移動体通信端末試験システム及び移動体通信端末の試験方法
【課題】連続して実行されるテストケース間で共通の事前処理手順及び事後処理手順の実行を効率化することで、テスト時間を短縮する。
【解決手段】試験の前段階で複数の前処理項目を処理するための事前処理手順と、前記試験そのものを実行するための実行処理手順と、前記前段階と逆の順序で、所定の既知の状態に戻すための複数の後処理項目を処理するための事後処理手順とを1組のテストケースとして、一つのテストケースについての試験開始前に、前記一つのテストケースと、前記一つのテストケースの次のテストケースについて、それぞれの事前処理手順における前処理項目の処理内容を前処理の順に沿って比較し、比較により一致する前処理項目がある場合に、一致した前処理項目についての前記一つのテストケースの後処理項目と、前記次のテストケースの前処理項目の実行が省略される。
【解決手段】試験の前段階で複数の前処理項目を処理するための事前処理手順と、前記試験そのものを実行するための実行処理手順と、前記前段階と逆の順序で、所定の既知の状態に戻すための複数の後処理項目を処理するための事後処理手順とを1組のテストケースとして、一つのテストケースについての試験開始前に、前記一つのテストケースと、前記一つのテストケースの次のテストケースについて、それぞれの事前処理手順における前処理項目の処理内容を前処理の順に沿って比較し、比較により一致する前処理項目がある場合に、一致した前処理項目についての前記一つのテストケースの後処理項目と、前記次のテストケースの前処理項目の実行が省略される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信端末と通信接続可能な擬似基地局機能を有し、移動体通信端末に対し複数の検証を行う移動体通信端末試験システム及び移動体通信端末の試験方法において、各検証を実行する順序を組替えることで試験全体の効率化を図り試験時間を短縮する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のユーザが同時に通話できる「多元接続(Multiple Access)」方式のうち、周波数利用効率に優れる「符号分割多元接続:CDMA(Code Division Multiple Access)」方式が複数の方法で実用化できるようになった。これら複数の方式のうちで特に、国際電気通信連合(ITU)が定める世界標準規格IMT−2000の一方式である“W−CDMA(Wideband−Code Division Multiple Access)”と称する「広帯域・符号分割多元接続」方式があり、この接続方式を利用した移動体通信端末が実用化されている。さらに、LTE(Long Term Evolution)と呼ばれる次世代の移動体通信規格も策定されつつある。
【0003】
上述のW−CDMA方式やLTE方式に関する通信方式やデータフォーマットが3GPP(3rd. Generation Partnership Project)により検討され、国際標準規格として規格化されている。移動体通信端末や基地局装置はこの規格に準拠する必要があり、この規格への準拠性を検証するための移動体通信端末試験システムが提供されている。
【0004】
前記移動体通信端末試験システムの例として、特許文献1には、携帯電話(移動体通信端末)の試験時に、実行する試験に応じて必要な測定器を特定する技術が開示されている。特許文献1からもわかる通り、移動体通信端末試験システムによる試験は様々な試験装置(測定器)を組み合わせて実施する必要がある。
【0005】
移動体通信端末の各試験は、テストケースとして移動体通信端末試験システムにより管理されている。テストケースは、実際に試験を実行する試験実行手順と、試験実行手順の前に試験環境を構築する事前処理手順と、試験実行手順の後に実行する事後処理手順とで構成されている。
【0006】
事前処理手順は、1以上の前処理項目で構成されている。前処理項目は、試験条件に従い各試験装置の動作条件を変更するために、各試験装置で実行される機能を示している。各試験装置は、試験条件に従い各試験装置に設定する具体的なパラメータ(例えば信号送信器における出力レベル等)を入力として該前処理項目を実行することで、該パラメータに従い動作条件を変更する。以降ではこのパラメータを処理パラメータと呼ぶ。
【0007】
また、前処理項目の中には前に実行された他の前処理項目と依存関係を持つものが含まれる。依存関係を持つ前処理項目間では、特定の順序に従って各前処理項目を実行する必要がある。例えば、信号受信器の感度を適切に調節する前に、該信号受信器に向かって信号送信器から高い出力レベルの信号が送信されることで該信号受信器が故障する可能性がある。この場合、信号受信器の感度を先に調整する必要があることになる。このような問題の発生を回避するために、各前処理項目間で依存関係が設定されている場合がある。そのため、事前処理手順を構成する前処理項目の実行順序を変更することはできない。
【0008】
事後処理手順は、事前処理手順で変更された各試験装置の動作条件を初期状態もしくは所定の既知の動作条件(以降では、これらを総じて「既定の状態」と呼ぶ場合がある)に戻すための手順である。移動体通信端末の試験として実行される試験の一覧は必ずしも一定ではなく、各試験の実行順序は一意に決まらない。そのため、試験の実行後に各試験装置を既定の状態に戻すことで、実行順序に限らず次の試験が正しく実行されるように事後処理手順が設けられている。
【0009】
事後処理手順は、各前処理項目に対応して各試験装置の動作条件を既定の状態に戻すための1以上の後処理項目で構成されている。後処理項目は、前処理項目により変更された各試験装置の動作条件を既定の状態に戻すために、各試験装置で実行される機能を示している。各試験装置は、前処理項目で変更された各試験装置の動作条件を既定の状態に戻す処理パラメータを入力として該後処理項目を実行することで、動作条件を既定の状態に戻す。
【0010】
後処理項目の実行順序は前処理項目の実行順序に対応して決定される。具体的には、より先に実行される前処理項目に対応した後処理項目が、より後に実行されるように、その実行順序が決定される。このことから、事後処理手順を構成する後処理項目の実行順序は、前処理項目の実行順序と同様に変更することはできない。なお、以降では前処理項目及び後処理項目を総じて「処理項目」と呼ぶ場合がある。
【0011】
次に、従来の移動体通信端末試験システムの構成について図12を参照しながら以下に説明する。図12は従来の移動体通信端末試験システムのシステム構成の例を示すシステムブロック図である。
【0012】
移動体通信端末試験システム1は、被試験対象である移動体通信端末2の試験を実施する移動体通信端末試験システムであって、主に疑似基地局として動作する。移動体通信端末試験システム1は、試験実行部10と、テストケース実行制御部11aと、テストケース記憶部12と、操作部13とで構成される。
【0013】
試験実行部10は、試験に必要な複数の試験装置(図12における試験装置A、B、又は、C)を制御し、移動体通信端末2の各種試験を実行する。試験装置A、B、又は、Cの例としては、信号発生器や、信号受信器、又は、スペクトラムアナライザー等があげられる。
【0014】
試験実行部10は、試験の実行時に、移動体通信端末試験システム1の外部に接続された装置の動作もあわせて制御する。外部に接続された装置としては、例えば、試験環境の温度を調整する温度管理装置3や、移動体通信端末2に電力を供給する電源装置4、又は、移動体通信端末を振動させる振動装置5などがあげられる。
【0015】
テストケース記憶部12は、テストケースごとに事前処理手順又は事後処理手順の各処理を実行するための処理パラメータをデータ(以降はこのデータを「テストケースデータ」と呼ぶ)として記憶するための記憶領域である。テストケース記憶部12には、実行対象となる各試験の条件ごとにテストケースデータが記憶されている。
【0016】
図13は、移動体通信端末試験システム1におけるテストケースデータの例を示す。図13において、D1は事前処理手順、D2は実行処理手順、D3は事後処理手順を示し、D4は前処理項目、D5は後処理項目を示している。また図13における「機能」は、「処理項目」に相当する。このように、テストケースデータには、テストケースを構成する前処理項目、実行処理手順、後処理項目を各試験装置に実行させるための処理パラメータを含まれる。なお、*1が付された処理パラメータは、対応する前処理項目によりかっこ内の値を基に変更された動作条件を、既定の状態に戻すための処理パラメータを示している。
【0017】
操作部13は、操作者が移動体通信端末試験システム1で実行される試験の条件を入力するためのユーザインタフェースである。試験の条件としては、例えば、信号発生器の周波数帯域や、各試験装置が出力する信号の出力レベル、又は、試験環境の温度設定などが含まれる。
【0018】
テストケース実行制御部11aは、操作部13から操作者が指定した試験の条件に従い、テストケース記憶部12から該試験条件に該当するテストケースデータを抽出する。その後、テストケース実行制御部11aは、抽出されたテストケースデータを逐次読み出し、該テストケースデータに設定された各処理項目の処理パラメータを基に、試験実行部10を介して事前処理手順、試験実行手順及び事後処理手順を各試験装置に実行させる。そして、試験の態様によって、複数種類のテストケースを連続して実行する場合や、特定のテストケースを繰り返し実行する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2003−283446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
近年では、W−CDMAの上位規格となるHSPA(High Speed Packet Access)などの技術仕様が盛り込まれ、LTEの規格が策定されるなど、仕様の範囲が追加・変更され、それに伴いテストケースも増加し試験時間が長くなる傾向にある。
【0021】
一方で、複数のテストケース間で同じ構成で(同じ試験装置を同じ動作条件で使用して)試験を実施するテストケースが存在する。この場合、同じ試験環境を構築するために、事前処理手順及び事後処理手順として双方のテストケースで同じ処理項目(前処理項目及び後処理項目)が毎回実行されることになる。この同じ処理項目がテストケースごとに実行されることで試験時間の増加を冗長している。
【0022】
本発明は上記問題を解決するものであり、各テストケース間で共通の処理項目の実行を効率化することで、試験時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の試験装置を制御し被試験対象である移動体通信端末(2)の各種試験を実行する試験実行部(10)と、前記試験の前段階で、前記複数の試験装置をそれぞれの既知の動作条件から該各種試験の内容に応じた動作条件に設定するための処理を実行単位で項目に分けた複数の前処理項目を実行の順序で並べた事前処理手順と、前記試験そのものを実行するための実行処理手順と、該実行処理手順後に実行され、前記事前処理手順と逆の順序で処理して、前記複数の試験装置の動作条件を前記既知の動作条件に戻すための複数の後処理項目を並べた事後処理手順とを1組のテストケースとして、複数のテストケースを記憶するテストケース記憶部(12)とを備え、前記試験実行部が前記テストケースに沿って前記試験を実行する移動体通信端末試験システムであって、実行対象の一つのテストケースについての試験開始前に、前記一つのテストケースと、前記一つのテストケースの次の実行対象のテストケースとの間で、それぞれの事前処理手順における前処理項目毎にそれに含まれる動作条件を前記事前処理手順の順序に沿って比較し、前記動作条件が一致しなくなる前処理項目があるまで、もしくは全て一致するまで第1の比較を行う処理内容比較部(111)と、前記第1の比較により一致する前処理項目がある場合に、前記一致する前処理項目に対応した前記一つのテストケースの後処理項目の実行と、前記次のテストケースの前記一致する前処理項目の実行とを省略して、前記一つのテストケースと前記次のテストケースの試験を前記試験実行部に指示する手順決定部(112)とを備えたことを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の移動体通信端末試験システムであって、前記複数のテストケースが3以上備えられており、前記処理内容比較部は、予め、前記複数のテストケースにおける各前処理項目の前記動作条件を相互比較し、同じ前処理項目で同じ動作条件のテストケースが連続して実行されるように、前記複数のテストケースの実行の順序を並べ替える実行順序決定部(1111)を備え、該並び替えの後に、前記実行対象の一つのテストケースと前記次の実行対象のテストケースとの間での前記第1の比較を行うことを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の移動体通信端末試験システムであって、前記処理内容比較部は、予め、前記複数のテストケースにおける、1つの前記前処理項目を、各テストケースの前記1つの前処理項目に対応した前記動作条件を基に、全テストケースについて処理する時間が最大なるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最大処理時間と、全テストケースについて処理する時間が最小となるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最小処理時間との差から処理時間差を算出する処理コスト算出部(1112)を更に備え、前記実行順序決定部は、少なくとも前記処理時間差が最も大きい前処理項目について、前記最小処理時間となるように前記複数のテストケースの順序を実行の順序として決定することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の移動体通信端末試験システムであって、前記処理内容比較部は、予め、前記複数のテストケースにおける、1つの前記前処理項目を、各テストケースの前記1つの前処理項目に対応した前記動作条件を基に、全テストケースについて処理する時間が最大なるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最大処理時間と、全テストケースについて処理する時間が最小となるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最小処理時間との差から処理時間差を算出する処理コスト算出部(1112)を更に備え、前記実行順序決定部は、前記処理時間差が最小となる前記前処理項目について、前記最小処理時間となる前記複数のテストケースの実行順序を基礎として、前記処理時間差が小さい前記前処理項目から大きい前記前処理項目の順に前記複数のテストケースの並び替えを行い、かつ、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目については、先に並べ替えられたテストケースの実行順序と、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目に対応した動作条件とを基に並び替えることで、前記複数のテストケースの実行順序を並び替えることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の移動体通信端末試験システムであって、前記手順決定部が、前記一つのテストケースと前記次のテストケースの間で前記第1の比較結果、各前処理項目の動作条件が全て一致する場合に、前記次のテストケースの前記事前処理手順における前処理項目全ての実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記事後処理手順における後処理項目全ての実行を省略することを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の移動体通信端末試験システムであって、前記事前処理手順を構成する各前記前処理項目に対し、実行される順序が早いほど優先順位が高くなるように係数が付され、一つの前処理項目に沿って設定された前記動作条件を前記既知の動作条件に戻すための後処理項目に対し、前記一つの前処理項目と同じ前記係数が付され、前記実行処理手順にはいずれの前処理項目の係数よりも優先順位が低くなるように係数が付されており、前記手順決定部は、前記処理内容比較部が前記第1の比較により前記動作条件の異なる前処理項目を検知したときは、前記次のテストケースの前記前処理項目のうち、前記動作条件の異なる前処理項目を検知する直前の前処理項目の係数と同じ係数より前記順序方向と逆の順序方向の大きさの前記係数が付された前処理項目の実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記後処理項目のうち、前記次のテストケースの内、省略された該前処理項目と同じ係数が付された前記後処理項目の実行を省略することを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、試験の前段階で、複数の試験装置をそれぞれの既知の動作条件から該各種試験の内容に応じた動作条件に設定するための処理を実行単位で項目に分けた複数の前処理項目を実行の順序で並べた事前処理手順と、前記試験そのものを実行するための実行処理手順と、該実行処理手順後に実行され、前記事前処理手順と逆の順序で処理して、前記複数の試験装置の動作条件を前記既知の動作条件に戻すための複数の後処理項目を並べた事後処理手順とを1組のテストケースとして、前記テストケースに沿って前記試験を実行する移動体通信端末試験システムを用いた試験方法であって、前記複数のテストケースにおける各前処理項目の前記動作条件を相互比較し、同じ前処理項目で同じ動作条件のテストケースが連続して実行されるように、前記複数のテストケースの実行の順序を並べ替える並び替えステップと、実行対象の一つのテストケースについての試験開始前に、前記一つのテストケースと、前記一つのテストケースの次の実行対象のテストケースとの間で、それぞれの事前処理手順における前処理項目毎にそれに含まれる動作条件を前記事前処理手順の順序に沿って比較し、前記動作条件が一致しなくなる前処理項目があるまで、もしくは全て一致するまで第1の比較を行う手順比較ステップと、前記一つのテストケースと前記次のテストケースの間で前記第1の比較結果、各前処理項目の動作条件が全て一致する場合に、前記次のテストケースの前記事前処理手順における前処理項目全ての実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記事後処理手順における後処理項目全ての実行を省略する手順省略ステップとを備えたことを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の試験方法であって、前記並び替えステップの事前に、前記事前処理手順を構成する各前記前処理項目に対し、実行される順序が早いほど優先順位が高くなるように係数が付され、一つの前処理項目に沿って設定された前記動作条件を前記既知の動作条件に戻すための後処理項目に対し、前記一つの前処理項目と同じ前記係数が付され、前記実行処理手順にはいずれの前処理項目の係数よりも優先順位が低くなるように係数を付しておく係数設定ステップを更に備え、前記手順省略ステップにおいて、前記第1の比較により前記動作条件の異なる前処理項目を検知したときは、前記次のテストケースの前記前処理項目のうち、前記動作条件の異なる前処理項目を検知する直前の前処理項目の係数と同じ係数より前記順序方向と逆の順序方向の大きさの前記係数が付された前処理項目の実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記後処理項目のうち、前記次のテストケースの内、省略された該前処理項目と同じ係数が付された前記後処理項目の実行を省略することを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載の試験方法であって、前記並び替えステップの事前に、前記複数のテストケースにおける、1つの前記前処理項目を、各テストケースの前記1つの前処理項目に対応した前記動作条件を基に、全テストケースについて処理する時間が最大なるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最大処理時間と、全テストケースについて処理する時間が最小となるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最小処理時間との差から処理時間差を算出する処理時間差算出ステップを更に備え、前記並び替えステップにおいて、少なくとも前記処理時間差が最も大きい前処理項目について、前記最小処理時間となるように前記複数のテストケースの順序を実行の順序として決定することを特徴とする。
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の試験方法であって、前記並び替えステップにおいて、前記処理時間差が最小となる前記前処理項目について、前記最小処理時間となる前記複数のテストケースの実行順序を基礎として、前記処理時間差が小さい前記前処理項目から大きい前記前処理項目の順に前記複数のテストケースの並び替えを行い、かつ、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目については、先に並べ替えられたテストケースの実行順序と、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目に対応した動作条件とを基に並び替えることで、前記複数のテストケースの実行順序を並び替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る移動体通信端末試験システムは、連続して実行されるテストケース間で共通の前処理項目及び後処理項目を特定する。これにより、移動体通信端末試験システムは、連続するテストケース間で重複する処理項目の実行を省略し、各処理項目間の依存関係を維持しながら、次のテストケースを実行するために必要な処理項目のみを実行することが可能となる。
【0025】
また、本発明に係る移動体通信端末試験システムは、同じ前処理項目を有するテストケースが連続して実行されるようにテストケース間の実行順序を並べ替えることで、多くのテストケース間で前処理項目及び後処理項目を重複させ、処理項目の実行を省略することが可能となる。
【0026】
以上から、本発明に係る移動体通信端末試験システムは、各テストケース間で重複する処理項目の実行が省略されるため、テストケースごとに各試験装置を既定の状態まで戻す必要がなくなり、試験時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態及び変形例1に係る移動体通信端末試験システムのブロック図である。
【図2】本発明に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケースデータのデータ構造を説明するための図である。
【図3】第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序の変更に関する処理を説明するための図である。
【図4】テストケース間の実行順序の変更前後における各テストケース間の状態を説明するための図である。
【図5】第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおいて、テストケース間で共通する処理項目の実行を省略する処理を説明するための図である。
【図6】変形例1に係る移動体通信端末試験システムにおいて、テストケース間で共通する処理項目の実行を省略する処理を説明するための図である。
【図7】変形例2及び変形例3に係る移動体通信端末試験システムのブロック図である。
【図8】変形例2及び変形例3に係る処理コスト算出部が処理コスト差の算出に用いる、各前処理項目における処理コストの例である。
【図9】変形例2に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序の変更に関する処理を説明するための図である。
【図10】変形例3に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序の変更に関する処理を説明するための図である。
【図11】変形例3に係る実行順序決定部及び処理コスト算出部の処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】従来の移動体通信端末試験システムに関するシステム構成の例を示すシステムブロック図である。
【図13】移動体通信端末試験システムにおけるテストケースデータのデータ構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムの構成について図1を参照しながら説明する。本発明に係る移動体通信端末試験システムのテストケース実行制御部11は、処理内容比較部111と、手順決定部112を更に備えていることを特徴とする。なお、図12と同様の符号を付された機能ブロックは、図12で該符号を付された機能ブロックと同様の構成を示す。そのため本説明では、従来の移動体通信端末試験システムと異なる構成である処理内容比較部111と手順決定部112に着目して説明し、その他の構成については詳しい説明は省略する。
【0029】
(テストケースデータのデータ構造)
まず、本発明に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケースデータのデータ構造について図2を参照しながら説明する。図2は、テストケースデータのデータ構造を説明するための図である。本発明に係るテストケースデータには、図13に示した従来のテストケースデータに加えて、処理項目ごとに実行フラグとプロシジャ―デプスが構成要素として追加されている。実行フラグ及びプロシジャ―デプスについては後述する。なお、その他の構成要素については、図13に示すテストケースデータの構成要素と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0030】
本発明に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケースデータは、テストケースを構成する前処理項目、実行処理手順又は後処理項目を各試験装置に実行させるための処理パラメータと、各処理項目の実行を有効とする実行フラグが含まれる。テストケース実行制御部11は、テストケース記憶部12からテストケースデータを読み出し、試験実行部10を介して、テストケースデータに設定された処理パラメータを基に、各試験装置に各処理項目を実行させる。
【0031】
各試験装置に実行させる処理項目として、例えば前処理項目には、「温度設定」、「システム設定」、「周波数設定」、「出力レベルの設定」、又は、「端末との接続」などの機能が含まれる。また後処理項目には、前述した前処理項目に対応して、例えば、「温度設定のリセット」、「システム設定のリセット」、「出力レベルのリセット」、「周波数設定のリセット」、又は、「端末との接続解除」などの機能が含まれる(図2を参照)。
【0032】
本説明では、各テストケースの前処理項目及び後処理項目として、上述した機能が実行されるものとして説明する。以下に各処理項目の内容と対応する処理パラメータについて説明する。なお、上述した機能はテストケースを構成する処理項目の一例であり、上記機能に限定するものではない。
【0033】
前処理項目の「温度設定」は、温度管理装置3が、試験の条件に従い試験環境の温度を変更する処理項目である。また、対応する後処理項目である「温度設定のリセット」は、温度管理装置3が、前処理項目「温度設定」で変更された試験環境の温度を変更前のもとの状態(既定の状態)に戻す処理項目である。「温度設定」及び「温度設定のリセット」に対応する処理パラメータとしては、例えば35℃や24℃などの設定する温度を示す値を設定しておく。
【0034】
前処理項目の「システム設定」は、各試験装置が、試験の条件に従いソフトウェアを所定のバージョンに入れ替える処理項目である。また、対応する後処理項目である「システム設定のリセット」は、各試験装置が、前処理項目「システム設定」で入れ替えたソフトウェアを基準となる所定のバージョンのソフトウェアに戻す処理項目である。「システム設定」及び「システム設定のリセット」に対応する処理パラメータとしては、入れ替えの対象となる各ソフトウェアを識別可能な情報を設定しておく。処理パラメータの具体的な例としては、1.31や2.02などのソフトウェアのバージョンを示す値などがあげられる。
【0035】
前処理項目の「周波数設定」は、信号発生器等の試験装置が、試験条件に従い周波数帯域を設定する処理項目である。また、対応する後処理項目である「周波数設定のリセット」は、信号発生器等の試験装置が、前処理項目「周波数設定」で変更された周波数帯域を既定の状態に戻す処理項目である。「周波数設定」及び「周波数設定のリセット」に対応する処理パラメータとしては、例えば500MHzや1GHzなどの周波数を示す値を設定しておく。
【0036】
前処理項目の「出力レベルの設定」は、各試験装置が、試験条件に従い信号の出力レベルを変更する処理項目である。また、対応する後処理項目である「出力レベルのリセット」は、各試験装置が、前処理項目「出力レベルの設定」で変更された信号の出力レベルを既定の状態に戻す処理項目である。「出力レベルの設定」及び「出力レベルのリセット」に対応する処理パラメータとしては、例えば0dBmや−10dBmなどの信号の出力レベルを示す値を設定しておく。
【0037】
前処理項目の「端末との接続」は、疑似基地局(移動体通信端末試験システム)が、試験条件に従い接続条件を設定し、移動体通信端末2との通信を確立する処理項目である。また、対応する後処理項目である「端末との接続解除」は、該疑似基地局が、移動体通信端末との間で確立された通信を切断し、変更された接続条件を既定の状態に戻す処理項目である。「端末との接続」及び「端末との接続解除」に対応する処理パラメータとしては、複数の接続条件を判別するための値を設定する。本説明では、複数の接続条件をプリセットとして用意しておき、各接続条件に識別番号を付して、該識別番号を処理パラメータとして格納しているものとする。具体的には、識別番号「1」は「接続条件1」を、識別番号「2」は「接続条件2」を示しているものとする。
【0038】
試験実行手順である「試験の実施」では、各テストケースに対応する試験を実行する。処理パラメータには実行する複数の試験を判別するための値を設定しておく。本説明では、複数の試験として、識別子「1」は耐妨害波試験を、識別子「2」は送信試験を示しているものとする。
【0039】
各試験装置で各処理項目が実行される動作を、「温度設定」及び「温度設定のリセット」を例に説明する。前処理項目である「温度設定」の場合、試験環境の温度を変更する温度管理装置3が、前処理項目「温度設定」に設定された処理パラメータであるところの温度(例えば「35℃」)を読み出して、既定の状態(例えば「24℃」とする)から該前処理項目で指定された動作条件(35℃)に変更する。
【0040】
このとき、前処理項目「温度設定」に対応する後処理項目である「温度設定のリセット」の場合、温度管理装置3が、後処理項目「温度設定のリセット」に設定された処理パラメータであるところの既定の状態(「24℃」)を読み出して、試験環境の温度を前処理項目「温度設定」で変更された動作条件(35℃)から既定の状態(24℃)に戻す。
【0041】
実行フラグは、対応する処理項目を実行するか否かを判定するために用いられる。例えば図2では、実行フラグとして1が設定されている処理項目は実行対象として、実行フラグに0が設定されている処理項目は実行を省略する対象として判定される。
【0042】
また、テストケースを構成する各処理項目には、その実行順序に応じて係数が付されている。以降はこの係数をプロシジャデプスと呼ぶ。このプロシジャデプスは、出荷前にあらかじめ各処理項目に付しておく。また、操作部13を介して操作者が各処理項目のプロシジャデプスを設定できるようにしてもよい。
【0043】
前処理項目には、実行順序が早い処理項目ほど小さいプロシジャデプスが付されている。このとき処理時間のかかる前処理項目ほどプロシジャデプスがより小さくなるように各処理項目の順序を決定するとよい。具体的には、既定の状態から目的とする動作条件に変更するときに、より時間のかかる前処理項目ほど、より早い実行順序となるように各処理項目の順序を決定するとよい。また、依存関係がある処理項目間では、その依存関係により実行処理順序を決定しプロシジャデプスを付す。
【0044】
後処理項目には、対応する前処理項目と同じプロシジャデプスを付す。例えば、プロシジャデプスが100の前処理項目で変更した動作条件を既定の状態に戻す後処理項目には、対応する前処理項目と同じプロシジャデプス100が付される。これにより、図2に示す通り、実行順序がより早い後処理項目ほど大きいプロシジャデプスが付される。
【0045】
また、実行処理手順には、いずれの処理項目よりも大きい(最も大きい)プロシジャデプスを付しておく。なお上記で説明したように、各前処理項目及び各後処理項目にあらかじめプロシジャデプスを付しておく処理が、係数設定ステップに相当する。
【0046】
以上により、所定のプロシジャデプスが付された処理項目が実行された直後もしくは直前の試験環境を構築する場合、該所定のプロシジャデプスを基に、どの処理項目を実行すべきかを判定することが可能となる。具体的には、プロシジャデプス100が付された前処理項目が実行された直後の試験環境を構築したい場合、プロシジャデプス100未満の前処理項目を実行すればよいことが判定可能となる。また、実行処理手順を実行する直前の試験環境を構築する場合は、実行処理手順に付されたプロシジャデプス未満の前処理項目、つまり、全ての前処理項目を実行すればよいことを判定することが可能となる。
【0047】
なお、試験を実施するために必要な各機能をさらに細かいサブ機能に分けて処理項目としてもよい。この場合、例えばプロシジャデプス100の前処理項目に対応する機能を、サブ機能ごとに前処理項目とした場合、該サブ機能の前処理項目には処理順序に応じてプロシジャデプスを、例えば、200、300、400、・・・と設定するとよい。
【0048】
また、本説明ではプロシジャデプスを前処理項目の実行順序に従い昇順に付しているが、必ずしも昇順に限定するものではない。各処理項目の実行順序が特定できる情報であれば、例えば、10000、1000、100、・・・のような降順を用いてもよいし、A、B、C、・・・のような数値以外の情報を用いてもよい。なお、本説明では、プロシジャデプスが昇順に付されているものとして説明するものとする。
【0049】
処理内容比較部111は、実行順序決定部1111を備える。まず、処理内容比較部111は、操作部13から操作者が指定した試験条件に従いテストケース記憶部12よりテストケースデータを抽出する。処理内容比較部111は、抽出した複数のテストケースデータを実行順序決定部1111に送信し、テストケースデータの順序(以降はこの順序を「テストケース間の実行順序」と呼ぶ)を並べ替えさせる。
【0050】
実行順序決定部1111は、処理内容比較部111から複数のテストケースデータを受けて、各テストケースデータの処理パラメータをプロシジャデプスごとに比較する。その後、実行順序決定部1111は、前記比較の結果を基に、共通の前処理項目を有するテストケースが連続して実行されるように、テストケース間の実行順序を変更する。テストケース間の実行順序の変更方法について以下に説明する。
【0051】
(テストケース間の実行順序の変更)
実行順序決定部1111は、プロシジャデプスの低い順に、各テストケースにおける同じプロシジャデプスの前処理項目に対応した処理パラメータをそれぞれ比較し、同一の処理パラメータが設定された前処理項目を有するテストケースが連続して実行されるように、テストケース間の実行順序を並び替える。
【0052】
以下にテストケース間の実行順序の変更方法について、図3(a)〜図3(c)及び図4を参照しながら例をあげて具体的に説明する。図3は、テストケース間の実行順序の変更に関する処理を説明するための図である。図3(a)は実行順序を変更する前におけるテストケースデータの一覧の状態を示している。また、図3(b)及び図3(c)は各テストケース間の実行順序を並べ替えるときの過程の状態を示している。また、図4は、図3(a)に示したテストケースデータの一覧を受けて、実行順序決定部1111がテストケース間の実行順序を並べ替えた後のテストケースデータの一覧の状態を示している。
【0053】
<1>まず実行順序決定部1111は、各テストケース間でプロシジャデプス1が付された前処理項目の処理パラメータを比較し、該処理パラメータの順にテストケース間の実行順序を並べ替える。図3(b)はプロシジャデプス1の処理パラメータを基に、各テストケース間の実行順序を並び替えた結果である。この場合、実行順序決定部1111により、温度設定を26℃に設定するテストケースと、35℃に設定するテストケースに分類される。なお、本説明では処理パラメータが小さい順(昇順)にテストケース間の実行順序を並べ替えているが、昇順に限定するものではなく、処理パラメータが大きい順(降順)に並べ替えても同様の効果を得ることが可能である。
【0054】
<2>次に、実行順序決定部1111は、各テストケース間でプロシジャデプス10が付された前処理項目に対応した処理パラメータを比較し、該処理パラメータの順にテストケース間の実行順序を並べ替える。このとき実行順序決定部1111は、前回の比較で分類された範囲のテストケースどうし、つまり、以前に比較の基準とした全ての前処理項目(この場合はプロシジャデプス1の前処理項目が該当する)にそれぞれ同じ処理パラメータが設定されたテストケースどうしでのみテストケース間の実行順序を並べ替える。つまり実行順序決定部1111は、以前に並べ替えの基準とした前処理項目(プロシジャデプス1)に異なる処理パラメータを有するテストケース間では実行順序の並べ替えを行わない。
【0055】
図3(c)はプロシジャデプス10の処理パラメータを基に、各テストケース間の実行順序を並び替えた結果である。この場合、実行順序決定部1111により、例えば温度設定を26℃に設定するテストケース間で、システム設定を1.31に設定するテストケースと、2.02に設定するテストケースに分類される。同様に、温度設定を35℃に設定するテストケース間で、システム設定を1.31に設定するテストケースと、2.02に設定するテストケースに分類される。
【0056】
<3>以降、実行順序決定部1111は、<2>と同様の方法で、プロシジャデプス100、1000、10000が付された前処理項目の処理パラメータについても各テストケース間で比較し、逐次テストケース間の実行順序を並び替える。
【0057】
上記のようにテストケースの並び替えのときに比較対象とする前処理項目の優先順位は、プロシジャデプス1、10、100、・・・の順序で低くなる。これは、各テストケースが、より時間のかかる前処理項目を前処理手順の中のより早い順序に配しているためである。
【0058】
このように、事前処理手順における全てのプロシジャデプスの前処理項目について、各テストケース間で処理パラメータを比較し、テストケース間の実行順序を並び替える。図4は実行順序決定部1111がテストケース間の実行順序を変更した後の各テストケース間の状態(並び順)を示している。
【0059】
図4では、例えばプロシジャデプス1の「温度設定」に対応する処理パラメータは、テストケースCase4とCase3の間でのみ変更される(動作条件が変更される回数が1回である)。それに対し、プロシジャデプス10の「システム設定」に対応する処理パラメータは、テストケースCase8とCase5の間、テストケースCase4とCase3の間、及び、テストケースCase3とCase1の間で変更される(動作条件が変更される回数が3回である)。
【0060】
このように、前述した方法で各前処理項目の処理パラメータを比較し各テストケース間の実行順序を並べ替えることによって、プロシジャデプスが低い処理項目ほど、処理パラメータの違いにより動作条件が変更される回数がより少なくなる。これは、あるプロシジャデプスが付された前処理項目の処理パラメータを基準にテストケース間の実行順序を並べ替えるときに、以前に比較の基準とした前処理項目にテストケース間で同じ処理パラメータが設定されたテストケースの範囲でのみ、テストケース間の実行順序が並べ替えられているためである。なお上記で説明した、実行順序決定部1111によるテストケース間の実行順序の並び替えに係る処理が、並び替えステップに相当する。
【0061】
次に、処理内容比較部111は、連続する2つのテストケースを組(以降はこの組を「テストケースの組」と呼ぶ場合がある)として各前処理項目の処理パラメータをプロシジャデプスが低い順に逐次比較する。処理パラメータが異なる前処理項目を発見した場合は、該処理パラメータが異なる前処理項目のプロシジャデプスを手順決定部112に通知し、以降の比較処理の実行を停止する(手順決定部112については後述する)。つまり、処理内容比較部111は、最初に発見した処理パラメータが異なる前処理項目のプロシジャデプスを手順決定部112に通知する。また、処理内容比較部111は、処理パラメータが異なる前処理項目を発見できなかった場合は、実行処理手順のプロシジャデプスを手順決定部112に通知する。
【0062】
処理内容比較部111は、実行対象のテストケースにおいて、連続する2つのテストケースの組全てに対し前記比較処理を行い、テストケースの組ごとに手順決定部112に前記通知を行う。なお上記で説明した、処理内容比較部111による前記比較処理が、手順比較ステップに相当する。
【0063】
手順決定部112は、処理内容比較部111から実行処理手順のプロシジャデプスを受けた場合(比較対象のテストケースの組が同一の事前処理手順を有する場合)、該テストケースの組において、先に実行されるテストケースの事後処理手順の全後処理項目と、後から実行されるテストケースの事前処理手順の全前処理項目の実行を省略する。手順決定部112は、処理内容比較部111から処理パラメータが異なる前処理項目のプロシジャデプスを受けた場合、処理項目の実行を省略しない。
【0064】
(実行を省略する処理項目の決定)
第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおける、処理手順の省略について図5を参照しながら具体的に説明する。図5は、第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおいて、テストケース間で共通する処理項目の実行を省略する処理を説明するための図である。
【0065】
同じ構成(同じ試験装置を同じ動作条件で使用して)で試験を実行するテストケースが、連続して実行される場合、従来の移動体通信端末試験システムでは、テストケースごとに各前処理項目により試験環境を構築し、試験実行後に各後処理項目により各試験装置を既定の状態に戻していた。しかしながら、先に実行されるテストケースの試験直後は、各試験装置に対して、次に実行されるテストケースの試験に必要な動作条件の設定が既に行われており、次に実行されるテストケースの試験を即座に実行可能である。この場合、先に実行されるテストケースの各後処理項目と、次に実行されるテストケースの各前処理項目は冗長な処理であり、手順決定部112はこの冗長な処理の実行を省略する。
【0066】
第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムでは、処理内容比較部111から実行処理手順のプロシジャデプスを受けた場合(比較対象のテストケースの組が同一の事前処理手順を有する場合)にのみ、手順決定部112により処理項目の実行の省略が行われる。
【0067】
例えば、図5のテストケースCaseA1とCaseA2は事前処理手順の各前処理項目(プロシジャデプス1〜10000までの前処理項目)の処理パラメータが全て等しい。このとき処理内容比較部111から、実行処理手順のプロシジャデプス100000が手順決定部112に送信される。
【0068】
手順決定部112は、処理内容比較部111から受信したプロシジャデプスが実行処理手順のプロシジャデプス100000であることを確認し、先に実行されるテストケースCaseA1の後処理項目全てに対して、実行フラグに実行を省略するフラグ0を設定する。また、手順決定部112はあわせて、後から実行されるテストケースCaseA2の前処理項目全てに対して、実行フラグに実行を省略するフラグ0を設定する。このとき手順決定部112が実行フラグにフラグ0を設定する処理項目を、図5上に範囲M1で示す。
【0069】
処理内容比較部111から処理パラメータが異なる前処理項目のプロシジャデプスが通知された場合、手順決定部112は、処理項目の実行の省略は行わない。
【0070】
例えば、図5のテストケースCaseA5とCaseA6は、図5の範囲M2で示した前処理項目、つまりプロシジャデプス1000及び10000の前処理項目に対応した処理パラメータが異なる(このとき処理内容比較部111から手順決定部112にプロシジャデプス1000が通知される)。このとき手順決定部112は、処理内容比較部111から受信したプロシジャデプスが実行処理手順のプロシジャデプス100000ではないため、処理項目の実行の省略を示す実行フラグの変更を行わない。なお上記で説明した、手順決定部112による処理項目の実行の省略に係る処理が、手順省略ステップに相当する。
【0071】
その後、テストケース実行制御部11は、各テストケースデータをテストケース間の実行順序に従い逐次読込み、各テストケースの前処理項目、実行処理手順及び後処理項目を対応する試験装置に実行させるように試験実行部10に指示する。このとき、テストケース実行制御部11は、実行フラグに該処理項目を実行するフラグ1が設定されている処理項目を、該処理項目に対応する試験装置に実行させるように試験実行部10に指示する。また、テストケース実行制御部11は、実行フラグに実行を省略するフラグ0が設定されている処理項目については、該処理項目に対応する試験装置に実行させないように試験実行部10に指示する。
【0072】
これにより、連続した2つのテストケースが共通の前処理項目を有する場合、先に実行されるテストケースの試験後、先に実行されるテストケースの後処理項目の実行が省略される。このとき、実行が省略された後処理項目に対応する試験装置には、先に実行されるテストケースの前処理項目が実行された後の動作条件が保持される。そのうえで、次に実行されるテストケースの試験が実行され、該次に実行されるテストケースの後処理項目により、該試験装置の動作条件は既定の状態に戻される。
【0073】
このように、共通の前処理項目を有する連続した2つのテストケースの試験間で、各試験装置の動作条件を既定の状態に戻す処理(先に実行されるテストケースの後処理項目)と、再度設定し直す処理(次に実行されるテストケースの前処理項目)の実行が省略される。
【0074】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムは、まず同じ前処理項目を有するテストケースが連続して実行されるようにテストケース間の実行順序を並べ替える。次に、移動体通信端末試験システムは、連続して実行されるテストケース間で各前処理項目の処理パラメータを比較し共通の事前処理手順及び事後処理手順を特定する。最後に、移動体通信端末試験システムは、事前処理手順及び事後処理手順がテストケース間で共通の場合に、先に実行されるテストケースの全後処理項目と、次に実行されるテストケースの全前処理項目の実行を省略する。これにより、移動体通信端末試験システムは、各処理項目間の依存関係を維持しながら、連続するテストケース間で重複する前処理項目及び後処理項目の実行を省略することが可能となる。
【0075】
以上から、第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムは、各テストケース間で重複する処理項目の実行が省略されるため、テストケースごとに各試験装置を既定の状態まで戻す必要がなくなり、試験時間を短縮することが可能となる。
【0076】
なお、処理内容比較部111の比較結果を基に手順決定部112による処理項目の実行の省略が行われるとき、必ずしも実行順序決定部1111によるテストケース間の実行順序の並べ替えがあらかじめ行われている必要は無い。処理内容比較部111は、テストケース記憶部12から抽出した複数のテストケースデータに対して、前述した処理パラメータの比較処理を行う構成としてもよい。実行順序決定部1111により実行順序が並べ替えられた複数のテストケースデータに対して、処理内容比較部111が処理パラメータを比較し、その処理結果を受けて手順決定部112が処理項目の実行の省略を行うことで、より多くの前処理項目及び後処理項目の実行を省略することが可能となる。
【0077】
(変形例1)
第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムではテストケースの組で全ての前処理項目の処理パラメータが同一の場合のみ処理項目の実行の省略を行っていた。変形例1に係る移動体通信端末試験システムでは、さらに細かい処理項目単位で実行を省略する処理項目を決定する。なお本説明では、第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムとは動作の異なる手順決定部112aに着目して説明し、その他の構成については同様の動作となるため説明は省略する。
【0078】
(実行を省略する処理項目の決定)
変形例1に係る移動体通信端末試験システムにおける、処理手順の省略について図6を参照しながら具体的に説明する。図6は、変形例1に係る移動体通信端末試験システムにおいて、テストケース間で共通する処理項目の実行を省略する処理を説明するための図である。
【0079】
変形例1に係る移動体通信端末試験システムの手順決定部112aは、処理内容比較部111から受信したプロシジャデプスを基に、該プロシジャデプスに対応したテストケースの組に対して処理項目ごとに実行を省略する処理を決定する。
【0080】
このとき手順決定部112aは、受信したプロシジャデプスに対応したテストケースの組において、先に実行されるテストケースの後処理項目と、後から実行されるテストケースの前処理項目のうち、受信したプロシジャデプス未満のプロシジャデプスが設定された処理項目の実行を省略する。
【0081】
例えば、図6のテストケースCaseB5とCaseB6はプロシジャデプス1000及び10000の前処理項目に対応した処理パラメータが異なる。このとき、手順決定部112aは、処理内容比較部111からプロシジャデプス1000を受信する。
【0082】
手順決定部112aは、プロシジャデプス1000を受けて、先に実行されるテストケースCaseB5の後処理項目のうち、プロシジャデプス1000未満の後処理項目に対して、実行フラグに実行を省略するフラグ0を設定する。また、手順決定部112aはあわせて、後から実行されるテストケースCaseB6の前処理項目のうち、プロシジャデプス1000未満の前処理項目に対して、実行フラグに実行を省略するフラグ0を設定する。このとき手順決定部112aが実行フラグにフラグ0を設定する処理項目を、図6上に範囲M4で示す。
【0083】
また、図6のテストケースCaseB1とCaseB2のように事前処理手順の各前処理項目の処理パラメータが全て等しい場合、手順決定部112aは、処理内容比較部111から実行処理手順のプロシジャデプス100000を受信する。
【0084】
このとき、手順決定部112aは、受信した実行処理手順のプロシジャデプス100000を受けて、先に実行されるテストケースCaseB1の後処理項目のうち、プロシジャデプス100000未満の後処理項目に対して、実行フラグに実行を省略するフラグ0を設定する。また、手順決定部112aはあわせて、後から実行されるテストケースCaseB2の前処理項目のうち、プロシジャデプス100000未満の前処理項目に対して、実行フラグに実行を省略するフラグ0を設定する。このとき手順決定部112aが実行フラグにフラグ0を設定する処理項目を、図6上に範囲M3で示す。これにより、結果として第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムと同様に、テストケースCaseB1の全後処理項目とテストケースCaseB1の全前処理項目の実行が省略される。
【0085】
以上により、変形例1に係る移動体通信端末試験システムは、第1の実施形態よりさらに細かい処理項目単位で、テストケース間で共通する処理項目の実行を省略することが可能となる。これにより、変形例1に係る移動体通信端末試験システムは、第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムより、さらに試験時間を短縮することが可能となる。
【0086】
(変形例2)
第1の実施形態に係る実行順序決定部1111は、プロシジャデプスの低い順に、各テストケースにおける同じプロシジャデプスの前処理項目に対応した処理パラメータをそれぞれ比較し、その比較結果を基にテストケース間の並び替えを行っていた。しかしながら、前処理項目の中には、どのように実行順序を並び替えても試験時間があまり短縮されない前処理項目も存在する。また、実行する全てのテストケース間で、特定の前処理項目について同じ処理パラメータが設定されている場合に、この前処理項目についても、どのように実行順序を並び替えても試験時間が短縮されない。このような前処理項目について、対応する処理パラメータを比較しテストケース間の実行順序を並び替える場合、並び替えに係る処理に対し、試験時間の短縮に係る効果が少ない。この影響は、実行するテストケースの数が増えるほど顕著に表れる。
【0087】
一方で、1つの前処理項目を対象としてテストケースを並び替えたとき、処理時間が最大となる場合と、処理時間が最小となる場合がある。変形例2に係る移動体通信端末試験システムでは、テストケースの並び替えによって、全テストケースについてその1つの前処理項目を処理する時間の取り得る範囲を示す係数(以降は「処理コスト差」と呼ぶ)を、処理時間が最大となる場合の時間と最小となる場合の時間との差から算出する。このとき、変形例2に係る移動体通信端末試験システムは、各前処理項目に対し処理コスト差を算出する(処理コスト差の具体的な算出方法については後述する)。つまり、この処理コスト差が大きい前処理項目ほど、テストケース間の実行順序の並び替えにより、取り得る全体の試験時間の幅が広いことを示している。これは言い換えれば、この処理コスト差が大きい前処理項目ほど、該前処理項目について同じ動作条件のテストケースが連続して実行されるようにテストケース間の実行順序を並び替えたときに、試験時間の短縮に係る効果が最も大きいことを示している。
【0088】
変形例2に係る移動体通信端末試験システムは、算出した処理コスト差が最も大きい前処理項目について、同じ動作条件のテストケースが連続して実行されるように並び替える。これにより、変形例2に係る移動体通信端末試験システムは、テストケースの並び替えに係る処理時間を短縮しつつ、全体の試験時間を短縮することを特徴とする。以降に、変形例2に係る移動体通信端末試験システムについて説明する。
【0089】
まず変形例2に係る移動体通信端末試験システムの構成について、図7を参照しながら説明する。図7は、変形例2に係る移動体通信端末試験システムのブロック図である。図7に示す通り、変形例2に係る移動体通信端末試験システムは、処理内容比較部111aの構成が、第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムと異なる。本説明では、第1の実施形態と異なる処理内容比較部111aの構成と処理に着目して説明する。なお、図1と同様の符号が付された機能ブロックは、図1で該符号が付された機能ブロックと同様の構成を示すものであり、詳しい説明は省略する。
【0090】
変形例2に係る処理内容比較部111aは、実行順序決定部1111aと、処理コスト算出部1112とで構成される。まず、処理内容比較部111aは、操作部13から操作者が指定した試験条件に従いテストケース記憶部12よりテストケースデータを抽出する。処理内容比較部111aは、テストケースデータを抽出すると、まず処理コスト算出部1112に、処理コスト差を算出させる。
【0091】
処理コスト算出部1112は、処理内容比較部111aからの指示を受けて、抽出された一連のテストケースデータを実行する場合における、各前処理項目の処理コスト差を算出する。以降に、処理コスト算出部1112の処理コスト差の算出に係る処理について、図8及び図9を参照して説明する。図8は、処理コスト算出部1112が処理コスト差を算出するための、各前処理項目において動作条件の変更に係る時間(以降は「処理コスト」と呼ぶ)の例である。図9は、変形例2に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序の変更に関する処理を説明するための図である。図9(a)は、テストケース間の実行順序を変更する前の状態を示している。
【0092】
なお、図8に示す各前処理項目における処理コストは、処理コスト算出部1112に記憶領域を設けて、該記憶領域にあらかじめ記憶させておいてもよい。この場合、各前処理項目でとり得る処理パラメータごとに、処理コストを処理コスト算出部1112の該記憶領域にあらかじめ記憶させることになる。また別の方法として、処理コスト算出部1112に処理コストを算出するための機能を、前処理項目ごとに設けてもよい。この処理コストを算出するための機能とは、例えば「温度設定」の場合、「温度を9℃上昇させるには30分かかる」といった処理ロジックが該当する。
【0093】
処理コスト算出部1112は、まず、1つの前処理項目を対象としてテストケースを並び替えたとき、抽出された全テストケースについて、その1つの前処理項目を処理する場合に、連続する各テストケース間で動作条件を変更する時間の和が最大となる時間(以降は「最大処理時間」と呼ぶ)と、最小となる時間(以降は「最小処理時間」と呼ぶ)を、各前処理項目について算出する。処理コスト算出部1112による、最大処理時間及び最小処理時間の算出方法について、1つの前処理項目として「温度設定」を対象とした場合を例に、以下に具体的に説明する。
【0094】
まず、処理コスト算出部1112による最大処理時間の算出方法について説明する。
【0095】
<A1>まず処理コスト算出部1112は、1つのテストケースの初期状態を基準とし次のテストケースの動作条件に変更する場合に、最も処理コストの大きいテストケースを特定する。このとき「初期状態」は、操作者により試験の条件を指定され試験が実行される直前の状態(各試験装置の動作条件)を示している。図9(a)では、「温度設定」の初期状態は8℃である。このとき、図8(a)に示した「温度設定」の処理コスト(つまり処理時間)から、35℃に変更する場合に最も処理コストが大きくなることを特定する。これにより、処理コスト算出部1112は、テストケースCase1〜Case6の中から、「温度設定」を35℃とするCase3を抽出し、テストケース間の実行順序の先頭に並べる。
【0096】
<A2>次に処理コスト算出部1112は、直前にテストケース間の実行順序に並べたCase3の状態、つまり、「温度設定」35℃を基準として、次の動作条件に変更する場合に最も処理コストが大きくなるテストケースを、まだテストケース間の実行順序に並べていないテストケース(この場合、Case1、Case2、及びCase4〜Case6)の中から抽出する。Case3を基準とした場合、処理コスト算出部1112は、「温度設定」を8℃に設定するCase2を抽出することになる。処理コスト算出部1112は、抽出したCase2を、基準としたテストケース(Case3)の次に並べる。
【0097】
<A3>以降、処理コスト算出部1112は、<A2>と同様の方法で、全てのテストケースを、テストケース間の実行順序に並べる。これにより、連続するテストケース間で、対象とした前処理項目の処理コストが最も大きくなるように、テストケースが並べ替えられることになる。この方法で、図9(a)に示すCase1〜Case6を並び替えた場合、Case3、Case2、Case1、Case5、Case4、Case6の順に並べられることになる。処理コスト算出部1112は、このテストケース間の実行順序で対象とする前処理項目(つまり温度設定)を処理した場合の、処理コストの和を最大処理時間として算出する。図9(a)の「温度設定」の場合、最大処理時間は275分となる。
【0098】
次に、処理コスト算出部1112による最小処理時間の算出方法について説明する。処理コスト算出部1112による最小処理時間の算出方法の考え方は、最大処理時間の算出方法の考え方と基本的には同じである。つまり、最小処理時間を算出する場合、対象とした前処理項目について、連続するテストケース間で処理コストが最も小さくなるように、テストケースを並べ替える。このとき、対象とした前処理項目について、初期状態を基準として、同じ動作条件の前処理項目が連続して実行されるようにテストケース間の実行順序が並び替えられる。
【0099】
<B1>まず処理コスト算出部1112は、初期状態を基準とし次の動作条件に変更する場合に、最も処理コストの小さいテストケースを特定する。図9(a)では、「温度設定」の初期状態は8℃である。このとき、「温度設定」を変更しない場合、つまり、8℃とする場合に最も処理コストが小さくなる。そのため、処理コスト算出部1112は、図8(a)に示す「温度設定」の処理コストを基に、テストケースCase1〜Case6の中から、「温度設定」を8℃とするCase2を抽出し、テストケース間の実行順序の先頭に並べる。
【0100】
<B2>次に処理コスト算出部1112は、直前にテストケース間の実行順序に並べたCase2の状態、つまり、「温度設定」8℃を基準として、次の動作条件に変更する場合に最も処理コストが小さくなるテストケースを、まだテストケース間の実行順序に並べていないテストケース(この場合、Case1、及びCase3〜Case6)の中から抽出する。Case2を基準とした場合、処理コスト算出部1112は、「温度設定」を8℃に設定するCase5を抽出することになる。処理コスト算出部1112は、抽出したCase5を、基準としたテストケース(Case2)の次に並べる。
【0101】
<B3>以降、処理コスト算出部1112は、<B2>と同様の方法で、全てのテストケースを、テストケース間の実行順序に並べる。この方法で、図9(a)に示すCase1〜Case6を並び替えた場合、Case2、Case5、Case6、Case1、Case4、Case3の順に並べられることになる。処理コスト算出部1112は、このテストケース間の実行順序で、図8(a)に示す「温度設定」の処理コストを基に、このテストケース間の実行順序で対象とする前処理項目(つまり温度設定)を処理した場合の、処理コストの和を最小処理時間として算出する。図9(a)の「温度設定」の場合、最小処理時間は90分となる。
【0102】
次に処理コスト算出部1112は、算出した最大処理時間と最小処理時間との差を、処理コスト差として算出する。この処理コスト差が処理時間差に相当する。例えば、「温度設定」の場合の処理コスト差は、(最大処理時間−最小処理時間)=(275分−90分)=185分となる。
【0103】
処理コスト算出部1112は、同様の方法で、その他の前処理項目についても処理コスト差を算出する。図9(a)の場合、「システム設定」の処理コスト差は70分、「周波数設定」の処理コスト差は0.3分、「出力レベルの設定」の処理コスト差は14分となる。処理コスト算出部1112は、前処理項目ごとに算出した処理コスト差を、実行順序決定部1111aに通知する。なお上記で説明した、処理コスト算出部1112による処理コスト差の算出に係る処理が、処理時間差算出ステップに相当する。
【0104】
実行順序決定部1111aは、処理コスト算出部1112から各前処理項目に対応する処理コスト差を受けて、処理コスト差が最も大きい前処理項目を特定する。図9(a)の場合、「温度設定」の処理コスト差(185分)が最も高い。そのため処理コスト算出部1112は、「温度設定」を特定することになる。
【0105】
実行順序決定部1111aは、特定した処理コスト差が最も大きい前処理項目を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替える。このときの、テストケース間の実行順序の並び替えに係る処理は、前述した最小処理時間を求める場合の、各テストケースの並び替えに係る処理と同様である。そのため、このとき最小処理時間の導出時に求めたテストケース間の実行順序を用いてもよい。この場合、<B1>〜<B3>に示した、最小処理時間を導出するためのテストケース間の実行順序を求める処理を、実行順序決定部1111aにあらためて実行させる必要はない。図9(b)には、図9(a)で示した各テストケースを、前処理項目「温度設定」を対象とした、各テストケース間の並び替えの結果が示されている。これにより、「温度設定」について、同じ処理パラメータが設定されたテストケースが連続して実行されるように、テストケース間の実行順序が並び替えられる。
【0106】
次に、処理内容比較部111aは、実行順序決定部1111aによるテストケース間の実行順序の並び替えの結果を受けて、連続する2つのテストケースを組として各前処理項目の処理パラメータをプロシジャデプスが低い順に逐次比較する。以降は、第1の実施形態と同様に、処理内容比較部111aの比較結果を受けて、手順決定部112が処理手順の省略に係る処理を実行する。
【0107】
以上、変形例2に係る移動体通信端末試験システムでは、同じパラメータの前処理項目が連続して実行されるようにテストケース間の実行順序を並び替えることで、最も時間を短縮可能な前処理項目を特定する。これにより、全ての前処理項目について、処理パラメータを比較しテストケース間の実行順序を並び替える必要が無くなる。そのため、テストケース間の実行順序の並び替えに係る処理時間を短縮し、かつ、全体の試験時間を短縮することが可能となる。
【0108】
なお、必ずしも上記説明のように全ての前処理項目について処理コスト差を算出する必要はない。テストケース間の実行順序を変更しても試験時間の短縮の効果が小さいことが、あらかじめわかっている前処理項目については、処理コスト算出部1112による処理コスト差の算出に係る処理の対象から外せるようにしてもよい(つまり処理コスト算出部1112は、あらかじめ決められた一部の前処理項目についてのみ、処理コスト差を算出することになる)。この場合、実行順序決定部1111aは、処理コスト差を算出した前処理項目を対象として、テストケース間の実行順序の並び替えの対象とする前処理項目を特定することになる。これにより、処理コスト算出部1112による処理コスト差の算出に係る処理において、計算量を低減し処理時間を短縮することが可能となる。
【0109】
また、手順決定部112として、第1の実施形態に係る手順決定部112を適用してもよいし、変形例1に係る手順決定部112aを適用してもよい。
【0110】
(変形例3)
変形例2に係る実行順序決定部1111aは、処理コスト算出部1112が算出した各前処理項目の処理コスト差を受けて、処理コスト差が最も高い前処理項目を対象として、テストケース間の実行順序を並び替えていた。
【0111】
変形例3に係る移動体通信端末試験システムでは、処理コスト差が最大の前処理項目以外についても、同じ動作条件の前処理項目が連続して実行されるようにテストケース間の実行順序を並び替える。このとき、変形例3に係る移動体通信端末試験システムは、処理コスト差を基に、各前処理項目間で優先度付けを行い、テストケースの並び替えの対象とする(具体的な処理の内容については後述する)。これにより、変形例3に係る移動体通信端末試験システムは、変形例2に係る移動体通信端末試験システムよりも更に、全体の試験時間を短縮可能とすることを特徴とする。以降に、変形例3に係る移動体通信端末試験システムについて説明する。
【0112】
変形例3に係る移動体通信端末試験システムは、変形例2に係る移動体通信端末試験システムと、実行順序決定部1111aの処理内容が異なる。本説明では、変形例2と異なる実行順序決定部1111bの処理内容に着目して説明する。なお、その他の処理ブロックの構成及び処理内容は変形例2と同様のため、具体的な説明は省略する。
【0113】
変形例3に係る実行順序決定部1111bの動作について、図10を参照しながら説明する。図10は、変形例3に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序の変更に関する処理を説明するための図である。実行順序決定部1111bは、処理コスト算出部1112から各前処理項目に対応する処理コスト差を受信する。例えば図10(a)は、テストケース間の実行順序を変更する前の状態を示している。なお、図10(a)は図9(a)と同じ状態を示している。そのため処理コスト算出部1112により、図8に示した各前処理項目の処理コストを基に算出された各前処理項目の処理コスト差は、図9(a)と同様に、「温度設定」が185分、「システム設定」が70分、「周波数設定」が0.3分、「出力レベルの設定」が14分となる。
【0114】
実行順序決定部1111bは、処理コスト算出部1112から各前処理項目に対応する処理コスト差を受けて、処理コスト差が小さい順に各前処理項目を対象として、各前処理項目について連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、テストケース間の実行順序を遂次並び替える。以下に、実行順序決定部1111bのテストケース間の実行順序の並び替えに係る具体的な処理について、図10を参照しながら具体的に説明する。
【0115】
<C1>まず実行順序決定部1111bは、各前処理項目の処理コスト差を比較し、最も処理コスト差が小さい前処理項目を特定する。図10(a)の場合、「周波数設定」の処理コスト差が最も小さいため、実行順序決定部1111bは、「周波数設定」を特定することになる。
【0116】
<C2>次に実行順序決定部1111bは、特定した前処理項目(この場合、「周波数設定」が該当する)を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替える。図10(b)は、図10(a)をテストケース間の実行順序の並び替え実施前の状態とし、前処理項目「周波数設定」を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替えた場合の結果を示している。なお、各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、テストケース間の実行順序を並び替える方法は、前述した最小処理時間を求める場合の、各テストケースの並び替えに係る処理と同様である。そのため、このとき最小処理時間の導出時に求めたテストケース間の実行順序を用いてもよい。この場合、<B1>〜<B3>に示した、最小処理時間を導出するためのテストケース間の実行順序を求める処理を、実行順序決定部1111bにあらためて実行させる必要はない。
【0117】
<C3>次に実行順序決定部1111bは、直前にテストケース間の並び替えの対象とした前処理項目の次に、処理コスト差の小さい前処理項目を特定する。直前にテストケース間の並び替えの対象とした前処理項目が「周波数設定」の場合、次に処理コスト差の小さい前処理項目は「出力レベルの設定」となる。そのため、このとき実行順序決定部1111bは、「出力レベルの設定」を特定することになる。
【0118】
実行順序決定部1111bは、次に処理コスト差の小さい前処理項目を特定すると、特定した前処理項目を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替える。このとき実行順序決定部1111bは、直前に並び替えられたテストケース間の実行順序を、特定した前処理項目を対象とした並び替えを実施する前の状態とし、各テストケースを並び替える。図10(c)は、図10(b)をテストケース間の実行順序の並び替え実施前の状態とし、前処理項目「出力レベルの設定」を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替えた場合の結果を示している。
【0119】
<C4>以降、実行順序決定部1111bは、<C3>と同様の方法で、処理コスト差の小さい順に、残りの前処理項目についても対象として各テストケース間の実行順序を並び替える。つまり実行順序決定部1111bは、「システム設定」、「温度設定」の順で各前処理項目を対象とし、テストケース間の実行順序を並び替えることになる。例えば、図10(d)は、図10(c)をテストケース間の実行順序の並び替え実施前の状態とし、前処理項目「システム設定」を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替えた場合の結果を示している。また、図10(e)は、図10(d)をテストケース間の実行順序の並び替え実施前の状態とし、前処理項目「温度設定」を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替えた場合の結果を示している。
【0120】
ここで、図9(b)に示した変形例2に係る実行順序決定部1111aによる並び替えの結果と、図10(e)に示した実行順序決定部1111bによる並び替えの結果を比較する。処理コスト差の最も大きい「温度設定」を対象として、図9(b)と図10(e)との間で処理パラメータを比較した場合、双方で同じ並び順となっている。そのため、「温度設定」に係る処理の時間は、図9(b)と図10(e)とでは同じである。しかしながら、「温度設定」の次に処理コスト差の大きい「システム設定」を対象として処理パラメータを比較した場合、「温度設定」を8℃に設定する範囲において、図10(e)の方が処理パラメータを変更する回数が少ない。そのため、図10(e)の結果が、図9(b)の結果よりも、より試験時間を短縮することが可能であることがわかる。
【0121】
このように、処理コスト差の小さい順に各前処理項目を対象として、テストケース間の実行順序を遂次並び替えることで、処理コスト差が最大の前処理項目のみを対象としてテストケース間の実行順序を並び替えた場合よりも、更に、試験時間を短縮することが可能となる。
【0122】
なお上記では、実行順序決定部1111bが、処理コスト差を算出した全ての前処理項目を遂次対象として、テストケース間の実行順序を並び替える例について説明した。しかし、必ずしも全ての前処理項目を対象として、テストケース間の実行順序を並び替える必要はない。処理コスト差の小さい前処理項目は、対象としてテストケース間の実行順序を並び替えても、試験時間の短縮に関する効果が小さい。そのため、テストケース間の実行順序の並び替えを行う前段階で、テストケースの並び替えの対象とする前処理項目を特定してもよい。このとき、処理コスト差が所定値以上の前処理項目のみを並び替えの対象として抽出してもよい。また、処理コスト差の大きい順に所定数の前処理項目を対象として抽出してもよい。
【0123】
例えば、図10(a)を例に、処理コスト差が60分以上の前処理項目を対象として抽出した場合、テストケースの並び替えの対象となる前処理項目は、「温度設定」と「システム設定」となる。同様に、図10(a)を例に、処理コスト差の上位2つの前処理項目を抽出した場合、テストケースの並び替えの対象となる前処理項目は、「温度設定」と「システム設定」となる。
【0124】
また、実行順序決定部1111bは、処理コスト差を算出していない前処理項目がある場合、この前処理項目を対象としたテストケース間の実行順序の並び替えは行わない。この前処理項目は、前述した、処理コスト算出部1112による処理コスト差の算出に係る処理の対象から外した前処理項目に相当する。
【0125】
次に、処理内容比較部111aは、実行順序決定部1111bによるテストケース間の実行順序の並び替えの結果を受けて、連続する2つのテストケースを組として各前処理項目の処理パラメータをプロシジャデプスが低い順に逐次比較する。以降は、第1の実施形態及び変形例2と同様に、処理内容比較部111aの比較結果を受けて、手順決定部112が処理手順の省略に係る処理を実行する。
【0126】
次に、変形例3に係る移動体通信端末試験システムにおける、処理コスト算出に係る処理と、テストケース間の実行順序の並び替えに係る処理について、図11を参照しながら説明する。図11は、変形例3に係る実行順序決定部1111b及び処理コスト算出部1112の処理を説明するためのフローチャートである。
【0127】
(ステップS01)
処理内容比較部111aは、操作部13から操作者が指定した試験条件に従いテストケース記憶部12よりテストケースデータを抽出する。処理内容比較部111aは、テストケースデータを抽出すると、まず処理コスト算出部1112に、処理コスト差を算出させる。
【0128】
処理コスト算出部1112は、処理内容比較部111aからの指示を受けて、1つの前処理項目を抽出された全テストケースについて処理する場合に、連続する各テストケース間で動作条件を変更する時間の和が、最大となる最大処理時間と、最小となる最小処理時間とを、各前処理項目について算出する。処理コスト算出部1112は、各前処理項目について、算出した最大処理時間と最小処理時間との差から処理コスト差を算出する。このとき、テストケース間の実行順序を変更しても試験時間の短縮の効果が小さいことが、あらかじめわかっている前処理項目については、処理コスト差の算出に係る処理の対象から外してもよい。なお、この処理コスト算出部1112による処理コスト差の算出に係る処理が、処理時間差算出ステップに相当する。
【0129】
(ステップS02)
次に、実行順序決定部1111aが、処理コスト算出部1112が算出した各前処理項目の処理コスト差を基に、テストケース間の実行順序の並び替えに係る処理を開始する。このとき、実行順序決定部1111aは、処理コスト差を基に、あらかじめ並び替えの対象とする前処理項目を抽出するようにしてもよい。
【0130】
(ステップS03)
次に、実行順序決定部1111aは、各前処理項目の処理コスト差を比較し、最も処理コスト差が小さい前処理項目を特定する。例えば、図10(a)の場合、実行順序決定部1111bは、「周波数設定」を特定することになる。
【0131】
(ステップS04)
次に、実行順序決定部1111aは、特定した前処理項目を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替える。例えば、「周波数設定」を対象としてテストケースの並び替えを行う場合、図10(a)をテストケース間の実行順序の並び替え実施前の状態とし、図10(b)に示すような並び替えの結果が得られることになる。
【0132】
(ステップS05)
次に、実行順序決定部1111aは、抽出した全ての前処理項目について、該前処理項目を対象としたテストケースの並び替えを行ったかを確認する。抽出した全ての前処理項目について並び替えを行っている場合(ステップS05、Y)、テストケースの並び替えに係る処理を終了する。
【0133】
(ステップS06)
まだ並び替えの対象としていない前処理項目が残っている場合(ステップS05、N)、実行順序決定部1111aは、並び替えの対象としていない前処理項目の中から、処理コスト差が最も小さい前処理項目を特定する。例えば、前処理項目「周波数設定」を対象としてテストケース間の実行順序を並び替えた後ならば、実行順序決定部1111aは、「周波数設定」の次に処理コスト差の小さい前処理項目「出力レベルの設定」を特定することになる。
【0134】
実行順序決定部1111aは、前処理項目を特定したら、特定した前処理項目を対象として、再度テストケース間の実行順序を並び替える。このとき実行順序決定部1111aは、直前に並び替えられたテストケース間の実行順序を、特定した前処理項目を対象とした並び替えを実施する前の状態とし、テストケース間の実行順序を並び替える。例えば、前処理項目「周波数設定」を対象としてテストケース間の実行順序を並び替えた後であれば、まず実行順序決定部1111aは、図10(b)をテストケース間の実行順序の並び替え実施前の状態とする。次に実行順序決定部1111aは、前処理項目「出力レベルの設定」を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替える。図10(c)が、実行順序決定部1111aによる、「出力レベルの設定」を対象としたテストケース間の実行順序の並び替えの結果に相当する。
【0135】
ここで、テストケース間の実行順序の並び替えの結果について、変形例3に係る移動体通信端末試験システムと、変形例2に係る移動体通信端末試験システムとを、図9(b)及び図10(e)を参照しながら比較する。図9(b)は、変形例2に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序を並び替えた結果を示している。また図10(e)は、変形例3に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序を並び替えた結果を示している。
【0136】
例えば、図9(b)に示した前処理項目「システム設定」に着目すれば、テストケースCase2、Case5、Case6の実行順序を、図10(e)のように、Case6、Case5、Case2の実行順序に変更した場合、「システム設定」について動作条件が変更されるタイミングが2回から1回に減少する。
【0137】
ここで、図8(b)に示した「システム設定」の処理コストを基に、初期状態を基準としてCase2、Case5、及びCase6を処理する場合における動作条件の変更に係る処理コストを計算する。この計算結果によると、変形例3に係る移動体通信端末試験システムは、変形例2に係る移動体通信端末試験システムより該処理コストが25分短縮されることになる。具体的に示すと、図9(b)における初期状態とCase2の間及びCase2とCase5の間にかかる処理コストの和(45分)から、図10(e)におけるCase5からCase2の間にかかる処理コスト(20分)に短縮されることになる。
【0138】
以上、変形例3に係る移動体通信端末試験システムでは、処理コスト差が最大の前処理項目以外についても、同じ動作条件の前処理項目が連続して実行されるようにテストケース間の実行順序を並び替える。これにより、処理コスト差が最大の前処理項目のみを対象としてテストケース間の実行順序を並び替える場合(変形例2に係る移動体通信端末試験システム)よりも更に、全体の試験時間を短縮することが可能となる。
【0139】
なお、変形例2と同様に、手順決定部112として、第1の実施形態に係る手順決定部112を適用してもよいし、変形例1に係る手順決定部112aを適用してもよい。
【符号の説明】
【0140】
1 移動体通信端末試験システム 2 移動体通信端末
3 温度管理装置 4 電源装置 5 振動装置
10 試験実行部
11、11a テストケース実行制御部
12 テストケース記憶部 13 操作部
111、111a 処理内容比較部
112、112a 手順決定部
1111、1111a、1111b 実行順序決定部
1112 処理コスト算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信端末と通信接続可能な擬似基地局機能を有し、移動体通信端末に対し複数の検証を行う移動体通信端末試験システム及び移動体通信端末の試験方法において、各検証を実行する順序を組替えることで試験全体の効率化を図り試験時間を短縮する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のユーザが同時に通話できる「多元接続(Multiple Access)」方式のうち、周波数利用効率に優れる「符号分割多元接続:CDMA(Code Division Multiple Access)」方式が複数の方法で実用化できるようになった。これら複数の方式のうちで特に、国際電気通信連合(ITU)が定める世界標準規格IMT−2000の一方式である“W−CDMA(Wideband−Code Division Multiple Access)”と称する「広帯域・符号分割多元接続」方式があり、この接続方式を利用した移動体通信端末が実用化されている。さらに、LTE(Long Term Evolution)と呼ばれる次世代の移動体通信規格も策定されつつある。
【0003】
上述のW−CDMA方式やLTE方式に関する通信方式やデータフォーマットが3GPP(3rd. Generation Partnership Project)により検討され、国際標準規格として規格化されている。移動体通信端末や基地局装置はこの規格に準拠する必要があり、この規格への準拠性を検証するための移動体通信端末試験システムが提供されている。
【0004】
前記移動体通信端末試験システムの例として、特許文献1には、携帯電話(移動体通信端末)の試験時に、実行する試験に応じて必要な測定器を特定する技術が開示されている。特許文献1からもわかる通り、移動体通信端末試験システムによる試験は様々な試験装置(測定器)を組み合わせて実施する必要がある。
【0005】
移動体通信端末の各試験は、テストケースとして移動体通信端末試験システムにより管理されている。テストケースは、実際に試験を実行する試験実行手順と、試験実行手順の前に試験環境を構築する事前処理手順と、試験実行手順の後に実行する事後処理手順とで構成されている。
【0006】
事前処理手順は、1以上の前処理項目で構成されている。前処理項目は、試験条件に従い各試験装置の動作条件を変更するために、各試験装置で実行される機能を示している。各試験装置は、試験条件に従い各試験装置に設定する具体的なパラメータ(例えば信号送信器における出力レベル等)を入力として該前処理項目を実行することで、該パラメータに従い動作条件を変更する。以降ではこのパラメータを処理パラメータと呼ぶ。
【0007】
また、前処理項目の中には前に実行された他の前処理項目と依存関係を持つものが含まれる。依存関係を持つ前処理項目間では、特定の順序に従って各前処理項目を実行する必要がある。例えば、信号受信器の感度を適切に調節する前に、該信号受信器に向かって信号送信器から高い出力レベルの信号が送信されることで該信号受信器が故障する可能性がある。この場合、信号受信器の感度を先に調整する必要があることになる。このような問題の発生を回避するために、各前処理項目間で依存関係が設定されている場合がある。そのため、事前処理手順を構成する前処理項目の実行順序を変更することはできない。
【0008】
事後処理手順は、事前処理手順で変更された各試験装置の動作条件を初期状態もしくは所定の既知の動作条件(以降では、これらを総じて「既定の状態」と呼ぶ場合がある)に戻すための手順である。移動体通信端末の試験として実行される試験の一覧は必ずしも一定ではなく、各試験の実行順序は一意に決まらない。そのため、試験の実行後に各試験装置を既定の状態に戻すことで、実行順序に限らず次の試験が正しく実行されるように事後処理手順が設けられている。
【0009】
事後処理手順は、各前処理項目に対応して各試験装置の動作条件を既定の状態に戻すための1以上の後処理項目で構成されている。後処理項目は、前処理項目により変更された各試験装置の動作条件を既定の状態に戻すために、各試験装置で実行される機能を示している。各試験装置は、前処理項目で変更された各試験装置の動作条件を既定の状態に戻す処理パラメータを入力として該後処理項目を実行することで、動作条件を既定の状態に戻す。
【0010】
後処理項目の実行順序は前処理項目の実行順序に対応して決定される。具体的には、より先に実行される前処理項目に対応した後処理項目が、より後に実行されるように、その実行順序が決定される。このことから、事後処理手順を構成する後処理項目の実行順序は、前処理項目の実行順序と同様に変更することはできない。なお、以降では前処理項目及び後処理項目を総じて「処理項目」と呼ぶ場合がある。
【0011】
次に、従来の移動体通信端末試験システムの構成について図12を参照しながら以下に説明する。図12は従来の移動体通信端末試験システムのシステム構成の例を示すシステムブロック図である。
【0012】
移動体通信端末試験システム1は、被試験対象である移動体通信端末2の試験を実施する移動体通信端末試験システムであって、主に疑似基地局として動作する。移動体通信端末試験システム1は、試験実行部10と、テストケース実行制御部11aと、テストケース記憶部12と、操作部13とで構成される。
【0013】
試験実行部10は、試験に必要な複数の試験装置(図12における試験装置A、B、又は、C)を制御し、移動体通信端末2の各種試験を実行する。試験装置A、B、又は、Cの例としては、信号発生器や、信号受信器、又は、スペクトラムアナライザー等があげられる。
【0014】
試験実行部10は、試験の実行時に、移動体通信端末試験システム1の外部に接続された装置の動作もあわせて制御する。外部に接続された装置としては、例えば、試験環境の温度を調整する温度管理装置3や、移動体通信端末2に電力を供給する電源装置4、又は、移動体通信端末を振動させる振動装置5などがあげられる。
【0015】
テストケース記憶部12は、テストケースごとに事前処理手順又は事後処理手順の各処理を実行するための処理パラメータをデータ(以降はこのデータを「テストケースデータ」と呼ぶ)として記憶するための記憶領域である。テストケース記憶部12には、実行対象となる各試験の条件ごとにテストケースデータが記憶されている。
【0016】
図13は、移動体通信端末試験システム1におけるテストケースデータの例を示す。図13において、D1は事前処理手順、D2は実行処理手順、D3は事後処理手順を示し、D4は前処理項目、D5は後処理項目を示している。また図13における「機能」は、「処理項目」に相当する。このように、テストケースデータには、テストケースを構成する前処理項目、実行処理手順、後処理項目を各試験装置に実行させるための処理パラメータを含まれる。なお、*1が付された処理パラメータは、対応する前処理項目によりかっこ内の値を基に変更された動作条件を、既定の状態に戻すための処理パラメータを示している。
【0017】
操作部13は、操作者が移動体通信端末試験システム1で実行される試験の条件を入力するためのユーザインタフェースである。試験の条件としては、例えば、信号発生器の周波数帯域や、各試験装置が出力する信号の出力レベル、又は、試験環境の温度設定などが含まれる。
【0018】
テストケース実行制御部11aは、操作部13から操作者が指定した試験の条件に従い、テストケース記憶部12から該試験条件に該当するテストケースデータを抽出する。その後、テストケース実行制御部11aは、抽出されたテストケースデータを逐次読み出し、該テストケースデータに設定された各処理項目の処理パラメータを基に、試験実行部10を介して事前処理手順、試験実行手順及び事後処理手順を各試験装置に実行させる。そして、試験の態様によって、複数種類のテストケースを連続して実行する場合や、特定のテストケースを繰り返し実行する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2003−283446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
近年では、W−CDMAの上位規格となるHSPA(High Speed Packet Access)などの技術仕様が盛り込まれ、LTEの規格が策定されるなど、仕様の範囲が追加・変更され、それに伴いテストケースも増加し試験時間が長くなる傾向にある。
【0021】
一方で、複数のテストケース間で同じ構成で(同じ試験装置を同じ動作条件で使用して)試験を実施するテストケースが存在する。この場合、同じ試験環境を構築するために、事前処理手順及び事後処理手順として双方のテストケースで同じ処理項目(前処理項目及び後処理項目)が毎回実行されることになる。この同じ処理項目がテストケースごとに実行されることで試験時間の増加を冗長している。
【0022】
本発明は上記問題を解決するものであり、各テストケース間で共通の処理項目の実行を効率化することで、試験時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の試験装置を制御し被試験対象である移動体通信端末(2)の各種試験を実行する試験実行部(10)と、前記試験の前段階で、前記複数の試験装置をそれぞれの既知の動作条件から該各種試験の内容に応じた動作条件に設定するための処理を実行単位で項目に分けた複数の前処理項目を実行の順序で並べた事前処理手順と、前記試験そのものを実行するための実行処理手順と、該実行処理手順後に実行され、前記事前処理手順と逆の順序で処理して、前記複数の試験装置の動作条件を前記既知の動作条件に戻すための複数の後処理項目を並べた事後処理手順とを1組のテストケースとして、複数のテストケースを記憶するテストケース記憶部(12)とを備え、前記試験実行部が前記テストケースに沿って前記試験を実行する移動体通信端末試験システムであって、実行対象の一つのテストケースについての試験開始前に、前記一つのテストケースと、前記一つのテストケースの次の実行対象のテストケースとの間で、それぞれの事前処理手順における前処理項目毎にそれに含まれる動作条件を前記事前処理手順の順序に沿って比較し、前記動作条件が一致しなくなる前処理項目があるまで、もしくは全て一致するまで第1の比較を行う処理内容比較部(111)と、前記第1の比較により一致する前処理項目がある場合に、前記一致する前処理項目に対応した前記一つのテストケースの後処理項目の実行と、前記次のテストケースの前記一致する前処理項目の実行とを省略して、前記一つのテストケースと前記次のテストケースの試験を前記試験実行部に指示する手順決定部(112)とを備えたことを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の移動体通信端末試験システムであって、前記複数のテストケースが3以上備えられており、前記処理内容比較部は、予め、前記複数のテストケースにおける各前処理項目の前記動作条件を相互比較し、同じ前処理項目で同じ動作条件のテストケースが連続して実行されるように、前記複数のテストケースの実行の順序を並べ替える実行順序決定部(1111)を備え、該並び替えの後に、前記実行対象の一つのテストケースと前記次の実行対象のテストケースとの間での前記第1の比較を行うことを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の移動体通信端末試験システムであって、前記処理内容比較部は、予め、前記複数のテストケースにおける、1つの前記前処理項目を、各テストケースの前記1つの前処理項目に対応した前記動作条件を基に、全テストケースについて処理する時間が最大なるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最大処理時間と、全テストケースについて処理する時間が最小となるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最小処理時間との差から処理時間差を算出する処理コスト算出部(1112)を更に備え、前記実行順序決定部は、少なくとも前記処理時間差が最も大きい前処理項目について、前記最小処理時間となるように前記複数のテストケースの順序を実行の順序として決定することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の移動体通信端末試験システムであって、前記処理内容比較部は、予め、前記複数のテストケースにおける、1つの前記前処理項目を、各テストケースの前記1つの前処理項目に対応した前記動作条件を基に、全テストケースについて処理する時間が最大なるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最大処理時間と、全テストケースについて処理する時間が最小となるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最小処理時間との差から処理時間差を算出する処理コスト算出部(1112)を更に備え、前記実行順序決定部は、前記処理時間差が最小となる前記前処理項目について、前記最小処理時間となる前記複数のテストケースの実行順序を基礎として、前記処理時間差が小さい前記前処理項目から大きい前記前処理項目の順に前記複数のテストケースの並び替えを行い、かつ、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目については、先に並べ替えられたテストケースの実行順序と、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目に対応した動作条件とを基に並び替えることで、前記複数のテストケースの実行順序を並び替えることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の移動体通信端末試験システムであって、前記手順決定部が、前記一つのテストケースと前記次のテストケースの間で前記第1の比較結果、各前処理項目の動作条件が全て一致する場合に、前記次のテストケースの前記事前処理手順における前処理項目全ての実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記事後処理手順における後処理項目全ての実行を省略することを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の移動体通信端末試験システムであって、前記事前処理手順を構成する各前記前処理項目に対し、実行される順序が早いほど優先順位が高くなるように係数が付され、一つの前処理項目に沿って設定された前記動作条件を前記既知の動作条件に戻すための後処理項目に対し、前記一つの前処理項目と同じ前記係数が付され、前記実行処理手順にはいずれの前処理項目の係数よりも優先順位が低くなるように係数が付されており、前記手順決定部は、前記処理内容比較部が前記第1の比較により前記動作条件の異なる前処理項目を検知したときは、前記次のテストケースの前記前処理項目のうち、前記動作条件の異なる前処理項目を検知する直前の前処理項目の係数と同じ係数より前記順序方向と逆の順序方向の大きさの前記係数が付された前処理項目の実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記後処理項目のうち、前記次のテストケースの内、省略された該前処理項目と同じ係数が付された前記後処理項目の実行を省略することを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、試験の前段階で、複数の試験装置をそれぞれの既知の動作条件から該各種試験の内容に応じた動作条件に設定するための処理を実行単位で項目に分けた複数の前処理項目を実行の順序で並べた事前処理手順と、前記試験そのものを実行するための実行処理手順と、該実行処理手順後に実行され、前記事前処理手順と逆の順序で処理して、前記複数の試験装置の動作条件を前記既知の動作条件に戻すための複数の後処理項目を並べた事後処理手順とを1組のテストケースとして、前記テストケースに沿って前記試験を実行する移動体通信端末試験システムを用いた試験方法であって、前記複数のテストケースにおける各前処理項目の前記動作条件を相互比較し、同じ前処理項目で同じ動作条件のテストケースが連続して実行されるように、前記複数のテストケースの実行の順序を並べ替える並び替えステップと、実行対象の一つのテストケースについての試験開始前に、前記一つのテストケースと、前記一つのテストケースの次の実行対象のテストケースとの間で、それぞれの事前処理手順における前処理項目毎にそれに含まれる動作条件を前記事前処理手順の順序に沿って比較し、前記動作条件が一致しなくなる前処理項目があるまで、もしくは全て一致するまで第1の比較を行う手順比較ステップと、前記一つのテストケースと前記次のテストケースの間で前記第1の比較結果、各前処理項目の動作条件が全て一致する場合に、前記次のテストケースの前記事前処理手順における前処理項目全ての実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記事後処理手順における後処理項目全ての実行を省略する手順省略ステップとを備えたことを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の試験方法であって、前記並び替えステップの事前に、前記事前処理手順を構成する各前記前処理項目に対し、実行される順序が早いほど優先順位が高くなるように係数が付され、一つの前処理項目に沿って設定された前記動作条件を前記既知の動作条件に戻すための後処理項目に対し、前記一つの前処理項目と同じ前記係数が付され、前記実行処理手順にはいずれの前処理項目の係数よりも優先順位が低くなるように係数を付しておく係数設定ステップを更に備え、前記手順省略ステップにおいて、前記第1の比較により前記動作条件の異なる前処理項目を検知したときは、前記次のテストケースの前記前処理項目のうち、前記動作条件の異なる前処理項目を検知する直前の前処理項目の係数と同じ係数より前記順序方向と逆の順序方向の大きさの前記係数が付された前処理項目の実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記後処理項目のうち、前記次のテストケースの内、省略された該前処理項目と同じ係数が付された前記後処理項目の実行を省略することを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載の試験方法であって、前記並び替えステップの事前に、前記複数のテストケースにおける、1つの前記前処理項目を、各テストケースの前記1つの前処理項目に対応した前記動作条件を基に、全テストケースについて処理する時間が最大なるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最大処理時間と、全テストケースについて処理する時間が最小となるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最小処理時間との差から処理時間差を算出する処理時間差算出ステップを更に備え、前記並び替えステップにおいて、少なくとも前記処理時間差が最も大きい前処理項目について、前記最小処理時間となるように前記複数のテストケースの順序を実行の順序として決定することを特徴とする。
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の試験方法であって、前記並び替えステップにおいて、前記処理時間差が最小となる前記前処理項目について、前記最小処理時間となる前記複数のテストケースの実行順序を基礎として、前記処理時間差が小さい前記前処理項目から大きい前記前処理項目の順に前記複数のテストケースの並び替えを行い、かつ、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目については、先に並べ替えられたテストケースの実行順序と、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目に対応した動作条件とを基に並び替えることで、前記複数のテストケースの実行順序を並び替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る移動体通信端末試験システムは、連続して実行されるテストケース間で共通の前処理項目及び後処理項目を特定する。これにより、移動体通信端末試験システムは、連続するテストケース間で重複する処理項目の実行を省略し、各処理項目間の依存関係を維持しながら、次のテストケースを実行するために必要な処理項目のみを実行することが可能となる。
【0025】
また、本発明に係る移動体通信端末試験システムは、同じ前処理項目を有するテストケースが連続して実行されるようにテストケース間の実行順序を並べ替えることで、多くのテストケース間で前処理項目及び後処理項目を重複させ、処理項目の実行を省略することが可能となる。
【0026】
以上から、本発明に係る移動体通信端末試験システムは、各テストケース間で重複する処理項目の実行が省略されるため、テストケースごとに各試験装置を既定の状態まで戻す必要がなくなり、試験時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態及び変形例1に係る移動体通信端末試験システムのブロック図である。
【図2】本発明に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケースデータのデータ構造を説明するための図である。
【図3】第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序の変更に関する処理を説明するための図である。
【図4】テストケース間の実行順序の変更前後における各テストケース間の状態を説明するための図である。
【図5】第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおいて、テストケース間で共通する処理項目の実行を省略する処理を説明するための図である。
【図6】変形例1に係る移動体通信端末試験システムにおいて、テストケース間で共通する処理項目の実行を省略する処理を説明するための図である。
【図7】変形例2及び変形例3に係る移動体通信端末試験システムのブロック図である。
【図8】変形例2及び変形例3に係る処理コスト算出部が処理コスト差の算出に用いる、各前処理項目における処理コストの例である。
【図9】変形例2に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序の変更に関する処理を説明するための図である。
【図10】変形例3に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序の変更に関する処理を説明するための図である。
【図11】変形例3に係る実行順序決定部及び処理コスト算出部の処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】従来の移動体通信端末試験システムに関するシステム構成の例を示すシステムブロック図である。
【図13】移動体通信端末試験システムにおけるテストケースデータのデータ構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムの構成について図1を参照しながら説明する。本発明に係る移動体通信端末試験システムのテストケース実行制御部11は、処理内容比較部111と、手順決定部112を更に備えていることを特徴とする。なお、図12と同様の符号を付された機能ブロックは、図12で該符号を付された機能ブロックと同様の構成を示す。そのため本説明では、従来の移動体通信端末試験システムと異なる構成である処理内容比較部111と手順決定部112に着目して説明し、その他の構成については詳しい説明は省略する。
【0029】
(テストケースデータのデータ構造)
まず、本発明に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケースデータのデータ構造について図2を参照しながら説明する。図2は、テストケースデータのデータ構造を説明するための図である。本発明に係るテストケースデータには、図13に示した従来のテストケースデータに加えて、処理項目ごとに実行フラグとプロシジャ―デプスが構成要素として追加されている。実行フラグ及びプロシジャ―デプスについては後述する。なお、その他の構成要素については、図13に示すテストケースデータの構成要素と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0030】
本発明に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケースデータは、テストケースを構成する前処理項目、実行処理手順又は後処理項目を各試験装置に実行させるための処理パラメータと、各処理項目の実行を有効とする実行フラグが含まれる。テストケース実行制御部11は、テストケース記憶部12からテストケースデータを読み出し、試験実行部10を介して、テストケースデータに設定された処理パラメータを基に、各試験装置に各処理項目を実行させる。
【0031】
各試験装置に実行させる処理項目として、例えば前処理項目には、「温度設定」、「システム設定」、「周波数設定」、「出力レベルの設定」、又は、「端末との接続」などの機能が含まれる。また後処理項目には、前述した前処理項目に対応して、例えば、「温度設定のリセット」、「システム設定のリセット」、「出力レベルのリセット」、「周波数設定のリセット」、又は、「端末との接続解除」などの機能が含まれる(図2を参照)。
【0032】
本説明では、各テストケースの前処理項目及び後処理項目として、上述した機能が実行されるものとして説明する。以下に各処理項目の内容と対応する処理パラメータについて説明する。なお、上述した機能はテストケースを構成する処理項目の一例であり、上記機能に限定するものではない。
【0033】
前処理項目の「温度設定」は、温度管理装置3が、試験の条件に従い試験環境の温度を変更する処理項目である。また、対応する後処理項目である「温度設定のリセット」は、温度管理装置3が、前処理項目「温度設定」で変更された試験環境の温度を変更前のもとの状態(既定の状態)に戻す処理項目である。「温度設定」及び「温度設定のリセット」に対応する処理パラメータとしては、例えば35℃や24℃などの設定する温度を示す値を設定しておく。
【0034】
前処理項目の「システム設定」は、各試験装置が、試験の条件に従いソフトウェアを所定のバージョンに入れ替える処理項目である。また、対応する後処理項目である「システム設定のリセット」は、各試験装置が、前処理項目「システム設定」で入れ替えたソフトウェアを基準となる所定のバージョンのソフトウェアに戻す処理項目である。「システム設定」及び「システム設定のリセット」に対応する処理パラメータとしては、入れ替えの対象となる各ソフトウェアを識別可能な情報を設定しておく。処理パラメータの具体的な例としては、1.31や2.02などのソフトウェアのバージョンを示す値などがあげられる。
【0035】
前処理項目の「周波数設定」は、信号発生器等の試験装置が、試験条件に従い周波数帯域を設定する処理項目である。また、対応する後処理項目である「周波数設定のリセット」は、信号発生器等の試験装置が、前処理項目「周波数設定」で変更された周波数帯域を既定の状態に戻す処理項目である。「周波数設定」及び「周波数設定のリセット」に対応する処理パラメータとしては、例えば500MHzや1GHzなどの周波数を示す値を設定しておく。
【0036】
前処理項目の「出力レベルの設定」は、各試験装置が、試験条件に従い信号の出力レベルを変更する処理項目である。また、対応する後処理項目である「出力レベルのリセット」は、各試験装置が、前処理項目「出力レベルの設定」で変更された信号の出力レベルを既定の状態に戻す処理項目である。「出力レベルの設定」及び「出力レベルのリセット」に対応する処理パラメータとしては、例えば0dBmや−10dBmなどの信号の出力レベルを示す値を設定しておく。
【0037】
前処理項目の「端末との接続」は、疑似基地局(移動体通信端末試験システム)が、試験条件に従い接続条件を設定し、移動体通信端末2との通信を確立する処理項目である。また、対応する後処理項目である「端末との接続解除」は、該疑似基地局が、移動体通信端末との間で確立された通信を切断し、変更された接続条件を既定の状態に戻す処理項目である。「端末との接続」及び「端末との接続解除」に対応する処理パラメータとしては、複数の接続条件を判別するための値を設定する。本説明では、複数の接続条件をプリセットとして用意しておき、各接続条件に識別番号を付して、該識別番号を処理パラメータとして格納しているものとする。具体的には、識別番号「1」は「接続条件1」を、識別番号「2」は「接続条件2」を示しているものとする。
【0038】
試験実行手順である「試験の実施」では、各テストケースに対応する試験を実行する。処理パラメータには実行する複数の試験を判別するための値を設定しておく。本説明では、複数の試験として、識別子「1」は耐妨害波試験を、識別子「2」は送信試験を示しているものとする。
【0039】
各試験装置で各処理項目が実行される動作を、「温度設定」及び「温度設定のリセット」を例に説明する。前処理項目である「温度設定」の場合、試験環境の温度を変更する温度管理装置3が、前処理項目「温度設定」に設定された処理パラメータであるところの温度(例えば「35℃」)を読み出して、既定の状態(例えば「24℃」とする)から該前処理項目で指定された動作条件(35℃)に変更する。
【0040】
このとき、前処理項目「温度設定」に対応する後処理項目である「温度設定のリセット」の場合、温度管理装置3が、後処理項目「温度設定のリセット」に設定された処理パラメータであるところの既定の状態(「24℃」)を読み出して、試験環境の温度を前処理項目「温度設定」で変更された動作条件(35℃)から既定の状態(24℃)に戻す。
【0041】
実行フラグは、対応する処理項目を実行するか否かを判定するために用いられる。例えば図2では、実行フラグとして1が設定されている処理項目は実行対象として、実行フラグに0が設定されている処理項目は実行を省略する対象として判定される。
【0042】
また、テストケースを構成する各処理項目には、その実行順序に応じて係数が付されている。以降はこの係数をプロシジャデプスと呼ぶ。このプロシジャデプスは、出荷前にあらかじめ各処理項目に付しておく。また、操作部13を介して操作者が各処理項目のプロシジャデプスを設定できるようにしてもよい。
【0043】
前処理項目には、実行順序が早い処理項目ほど小さいプロシジャデプスが付されている。このとき処理時間のかかる前処理項目ほどプロシジャデプスがより小さくなるように各処理項目の順序を決定するとよい。具体的には、既定の状態から目的とする動作条件に変更するときに、より時間のかかる前処理項目ほど、より早い実行順序となるように各処理項目の順序を決定するとよい。また、依存関係がある処理項目間では、その依存関係により実行処理順序を決定しプロシジャデプスを付す。
【0044】
後処理項目には、対応する前処理項目と同じプロシジャデプスを付す。例えば、プロシジャデプスが100の前処理項目で変更した動作条件を既定の状態に戻す後処理項目には、対応する前処理項目と同じプロシジャデプス100が付される。これにより、図2に示す通り、実行順序がより早い後処理項目ほど大きいプロシジャデプスが付される。
【0045】
また、実行処理手順には、いずれの処理項目よりも大きい(最も大きい)プロシジャデプスを付しておく。なお上記で説明したように、各前処理項目及び各後処理項目にあらかじめプロシジャデプスを付しておく処理が、係数設定ステップに相当する。
【0046】
以上により、所定のプロシジャデプスが付された処理項目が実行された直後もしくは直前の試験環境を構築する場合、該所定のプロシジャデプスを基に、どの処理項目を実行すべきかを判定することが可能となる。具体的には、プロシジャデプス100が付された前処理項目が実行された直後の試験環境を構築したい場合、プロシジャデプス100未満の前処理項目を実行すればよいことが判定可能となる。また、実行処理手順を実行する直前の試験環境を構築する場合は、実行処理手順に付されたプロシジャデプス未満の前処理項目、つまり、全ての前処理項目を実行すればよいことを判定することが可能となる。
【0047】
なお、試験を実施するために必要な各機能をさらに細かいサブ機能に分けて処理項目としてもよい。この場合、例えばプロシジャデプス100の前処理項目に対応する機能を、サブ機能ごとに前処理項目とした場合、該サブ機能の前処理項目には処理順序に応じてプロシジャデプスを、例えば、200、300、400、・・・と設定するとよい。
【0048】
また、本説明ではプロシジャデプスを前処理項目の実行順序に従い昇順に付しているが、必ずしも昇順に限定するものではない。各処理項目の実行順序が特定できる情報であれば、例えば、10000、1000、100、・・・のような降順を用いてもよいし、A、B、C、・・・のような数値以外の情報を用いてもよい。なお、本説明では、プロシジャデプスが昇順に付されているものとして説明するものとする。
【0049】
処理内容比較部111は、実行順序決定部1111を備える。まず、処理内容比較部111は、操作部13から操作者が指定した試験条件に従いテストケース記憶部12よりテストケースデータを抽出する。処理内容比較部111は、抽出した複数のテストケースデータを実行順序決定部1111に送信し、テストケースデータの順序(以降はこの順序を「テストケース間の実行順序」と呼ぶ)を並べ替えさせる。
【0050】
実行順序決定部1111は、処理内容比較部111から複数のテストケースデータを受けて、各テストケースデータの処理パラメータをプロシジャデプスごとに比較する。その後、実行順序決定部1111は、前記比較の結果を基に、共通の前処理項目を有するテストケースが連続して実行されるように、テストケース間の実行順序を変更する。テストケース間の実行順序の変更方法について以下に説明する。
【0051】
(テストケース間の実行順序の変更)
実行順序決定部1111は、プロシジャデプスの低い順に、各テストケースにおける同じプロシジャデプスの前処理項目に対応した処理パラメータをそれぞれ比較し、同一の処理パラメータが設定された前処理項目を有するテストケースが連続して実行されるように、テストケース間の実行順序を並び替える。
【0052】
以下にテストケース間の実行順序の変更方法について、図3(a)〜図3(c)及び図4を参照しながら例をあげて具体的に説明する。図3は、テストケース間の実行順序の変更に関する処理を説明するための図である。図3(a)は実行順序を変更する前におけるテストケースデータの一覧の状態を示している。また、図3(b)及び図3(c)は各テストケース間の実行順序を並べ替えるときの過程の状態を示している。また、図4は、図3(a)に示したテストケースデータの一覧を受けて、実行順序決定部1111がテストケース間の実行順序を並べ替えた後のテストケースデータの一覧の状態を示している。
【0053】
<1>まず実行順序決定部1111は、各テストケース間でプロシジャデプス1が付された前処理項目の処理パラメータを比較し、該処理パラメータの順にテストケース間の実行順序を並べ替える。図3(b)はプロシジャデプス1の処理パラメータを基に、各テストケース間の実行順序を並び替えた結果である。この場合、実行順序決定部1111により、温度設定を26℃に設定するテストケースと、35℃に設定するテストケースに分類される。なお、本説明では処理パラメータが小さい順(昇順)にテストケース間の実行順序を並べ替えているが、昇順に限定するものではなく、処理パラメータが大きい順(降順)に並べ替えても同様の効果を得ることが可能である。
【0054】
<2>次に、実行順序決定部1111は、各テストケース間でプロシジャデプス10が付された前処理項目に対応した処理パラメータを比較し、該処理パラメータの順にテストケース間の実行順序を並べ替える。このとき実行順序決定部1111は、前回の比較で分類された範囲のテストケースどうし、つまり、以前に比較の基準とした全ての前処理項目(この場合はプロシジャデプス1の前処理項目が該当する)にそれぞれ同じ処理パラメータが設定されたテストケースどうしでのみテストケース間の実行順序を並べ替える。つまり実行順序決定部1111は、以前に並べ替えの基準とした前処理項目(プロシジャデプス1)に異なる処理パラメータを有するテストケース間では実行順序の並べ替えを行わない。
【0055】
図3(c)はプロシジャデプス10の処理パラメータを基に、各テストケース間の実行順序を並び替えた結果である。この場合、実行順序決定部1111により、例えば温度設定を26℃に設定するテストケース間で、システム設定を1.31に設定するテストケースと、2.02に設定するテストケースに分類される。同様に、温度設定を35℃に設定するテストケース間で、システム設定を1.31に設定するテストケースと、2.02に設定するテストケースに分類される。
【0056】
<3>以降、実行順序決定部1111は、<2>と同様の方法で、プロシジャデプス100、1000、10000が付された前処理項目の処理パラメータについても各テストケース間で比較し、逐次テストケース間の実行順序を並び替える。
【0057】
上記のようにテストケースの並び替えのときに比較対象とする前処理項目の優先順位は、プロシジャデプス1、10、100、・・・の順序で低くなる。これは、各テストケースが、より時間のかかる前処理項目を前処理手順の中のより早い順序に配しているためである。
【0058】
このように、事前処理手順における全てのプロシジャデプスの前処理項目について、各テストケース間で処理パラメータを比較し、テストケース間の実行順序を並び替える。図4は実行順序決定部1111がテストケース間の実行順序を変更した後の各テストケース間の状態(並び順)を示している。
【0059】
図4では、例えばプロシジャデプス1の「温度設定」に対応する処理パラメータは、テストケースCase4とCase3の間でのみ変更される(動作条件が変更される回数が1回である)。それに対し、プロシジャデプス10の「システム設定」に対応する処理パラメータは、テストケースCase8とCase5の間、テストケースCase4とCase3の間、及び、テストケースCase3とCase1の間で変更される(動作条件が変更される回数が3回である)。
【0060】
このように、前述した方法で各前処理項目の処理パラメータを比較し各テストケース間の実行順序を並べ替えることによって、プロシジャデプスが低い処理項目ほど、処理パラメータの違いにより動作条件が変更される回数がより少なくなる。これは、あるプロシジャデプスが付された前処理項目の処理パラメータを基準にテストケース間の実行順序を並べ替えるときに、以前に比較の基準とした前処理項目にテストケース間で同じ処理パラメータが設定されたテストケースの範囲でのみ、テストケース間の実行順序が並べ替えられているためである。なお上記で説明した、実行順序決定部1111によるテストケース間の実行順序の並び替えに係る処理が、並び替えステップに相当する。
【0061】
次に、処理内容比較部111は、連続する2つのテストケースを組(以降はこの組を「テストケースの組」と呼ぶ場合がある)として各前処理項目の処理パラメータをプロシジャデプスが低い順に逐次比較する。処理パラメータが異なる前処理項目を発見した場合は、該処理パラメータが異なる前処理項目のプロシジャデプスを手順決定部112に通知し、以降の比較処理の実行を停止する(手順決定部112については後述する)。つまり、処理内容比較部111は、最初に発見した処理パラメータが異なる前処理項目のプロシジャデプスを手順決定部112に通知する。また、処理内容比較部111は、処理パラメータが異なる前処理項目を発見できなかった場合は、実行処理手順のプロシジャデプスを手順決定部112に通知する。
【0062】
処理内容比較部111は、実行対象のテストケースにおいて、連続する2つのテストケースの組全てに対し前記比較処理を行い、テストケースの組ごとに手順決定部112に前記通知を行う。なお上記で説明した、処理内容比較部111による前記比較処理が、手順比較ステップに相当する。
【0063】
手順決定部112は、処理内容比較部111から実行処理手順のプロシジャデプスを受けた場合(比較対象のテストケースの組が同一の事前処理手順を有する場合)、該テストケースの組において、先に実行されるテストケースの事後処理手順の全後処理項目と、後から実行されるテストケースの事前処理手順の全前処理項目の実行を省略する。手順決定部112は、処理内容比較部111から処理パラメータが異なる前処理項目のプロシジャデプスを受けた場合、処理項目の実行を省略しない。
【0064】
(実行を省略する処理項目の決定)
第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおける、処理手順の省略について図5を参照しながら具体的に説明する。図5は、第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおいて、テストケース間で共通する処理項目の実行を省略する処理を説明するための図である。
【0065】
同じ構成(同じ試験装置を同じ動作条件で使用して)で試験を実行するテストケースが、連続して実行される場合、従来の移動体通信端末試験システムでは、テストケースごとに各前処理項目により試験環境を構築し、試験実行後に各後処理項目により各試験装置を既定の状態に戻していた。しかしながら、先に実行されるテストケースの試験直後は、各試験装置に対して、次に実行されるテストケースの試験に必要な動作条件の設定が既に行われており、次に実行されるテストケースの試験を即座に実行可能である。この場合、先に実行されるテストケースの各後処理項目と、次に実行されるテストケースの各前処理項目は冗長な処理であり、手順決定部112はこの冗長な処理の実行を省略する。
【0066】
第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムでは、処理内容比較部111から実行処理手順のプロシジャデプスを受けた場合(比較対象のテストケースの組が同一の事前処理手順を有する場合)にのみ、手順決定部112により処理項目の実行の省略が行われる。
【0067】
例えば、図5のテストケースCaseA1とCaseA2は事前処理手順の各前処理項目(プロシジャデプス1〜10000までの前処理項目)の処理パラメータが全て等しい。このとき処理内容比較部111から、実行処理手順のプロシジャデプス100000が手順決定部112に送信される。
【0068】
手順決定部112は、処理内容比較部111から受信したプロシジャデプスが実行処理手順のプロシジャデプス100000であることを確認し、先に実行されるテストケースCaseA1の後処理項目全てに対して、実行フラグに実行を省略するフラグ0を設定する。また、手順決定部112はあわせて、後から実行されるテストケースCaseA2の前処理項目全てに対して、実行フラグに実行を省略するフラグ0を設定する。このとき手順決定部112が実行フラグにフラグ0を設定する処理項目を、図5上に範囲M1で示す。
【0069】
処理内容比較部111から処理パラメータが異なる前処理項目のプロシジャデプスが通知された場合、手順決定部112は、処理項目の実行の省略は行わない。
【0070】
例えば、図5のテストケースCaseA5とCaseA6は、図5の範囲M2で示した前処理項目、つまりプロシジャデプス1000及び10000の前処理項目に対応した処理パラメータが異なる(このとき処理内容比較部111から手順決定部112にプロシジャデプス1000が通知される)。このとき手順決定部112は、処理内容比較部111から受信したプロシジャデプスが実行処理手順のプロシジャデプス100000ではないため、処理項目の実行の省略を示す実行フラグの変更を行わない。なお上記で説明した、手順決定部112による処理項目の実行の省略に係る処理が、手順省略ステップに相当する。
【0071】
その後、テストケース実行制御部11は、各テストケースデータをテストケース間の実行順序に従い逐次読込み、各テストケースの前処理項目、実行処理手順及び後処理項目を対応する試験装置に実行させるように試験実行部10に指示する。このとき、テストケース実行制御部11は、実行フラグに該処理項目を実行するフラグ1が設定されている処理項目を、該処理項目に対応する試験装置に実行させるように試験実行部10に指示する。また、テストケース実行制御部11は、実行フラグに実行を省略するフラグ0が設定されている処理項目については、該処理項目に対応する試験装置に実行させないように試験実行部10に指示する。
【0072】
これにより、連続した2つのテストケースが共通の前処理項目を有する場合、先に実行されるテストケースの試験後、先に実行されるテストケースの後処理項目の実行が省略される。このとき、実行が省略された後処理項目に対応する試験装置には、先に実行されるテストケースの前処理項目が実行された後の動作条件が保持される。そのうえで、次に実行されるテストケースの試験が実行され、該次に実行されるテストケースの後処理項目により、該試験装置の動作条件は既定の状態に戻される。
【0073】
このように、共通の前処理項目を有する連続した2つのテストケースの試験間で、各試験装置の動作条件を既定の状態に戻す処理(先に実行されるテストケースの後処理項目)と、再度設定し直す処理(次に実行されるテストケースの前処理項目)の実行が省略される。
【0074】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムは、まず同じ前処理項目を有するテストケースが連続して実行されるようにテストケース間の実行順序を並べ替える。次に、移動体通信端末試験システムは、連続して実行されるテストケース間で各前処理項目の処理パラメータを比較し共通の事前処理手順及び事後処理手順を特定する。最後に、移動体通信端末試験システムは、事前処理手順及び事後処理手順がテストケース間で共通の場合に、先に実行されるテストケースの全後処理項目と、次に実行されるテストケースの全前処理項目の実行を省略する。これにより、移動体通信端末試験システムは、各処理項目間の依存関係を維持しながら、連続するテストケース間で重複する前処理項目及び後処理項目の実行を省略することが可能となる。
【0075】
以上から、第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムは、各テストケース間で重複する処理項目の実行が省略されるため、テストケースごとに各試験装置を既定の状態まで戻す必要がなくなり、試験時間を短縮することが可能となる。
【0076】
なお、処理内容比較部111の比較結果を基に手順決定部112による処理項目の実行の省略が行われるとき、必ずしも実行順序決定部1111によるテストケース間の実行順序の並べ替えがあらかじめ行われている必要は無い。処理内容比較部111は、テストケース記憶部12から抽出した複数のテストケースデータに対して、前述した処理パラメータの比較処理を行う構成としてもよい。実行順序決定部1111により実行順序が並べ替えられた複数のテストケースデータに対して、処理内容比較部111が処理パラメータを比較し、その処理結果を受けて手順決定部112が処理項目の実行の省略を行うことで、より多くの前処理項目及び後処理項目の実行を省略することが可能となる。
【0077】
(変形例1)
第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムではテストケースの組で全ての前処理項目の処理パラメータが同一の場合のみ処理項目の実行の省略を行っていた。変形例1に係る移動体通信端末試験システムでは、さらに細かい処理項目単位で実行を省略する処理項目を決定する。なお本説明では、第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムとは動作の異なる手順決定部112aに着目して説明し、その他の構成については同様の動作となるため説明は省略する。
【0078】
(実行を省略する処理項目の決定)
変形例1に係る移動体通信端末試験システムにおける、処理手順の省略について図6を参照しながら具体的に説明する。図6は、変形例1に係る移動体通信端末試験システムにおいて、テストケース間で共通する処理項目の実行を省略する処理を説明するための図である。
【0079】
変形例1に係る移動体通信端末試験システムの手順決定部112aは、処理内容比較部111から受信したプロシジャデプスを基に、該プロシジャデプスに対応したテストケースの組に対して処理項目ごとに実行を省略する処理を決定する。
【0080】
このとき手順決定部112aは、受信したプロシジャデプスに対応したテストケースの組において、先に実行されるテストケースの後処理項目と、後から実行されるテストケースの前処理項目のうち、受信したプロシジャデプス未満のプロシジャデプスが設定された処理項目の実行を省略する。
【0081】
例えば、図6のテストケースCaseB5とCaseB6はプロシジャデプス1000及び10000の前処理項目に対応した処理パラメータが異なる。このとき、手順決定部112aは、処理内容比較部111からプロシジャデプス1000を受信する。
【0082】
手順決定部112aは、プロシジャデプス1000を受けて、先に実行されるテストケースCaseB5の後処理項目のうち、プロシジャデプス1000未満の後処理項目に対して、実行フラグに実行を省略するフラグ0を設定する。また、手順決定部112aはあわせて、後から実行されるテストケースCaseB6の前処理項目のうち、プロシジャデプス1000未満の前処理項目に対して、実行フラグに実行を省略するフラグ0を設定する。このとき手順決定部112aが実行フラグにフラグ0を設定する処理項目を、図6上に範囲M4で示す。
【0083】
また、図6のテストケースCaseB1とCaseB2のように事前処理手順の各前処理項目の処理パラメータが全て等しい場合、手順決定部112aは、処理内容比較部111から実行処理手順のプロシジャデプス100000を受信する。
【0084】
このとき、手順決定部112aは、受信した実行処理手順のプロシジャデプス100000を受けて、先に実行されるテストケースCaseB1の後処理項目のうち、プロシジャデプス100000未満の後処理項目に対して、実行フラグに実行を省略するフラグ0を設定する。また、手順決定部112aはあわせて、後から実行されるテストケースCaseB2の前処理項目のうち、プロシジャデプス100000未満の前処理項目に対して、実行フラグに実行を省略するフラグ0を設定する。このとき手順決定部112aが実行フラグにフラグ0を設定する処理項目を、図6上に範囲M3で示す。これにより、結果として第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムと同様に、テストケースCaseB1の全後処理項目とテストケースCaseB1の全前処理項目の実行が省略される。
【0085】
以上により、変形例1に係る移動体通信端末試験システムは、第1の実施形態よりさらに細かい処理項目単位で、テストケース間で共通する処理項目の実行を省略することが可能となる。これにより、変形例1に係る移動体通信端末試験システムは、第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムより、さらに試験時間を短縮することが可能となる。
【0086】
(変形例2)
第1の実施形態に係る実行順序決定部1111は、プロシジャデプスの低い順に、各テストケースにおける同じプロシジャデプスの前処理項目に対応した処理パラメータをそれぞれ比較し、その比較結果を基にテストケース間の並び替えを行っていた。しかしながら、前処理項目の中には、どのように実行順序を並び替えても試験時間があまり短縮されない前処理項目も存在する。また、実行する全てのテストケース間で、特定の前処理項目について同じ処理パラメータが設定されている場合に、この前処理項目についても、どのように実行順序を並び替えても試験時間が短縮されない。このような前処理項目について、対応する処理パラメータを比較しテストケース間の実行順序を並び替える場合、並び替えに係る処理に対し、試験時間の短縮に係る効果が少ない。この影響は、実行するテストケースの数が増えるほど顕著に表れる。
【0087】
一方で、1つの前処理項目を対象としてテストケースを並び替えたとき、処理時間が最大となる場合と、処理時間が最小となる場合がある。変形例2に係る移動体通信端末試験システムでは、テストケースの並び替えによって、全テストケースについてその1つの前処理項目を処理する時間の取り得る範囲を示す係数(以降は「処理コスト差」と呼ぶ)を、処理時間が最大となる場合の時間と最小となる場合の時間との差から算出する。このとき、変形例2に係る移動体通信端末試験システムは、各前処理項目に対し処理コスト差を算出する(処理コスト差の具体的な算出方法については後述する)。つまり、この処理コスト差が大きい前処理項目ほど、テストケース間の実行順序の並び替えにより、取り得る全体の試験時間の幅が広いことを示している。これは言い換えれば、この処理コスト差が大きい前処理項目ほど、該前処理項目について同じ動作条件のテストケースが連続して実行されるようにテストケース間の実行順序を並び替えたときに、試験時間の短縮に係る効果が最も大きいことを示している。
【0088】
変形例2に係る移動体通信端末試験システムは、算出した処理コスト差が最も大きい前処理項目について、同じ動作条件のテストケースが連続して実行されるように並び替える。これにより、変形例2に係る移動体通信端末試験システムは、テストケースの並び替えに係る処理時間を短縮しつつ、全体の試験時間を短縮することを特徴とする。以降に、変形例2に係る移動体通信端末試験システムについて説明する。
【0089】
まず変形例2に係る移動体通信端末試験システムの構成について、図7を参照しながら説明する。図7は、変形例2に係る移動体通信端末試験システムのブロック図である。図7に示す通り、変形例2に係る移動体通信端末試験システムは、処理内容比較部111aの構成が、第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムと異なる。本説明では、第1の実施形態と異なる処理内容比較部111aの構成と処理に着目して説明する。なお、図1と同様の符号が付された機能ブロックは、図1で該符号が付された機能ブロックと同様の構成を示すものであり、詳しい説明は省略する。
【0090】
変形例2に係る処理内容比較部111aは、実行順序決定部1111aと、処理コスト算出部1112とで構成される。まず、処理内容比較部111aは、操作部13から操作者が指定した試験条件に従いテストケース記憶部12よりテストケースデータを抽出する。処理内容比較部111aは、テストケースデータを抽出すると、まず処理コスト算出部1112に、処理コスト差を算出させる。
【0091】
処理コスト算出部1112は、処理内容比較部111aからの指示を受けて、抽出された一連のテストケースデータを実行する場合における、各前処理項目の処理コスト差を算出する。以降に、処理コスト算出部1112の処理コスト差の算出に係る処理について、図8及び図9を参照して説明する。図8は、処理コスト算出部1112が処理コスト差を算出するための、各前処理項目において動作条件の変更に係る時間(以降は「処理コスト」と呼ぶ)の例である。図9は、変形例2に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序の変更に関する処理を説明するための図である。図9(a)は、テストケース間の実行順序を変更する前の状態を示している。
【0092】
なお、図8に示す各前処理項目における処理コストは、処理コスト算出部1112に記憶領域を設けて、該記憶領域にあらかじめ記憶させておいてもよい。この場合、各前処理項目でとり得る処理パラメータごとに、処理コストを処理コスト算出部1112の該記憶領域にあらかじめ記憶させることになる。また別の方法として、処理コスト算出部1112に処理コストを算出するための機能を、前処理項目ごとに設けてもよい。この処理コストを算出するための機能とは、例えば「温度設定」の場合、「温度を9℃上昇させるには30分かかる」といった処理ロジックが該当する。
【0093】
処理コスト算出部1112は、まず、1つの前処理項目を対象としてテストケースを並び替えたとき、抽出された全テストケースについて、その1つの前処理項目を処理する場合に、連続する各テストケース間で動作条件を変更する時間の和が最大となる時間(以降は「最大処理時間」と呼ぶ)と、最小となる時間(以降は「最小処理時間」と呼ぶ)を、各前処理項目について算出する。処理コスト算出部1112による、最大処理時間及び最小処理時間の算出方法について、1つの前処理項目として「温度設定」を対象とした場合を例に、以下に具体的に説明する。
【0094】
まず、処理コスト算出部1112による最大処理時間の算出方法について説明する。
【0095】
<A1>まず処理コスト算出部1112は、1つのテストケースの初期状態を基準とし次のテストケースの動作条件に変更する場合に、最も処理コストの大きいテストケースを特定する。このとき「初期状態」は、操作者により試験の条件を指定され試験が実行される直前の状態(各試験装置の動作条件)を示している。図9(a)では、「温度設定」の初期状態は8℃である。このとき、図8(a)に示した「温度設定」の処理コスト(つまり処理時間)から、35℃に変更する場合に最も処理コストが大きくなることを特定する。これにより、処理コスト算出部1112は、テストケースCase1〜Case6の中から、「温度設定」を35℃とするCase3を抽出し、テストケース間の実行順序の先頭に並べる。
【0096】
<A2>次に処理コスト算出部1112は、直前にテストケース間の実行順序に並べたCase3の状態、つまり、「温度設定」35℃を基準として、次の動作条件に変更する場合に最も処理コストが大きくなるテストケースを、まだテストケース間の実行順序に並べていないテストケース(この場合、Case1、Case2、及びCase4〜Case6)の中から抽出する。Case3を基準とした場合、処理コスト算出部1112は、「温度設定」を8℃に設定するCase2を抽出することになる。処理コスト算出部1112は、抽出したCase2を、基準としたテストケース(Case3)の次に並べる。
【0097】
<A3>以降、処理コスト算出部1112は、<A2>と同様の方法で、全てのテストケースを、テストケース間の実行順序に並べる。これにより、連続するテストケース間で、対象とした前処理項目の処理コストが最も大きくなるように、テストケースが並べ替えられることになる。この方法で、図9(a)に示すCase1〜Case6を並び替えた場合、Case3、Case2、Case1、Case5、Case4、Case6の順に並べられることになる。処理コスト算出部1112は、このテストケース間の実行順序で対象とする前処理項目(つまり温度設定)を処理した場合の、処理コストの和を最大処理時間として算出する。図9(a)の「温度設定」の場合、最大処理時間は275分となる。
【0098】
次に、処理コスト算出部1112による最小処理時間の算出方法について説明する。処理コスト算出部1112による最小処理時間の算出方法の考え方は、最大処理時間の算出方法の考え方と基本的には同じである。つまり、最小処理時間を算出する場合、対象とした前処理項目について、連続するテストケース間で処理コストが最も小さくなるように、テストケースを並べ替える。このとき、対象とした前処理項目について、初期状態を基準として、同じ動作条件の前処理項目が連続して実行されるようにテストケース間の実行順序が並び替えられる。
【0099】
<B1>まず処理コスト算出部1112は、初期状態を基準とし次の動作条件に変更する場合に、最も処理コストの小さいテストケースを特定する。図9(a)では、「温度設定」の初期状態は8℃である。このとき、「温度設定」を変更しない場合、つまり、8℃とする場合に最も処理コストが小さくなる。そのため、処理コスト算出部1112は、図8(a)に示す「温度設定」の処理コストを基に、テストケースCase1〜Case6の中から、「温度設定」を8℃とするCase2を抽出し、テストケース間の実行順序の先頭に並べる。
【0100】
<B2>次に処理コスト算出部1112は、直前にテストケース間の実行順序に並べたCase2の状態、つまり、「温度設定」8℃を基準として、次の動作条件に変更する場合に最も処理コストが小さくなるテストケースを、まだテストケース間の実行順序に並べていないテストケース(この場合、Case1、及びCase3〜Case6)の中から抽出する。Case2を基準とした場合、処理コスト算出部1112は、「温度設定」を8℃に設定するCase5を抽出することになる。処理コスト算出部1112は、抽出したCase5を、基準としたテストケース(Case2)の次に並べる。
【0101】
<B3>以降、処理コスト算出部1112は、<B2>と同様の方法で、全てのテストケースを、テストケース間の実行順序に並べる。この方法で、図9(a)に示すCase1〜Case6を並び替えた場合、Case2、Case5、Case6、Case1、Case4、Case3の順に並べられることになる。処理コスト算出部1112は、このテストケース間の実行順序で、図8(a)に示す「温度設定」の処理コストを基に、このテストケース間の実行順序で対象とする前処理項目(つまり温度設定)を処理した場合の、処理コストの和を最小処理時間として算出する。図9(a)の「温度設定」の場合、最小処理時間は90分となる。
【0102】
次に処理コスト算出部1112は、算出した最大処理時間と最小処理時間との差を、処理コスト差として算出する。この処理コスト差が処理時間差に相当する。例えば、「温度設定」の場合の処理コスト差は、(最大処理時間−最小処理時間)=(275分−90分)=185分となる。
【0103】
処理コスト算出部1112は、同様の方法で、その他の前処理項目についても処理コスト差を算出する。図9(a)の場合、「システム設定」の処理コスト差は70分、「周波数設定」の処理コスト差は0.3分、「出力レベルの設定」の処理コスト差は14分となる。処理コスト算出部1112は、前処理項目ごとに算出した処理コスト差を、実行順序決定部1111aに通知する。なお上記で説明した、処理コスト算出部1112による処理コスト差の算出に係る処理が、処理時間差算出ステップに相当する。
【0104】
実行順序決定部1111aは、処理コスト算出部1112から各前処理項目に対応する処理コスト差を受けて、処理コスト差が最も大きい前処理項目を特定する。図9(a)の場合、「温度設定」の処理コスト差(185分)が最も高い。そのため処理コスト算出部1112は、「温度設定」を特定することになる。
【0105】
実行順序決定部1111aは、特定した処理コスト差が最も大きい前処理項目を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替える。このときの、テストケース間の実行順序の並び替えに係る処理は、前述した最小処理時間を求める場合の、各テストケースの並び替えに係る処理と同様である。そのため、このとき最小処理時間の導出時に求めたテストケース間の実行順序を用いてもよい。この場合、<B1>〜<B3>に示した、最小処理時間を導出するためのテストケース間の実行順序を求める処理を、実行順序決定部1111aにあらためて実行させる必要はない。図9(b)には、図9(a)で示した各テストケースを、前処理項目「温度設定」を対象とした、各テストケース間の並び替えの結果が示されている。これにより、「温度設定」について、同じ処理パラメータが設定されたテストケースが連続して実行されるように、テストケース間の実行順序が並び替えられる。
【0106】
次に、処理内容比較部111aは、実行順序決定部1111aによるテストケース間の実行順序の並び替えの結果を受けて、連続する2つのテストケースを組として各前処理項目の処理パラメータをプロシジャデプスが低い順に逐次比較する。以降は、第1の実施形態と同様に、処理内容比較部111aの比較結果を受けて、手順決定部112が処理手順の省略に係る処理を実行する。
【0107】
以上、変形例2に係る移動体通信端末試験システムでは、同じパラメータの前処理項目が連続して実行されるようにテストケース間の実行順序を並び替えることで、最も時間を短縮可能な前処理項目を特定する。これにより、全ての前処理項目について、処理パラメータを比較しテストケース間の実行順序を並び替える必要が無くなる。そのため、テストケース間の実行順序の並び替えに係る処理時間を短縮し、かつ、全体の試験時間を短縮することが可能となる。
【0108】
なお、必ずしも上記説明のように全ての前処理項目について処理コスト差を算出する必要はない。テストケース間の実行順序を変更しても試験時間の短縮の効果が小さいことが、あらかじめわかっている前処理項目については、処理コスト算出部1112による処理コスト差の算出に係る処理の対象から外せるようにしてもよい(つまり処理コスト算出部1112は、あらかじめ決められた一部の前処理項目についてのみ、処理コスト差を算出することになる)。この場合、実行順序決定部1111aは、処理コスト差を算出した前処理項目を対象として、テストケース間の実行順序の並び替えの対象とする前処理項目を特定することになる。これにより、処理コスト算出部1112による処理コスト差の算出に係る処理において、計算量を低減し処理時間を短縮することが可能となる。
【0109】
また、手順決定部112として、第1の実施形態に係る手順決定部112を適用してもよいし、変形例1に係る手順決定部112aを適用してもよい。
【0110】
(変形例3)
変形例2に係る実行順序決定部1111aは、処理コスト算出部1112が算出した各前処理項目の処理コスト差を受けて、処理コスト差が最も高い前処理項目を対象として、テストケース間の実行順序を並び替えていた。
【0111】
変形例3に係る移動体通信端末試験システムでは、処理コスト差が最大の前処理項目以外についても、同じ動作条件の前処理項目が連続して実行されるようにテストケース間の実行順序を並び替える。このとき、変形例3に係る移動体通信端末試験システムは、処理コスト差を基に、各前処理項目間で優先度付けを行い、テストケースの並び替えの対象とする(具体的な処理の内容については後述する)。これにより、変形例3に係る移動体通信端末試験システムは、変形例2に係る移動体通信端末試験システムよりも更に、全体の試験時間を短縮可能とすることを特徴とする。以降に、変形例3に係る移動体通信端末試験システムについて説明する。
【0112】
変形例3に係る移動体通信端末試験システムは、変形例2に係る移動体通信端末試験システムと、実行順序決定部1111aの処理内容が異なる。本説明では、変形例2と異なる実行順序決定部1111bの処理内容に着目して説明する。なお、その他の処理ブロックの構成及び処理内容は変形例2と同様のため、具体的な説明は省略する。
【0113】
変形例3に係る実行順序決定部1111bの動作について、図10を参照しながら説明する。図10は、変形例3に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序の変更に関する処理を説明するための図である。実行順序決定部1111bは、処理コスト算出部1112から各前処理項目に対応する処理コスト差を受信する。例えば図10(a)は、テストケース間の実行順序を変更する前の状態を示している。なお、図10(a)は図9(a)と同じ状態を示している。そのため処理コスト算出部1112により、図8に示した各前処理項目の処理コストを基に算出された各前処理項目の処理コスト差は、図9(a)と同様に、「温度設定」が185分、「システム設定」が70分、「周波数設定」が0.3分、「出力レベルの設定」が14分となる。
【0114】
実行順序決定部1111bは、処理コスト算出部1112から各前処理項目に対応する処理コスト差を受けて、処理コスト差が小さい順に各前処理項目を対象として、各前処理項目について連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、テストケース間の実行順序を遂次並び替える。以下に、実行順序決定部1111bのテストケース間の実行順序の並び替えに係る具体的な処理について、図10を参照しながら具体的に説明する。
【0115】
<C1>まず実行順序決定部1111bは、各前処理項目の処理コスト差を比較し、最も処理コスト差が小さい前処理項目を特定する。図10(a)の場合、「周波数設定」の処理コスト差が最も小さいため、実行順序決定部1111bは、「周波数設定」を特定することになる。
【0116】
<C2>次に実行順序決定部1111bは、特定した前処理項目(この場合、「周波数設定」が該当する)を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替える。図10(b)は、図10(a)をテストケース間の実行順序の並び替え実施前の状態とし、前処理項目「周波数設定」を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替えた場合の結果を示している。なお、各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、テストケース間の実行順序を並び替える方法は、前述した最小処理時間を求める場合の、各テストケースの並び替えに係る処理と同様である。そのため、このとき最小処理時間の導出時に求めたテストケース間の実行順序を用いてもよい。この場合、<B1>〜<B3>に示した、最小処理時間を導出するためのテストケース間の実行順序を求める処理を、実行順序決定部1111bにあらためて実行させる必要はない。
【0117】
<C3>次に実行順序決定部1111bは、直前にテストケース間の並び替えの対象とした前処理項目の次に、処理コスト差の小さい前処理項目を特定する。直前にテストケース間の並び替えの対象とした前処理項目が「周波数設定」の場合、次に処理コスト差の小さい前処理項目は「出力レベルの設定」となる。そのため、このとき実行順序決定部1111bは、「出力レベルの設定」を特定することになる。
【0118】
実行順序決定部1111bは、次に処理コスト差の小さい前処理項目を特定すると、特定した前処理項目を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替える。このとき実行順序決定部1111bは、直前に並び替えられたテストケース間の実行順序を、特定した前処理項目を対象とした並び替えを実施する前の状態とし、各テストケースを並び替える。図10(c)は、図10(b)をテストケース間の実行順序の並び替え実施前の状態とし、前処理項目「出力レベルの設定」を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替えた場合の結果を示している。
【0119】
<C4>以降、実行順序決定部1111bは、<C3>と同様の方法で、処理コスト差の小さい順に、残りの前処理項目についても対象として各テストケース間の実行順序を並び替える。つまり実行順序決定部1111bは、「システム設定」、「温度設定」の順で各前処理項目を対象とし、テストケース間の実行順序を並び替えることになる。例えば、図10(d)は、図10(c)をテストケース間の実行順序の並び替え実施前の状態とし、前処理項目「システム設定」を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替えた場合の結果を示している。また、図10(e)は、図10(d)をテストケース間の実行順序の並び替え実施前の状態とし、前処理項目「温度設定」を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替えた場合の結果を示している。
【0120】
ここで、図9(b)に示した変形例2に係る実行順序決定部1111aによる並び替えの結果と、図10(e)に示した実行順序決定部1111bによる並び替えの結果を比較する。処理コスト差の最も大きい「温度設定」を対象として、図9(b)と図10(e)との間で処理パラメータを比較した場合、双方で同じ並び順となっている。そのため、「温度設定」に係る処理の時間は、図9(b)と図10(e)とでは同じである。しかしながら、「温度設定」の次に処理コスト差の大きい「システム設定」を対象として処理パラメータを比較した場合、「温度設定」を8℃に設定する範囲において、図10(e)の方が処理パラメータを変更する回数が少ない。そのため、図10(e)の結果が、図9(b)の結果よりも、より試験時間を短縮することが可能であることがわかる。
【0121】
このように、処理コスト差の小さい順に各前処理項目を対象として、テストケース間の実行順序を遂次並び替えることで、処理コスト差が最大の前処理項目のみを対象としてテストケース間の実行順序を並び替えた場合よりも、更に、試験時間を短縮することが可能となる。
【0122】
なお上記では、実行順序決定部1111bが、処理コスト差を算出した全ての前処理項目を遂次対象として、テストケース間の実行順序を並び替える例について説明した。しかし、必ずしも全ての前処理項目を対象として、テストケース間の実行順序を並び替える必要はない。処理コスト差の小さい前処理項目は、対象としてテストケース間の実行順序を並び替えても、試験時間の短縮に関する効果が小さい。そのため、テストケース間の実行順序の並び替えを行う前段階で、テストケースの並び替えの対象とする前処理項目を特定してもよい。このとき、処理コスト差が所定値以上の前処理項目のみを並び替えの対象として抽出してもよい。また、処理コスト差の大きい順に所定数の前処理項目を対象として抽出してもよい。
【0123】
例えば、図10(a)を例に、処理コスト差が60分以上の前処理項目を対象として抽出した場合、テストケースの並び替えの対象となる前処理項目は、「温度設定」と「システム設定」となる。同様に、図10(a)を例に、処理コスト差の上位2つの前処理項目を抽出した場合、テストケースの並び替えの対象となる前処理項目は、「温度設定」と「システム設定」となる。
【0124】
また、実行順序決定部1111bは、処理コスト差を算出していない前処理項目がある場合、この前処理項目を対象としたテストケース間の実行順序の並び替えは行わない。この前処理項目は、前述した、処理コスト算出部1112による処理コスト差の算出に係る処理の対象から外した前処理項目に相当する。
【0125】
次に、処理内容比較部111aは、実行順序決定部1111bによるテストケース間の実行順序の並び替えの結果を受けて、連続する2つのテストケースを組として各前処理項目の処理パラメータをプロシジャデプスが低い順に逐次比較する。以降は、第1の実施形態及び変形例2と同様に、処理内容比較部111aの比較結果を受けて、手順決定部112が処理手順の省略に係る処理を実行する。
【0126】
次に、変形例3に係る移動体通信端末試験システムにおける、処理コスト算出に係る処理と、テストケース間の実行順序の並び替えに係る処理について、図11を参照しながら説明する。図11は、変形例3に係る実行順序決定部1111b及び処理コスト算出部1112の処理を説明するためのフローチャートである。
【0127】
(ステップS01)
処理内容比較部111aは、操作部13から操作者が指定した試験条件に従いテストケース記憶部12よりテストケースデータを抽出する。処理内容比較部111aは、テストケースデータを抽出すると、まず処理コスト算出部1112に、処理コスト差を算出させる。
【0128】
処理コスト算出部1112は、処理内容比較部111aからの指示を受けて、1つの前処理項目を抽出された全テストケースについて処理する場合に、連続する各テストケース間で動作条件を変更する時間の和が、最大となる最大処理時間と、最小となる最小処理時間とを、各前処理項目について算出する。処理コスト算出部1112は、各前処理項目について、算出した最大処理時間と最小処理時間との差から処理コスト差を算出する。このとき、テストケース間の実行順序を変更しても試験時間の短縮の効果が小さいことが、あらかじめわかっている前処理項目については、処理コスト差の算出に係る処理の対象から外してもよい。なお、この処理コスト算出部1112による処理コスト差の算出に係る処理が、処理時間差算出ステップに相当する。
【0129】
(ステップS02)
次に、実行順序決定部1111aが、処理コスト算出部1112が算出した各前処理項目の処理コスト差を基に、テストケース間の実行順序の並び替えに係る処理を開始する。このとき、実行順序決定部1111aは、処理コスト差を基に、あらかじめ並び替えの対象とする前処理項目を抽出するようにしてもよい。
【0130】
(ステップS03)
次に、実行順序決定部1111aは、各前処理項目の処理コスト差を比較し、最も処理コスト差が小さい前処理項目を特定する。例えば、図10(a)の場合、実行順序決定部1111bは、「周波数設定」を特定することになる。
【0131】
(ステップS04)
次に、実行順序決定部1111aは、特定した前処理項目を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替える。例えば、「周波数設定」を対象としてテストケースの並び替えを行う場合、図10(a)をテストケース間の実行順序の並び替え実施前の状態とし、図10(b)に示すような並び替えの結果が得られることになる。
【0132】
(ステップS05)
次に、実行順序決定部1111aは、抽出した全ての前処理項目について、該前処理項目を対象としたテストケースの並び替えを行ったかを確認する。抽出した全ての前処理項目について並び替えを行っている場合(ステップS05、Y)、テストケースの並び替えに係る処理を終了する。
【0133】
(ステップS06)
まだ並び替えの対象としていない前処理項目が残っている場合(ステップS05、N)、実行順序決定部1111aは、並び替えの対象としていない前処理項目の中から、処理コスト差が最も小さい前処理項目を特定する。例えば、前処理項目「周波数設定」を対象としてテストケース間の実行順序を並び替えた後ならば、実行順序決定部1111aは、「周波数設定」の次に処理コスト差の小さい前処理項目「出力レベルの設定」を特定することになる。
【0134】
実行順序決定部1111aは、前処理項目を特定したら、特定した前処理項目を対象として、再度テストケース間の実行順序を並び替える。このとき実行順序決定部1111aは、直前に並び替えられたテストケース間の実行順序を、特定した前処理項目を対象とした並び替えを実施する前の状態とし、テストケース間の実行順序を並び替える。例えば、前処理項目「周波数設定」を対象としてテストケース間の実行順序を並び替えた後であれば、まず実行順序決定部1111aは、図10(b)をテストケース間の実行順序の並び替え実施前の状態とする。次に実行順序決定部1111aは、前処理項目「出力レベルの設定」を対象として、連続する各テストケース間の処理コストの和が最小となるように、各テストケースを並び替える。図10(c)が、実行順序決定部1111aによる、「出力レベルの設定」を対象としたテストケース間の実行順序の並び替えの結果に相当する。
【0135】
ここで、テストケース間の実行順序の並び替えの結果について、変形例3に係る移動体通信端末試験システムと、変形例2に係る移動体通信端末試験システムとを、図9(b)及び図10(e)を参照しながら比較する。図9(b)は、変形例2に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序を並び替えた結果を示している。また図10(e)は、変形例3に係る移動体通信端末試験システムにおけるテストケース間の実行順序を並び替えた結果を示している。
【0136】
例えば、図9(b)に示した前処理項目「システム設定」に着目すれば、テストケースCase2、Case5、Case6の実行順序を、図10(e)のように、Case6、Case5、Case2の実行順序に変更した場合、「システム設定」について動作条件が変更されるタイミングが2回から1回に減少する。
【0137】
ここで、図8(b)に示した「システム設定」の処理コストを基に、初期状態を基準としてCase2、Case5、及びCase6を処理する場合における動作条件の変更に係る処理コストを計算する。この計算結果によると、変形例3に係る移動体通信端末試験システムは、変形例2に係る移動体通信端末試験システムより該処理コストが25分短縮されることになる。具体的に示すと、図9(b)における初期状態とCase2の間及びCase2とCase5の間にかかる処理コストの和(45分)から、図10(e)におけるCase5からCase2の間にかかる処理コスト(20分)に短縮されることになる。
【0138】
以上、変形例3に係る移動体通信端末試験システムでは、処理コスト差が最大の前処理項目以外についても、同じ動作条件の前処理項目が連続して実行されるようにテストケース間の実行順序を並び替える。これにより、処理コスト差が最大の前処理項目のみを対象としてテストケース間の実行順序を並び替える場合(変形例2に係る移動体通信端末試験システム)よりも更に、全体の試験時間を短縮することが可能となる。
【0139】
なお、変形例2と同様に、手順決定部112として、第1の実施形態に係る手順決定部112を適用してもよいし、変形例1に係る手順決定部112aを適用してもよい。
【符号の説明】
【0140】
1 移動体通信端末試験システム 2 移動体通信端末
3 温度管理装置 4 電源装置 5 振動装置
10 試験実行部
11、11a テストケース実行制御部
12 テストケース記憶部 13 操作部
111、111a 処理内容比較部
112、112a 手順決定部
1111、1111a、1111b 実行順序決定部
1112 処理コスト算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試験装置を制御し被試験対象である移動体通信端末(2)の各種試験を実行する試験実行部(10)と、前記試験の前段階で、前記複数の試験装置をそれぞれの既知の動作条件から該各種試験の内容に応じた動作条件に設定するための処理を実行単位で項目に分けた複数の前処理項目を実行の順序で並べた事前処理手順と、前記試験そのものを実行するための実行処理手順と、該実行処理手順後に実行され、前記事前処理手順と逆の順序で処理して、前記複数の試験装置の動作条件を前記既知の動作条件に戻すための複数の後処理項目を並べた事後処理手順とを1組のテストケースとして、複数のテストケースを記憶するテストケース記憶部(12)とを備え、前記試験実行部が前記テストケースに沿って前記試験を実行する移動体通信端末試験システムであって、
実行対象の一つのテストケースについての試験開始前に、前記一つのテストケースと、前記一つのテストケースの次の実行対象のテストケースとの間で、それぞれの事前処理手順における前処理項目毎にそれに含まれる動作条件を前記事前処理手順の順序に沿って比較し、前記動作条件が一致しなくなる前処理項目があるまで、もしくは全て一致するまで第1の比較を行う処理内容比較部(111)と、
前記第1の比較により一致する前処理項目がある場合に、前記一致する前処理項目に対応した前記一つのテストケースの後処理項目の実行と、前記次のテストケースの前記一致する前処理項目の実行とを省略して、前記一つのテストケースと前記次のテストケースの試験を前記試験実行部に指示する手順決定部(112)とを備えたことを特徴とする移動体通信端末試験システム。
【請求項2】
前記複数のテストケースが3以上備えられており、
前記処理内容比較部は、予め、前記複数のテストケースにおける各前処理項目の前記動作条件を相互比較し、同じ前処理項目で同じ動作条件のテストケースが連続して実行されるように、前記複数のテストケースの実行の順序を並べ替える実行順序決定部(1111)を備え、該並び替えの後に、前記実行対象の一つのテストケースと前記次の実行対象のテストケースとの間での前記第1の比較を行うことを特徴とする請求項1に記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項3】
前記処理内容比較部は、予め、前記複数のテストケースにおける、1つの前記前処理項目を、各テストケースの前記1つの前処理項目に対応した前記動作条件を基に、全テストケースについて処理する時間が最大なるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最大処理時間と、全テストケースについて処理する時間が最小となるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最小処理時間との差から処理時間差を算出する処理コスト算出部(1112)を更に備え、
前記実行順序決定部は、少なくとも前記処理時間差が最も大きい前処理項目について、前記最小処理時間となるように前記複数のテストケースの順序を実行の順序として決定することを特徴とする請求項2に記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項4】
前記処理内容比較部は、予め、前記複数のテストケースにおける、1つの前記前処理項目を、各テストケースの前記1つの前処理項目に対応した前記動作条件を基に、全テストケースについて処理する時間が最大なるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最大処理時間と、全テストケースについて処理する時間が最小となるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最小処理時間との差から処理時間差を算出する処理コスト算出部(1112)を更に備え、
前記実行順序決定部は、前記処理時間差が最小となる前記前処理項目について、前記最小処理時間となる前記複数のテストケースの実行順序を基礎として、前記処理時間差が小さい前記前処理項目から大きい前記前処理項目の順に前記複数のテストケースの並び替えを行い、かつ、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目については、先に並べ替えられたテストケースの実行順序と、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目に対応した動作条件とを基に並び替えることで、前記複数のテストケースの実行順序を並び替えることを特徴とする請求項2に記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項5】
前記手順決定部が、前記一つのテストケースと前記次のテストケースの間で前記第1の比較結果、各前処理項目の動作条件が全て一致する場合に、前記次のテストケースの前記事前処理手順における前処理項目全ての実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記事後処理手順における後処理項目全ての実行を省略することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項6】
前記事前処理手順を構成する各前記前処理項目に対し、実行される順序が早いほど優先順位が高くなるように係数が付され、一つの前処理項目に沿って設定された前記動作条件を前記既知の動作条件に戻すための後処理項目に対し、前記一つの前処理項目と同じ前記係数が付され、前記実行処理手順にはいずれの前処理項目の係数よりも優先順位が低くなるように係数が付されており、
前記手順決定部は、前記処理内容比較部が前記第1の比較により前記動作条件の異なる前処理項目を検知したときは、前記次のテストケースの前記前処理項目のうち、前記動作条件の異なる前処理項目を検知する直前の前処理項目の係数と同じ係数より前記順序方向と逆の順序方向の大きさの前記係数が付された前処理項目の実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記後処理項目のうち、前記次のテストケースの内、省略された該前処理項目と同じ係数が付された前記後処理項目の実行を省略することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項7】
試験の前段階で、複数の試験装置をそれぞれの既知の動作条件から該各種試験の内容に応じた動作条件に設定するための処理を実行単位で項目に分けた複数の前処理項目を実行の順序で並べた事前処理手順と、前記試験そのものを実行するための実行処理手順と、該実行処理手順後に実行され、前記事前処理手順と逆の順序で処理して、前記複数の試験装置の動作条件を前記既知の動作条件に戻すための複数の後処理項目を並べた事後処理手順とを1組のテストケースとして、前記テストケースに沿って前記試験を実行する移動体通信端末試験システムを用いた試験方法であって、
前記複数のテストケースにおける各前処理項目の前記動作条件を相互比較し、同じ前処理項目で同じ動作条件のテストケースが連続して実行されるように、前記複数のテストケースの実行の順序を並べ替える並び替えステップと、
実行対象の一つのテストケースについての試験開始前に、前記一つのテストケースと、前記一つのテストケースの次の実行対象のテストケースとの間で、それぞれの事前処理手順における前処理項目毎にそれに含まれる動作条件を前記事前処理手順の順序に沿って比較し、前記動作条件が一致しなくなる前処理項目があるまで、もしくは全て一致するまで第1の比較を行う手順比較ステップと、
前記一つのテストケースと前記次のテストケースの間で前記第1の比較結果、各前処理項目の動作条件が全て一致する場合に、前記次のテストケースの前記事前処理手順における前処理項目全ての実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記事後処理手順における後処理項目全ての実行を省略する手順省略ステップとを備えたことを特徴とする試験方法。
【請求項8】
前記並び替えステップの事前に、前記事前処理手順を構成する各前記前処理項目に対し、実行される順序が早いほど優先順位が高くなるように係数が付され、一つの前処理項目に沿って設定された前記動作条件を前記既知の動作条件に戻すための後処理項目に対し、前記一つの前処理項目と同じ前記係数が付され、前記実行処理手順にはいずれの前処理項目の係数よりも優先順位が低くなるように係数を付しておく係数設定ステップを更に備え、
前記手順省略ステップにおいて、前記第1の比較により前記動作条件の異なる前処理項目を検知したときは、前記次のテストケースの前記前処理項目のうち、前記動作条件の異なる前処理項目を検知する直前の前処理項目の係数と同じ係数より前記順序方向と逆の順序方向の大きさの前記係数が付された前処理項目の実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記後処理項目のうち、前記次のテストケースの内、省略された該前処理項目と同じ係数が付された前記後処理項目の実行を省略することを特徴とする請求項7に記載の試験方法。
【請求項9】
前記並び替えステップの事前に、前記複数のテストケースにおける、1つの前記前処理項目を、各テストケースの前記1つの前処理項目に対応した前記動作条件を基に、全テストケースについて処理する時間が最大なるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最大処理時間と、全テストケースについて処理する時間が最小となるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最小処理時間との差から処理時間差を算出する処理時間差算出ステップを更に備え、
前記並び替えステップにおいて、少なくとも前記処理時間差が最も大きい前処理項目について、前記最小処理時間となるように前記複数のテストケースの順序を実行の順序として決定することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の試験方法。
【請求項10】
前記並び替えステップにおいて、前記処理時間差が最小となる前記前処理項目について、前記最小処理時間となる前記複数のテストケースの実行順序を基礎として、前記処理時間差が小さい前記前処理項目から大きい前記前処理項目の順に前記複数のテストケースの並び替えを行い、かつ、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目については、先に並べ替えられたテストケースの実行順序と、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目に対応した動作条件とを基に並び替えることで、前記複数のテストケースの実行順序を並び替えることを特徴とする請求項9に記載の試験方法。
【請求項1】
複数の試験装置を制御し被試験対象である移動体通信端末(2)の各種試験を実行する試験実行部(10)と、前記試験の前段階で、前記複数の試験装置をそれぞれの既知の動作条件から該各種試験の内容に応じた動作条件に設定するための処理を実行単位で項目に分けた複数の前処理項目を実行の順序で並べた事前処理手順と、前記試験そのものを実行するための実行処理手順と、該実行処理手順後に実行され、前記事前処理手順と逆の順序で処理して、前記複数の試験装置の動作条件を前記既知の動作条件に戻すための複数の後処理項目を並べた事後処理手順とを1組のテストケースとして、複数のテストケースを記憶するテストケース記憶部(12)とを備え、前記試験実行部が前記テストケースに沿って前記試験を実行する移動体通信端末試験システムであって、
実行対象の一つのテストケースについての試験開始前に、前記一つのテストケースと、前記一つのテストケースの次の実行対象のテストケースとの間で、それぞれの事前処理手順における前処理項目毎にそれに含まれる動作条件を前記事前処理手順の順序に沿って比較し、前記動作条件が一致しなくなる前処理項目があるまで、もしくは全て一致するまで第1の比較を行う処理内容比較部(111)と、
前記第1の比較により一致する前処理項目がある場合に、前記一致する前処理項目に対応した前記一つのテストケースの後処理項目の実行と、前記次のテストケースの前記一致する前処理項目の実行とを省略して、前記一つのテストケースと前記次のテストケースの試験を前記試験実行部に指示する手順決定部(112)とを備えたことを特徴とする移動体通信端末試験システム。
【請求項2】
前記複数のテストケースが3以上備えられており、
前記処理内容比較部は、予め、前記複数のテストケースにおける各前処理項目の前記動作条件を相互比較し、同じ前処理項目で同じ動作条件のテストケースが連続して実行されるように、前記複数のテストケースの実行の順序を並べ替える実行順序決定部(1111)を備え、該並び替えの後に、前記実行対象の一つのテストケースと前記次の実行対象のテストケースとの間での前記第1の比較を行うことを特徴とする請求項1に記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項3】
前記処理内容比較部は、予め、前記複数のテストケースにおける、1つの前記前処理項目を、各テストケースの前記1つの前処理項目に対応した前記動作条件を基に、全テストケースについて処理する時間が最大なるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最大処理時間と、全テストケースについて処理する時間が最小となるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最小処理時間との差から処理時間差を算出する処理コスト算出部(1112)を更に備え、
前記実行順序決定部は、少なくとも前記処理時間差が最も大きい前処理項目について、前記最小処理時間となるように前記複数のテストケースの順序を実行の順序として決定することを特徴とする請求項2に記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項4】
前記処理内容比較部は、予め、前記複数のテストケースにおける、1つの前記前処理項目を、各テストケースの前記1つの前処理項目に対応した前記動作条件を基に、全テストケースについて処理する時間が最大なるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最大処理時間と、全テストケースについて処理する時間が最小となるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最小処理時間との差から処理時間差を算出する処理コスト算出部(1112)を更に備え、
前記実行順序決定部は、前記処理時間差が最小となる前記前処理項目について、前記最小処理時間となる前記複数のテストケースの実行順序を基礎として、前記処理時間差が小さい前記前処理項目から大きい前記前処理項目の順に前記複数のテストケースの並び替えを行い、かつ、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目については、先に並べ替えられたテストケースの実行順序と、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目に対応した動作条件とを基に並び替えることで、前記複数のテストケースの実行順序を並び替えることを特徴とする請求項2に記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項5】
前記手順決定部が、前記一つのテストケースと前記次のテストケースの間で前記第1の比較結果、各前処理項目の動作条件が全て一致する場合に、前記次のテストケースの前記事前処理手順における前処理項目全ての実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記事後処理手順における後処理項目全ての実行を省略することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項6】
前記事前処理手順を構成する各前記前処理項目に対し、実行される順序が早いほど優先順位が高くなるように係数が付され、一つの前処理項目に沿って設定された前記動作条件を前記既知の動作条件に戻すための後処理項目に対し、前記一つの前処理項目と同じ前記係数が付され、前記実行処理手順にはいずれの前処理項目の係数よりも優先順位が低くなるように係数が付されており、
前記手順決定部は、前記処理内容比較部が前記第1の比較により前記動作条件の異なる前処理項目を検知したときは、前記次のテストケースの前記前処理項目のうち、前記動作条件の異なる前処理項目を検知する直前の前処理項目の係数と同じ係数より前記順序方向と逆の順序方向の大きさの前記係数が付された前処理項目の実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記後処理項目のうち、前記次のテストケースの内、省略された該前処理項目と同じ係数が付された前記後処理項目の実行を省略することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項7】
試験の前段階で、複数の試験装置をそれぞれの既知の動作条件から該各種試験の内容に応じた動作条件に設定するための処理を実行単位で項目に分けた複数の前処理項目を実行の順序で並べた事前処理手順と、前記試験そのものを実行するための実行処理手順と、該実行処理手順後に実行され、前記事前処理手順と逆の順序で処理して、前記複数の試験装置の動作条件を前記既知の動作条件に戻すための複数の後処理項目を並べた事後処理手順とを1組のテストケースとして、前記テストケースに沿って前記試験を実行する移動体通信端末試験システムを用いた試験方法であって、
前記複数のテストケースにおける各前処理項目の前記動作条件を相互比較し、同じ前処理項目で同じ動作条件のテストケースが連続して実行されるように、前記複数のテストケースの実行の順序を並べ替える並び替えステップと、
実行対象の一つのテストケースについての試験開始前に、前記一つのテストケースと、前記一つのテストケースの次の実行対象のテストケースとの間で、それぞれの事前処理手順における前処理項目毎にそれに含まれる動作条件を前記事前処理手順の順序に沿って比較し、前記動作条件が一致しなくなる前処理項目があるまで、もしくは全て一致するまで第1の比較を行う手順比較ステップと、
前記一つのテストケースと前記次のテストケースの間で前記第1の比較結果、各前処理項目の動作条件が全て一致する場合に、前記次のテストケースの前記事前処理手順における前処理項目全ての実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記事後処理手順における後処理項目全ての実行を省略する手順省略ステップとを備えたことを特徴とする試験方法。
【請求項8】
前記並び替えステップの事前に、前記事前処理手順を構成する各前記前処理項目に対し、実行される順序が早いほど優先順位が高くなるように係数が付され、一つの前処理項目に沿って設定された前記動作条件を前記既知の動作条件に戻すための後処理項目に対し、前記一つの前処理項目と同じ前記係数が付され、前記実行処理手順にはいずれの前処理項目の係数よりも優先順位が低くなるように係数を付しておく係数設定ステップを更に備え、
前記手順省略ステップにおいて、前記第1の比較により前記動作条件の異なる前処理項目を検知したときは、前記次のテストケースの前記前処理項目のうち、前記動作条件の異なる前処理項目を検知する直前の前処理項目の係数と同じ係数より前記順序方向と逆の順序方向の大きさの前記係数が付された前処理項目の実行を省略するとともに、前記一つのテストケースの前記後処理項目のうち、前記次のテストケースの内、省略された該前処理項目と同じ係数が付された前記後処理項目の実行を省略することを特徴とする請求項7に記載の試験方法。
【請求項9】
前記並び替えステップの事前に、前記複数のテストケースにおける、1つの前記前処理項目を、各テストケースの前記1つの前処理項目に対応した前記動作条件を基に、全テストケースについて処理する時間が最大なるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最大処理時間と、全テストケースについて処理する時間が最小となるように前記複数のテストケースを並び替えた場合の最小処理時間との差から処理時間差を算出する処理時間差算出ステップを更に備え、
前記並び替えステップにおいて、少なくとも前記処理時間差が最も大きい前処理項目について、前記最小処理時間となるように前記複数のテストケースの順序を実行の順序として決定することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の試験方法。
【請求項10】
前記並び替えステップにおいて、前記処理時間差が最小となる前記前処理項目について、前記最小処理時間となる前記複数のテストケースの実行順序を基礎として、前記処理時間差が小さい前記前処理項目から大きい前記前処理項目の順に前記複数のテストケースの並び替えを行い、かつ、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目については、先に並べ替えられたテストケースの実行順序と、後にテストケースの並び替えを行う前記前処理項目に対応した動作条件とを基に並び替えることで、前記複数のテストケースの実行順序を並び替えることを特徴とする請求項9に記載の試験方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図5】
【図6】
【図2】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2011−193295(P2011−193295A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58481(P2010−58481)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
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