説明

神経ペプチドYレセプターY5および核酸配列

【課題】神経伝達物質神経ペプチドY(NPY)およびペプチドYY(PYY)の新規レセプタータンパク質およびそれらをコードする核酸配列を提供する。
【解決手段】特定の配列を有する上記レセプターおよび上記レセプター(特にラットおよびヒト由来)ならびにそれらのイソフォームをコードするcDNA配列。上記レセプタータンパク質は肥満のような疾患および障害の治療のための化合物(アゴニスト、アンタゴニスト)を開発かつ同定するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の神経伝達物質神経ペプチドYのレセプター、その核酸配列、ならびに化合物、組成物およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
神経ペプチドY(NPY)は、中枢および末梢神経系を通じて配置される36アミノ酸のペプチド神経伝達物質である(例えば、非特許文献1:タテモト(Tatemoto)、Proc.Natl. Acad. Sci. USA 79、5485 (1982);非特許文献2:ヘイズルウッド(Hazlewood)、Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 202、44 (1993)参照)。それは、血圧調節、記憶、不安緩解/鎮静、食物および水の欲求、血管および他の平滑筋の活動性、腸の電解質分泌、ならびに尿ナトリウム排泄を包含する広範な現象に影響を及ぼす(例えば、非特許文献3:コルマース(Colmers)とヴァーレシュテッド(Wahlestedt)、The Biology of Neuropeptide Y and Related Peptides(ヒューマナ プレス(Humana Press)、ニュージャージー州トトワ、1993);非特許文献4:カルラ(Kalra)ら、Phys. & Behavior 50、5 (1991)参照)。
【0003】
ペプチドYY(PYY)もまた36アミノ酸のペプチドであり、そしてNPYに対するかなりの配列相同性(70%)を有する(例えば、非特許文献5:タテモト(Tatemoto)ら、Nature 296、659 (1982)参照)。その解剖学的分布はNPYのものに類似であるが、とは言えそれは主として下部消化管の内分泌細胞に配置されている(例えば、非特許文献6:ボットヒャー(Bottcher)ら、Regul. Pept. 8、261 (1984)参照)。NPY同様、PYYはラットで摂食を刺激する(非特許文献7:モーリイ(Morley)ら、Brain Res. 341、200(1985)参照)。膵ポリペプチド(PP)と一緒に、NPYおよびPYYは、いわゆるPP折り畳み(fold)により特徴づけられる共通の3次構造を有する(非特許文献8:グローヴァー(Glover)、Eur. J. Biochem. 142、379 (1985)参照)。NPYおよびPYY双方はPPと約50%の配列相同性を示す。
【0004】
それらの構造的類似性のため、NPYおよびPYYは多数の共通レセプターを有する。少なくとも4種のレセプターサブタイプすなわちY1、Y2、Y3およびY4/PPが同定されている。NPY、PYYおよびそれらの多様な断片に対する親和性はサブタイプ間で変動することを記載する文献(例えば、特許文献1:バード(Bard)ら(WO 95/17906)参照)およびその中に引用される参考文献も参照のこと。例えば、Y1およびY2サブタイプはNPYおよびPYYに対し高親和性を有する。Y1は(Leu31Pro34)NPY((LP)NPY)に対する高親和性および(13−36)NPYに対する低親和性を有する一方、Y2は反対に挙動する。Y3はNPYに対し高親和性を、しかしPYYに対し低親和性を有する。Y4/PPはPPに対し高親和性を、しかしNPYに対しては比較的低い親和性を有する。
【0005】
ヴァーレシュテッド(Wahlestedt)およびラルハマー(Larhammar)らは、ヒト胎児脳組織から単離されたヒトY1型NPY/PYYレセプターのクローニングおよび同定を記述する(それぞれ、特許文献2:WO93/24515)および非特許文献9:(J. Biol. Chem. 267、10935 (1992)参照)。セルビエ(Selbie)らは、ヒト海馬からのY1レセプターの完全長cDNA配列を開示した(特許文献3:WO93/09227参照)。イーヴァ(Eva)らはラット前脳からNPY Y1レセプターをクローニングした(非特許文献10:FEBS Lett. 271、81 (1990)参照)。イーヴァ(Eva)らはマウスゲノムDNAからNPY Y1レセプターをクローニングした(非特許文献11:FEBS Lett. 314、285 (1992)参照)。
【0006】
Y2型レセプターもまたクローニングされている。ゲラルド(Gerald)らは、ヒト海馬Y2および2種のラットY2クローンのcDNA配列を開示した(特許文献4:WO95/21245)。ローズ(Rose)らは、ヒト神経芽腫細胞系からのY2レセプターのcDNA配列を開示した(非特許文献12:J. Biol. Chem. 270、22661 (1995))。
【0007】
バード(Bard)ら(同上)およびランデル(Lundell)らは、ラット脾およびヒト胎盤双方からのY4/PPレセプターのcDNA配列のクローニングを記述した(非特許文献13:J. Biol. Chem. 270、29123 (1995)参照)。
【0008】
今日まで、Y3レセプターはクローニングされていない。摂食のような多数の生理学的過程におけるNPYおよびPYYの重要な役割のため、これらの化合物の機械的挙動を検討するため、ならびにNPYおよびPYYが作用する生理学的過程に関連して病んでいる(diseased)および他の異常な状態を治療するための材料および方法をさらに開発することの強い欲求が存在する。とりわけ、(LP)(3−36)NPYのような摂食を誘発するNPY類似物/断片は、前に同定されたNPY/PYYレセプターに摂食応答と一致する親和性で結合しない。従って、摂食応答の原因であるNPY/PYYレセプターを同定することの欲求(need)および望み(desire)が存在する。こうしたレセプターに対するアンタゴニストは、食欲および食物消費量を減少させることにより肥満および糖尿病を治療するのに使用され得る。
【0009】
【特許文献1】WO 95/17906
【特許文献2】WO 93/24515
【特許文献3】WO 93/09227参照
【特許文献4】WO 95/21245
【非特許文献1】Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79、5485(1982)
【非特許文献2】Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 202、44(1993)
【非特許文献3】The Biology of Neuropeptide Yand Related Peptides(ヒューマナプレス(Humana Press)、ニュージャージー州トトワ、1993)
【非特許文献4】Phys. & Behavior 50、5 (1991)
【非特許文献5】Nature 296、659 (1982)
【非特許文献6】Regul. Pept. 8、261(1984)
【非特許文献7】Brain Res. 341、200 (1985)
【非特許文献8】Eur. J. Biochem. 142、379 (1985)
【非特許文献9】J. Biol. Chem. 267、10935(1992)
【非特許文献10】FEBS Lett. 271、81 (1990)
【非特許文献11】FEBS Lett. 314、285 (1992)
【非特許文献12】J. Biol. Chem. 270、22661 (1995)
【非特許文献13】J. Biol. Chem. 270、29123 (1995)
【発明の開示】
【0010】
本発明は、とりわけ、新規NPY/PYYレセプタータンパク質を提供する。これらの新規レセプタータンパク質をコードする核酸配列、ならびにこれらのタンパク質およびそれらの核酸配列を使用する化合物および方法もまた提供される。
【0011】
本発明は、肥満のような疾患および障害の治療のための化合物を開発かつ同定するのに有用な新規タンパク質、核酸および方法を提供する。神経伝達物質神経ペプチドY(NPY)およびペプチドYY(PYY)の新規レセプターのタンパク質配列、ならびにこのレセプター(われわれはNPY Y5(もしくは単に「Y5」)レセプターと呼ぶ)をコードする核酸配列が、本明細書で同定かつ開示される。本発見の重要性はNPYの効果において明示され、これは血圧調節、記憶増強、不安緩解/鎮静および増大された食物摂取を包含する。かように、このレセプタータンパク質は、これらの状態を制御するNPY/PYYアゴニストおよびアンタゴニスト活性についてスクリーニングするのに有用である。
【0012】
本発明の一局面において、われわれは、新規NPYおよびPYYレセプターすなわちY5レセプターの単離された核酸配列を提供する。とりわけ、われわれは、ラットおよびヒトのレセプターならびにそれらのイソフォームをコードするcDNA配列を提供する。これらの核酸配列は多様な用途を有する。例えば、それらはベクターを作成しまた細胞を形質転換するのに有用であり、その双方は最終的にY5レセプタータンパク質の産生に有用である。それらはまた、例えば病んでいるもしくは別の状態で異常な状態を同定するためレセプター発現レベルを測定する核酸プローブを開発するための科学的研究の道具としても有用である。それらは、生理学的応答を測定するためレセプター遺伝子の発現を選択的に阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドのような分析の道具を開発するのに有用である。
【0013】
本発明の別の局面において、われわれは、レセプターY5タンパク質を含んで成る均質性組成物を提供する。当該タンパク質は、アゴニストおよびアンタゴニスト活性について薬物をスクリーニングするのに、そして、従ってY5レセプターに関連する生理学的応答の調節で有用な薬物をスクリーニングするのに有用である。とりわけ、Y5レセプターに対するアンタゴニストは、食欲および食物消費量を減少させることにより肥満および糖尿病を治療するのに使用され得る一方、アゴニストは食欲不振の状態の治療に使用され得る。当該タンパク質はまた、タンパク質の検出のための抗体を開発するのにも有用である。
【0014】
(a)付加的調節要素、例えばプロモーターをさらに含んでもよいレセプターY5核酸配列を含んで成る、プラスミドのようなベクター、
(b)Y5レセプターを発現する形質転換された細胞、(c)核酸プローブ、(d)アンチセンスオリゴヌクレオチド、(e)アゴニスト、
(f)アンタゴニストおよび(g)トランスジェニック哺乳動物を包含する、本発明の多数の他の局面が前述から次々と生まれていれる。本発明のさらなる局面は、前述の化合物および組成物の作成および使用方法を含んで成る。
【0015】
前述は、単に、本発明のある局面を要約し、そして本発明をいかなる様式でも制限することを意図されず、また、それはそのように構築されるべきでない。本明細書に列挙される全ての特許および他の出版物は、これによりそっくりそのまま引用により組み込まれる。
【0016】
<好ましい態様の詳細な記述>
本発明は、部分的に、新規NPY/PYYレセプタータンパク質すなわちY5レセプターを含んで成る。Y5レセプターのとりわけ好ましい態様は、配列番号2、4もしくは6と本質的に同一のアミノ酸配列を有するものである。本明細書で使用されるところのY5レセプターへの言及は、配列番号2、4もしくは6と本質的に同じアミノ酸配列を有するいずれかのタンパク質の言及するものとしての意味である。本発明はまた、Y5タンパク質をコードする核酸配列も含んで成り、この核酸配列は配列番号1、3もしくは5と本質的に同一である。配列番号2および配列番号4のレセプターはラットY5レセプターであり、そして対立遺伝子の変動であると思われ、配列番号4が最も普遍的に存在し、そして、従って、本発明のラットY5レセプターの好ましい態様である。配列番号6はヒトY5レセプターおよびその好ましい態様である。
【0017】
本明細書で使用されるところの「配列番号xと本質的に同じアミノ酸配列を有する」(ここで「x」は配列表に列挙されるタンパク質配列のうち1個の番号である)タンパク質は、そのアミノ酸配列が配列番号xと同一であるか、または、下の実施例4で詳述される方法に従って測定されるようなIC50[(3−36)NPY]、IC50[(Leu31Pro34)NPY]およびIC50[(Leu31Pro34)(3−36)NPY]が30nM未満もしくはこれと等しいような様式でのみ異なるタンパク質を意味する。NPY断片、(3−36)NPY、(Leu31Pro34)NPYおよび(Leu31Pro34)(3−36)NPYは摂食応答を誘導する。当業者は、アミノ酸の保存的置換が、NPY、PYYならびにそれらの断片および類似物に対する当該タンパク質の親和性を有意に消失させることなくなされ得ることの真価をみとめることができる。これらの化合物に対する当該タンパク質の親和性を増大させる他の置換がなされてよい。こうしたタンパク質の作成および同定は、本明細書の教示を考慮すれば慣例の事項であり、また、例えば、全て本明細書で教示されるように、当該タンパク質をコードする核酸配列を(本明細書に開示されるように)変更すること、それをベクター中に挿入すること、細胞を形質転換すること、その核酸配列を発現させること、および結果として生じるタンパク質の結合親和性を測定することにより達成できる。
【0018】
本明細書で使用されるところの「配列番号yと本質的に同じヌクレオチド配列を有する分子」(ここで「y」は配列表に列挙されるタンパク質をコードするヌクレオチド配列のうち1個の番号である)という用語は、上で定義されるような「配列番号y+1と本質的に同一のアミノ酸配列を有する」(ここで「y+1」はヌクレオチド配列「y」がコードするアミノ酸配列の番号である)タンパク質をコードする核酸を意味する。この定義は、Y5配列中に天然の対立遺伝子の変動を包含することを意図している。本発明により提供されるクローニングされた核酸は、例えばマウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、霊長類およびヒトを包含する(しかしこれらに制限されない)起源のいずれかの種のY5タンパク質をコードしてよい。好ましくは、本発明により提供される核酸は、哺乳動物、および最も好ましくはラットもしくはヒト起源のY5レセプターをコードする。
【0019】
本発明はまた、Y5レセプターの部分および他の関連した7つの膜貫通(seven-transmenbrane)レセプターの部分から成るキメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列も包含する。
【0020】
6Bクローン(配列番号1)(下の実施例2を参照)は、445アミノ酸のタンパク質(配列番号2)をコードする、ヌクレオチド248から1582までの読み取り枠をもつ2.4kbのcDNA挿入物を有する。GCGのPEPPLOTを使用した疎水性プロット分析は、Y5レセプターが7種の膜貫通様ドメインを有することを示し、それがGタンパク質に結合されたレセプターでありうることを示す。NPYレセプターファミリーの他の既知のサブタイプと異なり、Y5レセプターの第三細胞内ループは著しく長い。Y5ペプチド配列の別の新規の特徴は、それがNPYレセプターファミリーの他の既知の構成物よりずっと短いC末端尾部(tail)配列を有することである。Y5配列が他のNPYレセプターに対しわずか30〜33%のアミノ酸配列の同一性を示すことに注目することもまた重要である。
【0021】
本発明により提供される核酸ハイブリダイゼーションプローブは、本質的に、配列番号1、3および5で描かれるいずれかの配列に相補的なヌクレオチド配列から成るDNAであり、核酸ハイブリダイゼーションで有効である。核酸プローブは、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応生成物DNAに対するノーザンブロットハイブリダイゼーション、インシトゥハイブリダイゼーションおよびサザンハイブリダイゼーションを包含するがしかしこれらに制限されない、当該技術分野で十分に既知の技術を使用して、細胞および組織でのY5遺伝子発現を検出するのに有用である。それから生じるオリゴヌクレオチドプローブを包含する、本発明により提供されるプローブはまた、ある遺伝子障害に関連する制限断片長多型(RFLP)についてスクリーニングするための哺乳動物、好ましくはヒトのゲノムDNAのサザンハイブリダイゼーションにも有用である。本明細書で使用されるような相補的という用語は、プローブを使用する場合に当業者が慣用する生理学的条件もしくは実験的条件下で標的に結合する、標的核酸に対してワトソン−クリック(Watson-Crick)の意味で十分に相補的である配列を有する核酸を意味する。
【0022】
レセプターY5は、既知のレセプターのものと異なる親和性でNPYおよびPYYの多様な断片および類似物を結合する。レセプターY5の結合親和性の等級の順序(rank order)は、
NPY=(LP)NPY=PYY=(3−36)NPY=(LP)(3−36)NPY>(10−36)NPY>(18−36)NPY
であることが見出された。下の表1は、NPY、PYY、およびそれらの多様な断片についてのY5レセプターのより詳述された親和性プロフィルを提示する。本明細書で使用されるような、Y5レセプターと本質的に同じ親和性プロフィルを有するタンパク質は、下の表1に列挙されるペプチドのそれぞれのIC50が、実施例4に記述される方法に従って測定されるようなそれぞれのペプチドのそれぞれについて表1に列挙されるものよりわずかに一位数の大きさだけ大きいタンパク質を意味する。重要なことには、(LP)(3−36)NPYのような摂食を誘発するNPY類似物/断片は、前に同定されたNPY/PYYレセプターに摂食応答と一致する親和性で結合しない。
【0023】
遺伝子工学手段によりクローニングされた遺伝子からのレセプターY5のようなタンパク質の産生は、当該技術分野で周知である。後に続く論考は、従って、この分野の概観として意図され、そして完全な従来技術を反映することを意図しない。
【0024】
レセプターY5をコードするDNAは、本開示を考慮すれば、化学合成、適切な細胞もしくは細胞系培養物からのmRNAの逆転写物をスクリーニングすること、適切な細胞からのゲノムライブラリーをスクリーニングすること、もしくは、下に具体的に説明されるようにこれらの手段の組み合わせにより得てもよい。mRNAもしくはゲノムDNAのスクリーニングは、本明細書で提供されるY5遺伝子の配列情報から派生するオリゴヌクレオチドプローブを用いて実施されうる。プローブは、下の実施例でより詳細に記述されるように、既知の処置に従いかつ慣習的ハイブリダイゼーションアッセイで使用される蛍光基、放射活性原子もしくは化学発光基のような検出可能な基で標識されていてもよい。代替的に、Y5遺伝子配列は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)処置の使用により得てもよく、PCRオリゴヌクレオチドプライマーは本明細書に提供されるY5遺伝子配列から製造される。マリス(Mullis)らへの米国特許第4,683,195号およびマリス(Mullis)への同第4,683,202号を参照。
【0025】
レセプターY5は、レセプターY5をコードする核酸を含んで成る組換え発現構築物で形質転換された宿主細胞中で合成されうる。こうした組換え発現構築物はまた、複製可能なDNA構築物であるベクターから構成することもできる。ベクターは、本明細書で、Y5をコードするDNAを増幅するためおよび/もしくはY5をコードするDNAを発現させるためのいずれかに使用される。本発明の目的上、組換え発現構築物は複製可能なDNA構築物であり、ここで、Y5をコードするDNA配列は、適する宿主中でY5の発現を遂げることができる適当な制御配列に操作可能に連結される。こうした制御配列に対する欲求は、選択された宿主および選ばれた形質転換法に依存して変動することができる。一般に、制御配列は、転写プロモーター、転写を制御する任意のオペレーター配列、適するmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終止を制御する配列を包含する。増幅ベクターは発現制御ドメインを必要としない。必要とされる全ては、通常、複製開始点、および形質転換体の認識を助長する選択遺伝子により授与される、宿主中で複製する能力である。サンブルック(Sambrook)ら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第2版、コールド スプリング ハーバー プレス(Cold Spring Harbor Press)、ニューヨーク、1989)を参照。
【0026】
本発明を実施するのに有用なベクターは、プラスミド、ウイルス(ファージを包含する)、レトロウイルスおよび組込可能なDNA断片(すなわち相同的組換えにより宿主ゲノム中に組込可能な断片)を包含する。これらのベクターは宿主ゲノムに独立に複製しかつ機能するか、もしくは、いくつかの例においてはゲノムそれ自身に組込まれる。適するベクターは、意図される発現宿主に適合性の種由来であるレプリコンおよび制御配列を含有することができる。これらベクターは自己複製性であってもよい。本発明の目的に適するベクターは、pBluescript、pcDNA3、および昆虫細胞についてはバキュロウイルスを包含する。好ましいベクターはプラスミドpcDNA3(インヴィトロジェン(invitrogen))である。
【0027】
所望のコーディングおよび制御配列を含有する適当なベクターの構築は、当該技術分野で十分に理解されている標準的ライゲーションおよび制限酵素切断技術を使用する。単離されたプラスミド、DNA配列もしくは合成されたオリゴヌクレオチドが切断され、目的に合わせて作られ、そして所望の形態に再連結される。
【0028】
部位特異的DNA切断は、当該技術分野で一般的に理解されている条件下で適する制限酵素(1個もしくは複数)で処理することにより実施され、また、その詳細はこれらの商業的に入手可能な制限酵素の製造元により明記される。例えば、ニュー イングランド バイオラブス(New England Biolabs)製品カタログを参照。一般に、約1μgのプラスミドもしくはDNA配列を、約20μlの緩衝溶液中の1単位の酵素により切断する。しばしば、DNA基質の完全な切断を確実にするため過剰の制限酵素を使用する。約37℃で約1時間ないし2時間のインキュベーション時間が実行できる(workable)が、とは言え変動が許容できる。各インキュベーション後、タンパク質をフェノール/クロロホルムでの抽出により除去し、そしてその後にエーテル抽出が続きうる。核酸は、エタノールでの沈殿により水性画分から回収されうる。所望の場合は、切断された断片の大きさの分離(size separatio)を、標準的技術を使用するポリアクリルアミドゲルもしくはアガロースゲル電気泳動により実施してよい。大きさの分離の一般的記述はMethods in Enzymology 65、499-560(1980)で見出される。
【0029】
形質転換された宿主細胞は、組換えDNA技術を使用して作成されかつ哺乳動物のY5をコードする配列を含んで成る組換え発現構築物で形質転換もしくはトランスフェクションされている細胞である。一過性トランスフェクションに好ましい宿主細胞はCOS−7細胞である。形質転換された宿主細胞は通常Y5を発現しうるが、しかし、核酸ハイブリダイゼーションプローブDNAをクローニングもしくは増幅する目的上形質転換された宿主細胞は当該レセプターを発現する必要がない。発現される場合は、哺乳動物のY5タンパク質は、典型的には、宿主細胞膜に配置されることができる。サンブルック(Sambrook)ら、上記を参照。
【0030】
多細胞生物体由来の細胞の培養物は、組換えY5タンパク質合成に望ましい宿主である。原則として、いかなる高等真核生物細胞培養物も、脊椎動物培養物からであれ無脊椎動物培養物からであれ、実用性がある。しかしながら、実施例に具体的に説明されるように、哺乳動物細胞が好ましい。細胞培養物中でのこうした細胞の増殖は慣例の処置となっている。Tissue Culture(アカデミック プレス(Academic Press)、クルーズ(Kruse)とパターソン(Patterson)、編、1973)を参照。有用な宿主細胞系の例は、細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、ヒト293細胞、VEROおよびHeLa細胞、LMTK細胞、ならびにWI138、BHK、COS−7、CVおよびMDCK細胞系である。ヒト293細胞が好ましい。
【0031】
本発明は、本明細書に提供されるような形質転換された真核生物細胞により産生される哺乳動物のY5の均質性組成物を提供する。こうした均質性組成物は、こうした均質性組成物中のタンパク質の最低90%を含む哺乳動物Y5タンパク質から成ることが意図される。本発明はまた、ここに記述されるように、組換え発現構築物での形質転換の結果としてY5を発現する細胞からの膜調製物も提供する。
【0032】
本発明に従ったクローニングされた遺伝子から作られる哺乳動物Y5タンパク質は、Y5アゴニストもしくはアンタゴニスト活性について化合物をスクリーニングするのに、または、溶液(例えば血漿もしくは血清)中のY5アゴニストもしくはアンタゴニスト薬物の量を測定するのに使用されうる。例えば、宿主細胞は本発明の組換え発現構築物で形質転換してよい。Y5タンパク質がそれらの宿主細胞中で発現され、細胞が溶解され、そしてそれらの細胞からの膜がY5結合活性について化合物をスクリーニングするのに使用される。こうした処置が実施されうる競争的結合アッセイは当該技術分野で周知である。通常Y5を発現しない宿主細胞の選択により、Y5を含有する膜の純粋もしくは粗調製物が得られることができる。さらに、Y5アゴニストおよびアンタゴニストは、本発明により提供されるような組換え発現構築物で宿主細胞を形質転換することにより同定され得る。こうした細胞から得られる膜(および完全な細胞の膜)は、結合研究で使用され得、ここで薬物解離活性がモニターされる。
【0033】
神経伝達物質NPYは食欲の調節物(regulator)であることが既知である。本明細書に示されるように、(LP)(3−36)NPYのような摂食を誘発する多様なNPY類似物/断片は、高親和性でY5レセプターに結合する。逆に、(20−36)NPYのようなより低い親和性でY5レセプターに結合するNPY類似物/断片は摂食を顕在化させない。従って、Y5レセプターをアゴニストおよびアンタゴニストと接触させることにより摂食が調整され得ることが明らかである。従って、本明細書に記述される方法により同定されるY5レセプターに対するアンタゴニストは、食欲を低下させ、そしてこれ故に肥満、糖尿病および高脂血症を治療するのに使用され得、また、逆に、Y5レセプターに対するアゴニストは、食欲不振のような状態を治療するのに使用され得る。
【0034】
本発明は、本明細書に記述される方法により同定されるアゴニストもしくはアンタゴニスト薬物の有効量および製薬学的に許容できる担体を含んで成る製薬学的組成物を提供する。こうした薬物および担体は、多様な経路、例えば、経口、皮下、筋肉内、静脈内もしくは脳内により投与され得る。好ましい投与経路は、約0.01〜100mg/kgの1日用量での経口であるとみられる。
【0035】
本発明は、肥満、糖尿病もしくは高脂血症の治療方法を提供し、ここで、異常は、Y5レセプターの活性を低下させる、もしくはY5レセプターへのリガンドの結合を封鎖することにより改善され、この方法は上述のアンタゴニスト含有製薬学的組成物の有効量を投与して患者の食欲を抑制することを含んで成る。同様に、本発明はまた、摂食不足(underfeeding)および/もしくは食欲喪失から生じる疾患および状態の治療方法も提供し、この方法は上述のアゴニスト含有製薬学的組成物の有効量を投与して患者の食欲を刺激することを含んで成る。
【0036】
本発明の組換え発現構築物は、通常Y5を発現しない細胞をその後このレセプターを発現するように形質転換する分子生物学において有用である。こうした細胞はレセプター結合アッセイに有用な細胞膜調製物を作成するための中間体として有用であり、この調製物は順に薬物スクリーニングに有用である。こうしたレセプターアッセイから同定される薬物は、肥満、糖尿病もしくは食欲不振の治療に使用され得る。
【0037】
本発明の組換え発現構築物はまた遺伝子治療においても有用である。本発明のクローニングされた遺伝子もしくはその断片はまた、相同的組換えもしくは部位特異的突然変異誘発により実施される遺伝子治療で使用されてよい。一般に、トーマス(Thomas)とカペッキ(Capecchi)、Cell 51、503-512(1987);バートリング(Bertling)、Bioscience Reports 7、107-112(1987);スミティーズ(Smithies)ら、Nature 317、230-234(1985)を参照。
【0038】
本発明のオリゴヌクレオチドは、組織でのY5遺伝子発現の探る(probe)ための診断の道具として有用である。例えば、組織は、このレセプターの本来の発現もしくはそれに関連する病理学的状態を検討するため、下の実施例でより詳細に説明されるように、慣習的オートラジオグラフィー技術により検出可能な基をもつオリゴヌクレオチドプローブでインシトゥで探りを入れられる。さらに、また下の実施例により具体的に説明されるように、染色体が、Y5遺伝子の存在もしくは非存在およびそれに関連した潜在的な病理学的状態を検討するため、探りを入れられ得る。本発明に従ったプローブは、一般に、ランダム配列に結合することを予防するように長さが最低約15ヌクレオチドであるべきであるが、しかし適切な情況下ではより小さくてよい。
【0039】
本発明はまた、哺乳動物のY5、好ましくはラットもしくはヒトY5に対し免疫学的に反応性である抗体も提供する。本発明により提供される抗体は、当該技術分野で十分に既知の方法を使用して、哺乳動物のY5もしくはそのエピトープを発現する細胞での接種により動物中で生じられる。こうした接種に使用される動物は、乳牛、ヒツジ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ヤギおよび霊長類を含んで成る種からの個体を包含する。接種に好ましい動物はげっ歯類(マウス、ラット、ハムスターを包含する)およびウサギである。最も好ましい動物はマウスである。
【0040】
こうした接種、もしくは本発明で使用される他の手段のいずれにも使用され得る細胞は、天然に哺乳動物のY5を発現するいずれかの細胞系、あるいは、分子もしくは遺伝子工学の結果として哺乳動物のY5もしくはそのいずれかのエピトープを発現する、または、物理的、生化学的もしくは遺伝子的手段により哺乳動物のY5の発現を増大させるよう処理されている、いずれかの細胞もしくは細胞系を包含する。好ましい細胞はヒト細胞、最も好ましくは、哺乳動物のY5、好ましくはラットもしくはヒトY5をコードする核酸を含んで成る組換え発現構築物で形質転換されておりそして哺乳動物のY5遺伝子産物を発現するHEK293およびBHK細胞である。
【0041】
本発明は、哺乳動物のY5のエピトープもしくはその断片と免疫学的に反応性でありかつ哺乳動物細胞、好ましくはヒトもしくはマウス細胞の表面に存在するモノクローナル抗体を提供する。これらの抗体は当業者に十分に既知の方法および技術を使用して作成される。
【0042】
本発明により提供されるモノクローナル抗体はハイブリドーマ細胞系により産生され、これらはまた本発明により提供されかつ当該技術分野で十分に既知の方法により作成される。ハイブリドーマ細胞系は、上述されるように、骨髄腫細胞系の個々の細胞を、Y5レセプターを発現する細胞、好ましくはラットもしくはヒト細胞で免疫された動物由来の脾細胞と融合することにより作成される。本発明で使用される骨髄腫細胞系は、マウス、ラット、ハムスター、霊長類およびヒトの骨髄腫由来の系を包含する。好ましい骨髄腫細胞系はマウスからである。免疫後にそれから脾が得られる動物は、ラット、マウスおよびハムスター、好ましくはマウス、最も好ましくはBalb/cマウスである。脾細胞および骨髄腫細胞は、不活性化センダイウイルスとのインキュベーションおよびポリエチレングリコール(PEG)の存在下でのインキュベーションを包含するがしかしこれらに制限されない、当該技術分野で十分に既知の多数の方法を使用して融合される。細胞融合に最も好ましい方法は、45%(w/v)PEG−1450の溶液の存在下でのインキュベーションである。ハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗体はインビトロ細胞培養(growth)からの細胞培養物上清液から収穫され得るか;あるいは、ハイブリドーマ細胞が皮下におよび/もしくは動物、最も好ましくはマウスの腹膜腔中に注入され得、そしてモノクローナル抗体が血液および/もしくは腹水液から得られることができる。
【0043】
本発明により提供されるモノクローナル抗体はまた、当業者に十分に既知の組換え遺伝子法によっても産生され、また、本発明は、哺乳動物のY5のエピトープと免疫学的に反応性である、こうした方法により作成される抗体を包含する。
【0044】
本発明は、哺乳動物のY5のエピトープと免疫学的に反応性である抗体の断片を包含する。こうした断片は、タンパク質分解、化学合成もしくは遺伝子工学技術によったこうした断片の調製を包含するがしかしこれらに制限されない、いずれかの数の方法により製造される。本発明はまた、当業者に既知の方法により作成された哺乳動物のY5のエピトープと免疫学的に反応性である一本鎖抗体を包含する。
【0045】
本発明はまた、哺乳動物のY5分子中に存在する配列および/もしくは配列のあるコンホメーションから成る哺乳動物のY5のエピトープも包含する。このエピトープは天然に存在することができるか、もしくは哺乳動物のY5分子のタンパク質分解およびエピトープ含有ペプチドの単離の結果であることができるか、もしくは、当業者に十分に既知の方法を使用するエピトープ含有ペプチドの合成により得られてもよい。本発明はまた、遺伝子工学技術の結果として産生される、また、遺伝子的に工作された原核生物もしくは真核生物細胞により合成されるエピトープペプチドも包含する。
【0046】
本発明はまた、哺乳動物のY5であるエピトープに免疫学的に反応性のL鎖およびH鎖ペプチドから成るキメラ抗体も包含する。本発明で具現化されるキメラ抗体は、天然に存在する抗体、ならびに、当業者に十分に既知の遺伝子工学技術によって作成されるキメラ抗体由来であるものを包含する。
【0047】
本発明に従ったY5核酸配列で形質転換されかつ本発明に従ったY5レセプターを発現する胚細胞ならびにその子孫(offsprings)および末裔(descendant)から成長された非ヒトトランスジェニック動物もまた、本発明により提供される。本来のY5レセプターの相同的組換えノックアウトを含んで成るトランスジェニック非ヒト哺乳動物、ならびに、本発明のY5核酸に対する核酸アンチセンスで形質転換された胚細胞ならびにその子孫および末裔から成長されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物もまた提供される。本来のY5レセプターがヒト相同物で置き換えられているトランスジェニック動物が、本発明の一部としてさらに包含される。もちろん、前述のトランスジェニック動物の全ての子孫および末裔もまた本発明により包含される。
【0048】
本発明に従ったトランスジェニック動物は、本明細書に開示される核酸を用いて、十分に既知の技術を使用して作成され得る。例えば、レーダー(Leder)ら、米国特許第4,736,866号および同第5,175,383号;ホーガン(Hogan)ら、Manipulating the Mouse Embryo、A Laboratory Manual(コールド スプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)(1986));カペッキ(Capecchi)、Science 244、1288(1989);ツィマー(Zimmer)とグルス(Gruss)、Nature 338、150(1989);クーン(Kuhn)ら、Science 269、1427(1995);カツキ(Katsuki)ら、Science 241、593(1988);ヘイスティ(Hasty)ら、Nature 350、243(1991);ステイシー(Stacey)ら、Mol. Cell Biol. 14、1009(1994);ハンクス(Hanks)ら、Science 269、679(1995);およびマルクス(Marx)、Science 269、636(1995)。こうしたトランスジェニック動物は、Y5レセプターアゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングするのに、また、それらの生理学的影響を決定するのに有用である。結果として、こうしたトランスジェニック動物は、NPYおよび/もしくはPYYが関係する生理学的活性を調節する薬物を開発するのに有用である。
【0049】
以下の実施例は、具体的に説明する目的のみのため提供され、また、いかなる様式においても本発明を制限するとして意図されず、また、それらはそのように構成されるべきでない。
【実施例1】
【0050】
ラットY5レセプターの単離および配列決定
ラット視床下部mRNAの単離およびcDNAライブラリーの構築
発現クローニング戦略を使用してラット視床下部のcDNAライブラリーで新規NPYレセプターをクローニングした。RNAは合計0.87グラムの重量の9個の凍結されたラット視床下部から得た。ポリ(A)RNAを、プロメガ(Promega)ポリATトラクトシステム1000(PolyATtract System 1000)キット(プロメガ、ウィスコンシン州マジソン)を使用して組織から直接単離した。視床下部を、ポリトロン(Polytron)を最高速度でおよそ1分間使用して、4mLの4Mチオシアン酸グアニジン−25mMクエン酸ナトリウム、pH7.1−2%β−メルカプトエタノール中でホモジェナイズした。ホモジェナイズされた組織に、70℃に予め加熱されていた8mLの4Mチオシアン酸グアニジン−25mMクエン酸ナトリウム、pH7.1−1%β−メルカプトエタノールを添加した。入念に混合した後、870pmolのビオチニル化オリゴ(dT)を添加し;この混合物を70℃で5分間インキュベーションした。ホモジェネートは室温で12000×gで10分間遠心分離を受け;ホモジェネートを清浄なチューブに移し、そして、出版されたプロトコールにより調製されていた10.44mLのストレプトアビジン マグネスフェア[MAGNESPHERE](商標)常磁性粒子(Paramagnetic Particles)(SA−PMP)を添加した(プロメガ コーポレーションで出版されたプロトコール TM288;プロメガ コーポレーション(Promega Corporation)、ウィスコンシン州マジソン)。ホモジェネートおよびSA−PMPを一緒に室温で2分間インキュベーションし、その後、ホモジェネートをデカンテーションする一方、SA−PMP−ビオチニル化オリゴ(dT)−視床下部ポリ(A)RNA複合体を、磁性スタンドによりチューブ中に保持した。この複合体をプロトコールにより洗浄し、この後、RNAを沈殿させ、そして水中に再懸濁した。25マイクログラムのこのポリ(A)RNAは、cDNA発現ライブラリーを調製するため、インヴィトロジェン(インヴィトロジェン コーポレーション(Invitrogen Corporation)、カリフォルニア州サンジエゴ)により使用された。cDNAライブラリーを調製するためにインヴィトロジェンにより使用されたプロトコールは、オカヤマ(Okayama)とベルク(Berg)(Molec. Cell. Biol. 2、161(1982))およびガブラー(Gubler)とホフマン(Hoffman)(Gene 25、263(1983))の手順に本質的に基づく(インヴィトロジェン コーポレーション パブリケーションズ(Invitrogen Corporation publications)130813saおよび130928sa)。オリゴ(dT)アンカープライマーを逆転写に使用し、そして、ライブラリーを、真核生物発現のためCMVプロモーターを含有するpcDNA3ベクター中に一方向にクローニングした。このcDNAライブラリーは、2.59kbの平均の挿入物の大きさの5.3×105個の一次組換え体を有した。
【0051】
新規Y5レセプターcDNAクローンの単離
ラット視床下部のcDNAライブラリーを、1000個の独立のコロニーのプールでLB/アンピシリンプレート上で培養した。プレートを37℃で約20時間インキュベーションし、そして各プレートからの細菌を4〜5mLのLB/アンピシリン培地中でこすり落とした。細菌サンプル2mLをプラスミド調製に使用し、また、各プールの1mLを15%グリセロール中で−80℃で保存した。
【0052】
COS−7細胞を、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM、ギブコ(GIBCO)11965-092)、10%ウシ胎児血清(ギブコ 16000-028)および1×抗生物質/抗真菌薬溶液(ギブコ 15240-039)(メリーランド州ゲイタースバーグ)中で成長させた。細胞を50ないし70%コンフルエントでトリプシン処理しそして分割した。
【0053】
1300個のプールからのDNAを、[125I]PYY結合アッセイのためCOS−7細胞中にトランスフェクションした。トランスフェクション24時間前に、細胞を、細胞3×105個/小型フラスコ(flaskette)(細胞3×104個/cm2に同等)で、小型フラスコチャンバー(ナンク インク(Nunc, Inc.)177453、イリノイ州ネイパービル)中で培養した。各プールからのプラスミドDNA2μgを、製造元のプロトコールに従って、10μlのリポフェクタミン(Lipofectamine)(ギブコ 18324-012)を使用して細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、[125I]PYY結合アッセイを小型フラスコチャンバー中で実施した。細胞を、室温で15分間、2mlの完全結合緩衝液(total binding buffer)、すなわち10mMHEPES、5mM塩化カリウム、1.2mMリン酸一カリウム、2.5mM塩化カルシウム、1.2mM硫酸マグネシウム、150mM塩化ナトリウム、25mM炭酸水素ナトリウム、10mg/mlウシ血清アルブミン、0.5mg/mlバシトラシンおよび0.4mg/mlダイズトリプシンインヒビターで処理した。細胞をその後、完全結合緩衝液中で、室温で90分間、100pMのブタ[125I]PYY(アマーシャム(Amersham)(イリノイ州アーリントンハイツ)、特異的活性4000Ci/mmol)とともにインキュベーションした。結合後、細胞を、リガンドを含まない氷冷完全結合緩衝液で3回、そして冷リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で1回洗浄した。細胞を、PBS中1%冷グルタルアルデヒドで15分間固定し、冷PBS/0.5Mトリス、pH7.5で1回洗浄し、そしてPBS/0.5Mトリス、pH7.5中で4℃で15分間インキュベーションした。冷PBSでさらに1回洗浄した後、スライドガラスを42℃で0.5%ゼラチンに浸し、そして真空下で乾燥した。乾燥されたスライドガラスを、42℃で50%写真用感光乳剤(コダック(ニューヨーク州ロチェスター)NTB2)に浸し、そして暗箱(darkbox)中で4℃で4日間感光させた。4日間感光後、暗箱を1時間室温に移動し、そしてスライドガラスを15℃で3分間現像液D−19(コダック)中で現像し、そして15℃で3分間定着液(コダック)中で定着させ、水中で洗浄し、そして風乾した。細胞を、ジフクイック(Diff-Quik)染色セット(バクスター(Baxter)、イリノイ州マゴーパーク)で染色しそして風乾した。スライドガラスをキシレン中に浸し、そして、DPX試料装着物質(mountant)(エレクトロン マイクロスコピー サイエンス(Electron Microscopy Science)、フィラデルフィア州フォートワシントン)で据え付けた。陽性細胞を、暗視野顕微鏡検査を使用して同定した。
【0054】
21個の陽性のプールを同定した。視床下部はY1およびY2レセプターを包含するNPYレセプターの多様なサブタイプを発現するため、われわれは、全ての陽性プールをY1、Y2およびY4/PPレセプターについてPCRにより分析した。上述されるように試験された21個の陽性プールのうち、12プールがY1を含有し、4プールがY2を含有し、そしてどれもY4/PPを含有しなかった。5プール(Y217、Y555、Y589、Y861およびY1139)はPCR分析により陰性であった。プールY217を、200個のコロニー、その後50個のコロニーの24個の下位プールに細分し、そして、最終的に単一のクローンY217.24.13.6Bクローン(6B)を単離した。
【0055】
DNAおよびペプチド配列分析
プラスミドDNAは、シークェナーゼキット(Sequenase Kit)(US バイオケミカル(US Biochemical)、オハイオ州クリーヴランド)もしくはアプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)の自動シークェンサーシステム(モデル373A)を使用して、ラーク テクノロジーズ インク(Lark Technologies Inc.)(テキサス州ヒューストン)およびイェール大学バイオテクノロジー資源研究所(Biotechnology Resource Laboratory of Yale University)(コネティカット州ニューヘイヴン)により配列決定された。ペプチド配列はヌクレオチド配列の長い読み取り枠から推定した。DNAおよびペプチド配列はGCGプログラム(ジェネティクス コンピュータ グループ(Genetics Computer Group)、ウィスコンシン州マジソン)を使用して解析した。結果は、配列番号1(核酸配列)および配列番号2(アミノ酸配列)に具現化される。
【実施例2】
【0056】
脳および他の組織中のラットY5レセプターの位置推定
ノーザンブロット
ラットの脳および他の組織中のY5レセプターの発現レベルを研究するため、われわれは6Bの2.4kbプローブを使用してノーザンブロット分析を行った。ラットの複数の組織のノーザンブロット(クロンテック ラボラトリーズ(Clontech Laboratories)、カリフォルニア州パロアルト)を、32P標識されたラット6Bプローブにハイブリダイゼーションした。ブロットは、レーンあたり、ラットの心、脳、脾、肺、肝、骨格筋、腎および精巣からの2μgのポリA+RNAを含有する。ハイブリダイゼーションを、6×SSC(0.9M塩化ナトリウム、0.09Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、5×デンハルト溶液(0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコール タイプ400、0.1%ウシ血清アルブミン)、100mg/mlの剪断かつ変性されたサケ精子DNAを含有する1×ハイブリダイゼーション溶液中で65℃で実施した。フィルターを、65℃で0.1×SSC、0.1%SDS中で洗浄し、そして2枚の増強スクリーンを用いてコダックXAR5フィルムに感光させた。単一の2.6kbのバンドがブロットの一夜感光後に脳で検出された。バンドは、他の組織(心、脾、肺、肝、骨格筋、腎および精巣)からは、クロンテック多組織ノーザンブロットで、6日感光後でさえ見出されなかった。
【0057】
われわれは、より多くのラット組織および多様な脳領域における6B発現を試験した。mRNAを、ラットの全脳、皮質、視床下部、海馬、嗅球、脾、胃、腎、小腸、副腎および膵から、ファストトラック単離キット(Fast Track Isolation Kit)(インヴィトロジェン)を使用して単離した。多様な脳領域および複数の組織からのmRNA10μgを、変性ホルムアルデヒド1%アガロースゲル上で泳動し、ナイトラン(Nytran)メンブレン(シュライヒャー アンド シュエル(Schleicher and Schuell))に転写し、そして32P標識された6Bの2.4kbプローブでハイブリダイゼーションし、かつ高緊縮で洗浄した。一夜ハイブリダイゼーション後、フィルターを高緊縮で洗浄し、そして、増強スクリーンを用いてX線フィルムに感光させた。6BレセプターのmRNAは、1日感光後に検査された脳領域で検出可能であったが、しかし、信号は、他の組織からは、二重の増強スクリーンを用いての1週間感光後でさえ観察されなかった。
【実施例3】
【0058】
ラットY5レセプターの2種のイソフォームの単離
実施例1に記述されたプールY555、Y589およびY861からのプラスミドDNAを、高緊縮でY5プローブにハイブリダイゼーションした。単一の陽性クローンをY555プールから単離し、そして実施例1に記述されるように配列決定した。6BのDNA配列に比較して、Y555配列(配列番号4)は、Y5クローンのヌクレオチド239と240との間の5’非翻訳領域に配置される123bpの挿入配列を有する。クローンY555、Y589およびY861のコーディング領域は、6Bクローンの位置430の1ヌクレオチド置換(CからT)を除いてはクローン6Bと同じ配列を有する。このヌクレオチド置換は第一膜貫通ドメイン中のアミノ酸プロリンをロイシンに変える。対応するアミノ酸配列は配列番号4により与えられる。
【0059】
レセプターの多様なイソフォームは同じ遺伝子の対立遺伝子の異型(variant)であり得る。この仮定を試験するため、われわれは16匹のラットからのゲノムDNAを分析した。各動物からのゲノムDNAをPCR分析の鋳型として使用した。ヌクレオチド変動の部位を含有する314bpのDNA断片を増幅しかつ配列決定した。試験された16個のDNAサンプルのうち、14サンプルが位置430にTを有し、また、2サンプルがCを有した。この結果は、アミノ酸の変動が対立遺伝子の異型であることを強く示唆する。
【実施例4】
【0060】
新規ラットNPYレセプターの薬理学的特徴づけ
一過性トランスフェクション
サル腎細胞(COS−7)を、加湿空気中5%CO2で37℃でT−175cm2フラスコ(ナンク(NUNC))中で維持した。細胞は、2mMグルタミン、10%ウシ胎児血清、1mMピルビン酸ナトリウムおよび抗生物質/抗真菌薬で補充されたダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中で成長させた。70%コンフルエントの細胞を、リポフェクタミン法(ギブコ−BRL(GIBCO-BRL))を使用してY5のDNAでトランスフェクションした。15μgのDNAおよび90μLのリポフェクタミンを各フラスコに添加した。培地をトランスフェクション後24時間に完全に取り替え、そして膜を24時間後に収穫した。
【0061】
ラットNPY Y5レセプターの安定な発現(クローンY861)
懸濁液中で成長するよう適合されたヒト胚腎細胞系293の一株(293S)をこれらの実験に使用した。およそ1×106個の細胞を、トランスフェクション24時間前に10cmシャーレに接種した(seed)。真核生物発現ベクターpcDNA3(インヴィトロジェン、カリフォルニア州カールスバード)中にサブクローニングされたラットNPY Y5のcDNA(Y861)を、まずNotIで直鎖状にし、そしてウィザード(Wizard)PCRプレップキット(プロメガ)を使用して精製した。トランスクションのための調製では、15μgの直鎖状にされたDNAを500μlのDMEM細胞培養培地に添加し、そして30μlのリポフェクタミン(ライフ サイエンシーズ(Life Sciences))を、DMEMの別個の500μlのアリコートに添加した。これら2溶液を一緒に混合しかつ室温で20分間インキュベーションし、そして、結果として生じるDNA/脂質複合体を、その後、細胞(血清を含まないDMEMで前に1回洗い流されている)にゆっくりと添加し、そして総体積10mlで覆った。細胞をその後、加湿された10%CO2インキュベーターに移し、そして37℃で4時間放置し、この時点で、培地を8%FBSで補充されたDMEMで取り替えた。16時間後、細胞をトリプシン処理し、そして700μg/mlのG418の存在下DMEM/8%FBS(選択培地)を含有する10cmシャーレに1:15の比で分割した。別個のコロニーが明らかになった場合(およそ10日後)に細胞をプールし、そして選択培地中で2回の付加的継代をやり遂げた。細胞をその後トリプシン処理し、そして、平均1個の細胞を96穴マイクロタイター培養プレートの各穴に接種するように、制限希釈によるクローニング(CBLD)のための調製物に希釈し、そしてその後2ないし3週間、定期的に点検した。選択条件下の培養で21日後、単一コロニーを含有する穴を選択し、そしてトリプシン処理後に24穴培養プレートに移した。これらのクローンのそれぞれを、十分な量が[125I]PYY結合活性を試験するのに利用可能になるまで増殖させ、これから、E7と命名された1個の特定のクローンを結合活性のその高レベルを基礎として選択した。
【0062】
ヒトNPY Y5レセプターの安定な発現
293細胞を、実験に使用される場合にそれらが50〜70%コンフルエントであるように、トランスフェクション1日前にT75フラスコで培養した。このレセプターをコードする完全長の読み取り枠を含有する、ヒトNPY Y5のイントロンを含まないゲノムクローンHG.PCR15をまずNotIで直鎖状にし、そしてウィザードPCRプレップキット(プロメガ)を使用して精製した。各トランスフェクションには、8μgの直鎖状にされたDNAを1.25mlのオプチメム(Optimem)培養培地(ライフ サイエンシーズ)に添加し、そして37μlのトランスフェクタム(Transfectam)(プロメガ)を1.25mlのオプチメムに添加した。これら2溶液をその後一緒に混合し、そして、前に1度オプチメムで洗浄された細胞に添加した。5時間のインキュベーション期間の後、DNA/トランスフェクタム混合物を除去し、細胞をPBSで洗浄し、そして10%FBSで補充されたDMEMで飼養した。細胞は2日間完全なままとし、そしてその後、上述されるように、5〜10日間、選択培地(350μg/mlのG418を含有するDMEM10%FBS)に交換し、その後CBLDが続いた。別個のクローン293.hy5.sb.8を、上からの完全な細胞の結合プロトコールを使用して、[125I]PYY結合活性のその高レベルを基礎として選択した。
【0063】
膜の調製
培地を、トランスフェクションされた細胞の各フラスコから除去し、そして細胞を20mlの氷冷リン酸緩衝生理的食塩水で2回洗浄した。細胞を5mlのトリス緩衝液(20mMトリス−塩酸および5mMEDTA、pH7.7)中にフラスコからかき落とし、そしてその後遠心分離チューブに移した。各フラスコを追加の5mlトリス緩衝液で洗浄し、そして遠心分離チューブに合わせた。細胞を10秒で2回ポリトロン処理し(polytroned)(12mmプローブ、7000〜8000rpm)、そして800pmかつ4℃で5分遠心分離した(セントラ(Centra)7R、インターナショナル イクイップメント カンパニー(International Eqipment Co.)、マサチューセッツ州ニーダムハイツ)。上清をその後、清浄な遠心分離チューブに移し、そして30,000×gで30分間かつ4℃で遠心分離した。上清を除去し、そしてペレットを−80℃で保存した。タンパク質濃度を、標準的な製造元のプロトコール(バイオラッド ラボラトリーズ(Biorad Laboratories)、カリフォルニア州ハーキュリーズ)に準じて、標準品としてウシIgGを用いてバイオラッド(Bio-Rad)のキットを使用して測定した。
【0064】
NPY Y5レセプターの[125I]PYY結合アッセイ
結合アッセイを、使用前最低2時間0.02%ポリエチレンイミン(PEI)で前処理されたGF/Cミリポア(Millipore)(マサチューセッツ州ベッドフォード)96穴プレートで実施した。PEIを、サンプルを穴に添加する直前に真空マニホルドでプレートから吸引した。全てのペプチド、組織および放射リガンドは、結合緩衝液(25mMトリス、120mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、1.2mMリン酸一カリウム、2.5mM塩化カルシウム、1.2mM硫酸マグネシウム、0.1%BSAおよび0.5mg/mlバシトラシン、pH7.4)で希釈した。競争アッセイには、増大する濃度のペプチドを[125I]PYYおよび組織とともにインキュベーションした。200μlの最終体積で、サンプルは、膜タンパク質(すなわち、ラットY5もしくはヒトY5についてそれぞれ2.5〜15もしくは10〜30μgの膜);75〜100pMの[125I]PYY NEN−デュポン(DuPont)(マサチューセッツ州ボストン);ペプチド希釈もしくは結合緩衝液から成った。非特異的結合を1μMPYYにより定義した。NPY、PYY、(2−36)NPY、(10−36)NPY、(LP)(3−36)NPYおよび(32D−Trp)NPYは、バイエル コーポレーション(Bayer Corp.)(コネティカット州ウェストヘイヴン)で合成した。全ての他のペプチドは、ペニンシュラ(Peninsula)(カリフォルニア州ベルモント)もしくはベイケム(Bachem)(カリフォルニア州トレンス)のいずれかから購入した。
【0065】
飽和実験には、増大する濃度の[125I]PYYを、膜および1μMPYYとともにインキュベーションした。一定の混合を伴う室温で2時間のインキュベーション後、サンプルを真空マニホルドで吸引した。穴を氷冷結合緩衝液の3個の200μlのアリコートで洗浄した。個々の穴を12×75mmのプラスチックチューブ中に打ち込み(punched into)、そしてワラック(Wallac)(メリーランド州ゲイタースバーグ)γ計数器で数えた。結合データは、非線形回帰曲線当てはめ(curve-fitting)プログラムRS/1(BBN ソフトウェア プロダクツ コーポレーション(BBN Software Products Corp.)、マサチューセッツ州ケンブリッジ)を使用して解析した。
【0066】
ラットY2、Y1、およびY4/PP1レセプターの結合アッセイ
ラットY2結合のための結合緩衝液は、0.01%ウシ血清アルブミン(BSA−シグマ(Sigma)A-2153)および0.005%バシトラシンを含有するクレブス/リンゲル(Krebs/Ringer)炭酸塩(シグマK-4002、S-8875)pH7.4であった。0.85〜1μgのタンパク質および25pMの[125I]PYYを各穴に添加する。非特異的結合を1μMNPYにより定義する。
【0067】
ラットY1およびラットY4/PP1結合のための結合緩衝液は、137mM塩化ナトリウム、5.4mM塩化カリウム、0.44mMリン酸一カリウム、1.26mM塩化カルシウム、0.81mM硫酸マグネシウム、20mMHEPES、1mMジチオスレイトール(DTT)、0.1%バシトラシン、100mg/lストレプトマイシン硫酸塩、1mg/lアプロチニン、10mg/mlダイズトリプシンインヒビターおよび0.3%BSA、pH7.4から成った。ラットY1結合には、約5〜15μgのタンパク質および50pMの[125I]PYYを各穴に添加し、そして非特異的結合を1μMNPYにより定義した。ラットY4/PP1結合アッセイには、約1〜2μgのタンパク質および50pMのラット[125I]PP(NEN デュポン、マサチューセッツ州ボストン)を各穴に添加し、そして1μMのラットPPを使用して非特異的結合を定義した。
【0068】
インビトロ機能アッセイ−フォルスコリン刺激アデニレートシクラーゼの測定
ラットY5
(参考文献:ゴードン(Gordon)ら、J. Neurochem. 55、506、1990)Y5レセプターを安定に発現する懸濁細胞(サンプルあたりおよそ400,000個)を、10mMHEPES(pH7.4)および1mMイソブチルメチルキサンチン(IBMX)を含有する血清を含まないDMEM中に再懸濁した。1μMフォルスコリンを細胞に添加した。アッセイは、サンプルを沸騰水浴中に3分間移すことにより停止した。14,000×gで3分遠心分離後、各サンプルのアリコートをラジオイムノアッセイ(NEN デュポン、マサチューセッツ州)によりcAMPレベルについて定量した。
【0069】
ヒトY5
Y5レセプターを安定に発現する単層細胞を、洗浄緩衝液(pH7.2:137mM塩化ナトリウム、2.7mM塩化カリウム、0.9mM塩化カルシウム、0.5mM塩化マグネシウム、6.5mMリン酸二ナトリウム、1.5mMリン酸一カリウム)で予め洗い流した。細胞をその後、アッセイ緩衝液(pH7.4:洗浄緩衝液に加えて10mMHEPES、10mg/mlBSA、0.5mg/mlバシトラシン、0.4mg/mlダイズトリプシンインヒビター)中で37℃で10分間インキュベーションした。新鮮な緩衝液および100μMIBMXの添加後、細胞を37℃で10分間インキュベーションした。反応を、ペプチドおよび1〜10μMフォルスコリンの添加で開始した。37℃で20分間インキュベーションの後、反応を、緩衝液を排出することおよび各穴に65%エタノールを添加することにより停止した。上清をその後、微小遠心分離チューブに移し、そして抽出段階をもう1回反復した。サンプルからのエタノールの蒸発の後、cAMPの量をラジオイムノアッセイ(NEN デュポン:マサチューセッツ州ボストン)によりアッセイした。
【0070】
インビボ薬理学の手順
成体の雄性ウィスター(Wistar)ラットに、定位器具を使用して、慢性の脳内脳室(ICV)カニューレ(プラスチック プロダクツ(Plastic Product)、バージニア州ロアノーク)を外科的に埋め込んだ。外科手術の数日後、1〜6nmolの各ペプチド(もしくは生理的食塩水)を、5〜10μlの体積で4〜12匹のラットの側脳室中に注入した。2時間の期間で消費されるげっ歯類の食物の量を測定した。
【0071】
インビトロおよびインビボ薬理学の結果
図1は、COS−7細胞中で一過性に発現されるY5レセプター膜への[125I]PYY結合についての多様なペプチドの競争曲線を提示する。各点は代表的実験からの3回の(triplicate)測定の平均値である。特異的結合の50%阻害に対応するIC50値を非直線回帰分析を使用して決定した。K値は、K=IC50/(1±(L/K))(ここでLは放射リガンド濃度でありかつKは解離定数である)であるように、チェン−プルソフ(Cheng-Prusoff)の補正を使用してIC50値から計算した。一過性に発現されるY5クローンについての結果を表1に提示し、また、表2は安定に発現されるY5クローンのデータを含有する。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
一過性に発現されたラット6B、Y861およびY555レセプタークローン、ならびにヒトY5レセプターへの[125I]PYY結合についての多様なペプチドのK値。平均±平均の標準誤差(SEM)は最低3回の独立の実験からの値を表す。2回の独立した実験は平均により表し、その後にカッコ内に個々の値が続く。SEMのない残余の値は1回の実験からである。表1(および下の表2)中のペプチド種は以下の接頭辞で示される。すなわち、r=ラット、h=ヒト、p=ブタ、r/h=ラット=ヒト。ND=測定されない。
【0075】
試験されたペプチドの親和性の等級の順序は以下のようである。すなわち
NPY〜PYY〜(LP)PYY〜(LP)NPY〜(2−36)NPY〜(3−36)PYY〜(LP)(3−36)NPY〜(3−36)NPY>(32D−Trp)NPY>(10−36)NPY〜(13−36)NPY>(18−36)NPY>(20−36)NPY>>(22−36)NPY、(26−36)NPY
【0076】
表3においては、標準ペプチドの薬理学的プロフィルが、Y5レセプターの薬理学の新規の性質をさらに具体的に説明するため、他のクローニングされたNPYレセプターについて拡大される。加えて、これらのペプチドのいくつかのインビボ摂食応答が比較のため列挙される。示されるデータは、方法中に記述されるように、最低2回の独立の実験の平均を表わす。生理的食塩水を注入された(ICV)ラットの摂食は<3g/2時間であった。
【0077】
表4は、ラットおよびヒトY5レセプターでの同じ標準ペプチドのEC50値を示す。
【0078】
C末端断片(3−36)NPYは優先的にY2レセプターに結合する一方、(LP)NPYはより低い親和性を有する。逆に、(LP)NPYはY1レセプターに対し高親和性を有する一方、(3−36)NPYおよびC末端断片はずっとより弱い。ラットY4/PP1レセプターを考慮する場合、ラットPPは、NPY、PYY、(LP)NPYおよび(13−36)NPYに比較して非常に高い親和性を有する。インビボ摂食モデルにおいて、Y1に対する高親和性およびY2に対する低親和性を有する(LP)NPY、ならびに、Y2に対し高親和性を有するがしかしY1には有しない(3−36)NPYは、全てラットで摂食を刺激する。ラットPPは、ラットに投与される場合に大きな摂食を誘発しない。このインビボのプロフィルは、Y5レセプターに関して表2に概説されたインビトロの薬理学的プロフィルに一致する。
【0079】
加えて、(LP)(3−36)NPY(バイエルで合成された誂えの(custom)ペプチド)は、Y1、Y2およびY4/PP1に対して弱い親和性を有する一方、それはラットで摂食を刺激する。重要なことには、(LP)(3−36)NPYはY5レセプターに対し高親和性を有する(表2)。これらのデータは、Y5レセプターが摂食に連結されることをさらに証明する。
【0080】
【表3】

【0081】
6B(ならびにY861およびY555)レセプタークローンの薬理学的プロフィルは、Y1レセプター(PYY〜NPY〜(LP)NPY>(3−36)NPY>(13−36)NPY〜(18−36)NPY>(LP)(3−36)NPY)、ならびにY2レセプター(PYY〜NPY〜(13−36)NPY〜(18−36)NPY〜(3−36)NPY>>(LP)NPY〜(LP)(3−36)NPY)と性質が異なる。Y5レセプターもまた、膵ポリペプチド(PP)レセプター(Y4/PP)と性質が異なる。なぜなら[125I]PP(ラット)はそれに結合しないからである。
【0082】
親和性の等級の順序は、6BをY861およびY555と比較する場合に本質的に同じであるとは言え、微細な差異がIC50値に存在する。Y861およびY555は、6Bに比較して、PYYおよび他のPYY類似物に対しわずかにより低い親和性(およそ2ないし3分の1)を有するようである。加えて、(10−36)NPYおよび(13−36)は、Y861およびY555に対し2ないし4倍より低い親和性を有する。
【0083】
Y5レセプターの飽和データの非直線回帰分析は、これらの一過性にトランスフェクションされた細胞で、0.27nMのK値および約140fmol/mgタンパク質のレセプター密度(Bmax)を生じた。
【0084】
図2は、COS−7細胞で一過性に発現されたY5レセプター膜への[125I]PYYの特異的結合の飽和曲線を提示する。膜を、1μMのPYYの存在もしくは非存在下で、0.05から5nMまでの範囲にわたる[125I]PYYの濃度とともにインキュベーションした。各点は試験された各濃度での3回の測定の平均値を表す。図2中の挿入図は、このデータの対応するローゼンタール(Rosenthal)プロットを示す。
【0085】
【表4】

【実施例5】
【0086】
ヒトY5レセプターの単離
ヒトゲノムクローンの単離
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、ラットY5cDNAクローンの375塩基対(bp)のコーディング領域を増幅した。PCRのプライマーは、
(+)5’−TAGGGAACCTGGCCTCCTCC−3’(配列番号7)(ヌクレオチド487−506)
(−)5’−TCAGAGGGCCATGACTCAAC−3’(配列番号8)(ヌクレオチド843−862)
であった。
PCR産物をpCRIIベクター(インヴィトロジェン)にクローニングしそして配列決定した。配列決定による確認の後、挿入物を低溶融ゲルから精製し、そして、ランダムプライム法(random primed method)(ベーリンガー マンハイム(Boehringer Mannheim)、インジアナ州インジアナポリス)を使用して、ジゴキシゲニン−11−dUTPで標識した。標識されたプローブを使用してヒトゲノムライブラリーをスクリーニングした。
【0087】
1×106個の独立の組換え体をライブラリーからスクリーニングした。フィルターハイブリダイゼーションを、6×SSC、0.1%N−ラウロイルサルコシン、0.02%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、3%ブロッキング試薬(ベーリンガー マンハイム)および30%ホルムアミドを含有するハイブリダイゼーション緩衝液中で37℃で一夜実施した。フィルターを、37℃で、0.1×SSC、0.1%SDS中で洗浄し、そして、陽性クローンを、製造元のプロトコール(ベーリンガー マンハイム)に従いCSPD検出キットにより同定した。
【0088】
2個の陽性クローン(HG11AおよびHG19)をライブラリーから単離した。陽性クローンをpBluescriptベクター(ストラタジーン(Stratagene))中にサブクローニングした。1個のクローン、h11aを、制限酵素地図作製(restriction mapping)およびプラスミドサザンブロットにより分析した。2.4kbおよび0.4kbの2個のEcoRV断片がラットY5プローブによりハイブリダイゼーションされた。これら2個のDNA断片をサブクローニングし、そして両端から配列決定した。DNA配列分析をGCGプログラムを使用して実施した。ヒトY5ゲノムクローンのコーディング領域をDNA配列分析により同定した。この領域を、鋳型としてゲノムクローンh11Aを使用するPCRにより増幅し、そして、さらなる研究のため、pcDNA3発現ベクター(インヴィトロジェン)中にサブクローニングした。h11Aクローンは、配列番号5により与えられる核酸コーディング配列を有し、また、それがコードするタンパク質は、配列番号6により与えられるアミノ酸配列を有する。
【0089】
ヒトY5 DNAのコーディング領域を使用して、遺伝子バンクで配列類似性を検索した。ヌクレオチド821から位置1338の終止コドンまでのY5コーディング配列は、ヒトNPY−Y1遺伝子の部分にほぼ同一であるが、しかし逆方向である(ボール(Ball)ら、J.Biol. Chem. 270、30102 (1995))。同一配列は、1Cエクソンプロモーター、エクソン1Cおよび逆方向のNPY−Y1レセプターのイントロン配列の部分にわたる。刊行されたヌクレオチド配列に比較して、このY5コーディング領域は、位置1226にTの挿入ならびに位置1235および1236にTGの挿入を有する。
【0090】
本発明の主たる特徴または態様を下記にまとめる。
1.配列番号1、配列番号3もしくは配列番号5と本質的に同一のヌクレオチド配列を有する分子を含んで成る神経ペプチドYレセプターをコードする単離された核酸。
2.配列番号2、配列番号4もしくは配列番号6と本質的に同一のアミノ酸配列を有する分子を含んで成る神経ペプチドYレセプターの均質性組成物。
3.態様1に記載の核酸を含んで成るベクター。
4.核酸の発現を可能にするよう核酸に操作可能に連結される核酸の発現に必要な調節要素をさらに含んで成る、細胞中での発現に適合された、態様3に記載のベクター。
5.細胞が哺乳動物細胞である、態様4に記載のベクター。
6.細胞がヒト293細胞である、態様5に記載のベクター。
7.プラスミドである、態様4に記載のベクター。
8.プラスミドがpBluescriptプラスミドである、態様7に記載のベクター。
9.プラスミドがpcDNA3プラスミドである、態様7に記載のベクター。
10.自己複製する、態様3に記載のベクター。
11.核酸を発現する、態様1に記載の核酸で形質転換された細胞。
12.細菌細胞、昆虫細胞もしくは酵母細胞である、態様11に記載の細胞。
13.哺乳動物細胞である、態様11に記載の細胞。
14.ヒト293細胞である、態様13に記載の細胞。
15.態様1に記載の核酸に相補的な核酸を含んで成る核酸プローブ。
16.態様1に記載の核酸に相補的な配列を有しかつ核酸の発現を阻害する、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
17.配列番号1、配列番号3もしくは配列番号5と本質的に同一のヌクレオチド配列を有する核酸を発現する細胞の膜もしくはその部分を含んで成る膜もしくは膜調製物。
18.細胞が哺乳動物細胞である、態様17に記載の膜もしくは膜調製物。
19.哺乳動物Y5レセプターに免疫学的に反応性である抗体もしくはその断片。
20.哺乳動物Y5レセプターが、配列番号2、配列番号4および配列番号6から成る群から選ばれる1個と本質的に同一のアミノ酸配列を有する、態様19に記載の抗体もしくはその断片。
21.モノクローナル抗体である、態様19に記載の抗体もしくはその断片。
22.モノクローナル抗体である、態様20に記載の抗体もしくはその断片。
23.態様19に記載の抗体を産生する細胞株。
24.態様20に記載の抗体を産生する細胞株。
25.態様21に記載の抗体を産生する細胞株。
26.態様22に記載の抗体を産生する細胞株。
27.エピトープが、態様19に記載の抗体もしくはその断片に免疫学的に反応性である、哺乳動物Y5レセプターのエピトープ。
28.エピトープが、態様20に記載の抗体もしくはその断片に免疫学的に反応性である、哺乳動物Y5レセプターのエピトープ。
29.エピトープが、態様21に記載の抗体もしくはその断片に免疫学的に反応性である、哺乳動物Y5レセプターのエピトープ。
30.エピトープが、態様22に記載の抗体もしくはその断片に免疫学的に反応性である、哺乳動物Y5レセプターのエピトープ。
31.態様11に記載の細胞を培養することおよびその細胞により発現されるレセプターを回収することを含んで成る、神経ペプチドYレセプターの産生方法。
32.態様12に記載の細胞を培養することおよびその細胞により発現されるレセプターを回収することを含んで成る、神経ペプチドYレセプターの産生方法。
33.態様13に記載の細胞を培養することおよびその細胞により発現されるレセプターを回収することを含んで成る、神経ペプチドYレセプターの産生方法。
34.態様14に記載の細胞を培養することおよびその細胞により発現されるレセプターを回収することを含んで成る、神経ペプチドYレセプターの産生方法。
35.潜在的なアゴニストもしくはアンタゴニスト分子を態様17に記載の膜もしくは膜調製物と接触させることを含んで成る、神経ペプチドYアゴニストもしくはアンタゴニストの同定方法。
36.潜在的なアゴニストもしくはアンタゴニスト分子を態様18に記載の膜もしくは膜調製物と接触させることを含んで成る、神経ペプチドYアゴニストもしくはアンタゴニストの同定方法。
37.態様36に従って同定される化合物を含んで成る神経ペプチドYアンタゴニスト。
38.哺乳動物に、態様37に記載の神経ペプチドYアンタゴニストの食欲抑制量を投与することを含んで成る、哺乳動物の食欲の抑制方法。
39.アンタゴニストの量が約0.01から約100mg/kgまでである、態様38に記載の哺乳動物の食欲の抑制方法。
40.製薬学的に許容できる担体と一緒になって態様37に記載のアンタゴニストの有効な食欲抑制量を含んで成る製薬学的組成物。
41.態様36に従って同定される化合物を含んで成る神経ペプチドYアゴニスト。
42.哺乳動物に、態様41に記載の神経ペプチドYアゴニストの食欲刺激量を投与することを含んで成る、哺乳動物の食欲の刺激方法。
43.アゴニストの量が約0.01から約100mg/kgまでである、態様42に記載の哺乳動物の食欲の刺激方法。
44.製薬学的に許容できる担体と一緒になって態様41に記載のアゴニストの有効な食欲刺激量を含んで成る製薬学的組成物。
45.配列番号1、配列番号3および配列番号5から成る群から選ばれる1個と本質的に同じ配列を有する核酸を発現する非ヒトトランスジェニック哺乳動物。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】COS−7細胞で一過性に発現されたY5レセプター膜に対する[125I]PYYの多様なペプチドの競争曲線を表す。
【図2】COS−7細胞で一過性に発現されたY5レセプター膜に対する[125I]PYYの特異的結合の飽和曲線を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号5に示される核酸配列からなる単離された核酸分子。
【請求項2】
配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる単離されたタンパク質。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−252375(P2007−252375A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71569(P2007−71569)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【分割の表示】特願平9−536435の分割
【原出願日】平成9年4月8日(1997.4.8)
【出願人】(392010599)バイエル・コーポレーシヨン (12)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CORPORATION
【Fターム(参考)】