説明

神経損傷の予防及び治療のための組成物並びにその使用方法

外傷性脳損傷(TBI)後の二次的なニューロンの損傷及び炎症を予防又は改善するための方法を開示する。本方法は、かかる治療を必要とする対象に、ニューレグリン(NRG)、NRGの変異体、又は、NRG若しくはNRGの変異体をコードする発現ベクター、を含む有効量の医薬組成物を投与する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年5月23日付けで提出された米国特許仮出願シリアル番号第61/071,901号からの優先権を主張する。当該出願の全体が、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、概して、治療に関し、特に、ニューレグリン(NRG)を用いて、急性CNS損傷等の神経損傷を予防及び治療するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
外傷性脳損傷(TBI)は、先進国及び後進国の両方において、疾病及び死亡の主要な原因となっている。TBIは、軍事戦闘中に頭部損傷を受けて生存している個人において、長期にわたる身体的障害の主要かつ増大する原因となっている。TBIは、閉鎖性頭部損傷又は貫通性頭部損傷に起因し得る。入院する全ての閉鎖性頭部損傷の発生率は、米国において、控えめに、人口100,000人あたり200人と推定される。米国における貫通性頭部損傷の発生率は、100,000人あたり12人と推定され、世界中のあらゆる先進国の中で最も高い。TBI後の急性ニューロン損傷は、損傷部位におけるニューロン組織の急速な壊死をもたらす[Werner,C.et al.,Br J Anaesth,2007.99(1):p.4−9]。この一次的損傷は、重大な神経障害につながる二次的損傷メカニズムの進行によって、時間及び日数が経つに連れて悪化する[Xiong,Y.,et al.,Biochem Biophys Res Commun,2001,286(2):p.401−5;Xiong,Y.,et al.,J Neurotrauma,1998.15(7):p.531−44;Sullivan,P.G.,et al.,Exp Neurol,2000.161(2):p.631−7;Sullivan,P.G.,et al.,Neuroscience,2000.101(2):p.289−95]。ニューロン組織の悪化の進行を遅らせることは、初期外傷後の現実的時間枠において臨床的介入を適用し得るという希望を与える。TBIは、脳浮腫及び遅発性神経細胞死の一因となる神経炎症病理学的後遺症によって特徴付けられる[Schumacher,M.,et al.,Pharmacol Ther,2007.116(1):p.77−106;Stein,S.C.,et al.,Neurocrit Care,2004.1(4):p.479−88]。これまでに、二次的損傷の進行を有効に抑えることを目標とした薬物学的治療方法は存在しない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様は、外傷性脳損傷(TBI)後の二次的なニューロンの損傷及び炎症を予防又は治療するための方法に関する。本方法は、かかる治療を必要とする対象に、NRG、NRGの変異体、又は、NRG若しくはNRGの変異体をコードする発現ベクターを含む有効量の医薬組成物を投与する工程を含む。
【0005】
一実施形態において、本方法は、(1)NRG又はNRGの変異体、及び、(2)NRG又はNRGの変異体をコードする発現ベクター、を含む有効量の医薬組成物を対象に投与する工程を含む。
【0006】
本発明の別の態様は、急性CNS損傷を予防及び治療するための方法に関する。本方法は、かかる治療を必要とする対象に、NRG、NRGの変異体、又は、NRG若しくはNRGの変異体をコードする発現ベクターを含む有効量の医薬組成物を投与する工程を含む。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、外傷性脳損傷(TBI)後の二次的なニューロンの損傷及び炎症を予防又は治療するためのキットに関する。本キットは、(1)NRG、NRGの変異体、又は、NRG若しくはNRGの変異体をコードする発現ベクター、及び、(2)NRG、NRGの変異体、又は、発現ベクターを使用するための説明書を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、アポトーシスを起こした及び変性したニューロンにおけるErbB4受容体の発現を示す複合写真である。ErbB4の免疫組織化学後、ラットMCAOからの脳切片を、変性したニューロンに対するマーカーであるFluoro−Jadeを用いて染色した。皮質中の多くのニューロンは、Fluoro−Jade−陽性(A;緑色)である。ErbB4陽性細胞(B;赤色)は、Fluoro−Jade−陽性ニューロン(C;黄色)中で共局在化した。同様に、同側脳の細胞サブ集団では、TUNEL染色(D;緑色)及びerbB4(E;赤色)は、二重標識した(F;黄色)。矢印は二重標識した細胞の例を示す。目盛りは、パネルA−Cにおいては、40μMであり、パネルD−Fにおいては、20μMである。
【0009】
【図2】図2は、MCAO後の、星状細胞においてではなく、マクロファージ/ミクログリアにおけるerbB4の発現を示す複合写真である。同側大脳半球からの切片を、erbB4(パネルA)及びGFAP(パネルB)に対する抗体を用いて二重標識した。梗塞周囲領域の細胞は、erbB4及びGFAPの共局在化を示さなかった(パネルC)。erbB4(緑色)及びMac−1/CD11b(赤色)の共局在化は、erbB4がマクロファージ/ミクログリアのサブ集団中に見られることを示した(パネルD)。二つの矢印は、二重標識した細胞の例を示す。目盛りは、パネルA−Cにおいては、40μMであり、パネルDにおいては、20μMである。
【0010】
【図3】図3は、NRG1βによる処理が、MCAO/再潅流によって誘発される脳梗塞を減少させることを示す複合写真及びグラフである。代表的な2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)染色された脳切片を、MCAO前に、ビヒクル(パネルa;n=11)、NRG−1β(パネルb;n=7)又はNRG−1α(パネルc;n=3)を注入したラットによって示す。ビヒクル及びNRG−1で処理した動物の脳における梗塞容積をグラフに示す(パネルd)。値は、平均±SEMとして表し;*は、各ビヒクル処理した動物と有意に異なることを表す(P<0.01)。Cortex(大脳皮質);Striatum(線条体)
【0011】
【図4】図4は、ラット脳において、NRG1βが、MCAO/再潅流によって誘発されるアポトーシス性傷害を抑制することを示す複合写真である。ラットは、1.5時間、MCAOに供し、次に、24時間、再潅流させた(代表的な図を、ラット脳切片のTUNEL標識に関して示す;各条件に対して、n=5)。TUNEL染色は、MCAO後に、皮質(パネルa)及び線条体(パネルb)に見られたが、NRG1β処理されたラットにおいて、皮質ではTUNEL染色は見られず(パネルc)、線条体では減少したレベルで見られる(パネルd)。冠状脳イメージ(〜ブレグマ+1.2mm)は、切片中に見られる領域を示す(パネルe)。目盛りは、100μMである。
【0012】
【図5】図5は、NRG1による処理が、MCAO/再潅流によって誘発される脳梗塞を減少させることを示す複合写真及びグラフである。代表的なTTC染色された冠状脳切片を、ラットに、ビヒクル(パネルa)又はMCAO直後にNRG−1(パネルb)を注入し、再潅流の4時間後(パネルc)の状態について示す。ビヒクル(n=10)又はMCAO直後にNRG−1で処理して(R0;n=8)、再潅流の4時間後(R4;n=6)又は再潅流の12時間後(R12;n=8)のラットの脳における梗塞容積をグラフに示す(パネルd)。値は、各実験条件に対して、全ての梗塞容積の平均±SEMとして表し;*は、各ビヒクル処理した動物と有意に異なることを表す(P<0.01)。時間記録(パネルe)は、MCAOプロトコール及びNRG1注射を示す。
【0013】
【図6】図6は、NRG−1の投与が、神経学的転帰において大きな改善をもたらしたことを示すグラフである(*は、P<0.01であることを示す)。NRG1を、MCAO及び再潅流の4時間後に投与した。神経機能は、0〜4(正常スコア0、最大欠陥スコア4)のスケールで等級分けした。全ての動物を手術前(対照;n=14)及びNRG−1又はビヒクルによる処理後に試験した。NRG1処理群(n=9)は、ビヒクル処理したラット(n=5)と比較して、神経スコア(Neurological Score)が33%の改善を示した。
【0014】
【図7】図7は、NRGlβが、MCAO後におけるミクログリア及び星状細胞の活性化を防止することを示す複合写真である。ラットを、24時間の再潅流後にMCAOに供した(各条件に対してn=5)。NRG1β又はビヒクルを、ECA内に注入した。切片を、ED−1に対する抗体を用いて、免疫組織化学のために標識した。対側には染色は見られなかったが(パネルa)、ビヒクル処理した動物においては、MCAO後の同側大脳半球中に、ED−1標識された細胞が存在する(パネルb)。NRG1βを用いて処理した動物においては、ED−1陽性細胞はほとんど見られなかった(パネルc)。ED−1細胞の例を矢印で示す。目盛りは50μMである。星状細胞の活性化を評価するために、切片を、GFAPに対する抗体を用いて、免疫組織化学のために標識した。対側の対照(パネルa)と比較して、濃いGFAP染色が、ビヒクル処理した動物では、MCAO後の梗塞境界部において見られる(パネルe)。しかしながら、ラットを、NRG−1βを用いて処理した場合には、GFAPの発現は、梗塞周辺部において劇的に減少した(パネルf)。*は、梗塞中心、又は、対側対照における対応する領域を示し;#は、非虚血性組織、又は、対側対照における対応する領域を示す。目盛りは100μMである。
【0015】
【図8】図8は、NRG1βが、MCAO/再潅流によって誘発されたIL−1β mRNAレベルを低減することを示す複合写真及びグラフである。ラットを、NRG1β又はビヒクルを用いて処理し、次いで、MCAOに供した。RNAを単離し、IL1βのmRNA発現をRT−PCRによって測定した。IL−1(パネルa)及びGAPDH(パネルb)のmRNA発現を示す(各条件に対してn=4)。パネルcは、GAPDHに対して正規化した後、ビヒクル処理した対照群と比較した、NRG1β処理したラットからのIL−1 mRNAレベルにおける変化の平均パーセンテージ(mRNAの変化の倍数)±SEMを示す(*はP<0.05であることを示す)。I=同側大脳半球;C=対側大脳半球。
【0016】
発明の詳細な説明
本願のファイルは、カラーで表された少なくとも1つの図面を含む。カラーで表された図面を含む本願のコピーは、請求して、必要な料金を支払うことにより、米国特許商標局によって提供されるであろう。
【0017】
本発明の実施には、特に示されない限り、当技術分野における分子生物学、細胞生物学、神経学、生化学及び微生物学の従来からある方法が利用されるであろう。かかる技術については、文献中に十分に説明されている。本明細書において引用されている全ての刊行物、特許、及び特許出願(上記のものであれ、下記のものであれ)は、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0018】
本発明の一態様は、外傷性脳損傷(TBI)後の二次的なニューロンの損傷及び炎症を予防又は改善するための方法に関する。本方法は、かかる治療を必要とする対象に、NRG、NRGの変異体、又は、NRG若しくはNRGの変異体をコードする発現ベクターを含む有効量の医薬組成物を投与する工程を含む。
【0019】
NRG及びNRG変異体
本明細書において使用する場合、用語「ニューレグリン(NRG)」とは、神経系の発達に関与する、NRG1(Entrez GeneID 3804)、NRG2(Entrez GeneID 9542)、NRG3(Entrez GeneID 10718)及びNRG4(Entrez GeneID 145957)等のタンパク質のファミリーのことをいう。本明細書において使用する場合、用語「NRG1」は、アセチルコリン受容体誘導活性(ARIA)、グリア細胞増殖因子(GGF)、ヒレグリン及びニュー(neu)分化因子(NDF)等の全てのNRG−1のアイソフォームをも含む[Falls,D.L.,et al.,Cell 1993.72(5):p.801−15;Wen,D.,et al.,Cell,1992.69(3):p.559−72]。NRG−1アイソフォームは、免疫グロブリン様又はシステイン豊富なドメイン、EGF様ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質尾部のいずれかから構成される膜貫通前駆体として合成される[Fischbach,et al,Annu Rev Neurosci,1997.20:p.429−58,18,22;Falls,D.L.,Exp Cell Res,2003.284(1):p.14−30;Talmage,D.A.,et al,J Comp Neurol,2004.472(2):p.134−9]。NRG−1アイソフォームは、選択的mRNAスプライシングによって1つの遺伝子から生成され、その多くは、より大きな膜貫通前駆体の一部として合成される。NRG−1の2つの主要な分類としては、α及びβアイソフォームが挙げられる。NRG−1βアイソフォームは、神経系に多く見られるのに対して、αアイソフォームは、間葉細胞において多くみられる。βアイソフォームは、骨格筋におけるAChRの合成及びSchwann細胞の増殖の刺激に関して、100〜1,000倍強力である[Buonanno,A.,et al.,Curr Opin Neurobiol,2001.11(3):p.287−96]。NRG−1の効果は、erbB2、erbB3及びerbB4を含む上皮細胞増殖因子(EGF)受容体に関連したチロシンキナーゼ受容体の一分類との相互作用が介在すると思われる[Burden,S.,et al.,Neuron,1997.18(6):p.847−55]。NRG−1のEGF様ドメインは、erbB受容体と、下流のシグナル伝達経路との活性化のためには十分であると思われる[Holmes,W.E.,et al.,Science,1992.256(5060):p.1205−10]。NRG−1は、これらの受容体におけるチロシンのリン酸化、続く、Mapキナーゼ、PBキナーゼ及びCDK5等の各種シグナル伝達メカニズムの活性化を促進する[Fu,A.K.,et al.,Nat Neurosci,2001.4(4):p.374−81;Alroy,I.,et al.,FEBS Lett,1997.410(1):p.83−6]。
【0020】
ニューレグリン2(NRG2)は、増殖及び分化因子であるニューレグリンファミリーの新規メンバーである。ErbBファミリーの受容体との相互作用により、NRG2は、上皮細胞、神経細胞、グリア細胞、及びその他の種類の細胞の増殖及び分化を誘導する。この遺伝子は、12個のエクソンから構成され、ゲノム構造は、ニューレグリン1(NRG1)のものと類似している。NRG1及びNRG2は、組織中の異なる部位に作用することにより、別個の生物学的プロセスに介在し、細胞中で異なる生物学的反応を導き出す。NRG2遺伝子は、脱髄性Charcot−Marie−Tooth病の遺伝子座領域近くに位置するが、この病気には関与しない。別個のアイソフォームをコードする代替的転写産物について記述されている(Chang H et al.Nature(1997)387:509−12;Carraway KL et al.(1997) Nature 387:512−6)。
【0021】
ニューレグリン3(NRG3)は、ERBB4受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインとは結合するが、関連するファミリーメンバーであるERBB2又はERBB3とは結合しない。NRG3の結合は、ERBB4のチロシンリン酸化を促進する。NRG3遺伝子の変異は、統合失調症に対する罹患性と関連付けられている(Zhang D,et al.Proc. Natl.Acad.Sci U.S.A.(1997)94:9562−7;Chen PL et al.Am.J.Hum.Genet(2009)84:21−34)。
【0022】
ニューレグリン4(NRG4)は、チロシンのリン酸化による細胞−細胞のシグナル伝達を開始させるために、1型増殖因子受容体(EGFR)を活性化する。NRG4の発現の喪失は、進行した膀胱癌においてよく見られるが、増加したNRG4の発現は、より良好な生存と相関する(Harari D et al.Oncogene(1999)18:2681−9;Memon AA et al.,Br.J.Cancer(2004)91:2034−41)。
【0023】
本明細書において使用する場合、「NRGの変異体」とは、天然のNRGポリペプチドの生物活性又は免疫原性を実質的に損なわずに、1つ又はそれ以上の置換、欠失、付加及び/又は挿入を有する点で、天然のNRGポリペプチドとは異なるポリペプチドである。言い換えれば、変異体NRGポリペプチドの生物活性は、天然のNRGポリペプチドと比較して、50%未満、好ましくは20%未満、増大又は減少されていてもよい。変異体NRGポリペプチドは、N末端のリーダー配列又は膜貫通ドメイン等の1つ又はそれ以上の部分が除去されているものも含む。その他の好ましい変異体は、小さな部分(例えば、1〜30個のアミノ酸、好ましくは、5〜15個のアミノ酸)が、成熟タンパク質のN末端及び/又はC末端から除去されている変異体を含む。
【0024】
修飾及び変更は、NRGポリペプチドの構造において行うことができ、生物学的活性及び/又は免疫原性有する分子を依然として取得することができる。それは、ポリペプチドの生物学的活性を規定する、NRGポリペプチドの相互作用的な能力及び特性であることから、特定のアミノ酸配列の置換をNRGポリペプチド配列(又は、当然、その基礎となるDNAコード配列)において行うことができ、それにもかかわらず、同様の特性を有するポリペプチドを取得することができる。
【0025】
かかる変更を行う場合には、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮することができる。ポリペプチドに相互作用的な生物学的機能が与えられる場合の、ハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当技術分野で一般的に理解されている。アミノ酸残基の相対的なハイドロパシー特性が、得られるポリペプチドの二次構造及び三次構造を規定し、その結果、ポリペプチドとその他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、抗体、抗原等、との相互作用を規定すると信じられている。あるアミノ酸が、類似したハイドロパシー指数を有する別のアミノ酸によって置換され、依然として、機能的に同等のポリペプチドを取得し得ることは、当技術分野において公知である。かかる変更において、ハイドロパシー指数が+/−2の範囲にあるアミノ酸の置換が好ましく、+/−1の範囲にあるアミノ酸の置換が特に好ましく、+/−0.5の範囲にあるアミノ酸の置換がさらに特に好ましい。
【0026】
類似のアミノ酸との置換は、特に、生物学的機能が同等のポリペプチド又はポリペプチド断片が、免疫学的実施形態において使用するために意図される場合には、親水性を基準にして行うこともできる。米国特許第4,554,101号(参照により本明細書に組み入れられる)は、あるポリペプチドの最大の局所的平均親水性は、その隣接するアミノ酸の親水性に支配されているので、その免疫原性及び抗原性と、すなわち、そのポリペプチドの生物学的特性と相関することを記載している。
【0027】
米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値が、アミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);プロリン(−0.5±1);スレオニン(−0.4);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。あるアミノ酸は、類似の親水性値を有する別のアミノ酸と置換することができ、依然として、生物学的に同等のポリペプチド、特に、免疫学的に同等のポリペプチドを取得し得ることが理解される。かかる変更の場合、親水性値が±2の範囲にあるアミノ酸の置換が好ましく、±1の範囲にあるアミノ酸の置換が特に好ましく、±0.5の範囲にあるアミノ酸の置換がさらに特に好ましい。
以上で概説したように、したがって、アミノ酸置換は、一般的に、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、大きさ等のような、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性に基づく。以上の種々の特徴を考慮に入れた典型的な置換は、当業者には周知であり、例えば、アルギニンとリジン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;並びに、バリン、ロイシンとイソロイシンが挙げられる(以下、表1参照)。したがって、本発明は、上記したNRGの機能的又は生物学的同等物を意図する。
【0028】
【表1】

【0029】
NRG変異体はまた、又は或いは、非保存的変更を含んでもよい。好ましい実施形態において、変異体NRGポリペプチドは、5アミノ酸又はそれ未満の置換、欠失又は付加により、天然のNRG配列と異なる。NRG変異体はまた(又は或いは)、例えば、天然のNRGポリペプチドの免疫原性、二次構造、三次構造、及びハイドロパシー特性に最小の影響を及ぼすアミノ酸の欠失又は付加により、修飾してもよい。
【0030】
NRG変異体は、好ましくは、元のNRGポリペプチドに対して、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%の配列相同性を示す。
【0031】
NRG変異体は、翻訳後プロセシング等の天然の工程により、又は、当技術分野において周知の化学的修飾技法により、元のNRGポリペプチドから修飾されるポリペプチドも含む。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、及び、アミノ又はカルボキシル末端を含むポリペプチドの任意の場所で生じ得る。所定のポリペプチドにおける複数の部位において、同じ又は異なる程度で、同じ種類の修飾が存在し得ることが理解されるであろう。また、所定のポリペプチドは、多くの種類の修飾を含んでもよい。ポリペプチドは、例えば、ユビキチン化の結果として、分岐していてもよく、それらは、分岐を有して、又は、分岐を有さず、環状であってもよい。環状、分岐鎖状、及び分岐した環状のポリペプチドは、翻訳後の天然の工程から得られてもよく、合成方法により製造してもよい。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、蛍光団又は発色団の共有結合、ヘム成分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、参加、PEG化、タンパク分解工程、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アルギニン化等のtRNAが介在するタンパク質へのアミノ酸付加、及び、ユビキチン化等が挙げられる。
【0032】
用語「NRG変異体」は、NRG関連ポリペプチド及び非NRG関連ポリペプチドを含む融合タンパク質も含む。融合タンパク質中において、NRG関連ポリペプチドは、NRGの全体又は部分に相当し得る。好ましい実施形態において、融合NRGは、NRGの少なくとも1つの生物学的に活性な部分を含む。
【0033】
本明細書において使用する場合、NRGの「生物学的に活性な部分」は、NRGのアミノ酸配列に十分相同する又は由来するアミノ酸配列を含むNRGの断片を含み、それらは、全長NRGよりも少ないアミノ酸を含み、NRGの少なくとも1つの生物学的活性を示す。通常、NRGの生物学的に活性な部分は、NRGの少なくとも1つの活性を有するドメイン又はモチーフを含む。NRGの生物学的に活性な部分は、例えば、10、25、50、100、200又はそれ以上のアミノ酸長であるポリペプチドであり得る。
【0034】
融合タンパク質中、NRG関連ポリペプチド及び非NRG関連ポリペプチドは、互いにインフレームで融合している。非NRG関連ポリペプチドは、NRG関連ポリペプチドのN末端又はC末端と融合することができる。各ポリペプチドがその二次構造及び三次構造に確実に折り畳まれるのに十分な距離で、NRG関連ポリペプチドと非NRG関連ポリペプチド成分とを分離するために、ペプチドリンカー配列を使用してもよい。かかるペプチドリンカー配列は、当技術分野において周知の標準的技術を用いて、融合タンパク質中に組み込まれる。適当なペプチドリンカー配列は、以下の要素に基づいて選択してもよい:(1)それらの柔軟な伸長構造を取り得る能力;(2)それらのNRG関連ポリペプチド及び非NRG関連ポリペプチド上の機能性エピトープと相互作用し得る二次構造を取り得る能力;及び、(3)ポリペプチドの機能性エピトープと反応し得る疎水性又は荷電性残基の欠如。好ましいペプチドリンカー配列は、gly、asn及びser残基を含む。その他の中性に近いアミノ酸、例えば、thr及びala、もリンカー配列中に使用してもよい。リンカーとして使用し得るアミノ酸配列は、当技術分野において周知である。リンカー配列は、一般的に、1〜約50アミノ酸長であり得る。NRG関連ポリペプチド及び非NRG関連ポリペプチドが、機能性ドメイン同士を分離し、立体干渉を防ぐために使用され得る非必須N末端アミノ酸領域を有する場合には、リンカー配列は必要とされない。
【0035】
発現ベクター
本発明の発現ベクターは、プラスミドベクター及びウイルスベクターを含む。プラスミドベクターは、通常、その中にさらなるDNAセグメントを連結し得る環状二本鎖DNAループを含む。本発明のプラスミドベクターは、NRG又はNRG変異体をコードするポリヌクレオチドと機能し得るように連結されている1つ又はそれ以上の調節配列を、標的細胞中におけるそれらポリヌクレオチドの発現に適した状態で含む。
【0036】
本明細書において使用する場合、用語「調節配列」とは、特定の宿主生物中において機能し得るように連結したコード配列の発現に必要なDNA配列のことをいう。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー及びその他の発現調節因子(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。調節配列は、多くのタイプの宿主細胞における、ヌクレオチド配列の構成的発現を指示するものと、特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば、組織特異的調節配列)とを含む。
【0037】
核酸配列は、別の核酸配列と、前者が後者と機能的関係に配置されている場合、「機能し得るように連結」されている。例えば、プレ配列又は分泌リーダーペプチドに対するDNAは、あるポリペプチドがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合には、そのポリペプチドに対するDNAと機能し得るように連結されており;プロモーター又はエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与える場合には、コード配列と機能し得るように連結されており;或いは、リボソーム結合部位は、それが翻訳を可能にするように配置されている場合には、コード配列と機能し得るように連結されている。一般的に、「機能し得るように連結されている」とは、連結されているDNA配列が連続的であって、分泌リーダーの場合には、連続且つ読み取り相(reading phase)であることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、連続的である必要はない。連結は、都合のよい制限部位におけるライゲーションによって達成される。かかる部位が存在しない場合には、従来の実務にしたがって、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
【0038】
発現ベクターの設計は、標的細胞のタイプ、所望のタンパク質の発現レベル等の要素に依存し得ることが、当業者には理解されるであろう。本発明の発現ベクターを標的細胞中に導入することによって、NRG及びNRG変異体等のタンパク質又はペプチドを産生させることができる。
【0039】
一実施形態において、本発明の発現ベクターは、哺乳動物発現ベクターである。哺乳動物発現ベクターの例として、pCDM8及びpMT2PCが挙げられる。哺乳動物細胞中で使用される場合、発現ベクターの制御機能は、ウイルス調節因子によって提供されることが多い。例えば、通常使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス及びシミアンウイルス40に由来する。
【0040】
別の実施形態において、哺乳動物発現ベクターは、組織特異的調節因子を用いることにより、特定の細胞タイプ(例えば、ニューロン)において選択的にポリヌクレオチドの発現を指示することができる。ニューロン特異的プロモーターとしては、例えば、ニューロフィラメントプロモーターが挙げられる。
【0041】
プラスミドベクターを標的細胞に送達するために、多くの方法が開発されている。送達方法の例としては、限定するものではないが、リポソーム介在性遺伝子導入、死滅アデノウイルスと連結された又は連結されていないポリカチオン性濃縮DNA、リガンド連結DNA、真核細胞送達ビヒクル細胞、光重合ハイドロゲル物質の沈積、手持ち式遺伝子導入粒子銃、電離放射線、核電荷中和又は細胞膜融合が挙げられる。
【0042】
ウイルスベクターとしては、限定するものではないが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、及びアルファウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターは、アストロウイルス、コロナウイルス、オルトミクソウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、又はトガウイルスによるウイルスベクターであってもよい。
【0043】
特定の実施形態においては、発現ベクターからのNRGの発現のレベル及び期間を制御するために調節可能な発現系が使用される:
【0044】
Tet−オン/オフ系。Tet系は、E.coli Tn10トランスポゾンのテトラサイクリン耐性オペロンに由来する2つの調節因子に基づく:tetリプレッサータンパク質(TetR)と、TetRと結合するTetオペレーターDNA配列(tetO)。この系は、「レギュレーター」及び「レポーター」プラスミドの2つの成分から構成される。「レギュレーター」プラスミドは、単純ヘルペスウイルスのVP16活性化ドメインと融合させた変異Tetリプレッサー(rtetR)を含むハイブリッドタンパク質をコードする。「レポーター」プラスミドは、選択された「レポーター」遺伝子を制御するtet反応性因子(TRE)を含む。rtetR−VP16融合タンパク質のみが、TREと結合し、したがって、テトラサイクリン存在下で「レポーター」遺伝子の転写を活性化することができる。この系は、レトロウイルス、アデノウイルス及びAAVを含む多くのウイルスベクター中に組み込まれている。
【0045】
エクジソン系。エクジソン系は、キイロショウジョウバエにおいて見つけられたが、哺乳動物細胞中での誘導性発現のために改変された、脱皮誘導系に基づく。この系は、ヘテロダイマー核受容体を介して対象の遺伝子の発現を活性化するために、キイロショウジョウバエのステロイドホルモンであるエクジソンのアナログ、ムリステロンAを使用する。発現レベルは、哺乳動物細胞の生理機能に影響を及ぼさずに、基底レベルの200倍を超えることが報告されている。
【0046】
プロゲステロン系。プロゲステロン受容体は、通常、特定のDNA配列と結合して、そのホルモンリガンドとの相互作用により転写を活性化するために、刺激される。反対に、プロゲステロンアンタゴニストであるミフェプリストン(RU486)は、ホルモン誘導性の核輸送と、続くDNA結合とをブロックすることができる。RU486との相互作用によって結合が刺激され得る変異型プロゲステロン受容体が作製されている。特定の調節性転写因子を作製するために、プロゲステロン受容体のRU486結合ドメインを、酵母転写因子GAL4のDNA結合ドメイン及びHSVタンパク質VP16の転写活性化ドメインに融合した。キメラ因子は、RU486の非存在下で不活性である。しかしながら、ホルモンの添加によって、キメラタンパク質の構造的変化が誘導され、この変化によって、GAL4結合部位への結合と、GAL4結合部位を含むプロモーターからの転写活性化が可能になる。
【0047】
ラパマイシン系。FK506及びラパマイシン等の免疫抑制剤は、特定の細胞性タンパク質と結合し、それらのダイマー形成を促進することにより、作用する。例えば、ラパマイシンのFK506結合タンパク質(FKBP)との結合は、別のラパマイシン結合タンパク質であるFRAPとのヘテロダイマー形成をもたらす。これは、薬物の除去により可逆的であり得る。薬物の添加によって2つのタンパク質が一緒になるという能力は、転写等の多くの生物学的プロセスの調節を可能にする。キメラDNA結合ドメインはFKBPと融合され、これにより、融合タンパク質の特定DNA結合配列への結合が可能となる。転写活性化ドメインはFRAPとも融合され、これらの2つの融合タンパク質が同じ細胞中で共に発現される場合、ラパマイシンの添加が介在するヘテロダイマー形成によって、十分機能的である転写因子が形成され得る。次に、ダイマー化したキメラ転写因子は、複数のコピー数の合成DNA結合配列を含む合成プロモーター配列と結合させることができる。この系は、アデノウイルス及びAAVベクター中に首尾よく組み込まれている。長期調節可能な遺伝子発現は、マウス及びヒヒの両方において達成されている。
【0048】
NRG又はNRG変異体の長期インビボ発現(数週間及び数ヶ月間)をもたらすために、プラスミド及びウイルス発現ベクターを使用してもよい。
【0049】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、NRG、NRG変異体、NRG若しくはNRG変異体をコードする発現ベクター、又はそれらの組み合わせのうちの1つ又はそれ以上を含む。特定の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0050】
本明細書において使用する場合、用語「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与と適合し得る、任意の及び全ての溶媒、可溶化剤、増量剤、安定化剤、結合剤、吸収剤、基剤、緩衝剤、滑剤、徐放性ビヒクル、希釈剤、乳化剤、保湿剤、滑剤、分散媒、コーティング、抗菌又は抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等を含むことが意図される。薬学的活性物質のためにかかる媒質及び物質を使用することは、当技術分野において周知である。任意の従来の媒質又は物質が活性化合物と適合し得ない場合を除き、組成物中におけるその使用が意図される。補助剤を組成物中に組み込ませることも可能である。
【0051】
本発明の別の態様は、本発明のNRG又はNRG変異体に相当するポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現又は活性を調節する医薬組成物を調製する方法を含む。かかる方法は、NRG又はNRG変異体の発現又は活性を調節する物質と、薬学的に許容される担体とを一緒に製剤化する工程を含む。かかる組成物は、さらなる活性物質をさらに含んでもよい。したがって、本発明はさらに、NRG又はNRG変異体の発現又は活性を調節する物質、並びに、1つ又はそれ以上のさらなる生物活性物質と、薬学的に許容される担体とを、一緒に製剤化することによる医薬組成物の調製方法を含む。
【0052】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合し得るように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜投与が挙げられる。非経口、皮内、又は皮下適用のために使用される溶液又は懸濁液としては、例えば、以下の成分が挙げられる:注射用水等の滅菌希釈液、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン;プロピレングリコール又はその他の合成溶媒;ベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸又は重硫酸ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩等のバッファー、並びに、塩化ナトリウム又はデキストロース等の等張性の調整のための物質が挙げられる。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウム等の酸又は塩基を用いて調整することができる。非経口用調製物は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て式シリンジ、又はマルチ投与バイアル中に封入してもよい。
【0053】
注射用途に適する医薬組成物としては、例えば、滅菌水溶液又は分散液、並びに、滅菌注射溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与のための、適当な担体としては、例えば、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,NJ)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、注射用組成物は無菌である必要があり、容易な注入特性(syringability)が確保される程度に流動体である必要がある。注射用組成物は製造条件及び保存条件下で安定である必要があり、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して保護される必要がある。適当な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの利用により、分散液の場合に必要とされる粒子サイズの維持により、及び、界面活性剤の利用により、維持され得る。微生物の作用の抑制は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成することができる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖類、マンニトール及びソルビトール等のポリアルコール、及び塩化ナトリウムを含有することが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン、を組成物中に含有させることによってもたらされ得る。
【0054】
滅菌注射溶液は、必要な量の活性化合物(例えば、NRG又はNRG変異体)を、上記成分の1つ又はその組み合わせとともに、適当な溶媒中に含有させ、必要な場合には、続いて滅菌濾過することにより、調製することができる。一般的に、分散液は、基本的分散媒質と、上記されたものの中から必要とされるその他の成分とを含む、滅菌ビヒクル中に、活性化合物を組み入れることにより調製される。滅菌注射溶液調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これにより、活性成分と、従前に滅菌濾過された溶液からの任意のさらなる所望の成分との粉末が得られる。
【0055】
経口用組成物は、一般的に、不活性希釈剤又は可食性担体を含む。それらは、ゼラチンカプセル中に封入されていてもよいし、錠剤として圧縮されていてもよい。経口による治療的投与のために、活性化合物は、賦形剤と共に組み入れることができ、又、錠剤、トローチ剤、又はカプセル剤の形態で使用することができる。経口用組成物は、マウスウォッシュのような用途のために流体担体を用いて調製してもよく、この場合、化合物を含む流体担体は、経口的に適用され、局所的に適用され、吐き出され、又は、飲み込まれる。薬学的に適合し得る結合剤及び/又はアジュバント物質を、組成物の一部として含有させることができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチ等は、以下の成分、又は同様の特性の化合物のいずれかを含有することができる:微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチン等の結合剤;デンプン又はラクトース等の増量剤;アルギン酸、Primogel、又はコーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はStertes等の滑剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤;スクロース又はサッカリン等の甘味剤;或いは、ペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香料等の香料添加剤。
【0056】
吸入による投与のために、化合物は、適当な噴射剤(例えば、二酸化炭素等のガス)を含む加圧コンテナー若しくはディスペンサー、又はネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0057】
全身投与は、経粘膜的又は経皮的手段によることも可能である。経粘膜投与又は経皮投与のために、浸透する必要のあるバリアに適当な浸透剤が、製剤中で使用される。かかる浸透剤は、一般的に、当技術分野において公知であり、例えば、経粘膜投与のためには、界面活性剤、胆汁塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻腔内スプレー又は坐剤の使用により行ってもよい。経皮投与のためには、生物活性化合物が、一般的に当技術分野において公知である、軟膏(ointments,salves)、ジェル、又はクリームとして製剤化される。
【0058】
一実施形態において、治療成分(生物活性化合物を含み得る)は、身体からの迅速な消失に対して化合物を保護し得る担体と共に調製される(例えば、徐放製剤(インプラント及びマイクロカプセル送達システムを含む)。生分解性、生物適合性ポリマーを使用することもできる。例えば、エチレン酢酸ビニール、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸。かかる製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。材料は、市販の物の中から取得することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体によって感染細胞を標的とするリポソームを含む)を、薬学的に許容される担体として使用することも可能である。これらは、当業者に公知の方法にしたがって、調製することができる。
【0059】
投与の簡便性及び用量の均一性のために、経口又は非経口組成物を投与単位形態として製剤化することは特に有利である。本明細書において使用する場合、投与単位形態は、治療される対象のための単位投与量として適した物理的に別々の単位を含み;各単位は、必要とされる薬学的担体と関連して、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の投与単位形態のための仕様は、活性化合物の固有の特徴と、達成されるべき特定の治療効果と、個体の治療のためにかかる活性化合物を化合する技術における制約とによって、決定され、直接的に左右される。
【0060】
医薬組成物中の活性成分(例えば、NRG又はNRG変異体)の毒性及び治療効果は、例えば、LD50(50%の集団に対する致死的な用量)及びED50(50%の集団において治療的に有効な用量)を測定するために、細胞培養又は実験動物において、標準的な薬学的手法によって測定することができる。毒性と治療効果の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指数を示す活性成分が好ましい。毒性の副作用を示す活性成分を使用してもよいが、影響を受けていない細胞への潜在的なダメージを最低限にすることにより、副作用を減少させるためには、影響を受ける組織の場所にかかる活性成分を標的とする送達システムを設計するために、注意を払うべきである。
【0061】
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータを、ヒトでの使用のための用量範囲を決定する場合に使用することができる。かかる化合物の用量は、好ましくは、ほとんど又は全く毒性を示さずに、ED50を含む循環濃度の範囲にある。用量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。本発明の方法で使用されるいずれの化合物についても、治療的有効用量は、最初に、細胞培養アッセイから推定することができる。細胞培養中で測定した時のIC50(すなわち、症状の最大の半分の抑制を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を得るように、用量を動物モデルにおいて決定してもよい。ヒトで有用な用量をより正確に測定するために、かかる情報を使用することができる。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定してもよい。
【0062】
本発明のプラスミド及びウイルスベクターは、例えば、静脈内投与、門脈内投与、胆管内投与、動脈内投与、肝実質への直接注射、筋肉内注射、吸入、潅流、又は定位注入によって、対象に送達することができる。プラスミド及びウイルスベクターの医薬調製物は、許容される希釈剤を含んでもよく、又は、プラスミド及びウイルスベクターが包埋されている徐放マトリックスを含んでもよい。或いは、ウイルスベクターを組み換え細胞からインタクトな状態で作製し得る場合には(例えば、レトロウイルスベクター)、医薬調製物は、遺伝子送達系を生成する1つ又はそれ以上の細胞を含んでもよい。
【0063】
医薬組成物は、投与のための説明書と共に、コンテナー、パック又はディスペンサー中に入れることができる。
【0064】
好ましい実施形態において、TBI後の二次的なニューロンの損傷及び炎症を予防又は改善するための本方法は、かかる治療を必要とする対象に、NRG1を含む有効量の医薬組成物を投与する工程を含む。一実施形態において、NRG1は、TBIの24時間以内に投与される。別の実施形態において、NRG1は、0.05〜5000μg/kg体重;好ましくは、0.5〜1000μg/kg、より好ましくは、1〜500μg/kg、最も好ましくは、5〜100μg/kgの範囲で血管内又は筋肉内に投与される。別の実施形態において、NRG1は、3〜14日の期間、毎日投与される。
【0065】
別の実施形態において、本方法は、(1)NRG又はNRGの変異体、並びに、(2)NRG又はNRGの変異体をコードする発現ベクター、を含む有効量の医薬組成物を対象に投与する工程を含む。NRG又はNRGの変異体は、TBI後の二次的なニューロンの損傷及び炎症を予防又は改善する場合に、短期間の効果をもたらす。発現ベクターは、NRG又はNRGの変異体をインビボで発現し、TBI後の二次的なニューロンの損傷及び炎症を予防又は改善する場合に、長期間に亘る効果をもたらす。NRG及びNRG発現ベクターは、同時に注入してもよいし、別々に注入してもよい。
【0066】
本発明の別の態様は、急性CNS損傷を予防又は治療するための方法に関する。本方法は、かかる治療を必要とする対象に、NRG、NRGの変異体、又は、NRG若しくはNRGの変異体をコードする発現ベクターを含む有効量の医薬組成物を投与する工程を含む。
【0067】
好ましい実施形態において、急性CNS損傷を予防又は治療するための本方法は、かかる治療を必要とする対象に、NRG1を含む有効量の医薬組成物を投与する工程を含む。一実施形態において、NRG1は、急性CNS損傷の24時間以内に投与される。別の実施形態において、NRG1は、0.05〜5000μg/kg体重;好ましくは、0.5〜1000μg/kg、より好ましくは、1〜500μg/kg、最も好ましくは、5〜100μg/kgの範囲で血管内又は筋肉内に投与される。別の実施形態において、NRG1は、3〜14日の期間、毎日投与される。
【0068】
キット
本発明は、急性CNS損傷を予防及び治療するためのキット、並びに、外傷性脳損傷(TBI)後の二次的なニューロンの損傷及び炎症を予防又は改善するためのキットも包含する。本キットは、有効用量の、NRG、NRG変異体、NRG若しくはNRG変異体をコードする発現ベクター、又は、それらの組み合わせのうちの1つ又はそれ以上を、本発明の方法にしたがって、TBI後の二次的なニューロンの損傷及び炎症を予防又は改善するための、NRG、NRG変異体、又は発現ベクターの使用に関する表示と共に、又は、説明書に表示されて含む。特定の実施形態において、本キットは、NRG、NRG変異体、又は発現ベクターを送達するための手段等の方法を実施するために有用な構成要素を含んでもよい。特定の実施形態において、本キットは、NRG、NRG変異体、又は発現ベクターを送達する手段の安全な廃棄のために有用な構成要素、例えば、使用済み注射器用針容器、を含んでもよい。
【0069】
一実施形態において、キット中のNRG、NRG変異体、発現ベクターは、血管内投与のために製剤化され、別の実施形態において、キット中のNRG、NRG変異体、発現ベクターは、筋肉内投与のために製剤化され、別の実施形態において、キット中のNRG、NRG変異体、発現ベクターは、皮下投与のために製剤化される。NRG、NRG変異体、発現ベクターは、徐放用に製剤化してもよいし、一実施形態において、NRG、NRG変異体、発現ベクターは、インプラント可能な不活性マトリックス中に包埋される。
【0070】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、それらは限定として解釈されるべきではない。本願全体に亘って引用されている、全ての参考文献、特許及び公開されている特許出願、並びに、図面及び表は、参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0071】
実施例1:ErbB4受容体が、アポトーシス性及び変性ニューロンにおいて発現されている
erB4に対する免疫組織化学後、中大脳動脈閉塞(MCAO)に供したラットから回収した脳切片を、変性しているニューロンに対するマーカーである、Fluoro−Jadeと、erbB4に対する抗体とを用いて染色した。図1に示されるように、皮質中の多くのニューロンは、Fluoro−Jade陽性である(パネルA;緑色)。ErbB4陽性細胞(パネルB;赤色)は、Fluoro−Jade陽性ニューロン中に共局在化した(パネルC;黄色)。同様に、TUNEL染色(パネルD;緑色)及びerbB4(パネルE;赤色)は、同側脳におけるサブ集団において二重標識された(パネルF;黄色)。
【0072】
実施例2:MCAO後に、ErbB4発現が、マクロファージ/ミクログリアにおいてはアップレギュレートされ、星状細胞においてはアップレギュレートされない
MCAOに供したラットの同側大脳半球からの切片を、erbB4(図2,パネルA)及びグリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)(図2,パネルB)に対する抗体を用いて二重標識した。梗塞周囲領域中の細胞は、erbB4及びGFAPの共局在化を示さなかった(図2,パネルC)。erbB4(緑色)及びMac−1/CD11b(赤色)の共局在化は、erbB4がマクロファージ/ミクログリア中に見られることを示した(図2,パネルD)。
【0073】
実施例3:NRG−1βによる処理は、MCAO/再潅流によって誘発される脳梗塞を減少させる
図3は、MCAO前に、ビヒクル(パネルa;n=11)、NRG1β(パネルb;n=7)又はNRG1α(パネルc;n=3)を注射したラットからの代表的なTTC染色した脳切片を示す。NRG1β(2.5μg/kg)又はNRG1α(2.5μg/kg)を、MCAO直前に、単回の動脈内注射により投与した。250〜300gの体重の成体雌Sprague−Dawleyラットをこの研究のために使用した。合計で164匹のラットをこの研究のために使用した。ラットを、ケタミン/キシラジン溶液(10mg/kg,IP)を用いて麻酔し、MCAOに供した。MCAOは、管腔内縫合法により生じさせた。左総頸動脈(CCA)を正中切開により曝露し、周囲の神経及び筋膜を含まないように注意深く解剖した。次に、外頸動脈(ECA)の後頭動脈分岐を単離して、ECAの後頭動脈及び上甲状腺動脈分岐を凝集させた。ECAを、さらに遠位で解剖した。内頸動脈(ICA)を単離して、隣接する迷走神経から注意深く分離し、翼口蓋動脈をその基点近くに6−0シルク製縫合糸を用いて結紮した。次に、40mmの3−0手術用モノフィラメントナイロン縫合糸(Harvard Apparatus,Holliston,Massachusetts)を、ポリ−L−リジンを用いてコーティングし、炎の近くでその先端を丸くした。このフィラメントをECAからICA中に挿入し、次に、左MCAの基点を閉塞させるためにウィイス輪中に挿入した。MCAを閉塞させるために、CCAの分岐点から18〜20mm、縫合糸を挿入した。虚血の1.5時間後に、ナイロン縫合糸を引き抜き、犠牲にする前に、虚血状態にある脳組織を、24時間再潅流した。中核体温を、直腸プローブを用いてモニターして、麻酔中、Homeothermic Blanket Control Unit(Harvard Apparatus)を用いて37℃に維持した。虚血性脳梗塞に対するNRG−1の効果を調べるために、ラットに、10μlの用量のビヒクル(1%BSA含有PBS)又はNRG−1β(1〜50μmol/LのNRG−1(EGF様ドメイン,R&D Systems,Minneapolis,Minnesota)を溶解させた1%BSA/PBS)の単回ボーラスを、Hamilton syringeを用いて、5μl/分の速度で、血管内に注入した。これにより、体重1kgあたり、0.5〜2.5μgのNRG−1の投与となった。NRG−1又はビヒクルは、ECAを通じてICA中にボーラス注射によって投与した。溶液は、MCAO前又はMCAOの1.5時間後直ぐ、且つ、0、4又は12時間の再潅流後に投与した。動物は、再潅流の24時間後に、又は、長期試験のためには14日後に犠牲にした。動物は24時間後に犠牲にし、脳を2mmの切片にスライスして、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)を用いて染色した。ビヒクル及びNRG1処理した動物からの脳中の梗塞容積(Infarct Volume)をグラフに示す(パネルd)。データは、MCAO/再潅流によって誘発された脳梗塞を減少させることを示す。
【0074】
実施例4:NRG−1βは、ラット脳において、MCAO/再潅流によって誘発されたアポトーシス性損傷を抑制する
ラットを、1.5時間、MCAOに供し、次いで、24時間、再潅流に供した。図4は、ラット脳切片のTUNEL標識についての代表的な図を示す(各条件に対してn=5)。TUNELアッセイは、製造業者の説明書にしたがって、DeadEND Fluorometric TUNEL System(Promega,Madison,Wisconsin)を用いて行った。次に、スライドをPBSで洗浄し、DAPIを含むVectashield Mounting Mediumを用いてマウントした。各ラットの虚血状態の前頭頂皮質における梗塞内側境界部の、3ヶ所のランダムな中大脳動脈が関与する領域における全ての切片を、蛍光顕微鏡によって調べた。ビヒクル又はニューレグリン−1を与えた動物において、皮質及び線条体について、動物あたり3つ又はそれ以上の20μmの切片において調べた。MCAO後に、TUNEL染色は、皮質(パネルa)及び線条体(パネルb)において見られたが、NRGlβ処理されたラットにおいては、TUNEL染色は、皮質(パネルc)において見られず、線条体(パネルd)においては低レベルで見られた。冠状脳イメージ(〜ブレグマ+1.2mm)は、切片中に見られる領域を示す(パネルe)。
【0075】
実施例5:NRG−1処理は、MCAO/再潅流によって誘発される脳梗塞を減少させる
図5は、ビヒクル(パネルa)又はMCAO直後にNRG1(パネルb)を注射したラット、及び、再潅流の4時間後(パネルc)のラットからの代表的なTTC染色した冠状脳切片を示す。ビヒクル(n=10)又はMCAO直後にNRG1(R0;n=8)を用いて処理したラット、再潅流の4時間後(R4;n=6)又は再潅流の12時間後(R12;n=8)のラットからの脳における梗塞容積を、グラフに示す(パネルd)。時間記録(パネルe)は、MCAOプロトコール及びNRG1注射を示す。
【0076】
実施例6:NRG−1の投与は、神経学的転帰において大きな改善をもたらした
NRG1を、MCAO及び再潅流の4時間後に投与した。図6に示されるように、神経機能は、0〜4(正常スコア0、最大欠陥スコア4)のスケールで等級分けした。全ての動物を手術前(対照;n=14)及びNRG−1又はビヒクルによる処理後に試験した。NRG1処理群(n=9)は、ビヒクル処理したラット(n=5)と比較して、神経スコアが33%の改善を示した。
【0077】
実施例7:NRGlβは、MCAO後におけるミクログリア及び星状細胞の活性化を防止する
ラットを、24時間の再潅流後にMCAOに供した(各条件に対してn=5)。NRG1β又はビヒクルを、上記のようにして、動脈内に注入した。切片を、ED−1に対する抗体を用いて、免疫組織化学のために標識した。図7に示されるように、対側には染色は見られなかったが(パネルa)、ビヒクル処理した動物においては、MCAO後の同側大脳半球中に、ED−1標識された細胞が存在する(パネルb)。NRG1βを用いて処理した動物においては、ED−1陽性細胞はほとんど見られなかった(パネルc)。星状細胞の活性化を評価するために、切片を、GFAPに対する抗体を用いて、免疫組織化学のために標識した。対側の対照(パネルa)と比較して、濃いGFAP染色が、ビヒクル処理した動物では、MCAO後の梗塞境界部において見られる(パネルe)。しかしながら、ラットを、NRG−1βを用いて処理した場合には、GFAPの発現は、梗塞周辺部において劇的に減少した(パネルf)。
【0078】
実施例8:NRG1βは、MCAO/再潅流によって誘発されたIL−1β mRNAレベルを低減する
ラットを、NRG1β又はビヒクルを用いて処理し、次いで、MCAOに供した。RNAを単離し、IL1βのmRNA発現をRT−PCRによって測定した。図8は、IL−1(パネルa)及びGAPDH(パネルb)のmRNA発現レベルを示す(各条件に対してn=4)。パネルcは、GAPDHに対して正規化した後、ビヒクル処理した対照群と比較した、NRG1β処理したラットからのIL−1 mRNAレベルにおける変化の平均パーセンテージ±SEMを示す。
【0079】
上記記載は、本発明の実施方法を当業者に教示する目的のためのものであり、全ての自明な修飾及び改変を詳述することは意図されておらず、それらは、上記記載を読んだ場合に、当業者には明らかであろう。しかしながら、全てのかかる自明な修飾及び改変は、以下の特許請求の範囲に規定される、本発明の範囲内に含まれることが意図される。特許請求の範囲は、文脈が特に反対の内容を示していない限り、その目的を満たす、請求される成分及び任意の順序の工程に及ぶことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外傷性脳損傷(TBI)後の二次的なニューロンの損傷及び炎症を予防又は改善するための方法であって、ニューレグリン(NRG)、NRGの変異体、又は、NRG若しくはNRGの変異体をコードする発現ベクター、を含む有効量の医薬組成物を、かかる治療を必要とする哺乳動物に投与する工程、を含む上記方法。
【請求項2】
前記医薬組成物が、NRG1又はNRG1の変異体1を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記NRG1又はNRG1の変異体1が、0.05〜5000μg/kg体重の範囲の用量で血管内に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記NRG1又はNRG1の変異体1が、0.5〜1000μg/kg体重の範囲の用量で血管内に投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記医薬組成物が、NRG1β又はNRG1βの変異体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記医薬組成物が、NRG1α又はNRG1αの変異体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記医薬組成物が、血管内注入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬組成物が、動脈注射により投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記医薬組成物が、外傷後24時間以内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(1)ニューレグリン(NRG)又はNRGの変異体;及び
(2)NRG又はNRGの変異体をコードする発現ベクター、
を含む有効量の医薬組成物を、前記対象に投与する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
急性CNS損傷を治療するための方法であって、ニューレグリン(NRG)、NRGの変異体、又は、NRG若しくはNRGの変異体をインビボ発現し得る発現ベクター、を含む有効量の医薬組成物を、かかる治療を必要とする対象に投与する工程を含む、上記方法。
【請求項12】
前記医薬組成物が、NRG1又はNRG1の変異体を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記NRG1又はNRG1の変異体が、0.05〜5000μg/kg体重の範囲の用量で血管内に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記NRG1又はNRG1の変異体が、0.5〜1000μg/kg体重の範囲の用量で血管内に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記医薬組成物が、NRG1β又はNRG1βの変異体を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記医薬組成物が、血管内注入により投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬組成物が、動脈注射により投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬組成物が、動脈注射により投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記医薬組成物が、NRG及びNRGをコードする発現ベクターを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
外傷性脳損傷(TBI)後の二次的なニューロンの損傷及び炎症を予防又は改善するためのキットであって、以下:
(1)NRG、NRGの変異体、又は、NRG若しくはNRGの変異体をコードする発現ベクター;及び
(2)NRG、NRGの変異体、又は、NRG若しくはNRGの変異体をコードする発現ベクターを使用するための説明書、
を含む、上記キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−527457(P2012−527457A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511798(P2012−511798)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/045019
【国際公開番号】WO2010/044917
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(510117838)
【氏名又は名称原語表記】MOREHOUSE SCHOOL OF MEDICINE
【Fターム(参考)】