からの光Phは、基板41を透過し、通電部21においてZ軸の負側の表面に入射する。なお、以下において、通電部21のZ軸方向に直交する2表面のうち、Z軸に関して負側に位置する表面を入射面、Z軸の正側に位置する表面を出射面とする。
【0036】
第1の導体部11には、空隙部23を挟んで第2の導体部12に向かって突出する突出部35が形成されている。突出部35は、接続部22からY軸方向に離隔する位置に形成されている。突出部35は、第1の導体部11と同じ厚みの平板形状を有しており、Z軸方向から見て長方形の概略形状を有している。突出部35において第2の導体部12に対向した端面35aは、Y軸方向およびZ軸方向の両方に平行なY−Z平面に沿っている。また、突出部35において接続部22に対向した端面35bは、Y軸方向およびZ軸方向の両方に平行なX−Z平面に沿っている。端面35aと端面35bとの間には、図3に示すように、Z軸方向から見て直角の角部33が形成されている。このような突出部35が形成されていることにより、空隙部23において接続部22から離隔した領域32は、接続部22に近接した領域31よりX軸方向に関して幅が狭くなっている。以下、領域31のX軸方向の幅をdx1、領域32のX軸方向の幅をdx2(<dx1)とする。また、領域31のY軸方向の幅をdy1とする。
【0037】
なお、空隙部23は、第1の導体部11と第2の導体部12との間に形成された空隙であるが、この部分が空隙ではなく、光源24から照射された光の減衰が生じにくい材質の絶縁体で構成されていてもよい。
【0038】
次に、記録素子54において発生する磁界について説明する。電極部26aおよび26b間に電流を流したとき、アンペールの法則に従い、通電部21の周囲に磁界が発生する。このとき、図2の点線に囲まれている領域34において最も磁界強度が大きくなる。
【0039】
領域34において最も磁界強度が大きくなる理由のひとつは、電流経路に直交する断面における周の長さが、第1の導体部11および第2の導体部12においてよりも接続部22において短くなっていることである。アンペールの法則により、導線の近傍において導線の周囲を通る閉磁路が長いほど導線の近傍に発生する磁界強度が小さくなる。したがって、電流経路に直交する断面の周の長さが第1の導体部11および第2の導体部12より短い接続部22近傍において磁界強度が大きくなるからである。
【0040】
領域34において最も磁界強度が大きくなるもうひとつの理由は、通電部21の形状である。電流経路は第1の導体部11から、接続部22を通り、第2の導体部12に到達する経路か、あるいはその逆向きの経路である。例えば、前者の電流経路は、第1の導体部11から、空隙部23を迂回して接続部22に向かう経路となる。ここで、第1の導体部11において接続部22から離れた位置では、X軸方向に沿って均一に電流が流れる。しかし、接続部22は第1の導体部11よりY軸に関する幅が狭いため、接続部22に近い位置では、接続部22に向かって電流密度が大きくなる。電流密度が大きくなった電流は、接続部22においてX軸方向に沿って流れる。一方、接続部22から第2の導体部12に電流が流れるときには、第2の導体部12で再び均一な電流密度となるように電流経路が広がる。そして、第2の導体部12において接続部22から離れた位置では、X軸方向に沿って均一に電流が流れる。
【0041】
このような電流経路から、通電部21全体では空隙部23を図2の時計回りに迂回するような経路に沿って電流が流れることとなる。つまり、通電部21には半周分巻いたコイルのように電流が流れることになるため、領域34の磁界強度が大きくなる。なお、電流が逆向きのときも同様である。以上が領域34において磁界強度が大きくなる理由である。
【0042】
次に、記録素子54において発生する近接場について説明する。光源24から空隙部23に光が照射されることによって、空隙部23近傍の通電部21の界面に表面プラズモンが励起される。これにより通電部21の出射面に近接場光が発生する。ここで近接場光とは、物質の表面および界面近傍で生じる表面プラズモンによって表面に近接した領域に発生する電磁場や、孤立微粒子や微細金属針先端などに局所的に励起される局所表面プラズモンによって表面に近接した領域に発生する電磁場などを総称したものである。なお、近接場光は光の一種であるが、空間を伝搬しない性質がある。以下では、近接場光と区別するために、空間を伝搬する光を伝搬光と記す。
【0043】
ここで、空隙部23のX軸方向の長さは、光源24から照射される光の波長以下であることが望ましい。つまり、dx1およびdx2は、光源24からの光の波長以下であることが好ましい。それは、伝搬光は光の波長以下の空隙を通過できないという性質があることを利用して、空隙部23を通じて磁気記録媒体51側へと向かう伝搬光を低減させるためである。
【0044】
また、本実施形態においては、第1の導体部11、および第2の導体部12、および接続部22が、金、銀、アルミニウム、白金、銅などの表面プラズモンが生じやすい金属材料からなるため、通電部21の表面近傍に発生する近接場が大きくなりやすい。さらに、角部33は周囲よりも尖った形状であるため電界が集中しやすい。そのため、後述においても示すように、近接場強度も角部33の近傍において最大となる。
【0045】
なお、角部33はZ軸方向から見て直角であるが、必ずしも直角でなくてよい。例えば、直角よりさらに角度が小さくてもよいし、直角より角度が大きくてもよい。また、近接場を集中させるという観点からすると、角部33の先端が先鋭であるほど好ましいが、突出部35において周囲と比較して先端が尖っているのであれば、必ずしもそれほど先鋭でなくてよい。このように、角部33の形状は、周囲より近接場を集中させることができる形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0046】
また、上記の通り突出部35において接続部22に近い方の端部に配置されていることにより、近接場強度が最大となる位置を、磁界強度が大きくなる位置に近接して配置することが可能である。しかし、角部33の位置は、突出部35のいずれの位置に配置されていてもよい。例えば、突出部35において第2の導体部12に対向した端面35aに、第2の導体部12に向かって尖った形状を有する角部が設けられていてもよい。
【0047】
さらに、突出部35は、上記の通りZ軸方向から見て長方形の概略形状を有しているが、その他の形状であってもよい。例えば、突出部35がZ軸方向から見て第2の導体部12に向かって弧状に突出するように形成されており、その端面のいずれかの位置に、空隙部23に向かって突出する角部33が形成されていてもよい。
【0048】
以上説明した構成によると、図2のように、空隙部23を挟んで第2の導体部12に向かって突出する突出部35を第1の導体部11に形成し、その突出部35を接続部22からY軸方向に離れた箇所に配置している。これにより、角部33の位置を変化させても磁界強度分布はほとんど変化しない。これは、突出物35が接続部22から離隔されて形成されているため、突出部35が主要な電流経路上に位置していないことから、角部33の位置を変化させても電流経路に与える影響は少なく、磁界強度分布が変化しにくいことによるものである。
【0049】
このことを示すために、本実施形態の記録素子54が発生させる磁界および近接場強度の態様についてより詳細に説明する。図4は、図2の通電部21に電流を流した際に、通電部21において出射面側の表面近傍に発生する磁界の強度分布を電磁界シミュレーションによって導出した結果である。なお、本実施形態に用いられる物質の物性値、物質の寸法、印加電流等は以下に示すとおりであり、シミュレーションは有限要素法を用いた。
【0050】
[1−1]通電部21は、金からなるとした。金の導電率は4.444×10S/m(ジーメンス毎メートル)とし、比透磁率は1とした。
【0051】
[1−2]通電部21の外側の、空隙部23を含む領域は、空気が充填されているとした。空気の導電率は、1S/mとし、比透磁率は1とした。
【0052】
[1−3]接続部22以外での通電部21の幅(Y軸方向の長さ)は600nm(ナノメートル)とし、接続部22の幅(Y軸方向の長さ)は200nmとし、通電部21の厚さ(Z軸方向の長さ)は400nmとした。
【0053】
[1−4]通電部21に流す電流を100mA(ミリアンペア)とした。なお、接続部22から十分離れたところで、通電部21の幅(Y軸方向)および厚さ(Z軸方向)に関して電流密度が均一になるように電流を印加している。
【0054】
[1−5]また、空隙部23については以下の通りである。図2において、dx1を200nm(空隙部は−100nm≦X≦100nm)とし、dx2を100nm(空隙部は0nm≦X≦100nm)とし、dy1を100nm(空隙部は−50nm≦Y≦50nm)とした。なお、括弧内は、dx1、dx2、dy1に沿った各方向に関して空隙部23がXYZ空間内に占める範囲を示す。ここで、基準となる座標系は、上述のX軸、Y軸およびZ軸からなるデカルト座標とし、その原点を、X軸方向およびY軸方向に関しては図3において領域31の中心の位置とし、Z軸方向に関しては通電部21の出射面の位置としている。以下、この基準となる座標系を「基準座標系」と呼称する。
【0055】
図4の分布図g1には、通電部21の形状が示されていると共に、通電部21およびその周辺の領域において発生した磁界の強度がグレースケールで示されている。図4の凡例g2には、磁界の強度とグレースケールの程度との関係が示されている。図4に示す結果により、磁界強度が大きくなる領域は図2に示した点線で囲われている領域34となることが分かる。なお、図2の構造における磁界強度の最大値は、図4に示すように1000Oe(エルステッド)程度である。
【0056】
次に、図2の構造から、図5(a)、図5(b)、および図5(c)のように角部33の位置を変えたときの磁界強度分布を計算した。ここで、図5(a)〜図5(c)の構成の計算条件は以下の通りである。
【0057】
[2−1]図5(a)では、dx1を200nm(空隙部は−100nm≦X≦100nm)とし、dx2を100nm(空隙部は0nm≦X≦100nm)とし、dy1を50nm(空隙部は0nm≦Y≦50nm)とした。
【0058】
[2−2]図5(b)では、dx1を200nm(空隙部は−100nm≦X≦100nm)とし、dx2を100nm(空隙部は0nm≦X≦100nm)とし、dy1を150nm(空隙部は−100nm≦Y≦50nm)とした。
【0059】
[2−3]図5(c)では、dx1を200nm(空隙部は−100nm≦X≦100nm)とし、dx2を130nm(空隙部は−30nm≦X≦100nm)とし、dy1を100nm(空隙部は−50nm≦Y≦50nm)とした。
【0060】
なお、図5(a)〜図5(c)の構成についてのその他の計算条件は、図4の結果に関する上記の[1−1]〜[1−5]における条件とそれぞれ同様である。
【0061】
図6のグラフは、図5(a)〜図5(c)に示す一点鎖線PP’上の磁界強度分布の計算結果である。一点鎖線PP’は、接続部22と空隙部23との界面を通り、X軸に平行な直線である。なお、図6には、図4の計算結果において図2の一点鎖線PP’上に相当する領域の磁界強度分布も示されている。図6のグラフにおいて、実線の曲線が図4の結果を示し、一点鎖線の曲線が図5(a)の結果を示し、短い破線の曲線が図5(b)の結果を示し、長い破線の曲線が図5(c)の結果を示している。また、図6のグラフにおいて横軸xは、一点鎖線PP’上の位置を、上述の基準座標系のX座標を用いて示している。図6において縦軸は、発生した磁界の強度を示している。
【0062】
図6において、図4および図5(a)〜図5(c)の曲線は、互いにほぼ重なり合っている。以上から、角部33の位置を変化させても、磁界強度が最大となる位置を含めて、磁界強度分布の態様は、ほとんど変化しないことが分かる。
【0063】
また、図2の構成では、角部33において近接場強度が最大となる。さらに、角部33の位置は磁界強度分布に影響を与えないことから、磁界が発生する領域とは独立に、近接場の強度が最大となる位置を設定可能となる。これは、角部33は尖った形状であるため電界が集中しやすくなり、角部33の位置を変更しても、常に角部33において近接場強度が最大になるからである。
【0064】
このことを示すために、図2の構造に光源24から光を照射した際に発生する近接場の強度分布について説明する。図7は、図2の構造に対し、光源24から空隙部23に光を照射したときに、空隙部23において出射面側の端部(空隙部23において磁気記録媒体51に近い側の端部)に発生する近接場の強度分布を計算した結果である。なお、本実施形態に用いられる物質の物性値、物質の寸法、照射光の条件等は以下に示すとおりであり、シミュレーションはFDTD(Finite Difference Time Domain)法を用いた。
【0065】
[3−1]照射した光の波長は660nmであって、空間強度分布はガウス型である。そのガウス分布幅、つまり、強度が強度中心の1/eとなる幅は900nmである。なお、eは自然対数の底となる定数を示す。また、光ビームの中心の電界は1V/mであって、偏光方向はX軸方向の直線偏光である。光ビームの進行方向はZ軸方向に平行で、Z軸の負側から正側へ向かう向きである。空隙部23に照射する光ビームの中心位置の座標は、上記の基準座標系において、X=0nm、Y=−50nmとした。
【0066】
[3−2]シミュレーション空間は、−500nm≦X≦500nm、−500nm≦Y≦500nm、−500nm≦Z≦500nmとした。
【0067】
[3−3]通電部21は、金からなるとした。波長660nmの光に対して、金の屈折率は0.17とし、消衰係数は3.15とした。通電部21の厚さ(Z軸方向の長さ)は400nmとし、Z=0nmが通電部21において出射面側の表面の位置である。空隙部23には、空気が充填されているとした。波長660nmの光に対して、空気の屈折率は1とし、消衰係数は0とした。
【0068】
[3−4]空隙部23については以下の通りである。図2において、dx1を200nm(空隙部は−100nm≦X≦100nm)とし、dx2を100nm(空隙部は0nm≦X≦100nm)とし、dy1を100nm(空隙部は−50nm≦Y≦50nm)とした。また、角部33の座標はX=0nm、Y=−50nmとなる。
【0069】
図7の分布図g3には、空隙部23の形状と近接場の強度分布とが示されている。また、図7の凡例g4は、近接場の強度分布とグレースケールとの関係を示している。なお、図7の分布図g3においては、近接場の強度が等しい点を結んだ等強度線をその強度に応じたグレースケールで描くことによって強度分布が示されている。分布図g3には等強度線の閉曲線が複数描かれており、より内部に位置する閉曲線ほど近接場の強度が大きいことを示している。
【0070】
図8のグラフは、図7中の一点鎖線AB上に発生した近接場の強度分布と、図7中の一点鎖線CD上に発生した近接場の強度分布とを示している。なお、一点鎖線ABは、上述の基準座標系においてX=Z=0nmの直線、すなわちY軸に相当する。また、一点鎖線CDは、上述の基準座標系においてX=100nm且つZ=0nmの直線に相当する。図8のグラフにおいて、横軸yは、一点鎖線ABまたはCD上の位置を、上述の基準座標系のY座標を用いて示している。また、図8のグラフにおいて矢印a〜dは、図7において矢印a〜dが示す一点鎖線上のそれぞれの位置を表している。
【0071】
図7、図8によると、角部33において近接場強度が最大となることが分かる。このことと、角部33の位置が磁界強度分布に影響を与えないことから、図2の構造は磁界が発生する領域とは独立に、近接場の強度が最大となる位置を設定可能となることが示された。
【0072】
なお、角部33のX軸方向に関する位置は、磁界の強度分布の中心と同じ位置であることが望ましい。具体的には、例えば図6の場合、磁界の強度分布の中心はX=0nmの位置となる。したがって、角部33の位置は、X=0nmまたはその近傍に配置されることが望ましい。この理由は以下の通りである。
【0073】
上述のとおり、記録素子54が磁気記録を施す磁気記録媒体51は、Y軸方向に移動する。したがって、X軸方向に関して角部33が磁界の強度分布の中心と同じ位置である場合、磁界強度分布の中心と近接場強度が最大となる位置が、磁気記録の際に、ともに磁気記録媒体51の同一のトラック領域上に位置するということである。
【0074】
一方で、近接場によって磁気記録媒体51を加熱した場合、記録媒体の熱物性値にもよるが、近接場強度が発生する範囲に比べて磁気記録媒体51において温度が上昇した範囲が広くなることが想定される。しかし、近接場強度が最大になる角部33と、磁界強度分布の中心とが離れすぎると、磁気記録媒体51において温度が上昇した領域から磁界の印加領域がずれるおそれがある。
【0075】
これに対して、上記のようにX軸方向に関して角部33が磁界の強度分布の中心と同じ位置に配置されることにより、磁界強度分布の中心と近接場強度が最大となる位置を同一トラック上に位置させることができる。これによって、磁気記録媒体51において温度が上昇する領域が磁界印加領域から外れることを抑制することができ、磁気記録の信頼性を向上することが可能となる。
【0076】
なお、図2の構成においては、第1の導体部11に形成された突出部35の端面35aがY−Z平面に沿っているため、X軸方向に関して角部33の位置と端面35aの位置とが一致している。これに対し、端面35aが平面以外の曲面や凹凸面を構成しており、角部33の位置と端面35aとの位置が一致していなくてもよい。しかし、端面35aがY−Z平面に沿っており、磁気強度分布の中心に位置していることが望ましい。これは、図7や図8に示すように端面35aの近傍にも近接場が発生する。そして、端面35aが磁気強度分布の中心に位置すると、角部33で発生した近接場のエネルギーに加えて、端面35aに発生した近接場のエネルギーを、磁気記録媒体51への加熱に利用することが可能となるからである。これによって、磁気記録媒体51への加熱に近接場のエネルギーを有効に利用することができるため、近接場を発生させるのに必要となる光源24に投入する電力を軽減することが可能となる。
【0077】
ところで、上述のシミュレーションにおいては、通電部21に照射する光がX軸方向の直線偏光である場合を想定している。しかし、光源24から通電部21に入射させる光は、直線偏光であっても、円偏光、楕円偏光であっても構わない。また、直線偏光の場合、どの偏光方向であっても構わない。いずれの偏光方向であっても、角部33において近接場強度が最大となるため、磁界の強度分布に影響を与えることなく近接場強度が最大となる位置を独立に設定できるという効果を確保できるからである。
【0078】
ただし、近接場強度を効率よく得るためには、偏光方向がX軸方向であることが望ましい。その理由を以下に示す。図9は、図2の構造において、照射する光が直線偏光であって、XY面に沿ってその偏光方向を変化させたときに、上述の基準座標系においてY軸(図7において一点鎖線ABに相当する直線)上の近接場強度分布のシミュレーション結果を示している。図9において、横軸yは、基準座標系のY軸上の位置を示し、縦軸は近接場強度を示している。また、矢印a〜dは、図7において矢印a〜dが示す位置に相当する。なお、偏光方向以外に関するシミュレーションの条件は上記の[1−1]〜[1−5]と同様である。
【0079】
図9に示すように、直線偏光の偏光方向とX軸方向とのなす角をθとし、θ=0°、θ=30°、θ=60°およびθ=90°のそれぞれの場合について計算している。図9において、θ=0°の結果は実線の曲線で、θ=30°の結果は長い破線の曲線で、θ=60°の結果は短い破線の曲線で、θ=90°の結果は一点鎖線の曲線で示されている。なお、θ=0°の結果は、図8において一点鎖線AB上の近接場強度分布の結果と一致している。
【0080】
図9に示すように、θ=0°すなわち偏光方向がX軸方向の場合が最も近接場強度が高い。そして、θが小さくなると、近接場強度も小さくなっていく傾向にある。以上から、偏光方向がX軸方向に沿った直線偏光の光を照射したときが、最も近接場強度が高く、効率良く近接場強度を得ることが可能となることが示された。
【0081】
なお、通電部21に照射する光として実際に用いる光においては、その主成分がX方向に偏光した直線偏光の光であればよい。図9に示すように、θ=0°のみならず、θ=30°のときにも十分に強度が大きい近接場が発生するため、θ=30°程度の直線偏光の光がある程度含まれていても問題ないからである。
【0082】
一般には、偏光方向が金属の表面に対して直交するときに、強度の大きい近接場が発生する。図2の場合、照射光の偏光方向が、第1の導体部11や第2の導体部12の空隙部23に面した端面に対して直交するX軸方向であるときに、大きい近接場強度が発生する。特に、突出部35の端部に位置する角部33で発生する近接場強度が大きくなる。以上のように、光源24から入射させる光の偏光方向はX軸方向であることが最も望ましい。
【0083】
以下、本実施形態の記録素子を作製する工程について説明する。通電部21を作製するには大きく分けて2通りの方法がある。一つの方法は、X―Y平面に広がる基板41上に、Z軸方向に通電部21を堆積していく方法である。これによって、図2に示す構成の記録素子54を作製することができる。もう一つの方法は、図10の記録素子154や図11の記録素子254のように、X―Z平面に沿った基板41上に通電部21を形成する方法である。この方法では、X―Z平面に広がる基板41上に、Y軸方向に通電部21を堆積することによって通電部21を形成することになる。両者ともフォトリソグラフィによりパターンを形成し、スパッタリングやエッチング等により素子を作製する。
【0084】
X―Y平面に広がる基板41上にZ軸方向に通電部21を堆積していく方法では、空隙部23は空洞にすることができる。一般に、空隙部23が空気などの屈折率の小さい物質であると、近接場強度が大きくなる。しかし、空隙部23に面した接続部22の端面から、角部33までの距離(Y軸方向の長さ)は、素子作製において作製し得る加工精度の限界幅(dminと記す)となる。このdminは、パターン作製の際のフォトリソグラフィにおいて、露光に用いる光源の波長等によって決定される。
【0085】
一方、X―Z平面に広がる基板41上にY軸方向に通電部21を堆積していく方法では、空隙部23を空洞にすることは困難であり、空隙部23に相当する部分を、例えば石英などの光の減衰が少ない絶縁体で作製する必要がある。しかし、この場合、空隙部23に面している接続部22の縁から、角部33までの距離(Y軸方向の長さ)は、フォトリソグラフィにより作製するパターンではなく、空隙部23に用いる絶縁体を成膜する堆積時間により制御できる。そのため、dmin以下に形成可能な上、磁界が発生する領域と近接場強度が最大となる位置とのY軸方向の位置関係を、絶縁体の堆積レートを考慮することにより、細かく正確に設定可能となる。
【0086】
以下、素子作製方法についてより詳細に説明する。X―Y平面に広がる基板41上にZ軸方向に通電部21を堆積していく方法においては、基板41上に通電部21のパターンを作製し、通電部21に相当する領域以外の領域をエッチング等の方法で削ればよい。これによって、通電部21を完成させることができる。
【0087】
一方、X―Z平面に広がる基板41上にY軸方向に通電部21を堆積していく方法においては、例えば以下の工程を経て記録素子を作製することができる。以下では、一例として、素子作製の際、通電部21をY軸の負側から正側に堆積していく手法について説明する。
【0088】
まず、図12(a)に示すように、基板41上に金を堆積し、その後エッチング等により削ることで空隙部23の一部である領域32を形成する。これによって、通電部21の一部となる導体部21aが基板41上に形成される。次に、図12(b)に示すように、領域32に絶縁体32’を埋め込む。そして、絶縁体32’を埋め込んだ導体部21a上に、図12(c)に示すように、さらに金を堆積する。これによって、通電部21の一部となる導体部21bが基板41上に形成される。そして、領域32よりも幅の大きい領域31を導体部21bに形成する。
【0089】
次に、図12(d)に示すように、領域31にさらに絶縁体を埋め込む。これによって、空隙部23に相当する部分に絶縁体が埋め込まれた絶縁部23’が通電部21bに形成される。次に、絶縁部23’が形成された通電部21b上に、図12(e)に示すように、さらに金電極を堆積し、接続部22を含む領域を形成する。
【0090】
以上の工程により、通電部21が完成する。以上の手順を踏むと、角部33を薄膜の堆積過程で作製することが可能となる。
【0091】
なお、素子作製時に、角部33がX軸方向に関して磁界強度分布の中心、つまり、接続部22の中心付近に位置するように通電部21を作成することが好ましい。また、突出部35の端面35aがY−Z平面に沿っており、やはり磁界強度分布の中心に位置するように通電部21を作成することが好ましい。これらによって、上述のとおり、加熱に用いる近接場のエネルギーを有効利用することができるからである。
【0092】
以下、第1の実施形態に対する比較例となる通電部921について、図13を参照しつつ説明する。図13は、通電部921をZ軸の正側から見た図である。通電部921は、導体部911と第2の導体部912と接続部922とからなる。導体部911および912は、平板状の厚みが等しい導体である。これらは、互いにY軸方向の幅が等しく、Y軸方向に同じ位置に配置されている。導体部911および912は、X軸方向に離隔して配置されており、導電材料から形成された接続部922によって互いに電気的に接続されている。接続部922は、導体部911および912の間に配置されており、Y軸方向に関してこれらの端部に配置されている。導体部911および912の間には、空隙部923が形成されている。空隙部923は、空隙部23とは異なり、Y軸方向に沿って直線状に形成されている。
【0093】
次に、通電部921において発生する磁界について説明する。図14は、通電部921に電流を流した際に、通電部921の表面近傍に発生する磁界の強度分布をシミュレーションによって導出した結果を示す。このシミュレーションは、以下の条件に従って、上述のシミュレーションと同様に有限要素法を用いて行われた。
【0094】
[4]空隙部923において、dx3を100nm(空隙部は−50nm≦X≦50nm)とした。その他の条件は、上述のシミュレーションにおける[1−1]〜[1−4]の条件と同様である。なお、本比較例においては、基準座標系の原点を、X軸方向に関しては空隙部923の中心の位置とし、Y軸方向に関しては接続部922の空隙部923に面した端面の位置とし、Z軸方向に関しては通電部921の出射面の位置とする。
【0095】
図14の分布図g5には、通電部921の形状が示されていると共に、通電部921およびその周辺の領域において発生した磁界の強度がグレースケールで示されている。図14の凡例g6には、磁界の強度とグレースケールの程度との関係が示されている。
【0096】
図14に示すように、磁界強度が大きくなる領域は、図13に示した点線で囲まれている領域934となることが分かる。また、磁界強度の最大値は、1000Oe程度となる。つまり、同じ大きさの電流を流したとき、通電部21に発生する磁界の最大強度と通電部921に発生する磁界の最大強度とは、同程度となる。また、図14と図4との比較から分かるように、一点鎖線PP’上の磁界強度分布は、通電部21において発生する磁界と通電部921において発生する磁界との間で、ほぼ同様の態様となることが分かる。このように、通電部21と通電部921とでは、互いの構造の違いに関わらず、磁界発生素子としてほぼ同等の特性を示すことがわかる。
【0097】
次に、通電部921において発生する近接場について説明する。図15は、通電部921に対し、空隙部923に向かって光を照射したときに発生する近接場の強度分布を計算した結果である。この計算は、以下の条件に従い、上述のシミュレーションと同様にFDTDシミュレーションを用いて行われた。
【0098】
[5−1]空隙部923において、dx3を100nm(空隙部は−50nm≦X≦50nm)とした。
【0099】
[5−2]空隙部923に照射する光ビームの中心位置の座標は、X=0nm、Y=0nm(接続部22と空隙部23との境界上)とした。以上の[5−1]および[5−2]以外の条件は、上述のシミュレーションにおける[3−1]〜[3−3]における条件と同様である。
【0100】
図15の分布図g7には、空隙部923の形状と近接場の強度分布とが示されている。また、図15の凡例g8は、近接場の強度分布とグレースケールとの関係を示している。なお、図15の分布図g7においては、近接場の強度が等しい点を結んだ等強度線をその強度に応じたグレースケールで描くことによって強度分布が示されている。分布図g7には等強度線の閉曲線が複数描かれており、より内部に位置する閉曲線ほど近接場の強度が大きいことを示している。
【0101】
図16のグラフは、図15中の一点鎖線EF上に発生した近接場の強度分布を示している。なお、一点鎖線EFは、上述の基準座標系においてX=―50nm且つZ=0nmの直線に相当する。図16のグラフにおいて、横軸yは、一点鎖線EF上の位置を、上述の基準座標系のY座標を用いて示している。また、図16のグラフにおいて矢印e〜hは、図15において矢印e〜hが示す一点鎖線EF上のそれぞれの位置を表している。
【0102】
図15および図16に示すように、通電部921においては、空隙部923のX軸方向に関して両端のそれぞれに、近接場が最大の領域が形成される。このように、通電部921においては通電部21のような角部33が存在しないため、近接場が大きくなる位置を、通電部921の形状を変更することによって変更することは困難である。このことは、以下の通りである。
【0103】
通電部921において、磁界強度分布に影響を与えずに、近接場強度分布を変化させるには、光源の位置を変更することが考えられる。図17は、上記のシミュレーションにおいて、条件[5−1]および[5−2]のうち、照射光のビームの中心位置のみを変化させた場合の結果を示している。つまり、図17のグラフは、光源の位置をY軸方向に関して変化させつつ図13の構造に対して光を照射したときに、図15に示された一点鎖線EFに相当する直線上に発生する近接場の強度分布である。図17のグラフにおいて横軸yは光源の中心のY座標に関する位置を示し、縦軸は近接場の強度を示している。また、矢印e〜hは、図16と同様、図15の矢印e〜hが示す一点鎖線EF上の各位置を表している。
【0104】
図17のグラフにおいて、太い二点鎖線の曲線は光源の位置yが−400nmのときの結果を示し、太い一点鎖線の曲線は光源の位置yが−200nmのときの結果を示し、太く且つ短い破線の曲線は光源の位置yが−100nmのときの結果を示し、太く且つ長い破線の曲線は光源の位置yが−50nmのときの結果を示している。また、細い実線の曲線は光源の位置yが0nmのときの結果を示し、細く且つ長い破線の曲線は光源の位置yが50nmのときの結果を示し、細く且つ短い破線の曲線は光源の位置yが100nmのときの結果を示し、細い一点鎖線の曲線は光源の位置yが200nmのときの結果を示し、細い二点差線の曲線は光源の位置yが400nmのときの結果を示している。なお、これらのシミュレーションにおいては、光源のX軸方向に関する位置は変化させておらず、いずれもX=0nmである。ちなみに、y=0nmの強度分布は図16の近接場強度分布と同一である。
【0105】
図17から、以下の3つの点により、位置関係の設定は困難であることが分かる。1点目は、光源の位置をy=−400nmからy=400nmまで変化させているにも関わらず、近接場強度が最大となる位置が変化する範囲はY=−150nmからY=−300nmとなることである。つまり、光源の位置を変化させた距離に比べて近接場強度が最大となる位置は狭い範囲でしか変化していない。
【0106】
2点目は、接続部922と空隙部923との境界であるY=0nmから、近接場強度が最大となる位置までの距離が、最も縮まるy=400nmの場合でも150nmであることである。そのため、図13の構造では、磁界が発生する領域と近接場が最大となる位置との設定には制限があることがわかる。
【0107】
3点目は、図15から分かるように、近接場は、Y軸方向に沿った通電部921の端面近傍に発生する。そのため、近接場強度が最大となる位置を、空隙部923のX軸方向に関して移動させることが困難となることである。
【0108】
以上から、図13の構造では、磁界が発生する領域とは独立に近接場強度が最大となる位置を設定することは困難であることが示された。
【0109】
また、図8と図16とを比較すると、図13の構造に比べて図2の構造の方が強度の大きい近接場が発生することがわかる。これは、周囲より尖った部分に電界が集中しやすいという性質のため、角部33の近接場強度が高くなるためである。図8に示された近接場の最大強度は、図16に示された近接場の最大強度の約5.5倍である。また、図8に示された近接場の最大強度は、図17のグラフに示された、光源の位置yが200nmのときに発生する近接場の最大強度の約4倍である。
【0110】
なお、図15および図16は、図13の構造に対してX軸方向に沿った直線偏光の光を照射した場合の結果であるが、Y軸方向の直線偏光の光を照射した場合のピーク強度のシミュレーションをした結果、非常に小さく、図16で示したピーク強度の1000分の1以下となった。このことは、上述のとおり、偏光方向が金属の表面に対して直交するときに強度の近接場が発生するためであると解される。
【0111】
以上から、図2の構造は図13の構造と比較して強度の大きい近接場を発生させることができ、その結果、光源に投入する電力を軽減することが可能となることが示された。
【0112】
(第1の実施形態の変形例)
以下、第1の実施形態に関わるその他の変形例について説明する。図18〜図21は、第1の実施形態において通電部21の変形例である通電部211〜214を示している。図18〜図21は、各通電部をZ軸の正側から見た図である。
【0113】
通電部211および212は、図18および図19に示すように、第1の導体部111および第2の導体部121を有している。第1の導体部111および第2の導体部121の間には空隙部231が形成されている。空隙部231は、空隙部23と異なり、第1の導体部111および第2の導体部121のY軸方向に関して一端から他端まで延びており、これらの導体部をX軸方向に関して分断するように形成されている。なお、空隙部231は、X軸方向に関して幅が広い領域131と幅が狭い領域132を有しており、領域131と領域132とが接続した位置に角部33が形成されている。
【0114】
また、通電部211および212は接続部221および222をそれぞれ有している。接続部221および222は、いずれも、Y軸方向に関する第1の導体部111の一端および第2の導体部121の一端に接続するように配置されている。接続部221および222は、第1の導体部111および第2の導体部121と同じ厚みを有しており、これらの導体部とZ軸方向に関して同じ位置に配置されている。また、接続部221および222は、空隙部231をX方向に跨ぐように配置されている。
【0115】
これらのうち、接続部221は、第1の導体部11から第2の導体部12にかけて、U字型に湾曲している。また、接続部222は、第1の導体部11から第2の導体部12にかけて、V字型に屈曲している。接続部221および222は、いずれも第1の導体部11および第2の導体部12の間に配置されていない。このように、2つの導体部を接続する接続部がこれらの導体部に挟まれた位置に形成されていなくてもよい。
【0116】
通電部213は、第1の導体部112および第2の導体部122を有している。第1の導体部112および第2の導体部122を互いに電気的に接続する接続部223は、第1の導体部112および第2の導体部122の間に挟まれているが、接続部22と異なり、Y軸方向に関してこれらの導体部の端部から離隔した位置に配置されている。このように、2つの導体部を接続する接続部がこれらの導体部の端部に形成されていなくてもよい。第1の導体部112および第2の導体部122の間には、空隙部232および233が、互いの間に接続部223を挟むように形成されている。第1の導体部112には、第2の導体部112に向かって突出する突出部235が接続部223から離隔した位置に形成されている。突出部235において接続部223に近い方の端部には角部33が形成されている。
【0117】
通電部214は、第1の導体部113、第2の導体部123、および、これらを電気的に接続する接続部22を有している。通電部214において、通電部21との違いは、突出部235が第2の導体部123に設けられていることである。このように、第1の導体部および第2の導体部のいずれに突出部が設けられていてもよい。
【0118】
(第2の実施形態)
以下、本発明の別の好適な一実施形態である第2の実施形態について述べる。図22は、第2の実施形態に関わる通電部321をZ軸の正側から見た図である。通電部321は、第1の実施形態において通電部21に代替可能なものである。
【0119】
通電部321は、第1の導体部311、第2の導体部312およびこれらの導体部を電気的に接続する接続部322を有している。第1の導体部311および第2の導体部312は、空隙部323を挟んでX軸方向に互いに対向している。接続部322は、第1の導体部311および第2の導体部312の間に挟まれており、これらの導体部のY軸方向に関して端部に配置されている。
【0120】
通電部321において通電部21と異なるのは、通電部21では突出部35が第1の導体部11にのみ設けられているのに対し、通電部321では第1の導体部311および第2の導体部312に突出部335および336がそれぞれ設けられていることである。突出部335は、空隙部323を挟んで第2の導体部312に向かって突出しており、突出部336は、空隙部323を挟んで第2の導体部311に向かって突出している。突出部335および336は互いに対向しており、これらの突出部の先端に形成された端面335aおよび336bはいずれもY−Z平面に沿っている。
【0121】
また、突出部335および336は、接続部322からY軸方向に関していずれも同じ距離だけ離隔しており、接続部322に対向した端面335bおよび336bが形成されている。そして、突出部335において端面335aおよび335bの間には、Z軸方向から見て直角の角部333aが形成されている。また、突出部336において端面336aおよび336bの間にも、Z軸方向から見て直角の角部333bが形成されている。このように、通電部321には、角部33が一つだけ設けられた通電部21と異なり、角部333aおよび333bの合計2つが設けられている。空隙部323は、突出部335および336によって領域331および332の2つの領域に分けられている。領域332のX軸方向の幅dx1’は、領域331のX軸方向の幅dx2’より小さい。
【0122】
次に、通電部321に、第1の導体部311から接続部322を通じて第2の導体部312へと向かう電流を流した際の磁界強度分布について説明する。なお、上記とは逆方向に電流を流しても以下に説明する結果と同様の結果が得られる。図23は、上記のとおりに電流を流した際の、出射面近傍における磁界強度分布のシミュレーション結果を示している。なお、この計算は第1の実施形態のシミュレーションと同様、有限要素法にて行った。以下、このシミュレーションにおいて用いた条件を説明する。以下では、接続部322から角部333aまでのY軸方向の距離をdy3、接続部322から角部333bまでのY軸方向の距離をdy4としている。また、本実施形態においては、基準座標系の原点を、X軸方向およびY軸方向に関しては領域331の中心の位置とし、Z軸方向に関しては通電部321の出射面の位置とする。
【0123】
[6]空隙部323において、dx1を200nm(空隙部は−100nm≦X≦100nm)とし、dx2を100nm(空隙部は−50nm≦X≦50nm)とし、dy3およびdy4をともに100nm(空隙部は−50nm≦Y≦50nm)とした。なお、その他の条件は、第1の実施形態のシミュレーションにおける条件[1−1]〜[1−4]と同様である。
【0124】
図23の分布図g9には、通電部321の形状が示されていると共に、通電部321およびその周辺の領域において発生した磁界の強度がグレースケールで示されている。図23の凡例g10には、磁界の強度とグレースケールの程度との関係が示されている。図23に示す結果により、磁界強度が大きくなる領域は図22に示した領域334であることが分かる。また、磁界の最大強度は1000Oe程度であることが分かる。このように、通電部321に発生する最大磁界強度は、通電部21に発生する最大磁界強度とほぼ同等である。
【0125】
図24は、図22に示された一点鎖線PP’上の磁界強度分布を示す。一点鎖線PP’は、接続部322と空隙部323との界面を通り、X軸に平行な直線である。図24のグラフにおいて、横軸は一点鎖線PP’上の位置を示し、縦軸は磁界強度を示す。また、太い実線の曲線は通電部21の場合の磁界強度分布を示し、細い実線の曲線が通電部321の場合の磁界強度分布を示している。通電部321のように突出部と角部がそれぞれ2つ設けられた構成においても、図24に示すとおり、磁界強度分布には通電部21の場合とほとんど違いがない。
【0126】
以上のように角部を1つ増やしても磁界強度分布に影響がないことから、通電部321の構造においても、通電部21の構造と同様に、角部333aや333bの位置を変化させても磁界強度分布はほとんど変化しないと考えられる。上述のように、通電部21においては突出部35が接続部22から離隔しており、通電部21を流れる電流の経路があまり乱されないため、角部33の位置を変更しても磁界の強度分布に影響を及ぼさない。通電部321でも、磁界強度分布が通電部21とほぼ同様の結果を示すことから、通電部21と同様に、突出部335や336が電流の経路を乱すことがないと考えられる。
【0127】
次に、通電部321に光源から光を照射した際に発生する近接場強度分布について説明する。図25は、通電部321に対し、空隙部323に向かって光を照射したときに出射面側の端部に発生する近接場の強度分布を計算した結果である。この計算は、以下の条件に従い、第1の実施形態のシミュレーションと同様にFDTDシミュレーションを用いて行われた。
【0128】
[7]角部333aの先端位置は、X=−50nm、Y=−50nmとし、角部333bの先端位置はX=50nm、Y=−50nmとした。また、光ビームの中心位置は、X=0nm、Y=−50nmとした。なお、その他の条件については、第1の実施形態の[3−1]〜[3−4]における条件と同様である。
【0129】
図25の分布図g11には、空隙部323の形状と近接場の強度分布とが示されている。また、図25の凡例g12は、近接場の強度分布とグレースケールとの関係を示している。なお、図25の分布図g11においては、近接場の強度が等しい点を結んだ等強度線をその強度に応じたグレースケールで描くことによって強度分布が示されている。分布図g11には等強度線の閉曲線が複数描かれており、より内部に位置する閉曲線ほど近接場の強度が大きいことを示している。
【0130】
また、図26は、図25中の一点鎖線GH上に発生した近接場の強度分布と、図25中の一点鎖線IJ上に発生した近接場の強度分布とを示している。なお、一点鎖線GHは、上述の基準座標系においてX=−50nm且つZ=0nmの直線に相当する。また、一点鎖線IJは、上述の基準座標系においてX=100nm且つZ=0nmの直線に相当する。図26のグラフにおいて、横軸yは、一点鎖線GHまたはIJ上の位置を示している。また、図26のグラフにおいて矢印i〜lは、図25において矢印i〜lが示す一点鎖線上のそれぞれの位置を表している。
【0131】
図25から、角部333aおよび333bのそれぞれにおいて近接場強度が最も大きくなっていることがわかる。このように、通電部21の場合と同様に、磁界強度分布に影響を与えることなく、近接場強度が最大となる位置を、角部333aまたは333bの位置で規定することが可能である。以上から、通電部321の構造は、通電部21と同様に、磁界が発生する領域とは独立に、近接場の強度が最大となる位置を設定可能であることが示された。
【0132】
また、第2の実施形態においては、第1の実施形態に加えて、以下の効果がある。
【0133】
第1の実施形態においては、突出部35が設けられているのは第1の導体部11のみであり、角部33は1箇所である。一方、第2の実施形態の構造は、図22に示すように第1の導体部311と第2の導体部312とに突出部335および336がそれぞれ設けられている。これによって、角部333aおよび333bの2箇所の角部が設けられており、2箇所において近接場を発生させることができる。したがって、光アシスト磁気記録において、角部333aおよび333bのそれぞれに相当する箇所において記録できることから、例えば、一方の角部で発生する近接場によって磁気記録媒体51に磁気記録を施しながら、他方の角部で発生する近接場を用いてバックアップの用途として磁気記録媒体51に磁気記録を施すことが可能となる。
【0134】
以下、第2の実施形態に対する比較例となる通電部1021および1021’について説明する。なお、これらの比較例は特許文献1の開示内容に基づく構成でもある。図27(a)は、通電部1021をZ軸の正側から見た図である。通電部1021において通電部321と異なるのは、空隙部1023の形状である。通電部321においては空隙部323が領域31および32からなり、領域31よりX軸方向に幅が狭い領域32が接続部322から遠い方に配置されている。これに対し、通電部1021においては、領域1031よりX軸方向に幅が狭い領域1032が、接続部1022に近い方に配置されている。これによって、通電部1021には、2つの角部1033が、通電部321における角部333aおよび333bとはY軸方向に反転して配置されている。
【0135】
図27(b)は、図27(a)と類似の構造を有する通電部1021’をZ軸の正側から見た図である。通電部1021’において通電部1021と異なるのは空隙部1023’である。空隙部1023’は、接続部1022から遠い方に配置された領域1031’と、領域1031’よりX軸方向に幅が狭い領域1032’とからなる点で空隙部1023と類似している。しかし、空隙部1023と比べて、領域1031’に対して領域1032’がX軸方向に関して若干ずれている点が、空隙部1023と異なる点である。
【0136】
次に、通電部1021および1021’において発生する磁界強度分布について説明する。図28は、以下の条件で計算した磁界強度分布のシミュレーションの結果である。なお、以下の条件において、領域1031および1031’のX軸方向の幅をdx4、領域1032および1032’のX軸方向の幅をdx5としている。また、接続部1022の角部1033に近い方の端面から角部1033までのY軸方向の距離をdy2としている。
【0137】
[8−A]空隙部1023において、dx4を200nm(空隙部は−100nm≦X≦100nm)とし、dx5を100nm(空隙部は−50nm≦X≦50nm)とし、dy2を100nm(空隙部は−50nm≦Y≦50nm)とした。
【0138】
[8−B]空隙部1021’において、dx4を200nm(空隙部は−100nm≦X≦100nm)とし、dx5を100nm(空隙部は−80nm≦X≦20nm)とし、dy2を100nm(空隙部は−50nm≦Y≦50nm)とした。つまり、空隙部1021に比べて、dx5の幅を有する領域がX軸の負方向に30nmだけずれている。以上の[8−A]および[8−B]以外の条件は、上述のシミュレーションにおける条件[6]と同様である。
【0139】
なお、特許文献1のように磁界が発生する領域と近接場が発生する位置が一致する素子においては、本来、角部などの構成が近接場の強度分布に影響が出ないように配置される。このため、例えば、本比較例の構成においては、角部1033と磁界を発生させる接続部1022とは、光源から照射される波長以上互いに離されるのが通常である。しかし、本発明に関わる通電部321との比較のため、このシミュレーションにおいては、接続部1022と角部1033とを光源から照射される波長以下に近づけた構造を想定した。
【0140】
図28は、図26(a)、図26(b)に示す一点鎖線PP’上の磁界強度分布を表している。図28のグラフにおいて、横軸は一点鎖線PP’上の位置を示し、縦軸は磁界強度を示す。また、太い実線の曲線は通電部1021の場合の磁界強度分布を示し、細い破線の曲線は通電部1021’の場合の磁界強度分布を示している。
【0141】
図28のグラフによると、領域1032の位置と領域1032’の位置との違いによって、磁界強度分布に差が生じていることが分かる。つまり、角部1033の位置を変化させたときに、磁界強度分布が変化することが分かる。これは、通電部1021や1021’において、角部1033を形成するために設けられた突出部が接続部1022に近接して設けられている。このため、これらの突出部が通電部1021や1021’を流れる電流経路に影響を及ぼし、その結果、磁界強度分布に影響を与えるからであると考えられる。つまり、領域1032と領域1032’の突出部は接続部1022に近接して設けられているために、突出部は電流経路上に位置していることとなる。よって、電流経路上にある突出部の位置に違いがある領域1032と領域1032’とでは、通電部1021において突出部が電流経路に与える影響と通電部1021’において突出部が電流経路に与える影響とに差が生じるために、磁界強度分布に変化が生じると考えられる。
【0142】
これに対して、図22に示す通電部321においては、上述のとおり、突出部335や336が接続部322から離れた位置に形成されているため、突出部335や336が通電部321を流れる電流経路に影響を及ぼさない。このため、角部333aや333bの位置を変更しても磁界強度分布は変化しないと考えられる。
【0143】
<その他の変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものであると共に、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0144】
まず、上述の第1および第2の実施形態においては、第1および第2の導体部を電気的に接続する接続部が、Z軸方向に関してこれらの導体部と同じ位置に配置されている。しかし、接続部がZ軸方向に関して第1および第2の導体部と異なる位置に配置されていてもよい。例えば、第1の実施形態において、第1の導体部11の出射面側の表面から、空隙部23をX軸方向に跨ぐように空隙部23よりZ軸の正側の位置を通過し、第2の導体部12の出射面側の表面まで延びるように、接続部が形成されていてもよい。
【0145】
上記のように、接続部の形状や配置は上述の実施形態やその変形例におけるものに限らないが、Z軸方向から見た場合に、空隙部を塞がないように接続部が形成されている必要がある。つまり、Z軸方向から見た場合に、少なくとも、接続部が形成された領域が空隙部が形成された領域を含まないように形成されている必要がある。Z軸方向から見た場合に空隙部を塞ぐように接続部が形成されていると、光源からの光の入射を妨げたり、近接場光や磁界が磁気記録媒体51に印加されるのを妨げたりするおそれがあるからである。
【0146】
また、上述の第2の実施形態においては、角部333a及び333bの2つの角部が形成されており、これらの角部が接続部322のX軸方向に中心に位置していない。つまり、突出部335および336のいずれにおいても、その端面335aおよび336aが接続部322のX軸方向に中心に位置していない。しかし、端面335aおよび336aのうちの一方が接続部322のX軸方向に中心に位置していてもよい。これによって、接続部322の中心に位置した方の突出部においては、端面と角部とが磁界発生領域の中心に位置することになるため、磁気記録の信頼性を向上することが可能となる。
【0147】
また、上述の実施形態は、記録素子54等を光アシスト磁気記録に用いることが想定されているが、記録素子54等を光アシスト磁気記録以外に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態である第1の実施形態に関わる光アシスト磁気記録装置の正面図である。図1(b)は、図1(a)においてスライダ周辺を磁気記録媒体側から見た図である。図1(c)は、図1(b)の記録素子の一部を拡大した図である。
【図2】図1の記録素子を磁気記録媒体側から斜めに見た図である。
【図3】図2をZ軸の正側から見た図である。
【図4】図2の通電部に電流を流した際に、通電部において出射面側の表面近傍に発生する磁界強度を計算した結果を示す強度分布図である。
【図5】図2の通電部において角部の位置を変化させたときの記録素子をZ軸の正側から見た図である。
【図6】図5(a)〜図5(c)に示す一点鎖線PP’上の磁界強度の計算結果を示すグラフである。
【図7】図2の通電部に光源から光を照射したときに、空隙部において出射面側の端部に発生する近接場の強度分布を計算した結果を示す強度分布図である。
【図8】図7中の一点鎖線AB上に発生した近接場の強度分布と、図7中の一点鎖線CD上に発生した近接場の強度分布とを計算した結果を示すグラフである。
【図9】図2の通電部に対して種々の偏光方向の直線偏光の光を照射した際の、図7に示す一点鎖線ABに相当する直線上の近接場強度分布を計算した結果を示すグラフである。
【図10】通電部の空隙部が開口した側のX−Z面が基板と接するように通電部を形成した場合の構成を示した図である。
【図11】接続部のX―Z面が基板と接するように通電部を形成した場合の構成を示した図である。
【図12】本発明の記録素子を作成する方法の一例であって、図10の通電部を作製する方法の一連のステップを示す図である。
【図13】第1の実施形態の比較例となる通電部をZ軸の正側から見た図である。
【図14】図13の通電部に電流を流した際に、通電部において出射面側の表面近傍に発生する磁界強度を計算した結果を示す強度分布図である。
【図15】図13の通電部に光源から光を照射したときに、空隙部において出射面側の端部に発生する近接場の強度分布を計算した結果を示す強度分布図である。
【図16】図15中の一点鎖線EF上に発生する近接場の強度分布を計算した結果を示すグラフである。
【図17】図13の通電部に光源の位置を変化させつつ光を照射した場合における、図15に示す一点鎖線EF上の近接場の強度分布を計算した結果を示すグラフである。
【図18】第1の実施形態において接続部をU字型にした変形例をZ軸の正側から見た図である。
【図19】第1の実施形態において接続部をV字型にした変形例をZ軸の正側から見た図である。
【図20】第1の実施形態において接続部を第1の導体部と第2の導体部のY軸方向に中間で接続した変形例をZ軸の正側から見た図である。
【図21】第1の実施形態において、第1の導体部ではなく第2の導体部に突出部を設けた構成をZ軸の正側から見た図である。
【図22】本発明の別の位置実施形態である第2の実施形態に関わる通電部をZ軸の正側から見た図である。
【図23】図22の通電部に電流を流した際に、通電部において出射面側の表面近傍に発生する磁界強度を計算した結果を示す強度分布図である。
【図24】図22に示す一点鎖線PP’上の磁界強度分布を計算した結果を示すグラフである。
【図25】図22の通電部に光源から光を照射したときに、空隙部において出射面側の端部に発生する近接場の強度分布を計算した結果を示す強度分布図である。
【図26】図25中の一点鎖線GH上に発生した近接場の強度分布と、図25中の一点鎖線IJ上に発生した近接場の強度分布とを計算した結果を示すグラフである。
【図27】図27(a)は、第2の実施形態に対する比較例となる通電部をZ軸の正側から見た図である。図27(b)は、図27(a)において角部の位置を変化させたときの構成を示す図である。
【図28】図27(a)及び図27(b)の通電部に電流を流した際に、図27(a)及び図27(b)に示す一点鎖線PP’上に発生する磁界の強度分布を計算した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0149】
1 光アシスト磁気記録装置
11 第1の導体部
12 第2の導体部
21 通電部
22 接続部
23 空隙部
24 光源
33 角部
35 突出部
51 磁気記録媒体
54 記録素子
111〜113 第1の導体部
121〜123 第2の導体部
154 記録素子
211〜214 通電部
221〜223 接続部
231,232 空隙部
254 記録素子
311 第1の導体部
312 第2の導体部
322 接続部
323 空隙部
333a 角部
333b 角部
335、336 突出部
911 第1の導体部
912 第2の導体部
921 通電部
922 接続部
923 空隙部
1021 通電部
1022 接続部
1023 空隙部
1033 角部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸方向に関して空間を挟んで互いに対向すると共に、前記空間に向かって前記第1の軸方向に直交する第2の軸方向から光が入射された場合に、前記空間において光の入射側とは反対側の端部に近接場を発生させる第1および第2の導体部と、
前記第1および第2の導体部を電気的に接続させる、前記第2の軸方向から見て前記空間を含まないように配置された接続部とを備えており、
前記第1および第2の導体部の少なくとも一方が、前記第1および第2の軸方向の両方に直交する第3の軸方向に関して前記接続部から離隔した位置において、前記第1および第2の導体部の他方との間に前記空間を挟んで前記他方へと突出する突出部を有しており、
前記空間に向かって突出する角部が前記突出部に形成されていることを特徴とする、磁界および近接場発生素子。
【請求項2】
第1の軸方向に関して空間を挟んで互いに対向すると共に、前記空間に向かって前記第1の軸方向に直交する第2の軸方向から光が入射された場合に、前記空間において光の入射側とは反対側の端部に近接場を発生させる第1および第2の導体部と、
前記第1および第2の導体部を電気的に接続させる、前記第2の軸方向から見て前記空間を含まないように配置された接続部とを備えており、
前記第1の導体部が、前記第1および第2の軸方向の両方に直交する第3の軸方向に関して前記接続部から離隔した位置において、前記空間を挟んで前記第2の導体部へと突出する突出部を有し、
前記第2の導体部が、前記第3の軸方向に関して前記接続部から離隔した位置において、前記空間を挟んで前記第1の導体部へと突出する突出部を有し、
前記第1および第2の導体部が有する前記突出部のそれぞれにおいて、前記空間に向かって突出する角部が形成されていることを特徴とする、磁界および近接場発生素子。
【請求項3】
前記角部が、前記突出部において前記第3の軸方向に関して前記接続部に近い方の端部に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の磁界および近接場発生素子。
【請求項4】
前記第1および第2の導体部のいずれかにおいて前記角部が、前記第1および第2の導体部の一方から前記接続部を通じて他方へと向かう電流を印加した際に発生する磁界の強度分布の中心を通る、前記第3の軸に平行な直線上に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁界および近接場発生素子。
【請求項5】
前記第1および第2の導体部のいずれかにおいて前記第1の軸方向に関する前記突出部の一端が、前記第1の軸方向に関して、前記第1および第2の導体部の一方から前記接続部を通じて他方へと向かう電流を印加した際に発生する磁界の強度分布の中心と同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁界および近接場発生素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁界および近接場発生素子を使用する方法であって、
偏光方向の主成分が前記第1の軸方向に沿った光を前記第2の軸方向から前記空間に入射することを特徴とする、磁界および近接場発生素子の使用方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁界および近接場発生素子を使用して磁気的情報を磁気記録媒体に記録する光アシスト磁気記録方法であって、
前記空間に光を入射した際に発生する近接場によって磁気記録媒体を加熱すると共に、前記第1および第2の導体部の一方から前記接続部を通じて他方へと向かう電流を印加した際に発生する磁界を磁気記録媒体において近接場によって加熱された領域に印加することを特徴とする光アシスト磁気記録方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁界および近接場発生素子を備え、磁気記録媒体に磁気的情報を記録する光アシスト磁気記録装置であって、
前記空間に光を入射する光源と、前記第1および第2の導体部に接続された第1および第2の電極とをさらに備えており、
前記光源からの光が前記空間に入射した際に発生する近接場によって磁気記録媒体を加熱すると共に、前記第1および第2の電極間に電流を印加した際に発生する磁界を磁気記録媒体において近接場によって加熱された領域に印加することを特徴とする光アシスト磁気記録装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図4】
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【図7】
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【図14】
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【図15】
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【図23】
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【図25】
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