説明

移動体の制御方法及びプログラム

【課題】消費電力を低減することができる、移動体の制御方法を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る移動体の制御方法は、多重系モータ33L、33Rの一つの系を制御する第1の制御系31又は32と、多重系モータ33L、33Rの他の一つの系を制御する第2の制御系32又は31とを備える倒立制御型の移動体の制御方法であって、移動体の状態に基づいて、移動体の倒立制御が可能で、且つ復帰時に必要な機能を残して、一方の制御系の機能をスリープ状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の制御方法及びプログラムに関し、特に多重系モータの一つの系を制御する第1の制御系と、多重系モータの他の一つの系を制御する第2の制御系とを備える倒立制御型の移動体の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全性等を向上させるために、多重系モータを複数の制御系で制御する技術がある(特許文献1を参照)。つまり、複数の制御系がそれぞれ、モータの一つの系を制御する。これにより、万が一に一つの制御系が動作不能に陥っても、他の制御系がモータを制御できる。
【0003】
また、移動体に搭載されるバッテリの消費電力を低減するために、制御系をスリープ状態とする技術がある(特許文献2乃至4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−520288号公報
【特許文献2】特開平10−271698号公報
【特許文献3】特開2007−216838号公報
【特許文献4】特開2010−76509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、制御系を2重化するため、重量が増加し、消費電力が増加する。
一方で、特許文献2乃至4の技術は、バッテリの消費電力を低減することができるが、当該技術を倒立制御型の移動体に用いるためには工夫が必要である。
【0006】
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、消費電力を低減することができる、移動体の制御方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る移動体の制御方法は、多重系モータの一つの系を制御する第1の制御系と、前記多重系モータの他の一つの系を制御する第2の制御系とを備える倒立制御型の移動体の制御方法であって、前記移動体の状態に基づいて、前記移動体の倒立制御が可能で、且つ復帰時に必要な機能を残して、一方の制御系の機能をスリープ状態とする。
【0008】
上記移動体の制御方法において、一方の制御系の機能を交互にスリープ状態とすること、が好ましい。
【0009】
上記移動体の制御方法において、前記移動体の状態を周期毎に取得し、前記取得された周期の前後の状態の変化量と、予め設定した閾値とを比較し、比較結果に基づいて、一方の制御系の機能をスリープ状態とするか否かを判定すること、が好ましい。
【0010】
上記移動体の制御方法において、前記移動体の状態として前記移動体の姿勢検出値を使用すること、が好ましい。
上記移動体の制御方法において、前記移動体の状態として前記移動体の速度を使用すること、が好ましい。
上記移動体の制御方法において、前記移動体の状態として前記移動体の車輪の角速度を使用すること、が好ましい。
上記移動体の制御方法において、前記移動体の状態として前記多重系モータの電流値を使用すること、が好ましい。
上記移動体の制御方法において、前記移動体の状態として前記制御系のバッテリのバッテリ残量を使用すること、が好ましい。
【0011】
本発明の一形態に係るプログラムは、制御装置に、上記移動体の制御方法を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
以上、説明したように、本発明によると、消費電力を低減することができる、移動体の制御方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施の形態1の移動体の制御方法が実施される、同軸二輪車を概略的に示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1の移動体の制御方法が実施される、制御装置を概略的に示すブロック図である。
【図3】本発明に係る実施の形態1の移動体の制御方法における、通常制御状態からスリープ状態に移行させる流れを示すフローチャート図である。
【図4】本発明に係る実施の形態1の移動体の制御方法における、スリープ状態から通常制御状態に移行させる流れを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0015】
<実施の形態1>
本発明の実施の形態1に係る移動体の制御方法(以下、制御方法と省略する場合がある。)及びプログラムを説明する。
【0016】
先ず、本実施の形態の制御方法の概略を簡単に説明する。
この制御方法は、図1に例示するような倒立制御型の同軸二輪車1で好適に実施される。ここで、同軸二輪車1は、一般的な倒立制御型の同軸二輪車と略同様に、車体2に搭乗した使用者が前後方向に荷重を作用させた際の、当該同軸二輪車1の前後方向への傾動量を加速度センサ等の姿勢検出センサで検出し、この検出結果に基づいて、制御装置が同軸二輪車1の倒立状態を維持するように駆動モータ等を制御する。このような同軸二輪車1においては、安全性等を確保するため、制御系が例えば2重化されている。
【0017】
そこで、本実施の形態の制御方法は、当該同軸二輪車1の状態を検出し、この検出結果に基づいて、例えば駆動モータに大きなトルクを発生させる必要がない場合に、倒立制御が可能で、復帰時に必要な機能が残るように、一方の制御系を機能させつつ、他方の制御系の一部の機能をスリープ状態とする。
【0018】
これにより、例えば駆動モータに大きなトルクを発生させる必要がない場合に、他方側の制御系の消費電力を低減することができる。そのため、電源の一種であるバッテリ等を小型化することができ、ひいては同軸二輪車1の小型化及び軽量化に寄与できる。
【0019】
次に、本実施の形態の制御方法が実施される同軸二輪車1の制御装置の一具体例を説明する。ちなみに、本実施の形態の制御方法は、ソフトウェアにおいて実現される。
制御装置3は、図2に示すように、第1の制御系31、第2の制御系32を備える。第1の制御系31は、第2の制御系32との共通要素である左右の駆動モータ33L、33Rの一つの系をそれぞれ制御する。
【0020】
第1の制御系31は、バッテリ31a、電源回路31b、HMI(ヒューマンマシンインターフェイス)31c、荷重センサ等のセンサ31d、姿勢検出センサ31e、左右の角度検出センサ31f―L及び31f−R、メインマイコン31g、サブマイコン31h、左右の電流制御部31i―L及び31i−R等を備える。
【0021】
バッテリ31aは、電源の一具体例であり、第1の制御系31の機能を実現するために、電源回路31bを介して電力を第1の制御系31の各要素に供給する。バッテリ31aからの電力の供給は、スイッチ31jのON/OFFによって制御される。このバッテリ31aは、メインマイコン31gによって電圧が管理される。
【0022】
HMI31cは、例えば同軸二輪車1の左右方向への制御を実現するための操作レバー等の入力装置である。HMI31cの操作信号は、メインマイコン31gに入力される。
【0023】
センサ31dは、車体2に設けられる荷重センサ等である。つまり、センサ31dは、車体2に使用者が搭乗した際に作用する荷重を検出し、検出信号をメインマイコン31gに出力する。
【0024】
姿勢検出センサ31eは、車体2に設けられており、車体2の前後方向への傾動量を検出する。つまり、姿勢検出センサ31eは、車体2に搭乗した使用者が前方又は後方へ車体2を傾動させた際の前後方向へ傾動量を検出し、検出信号をメインマイコン31gに出力する。
【0025】
角度検出センサ31f−L、31f−Rは、駆動モータ33L、33Rにそれぞれ設けられており、駆動モータ33L、33Rの回転角度を検出する。角度検出センサ31f−L、31f−Rは、検出信号をサブマイコン31hに出力する。
【0026】
メインマイコン31gには、センサ31d及び姿勢検出センサ31eから検出信号が入力される。そして、メインマイコン31gには、メモリ31kから読み出したプログラムが入力される。プログラムは、同軸二輪車1の機能を実現する。
【0027】
このメインマイコン31gは、入力される操作信号や検出信号、メモリ31kから読み出したプログラム等に基づいて、駆動モータ33L、33Rの指令信号を生成する。メインマイコン31gは、指令信号をサブマイコン31hに出力する。
【0028】
ちなみに、メインマイコン31gには、外部インターフェース31lを介して外部からプログラムの更新ができる構成とされている。そして、メインマイコン31gと第2の制御系32のメインマイコンとは、相互に正常に動作しているか否か等を確認できるように、通信可能な構成とされている。また、メインマイコン31gとサブマイコン31hとの間も、相互に正常に動作しているか否かを確認できるように、通信可能な構成とされている。さらにメインマイコン31gとサブマイコン31hとは、指令信号や検出信号等の入出力を実現できるように、通信可能な構成とされている。
【0029】
サブマイコン31hには、メインマイコン31gから指令信号が入力される。そして、サブマイコン31hには、角度検出センサ31f−L、31f−Rの検出信号が入力される。サブマイコン31hは、メインマイコン31gからの指示信号、及び角度検出センサ31f−L、31f−Rの検出信号に基づいて、例えばPID(Proportional Integral Derivative)制御等を行い、修正した指示信号を生成し、当該指示信号を電流制御部31i―L、31i−Rに出力する。
【0030】
電流制御部31i―L、31i−Rは、サブマイコン31hから入力される指示信号に基づいて、駆動モータ33L、33Rに流す電流値を算出する。そして、電流制御部31i−L、31i−Rは、算出した電流値で駆動モータ33L、33Rを制御する。
【0031】
第2の制御系32は、上述の第1の制御系31と同様の構成とされているので、具体的な図示及び説明を省略する。
【0032】
第1の制御系31と第2の制御系32との共通要素である駆動モータ33L、33Rは、2重系モータであって、1つの系が上述の第1の制御系31によって制御され、他の1つの系が第2の制御系32によって制御される。つまり、駆動モータ33Lの1つの系が第1の制御系31の電流制御部31i−Lが算出した電流値に基づいて制御され、他の1つの系が第2の制御系32における左側駆動モータの制御用の電流制御部が算出した電流値に基づいて制御される。また、駆動モータ33Rの1つの系が第1の制御系31の電流制御部31i−Rが算出した電流値に基づいて制御され、他の1つの系が第2の制御系32における右側駆動モータの制御用の電流制御部が算出した電流値に基づいて制御される。
【0033】
このような構成の制御装置3は、上述のように例えば駆動モータに大きなトルクを発生させる必要がない場合に、同軸二輪車1の倒立制御が可能で、復帰時に必要な機能が残るように、一方の制御系を機能させつつ、他方の制御系の一部の機能をスリープ状態とする。
【0034】
ここで、制御装置3における通常制御状態(即ち、第1及び第2の制御系による駆動モータの制御状態)からスリープ状態に移行する流れを、図3に基づいて説明する。
【0035】
通常制御状態において、第1の制御系31のメインマイコン31g及び第2の制御系32のメインマイコンは、所定の周期でバッテリ残量及び同軸二輪車1の車両データを取得する(S1)。このとき、取得したバッテリ残量及び同軸二輪車1の車両データは、他方の制御系のメインマイコンに出力される。ここで、本実施の形態では、車両データとして同軸二輪車1の車速(但し、車輪の角速度でも良い。)、駆動モータ33L、33Rのトルク、車体2のピッチ角度を取得する。
【0036】
次に、少なくとも第1の制御系31のメインマイコン31gは、取得したバッテリ残量に基づいて、一方の制御系の一部の機能をスリープ状態とした際に、他方の制御系のバッテリのバッテリ残量で負荷に耐え得るか否かを判定する(S2)。なお、第2の制御系32のメインマイコンにおいても、以下に示す第1の制御系31のメインマイコン31gと同様の動作を行っても良い。
【0037】
すなわち、他方の制御系のバッテリのバッテリ残量が少ない場合や劣化している場合、大きな負荷が生じると電圧降下が大きくなり、例えば後述の低電圧保護機能が作動して制御装置3が停止してしまう可能性がある。そのため、少なくとも第1の制御系31のメインマイコン31gは、自身の制御系に電力を供給するバッテリ及び他方の制御系に電力を供給するバッテリのバッテリ残量と、第1の閾値とを比較する。ここで、第1の閾値は、例えば当該電圧降下が生じても、現位置で倒立状態を維持して停止し、使用者に警報装置(スピーカや光源)等で降車を促す低電圧保護機能が作動しない電圧値に予め設定される。
【0038】
このとき、少なくとも第1の制御系31のメインマイコン31gは、一方のバッテリのバッテリ残量が第1の閾値より少ない(S2の判定結果がNGの場合)と、通常制御状態を維持する。
【0039】
一方、少なくとも第1の制御系31のメインマイコン31gは、両方のバッテリのバッテリ残量が第1の閾値以上(S2の判定結果がOKの場合)の場合、取得した車両データに基づいて、駆動モータ33L、33Rに大きなトルクを発生させる必要があるか否かを判定する(S3)。
【0040】
詳細には、少なくとも第1の制御系31のメインマイコン31gは、同軸二輪車1の車速の所定の時間内の変化量(即ち傾き)と第2の閾値、駆動モータ33L、33Rのトルクの所定の時間内の変化量と第3の閾値、車体2のピッチ角度の所定の時間内の変化量と第4の閾値とをそれぞれ比較する。ここで、第2〜4の閾値は予め学習して取得した値を閾値として採用することができる。
【0041】
少なくとも第1の制御系31のメインマイコン31gは、比較結果のいずれかが閾値以上(S3の判定結果がNGの場合)であると、通常制御状態を維持する。つまり、少なくとも第1の制御系31のメインマイコン31gは、比較結果のいずれかが閾値以上の場合は、同軸二輪車1が加速中や制動中等の状態であり、駆動モータ33L、33Rに大きなトルクを発生させる必要がある場合に該当するので、いずれの制御系も機能させる。
【0042】
一方、少なくとも第1の制御系31のメインマイコン31gは、比較結果の全てが閾値より小さい(S3の判定結果がOKの場合)と、同軸二輪車1の倒立制御が可能で、復帰時に必要な機能が残るように、一方の制御系を機能させつつ、他方の制御系の一部の機能をスリープ状態とする(S4)。なお、スリープ状態になる側の制御系のメインマイコンが自身の判断により、一部の機能をスリープ状態としても良く、また、スリープ状態にならない側の制御系のメインマイコンが、スリープ状態になる側の制御系のメインマイコンに対して一部の機能をスリープ状態とするように指令信号を出力し、スリープ状態になる側の制御系のメインマイコンが当該指令信号に基づいて一部の機能をスリープ状態としても良い。
【0043】
このとき、少なくとも第1の制御系31のメインマイコン31gは、バッテリ残量の少ない側のバッテリから電力が供給される制御系の一部の機能をスリープ状態とすることが好ましい。スリープ状態とする機能としては、例えば駆動モータ33L、33Rを制御するための機能であり、各センサの出力及びそれに基づく演算、電流制御部の電流値の算出、メインマイコン及びサブマイコンにおける駆動モータの指令信号を生成する機能等である。一方、スリープ状態になる側の制御系のメインマイコンとサブマイコンとの通信、制御系相互の通信等はスリープ状態としない。
【0044】
上述のように制御系の一部の機能をスリープ状態とすると同時に、少なくとも第1の制御系31のメインマイコン31gは、バッテリ残量の多い側のバッテリから電力が供給される制御系の全ての機能を動作させる。このとき、スリープ状態になる側の制御系のメインマイコンが、スリープ状態にならない側の制御系のメインマイコンに対して全ての機能を動作させるように指令信号を出力し、スリープ状態にならない側の制御系のメインマイコンが当該指令信号に基づいて全ての機能を動作させても良く、また、スリープ状態にならない側の制御系のメインマイコンが、スリープ状態になる側の制御系のメインマイコンに対して出力した、一部の機能をスリープ状態とする指令信号に基づいて、他方の制御系の一部の機能がスリープ状態となることを認識し、全ての機能を動作させても良い。
【0045】
これにより、左右の駆動モータ33L、33Rは一つの制御系で制御されることになる(S5)。そのため、消費電力を低減することができる。よって、電源の一種であるバッテリ等を小型化することができ、ひいては同軸二輪車1の小型化及び軽量化に寄与できる。しかも、スリープ状態になる側の制御系の温度の上昇を抑制することができ、ひいては基板寿命を延ばすことができ、さらに基板の安全性を向上させることができる。
【0046】
次に、制御装置3におけるスリープ状態から通常制御状態に移行する流れを図4に基づいて説明する。
スリープ状態において、スリープ状態でない側の制御系のメインマイコンは、所定の周期で当該制御系に電力を供給するバッテリのバッテリ残量及び同軸二輪車1の車両データを取得し、取得したバッテリ残量及び同軸二輪車1の車両データをスリープ状態の制御系のメインマイコンに出力する(S11)。その一方で、スリープ状態の制御系のメインマイコンは、所定の周期で当該制御系に電力を供給するバッテリのバッテリ残量を取得し、取得したバッテリ残量をスリープ状態でない側の制御系のメインマイコンに出力する。
【0047】
少なくともスリープ状態でない側の制御系のメインマイコンは、当該制御系に電力を供給するバッテリのバッテリ残量と、第1の閾値とを比較する(S12)。つまり、スリープ状態で制御時に低電圧保護機能が作動しないように監視する。
【0048】
少なくともスリープ状態でない側の制御系のメインマイコンは、当該制御系に電力を供給するバッテリのバッテリ残量が第1の閾値より少ない(S12の判定結果がNGの場合)と、スリープ状態を解除した際に同軸二輪車1の倒立制御が可能か否かを判定する(S13)。例えば、スリープ状態でない側の制御系のメインマイコンは、各々の制御系のバッテリのバッテリ残量と、第5の閾値とを比較する。ここで、第5の閾値は、例えば第1及び第2の制御系31、32で同軸二輪車1を倒立制御できる最小限の電圧値に設定される。
【0049】
少なくともスリープ状態でない側の制御系のメインマイコンは、一方のバッテリ残量が第5の閾値より小さい(S13の判定結果がNGの場合)と、降車モードに移行させる(S14)。これにより、例えばスリープ状態でない側の制御系のメインマイコンは、現位置で倒立状態を維持して停止し、使用者に降車を促す。
【0050】
一方、少なくともスリープ状態でない側の制御系のメインマイコンは、双方のバッテリ残量が第5の閾値以上(S13の判定結果がOKの場合)であると、スリープ状態の制御系のメインマイコンにスリープ状態を解除するように、指令信号を出力する。なお、スリープ状態の制御系のメインマイコンが、双方のバッテリ残量と第5の閾値とを比較し、比較結果に基づいて自らがスリープ状態を解除しても良い。
【0051】
これにより、スリープ状態の制御系は、スリープ状態を解除し、制御装置3は通常制御状態に移行する(S15)。その後、制御装置3は、再び、図3に示す流れに沿って、通常制御状態をスリープ状態に移行するか否かを判定する。
【0052】
少なくともスリープ状態でない側の制御系のメインマイコンは、当該制御系に電力を供給するバッテリのバッテリ残量が第1の閾値以上(S12の判定結果がOKの場合)であると、取得した車両データに基づいて、駆動モータ33L、33Rに大きなトルクを発生させる必要があるか否かを判定する(S16)。つまり、制御装置3が通常制御状態からスリープ状態に移行する際のS3と同様に、スリープ状態でない側の制御系のメインマイコンは、同軸二輪車1の車速の所定の時間内の変化量と第2の閾値、駆動モータのトルクの所定の時間内の変化量と第3の閾値、車体2のピッチ角度の所定の時間内の変化量と第4の閾値とをそれぞれ比較する。
【0053】
少なくともスリープ状態でない側の制御系のメインマイコンは、比較結果の全てが閾値より小さい(S16の判定結果がOKの場合)と、スリープ状態を維持する。これにより、制御装置3の一方の制御系の一部の機能がスリープ状態に維持される(S17)。その後、制御装置3は再びS11の工程に戻る。
【0054】
一方、少なくともスリープ状態でない側の制御系のメインマイコンは、比較結果のいずれかが閾値以上(S16の判定結果がNGの場合)であると、S13の工程に移行する。
【0055】
このような移動体の制御方法によれば、倒立制御が可能で、復帰時に必要な機能が残るように、一方の制御系を機能させつつ、他方の制御系の一部の機能をスリープ状態とする。そのため、消費電力を低減することができる。よって、電源の一種であるバッテリ等を小型化することができ、ひいては同軸二輪車1の小型化及び軽量化に寄与できる。
【0056】
しかも、スリープ状態になる側の制御系の温度の上昇を抑制することができ、ひいては基板寿命を延ばすことができ、さらに基板の安全性を向上させることができる。
【0057】
また、一方の制御系の一部の機能をスリープ状態としている際に、他方の制御系に電力を供給するバッテリのバッテリ残量を確認したり、車両データを確認したりするので、必要に応じてスリープ状態から通常制御状態に移行することができ、安全性を確保することができる。
【0058】
このとき、前回にスリープ状態とした制御系をメモリに記憶させ、次回に他方の制御系がスリープ状態となるようにすると、バッテリの片減りを防ぐことができる。
【0059】
<他の形態>
実施の形態1の移動体の制御方法は、ソフトウェアで実現されているが、ハードウェアで実現されても良い。
この場合、一方の制御系の一部の機能をスリープ状態とするか否かを判定する際に、制御系のメインマイコンは、例えば制御系の電流制御部が算出した電流値に基づいて判定することができる。つまり、制御系のメインマイコンは、駆動モータ33L、33Rを制御する電流値が第6の閾値以上であると、駆動モータ33L、33Rに大きなトルクを発生させる必要があるため、双方の制御系の全ての機能を動作させて通常制御状態とし、駆動モータ33L、33Rを制御する電流値が第6の閾値より小さいと、駆動モータ33L、33Rに大きなトルクを発生させる必要がなく、一方の制御系の一部の機能をスリープ状態とする。例えば駆動モータ33L、33Rを制御する電流値の割合が使用可能範囲より半分以下で当該駆動モータ33L、33Rが駆動している場合には、一方の制御系の一部の機能をスリープ状態とする。
【0060】
このような移動体の制御方法によれば、実施の形態1の移動体の制御方法と異なる視点で、一方の制御系の一部の機能をスイープ状態とするか否かを判定することができる。しかも走行中でも状況に応じて使用していない機能をスリープ状態にすることができる。
【0061】
以上、本発明に係る移動体の制御方法及びプログラムの実施の形態を説明したが、上記の構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。
上記実施の形態の駆動モータは、2重系モータであるが、系の数は限定されず、当該系の数に応じて制御系が設けられる。
上記実施の形態では、移動体として同軸二輪車を例に挙げたが、倒立制御型の移動体であれば特に限定されない。
上記実施の形態では、スリープ状態に移行する際に、車両データの全てが閾値より小さい場合を条件としているが、選択的にいずれかの車両データが閾値より小さい場合、スリープ状態に移行しても良い。
上記実施の形態では、通常制御状態からスリープ状態に、又はスリープ状態から通常制御状態に移行するか否かを、主として一方の制御系のメインマイコンで判定しているが、適宜、他方の制御系のメインマイコンを用いても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 同軸二輪車
2 車体
3 制御装置
31 第1の制御系、31a バッテリ、31b 電源回路、31c HMI、31d センサ、31e 姿勢検出センサ、31f−L、31f−R 角度検出センサ、31g メインマイコン、31h サブマイコン、31i−L、31i−R 電流制御部、31j スイッチ、31k メモリ、31l 外部インターフェース
32 第2の制御系
33L、33R 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重系モータの一つの系を制御する第1の制御系と、前記多重系モータの他の一つの系を制御する第2の制御系とを備える倒立制御型の移動体の制御方法であって、
前記移動体の状態に基づいて、前記移動体の倒立制御が可能で、且つ復帰時に必要な機能を残して、一方の制御系の機能をスリープ状態とする移動体の制御方法。
【請求項2】
一方の制御系の機能を交互にスリープ状態とする請求項1に記載の移動体の制御方法。
【請求項3】
前記移動体の状態を周期毎に取得し、前記取得された周期の前後の状態の変化量と、予め設定した閾値とを比較し、比較結果に基づいて、一方の制御系の機能をスリープ状態とするか否かを判定する請求項1又は2に記載の移動体の制御方法。
【請求項4】
前記移動体の状態として前記移動体の姿勢検出値を使用する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の移動体の制御方法。
【請求項5】
前記移動体の状態として前記移動体の速度を使用する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の移動体の制御方法。
【請求項6】
前記移動体の状態として前記移動体の車輪の角速度を使用する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の移動体の制御方法。
【請求項7】
前記移動体の状態として前記多重系モータの電流値を使用する請求項1至6のいずれか1項に記載の移動体の制御方法。
【請求項8】
前記移動体の状態として前記制御系のバッテリのバッテリ残量を使用する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の移動体の制御方法。
【請求項9】
制御装置に、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の移動体の制御方法を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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