説明

禾穀類に対する6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート除草剤による薬害の軽減

コムギ及びオオムギにおいて6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラートによって引き起こされる除草剤の薬害が、クロキントセット、フェンクロラゾール、メフェンピル及びこれらの混合物からなる群から選択される薬害軽減剤を用いて軽減される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
農薬、例えば植物防疫剤、特に除草剤を使用する場合には、栽培植物が、種々の因子、例えば農薬の薬量及びその適用の方法、栽培植物の種、土壌の性質及び気候条件、例えば、光に曝される時間の長さ、温度及び降水量に応じて、ある程度被害を受ける可能性がある。このように、望ましくない植物の成長の悪影響から保護すべき栽培植物は、有効量の除草剤を使用する場合にはある程度被害を受ける可能性があることが知られている。栽培植物に対する除草剤の有害作用を特異的に防止することができる、すなわち、同時に、防除すべき雑草に対する除草作用に著しく影響を及ぼすことなく栽培植物を保護することができる種々の物質が、この問題を解決するために提案されている。しかし、頻繁に提案されている解毒剤は、狭い使用範囲しか有していない、すなわち特定の解毒剤は、多くの場合、栽培植物の個々の種について使用するために及び/又は個々の除草剤物質又は複数の種類の物質から栽培植物を保護するためにだけにしか適していないことが認められている。
【0002】
米国特許出願公開第2009/088322号及び同第2009/062125号明細書並びに米国特許7,300,907B2号明細書には、ある種の6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート化合物及びその除草剤としての使用が記載されている。これらの化合物のあるものは、近年、禾穀類において望ましくない植生を防除するために特に効果的な除草剤であることが認められているが、これらの化合物は、望ましくない植生を適切に防除するのに必要な濃度で、コムギとオオムギの両方にわずかな量の被害を生じることも認められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/088322号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/062125号明細書
【特許文献3】米国特許7,300,907B2号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
意外にも、特定の6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート化合物(これは、オーキシン作用機構を有する)のコムギ及びオオムギに対する植物毒性(phytotoxic effect)が、特定の薬害軽減剤を使用することによって改善できることが見出された。本発明は、式(I)
【化1】


(式中、
Qは、C−Cアルケニル、C−Cアルコキシ又はハロゲンを表し;
Xは、H又はハロゲンを表し;
Yは、H、ハロゲン、C−Cアルコキシ又は−NRを表し;
Zは、ハロゲン、C−Cアルキル又はC−Cハロアルキルを表し;並びに
及びRは、独立して、H又はC−Cアルキルを表す)
の6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート除草剤並びにそのカルボン酸基の農学的に許容される塩、エステル及びアミド誘導体の有害作用から禾穀類を保護する方法であって、前記6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート除草剤の他に、クロキントセット、フェンクロラゾール、メフェンピル及びこれらの混合物からなる群から選択される薬害軽減剤を、前記禾穀類と接触させるか、又はその栽培領域に適用することを含む、禾穀類を保護する方法に関する。
【0005】
式(I)の好ましい化合物としては、独立して、式中のQが、Cl、−CH=CH又は−OCHを表し;Xが、H又はFを表し;Yが、H、F、−OCH又は−N(CHを表し;及びZが、Cl、−CH、又は−CFを表す化合物が挙げられる。好ましい薬害軽減剤は、クロキントセット、特にメキシルエステルである。
【0006】
また、本発明は、式(I)
【化2】


(式中、
Qは、C−Cアルケニル、C−Cアルコキシ又はハロゲンを表し;
Xは、H又はハロゲンを表し;
Yは、H、ハロゲン、C−Cアルコキシ又は−NRを表し;
Zは、ハロゲン、C−Cアルキル又はC−Cハロアルキルを表し;並びに
及びRは、独立して、H又はC−Cアルキルを表す)
の6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート除草剤並びにその農学的に許容される塩、エステル及びアミド誘導体の有害作用からコムギ及びオオムギを保護するための組成物であって、前記6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート除草剤の他に、クロキントセット、フェンクロラゾール、メフェンピル及びこれらの混合物からなる群から選択される薬害軽減剤を含む組成物に関する。
【0007】
意外にも、特定の6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート除草剤(これは、オーキシン作用機構を有する)のコムギ及びオオムギに対する植物毒性が、クロキントセットを極めて少ない適用量で使用することによって改善できることが見出された。例えば、クロキントセットを式(I)のピリミジンカルボキシラート除草剤との組成物で使用すると、16:1〜1:1の間の除草剤:薬害軽減剤の比で、雑草、例えばホウキギ(Kochia scoparia L;KCHSC)、ヒナゲシ(Papaver rhoeas L;PAPRH)、オオイヌノフグリ(Veronica persica L;VERPE)に対する除草効果を失うことなく、春播き及び秋播きコムギ(Triticum aestivum L;TRZAS、TRZAW)、デュラムコムギ(Triticum durum L;TRZDU)並びに春播き及び秋播きオオムギ(Hordeum vulgare L;HORVS、HORVW)に対する式(I)のピリミジンカルボキシラート除草剤の植物毒性に対して保護効果を示すことが意外にも見出された。
【0008】
また、フェニルピラゾール系薬害軽減剤、例えばフェンクロラゾール−エチル及びメフェンピル−ジエチルと、式(I)のピリミジンカルボキシラート除草剤との混合物が、雑草、例えばヒメオドリコソウ(Lamium purpureum L;LAMPU)、シロザ(Chenopodium album L;CHEAL)に対する除草効果を低下させることなく、コムギ(Triticum aestivum L;TRZAS)及びオオムギ(Hordeum vulgare L;HORVS)に対する式(I)のピリミジンカルボキシラート除草剤の植物毒性に対して薬害軽減効果を示すことも意外にも見出された。
【0009】
式(I)のピリミジンカルボン酸は、除草活性を有する新しい種類の化合物である。多数のピリミジンカルボン酸化合物、例えば6−アミノ−5−クロロ−2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピリミジン−4−カルボン酸(化合物1);6−アミノ−2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−ビニルピリミジン−4−カルボン酸(化合物2);6−アミノ−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−5−メトキシピリミジン−4−カルボン酸(化合物3);6−アミノ−2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−メトキシピリミジン−4−カルボン酸メチルエステル(化合物4);6−アミノ−2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−ビニルピリミジン−4−カルボン酸メチルエステル(化合物5);6−アミノ−2−p−トリル−5−メトキシピリミジン−4−カルボン酸(化合物6);6−アミノ−2−(4−クロロ−3−ジメチルアミノ−2−フルオロフェニル)−5−ビニルピリミジン−4−カルボン酸(化合物7);6−アミノ−2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−メトキシピリミジン−4−カルボン酸(化合物8);6−アミノ−2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−メトキシピリミジン−4−カルボン酸(化合物9);及び6−アミノ−2−(4−クロロ−2,3−ジフルオロフェニル)−5−メトキシピリミジン−4−カルボン酸(化合物10)が、米国特許第7,300,907B2号明細書、米国特許出願公開第2009/088322A1号明細書及び米国特許出願公開第2009/062125A1号明細書に記載されている。式(I)のピリミジンカルボン酸は、コムギ及びオオムギにおいて一年生雑草及び広葉雑草を防除するが、コムギ及びオオムギには商業的除草剤使用量で植物毒性でもある。
【0010】
クロキントセットは、[(5−クロロ−8−キノリニル)オキシ]酢酸の一般名であり、しばしば1−メチルヘキシルエステル(メキシル)として使用される。その薬害軽減活性は、The Pesticide Manual、第14版、2006年に記載されている。クロキントセットは、穀草類において薬害軽減剤として使用される。
【0011】
フェンクロラゾールは、1−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(トリクロロメチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸の一般名である。その薬害軽減活性は、The Pesticide Manual、第14版、2006年に記載されている。フェンクロラゾールは、コムギ、ライムギ及びライコムギにおいて薬害軽減剤として使用される。
【0012】
メフェンピルは、1−(2,4−ジクロロフェニル)−4,5−ジヒドロ−5−メチル−1H−ピラゾール−3,5−ジカルボン酸の一般名である。その薬害軽減活性は、The Pesticide Manual、第14版、2006年に記載されている。メフェンピルは、コムギ、ライムギ、ライコムギ及びオオムギにおいて薬害軽減剤として使用される。
【0013】
除草剤という用語は、本明細書では、植物を枯殺するか、防除するか又はそうでなければ植物の成長を不利に改変する有効成分を意味するのに使用する。除草有効量又は植生防除量とは、不利に改変する効果を生じ、自然な生育からの逸脱、死滅、調節、乾燥、遅延などをともなう有効成分の量である。植物及び植生という用語は、発芽種子、出芽実生及び定着した植生を包含する。薬害軽減剤という用語は、本明細書で使用するように、標的雑草種において活性を著しく低下させずに除草剤被害から作物植物を選択的に保護する化合物を指す。
【0014】
除草活性は、化合物が植物に又は植物の生育場所に、成長の任意の段階であるいは植え付け又は出芽の前に、茎葉散布、土壌散布又は水面散布によって直接に適用される場合に、化合物によって示される。観察される効果は、防除すべき植物種、植物の成長の段階、希釈及び噴霧液滴サイズの適用パラメーター、固形成分の粒度、使用時の環境条件、用いる具体的化合物、用いる具体的な補助剤及び担体、土壌の種類など、並びに適用される化学物質の量に依存する。これらの因子及びその他の因子は、非選択的又は選択的除草作用を促進するために、当該技術で公知のように調節できる。一般に、雑草の最大防除を達成するためには、比較的未成熟の望ましくない植生に、発芽後に本発明の組成物を適用することが好ましい。
【0015】
望ましくない植物の成長の有害作用から保護すべき栽培植物は、有効量の除草剤を使用するとある程度は被害を受けるかもしれない。薬害軽減とは、栽培植物に対する除草剤の有害作用を防止すること、すなわち、同時に、防除すべき雑草に対する除草作用に著しく影響を及ぼすことなく栽培植物を保護することを意味する。
【0016】
本発明の組成物において、栽培植物に対する除草効果が軽減される薬害軽減剤と式(I)のピリミジンカルボン酸との重量比は、1:16〜4:1の範囲内にある。好ましくは、栽培植物に対する除草効果が軽減されるクロキントセットと式(I)のピリミジンカルボン酸との重量比は、1:4〜2:1の範囲内にある。
【0017】
薬害軽減組成物を適用する量は、防除すべき雑草の個々の種類、必要とする防除の程度、並びに適用の時期及び方法に依存する。一般に、本発明の組成物は、組成物中の式(I)のピリミジンカルボン酸と薬害軽減剤の合計量に基づいて、ヘクタール当たり1g(g/ha)〜280g/haの適用量で適用できる。
【0018】
本発明の式(I)のピリミジンカルボン酸と薬害軽減剤は、マルチパート(multipart)除草剤系の一部として別個に又は一緒に適用できる。
【0019】
本発明の除草剤−薬害軽減剤混合物は、種々様々な望ましくない植生を防除するために1つ又はそれ以上のその他の除草剤と共に適用できる。その他の除草剤と共に適用する場合には、本発明の組成物は、その他の1つ又は複数の除草剤と配合することができるし、その他の1つ又は複数の除草剤とタンクミックスすることができるし、あるいはその他の1つ又は複数の除草剤と連続的に適用することができる。本発明の薬害軽減組成物と共に用いることができる除草剤の幾つかとしては、2,4−D、アミドスルフロン、ベフルブタミド、ベナゾリン、ベンタゾン、ビフェノックス、ブロモキシニル、ブタクロール、ブタフェナシル、カルフェントラゾン−エチル、クロルメコート、クロルトルロン、シニドン−エチル、クロジナホップ−プロパルギル、クロピラリド、シアナジン、シクロスルファムロン、ジカンバ、ジクロホップ−メチル、ジフルフェニカン、ジフルフェンゾピル、ジメフロン、ジウロン、エトキシスルフロン、フェノキサプロップ、フェノキサプロップ−エチル、フェノキサプロップ−エチル+イソキシジフェン(isoxidifen)−エチル、フェノキサプロップ−p−エチル、フロラスラム、フルカルバゾン、フルセトスルフロン(LGC−421530)、フルフェナセット、フルメトスラム、フルピルスルフロン、フルルタモン、イマザメタベンズ、イマザモックス、イマザピック、イマザピル、イマザキン、イマゼタピル、イマゾスルフロン、インダノファン、イオドスルフロン、イオドスルフロン−エチル−ナトリウム、アイオキシニル、イソプロツロン、イソキサベン、ラクトフェン、リニュロン、MCPA、メコプロップ−P、メソスルフロン、メソスルフロン−エチルナトリウム、メトスラム、メトリブジン、メトスルフロン、メトスルフロン−メチル、オルソスルファムロン、オキシフルオルフェン、ペンジメタリン、ペノクスラム、ピコリナフェン、ピノキサデン、プリミスルフロン、プロフルアゾール、プロポキシカルバゾン、プロスルホカルブ、プロスルフロン、ピラフルフェンエチル、ピリベンゾキシム(LGC−40863)、ピロキサスルホン、ピロキシスラム、キンメラック、スルホスルフロン、チフェンスルフロン、チフェンスルフロン−メチル、トプラメゾン、トラルコキシジム、トリアスルフロン、トリベヌロン、及びトリベヌロン−メチルが挙げられる。
【0020】
本発明の薬害軽減組成物は、さらに、グリホセート、グルホシネート、ジカンバ、イミダゾリノン類、スルホニル尿素類又は2,4−Dと共に、グリホセート耐性作物、グルホシネート耐性作物、ジカンバ耐性作物、イミダゾリノン耐性作物、スルホニル尿素耐性作物又は2,4−D耐性作物に使用できる。一般に、本発明の除草剤−薬害軽減剤混合物は、処理する作物に選択性であり及び用いられる適用量でこれらの化合物によって防除される雑草の範囲を補足する除草剤と組み合わせて使用することが好ましい。また、一般に、本発明の薬害軽減組成物と、その他の補足除草剤とを、同時に、併用製剤として又はタンクミックスとして適用することが好ましい。
【0021】
実際には、本発明の薬害軽減組成物は、除草有効量の除草剤成分を少なくとも1つの農学的に許容される補助剤又は担体と一緒に含有する混合物で使用することが好ましい。適当な補助剤又は担体は、特に作物の存在下で選択的雑草防除のための組成物を適用するのに用いられる濃度で、有用作物に対して植物毒性であるべきでないし、また除草剤成分又はその他の組成物成分と化学的に反応すべきでない。このような混合物は、雑草又はその生育場所に直接に適用するために設計できるし、又は通常は適用前に追加の担体及び補助剤を用いて希釈される濃縮物又は製剤であることができる。これら混合物は、固体、例えば、粉剤、粒剤、水和性顆粒剤又は水和剤、あるいは液体、例えば、乳剤、液剤、エマルジョン又は懸濁剤であることができる。
【0022】
本発明の除草剤混合物の調製に有用な適当な農業用補助剤及び担体は、当業者には周知である。これらの補助剤の幾つかとしては、以下に限定されないが、作物油濃縮物(鉱油(85%)+乳化剤(15%));ノニルフェノールエトキシレラート;ベンジルココアルキルジメチル第四級アンモニウム塩;石油炭化水素のブレンド、アルキルエステル類、有機酸、及び陰イオン性界面活性剤;C−C11アルキルポリグリコシド;リン酸化アルコールエトキシラート;天然第一級アルコール(C12−C16)エトキシラート;ジ−sec−ブチルフェノールEO−POブロックコポリマー;ポリシロキサン−メチルキャップ;ノニルフェノールエトキシラート+尿素硝酸アンモニウム;乳化メチル化種子油;トリデシルアルコール(合成)エトキシラート(8EO);タローアミンエトキシラート(15EO);PEG(400)ジオレエート−99が挙げられる。
【0023】
用いることができる液状担体としては、水、トルエン、キシレン、石油ナフサ、作物油、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アミルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアルキルアミド、ジメチルスルホキシド、液体肥料などが挙げられる。水は、一般に濃縮物の希釈のために選択される担体である。
【0024】
適当な固形担体としては、タルク、ロウ石クレー、シリカ、アタパルガスクレー、カオリンクレー、多孔質珪藻土(kieselguhr)、チョーク、珪藻土(diatomaceous earth)、石灰、炭酸カルシウム、ベントナイトクレー、フラー土、綿実殻、コムギ粉、ダイズ粉、軽石、木粉、クルミ殻粉、リグニンなどが挙げられる。
【0025】
通常は、1つ又はそれ以上の界面活性剤を本発明の組成物に配合することが望ましい。このような界面活性剤は、固形組成物及び液状組成物の両方で、特に適用前に担体を用いて希釈するように設計されている組成物で用いることが有利である。界面活性剤は、特性として陰イオン性、陽イオン性又は非イオン性であることができ、乳化剤、湿潤剤、懸濁剤として又はその他の目的に用いることができる。製剤の分野で常用される界面活性剤及び本製剤においても使用し得る界面活性剤は、特に「McCutcheon's Detergents and Emulsifiers Annual」,MC Publishing Corp., Ridgewood, New Jersey, 1998及び「Encyclopedia of Surfactants」, Vol.I-III, Chemical Publishing Co., New York, 1980-81に記載されている。典型的な界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、例えばラウリル硫酸ジエタノールアンモニウム;アルキルアリールスルホン酸塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム;アルキルフェノール−アルキレンオキシド付加生成物、例えばノニルフェノール−C18エトキシラート;アルコール−アルキレンオキシド付加生成物、例えばトリデシルアルコール−C16エトキシラート;石鹸類、例えばステアリン酸ナトリウム;アルキルナフタレン−スルホン酸塩、例えばジブチル−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩;スルホコハク酸塩のジアルキルエステル、例えばスルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム;ソルビトールエステル、例えばオレイン酸ソルビトール;第四級アミン、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロリド;脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、例えばポリエチレングリコールステアレート;エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー;モノ及びジアルキルリン酸エステルの塩;植物油、例えばダイズ油、ナタネ油、オリーブ油、ヒマシ油、ヒマワリ種子油、やし油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、パーム油、落花生油、サフラワー油、ゴマ油、桐油など;及び上記植物油のエステル類が挙げられる。
【0026】
農薬組成物に一般的に使用されるその他の補助剤としては、相溶化剤、消泡剤、金属イオン封鎖剤、中和剤及び緩衝剤、腐蝕阻害剤、色素、着臭剤、展着剤、浸透助剤、粘着剤、分散剤、増粘剤、凝固点降下剤、抗微生物剤などが挙げられる。前記組成物はまた、その他の相溶性成分、例えば、その他の除草剤、植物成長調節剤、殺菌剤、殺虫剤などを含有していてもよいし、液状肥料又は固形粒状肥料担体、例えば、硝酸アンモニウム、尿素などを用いて製剤することができる。
【0027】
本発明の除草剤−薬害軽減剤混合物中の有効成分の濃度は、一般に0.001〜98重量%である。0.01〜90重量%の濃度が、多くの場合に用いられる。濃縮物として用いるために設計された組成物において、有効成分は、一般に5〜98重量%、好ましくは10〜90重量%の濃度で存在する。このような組成物は、典型的には、適用前に、不活性担体、例えば水で希釈される。雑草に又は雑草の生育場所に通常適用される希釈組成物は、一般に0.0001〜1重量%の有効成分を含有し、好ましくは0.001〜0.05重量%含有する。
【0028】
本発明の組成物は、雑草に又はその生育場所に、慣用の地上又は航空散布機、噴霧器、及び細粒散布機を使用することによって、湛水又は灌漑用水に加えることによって、及び当業者に公知のその他の慣用手段によって適用できる。
【0029】
以下の実施例により、本発明を例証する。
【実施例】
【0030】
禾穀類での発芽後の除草剤薬害軽減の評価
所望の試験植物種の種子を、103.2平方センチメートル(cm)の表面積を有するプラスチック製ポットのSun Gro MetroMix(登録商標)306定植混合物(これは、典型的に6.0〜6.8のpH及び30%の有機物含有量を有する)に植えた。良好な発芽及び健康な植物を確実にすることを必要とする場合には、殺菌剤処理及び/又はその他の化学的又は物理的処理を施した。植物は、温室で、昼間は18℃に維持し、夜間は17℃に維持した約14時間(h)の光周期で7〜36日(d)間育てた。栄養分と水を、定期的に加え、必要に応じて天井メタルハライド1000ワットランプを用いて補助照明を施した。植物は、第二本葉期又は第三本葉期に達した時に試験に用いた。
【0031】
処理は、化合物1〜10の酸又はエステル並びにクロキントセット−メキシル(CQC−M)、フェンクロラゾール−エチル、メフェンピル−ジエチルの単独及び組み合わせからなっていた。式(I)の化合物の酸又はメチルエステルの秤量した量を、97:3(体積/体積)のアセトン/ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解して濃縮溶液を得た。試験化合物が容易に溶解しない場合には、混合物を加温し及び/又は超音波処理した。試験化合物の濃縮溶液を、アセトン、水、イソプロピルアルコール、DMSO、Agri−Dex作物油濃縮物、及びTriton(登録商標)X−77界面活性剤を64.7:26.0:6.7:2.0:0.7:0.01(体積/体積)の比率で含有する水性混合物を加えることによって希釈した。試験化合物を、適切な量の97:3(体積/体積)のアセトン/DMSOと、アセトン、水、イソプロピルアルコール、DMSO、Agri−Dex作物油濃縮物、及びTriton(登録商標)X−77界面活性剤を64.7:26.0:6.7:2.0:0.7:0.01(体積/体積)の比率で含有する適切な量の水性混合物とを混合することによって調製した希釈溶液を用いて、適切な適用量に希釈した。化合物要求量は、187リットル/ヘクタール(L/ha)の割合での12mLの適用量に基づく。薬害軽減剤の濃縮溶液は、同じ方法に従って調製した。薬害軽減剤の秤量した量を、97:3(体積/体積)のアセトン/DMSO中に溶解して濃縮薬害軽減剤溶液を得た。
【0032】
除草剤薬害軽減剤と試験化合物との混合物の噴霧溶液は、前記濃縮溶液を、適当量の希釈溶液に加えて、有効成分を種々の組み合わせで有する12mLの噴霧溶液を形成することによって調製した。
【0033】
製剤化した化合物は、平均植物キャノピー上の18インチ(43センチメートル(cm))の噴霧高さで0.503平方センチメートル(m)の散布面積全体にわたって187L/haを送達するために較正された8002Eノズルを備えたオーバーヘッドMandelトラック噴霧器を用いて植物材料に適用した。対照植物に、溶剤ブランクを用いて同じ方法で噴霧した。
【0034】
処理植物及び対照植物を、前記の温室に入れ、地下灌漑によって灌漑して試験化合物の流出を防止した。20〜22日後に、試験植物の状態を、対照植物の状態と比較して、目視で調べ、0〜100%の尺度で評価した(この場合、0は、被害がないことに相当し、100は、完全枯死に相当する)。
【0035】
コルビーの式を使用して、混合物から予測される除草効果を調べた(Colby, S.R. Calculation of the synergistic and antagonistic response of herbicide combinations. Weeds 1967, 15, 20−22.)。
【0036】
次式を使用して、2つの有効成分A及びBを含有する混合物の予測活性を算出した:
予測値=A+B−(A×B/100)
【0037】
A=混合物に使用した濃度と同じ濃度での有効成分Aの観察された効果。
B=混合物に使用した濃度と同じ濃度での有効成分Bの観察された効果。
【0038】
試験した化合物の幾つか、用いた適用量、試験した植物種、及び結果を、表1〜表24に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
【表5】

【0044】
【表6】

【0045】
【表7】

【0046】
【表8】

【0047】
【表9】

【0048】
【表10】

【0049】
【表11】

【0050】
【表12】

【0051】
【表13】

【0052】
【表14】

【0053】
【表15】

【0054】
【表16】

【0055】
【表17】

【0056】
【表18】

【0057】
【表19】

【0058】
【表20】

【0059】
【表21】

【0060】
【表22】

【0061】
【表23】

【0062】
【表24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化3】


(式中、
Qは、C−Cアルケニル、C−Cアルコキシ又はハロゲンを表し;
Xは、H又はハロゲンを表し;
Yは、H、ハロゲン、C−Cアルコキシ又は−NRを表し;
Zは、ハロゲン、C−Cアルキル又はC−Cハロアルキルを表し;並びに
及びRは、独立して、H又はC−Cアルキルを表す)
の6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート系除草剤並びにその農学的に許容される塩、エステル及びアミド誘導体の有害作用からコムギ及びオオムギを保護するための組成物であって、前記6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート除草剤の他に、クロキントセット、フェンクロラゾール、メフェンピル及びこれらの混合物からなる群から選択される薬害軽減剤を含む組成物。
【請求項2】
前記6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラートが、6−アミノ−5−クロロ−2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−ピリミジン−4−カルボン酸誘導体;6−アミノ−2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−ビニルピリミジン−4−カルボン酸誘導体;6−アミノ−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−5−メトキシピリミジン−4−カルボン酸誘導体;6−アミノ−2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−メトキシピリミジン−4−カルボン酸誘導体;6−アミノ−2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−ビニルピリミジン−4−カルボン酸誘導体;6−アミノ−2−p−トリル−5−メトキシピリミジン−4−カルボン酸誘導体;6−アミノ−2−(4−クロロ−3−ジメチルアミノ−2−フルオロフェニル)−5−ビニルピリミジン−4−カルボン酸誘導体;6−アミノ−2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−メトキシピリミジン−4−カルボン酸誘導体;6−アミノ−2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−メトキシピリミジン−4−カルボン酸誘導体;又は6−アミノ−2−(4−クロロ−2,3−ジフルオロフェニル)−5−メトキシピリミジン−4−カルボン酸誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記薬害軽減剤と6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート系除草剤との重量比が、1:16〜4:1の間にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記薬害軽減剤がクロキントセットである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記クロキンセットと6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート系除草剤との重量比が、1:4〜2:1の間にある、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
式(I)
【化4】


(式中、
Qは、C−Cアルケニル、C−Cアルコキシ又はハロゲンを表し;
Xは、H又はハロゲンを表し;
Yは、H、ハロゲン、C−Cアルコキシ又は−NRを表し;
Zは、ハロゲン、C−Cアルキル又はC−Cハロアルキルを表し;並びに
及びRは、独立して、H又はC−Cアルキルを表す)
の6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート除草剤並びにその農学的に許容される塩、エステル及びアミド誘導体の有害作用からコムギ及びオオムギを保護する方法であって、前記6−アミノ−2−(置換フェニル)−5−置換−4−ピリミジンカルボキシラート除草剤の他に、クロキントセット、フェンクロラゾール、メフェンピル及びこれらの混合物からなる群から選択される薬害軽減剤を、前記禾穀類と接触させるか、又はその栽培領域に適用することを含む、コムギ及びオオムギを保護する方法。

【公表番号】特表2013−509421(P2013−509421A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537021(P2012−537021)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/054391
【国際公開番号】WO2011/059718
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】