説明

移動体

【課題】使用者が主体的に警報を発生させることができる移動体を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る移動体1は、使用者が腿部で旋回操作部40を左右方向に傾動させることにより旋回を実現する移動体であって、警報発生部61と、旋回操作部40に設けられ、使用者の腿部で操作される警報操作部62と、警報操作部62の操作信号に基づいて、警報発生部61を制御する制御部と、を備える。これにより、使用者が主体的に警報を発生させることができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に関し、特に使用者が腿部で旋回操作部を左右方向に傾動させることにより旋回を実現する移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、使用者が腿部で旋回操作部を左右方向に傾動させることにより旋回を実現する移動体が開示されている。このような移動体は、両手を自由な状態で当該移動体を操作できる。
【0003】
ところで、特許文献1には、移動体の移動速度に応じて警報音を発生させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−149576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の移動体は、使用者が主体的に警報を発生させることができない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、使用者が主体的に警報を発生させることができる移動体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る移動体は、使用者が腿部で旋回操作部を左右方向に傾動させることにより旋回を実現する移動体であって、警報発生部と、前記旋回操作部に設けられ、前記使用者の腿部で操作される警報操作部と、前記警報操作部の操作信号に基づいて、前記警報発生部を制御する制御部と、を備える。
【0008】
前記旋回操作部の傾動角度を検出する角度検出部を備え、前記制御部は、前記警報操作部から操作信号が入力されたとき、前記角度検出部が検出した前記旋回操作部の傾動角度が閾値より大きいと、前記警報発生部から警報を生じさせず、前記旋回操作部の傾動角度が閾値より小さいと、前記警報発生部から警報を生じさせること、が好ましい。
【0009】
前記警報操作部から入力される操作信号の入力時間を計測する計測部を備え、前記制御部は、前記警報操作部から操作信号が入力されたとき、前記計測部が検出した計測時間が閾値より短いと、前記警報発生部から警報を生じさせ、前記計測時間が閾値より長いと、前記警報発生部から警報を生じさせないこと、が好ましい。
【0010】
前記制御部は、前記警報発生部から警報を生じさせるとき、前記計測部が検出した計測時間に基づいて、警報の種類を変化させること、が好ましい。
【0011】
前記警報操作部は圧力センサであって、前記制御部は、前記圧力センサから入力される圧力値が第1の閾値より大きいと、前記警報発生部から警報を生じさせ、前記圧力値が第1の閾値より小さいと、前記警報発生部から警報を生じさせないこと、が好ましい。
【0012】
前記第1の閾値を設定する閾値設定部を備え、前記閾値設定部は、前記使用者が警報を生じさせないときに前記圧力センサに作用させる第1の圧力値と、警報を生じさせるときに前記圧力センサに作用させる第2の圧力値と、を取得し、前記第2の圧力値と前記第1の圧力値との差分が第2の閾値よりも大きいと、前記第2の圧力値を前記第1の閾値に設定すること、が好ましい。
【0013】
前記警報操作部は、前記旋回操作部の左右両側部にそれぞれ設けられていること、が好ましい。
前記旋回操作部は、膝当て部を備え、前記膝当て部に、前記警報操作部が設けられていること、が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように、本発明によると、使用者が主体的に警報を発生させることができる移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1に係る移動体を概略的に示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る移動体を概略的に示す斜視図である。
【図3】移動体の制御系のブロック図である。
【図4】移動体の異なる制御系のブロック図である。
【図5】警報を変化させる場合の制御部の動作を示すフローチャート図である。
【図6】第1の閾値を設定する際の閾値設定部の動作を示すフローチャート図である。
【図7】本発明の実施形態4に係る移動体における、制御系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0017】
<実施形態1>
本発明の実施形態1に係る移動体を、図面に基づいて説明する。
本実施形態の移動体1は、図1及び図2に示すように、車体10と、車輪20と、車輪駆動ユニット30と、旋回操作部40と、を備えている。当該移動体1は、倒立制御型の同軸二輪車である。
【0018】
車体10は、図1及び図2に示すように、平行リンク機構110、ステッププレート120を備えている。平行リンク機構110は、上側に配置される2本の横リンク111、下側に配置される2本の横リンク112、左右両側に配置される2本の縦リンク113を備えている。横リンク111は、長手方向の中間部に、前後方向へ貫通する軸受孔が設けられている。横リンク111の左右両端部にも、前後方向へ貫通する軸受孔が設けられている。この2本の横リンク111は、当該2本の横リンク111の端部でそれぞれ縦リンク113の上端部を挟み込むように配置されている。
【0019】
横リンク112も、当該横リンク111と同様の構成とされている。この2本の横リンク112は、当該2本の横リンク112の端部でそれぞれ縦リンク113の下端部を挟み込むように配置されている。
【0020】
縦リンク113は、偏平な板状の部材から成る。縦リンク113の上下端部には、それぞれ前後方向へ貫通する軸受孔が設けられている。この縦リンク113は、上下に配置された2本の横リンク111と111及び横リンク112と112の間における両端部にそれぞれ配置されている。そして、縦リンク113の軸受孔は、横リンク111、112の軸受孔と同一軸心線上に配置され、相互を貫通するように回動支持ピン114が挿入されている。その結果、横リンク111、112及び縦リンク113は、移動体1の左右方向へ回転可能な平行リンク機構として構成されている。ちなみに、横リンク111と112は、平行リンク機構110が移動体1の左右方向へ回転した状態から元の状態、即ち縦リンク113が傾斜した平行四辺形の状態から直角四辺形の状態に復元されるように、バネ等の復元部材115によって連結されている。
【0021】
縦リンク113の外面には、車輪駆動ユニット30が取り付けられている。車輪駆動ユニット30は、例えば、電動モータと、その電動モータの回転軸に動力伝達可能に連結された減速ギア列等によって構成することができる。車輪駆動ユニット30は、縦リンク113に固定される固定部と、その固定部に回転自在に支持された回転部と、から成る。当該回転部に車輪20が取り付けられている。このように、車輪駆動ユニット30を介して縦リンク113にそれぞれ支持された左右の車輪20は、平坦な路面上に置いたときには、互いの回転中心が同一軸心線上に配置されることになる。
【0022】
また、縦リンク113の上端部は、横リンク111の上面から上方へ突出している。当該縦リンク113の上端面には、ステッププレート120がそれぞれ水平に設けられている。左右のステッププレート120には、使用者の左右の足が載せられる。
【0023】
旋回操作部40は、挟み込み部410、ベース部420を備えている。挟み込み部410は、使用者の腿部(本実施の形態では膝近傍)で挟み込まれる。この挟み込み部410は、平面視が略環状に形成されている。すなわち、後方に湾曲する二本の湾曲部411の下端部同士が連結され、上端部が連結部412を介して連結されている。この連結された湾曲部411の下端部、つまり挟み込み部410の下端部は、ベース部420の前部に連結されている。このような挟み込み部410における湾曲部411の上部が膝当て部411aとされ、左右の膝当て部411aを使用者が膝近傍で挟み込むことで、走行時に体勢を安定させることができる。
【0024】
ちなみに、挟み込み部410の下端部は、ベース部420に前後方向(図2の矢印方向)に回転可能に連結されており、例えば使用者がレバー430を引くと、挟み込み部410の下端部がベース部420に対して回転し、当該挟み込み部410がベース部420側に折り畳まれる構成とされている。
【0025】
ベース部420は、車体10の中央位置を前後方向へ跨いだ形状とされている。ベース部420の前部には、車体10の下部まで延びる前面部が設けられている。当該前面部には、縦リンク113の前方において上下に配置された横リンク111、112の中央の軸受孔と対応する位置に、軸受孔が設けられている。横リンク111、112の中央の軸受孔と当該前面部の軸受孔とは、同一軸心線上に配置されている。相互の軸受孔を貫通するように回動支持軸が挿入されている。
【0026】
ベース部420の後部には、図示を省略したが、車体10の下部まで延びる後面部が設けられている。当該後面部には、縦リンク113の後方において上下に配置された横リンク111、112の中央の軸受孔と対応する位置に、軸受孔が設けられている。横リンク111、112の中央の軸受孔と当該後面部の軸受孔とは、同一軸心線上に配置されている。相互の軸受孔を貫通するように回動支持軸が挿入されている。このとき、前後に配置された回動支持軸は、同一軸心線上に配置されている。
【0027】
このような旋回操作部40は、平行リンク機構110が旋回方向へ回転すると、当該平行リンク機構110の回転と連動するように回転する。
【0028】
この旋回操作部40の回転角度(傾動角度)を検出するため、当該旋回操作部40と平行リンク機構110との連結部には角度検出部50が取り付けられている。角度検出部50としては、例えば、ポテンショメータやバリコン構造のセンサ等を適用することができる。
【0029】
ちなみに、図1及び図2に示す移動体1は、ベース部420における、左右のステッププレート120と120の間における前後の横リンク111と111及び横リンク112と112の隙間部分に格納部が形成されている。この格納部には、左右の車輪駆動ユニット30や制御部その他の電子機器、電気装置等に電力を供給する電源の一具体例を示すバッテリー51が格納されている。さらに格納部には、左右の車輪駆動ユニット30等を駆動する駆動回路と、移動体1の姿勢を検出して、それらの検出信号を出力する姿勢検出部52と、左右の車輪駆動ユニット30等を駆動制御するための制御信号を出力する制御部53等が格納されている。左右のステッププレート120に乗った使用者の直下位置にバッテリー51等の重量物を集中して格納しているので、マスの集中を図ることができ、移動体の操作性が向上する。
【0030】
制御部53は、姿勢検出部52からの検出信号や角度検出部50からの検出信号等に基づき所定の演算処理を実行し、必要な制御信号を左右の車輪駆動ユニット30(30L、30R)等に出力する。制御部53は、図3に示すように、例えば、マイクロコンピュータ(CPU)を有する演算回路53aと、プログラムメモリやデータメモリその他のRAMやROM等を有する記憶装置53b等を備えている。制御部53には、バッテリー51と左右の駆動回路54(54L、54R)が接続されており、それらは非常停止スイッチ55を介しても接続されている。左右の駆動回路54L、54Rは、左右の車輪20の回転速度や回転方向等を個別に制御するもので、これらに左右の車輪駆動ユニット30(30L、30R)が個別に接続されている。
【0031】
制御部53には、旋回操作部40の傾動角度を検出する角度検出部50からの検出信号と、姿勢検出部52からの検出信号と、が入力される。姿勢検出部52は、移動体1の前後方向への角速度や加速度を検出して、移動体1の前後方向への角速度や加速度を制御するために用いられる。姿勢検出部52は、例えば、ジャイロセンサと、加速度センサと、を備えている。
【0032】
このような移動体1は、使用者が左右のステッププレート120に乗って、膝近傍で旋回操作部40を旋回方向側に傾動させる。これにより、平行リンク機構110の対向するリンクが平行状態を維持したまま旋回方向へ回転する。このとき、角度検出部50は、水平である横リンク111、112に対する当該旋回操作部40の傾動角度を検出すると、その検出信号を制御部53に出力する。検出信号が入力された制御部53は、当該検出信号に基づいて所定の演算処理を行い、どの程度、旋回方向の内側の車輪の回転速度を減速させるか、又は旋回方向の外側の車輪の回転速度を加速させるかを算出し、その算出結果を示す信号を、車輪駆動ユニット30に出力する。算出結果を示す信号が入力された車輪駆動ユニット30は、当該算出結果を示す信号に基づいて、モータの回転速度を制御して車輪20を駆動させる。このようにして、移動体1は旋回制御される。
【0033】
また、移動体1は、使用者が左右のステッププレート120に乗って、使用者の荷重を前方又は後方へ移動させ、当該移動体1を前後方向へ回転させる。これにより、姿勢検出部52が移動体1の前後方向への角速度及び加速度を検出し、その検出信号を制御部53に出力する。検出信号が入力された制御部53は、当該検出信号に基づいて所定の演算処理を行い、移動体1が倒れないように安定化させるのに必要な駆動トルクを算出し、その算出結果を示す信号を、車輪駆動ユニット30に出力する。算出結果を示す信号が入力された車輪駆動ユニット30は、当該算出結果を示す信号に基づいて、モータを制御して車輪20を駆動させる。このようにして、移動体1は倒立制御される。
【0034】
このような移動体1は、主体的に警報を発生させることができる構成とされている。すなわち、移動体1は、さらに警報発生部61、警報操作部62を備えている。警報発生部61は、視覚的に警報を発するLED等の光源や聴覚的に警報を発するスピーカなどを備えている。警報発生部61は、例えば旋回操作部40のベース部420の前面部や後面部等に設けられる。但し、移動体の周辺の人に警報を発生させることができる位置であれば、警報発生部61の配置位置は限定されない。
【0035】
警報操作部62は、膝などの接触を感知するスイッチ又はセンサ等を備えている。警報操作部62は、旋回操作部40の左右両方の膝当て部411aに設けられている。使用者は、警報を発生させる場合、膝近傍を内側に折り曲げて警報操作部62を押し込む。これにより、警報操作部62は操作信号を制御部53の演算回路53aに出力する。
演算回路53aは、操作信号が入力されると、警報発生部61を制御して光源を発光させたり、スピーカから警報音を出力させたりする。
【0036】
これにより、使用者は移動体1に搭乗中に主体的に警報を発生させることができる。しかも、使用者は、警報操作部62を膝近傍で操作するので、両手を自由な状態で移動体1を操作できる。
【0037】
ここで、演算回路53aは、左右両方の警報操作部62から操作信号が入力されたときのみに、警報発生部61から警報を発生させるように制御すると良い。使用者が移動体1の旋回を実現しようとする際には、通例、旋回方向の外側の足で旋回操作部40を旋回方向に傾動させ、旋回方向の内側の足は旋回操作部40から離れる可能性が高い。そのため、使用者が移動体1を旋回させようとした際に、誤って警報を発生させることが少ない。
【0038】
このとき、使用者が膝近傍で警報操作部62を押し込む時間の長さに応じて、光源の発光パターンやスピーカからの警報音を変化させることができる。つまり、移動体1は、図4に示すように、さらに計測部63を備えており、警報操作部62からの操作信号は制御部53の演算回路53aに入力されると共に、計測部63にも入力される。計測部63は、警報操作部62から操作信号が入力される時間の長さを計測し、計測時間を示す信号を制御部53の演算回路53aに出力する。
【0039】
このように警報操作部62から操作信号が入力され、計測部63から計測時間を示す信号が入力される演算回路53aは、図5に示すように動作する。
先ず演算回路53aは、左右両方の警報操作部62から操作信号が入力されたか否かを判定する(S1)。次に、演算回路53aは、左右両方の警報操作部62から操作信号が入力されていると、記憶装置53bから予め設定されている閾値を読み出し、当該計測時間が閾値より長いか否かを判定する(S2)。次に、演算回路53aは、当該計測時間が閾値より短いと、記憶装置53bから予め設定されている点滅パターン又は警報音量を読み出し、例えば比較的ゆっくりのパターンで光源を点滅させたり、小さな音で警報音をスピーカから出力させたりする(S3)。一方、演算回路53aは、当該計測結果が閾値より長いと、記憶装置53bから予め設定されている点滅パターン又は警報音量を読み出し、比較的早いパターンで光源を点滅させたり、大きな音で警報音をスピーカから出力させたりする(S4)。
これにより、使用者は周辺の人との距離等に応じて、主体的に警報を変化させることができる。
【0040】
但し、本実施形態では、光源の点滅パターンを変化させているが、光源の光の強度を変化させても良い。また、本実施形態では、警報音量を変化させているが、警報音の出力間隔や音自体を変化させても良い。要するに、周辺の人との距離等に応じて、警報を変化させることができれば良い。
【0041】
<実施形態2>
本実施形態の移動体は、実施形態1の移動体1と略同様の構成とされているため、図3を流用して説明する。本実施形態の制御部53は、さらに角度検出部50の検出信号に基づいて、警報を発生させるか否かを判定している。
【0042】
移動体を旋回させる際、使用者は旋回操作部40を傾動させるため、必然的に警報操作部62に接触する可能性がある。このとき、旋回操作部40の傾動角度が比較的大きいと、使用者が移動体の旋回を希望している可能性が高く、旋回操作部40の傾動角度が比較的小さいと、使用者が警報を発生させることを希望している可能性が高い。そのため、本実施形態の制御部53は、そのような特性を利用して、使用者が移動体の旋回を希望しているか、それとも警報を発生させることを希望しているのかを判定している。
【0043】
すなわち、制御部53の演算回路53aは、警報操作部62から操作信号が入力されると、記憶装置53bから予め設定されている閾値を読み出し、角度検出部50から入力される検出信号が示す旋回操作部40の傾動角度が当該閾値より大きいか否かを判定する。そして、演算回路53aは、旋回操作部40の傾動角度が当該閾値より小さいと、警報発生部61を制御して警報を発生させる。一方、演算回路53aは、旋回操作部40の傾動角度が当該閾値より大きいと、警報発生部61から警報を発生させない。
これにより、使用者が移動体の旋回を実現するために、旋回操作部40を傾動させた際に意図せずに警報を発生させることが少ない。
【0044】
<実施形態3>
本実施形態の移動体も、実施形態1の移動体1と略同様の構成とされているため、図4を流用して説明する。本実施形態の制御部53は、さらに計測部63が計測した計測時間に基づいて、警報を発生させるか否かを判定している。
【0045】
移動体を旋回させる際、上述したように、使用者は旋回操作部40を傾動させるため、必然的に警報操作部62に接触する可能性がある。このとき、使用者の膝近傍が警報操作部62に長い時間接触していると、使用者が移動体の旋回を希望している可能性が高く、使用者の膝近傍が警報操作部62に短い時間接触していると、使用者が警報を発生させることを希望している可能性が高い。そのため、本実施形態の制御部53は、そのような特性を利用して、使用者が移動体の旋回を希望しているのか、それとも警報を発生させることを希望しているのかを判定している。
【0046】
すなわち、制御部53の演算回路53aは、警報操作部62から操作信号が入力されると、記憶装置53bから予め設定されている閾値を読み出し、計測部63から入力される信号が示す計測時間が当該閾値より長いか否かを判定する。そして、演算回路53aは、計測時間が当該閾値より短いと、警報発生部61を制御して警報を発生させる。一方、演算回路53aは、計測時間が当該閾値より長いと、警報発生部61から警報を発生させない。
これにより、使用者が移動体の旋回を実現するために、旋回操作部40を傾動させた際に意図せずに警報を発生させることが少ない。
【0047】
<実施形態4>
本実施形態の移動体も、実施形態1の移動体1と略同様の構成とされているため、図3を流用して説明する。本実施形態の制御部53は、警報操作部62を圧力センサで構成し、当該警報操作部62の検出値(圧力値)に基づいて、警報を発生させるか否かを判定している。
【0048】
移動体を旋回させる際、上述したように、使用者は旋回操作部40を傾動させるため、必然的に警報操作部62に接触する可能性がある。このとき、使用者の膝近傍が警報操作部62に比較的強く接触していると、使用者が移動体の旋回を希望している可能性が高く、使用者の膝近傍が警報操作部62に比較的弱く接触していると、使用者が警報を発生させることを希望している可能性が高い。そのため、本実施形態の制御部53は、そのような特性を利用して、使用者が移動体の旋回を希望しているのか、それとも警報を発生させることを希望しているのかを判定している。
【0049】
すなわち、制御部53の演算回路53aは、警報操作部62から操作信号が入力されると、記憶装置53bから予め設定されている第1の閾値を読み出し、警報操作部62から入力される操作信号が示す検出値が第1の閾値より大きいか否かを判定する。そして、演算回路53aは、当該検出値が第1の閾値より小さいと、警報発生部61を制御して警報を発生させる。一方、演算回路53aは、当該検出値が第1の閾値より大きいと、警報発生部61から警報を発生させない。
これにより、使用者が移動体の旋回を実現するために、旋回操作部を傾動させた際に意図せずに警報を発生させることが少ない。
【0050】
ここで、図6を用いて第1の閾値の設定方法を説明する。ちなみに、本実施形態の移動体は、第1の閾値を設定するために、図7に示すように、閾値設定部71を備えている。
先ず、使用者は、移動体に設けられている設定開始ボタン(図示を省略)を押し、閾値設定部71を起動させる。閾値設定部71は、例えばスピーカ72から設定を開始する旨のアナウンスを出力させる。そして、閾値設定部71は、スピーカ72から使用者に対して移動体に搭乗を促すアナウンスを出力させる(S11)。このアナウンスに倣って、使用者は移動体に搭乗する。なお、警報発生部61がスピーカを備えている場合は、当該スピーカをスピーカ72として用いることができる。
【0051】
次に、閾値設定部71は、メロディーが流れるので、その間、警報を発生させる時を想定して挟み込み部410を挟み込むように、スピーカ72から使用者に対して警報操作部62の押し込みを促すアナウンスを出力させる(S12)。メロディーが流れている間、使用者は左右の膝近傍で挟み込み部410を挟み込み、警報操作部62を押し込む。閾値設定部71には、左右の警報操作部62から第1の検出値を示す信号が入力され、信号が入力されている間の第1の検出値の平均値を算出する(S13)。ここでは、左右の警報操作部62に作用する第1の検出値の平均値それぞれをx1、x2とする。
【0052】
次に、閾値設定部71は、メロディーが流れるので、その間、通常の搭乗状態、即ち警報を発生させない時を想定して挟み込み部410を挟み込むように、スピーカ72から使用者に対して警報操作部62の押し込みを促すアナウンスを出力させる(S14)。メロディーが流れている間、搭乗中に体勢を安定させるために、使用者は左右の膝近傍で挟み込み部410を挟み込む。閾値設定部71には、その際に膝近傍が接触した左右の警報操作部62から第2の検出値を示す信号が入力され、信号が入力されている間の第2の検出値の平均値を算出する(S15)。ここで、左右の警報操作部62に作用する第2の検出値の平均値をy1、y2とする。
【0053】
次に、閾値設定部71は、x1−y1の値が第2の閾値(a1)より大きく、且つx2−y2の値が第3の閾値(a2)より大きいか否かを判定する(S16)。a1、a2は、それぞれx1とy1との値、x2とy2との値が近づき過ぎないように設定され、予め記憶装置53bに格納されている。
【0054】
次に、閾値設定部71は、x1−y1>a1であって、且つx2−y2>a2である条件を満たすと、x1、x2を第1の閾値として、記憶装置53bに出力する(S17)。一方、閾値設定部71は、当該条件を満たさないと、S11に戻る。
このように第1の閾値を設定することで、移動体を使用する使用者の個体差に柔軟に対応することができる。しかも、同一の移動体を複数人使用する場合は、第1の閾値を複数設定し、使用者に応じて第1の閾値を選択する構成とすることができる。
【0055】
以上、本発明にかかる移動体の実施形態を説明したが、上記の構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。
上記実施形態1乃至4の実施形態の移動体は、平行リンク機構を有する車体を備えているが、この限りでない。車体が傾動しない構成でも同様に実施できる。
上記実施形態2乃至4の移動体は、計測部63の計測時間に応じて警報の種類を変化させていないが、計測部63の計測時間に応じて警報の種類を変化させても良い。また、警報操作部62に作用する圧力値に応じて警報の種類を変化させても良い。
上記実施形態1乃至4の移動体は、旋回操作部40を膝近傍で操作する構成とされているが、腿部で操作可能な構成であれば良い。
上記実施形態1乃至4の移動体は、警報操作部62を左右の膝当て部411aにそれぞれ設けているが、いずれか一方でも良い。
上記実施形態4の閾値設定部71は、制御部53と別構成とされているが、制御部53が閾値設定部71の機能を発揮しても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 移動体
10 車体
20 車輪
30(30L、30R) 車輪駆動ユニット
40 旋回操作部、410 挟み込み部、411 湾曲部、411a 膝当て部、412 連結部、420 ベース部、430 レバー
50 角度検出部
51 バッテリー
52 姿勢検出部
53 制御部、53a 演算回路、53b 記憶装置
54(54L、54R) 駆動回路
55 非常停止スイッチ
61 警報発生部
62 警報操作部
63 計測部
71 閾値設定部
72 スピーカ
110 平行リンク機構、111 横リンク、112 横リンク、113 縦リンク、114 回動支持ピン、115 復元部材
120 ステッププレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が腿部で旋回操作部を左右方向に傾動させることにより旋回を実現する移動体であって、
警報発生部と、
前記旋回操作部に設けられ、前記使用者の腿部で操作される警報操作部と、
前記警報操作部の操作信号に基づいて、前記警報発生部を制御する制御部と、
を備える移動体。
【請求項2】
前記旋回操作部の傾動角度を検出する角度検出部を備え、
前記制御部は、前記警報操作部から操作信号が入力されたとき、前記角度検出部が検出した前記旋回操作部の傾動角度が閾値より大きいと、前記警報発生部から警報を生じさせず、前記旋回操作部の傾動角度が閾値より小さいと、前記警報発生部から警報を生じさせる請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記警報操作部から入力される操作信号の入力時間を計測する計測部を備え、
前記制御部は、前記警報操作部から操作信号が入力されたとき、前記計測部が検出した計測時間が閾値より短いと、前記警報発生部から警報を生じさせ、前記計測時間が閾値より長いと、前記警報発生部から警報を生じさせない請求項1に記載の移動体。
【請求項4】
前記制御部は、前記警報発生部から警報を生じさせるとき、前記計測部が検出した計測時間に基づいて、警報の種類を変化させる請求項3に記載の移動体。
【請求項5】
前記警報操作部は圧力センサであって、
前記制御部は、前記圧力センサから入力される圧力値が第1の閾値より大きいと、前記警報発生部から警報を生じさせ、前記圧力値が第1の閾値より小さいと、前記警報発生部から警報を生じさせない請求項1に記載の移動体。
【請求項6】
前記第1の閾値を設定する閾値設定部を備え、
前記閾値設定部は、前記使用者が警報を生じさせないときに前記圧力センサに作用させる第1の圧力値と、警報を生じさせるときに前記圧力センサに作用させる第2の圧力値と、を取得し、前記第2の圧力値と前記第1の圧力値との差分が第2の閾値よりも大きいと、前記第2の圧力値を前記第1の閾値に設定する請求項5に記載の移動体。
【請求項7】
前記警報操作部は、前記旋回操作部の左右両側部にそれぞれ設けられている請求項1乃至6のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項8】
前記旋回操作部は、膝当て部を備え、
前記膝当て部に、前記警報操作部が設けられている請求項1乃至7のいずれか1項に記載の移動体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−188075(P2012−188075A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55482(P2011−55482)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】