説明

神経再生

本出願は、神経を再生する方法であって、プロモーターに作動的に連結されたトランスフォーミング成長因子スーパーファミリーのタンパク質の1メンバーをコードするDNA配列を含む組換えウイルスベクターまたはプラスミドベクターを作成する段階;インビトロにおいて、培養細胞の集団を組換えベクターでトランスフェクトし、該培養細胞集団を得る段階;およびトランスフェクトされた細胞を、損傷した神経の近くの領域に移植し、該損傷した神経の近くの領域内でのDNA配列の発現に起因して神経の再生が生じるようにする段階を含む方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野:
本発明は、細胞ベースの治療を使用する、神経変性の予防および神経再生の促進に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術の全般的背景および水準:
損傷した神経の神経再生に関して多数の研究が行われている。一般に、末梢神経の外傷性損傷の臨床外科的処置では、まず損傷の局所的部位の近くの損傷した組織を取り除き、末梢神経の再生を可能にする環境を提供することを含む、複雑な一連の段階が使用される(Kline, J Neurosurg, 1989, 70: 166-174)。外科的処置の過程には、典型的に、損傷領域の上部と底部を直接連結または融合することが含まれる(Kline and Judice, J Neurosurg, 1983, 58: 631-649)。別の外科的方法、例えば末梢神経移植(Millesi, Clin Orthop, 1988, 237: 36-42)ならびにより保守的な外来患者の処置、例えば有益な筋肉の収縮を生じさせるための電気刺激の維持では、筋肉−神経接合部の変性を阻害しつつ、神経の自発的な再生を待つ(Kim et al., Korean Academy of Rehabilitation Medicine (Korean), 1999, 23: 893-8983; al-Amood et al., J Physiol (Lond), 1991, 441: 243-256)。最後に、大多数のこれらの手順には広範な理学療法がさらに含まれ、その療法には、筋肉の衰弱および収縮を予防し、神経の副軸索の出芽を促進するための長期の制御された運動療法が含まれる(Pyun et al., Korean Academy of Rehabilitation Medicine (Korean), 1999, 23: 1063-1075)。
【0003】
機械的な整形外科用装置を使用して、関節を保護し、患部の周囲の筋肉および靭帯の損傷を予防することがよくある(Gravois, Physical Medicine and Rehabilitation, Massachusetts: Blackwell Science, 2000, pp432-433)。さらに、神経再生に関する種々の実験的技術には、神経を連結するための生合成チューブの使用も含まれ、あるいはそれらの技術は医薬品と併用されて、神経の損傷を減少させ、神経の再生を刺激するために包括的に役立つ(al-Amood et al., J Physiol (Lond), 1991, 441: 243-256; Dumitru, In: Dumitru, editor. Electrodiagnostic medicine, 1st ed, Philadelphia: Hanley & Belfus, 1995, pp341-384; Ebara and Nakayama, Spine, 2002, 16S: S10-S15; Horowitz, Muscle Nerve, 1989, 12: 314-322; Matzuk et al., Nature, 1995, 374: 360-363; Mengs, Arch Int Pharmacodyn Therp, 1984, 271(2): 315-323)。
【非特許文献1】Kline and Judice, J Neurosurg, 1983, 58: 631-649
【非特許文献2】Millesi, Clin Orthop, 1988, 237: 36-42
【非特許文献3】Kim et al., Korean Academy of Rehabilitation Medicine (Korean), 1999, 23: 893-8983
【非特許文献4】al-Amood et al., J Physiol (Lond), 1991, 441: 243-256
【非特許文献5】Pyun et al., Korean Academy of Rehabilitation Medicine (Korean), 1999, 23: 1063-1075
【非特許文献6】Gravois, Physical Medicine and Rehabilitation, Massachusetts: Blackwell Science, 2000, pp432-433
【非特許文献7】Dumitru, In: Dumitru, editor. Electrodiagnostic medicine, 1st ed, Philadelphia
【非特許文献8】Hanley & Belfus, 1995, pp341-384
【非特許文献9】Ebara and Nakayama, Spine, 2002, 16S: S10-S15
【非特許文献10】Horowitz, Muscle Nerve, 1989, 12: 314-322
【非特許文献11】Matzuk et al., Nature, 1995, 374: 360-363
【非特許文献12】Mengs, Arch Int Pharmacodyn Therp, 1984, 271(2): 315-323
【非特許文献13】Sambrook et al. Molecular Cloning, Chapter 16, 1989
【非特許文献14】Behringer, et al., Nature, 345:167, 1990
【非特許文献15】Padgett, et al., Nature, 325:81-84, 1987
【非特許文献16】Weeks, et al., Cell, 51:861-867, 1987
【非特許文献17】Mason, et al., Biochem, Biophys. Res. Commun., 135:957-964, 1986
【非特許文献18】Thomsen, et al., Cell, 63:485, 1990
【非特許文献19】Sampath, et al., J. Biol. Chem., 1990, 265: 13198-13250
【非特許文献20】Massague, Cell 49:437, 1987
【非特許文献21】Ung, et al., Nature, 321:779, 1986
【非特許文献22】Cheifetz, et al., Cell, 48:409, 1987
【非特許文献23】Massague, Ann. Rev. Biochem. 67:753-791, 1998
【非特許文献24】Michailov et al., Science, 304, 700-703, 4/30/2004
【非特許文献25】Urist, MR: Bone, formation by autoinduction, Science, 1965, 150(698): 893-899
【非特許文献26】Wang et al., Proc Nat Acad Sci USA, 1988, 85: 9484-9488
【非特許文献27】Wozney, Mol Rep Dev, 1992, 32: 160-167
【非特許文献28】Wozney and Rosen, Clin Orthop, 1998, 346: 26-37
【非特許文献29】Croteau et al., 1999; 22: 686-695
【非特許文献30】Kawabata et al., Cytokine Growth Factor Rev, 1998, 9: 49-61
【非特許文献31】Ebara et al., Biochem Biophys Res Commun, 1997, 240: 136-141
【非特許文献32】Imamura et al., Nature, 1997, 389: 549-551
【非特許文献33】Bai et al., J Biol Chem, 2000, 275: 8267-8270
【非特許文献34】Yoshida et al., Cell, 2000, 103: 1085-1097
【非特許文献35】Wang et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2000, 97: 14394-14399
【非特許文献36】Zuh et al., Nature, 1999, 400: 687-693
【非特許文献37】Farkas et al., J Neurosci, 1999, 92: 227-235
【非特許文献38】Mohans et al., Invest Ophthalmol Vis Sci, 1998, 39: 2626-2636
【非特許文献39】Zou and Niswander, Science, 1996, 272: 738
【非特許文献40】Lianjia and Yan, Clin Orthop, 1990, 257: 249-256
【非特許文献41】Lefer et al., J Mol Cell Cardiol, 1992, 24: 585-593
【非特許文献42】Ripamonti and Duneas, Plast Reconstr Surg, 1998, 101: 227-239
【非特許文献43】De Koning et al., J Neurol Sci, 1986, 74: 237-246
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゆえに、当技術分野では、損傷した神経および特に末梢神経を再生するか、あるいはその変性を予防するための分子的治療方法に関する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
一側面では、本発明は神経を再生する方法であって、下記段階を含む方法に関する:a)プロモーターに作動的に連結されているトランスフォーミング成長因子スーパーファミリーのタンパク質の1メンバーをコードするDNA配列を含む組換えウイルスベクターまたはプラスミドベクターを作成する段階;b)インビトロにおいて、培養細胞の集団を組換えベクターでトランスフェクトし、該培養細胞の集団を得る段階;およびc)トランスフェクトされた細胞を、損傷した神経の近くの領域に移植し、該損傷した神経の近くの領域内でのDNA配列の発現に起因して神経の再生が生じるようにする段階。トランスフォーミング成長因子はBMPであってよい。BMPはBMP−2またはBMP−9であってよい。細胞は結合組織細胞であってよい。好ましくは、細胞は線維芽細胞または神経細胞であってよい。さらに、神経は末梢神経であってよい。ベクターはウイルスベクターであってよい。ベクターは、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターであってよい。さらに、細胞の集団を、移植前に、例えば10%DMSO中で液体窒素条件下で保存してよい。
【0006】
また本発明は、神経を再生する方法であって、下記段階を含む方法に関する:a)ミエリン鞘再生タンパク質をコードするDNA配列を含む組換えウイルスベクターまたはプラスミドベクターを作成する段階;b)インビトロにおいて、培養細胞の集団を組換えベクターでトランスフェクトし、該培養細胞の集団を得る段階;およびc)トランスフェクトされた細胞を、損傷した神経の近くの領域に移植し、該損傷した神経の近くの領域内でのDNA配列の発現に起因して神経の再生が生じるようにする段階。細胞は、結合組織細胞、例えば線維芽細胞、または神経細胞、グリア細胞、またはシュワン細胞であってよい。本方法では、タンパク質はニューレグリン−1であってよい。再生対象の神経は末梢神経であってよい。
【0007】
図面の簡単な説明
本発明は、以下に挙げる詳細な説明、および添付の図面からさらに完全に理解されるようになる。図面は単に例として挙げるものであり、ゆえに本発明を限定するものではない。
【0008】
好ましい態様の詳細な説明
本出願においては、「a」および「an」が単一および複数の対象の両者を表すために使用される。
【0009】
本明細書中で使用される用語「結合組織細胞」または「結合組織の細胞」には、結合組織において見出される細胞、例えば線維芽細胞、軟骨細胞(コンドロサイト)、および骨細胞(骨芽細胞/オステオサイト)が含まれ、それはコラーゲン性細胞外基質を分泌し、ならびに脂肪細胞(アディポサイト)および平滑筋細胞が含まれる。好ましくは、結合組織細胞は、線維芽細胞、軟骨細胞、および骨細胞である。より好ましくは、結合組織細胞は線維芽細胞である。また結合組織細胞には、間葉細胞が含まれ、それは未成熟な線維芽細胞としても知られる。本発明は、結合組織細胞の混合培養、ならびに単一の種類の細胞を用いて実施できることが認識される。
【0010】
本明細書中で使用される、損傷した神経の「近く」の細胞への注射とは、注射部位と損傷した神経の間が、損傷部位で神経再生の効果的な結果が達成されるほど十分に近接しているその領域での注射のことを言う。したがって、損傷した神経の近くの細胞への注射には、損傷の部位または、注射を受けた細胞が有効なポリペプチドを発現し、そのポリペプチドが直接または間接的に神経再生の結果を達成することが許容されるほど十分に近接したどこかの部位での注射が含まれる。
【0011】
本明細書中で使用される「プロモーター」とは、活性であり、真核細胞において転写を制御する任意のDNA配列でありうる。プロモーターは真核および原核細胞のいずれかまたは両者において活性であってよい。好ましくは、プロモーターは哺乳類細胞において活性である。プロモーターは構成的に発現されていてもよいし、誘導性であってもよい。好ましくは、プロモーターは誘導性である。好ましくは、プロモーターは外部刺激によって誘導性である。より好ましくは、プロモーターはホルモンまたは金属によって誘導性である。さらにより好ましくは、プロモーターは重金属によって誘導性である。最も好ましくは、プロモーターはメタロチオネイン遺伝子プロモーターである。同様に、転写を制御する「エンハンサー因子」をDNAベクター構築物に挿入し、本発明の構築物とともに使用して、目的の遺伝子の発現を増強することができる。
【0012】
本明細書中で使用される「選択マーカー」には、導入DNAを安定に維持する細胞によって発現されて、改変された表現型、例えば形態的形質転換(morphological transformation)、または酵素活性の細胞による発現を生じさせる遺伝子産物が含まれる。トランスフェクトされた遺伝子を発現する細胞の単離は、選択マーカー、例えば抗生物質または他の薬物に対する耐性を付与する酵素活性を有するものをコードする第二の遺伝子を同細胞に導入することによって達成される。選択マーカーの例には、非限定的に、チミジンキナーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、アミノグリコシド抗生物質、例えばカナマイシン、ネオマイシンおよびジェネテシンに対する耐性を付与するアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、CAD(新生ウリジン生合成の最初の3酵素活性を有する単一タンパク質−カルバミルリン酸シンセターゼ、アスパラギン酸トランスカルバミラーゼおよびジヒドロオロターゼ)、アデノシンデアミナーゼ、およびアスパラギンシンセターゼ(Sambrook et al. Molecular Cloning, Chapter 16, 1989)が含まれる。上記文献は参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。
【0013】
本明細書中で使用される「トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリー」は、胚発生時の広範囲の分化過程に影響する一群の構造上関連するタンパク質を包含する。前記ファミリーには、正常な雄性発生に必要とされるミュラー阻害物質(MIS)(Behringer, et al., Nature, 345:167, 1990)、成虫原基の背側−腹側軸形成および形態形成に必要とされるショウジョウバエのデカペンタプレジック(decapentaplegic)(DPP)遺伝子産物(Padgett, et al., Nature, 325:81-84, 1987)、卵の植物極に局在するアフリカツメガエルVg−1遺伝子産物(Weeks, et al., Cell, 51:861-867, 1987)、アクチビン(Mason, et al., Biochem, Biophys. Res. Commun., 135:957-964, 1986)、これはアフリカツメガエル胚の中胚葉および前側構造の形成を誘発することができる(Thomsen, et al., Cell, 63:485, 1990)、および骨形成タンパク質(BMP、例えばBMP−2、3、4、5、6および7、オステオゲニン(osteogenin)、OP−1)、これは新規軟骨および骨形成を誘発することができる(Sampath, et al., J. Biol. Chem., 265:13198, 1990)が含まれる。TGF−β遺伝子産物は種々の分化過程に影響しうる。その過程には、脂肪生成、筋形成、軟骨形成、血球新生、および上皮細胞分化が含まれる(レビューに関しては、Massague, Cell 49:437, 1987を参照のこと)。上記文献は参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。
【0014】
TGF−βファミリーのタンパク質は大きな前駆体タンパク質として初めに合成され、その後、そのタンパク質はC末端から約110−140アミノ酸の塩基性残基のクラスターの位置でタンパク質分解による切断を受ける。前記タンパク質のC末端領域はすべて構造的に関連し、種々のファミリーメンバーをそのホモロジーの程度に基づいて別個の亜群に分類することができる。特定の亜群内のホモロジーはアミノ酸配列同一性が70%〜90%の範囲であるが、亜群間のホモロジーはかなり低く、概してわずか20%〜50%の範囲である。各ケースにおいて、活性な種は、ジスルフィド結合しているC末端断片の二量体であると考えられる。研究されているほとんどのファミリーメンバーでは、ホモ二量体の種が生物学的に活性であることが見出されているが、インヒビン(Ung, et al., Nature, 321:779, 1986)およびTGF−β(Cheifetz, et al., Cell, 48:409, 1987)のように他のファミリーメンバーでは、ヘテロ二量体も検出されていて、これらはそれぞれのホモ二量体と異なる生物学的特性を有すると考えられる。
【0015】
TGF−β遺伝子のスーパーファミリーのメンバーには、TGF−β3、TGF−β2、TGF−β4(ニワトリ)、TGF−β1、TGF−β5(アフリカツメガエル)、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、OP−1/BMP−7、BMP−8、BMP−9、ショウジョウバエ60A、ショウジョウバエDPP、Vgr1、GDF−1、アフリカツメガエルVgf、インヒビン−βA、インヒビン−βB、インヒビン−α、およびMISが含まれる。多数のこれらの遺伝子はMassague, Ann. Rev. Biochem. 67:753-791, 1998で考察されている。上記文献は参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。
【0016】
好ましくは、TGF−β遺伝子のスーパーファミリーのメンバーはTGF−βである。より好ましくは、そのメンバーは、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、またはBMP−9である。
【0017】
タンパク質をその上記指定の名称で記載する際、そのタンパク質はその野生型の厳密な配列に限定されないことが理解される。タンパク質の配列に関するバリエーションが許容され、それによって、機能に関してそのタンパク質と実質的に同一の活性を示す別のポリペプチド配列が包含されることになる。
【0018】
神経組織
神経組織は脊索の影響下で胚の外胚葉から派生する。外胚葉が誘導されて、肥厚した神経板を形成し、次いでそれが分化し、その末端が最終的に融合して神経管を形成し、その神経管からすべての中枢神経系が派生する。中枢神経系は、脳、脳神経および脊髄からなる。末梢神経系は、神経冠と称される、神経溝に隣接する細胞から派生する。
【0019】
神経組織は、複雑に統合されたコミュニケーションネットワークにおいて、身体全体に分布している。神経細胞(ニューロン)は、非常に単純な回路から非常に複雑な高次の回路までにわたる回路において他のニューロンと情報交換する。ニューロンは実際のメッセージ伝達および統合を行う。一方、グリア細胞と称される他の神経組織細胞は、ニューロンを支持し、保護し、防御し、それに栄養を補給することによってニューロンを補助する。脳にはニューロンと比較して約10倍の多数のグリア細胞が存在する。グリア細胞はニューロンの機能に必要な微小環境を創出し、時には、神経の処理および活性を補助する。ニューロンは興奮性細胞である。これは、適正に刺激された場合に、活動電位を開始することができ、それが細胞膜を超えて伝達されて、遠隔の細胞に情報を伝達するであろうことを意味する。ニューロンは、刺激の受信、伝達および処理を担う独立した機能単位である。
【0020】
一般に、ニューロンは3つの部分からなり;その部分は、核および細胞の細胞小器官が位置する細胞体;環境または他のニューロンからの刺激を受け取る、細胞体から伸長している突起である樹状突起;および、神経インパルスを他の細胞に伝達するための、細胞体から伸長する長い単一の突起である軸索である。軸索は、通常、その遠位の末端で分岐し、別の細胞上で終結する各分岐は球状の末端を有する。終末小体と隣接細胞の相互作用によってシナプスと称される構造が形成される。シナプスは、シグナルを受け取り、それを電位に変換するように特殊化している。
【0021】
ヒトの身体に見出されるほとんどのニューロンは多極性(multipolar)であり、すなわち、それらが2より多くの細胞突起を有し、その1つだけが軸索であり、残りの突起は樹状突起であることを意味する。網膜または嗅粘膜の双極ニューロンは1つの樹状突起を有し、軸索は細胞体に由来する。脊髄神経節に見出される偽単極ニューロンは、樹状突起によって受信された知覚インパルスが、細胞体を通過することなく、軸索に直接伝わることを可能にする。また、ニューロンを機能によって分類してよい。感覚神経は感覚刺激の受信および伝達に関与する。運動ニューロンはインパルスを送信して、筋肉および腺を制御する。他のニューロンである介在ニューロンは機能的ネットワークの部分であるニューロン間の仲介者として働く。
【0022】
シナプスは細胞のシグナルを伝達する特殊化した機能的な細胞の接合部である。ほとんどのシナプスは化学シナプスであり、そのシナプスでは、シナプス前終末の小胞が化学メッセンジャーを含有し、その化学メッセンジャーは、シナプス前膜が刺激されると、シナプス間隙に放出される。化学メッセンジャーはシナプス間隙を横切って拡散し、シナプス後膜の受容体に結合する。これにより、シナプス後膜の分極状態の変化が誘発され、それは細胞の作用に影響する。特殊な種類のシナプスは神経筋接合部である。35種類より多くの神経伝達物質が知られており、そのほとんどは小分子(一酸化窒素、アセチルコリン)、カテコールアミン(ノルエピネフリン、セロトニン)、または神経活性ペプチド(エンドルフィン、バソプレッシン)である。使用後、神経伝達物質は、酵素による分解、拡散またはシナプス前細胞によるエンドサイトーシスによって急速に除去される。
【0023】
ニューロンには、ミエリンと称される絶縁材料に包まれているものもある。この脂質に富む材料は、グリア細胞:末梢神経系ではシュワン細胞、中枢神経系ではオリゴデンドロサイトによって形成される。絶縁によって、脱分極する必要がある膜の表面領域が減少することによって高速な神経伝導が可能になる。有髄ニューロンでは、神経インパルスが、軸索の長さにわたって、ある無髄セグメントからもう1つの無髄セグメントへジャンプする。それはミエリン鞘であり、その組織内ではニューロンの細胞体が欠落し、したがって、大きな末梢神経および脳の白質のように、ある神経組織は白色に見えるようになる。アストロサイトと称される他のグリア細胞は、構造上の統合性、ニューロンの栄養補給および神経組織の微小環境の維持に関与する。アストロサイトはギャップ結合を介して互いに直接情報交換する状態にあり、局所環境の調節によってその管理下のニューロンの生存に影響しうる。上衣細胞は脊髄および脳室に沿って並び、脳脊髄液を分泌する。ミクログリアと称される他の小さいグリア細胞は食作用細胞であり、成体中枢神経系の炎症および修復に関与する。
【0024】
神経組織は興奮性組織であり、電気インパルスの受け取りおよび伝達を可能にする。中心の細胞型はニューロンと称される。ニューロンは、通常、細胞体、入力を受け取る樹状突起、および電位を伝達する軸索を有する。
【0025】
ニューロンは、感覚、運動、分泌または連合ニューロンとして分類してよい。それらは、伝導速度、直径およびミエリンと称される特殊化したリポタンパク質絶縁の存在または不存在によって分類されることが多い。A型線維は有髄であり、12−120m/秒でインパルスを伝導することができる。B型も有髄線維であるが、インパルスを3−5m/秒でしか伝達できない。C型線維は無髄であり、直径が小さく、非常に遅い(2.5m/秒)。A型線維の一例は腓腹筋を神経支配する運動ニューロンである。自律神経節前遠心性ニューロンはB型線維の一例であり、拡散性の痛み(diffuse pain)についての情報を輸送する感覚ニューロンは遅いC型線維の一例である。
【0026】
感覚ニューロンは特定種類の情報を環境から検出するようになっている。これらには、圧力または伸展のようなものを感知する機械受容器、温度受容器、網膜の光受容器、および化学受容器、例えば味蕾または嗅覚に関するものが含まれる。連合ニューロン、または介在ニューロンは、通常、脊髄および脳で見出され、脊髄および脳において、それらは感覚性求心性ニューロンと遠心性運動または分泌ニューロンを連結する。
【0027】
ニューロンは、シナプスと称される構造を介して互いに情報交換する。軸索は1またはそれ以上の終末球で終結し、終末球は多数の小さい小胞を含有する。これらの小さい小胞は、神経伝達物質と称される化学物質で満たされている。アセチルコリンはシナプスで最もよくある神経伝達物質であるが、ニューロンに応じて、他の化学物質、例えばノルエピネフリン、セロトニンおよびGABAが使用されることもある。インパルスが軸索に沿って伝わり、終末球に達すると、小胞はニューロン膜と融合し、神経伝達物質が放出される。そして化学物質は狭いシナプス間隙を横切って拡散し、受け手のニューロンのシナプス後膜上にあるその化学物質に特異的な受容体に達する。
【0028】
神経伝達物質と受容体の相互作用によって膜電位の変化が生じ、シナプス後ニューロンの新たなインパルスが誘発されるであろう。シナプスにはアセチルコリンエステラーゼという酵素が存在し、それがアセチルコリンを分解して、刺激が終わる。他の神経伝達物質は分解されるか、あるいはシナプス前ニューロンに再度取り込まれて、刺激が終わる。
【0029】
中枢神経系では、多数のニューロンが単一のニューロンに集合することがある。各シナプス前ニューロンが、シナプス後ニューロンを伴うそのシナプスに神経伝達物質を放出すると、局所膜電位が発生し、それが統合され、合計される。これらの入力シグナルは阻害性または刺激性であってよい。得られた合計の膜電位がそのニューロンの最小閾値に達すれば、活動電位が開始される。
【0030】
活動電位は、細胞体から離れる一方向に跳躍伝導によって伝わる。最速のニューロンはミエリン鞘に覆われていて、そのミエリン鞘は、ランビエ絞輪と称される裸のニューロン膜の結節によって分けられた別個のセグメントに配置されている。跳躍伝導では、電位が結節から結節へジャンプし、それによって活動電位の伝導に関与する膜領域が減少し、伝導速度が上がる。
【0031】
神経系で見出される非神経性の細胞はグリア細胞と称される。アストロサイトが最も多く、それはニューロンの支持および栄養補給を提供する。ミクログリアは神経組織に特異的な小さな食作用細胞である。脳室系および脊髄中心管に沿って並び、脳脊髄液を作る細胞は上衣細胞と称される。中枢神経系では、オリゴデンドロサイトが複数のニューロンのミエリン鞘のセグメントを形成する。末梢神経系では、ミエリン鞘の各セグメントが単一のシュワン細胞によって作られる。
【0032】
中枢神経系
中枢神経系(CNS)は脳および脊髄からなる。髄膜(硬膜、くも膜および軟膜)は、頭蓋骨および椎骨によって提供される保護に加えて、CNSを保護し、栄養を与える。脳脊髄液は、くも膜下腔、脊柱中心管および脳室で見出される。軟膜は最も内側の層であり、神経組織に癒着している。軟膜と硬膜の間にくも膜層がある。丈夫な線維性の硬膜は頭蓋のすぐ下にある。
【0033】
脳は3つの基本的な領域、前脳、中脳、および脳幹に分けることができる。前脳には、視床、視床下部、基底核、および大脳が含まれる。大脳は、意識的思考、感覚の解釈、すべての随意運動、知的能力、および感情を担う。
【0034】
大脳組織は構造的領域および機能的領域に分けることができる。大脳の表面は回(隆線)および裂溝(溝)に巻き込まれている。皮質感覚野および運動野はそれぞれ中心後回および中心溝に割り当てられうる。感覚野は、視床での処理後に送られる反対側の身体からの知覚情報を受け取る。より多くの感覚神経終末を有する身体の部分ほど、より多くの皮質感覚野によって代表される。運動野は、反対側の身体部分の随意筋運動を制御するが、運動の開始に関しては連合野が重要である。
【0035】
大脳は脳の最大の部分であり、複数の葉を有する右および左の2つの半球に分けられる。前頭葉は、運動野、ブローカ言語野、連合野、ならびに知能および行動の機能を含有する。頭頂葉は、感覚野ならびに感覚および聴覚の機能を含有する。一次視覚連合野は後頭葉に位置し、側頭葉は、聴覚連合野、嗅覚および記憶保存に関する領域を含有する。
【0036】
視床は大脳皮質と脳幹の間に位置する。嗅覚を除くすべての感覚入力はここで処理されてから、脳の他の領域に送られる。視床下部は視床の下に位置し、内部刺激の処理および内部環境の維持を担う。少しずつ時間を追って、血圧、体温、心拍数、呼吸、水代謝、重量モル浸透圧濃度、空腹感、および神経内分泌活性の無意識の制御がここで処理される。下垂体後葉からオキシトシンおよびADHを放出する神経内分泌細胞の核は視床下部に位置する。
【0037】
基底核(尾状核、淡蒼球、黒質、視床下核、赤核)は、大脳の各半球内に包埋されているニューロンの群である。それらは、複雑な運動制御、情報処理および無意識の全体的な意図的運動の制御に関与する。
【0038】
脳幹には、延髄および橋が含まれる。延髄は、重要な機能的領域および、呼吸、心臓反射および血管運動反射の制御に関する中継拠点を含有する。橋は、呼吸の調節に関与する呼吸調節中枢を含有する。
【0039】
小脳は脳幹の上部にあり、他の部位で処理された、身体の位置、運動、姿勢および平衡についての知覚情報を使用する。運動は小脳で開始されるわけではないが、それは協調運動に必要である。
【0040】
末梢神経系
末梢神経系には、神経、神経節、脊髄神経および脳神経であって、脳および脊髄の外側に位置するものが含まれる。脳幹に位置する核から12の脳神経が発生し、特定の位置に伝わっていて、種々の自律神経機能、例えば嗅覚、視覚、唾液分泌、心拍数および皮膚感覚を制御するインパルスを輸送する。脳神経は感覚および運動成分を輸送する点で混在性であることが多いが、運動または知覚線維のみを有することもある。下記の表は脳神経およびその機能を列挙するものである。
【0041】
表1−脳神経
【表1】

【0042】
末梢神経系の感覚部門は種々の種類の受容器から入力を取り込み、それを処理して中枢神経系に送る。感覚入力は、固有受容性感覚(関節および筋肉の位置の感覚)のように内部供給源に由来するか、あるいは皮膚上の圧力または熱の感覚のように外部供給源に由来しうる。特定の脊髄神経によって支配される皮膚の領域は真皮節と称される。感覚入力を収集する求心性線維は、脊髄に伝わり、視床において集合し、最終的に大脳の感覚皮質上で終結する。より多くの感覚受容器を有する領域、すなわち指尖または唇ほど、脳の感覚皮質上のより広い領域に相当する。固有受容性情報を輸送する線維は小脳にも同様に分散する。ほとんどすべての感覚系はインパルスを視床の部分に伝達する。大脳皮質は意識的知覚および感覚刺激の解釈に関与する。
【0043】
筋肉および腺への運動入力は自律神経性および体性遠心系を介して生じる。関節、腱および筋肉のCNS神経支配は体性遠心系を介して伝わる。いくつかの筋肉応答は脊髄反射を介して処理される。その一例は、手指が熱いストーブに接触した場合に見られる逃避反射である。手指を取り除く運動は、痛みの感覚が脳に達するずっと前に単純な脊髄反射を介して生じる。明らかに、それは追加の損傷を回避するための保護機構である。腺および平滑筋への運動入力は、通常、自律神経系を介して生じる。
【0044】
ほとんどの器官は自律神経系の両枝から入力を受け取る。一方の枝は概して興奮性であり、他方はその器官または組織において阻害性である。自律神経系の交感神経枝は身体に生理的ストレスの準備をさせるように働く。交感神経枝の刺激は、それに応じて走るか、あるいは闘う準備を身体がする点で、アクセルを踏むことに似ている。心拍数の増加、気道の拡張およびグリコーゲン貯蔵からのグルコースの動員等の作用が見られる。交感神経は第一胸椎から生じ、第四腰椎に至る。それらは短い節前ニューロンを有し、そのニューロンは、脊柱に沿って位置する神経節鎖の1つで終結する。アセチルコリンは、長い節後ニューロンを有するシナプスでの神経伝達物質であり、そしてそれは標的組織に伝わり、その組織では、大多数の交感神経終末でノルエピネフリンが放出される。少数の交感神経節後ニューロン、例えば汗腺または骨格筋血管系を神経支配するものはアセチルコリンを放出する。
【0045】
副交感神経枝は、CNSの頭蓋部および仙骨部から生じるニューロンを介して交感神経枝と均衡するように働く。例えば、副交感神経の刺激は、気道を収縮させ、心拍数を減少させる。それは休止活性、例えば消化、排尿および勃起を調節する。長い節前ニューロンは、終末器官に近接するシナプスでアセチルコリンを放出する。短い節後ニューロンも効果器官組織上でアセチルコリンを放出する。
【0046】
ミエリン産生細胞による損傷した神経細胞の再生
本発明の一側面では、神経再生が生じるために2つのイベントが生じる必要がある。第一に、再生因子産生細胞、ならびに治療の恩恵を受ける神経細胞が生存可能である必要がある。第二に、ニューロンの髄鞘形成が生じる必要がある。これに関して、種々の異なる細胞型を使用して、この表現型を実現してよい。例えば、細胞の生存を誘発する細胞およびミエリン産生細胞の混合物を一緒に使用して、神経を再生してよい。
【0047】
特に、神経細胞の髄鞘形成は、損傷した神経を再生することによって特に脊髄損傷の治癒に適用可能であることが予測される。この関連では、発現されると髄鞘形成を誘発するタンパク質、例えば軸索のニューレグリン−1(Nrg1)(Michailov et al., Science, 304, 700-703, 4/30/2004)を使用し、神経細胞、例えば非限定的にシュワン細胞で発現させてよい。その場合、神経細胞は単独であるか、あるいはもう1つの同一細胞または異なる細胞型、例えば非限定的にNrg1を発現させてよい線維芽細胞を含めた結合組織細胞と併用される。
【0048】
神経の再生および神経変性からの保護に関するBMPの効果
本発明の具体的で例示的な一側面は、ラットにおける神経損傷後の再生に関する、機能的タンパク質であるBMP−2およびBMP−9の効果を決定することに関する。36匹のSprague-Dawley系統(重量400±10g)のラットを使用し、それらを3群に分けた(対照、BMP−2、およびBMP−9)。ここで、BMP−2またはBMP−9群とは、前記未注射のSprague-Dawleyラットに対して神経損傷が施された後にBMP−2またはBMP−9を発現する細胞を注射される動物群を表すことに留意する。止血鉗子を使用して、坐骨神経上に圧挫傷を施した。対照群では、改変されていない線維芽細胞を含むバッファーのみを注射した。BMP−2およびBMP−9群では、遺伝子改変型線維芽細胞を含むバッファーを注射した(BMP−2:BMP−2を分泌する線維芽細胞、BMP−9:BMP−9を分泌する線維芽細胞)。注射完了後、1)胃−ヒラメ筋で記録された坐骨神経運動伝導についての研究、および2)ヘマトキシリン−エオシン、およびトリクローム変法染色を用いる坐骨神経についての組織学的研究によって再生に対する効果を評価した。
【0049】
神経伝導の研究では、1週の時点で、BMP−2およびBMP−9群において対照群と比較して有意に短い潜時が示され、その後、4および6週のBMP−9群では、他の群と比較して振幅が大きいことが示された(p<0.05)。8週では、すべての群間で潜時の見かけの差はなかったが、BMP−9群では振幅が大きかった。
【0050】
組織学的研究では、2週までにすべての群が深刻な変性(炎症反応を示すこと、軸索の損失および空胞状変化に基づく)を示した。対照群では、4および8週において変性が持続したが、BMP−2群では、炎症および空胞状変化のサイズが有意に減少し、そのうち群の半分しかこれらの所見を示さなかった。BMP−9群では、これらの変化はさらにもっと減少し、それらの3分の1しか軸索の損失および空胞状変化を示さず、炎症は非常に軽度であった。挫傷後の神経再生に関する前記機能的タンパク質の効果はこれらのラットにおいて有意であった。これらの結果は、神経損傷、例えば末梢神経損傷後の神経の再生を示す。
【0051】
TGF−β、アクチビン、およびBMPは発生時の細胞分化、成長および器官形成に関与するタンパク質である。BMPは、成長/分化因子(GDF)、骨原性タンパク質(OP)、およびミュラー阻害物質/抗ミュラーホルモン(MIS/AMH)とともにTGF−βスーパーファミリーのメンバーである(Ebara and Nakayama, Spine, 2002, 16S: S10-S15)。歴史的には、1965年に、Urist(Urist, MR: Bone, formation by autoinduction, Science, 1965, 150(698): 893-899)が、げっ歯類およびウサギの両者の筋肉に脱灰済みの骨基質を挿入した後に、軟骨内骨化に類似の発達初期の骨化および他の過程の現象を観察した。移植後、未分化間葉細胞は走化性によって挿入骨組織に遊走した後、分裂し、融合した。次いで間葉細胞から派生する軟骨芽細胞は細胞外基質を分泌し、軟骨鋳型の形成を可能にした。この細胞外基質には造血および内皮細胞によって血管が新生される。骨芽細胞および破骨細胞が局所的に出現し始め、吸収された軟骨は骨組織に変換された。21日後、骨の髄芯(marrow core)を有する小骨が形成された(Wang et al., Proc Nat Acad Sci USA, 1988, 85: 9484-9488)。脱灰済みの骨基質からのこの変化過程に関連した成分は骨形成タンパク質(BMP)として報告された。
【0052】
1988年には、Wangら(Wang et al., Proc Nat Acad Sci USA, 1988, 85: 9484-9488)が、それぞれウシの骨由来の、16kDa、18kDa、および30kDaの分子量を有する3つのポリペプチドを単離した。Wozneyら(Wozney, Mol Rep Dev, 1992, 32: 160-167)は、後に、前記ポリペプチドをプローブとして使用してヒトRNAおよび対応するDNAを同定した。追跡研究では、少なくとも16の内因性BMPの存在が示された(Wozney and Rosen, Clin Orthop, 1998, 346: 26-37)。
【0053】
BMP1(プロコラーゲンC−プロテアーゼ)を除き、それらはすべてトランスフォーミング成長因子(TGF)−β遺伝子スーパーファミリーのメンバーである(Wozney and Rosen, Clin Orthop, 1998, 346: 26-37)。構造的に、BMPは、15−25アミノ酸のシグナルペプチド、50−375アミノ酸を有するプロドメイン、および100−125アミノ酸を有する成熟末端カルボキシル末端から構成される大きな前駆体型として生産される。後者はよく保存されている7システイン残基を有し、それによって、カルボキシ末端領域がタンパク質分解によるプロセシングによって前駆体から切断された後にペプチド二量体化が可能になる(Croteau et al., 1999; 22: 686-695)。活性な各成熟BMPタンパク質は、同一のモノマーから構成されるジスルフィド結合したホモ二量体または2つの異なる種類のモノマーから構成されるジスルフィド結合したヘテロ二量体として存在する(Sampath et al., J Biol Chem, 1990, 265: 13198-13250)。興味深いことに、タンパク質の二量体化はその活性と関連付けられていて、その場合、ヘテロ二量体であるBMP2およびBMP7が、同一のモノマーから構成されているホモ二量体より強いモルフォゲンであることが示されている(Kawabata et al., Cytokine Growth Factor Rev, 1998, 9: 49-61; Sampath et al., J Biol Chem, 1990, 265: 13198-13250)。
【0054】
BMPの生物学的活性を利用するために、細胞におけるBMP遺伝子発現の調節およびBMP二量体化の機構を理解することが必要である。BMPの遺伝子発現についてはあまり知られていないが、塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス(bHLH)タンパク質によって調節される可能性があることが知られる(Ebara et al., Biochem Biophys Res Commun, 1997, 240: 136-141)。このbHLHタンパク質は3つのドメインから構成されていて、2つの外側ドメインは正の転写活性化因子として働き、中央ドメインは負の調節因子として働く。これらのドメインのうち、E−box(246〜265bpの範囲のDNA配列)はUSF転写因子によって認識され、マウスにおけるBMPの発現の調節に重要な役割を有する。BMPは細胞死経路の調節にもかかわっている。
【0055】
BMPの生物学的活性は、種々の時点で、転写レベルを越えて、また細胞外でさえ、厳しく調節される。細胞の外側では、阻害性タンパク質として働くBMPの受容体がBMPと容易に反応し、BMPの活性の増加に応答して、負のフィードバックシグナルの生産の増強が誘発され、最終的にその調節に至ると考えられる(Ebara and Nakayama, Spine, 2002, 16S: S10-S15)。内側では、細胞はシグナル伝達および抑制性Smadタンパク質の両者によって調節され、すなわちBMPが抑制性Smadタンパク質の発現を上方調節できることを意味する(Ebara and Nakayama, Spine, 2002, 16S: S10-S15)。
【0056】
細胞外レベルでは、細胞はBMP結合性タンパク質、例えばノギンおよびコーディンによって制御される。それらはBMPと細胞受容体の結合を阻害する。ねじれ原腸形成(Twisted gastrulation)(Tsg)はコーディンの機能を増強する(Ebara and Nakayama, Spine, 2002, 16S: S10-S15)。フォリスタチンはOP−1/BMP−7およびBMP−4タンパク質に結合し、BMPを抑制する。(Matzuk et al., Nature, 1995, 374: 360-363)。
【0057】
BMPの受容体
BMPは2つの異なる型(I型およびII型)のセリンスレオニンキナーゼ受容体に結合する。2つのI型受容体および1つのII型受容体が哺乳類で確認されている(Kawabata et al., Cytokine Growth Factor Rev, 1998, 9: 49-61)。哺乳類では、I型受容体はアイソフォームAおよびBを有し、それらは構造的に類似しているが、それらによるSmadタンパク質の活性化においては異なる挙動を示す(Imamura et al., Nature, 1997, 389: 549-551)。シグナル伝達では、I型およびII型受容体は複合体を形成する必要がある。I型受容体はII型受容体によって活性化され、そのI型受容体によって細胞中でシグナルが伝達される。細胞中のシグナルはSmadタンパク質によって伝達される。Smad1、Smad5およびSmad8は同一構造に属し、BMPからのシグナルを伝達する。Smad2およびSmad3はTGF−βおよびアクチビンからのシグナルを伝達する。これらのSmadはヘテロマーの複合体を形成し、核に移行して種々の遺伝子を活性化する。Smad6、Tob、SkiおよびSmurf1はこれらの遺伝子の負の調節に関与する。これらのうち、Smad6はBMPの転写を抑制し、また、BMPシグナル伝達経路の負のフィードバックに役割を有する(Bai et al., J Biol Chem, 2000, 275: 8267-8270)。Tobは増殖抑制タンパク質ファミリーのメンバーであり、BMP/Smadシグナルの負の調節に関与する(Yoshida et al., Cell, 2000, 103: 1085-1097)。Ski腫瘍性タンパク質はBMP−シグナル伝達およびBMP−応答遺伝子の発現を抑制し、BMPの特性であるSmad複合体との直接反応によってBMPの活性化を抑制する(Wang et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2000, 97: 14394-14399)。Smurf1はユビキチンリガーゼのHectファミリーに属し、受容体調節型Smadと選択的に結合することによってBMPのシグナル伝達を阻害する(Zuh et al., Nature, 1999, 400: 687-693)。
【0058】
さらにBMPファミリーのタンパク質の機能に関する研究が進行中であり、それらは胚形成期に神経系(Farkas et al., J Neurosci, 1999, 92: 227-235)、眼(Mohans et al., Invest Ophthalmol Vis Sci, 1998, 39: 2626-2636)、肺、腎臓、前立腺、生殖器および毛包を含めた基本的な身体形成のスキームに関与するようである。例えば、手指および手指の間のスペースの形成は、BMPによって誘発される手指の間の細胞のアポトーシスに起因することが報告されている(Zou and Niswander, Science, 1996, 272: 738)。
【0059】
BMPは胚形成期に骨格系の形成、分化および治癒に関与する。出生後の骨格系では、BMPは、脳基質、骨膜細胞および、造血要素で満たされたマトリックスの間葉細胞のコラーゲン中に存在する。またBMPは骨肉腫および軟骨肉腫からも単離されている(Lianjia and Yan, Clin Orthop, 1990, 257: 249-256)。骨折後に、BMPは吸収された骨基質中で拡散し、骨芽前駆細胞を活性化し、そしてより多くのBMPが生産される。BMPの分布は処置の時期および骨折の位置に依存し、相互反応によってさらに複雑であることもある。BMPの研究は、その保護または再生効果を研究するために種々の他の組織でも実行されていて、心筋の虚血および再灌流における心筋の機能に関する保護効果(Lefer et al., J Mol Cell Cardiol, 1992, 24: 585-593)、BMPを腹腔に注射した後に大脳虚血を誘発する実験における広範囲の神経系に関する保護効果、および損傷した腎臓に関する再生効果(Ripamonti and Duneas, Plast Reconstr Surg, 1998, 101: 227-239)を有することが実証されている。
【0060】
本出願では、末梢神経の分化に関与するBMPが、有益にも、無処置群の治癒過程と比較された場合に損傷した神経を治癒することが示される。
【0061】
インビボおよびエクスビボの方法
本発明は、目的の部位に遺伝子を送達するエクスビボの方法に限定されない。インビボの方法も意図される。同様に留意すべきは、注射の部位内で所望のタンパク質を発現することができる限り、任意のベクターを使用してよいことである。目的の遺伝子を発現するために有効に使用できる限り、ベクターはプラスミドまたは任意の数のウイルスベクターであってよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
本発明の範囲は、本明細書中に記載の具体的態様によって限定されないものとする。実際、本明細書中に記載の改変に加えて、前記説明および添付の図面から当業者には本発明の種々の修飾が自明になる。このような修飾は特許請求の範囲内に入るものとする。以下、実施例を提供するが、それらは本発明を例証するためのものであり、限定するためのものではない。
【実施例1】
【0063】
実施例
実施例I−材料および方法
材料
この研究では、体重400±10gの成熟Sprague-Dawley 系統ラット(16〜18週齢)を使用した。成熟ラットを使用する理由は、成長段階のラットと比較して、神経再生に起因する変化および生理的変化を観察するのが容易であるからである。
【0064】
方法
機能的タンパク質であるBMPを末梢神経に注射することは技術的に困難である。ゆえに、この研究では、BMP2およびBMP9を産生するラット線維芽細胞を末梢神経に直接トランスフェクトして、BMP2およびBMP9が局所的に分泌されるようにした。トータルで36匹のラットを3群に分けた。各群は損傷した神経を有する12匹のラットから構成されていた。第一の群は対照群であり、導入遺伝子を含まない改変されていない線維芽細胞で処置された損傷した神経を有するラットが含まれる群であった。第二の群(BMP2群)は、BMP−2導入遺伝子を含む遺伝子改変型線維芽細胞で処置された損傷した神経を有するラットから構成され、第三の群(BMP9群)は、BMP−9導入遺伝子を含む遺伝子改変型線維芽細胞で処置された損傷した神経を有するラットから構成される群であった。処置の2、4、および8週後に、各群から2匹のラットを犠牲にし、両肢から坐骨神経を回収することによって組織の組織学的検査を実施した。また、肢由来の坐骨神経を用いて神経の運動性伝導の研究を実施した。この研究は、実験前に元のベースライン値を設定し、外科手術の8週後まで1週おきに神経伝導を測定することによって行った。
【0065】
神経損傷
白色ラットの腹腔に300mg/Kgの濃度で4%抱水クロラールを注射することによって麻酔した。右肢の後側および大腿部から毛を除去した後、腹臥位で固定した。potadineおよび70%アルコールで大腿部を殺菌した後、大腿部の中心部分の周りの約1〜1.5cmの表皮を垂直に切開し、大腿二頭筋を外側に引っ張って坐骨神経を露出させた。DeKoningら(De Koning et al., J Neurol Sci, 1986, 74: 237-246)にしたがって神経損傷を施した。それは、大腿と全膝関節の間の皮膚を長さ2〜2.5cmに切開し、後側および全膝関節筋肉を剥脱して坐骨神経を露出させ、次いで坐骨ヘルニアの位置で露出させた神経を止血鉗子(Crile,15cm)で30秒間押しつぶして損傷させることによって行った。鉗子は3つの異なるレベルの握り強度にセットすることができ、固定部での神経損傷に関して同一レベルの握りを適用するために、鉗子上の末端から5cmの位置に黒い線をひき、最強の握りレベルによる固定部での圧挫傷を可能にした。止血鉗子を除去した後、第一の、すなわち対照群では、超微細な針(30ゲージ)を使用して、神経損傷領域の2mm以内に、改変されていない線維芽細胞(単位:5x10細胞/50μl)0.05mlを含むバッファーを注射した。第二および第三の実験群では、同法によって、それぞれBMP2およびBMP9を分泌する遺伝子改変型線維芽細胞を注射し、その後、創傷領域を縫合し、殺菌した。
【0066】
神経伝導試験
ラットを4%抱水クロラールで麻酔した後、神経伝導試験を実施した。坐骨切痕を刺激するための活性記録用電極を腓腹筋上に配置し、基準電極を足上に配置し、接地電極を刺激用電極と記録用電極の間に配置した。パッチ様電極を記録用電極として使用し、針電極を使用することによって接地電極を皮膚の下に配置した。KeyPoint(Dantec, Denmark)を使用して神経伝導試験を行った。この研究では、頻度、記録印刷速度、および記録感度を、それぞれ2〜10,000Hz、2msec/区画(division)、5mV/区画としてセットした。神経伝導試験を2週毎に実施した。実験の開始から測定を実施し、以後2、4、6、および8週の時点で追跡した。ベースラインと負極点(negative electrode point)の間の振幅によって試験中の潜時および振幅を測定した。神経伝導研究に関して各群から5匹のラットを選択し、両方から10測定値を取得した。実験室およびラットの温度はそれぞれ25℃および30℃で維持した。
【0067】
病理学的/組織学的組織検査
正常な神経を検査することによって損傷後の天然の治癒を観察するためにラット由来の神経組織の検査を実行し、その後、実験の開始からそれらを損傷させた。4匹のラット(8神経)を使用し、導入遺伝子手順を欠いている細胞を用いて神経の再生を観察した。各群から2匹のラット(4神経)をランダムに選択し、2、4、および8週後に組織を検査した。組織検査では、麻酔されたラットの圧挫傷の領域から約2cmの坐骨神経を剥脱した。緩衝ホルムアルデヒド溶液で固定し、次いでヘマトキシリン−エオシン(H&E)およびトリクローム変法(MT)染色で染色した後に、光学顕微鏡下で神経組織の変化を観察した。
【0068】
データ解析
神経損傷の2、4、6および8週後に、各群由来の複合筋の活動電位の最大振幅および潜時の期間の変化を参照群と比較することによって分析し、SPSS−PCプログラムによって統計分析を実行した。ANOVAおよびt検定によって各群間の比較を実施し、有意水準を0.05で設定した。損傷および再生の程度は、病理学者によって解釈されるように、組織学的データによって決定した。
【実施例2】
【0069】
実施例II−体重変化
当初、ラットの体重は400±10gの範囲であった。その後の体重変化は表2に示される通りである。2週の時点では、各群間で差が観察されなかったが、4および6週の時点では、BMP9群が他の群と比較していくらかの差を示した(p<0.05)。8週の時点では、群間で統計学的に有意な差はなかった(p>0.05)(表2)。
【0070】
表2.実験群における体重の変化
【表2】

【実施例3】
【0071】
実施例III−潜時の変化
実験前に各群からランダムに測定されたベースラインデータは1.44±0.11msecの潜時を示した。外傷後の潜時は、2および4週の時点で、対照群、BMP2群およびBMP9群の間で差を示したが、統計学的有意性を欠いた(p>0.05)。6週の時点でBMP2およびBMP9群の潜時は対照群と比較して有意に短かった(p<0.05)。しかし、8週の時点では3群間で潜時の差はなかった(p>0.05)(表3)。
【0072】
表3.群における潜時の変化
【表3】

【実施例4】
【0073】
実施例IV−振幅の変化
実験前に各群からランダムに測定されたベースラインデータは23.9±4.3mVの振幅を示した。外傷の2および4週後の時点でBMP9群の振幅は対照群と比較して有意に増加した(p<0.05)。6週の時点でBMP2およびBMP9群は対照群と比較して有意差を示し(p<0.05)、8週の時点では、BMP9、BMP2および対照群の順で有意差が示された(p<0.05)(表4)。
【0074】
表4.振幅の変化
【表4】

【実施例5】
【0075】
実施例V−組織学的および病理学的観察
各群からランダムに選択されたラットの組織学的神経組織検査では、図1〜図10に示されるように神経生理学的検査の結果と同様の変化が示された。対照群は最も遅い回復速度を示した。その根拠は、神経組織の軸索が再生されず、炎症反応が残っていたことである。初期では、トランスフェクトされたBMP2またはBMP9を分泌する遺伝子改変型線維芽細胞の群は、対照群と比較して全く有意差を示さず、2週の時点では、すべての群が、神経の圧挫傷に起因する深刻な病理学的徴候、例えば空胞状変化および炎症性単球の浸潤、神経上膜静脈の出血を示した。対照群では、これらの症状が8週間にわたって持続した。しかし、BMP2群では、炎症および空胞状変化のサイズが有意に減少し、4および8週の時点では、それらの半分しか前記症状を示さなかった。BMP9群では、4および8週の時点でこれらの効果がさらに顕著であり、それらの3分の1しか、軸索の損失、および空胞状変化を示さず、さらに非常に軽度の炎症を示した。
【0076】
本明細書中で引用されるすべての参考文献は参照によりその全体が組み入れられる。
【0077】
当業者は、本明細書中で特に記載される発明の具体的態様に等価な多数の態様を認識し、あるいは単に日常的な実験法を使用して確かめることができる。このような等価な態様は特許請求の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1A−1Bは、BMP−9群における損傷の2週後のラット坐骨神経の顕微鏡検査を示し、軸索およびミエリン鞘の非常に深刻な変性、および顕著な空胞状変化が示される。図1A−1Bはまた、神経周囲の軟部組織での単核炎症細胞の顕著な浸潤を示す。(A;H&E染色,B;トリクローム変法染色200×)
【図2】図2A−2Bは、BMP−9群における損傷の4週後のラット坐骨神経の顕微鏡検査を示し、約70%の損傷領域が空胞状変化によって占められていることが示される。いくつかのミエリン消化区画が認められ、軽度の神経内線維症も認められる。(A;H&E染色,B;トリクローム変法染色200×)
【図3】図3A−3Cは、BMP−9群における損傷の8週後のラット坐骨神経の顕微鏡検査を示し、約50%の軸索において空胞状変化が示される。深刻な単核炎症細胞が神経鞘のスペースに浸潤している。また限局的出血が神経束に存在する。(A;H&E染色×200,B&C;それぞれトリクローム変法染色200×&100×)
【図4】図4A−4Bは、BMP−9群における損傷の8週後のラット坐骨神経の顕微鏡検査を示し、約33%の軸索において空胞状変化が示される。いくつかの単核炎症細胞が神経鞘のスペースに残っている。(A&B;トリクローム変法染色200×)
【図5】図5A−5Bは、BMP−2群における損傷の2週後のラット坐骨神経の顕微鏡検査を示し、ほとんどの軸索において空胞状変化が示される。軸索の萎縮および脱髄が中央に認められる。(A&B;それぞれトリクローム変法染色100×&200×)
【図6】図6A−6Bは、BMP−2群における損傷の4週後のラット坐骨神経の顕微鏡検査を示し、約半分の軸索において空胞状変化が示される。脱髄が認められ、軽度の神経内線維症を伴う。(A&B;それぞれトリクローム変法染色100×&200×)
【図7】図7A−7Bは、BMP−2群における損傷の8週後のラット坐骨神経の顕微鏡検査を示し、約半分の軸索において空胞状変化が示される。いくつかの単核炎症細胞が神経鞘のスペースに残っている。(A&B;それぞれトリクローム変法染色100×&200×)
【図8】図8A−8Bは、偽群における損傷の2週後のラット坐骨神経の顕微鏡検査を示し、ほとんどすべての軸索が変性し、単核炎症細胞が軸索の末梢に浸潤していることが示される。神経鞘線維症も認められる(A&B;それぞれトリクローム変法染色100×&200×)。
【図9】図9A−9Bは、偽群における損傷の4週後のラット坐骨神経の顕微鏡検査を示し、約33%の軸索が変性し、空胞状変化が目立つことが示される。(A&B;それぞれトリクローム変法染色100×&200×)。
【図10】図10A−10Bは、偽群における損傷の8週後のラット坐骨神経の顕微鏡検査を示し、約10〜20%の軸索が変性し、空胞状変化が目立つことが示される。(A&B;それぞれトリクローム変法染色100×&200×)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経を再生する方法であって、下記段階を含む方法:
a)プロモーターに作動的に連結されたトランスフォーミング成長因子スーパーファミリーのタンパク質のメンバーをコードするDNA配列を含む組換えウイルスベクターまたはプラスミドベクターを作成する段階;
b)インビトロにおいて、培養細胞の集団を組換えベクターでトランスフェクトし、該培養細胞の集団を得る段階;および
c)トランスフェクトされた細胞を、損傷した神経の近くの領域に移植し、該損傷した神経の近くの領域内でのDNA配列の発現に起因して神経の再生が生じるようにする段階。
【請求項2】
トランスフォーミング成長因子がBMPである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
BMPがBMP−2およびBMP−9である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
細胞が結合組織細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
細胞が線維芽細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
細胞が神経細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
神経が末梢神経である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ベクターがウイルスベクターである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ベクターが、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
移植前に該細胞の集団を保存する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
移植前に、トランスフェクトされた該細胞の集団を液体窒素条件下で10%DMSO中で保存する、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
神経を再生する方法であって、下記段階を含む方法:
a)ミエリン鞘再生タンパク質をコードするDNA配列を含む組換えウイルスベクターまたはプラスミドベクターを作成する段階;
b)インビトロにおいて、培養細胞の集団を組換えベクターでトランスフェクトし、該培養細胞の集団を得る段階;および
c)トランスフェクトされた細胞を、損傷した神経の近くの領域に移植し、該損傷した神経の近くの領域内でのDNA配列の発現に起因して神経の再生が生じるようにする段階。
【請求項13】
細胞が結合組織細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細胞が線維芽細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
細胞が神経細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
細胞がグリア細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
細胞がシュワン細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
タンパク質がニューレグリン−1である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
神経が末梢神経である、請求項12に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2008−504269(P2008−504269A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518217(P2007−518217)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/021993
【国際公開番号】WO2006/002202
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(504346352)ティシュージーン,インク (6)
【Fターム(参考)】